JP3721109B2 - スチレン系樹脂発泡体とその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、例えば建築分野の保温保冷材などに使用される、断熱性、難燃性に優れたスチレン系樹脂発泡体と、その製造方法とに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
上記保温保冷材などは、日本工業規格JIS A9511-1995「発泡プラスチック保温材」の規定により、使用するプラスチックの種類や製造方法、形状などの違いによって数種に分類されており、その中に、スチレン系樹脂を板状に押出発泡させることで製造される押出法ポリスチレンフォーム保温板がある。またこの押出法ポリスチレンフォーム保温板は、板の厚み方向(VD)の熱伝導率その他の特性の違いによってさらに1種a、bから3種a、bまでの6種類に細分されている。
【0003】
このうち2種a、bに分類される押出法ポリスチレンフォーム保温板は、平均温度20℃におけるVDの熱伝導率が0.034W/m・K以下であることが求められる。また3種a、bに分類される押出法ポリスチレンフォーム保温板は、同じく平均温度20℃におけるVDの熱伝導率が0.028W/m・K以下であることが求められる。
このように熱伝導率の小さい、2種a、bや3種a、bに分類される押出法ポリスチレンフォーム保温板を製造するためには、一般に、発泡剤としてフロンが用いられる。
【0004】
フロンは熱伝導率が小さい上、スチレン系樹脂に対する透過性が低く、押出発泡後の気泡中に長期間に亘って存在できる、すなわち経日での気泡内のガス保持が良好であるため、保温板の熱伝導率の抑制に効果がある。またフロンは炭化水素に比べると燃えにくく、特に後述するHFC−134aなどは不燃性であるため、保温板に求められるもう1つの特性である、上記JIS A9511-1995に規定された燃焼性の基準をクリアする難燃性を達成するためにも有効である。
【0005】
フロンとしては現在、強力なオゾン層破壊作用を有するため生産、消費が全廃されたCFC類の特定フロンに代えて、1−クロロ−1,1−ジフルオロエタン(HCFC−142b)などのHCFC類の代替フロンが広く用いられている。しかしこのHCFC類の代替フロンも、依然としてオゾン層破壊作用を有しているため、その使用が制限される方向にあり、HFC類の代替フロンへの転換が急がれている。
【0006】
1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC−134a)に代表されるHFC類の代替フロンは、オゾン層破壊にとっての影響度を数値にした、トリクロロフルオロメタン(CFC−11)を1とするオゾン層破壊係数が0であって、オゾン層への影響がないと考えられるためである。
ところがHFC類の代替フロンは、地球温暖化にとっての影響度を数値にした、二酸化炭素を1とする地球温暖化係数が1千〜1万強と著しく高いという別の問題がある。
【0007】
このため地球環境への影響を考慮して、全くフロンを使用せずに、しかもフロンを使用した場合と同等に熱伝導率の低い、具体的には前記2種a、bまたは3種a、bの押出法ポリスチレンフォーム保温板等に求められる高い断熱性を有するスチレン系樹脂発泡体を得るべく、種々の検討が行われている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
フロンに代わる発泡剤としては、例えばプロパン、ブタン、ペンタン等の炭化水素系の発泡剤が考えられる。
炭化水素系の発泡剤は、その熱伝導率がフロンと同程度に小さく、かつ経日での気泡内のガス保持が良好である上、オゾン層破壊作用を有さず、しかも地球温暖化係数が、HFC類の代替フロンの数百分の1程度である。
【0009】
このため押出発泡法において、地球環境への影響を極力抑えつつ、フロンを使用した場合と同等の、断熱性に優れたスチレン系樹脂発泡体を製造することができる。
しかし炭化水素は、フロンと違って可燃性であるため、前述した燃焼性の基準をクリアする難燃性に優れた発泡体を得ることができない上、発泡体製造時の安全性にも影響がある。
【0010】
そこで炭化水素を、難燃性で、しかも熱伝導率が低い上、発泡性が良好な塩化アルキルと併用して発泡体を製造することが考えられた。
例えば特開昭51−92871号公報の実施例のうち試料No.4〜8では、炭化水素のうちプロパン、ブタンもしくはペンタンと、塩化アルキルである塩化メチルとを、重量比で7:3の割合で使用してスチレン系樹脂発泡体を製造している。
【0011】
製造された発泡体は、上記公報の第2表の結果より熱伝導率が小さく、断熱性に優れたものであることがわかる。すなわち第2表より、試料No.4〜8はいずれも、押出発泡直後から5年経過した時点までの熱伝導率(24℃)が0.0242kcal/(m・hr・℃)〔≒0.0281W/m・K〕以下の範囲に収まっており、前述した2種a、bの押出法ポリスチレンフォーム保温板に求められる高い断熱性を達成していることが理解される。
【0012】
しかし第1表の、成形時の特定発泡剤(この場合は炭化水素)の分圧が、全圧1.04気圧中の0.26〜0.39気圧、あるいは全圧1.05気圧中の0.28気圧と高いことから、これらの発泡体は、依然として炭化水素の残ガス量が多く、難燃性が十分でないことも明らかである。
また同様に、特開昭53−2564号公報の実施例のうち試料No.23、24では、プロパンまたはブタンと、塩化メチルとを発泡剤として使用して、スチレン系樹脂発泡体を製造している。
【0013】
製造された発泡体は、上記公報の第1表の結果より、押出発泡3日後から5年経過した時点までの熱伝導率(24℃)が、No.23で0.0250kcal/(m・hr・℃)〔≒0.0291W/m・K〕以下、No.24で0.0249kcal/(m・hr・℃)〔≒0.0290W/m・K〕以下の範囲にそれぞれ収まっており、このいずれも、前述した2種a、bの押出法ポリスチレンフォーム保温板に求められる高い断熱性を達成していることがわかる。
【0014】
しかし同表に見るように、ブタンまたはプロパンの、押出発泡3日後での分圧の数値が、それぞれ1気圧中の0.40気圧および0.89気圧と高いことから、これらの発泡体も、依然として炭化水素の量が多く、難燃性が十分でないことが明らかである。
特開平10−265604号公報には、炭化水素5〜40重量%と塩化エチル95〜60重量%とを用いてスチレン系樹脂発泡体を製造することが記載されている。このように、炭化水素と塩化アルキルの量を逆転させれば、発泡体の難燃性を向上できると考えられる。
【0015】
しかし上記公報の第0034欄には、平均温度20℃における熱伝導率が0.034kcal/(m・hr・℃)〔≒0.040W/m・K〕以下であれば断熱性が良好(○)という断熱性の基準が示されている。
これは、前記JIS A9511-1995において、最も断熱性の低い1種a、bに分類される押出法ポリスチレンフォーム保温板に求められる断熱性の基準である。そしてこのことから、炭化水素と塩化アルキルの使用量を逆転させると、断熱性が低下することがわかる。
【0016】
この原因としては、塩化アルキルの、スチレン系樹脂に対する透過性が高いため、フロンや炭化水素のように経日での気泡内のガス保持が良好でないことがあげられる。すなわち塩化アルキルは、上記のようにスチレン系樹脂に対する透過性が高いため、押出発泡後の気泡中から早期に失われやすく、熱伝導率の低下に効果がない。このため、塩化アルキルを多量に使用したのでは断熱性が低下するのである。
【0017】
この発明の目的は、発泡剤としてフロンを使用せずに、しかもフロンを使用したのと同等の高い断熱性、難燃性を有するスチレン系樹脂発泡体と、その製造方法とを提供することにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、発明者は、発泡剤としては炭化水素と塩化アルキルとを用いつつ、しかも前記のように相反する特性である断熱性と難燃性とを両立させるべく種々検討を行った。つまり熱伝導率が小さい上、経日での気泡内のガス保持が良好であるものの、可燃性である炭化水素の量を必要最小限に抑えて十分な難燃性を維持しつつ、しかも塩化アルキルの、気泡中からの喪失による熱伝導率の上昇の影響をカバーして高い断熱性を維持すべく、発泡剤以外の他の構成要素について検討した。
【0019】
そして、発泡体の気泡構造が、その断熱性に大きく関わっていることを見出した。すなわち板状の発泡体の、所定の断熱性が求められるVDの気泡数を増やして、気泡間を隔てる気泡膜での熱の遮断回数を多くすると、同方向の断熱性を向上することができる。
しかし気泡数を増やすために、単純に気泡径を小さくしたのでは、十分な厚みを有する発泡体が得られない。また十分な厚みを確保すべく、押出発泡時の樹脂の吐出量を増加させると、気泡がVDに沿って伸びて、同方向に立った形状となる。このため、VDの気泡数はさほど増加せず、気泡膜での熱の遮断回数を多くして同方向の断熱性を向上する効果が得られない。
【0020】
そこで気泡構造についてさらに検討した結果、式(1):
φAV=(φMD+φTD+φVD)/3 (1)
〔式中、φMDは押出流れ方向の気泡径、φTDは板の幅方向の気泡径、φVDは板の厚み方向の気泡径を示す。〕で求められる平均気泡径φAVを0.10〜0.50mmの範囲内に規定するとともに、φVDとφAVとの比φVD/φAVを式(2):
0.8≦φVD/φAV<1.2 (2)
の範囲内に規定すると、発泡体の厚みを十分に確保しつつ、気泡膜での熱の遮断回数を多くして、VDの断熱性を向上できること、その際の発泡体の厚みは、25mm以上、110mm未満である必要があること、を見出した。
【0021】
したがってこの発明のスチレン系樹脂発泡体は、スチレン系樹脂を、少なくとも炭化水素と塩化アルキルとを含む発泡剤を用いて、板状に押出発泡して形成されたものであって、厚みが25mm以上、110mm未満、上記式(1)で求められる平均気泡径φAVが0.10〜0.50mmの範囲内、φVDとφAVとの比φVD/φAVが上記式(2)の範囲内で、かつ炭化水素の残ガス量が、発泡体全量の3.5重量%以下であることを特徴としている。
【0022】
この発明において、炭化水素の残ガス量が、発泡体全量の3.5重量%以下に限定されるのは、発泡体に十分な難燃性を付与するためである。すなわち可燃性である炭化水素の残ガス量がこの範囲内であれば、後述する実施例の結果から明らかなように、前述した、JIS A9511-1995に規定された燃焼性の基準をクリアする難燃性を達成することができる。
なお炭化水素の残ガス量は、発泡体の難燃性をさらに向上することを考慮すると、上記の範囲内でも特に、発泡体全量の3.0重量%以下であるのが好ましい。
【0023】
また、気泡中に残留した炭化水素ガスによる断熱効果を、前述した気泡構造による断熱効果に上乗せして良好な断熱性を確保するためには、炭化水素の残ガス量は、上記の範囲内でも特に、発泡体全量の1.0重量%以上であるのが好ましい。
また式(1)で求められる平均気泡径φAVが0.10〜0.50mmの範囲内に限定されるのは、下記の理由による。
【0024】
すなわち、平均気泡径φAVが0.10mm未満では気泡径が小さ過ぎて、気泡膜での熱の遮断回数は多くなるものの、個々の気泡膜の厚みが小さくなって、それぞれの気泡膜における熱の遮断効果が低下する。このため、VDの断熱性が却って低下してしまう。
一方、平均気泡径φAVが0.50mmを超える場合には、気泡径が大き過ぎて、気泡膜での熱の遮断回数が少なくなるため、やはりVDの断熱性が低下してしまう。
【0025】
これに対し、平均気泡径φAVが0.10〜0.50mmの範囲内であれば、前記のように気泡膜での熱の遮断回数を多くして、発泡体の断熱性を向上することができる。このため炭化水素の残ガス量を、前記のように発泡体全量の3.5重量%以下に限定すべく、塩化アルキルの量を増加させたことによる、当該塩化アルキルの、気泡中からの喪失による熱伝導率の上昇の影響をカバーし、しかも気泡中に残留した炭化水素ガスによる断熱効果を上乗せして、発泡体に、高い断熱性を付与することが可能となる。
【0026】
なお平均気泡径φAVは、気泡膜での熱の遮断回数を多くして、発泡体の断熱性を向上することを考慮すると、上記の範囲内でも特に0.20〜0.40mmであるのが好ましい。
さらにφVDとφAVとの比φVD/φAVが式(2):
0.8≦φVD/φAV<1.2 (2)
の範囲内に限定されるのは、下記の理由による。
【0027】
すなわち比φVD/φAVが0.8未満では、気泡が、VDに押し潰された形状となるため、十分な厚みを有する発泡体が得られない。十分な厚みを確保すべく、押出発泡時の樹脂の吐出量を増加させることも考えられるが、そのためにはかなりの吐出量が必要となり、現状の押出発泡のための設備(押出機など)をそのまま使用する場合は、実質的に製造が困難となる。
一方、比φVD/φAVが1.2以上では、気泡が、VDにかなり立った形状となる。このため、VDの気泡数はさほど増加せず、気泡膜での熱の遮断回数を多くして同方向の断熱性を向上する効果が得られない。
【0028】
これに対し、比φVD/φAVが0.8以上でかつ1.2未満の範囲内であれば、発泡体のVDの厚みを十分に確保しつつ、同方向の気泡数を増加させて、気泡膜での熱の遮断回数を多くすることによって、発泡体の断熱性を向上することができる。このため炭化水素の残ガス量を、前記のように発泡体全量の3.5重量%以下に限定すべく、塩化アルキルの量を増加させたことによる、当該塩化アルキルの、気泡中からの喪失による熱伝導率の上昇の影響をカバーし、しかも気泡中に残留した炭化水素ガスによる断熱効果を上乗せして、発泡体に高い断熱性を付与することが可能となる。
【0029】
なお比φVD/φAVは、発泡体のVDの厚みを十分に確保することを考慮すると、上記の範囲内でも特に0.9以上であるのが好ましい。また、VDの気泡数を増加させて、気泡膜での熱の遮断回数を多くすることによって、発泡体の断熱性をさらに向上することを考慮すると、上記の範囲内でも特に1.1以下であるのが好ましい。
また、厚みが25mm未満の発泡体は、押出発泡によって製造するのが容易でない上、断熱性を確保するのが難しい。また、発泡体の厚みが110mm以上では、気泡がVDにかなり立った形状となって、VDの気泡数がさほど増加しないため、気泡膜での熱の遮断回数を多くして同方向の断熱性を向上する効果が得られない。なお、発泡体の厚みは、これらの特性の兼ね合いを考慮して、できるだけ断熱性に優れた発泡体を得るためには、上記の範囲内でも特に80〜100mmであるのが好ましい。
かかるこの発明のスチレン系樹脂発泡体を製造するには、押出発泡の条件を調整するなどの種々の方法が採用可能であるが、特にスチレン系樹脂として、MFRが4〜10g/10minで、かつせん断速度200s-1時のダイスウェル比が1.8以上であるスチレン系樹脂を用いるのが好ましい。
【0030】
すなわちこの発明のスチレン系樹脂発泡体の製造方法は、MFRが4〜10g/10minで、かつせん断速度200s-1時のダイスウェル比が1.8以上であるスチレン系樹脂を、少なくとも炭化水素と塩化アルキルとを含む発泡剤を用いて、板状に押出発泡することを特徴としている。
かかる製造方法によれば、従来と同じ押出機などの設備を使用し、なおかつ従来同様の押出発泡の条件などを維持して、樹脂を替えるだけで、フロンを使用したのと同等の高い断熱性、難燃性を有するこの発明の発泡体を製造できるという利点がある。
【0031】
この発明の製造方法において、スチレン系樹脂のMFRが4〜10g/10minに限定されるのは、下記の理由による。
すなわちスチレン系樹脂のMFRが4g/10min未満では、樹脂粘度が大きくなって押出機内の圧力が上昇する結果、押出発泡時の樹脂の吐出量が下がって、生産性が非常に悪くなるという問題を生じる。
一方、スチレン系樹脂のMFRが10g/10minを超えると、板状の発泡体では高発泡に耐えうる溶融張力が樹脂にないため、高倍率の板状発泡体が得られないという問題を生じる。
【0032】
なおこれらの問題の兼ね合いを考慮して、高い断熱性、難燃性を有する発泡体を製造することを考慮すると、スチレン系樹脂のMFRは、上記の範囲内でも特に5〜8g/10minであるのが好ましい。
この発明では、日本工業規格JIS K7210-1999「プラスチック−熱可塑性プラスチックのメルトマスフローレイト(MFR)及びメルトボリュームフローレイト(MVR)の試験方法」に所載の試験方法のうちB法に則って測定した値をもって、スチレン系樹脂のMFRとすることとする。測定方法の詳細は後述する。
【0033】
またスチレン系樹脂の、せん断速度200s-1時のダイスウェル比が1.8以上に限定されるのは、下記の理由による。
せん断速度200s-1は、板状の発泡体を押出発泡する際の最低せん断速度にあたり、その時のダイスウェル比が1.8未満では、十分な厚みを有する発泡体が得られない。また十分な厚みを確保すべく、押出発泡時の樹脂の吐出量を増加させると、前記のように気泡がVDに沿って伸びて、同方向に立った形状となるため、VDの気泡数はさほど増加せず、気泡膜での熱の遮断回数を多くして同方向の断熱性を向上する効果が得られない。
【0034】
これに対し、せん断速度200s-1時のダイスウェル比が1.8以上であるスチレン系樹脂を使用すると、従来と同じ押出発泡のための設備を使用し、なおかつ従来同様の押出発泡の条件などを維持した状態で、十分な厚みを有する板状の発泡体を得ることができる。そして得られた発泡体は、前述した厚み範囲と、式(1)(2)の規定を満足する良好な気泡形状とを有し、高い断熱性、難燃性を有するものとなる。
なお、気泡膜での熱の遮断回数を多くして同方向の断熱性を向上する効果を高めて、発泡体の断熱性をさらに向上するためには、せん断速度200s-1時のダイスウェル比は、上記の範囲内でも特に1.9以上であるのが好ましい。
【0035】
ダイスウェル比を大きくするほど、押出発泡時に、例えば2枚の板を所定の間隔に配置するなどした成形装置を通して所定の厚みに成形される発泡体のVDに、より多くの気泡を並べることができる。このため発泡体の断熱性をさらに向上することが可能となる。
よってダイスウェル比は大きい方が望ましいが、MFRが4〜10g/10minの範囲内で、かつダイスウェル比の大きい樹脂としては、現在のところ2.1程度のものがある。
【0036】
なおこの発明では、日本工業規格JIS K7199-1999「プラスチック−キャピラリーレオメータ及びスリットダイレオメータによるプラスチックの流れ特性試験方法」に所載の試験方法に則って測定した値をもって、スチレン系樹脂のダイスウェル比とすることとする。測定方法の詳細は後述する。
【0037】
【発明の実施の形態】
以下に、この発明を説明する。
〔スチレン系樹脂発泡体〕
この発明のスチレン系樹脂発泡体は、主に板状に形成されるものである。
その物性値としては、前述したJIS A9511-1995において規定された、2種a、bないし3種a、bに分類される押出法ポリスチレンフォーム保温板に求められる断熱性および難燃性を有しているのが好ましい。
【0038】
具体的には、押出発泡後、60日経過した時点での熱伝導率(平均温度20℃)が0.034W/m・K以下で、かつJIS A9511-1995に規定された測定方法Aの燃焼性試験における消炎時間の平均値が3秒以下であるのが好ましい。
なお、熱伝導率は小さければ小さいほど好ましく、その下限値は特に限定されないが、60日経過した時点での熱伝導率を0.027W/m・K以下にしようとすると炭化水素を多く使用する必要があり、その結果、難燃性が悪化するおそれがある。
【0039】
なおこの発明では、日本工業規格JIS A1412-1994「熱絶縁材の熱伝導率及び熱抵抗の測定方法」において規定された平板熱流計法によって測定した熱流量と、そのときの、試験片の上下面の温度差とから求めた値をもって、発泡体の熱伝導率とする。測定方法の詳細は後述する。
発泡体の板の厚みは25mm以上、110mm未満である必要がある。板の厚みが25mm未満のものは製造が容易でない上、上述した断熱性を確保することができない。また厚みが110mm以上では、気泡がVDにかなり立った形状となって、VDの気泡数がさほど増加しないため、気泡膜での熱の遮断回数を多くして同方向の断熱性を向上する効果が得られない。
【0040】
なお板の厚みは、これらの特性の兼ね合いを考慮して、できるだけ断熱性に優れた発泡体を得るためには、上記の範囲内でも特に80〜100mmであるのが好ましい。
〈スチレン系樹脂〉
上記発泡体を形成するスチレン系樹脂としては、当該分野で従来公知の、種々のスチレン系の樹脂が、いずれも使用可能である。
【0041】
かかるスチレン系樹脂としては、例えばスチレン、メチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ジメチルスチレン、パラメチルスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレンの単独重合体または共重合体などが挙げられる。
また、これらスチレン系単量体と、他のビニルモノマーとの共重合体なども使用可能である。他のビニルモノマーとしては、例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、無水マレイン酸、アクリルアミドなどが挙げられる。
【0042】
またスチレン系樹脂が主成分であれば、他の樹脂を添加、混合した混合樹脂も使用可能である。混合樹脂としては、例えば発泡体の耐衝撃性などを向上するために、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、エチレン−プロピレン−非共役ジエン三元共重合体などのジエン系のゴム状重合体を添加したゴム変性スチレン系樹脂、いわゆるハイインパクトポリスチレンなどが挙げられる。
スチレン系樹脂の物性値は特に限定されない。しかし、従来と同じ設備を使用して、従来同様の押出条件で、良好な発泡体を製造するためには、前述したようにスチレン系樹脂のMFRが4〜10g/10minで、かつせん断速度200s-1時のダイスウェル比が1.8以上であるのが好ましい。
【0043】
〈発泡剤〉
発泡剤としては、これも前記のように炭化水素と塩化アルキルとが併用される。
このうち炭化水素としては、例えばプロパン、ブタン〔n−ブタン、i−ブタン、あるいは両者の混合物(混合ブタン)など〕、ペンタン、イソペンタン、へキサン、イソヘキサン、ヘプタン、イソヘプタン等の、炭素数3〜8程度の炭化水素があげられる。中でもプロパン、ブタン、ペンタン等が好適に使用され、特にブタンが好適に使用される。
【0044】
また塩化アルキルとしては、塩化メチルおよび塩化エチルが挙げられ、特に塩化メチルが好適に使用される。
またこの発明においては、前述した炭化水素と塩化アルキルとの併用による効果を阻害しない範囲で、他の発泡剤を加えることもできる。
他の発泡剤としては、例えば二酸化炭素、窒素、水、アルゴン、ヘリウム等の無機ガス、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル等のエーテル類、メタノール、エタノール等のアルコール類、ジメチルケトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等のケトン類などが挙げられる。
【0045】
上記各成分を含む発泡剤の組成は特に限定されないが、炭化水素の残ガス量を前記の範囲内とするためには、使用する発泡剤の総量中、炭化水素が20〜40重量%、塩化メチルが80〜60重量%であるのが好ましい。
〈添加剤〉
この発明の発泡体には、従来公知の種々の添加剤を含有させてもよい。
添加剤としては、例えば気泡核剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、着色剤、滑剤、難燃剤、帯電防止剤等が挙げられる。このうち気泡核剤としては、例えばタルク、シリカ等の無機粉未が好ましい。
【0046】
添加剤の配合量は適宜、設定される。
〔発泡体の製造方法〕
上記各成分を用いて、この発明の発泡体を製造する製造方法としては、前記のように押出発泡が採用される。中でも、前記のようにメルトマスフローレート(MFR)が4〜10g/10minで、かつせん断速度200s-1時のダイスウェル比が1.8以上であるスチレン系樹脂を用いて押出発泡させる、この発明の製造方法によって製造するのが好ましい。この場合、先にも述べたように従来と同じ設備を使用し、なおかつ従来同様の押出発泡の条件などを維持して、樹脂を上記の樹脂に替えるだけで、フロンを使用したのと同等の高い断熱性、難燃性を有するこの発明の発泡体を製造することができる。
【0047】
押出発泡においては、まず上記スチレン系樹脂を、必要に応じて添加剤とともに押出機に供給して溶融混練する。次に、溶融混練した樹脂に発泡剤を加えてさらに溶融混練する。そして、発泡に適した温度に調節したのち、金型の口金を通して板状に押出発泡させることで、この発明の発泡体が製造される。
樹脂の吐出量などの、押出発泡の条件は、上記のように従来と同様に設定される。
【0048】
金型の口金から押出発泡させた発泡体の厚みを前述した所定の範囲に調整するには、押出直後の発泡体を、2枚の板を所定の間隔に配置するなどした成形装置を通して、成形と同時に冷却する方法が、好適に採用される。
【0049】
【実施例】
以下にこの発明を、実施例、比較例に基づいて説明する。
なお実施例、比較例で使用したスチレン系樹脂のMFRは、前記のようにJIS K7210-1999に所載の試験方法に則って、下記のようにして測定した。
〈MFRの測定〉
測定装置として、同規格に準拠する押出形プラストメータ(キャピラリーレオメータ)を用いた。そして、試験温度θ=200℃、公称荷重(組合せ)Mnom=5.00kgの条件でスチレン系樹脂を押し出した際に、ピストンが移動した距離と時間とからMFRを求めた。
【0050】
またスチレン系樹脂の、せん断速度200s-1時のダイスウェル比は、これも前記のように、JIS K7199-1999に所載の試験方法に則って、下記のようにして測定した。
〈ダイスウェル比の測定〉
測定装置としては、同規格に準拠した、キャピラリーダイ付き押出レオメータ〔東洋精機製作所製のキャピログラフPMD−C〕を使用した。またキャピラリーダイとしては、内径DC=1.0mm、長さL=10mm、流入角度90°のものを使用した。測定条件は、試験温度θ=200℃、予熱時間5分間、押出速度1.5〜500mm/min(せん断速度1.8〜6080s-1)とした。
【0051】
測定は、押出速度を上記範囲内の一定値に維持しながら樹脂をキャピラリーダイの先端から押し出して押出ストランドの直径DS(mm)を計測する操作を、押出速度を数段階に変化させながら繰り返し行った。そして、押出ストランドの直径DSの各計測値と、キャピラリーダイの内径DC(=1.0mm)とから、式(3):
ダイスウェル比=DS/DC (3)
によって求めた樹脂のダイスウェル比を、押出速度ごとにプロットしてグラフを作成し、このグラフから、せん断速度200s-1時のダイスウェル比を求めた。
【0052】
次に実施例、比較例で製造した発泡体の平均気泡径φAV、および比φVD/φAV算出の元になる各方向の気泡径φMD、φTDおよびφVDは、ASTMD2842−69「Standard Method of Test for WATER ABSORPTION OF RIGID CELLULAR PLASTICS」に所載の試験方法に則って、下記のようにして測定した。
〈気泡径の測定〉
まず発泡体をMD(押出流れ方向)、およびTD(板の幅方向)に沿ってカットし、それぞれのカット面を走査型電子顕微鏡〔日本電子(株)製のJSM T−300〕を用いて撮影した。
【0053】
次いで、撮影した写真における、上記MD、TDおよびVD(板の厚み方向)の各方向に沿う一直線(60mm)上にかかる気泡数から、気泡の平均弦長(t)を求めた。
平均弦長(t)=60/(気泡数×写真の倍率)
そして次式により、上記3方向の気泡径(d=φMD、φTDまたはφVD)を算出した。
【0054】
d=t/0.616
また実施例、比較例で製造した発泡体の、押出発泡後、60日経過した時点での熱伝導率(平均温度20℃)は、前記のようにJIS A1412-1994に所載の試験方法に則って、下記のようにして測定した。
〈熱伝導率の測定〉
押出発泡後、60日経過した発泡体を、その表皮部分を除いて、VDに沿う厚みが25mm、MDに沿う長さ、およびTDに沿う幅がともに200mmとなるようにカットして試験片を作製した。
【0055】
次にこの試験片を、先に述べた平板熱流計法に準拠した二枚平板熱流計の、二枚の平板間にセットした。
そして一方の平板を高熱板、他方の平板を低熱板として測定した、試験片を流れる熱流量と、そのときの、試験片の上下面の温度差とから、平均温度20℃での発泡体の熱伝導率(0.034W/m・K)を求めた。
また実施例、比較例で製造した発泡体の難燃性は、前記のようにJIS A9511-1995に規定された測定方法Aの燃焼性試験に則って、下記のようにして測定した消炎時間の平均値でもって評価した。
【0056】
〈難燃性の評価〉
押出発泡後、1週間経過した発泡体を、その表皮部分を除いて、VDに沿う厚みが10mm、MDに沿う長さが200mm、TDに沿う幅が25mmとなるようにカットしたのち、着火限指示線および燃焼限界指示線をつけた試験片を5個ずつ作製した。
次に、個々の試験片を固定した状態で、火源用ろうそくの炎を試験片の先端に当て、約5秒間かけて、ろうそくを等速で着火限界指示線まで水平に移動させたのち、手早く後退させて、その瞬間から炎が消えるまでの時間(消炎時間)を計測した。
【0057】
そしてこの操作を5個の試験片の全てについて繰り返し行ったのち、5個の試験片の、消炎時間の平均値を求めて、その長短で難燃性を評価した。
なおJIS A9511-1995に規定された燃焼性の基準をクリアするには、前記のように消炎時間の平均値が3秒以下でなければならない。
また実施例、比較例で製造した発泡体の、炭化水素の残ガス量は、まず下記のようにして測定した。
【0058】
〈炭化水素の残ガス量測定I〉
押出発泡後、1週間経過した発泡体を、密閉容器中で圧縮して気泡中のガスを排出させ、排出ガスをガスクロマトグラフ法で定量分析して、発泡体全量に対する炭化水素の残ガス量を求めた。
なお上記の測定方法では、発泡体を圧縮する際の圧縮量、温度などの測定条件のずれによって、測定値がおよそ7〜10%程度ばらつくおそれがあった。そこで上記測定Iでは正確を期するために、各実施例、比較例ごとに測定条件をできるだけ一定に維持しつつ10回の測定を行って得た測定値の平均値を求めて残ガス量としていたが、さらに正確を期するために、次に下記の測定IIを行って、上記測定Iの結果が正確か否かを確認した。
【0059】
〈炭化水素の残ガス量測定II〉
測定装置として、熱分解炉〔(株)島津製作所製のPYR−1A〕を備えたガスクロマトグラフ装置〔(株)島津製作所製のGC−14B〕を用いた。またカラムとしては、ポラパック−Q〔Waters社製、(80/100)内径3mmφ×長さ1.5m〕を使用し、検出器としては熱伝導度型のものを用いた。
そして押出発泡後、1週間経過した発泡体を5mm×5mm×35mmの直方体状にカットして秤量したのち、上記測定装置の熱分解炉に入れ、下記の測定条件で、発泡体を熱分解させた熱分解ガスを分析して、その測定結果から炭化水素の残ガス量を求めた。なお測定は、各実施例、比較例ごとに3回ずつ行い、各回の測定値の平均値を求めて残ガス量とした。
【0060】
(測定条件)
熱分解炉温度:150℃
カラム温度:100℃
注入温度:120℃
キャリヤガス:ヘリウム
キャリヤガス流量:1ml/min
表2に見るように、上記両測定の結果は、小数点以下第一位までに丸めた値が一致しており、最初に行った測定Iの結果が正確であることが、測定IIによって確認された。
【0061】
さらに実施例、比較例で製造した発泡体の密度は、発泡体を所定の長さにカットしたサンプルの体積と重量とから求めた。また後述する成形装置の、2枚の板の間隔の設定値をもって発泡体の厚みとした。
実施例1
スチレン系樹脂として、MFRが5.6g/10minで、かつせん断速度200s-1時のダイスウェル比が1.95、せん断速度600s-1時のダイスウェル比が2.18であるポリスチレンを用いた。
【0062】
そしてこのポリスチレン100重量部に、顔料0.1重量部、気泡核剤としてのタルク2.0重量部、難燃剤としてのヘキサブロモシクロドデカン2.5重量部を加えてドライブレンドした。
次にこの混合物を、第1および第2の2台の押出機を有するタンデム押出機(口径:第1=φ200mm、第2=φ300mm)のホッパーに供給して、当該ホッパーに接続された第1押出機内で溶融、混合しつつ、発泡剤としてブタン(n−ブタン60重量%とi−ブタン40重量%との混合物)と塩化メチルとを圧入した。ブタンの圧入量は、ポリスチレン100重量部あたり3.0重量部、塩化メチルの圧入量は、ポリスチレン100重量部あたり7.5重量部とした。
【0063】
次に、さらに溶融、混合した溶融混合物を、第1押出機から第2押出機に連続的に供給し、当該第2押出機内で発泡に適した温度まで均一に冷却したのち、第2押出機の先端に接続した金型の口金(口金のリップ厚み3.5mm、リップ幅340mm)を通して板状に押出発泡させた。押出発泡の条件は、金型口金の圧力5.4MPa、樹脂温度110℃、1時間あたりの樹脂の吐出量1300kg/時とした。
【0064】
そして口金を通して押出発泡させた発泡体を、口金の先端に取り付けた、2枚の板を100mm間隔に配置した成形装置の、上記2枚の板の間を通して、成形と同時に冷却することで、厚み100mm、幅950mmの板状発泡体を製造した。
得られた発泡体は、密度が28.4kg/cm3、平均気泡径φAVが0.30mm、比φVD/φAVが1.1と良好な発泡性を示した。また押出発泡後、60日経過した時点での熱伝導率(平均温度20℃)が0.0335W/m・Kで断熱性に優れる上、ブタンの残ガス量が発泡体全量の2.5重量%で、かつ消炎時間の平均値が1.1秒であって難燃性にも優れていた。
【0065】
実施例2
ブタンの圧入量を、ポリスチレン100重量部あたり3.5重量部としたこと以外は実施例1と同様にして、厚み100mm、幅950mmの板状発泡体を製造した。
得られた発泡体は、密度が28.0kg/cm3、平均気泡径φAVが0.30mm、比φVD/φAVが1.1と良好な発泡性を示した。また押出発泡後、60日経過した時点での熱伝導率(平均温度20℃)が0.0325W/m・Kで断熱性に優れる上、ブタンの残ガス量が発泡体全量の3.3重量%で、かつ消炎時間の平均値が2.8秒であって難燃性にも優れていた。
【0066】
実施例3
塩化メチルに代えて、ポリスチレン100重量部あたり8.0重量部の塩化エチルを圧入したこと以外は実施例1と同様にして、厚み100mm、幅950mmの板状発泡体を製造した。
得られた発泡体は、密度が28.3kg/cm3、平均気泡径φAVが0.35mm、比φVD/φAVが1.1と良好な発泡性を示した。また押出発泡後、60日経過した時点での熱伝導率(平均温度20℃)が0.0339W/m・Kで断熱性に優れる上、ブタンの残ガス量が発泡体全量の2.5重量%で、かつ消炎時間の平均値が1.8秒であって難燃性にも優れていた。
【0067】
実施例4
成形装置の、2枚の板の間隔を80mmにしたこと以外は実施例1と同様にして、厚み80mm、幅950mmの板状発泡体を製造した。
得られた発泡体は、密度が29.1kg/cm3、平均気泡径φAVが0.34mm、比φVD/φAVが0.9と良好な発泡性を示した。また押出発泡後、60日経過した時点での熱伝導率(平均温度20℃)が0.0315W/m・Kで断熱性に優れる上、ブタンの残ガス量が発泡体全量の2.5重量%で、かつ消炎時間の平均値が1.1秒であって難燃性にも優れていた。
【0068】
比較例1
ブタンの圧入量を、ポリスチレン100重量部あたり4.5重量部、塩化メチルの圧入量を、ポリスチレン100重量部あたり6.5重量部としたこと以外は実施例1と同様にして、厚み100mm、幅950mmの板状発泡体を製造した。
得られた発泡体は、密度が28.0kg/cm3、平均気泡径φAVが0.28mm、比φVD/φAVが1.1と良好な発泡性を示した。また押出発泡後、60日経過した時点での熱伝導率(平均温度20℃)が0.0320W/m・Kで断熱性に優れていた。しかしブタンの残ガス量が発泡体全量の4.0重量%で、かつ消炎時間の平均値が5.6秒であって難燃性に問題があった。
【0069】
比較例2
スチレン系樹脂として、MFRが7.0g/10minで、かつせん断速度200s-1時のダイスウェル比が1.60であるポリスチレン〔新日鐵化学(株)製の商品名エスチレンG−17〕を用いるとともに、塩化メチルの圧入量を、ポリスチレン100重量部あたり7.0重量部としたこと以外は実施例1と同様にして、厚み100mm、幅950mmの板状発泡体を製造した。
【0070】
得られた発泡体は、密度が28.4kg/cm3、平均気泡径φAVが0.30mmであったが、比φVD/φAVが1.2であって、気泡がVDに立ち上がった状態となっていた。そして押出発泡後、60日経過した時点での熱伝導率(平均温度20℃)が0.0345W/m・Kで断熱性が不十分であった。なおブタンの残ガス量は発泡体全量の2.5重量%で、かつ消炎時間の平均値が1.1秒であって難燃性は良好であった。
【0071】
比較例3
成形装置の、2枚の板の間隔を110mmにするとともに、塩化メチルの圧入量を、ポリスチレン100重量部あたり7.0重量部としたこと以外は実施例1と同様にして、厚み110mm、幅950mmの板状発泡体を製造した。
得られた発泡体は、密度が28.0kg/cm3、平均気泡径φAVが0.34mmであったが、比φVD/φAVが1.3であって、気泡がVDに立ち上がった状態となっていた。そして押出発泡後、60日経過した時点での熱伝導率(平均温度20℃)が0.0360W/m・Kで断熱性が不十分であった。なおブタンの残ガス量は発泡体全量の2.5重量%で、かつ消炎時間の平均値が1.1秒であって難燃性は良好であった。
【0072】
比較例4
気泡核剤としてのタルクの量を1.0重量部に減らしたこと以外は実施例1と同様にして、厚み100mm、幅950mmの板状発泡体を製造した。
得られた発泡体は、密度が28.4kg/cm3、比φVD/φAVが0.9であったが、平均気泡径φAVが0.52mmであって、気泡が大きすぎる状態となっていた。そして押出発泡後、60日経過した時点での熱伝導率(平均温度20℃)が0.0365W/m・Kで断熱性が不十分であった。なおブタンの残ガス量は発泡体全量の2.5重量%で、かつ消炎時間の平均値が1.1秒であって難燃性は良好であった。
【0073】
以上の結果を表1、2にまとめた。
【0074】
【表1】
【0075】
【表2】
【0076】
【発明の効果】
以上、詳述したようにこの発明によれば、発泡剤としてフロンを使用せずに、しかもフロンを使用したのと同等の高い断熱性、難燃性を有するスチレン系樹脂発泡体と、その効率的な製造方法とを提供することが可能となる。
Claims (4)
- スチレン系樹脂を、少なくとも炭化水素と塩化アルキルとを含む発泡剤を用いて、板状に押出発泡して形成されたスチレン系樹脂発泡体であって、厚みが25mm以上、110mm未満、式(1):
φAV=(φMD+φTD+φVD)/3 (1)
〔式中、φMDは押出流れ方向の気泡径、φTDは板の幅方向の気泡径、φVDは板の厚み方向の気泡径を示す。〕
で求められる平均気泡径φAVが0.10〜0.50mmの範囲内、φVDとφAVとの比φVD/φAVが式(2):
0.8≦φVD/φAV<1.2 (2)
の範囲内で、かつ炭化水素の残ガス量が、発泡体全量の3.5重量%以下であることを特徴とするスチレン系樹脂発泡体。 - メルトマスフローレート(MFR)が4〜10g/10minで、かつせん断速度200s-1時のダイスウェル比が1.8以上であるスチレン系樹脂を用いて形成された請求項1記載のスチレン系樹脂発泡体。
- 押出発泡後、60日経過した時点での熱伝導率(平均温度20℃)が0.034W/m・K以下で、かつJIS A9511-1995に規定された測定方法Aの燃焼性試験における消炎時間の平均値が3秒以下である請求項1記載のスチレン系樹脂発泡体。
- 請求項1記載のスチレン系樹脂発泡体を製造する方法であって、メルトマスフローレート(MFR)が4〜10g/10minで、かつせん断速度200s-1時のダイスウェル比が1.8以上であるスチレン系樹脂を、少なくとも炭化水素と塩化アルキルとを含む発泡剤を用いて、板状に押出発泡することを特徴とするスチレン系樹脂発泡体の製造方法。
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