JP3719548B2 - 複合アルカリ金属塩、その製造方法及び洗剤用ビルダー - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、複合アルカリ金属塩、その製造方法及び合成洗剤用ビルダーに関するものである。更に言えば、結晶質炭酸アルカリと実質的に非晶質性の珪酸アルカリとの複合アルカリ金属塩、その製造方法及び該アルカリ金属塩を用いた洗剤用ビルダーに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
水軟化作用を有する合成洗剤用ビルダーとして、トリポリリン酸ナトリウムに代わり、これまで合成ゼオライト(ゼオライトA)が専ら用いられてきた。
近時、ゼオライトAに代替できる洗剤用ビルダーとして結晶性層状珪酸ナトリウム、主として二珪酸ナトリウム(δ−Na2Si2O5)が開発され、実用化に至ってきた。二珪酸ナトリウムの特徴は、ゼオライトAが不溶性粒子であるのに対し、洗濯時間内に溶解しうる可溶性粒子であると共にMg2+交換能が高いことにあると言われている。
【0003】
層状珪酸ナトリウム(例えばNa2Si2O5)は理論的にはゼオライトA以上のカチオン交換能を有することから、これを配合した洗剤の使用において、高い硬水軟化能力を期待されているが、実際には水溶性のためゼオライトと同等以上のイオン交換能を発揮することはてきない。また、粒子が水溶性であることは、洗濯物への粒子付着がない点では利点であるけれども、上記の問題もさることながら、吸湿性が強いということから、粉末洗剤の固結を起こし、洗濯水への分散が悪くなる欠点もある。
【0004】
これらの欠点を解決するためにCaやMgを珪酸アルカリに導入して変性する方法が提案されている(特開平7−330325号公報)。しかし、この方法では耐吸湿性は改善されるけれども、イオン交換能の改善にはさして影響がなく、硬水中のCa2+やMg2+を除去するビルダー中にこれらを予め導入する考え方は矛盾があり、本質的な解決に至っていない。
【0005】
二珪酸ナトリウムの如き結晶性層状珪酸ナトリウムを少なくとも1種の酸と9〜13のpHで撹拌下に反応させた生成物に過酸化水素溶液を添加して洗剤用ビルダーを製造する方法が知られている(特開平6−183723号公報、特開平6−183724号公報)。この方法では酸としてCO2ガスを用いた場合、カネマイト(NaHSi2O5・3H2O)と過炭酸ソーダ(Na2CO3・1.5H2O2)が生成するが、カネマイト結晶はイオン交換能が小さく、ゼオライトA以上の水軟化能力は期待できない。
【0006】
特開平4−275400号公報には、炭酸ナトリウムの如き粒状担体にSiO2/M2Oモル比が1.6〜3.5の珪酸アルカリ水溶液を吸着及び/または吸収させた複合アルカリ金属塩を洗剤用ビルダーとすることを開示している。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
最近、合成洗剤はコンパクト化が急速に展開されている。この理由は、汚染衣料に付着した脂肪分やタンパク質成分の強力な分解酵素の開発や活性剤ビルダーやその配合に係わる技術開発の成果があるが、その背景に物流の合理化及び消費者からの要請が大きい。
【0008】
コンパクト化が進行すればするほど使用量が少量で洗浄力が高いことが不可欠であることから、各成分の高性能化及び高機能化は必然である。
ビルダーについても、高い硬水軟化能を要求されるが、新しく使用されるに至った二珪酸ナトリウムは必ずしもゼオライトAに対し顕著に凌駕するものではない。
特開平4−275400号公報に係る複合アルカリ金属塩は本発明とは異なり、物性上及び機能上も改善すべき点がある。
【0009】
本発明者らは叙上の諸問題に鑑み、合成洗剤のコンパクト化の要請に追随できるビルダーにつき長年研究を重ねてきた。
【0010】
即ち、本発明の目的は、高い硬水軟化能を有し、且つ耐吸湿性に優れた合成洗剤用のビルダーとして有用な複合アルカリ金属塩及びその工業的に有利に生産できる新規な製造方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明が提供しようとする複合アルカリ金属塩は、MHCO 3 (Mは、Na、KまたはLiを表す)で表される結晶性炭酸アルカリ金属塩の粒子と、SiO 2 :M 2 Oモル比=1.7〜2.5:1をもつ結晶性層状珪酸アルカリを炭酸化して層状結晶構造を
結晶化度(S:%)=(I 2 /I 1 )×100
(ただし、I 1 は結晶性層状珪酸アルカリの最高X線回折強度、I 2 は結晶性層状珪酸アルカリの炭酸化後の最高X線回折強度を言う)で示される結晶化度が50%以下へ非晶質化した珪酸アルカリ金属塩の粒子よりなる複合集合体であって、該複合集合体はSiO2:M2 O:CO2モル比=1.7〜2.5:1:0.25〜2.0をもち、且つ吸湿率が5重量%以下であることを構成上の特徴とする。
【0012】
また、本発明が提供しようとする複合アルカリ金属塩の製造方法は、結晶性層状珪酸アルカリに水分の存在下で炭酸ガスを導入して炭酸アルカリの結晶粒子を析出すると共に珪酸アルカリの結晶性層状構造を不規則化して
結晶化度(S:%)=(I 2 /I 1 )×100
(ただし、I 1 は結晶性層状珪酸アルカリの最高X線回折強度、I 2 は結晶性層状珪酸アルカリの炭酸化後の最高X線回折強度を言う)で示される結晶化度が50%以下の非晶質粒子となるまで炭酸化反応を行うことを構成上の特徴とする。
【0013】
更に、本発明が提供しようとする合成洗剤用ビルダーは、上記複合アルカリ金属塩を有効成分として構成されたことを特徴とする。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳述する。
本発明に係る複合アルカリ金属塩は上記したように炭酸アルカリと珪酸アルカリとの複合塩の粉体である。この粉体の粉末法X線回折分析によれば、炭酸アルカリは結晶質粒子であり、多くの場合、炭酸水素アルカリの結晶性粒子として確認される。
【0015】
一方、珪酸アルカリは非晶質粒子である。ここに非晶質粒子というのは、
結晶化度(S:%)=(I2/I1)×100
(ただし、I1は結晶性層状珪酸アルカリの最高X線回折強度、I2は結晶性層状珪酸アルカリの炭酸化後の最高X線回折強度を言う)で示される結晶化度が50%以下、好ましくは30%以下の非晶質性を意味する。
【0016】
次に、本発明に係る複合アルカリ金属塩は、従来公知のような炭酸アルカリと水ガラスから得られる非晶質珪酸アルカリとの単なる混合物によるものではなく、結晶性層状珪酸アルカリを炭酸化して複合集合体に転換されたものであることが、ひとつの大きな特徴となっている。
【0017】
従って、この特徴の故に、後記のようにカチオン交換能に著しく優れていると共に、耐吸湿性の物性をもつ粒子を構成することができる。
【0018】
かかる複合集合体のSiO2:M2O(Mは上述と同意義をもつ):CO2のモル比は、多くの場合、(1.7〜2.5):1:(0.25〜2.0)の範囲内にあり、好ましくは(1.8〜2.2):1:(0.5〜2.0)の範囲内にある。また、炭酸アルカリと珪酸アルカリの量的指標となるSiO2/CO2のモル比は、多くの場合1.0〜10の範囲内にあり、好ましくは1.0〜3.0の範囲内にある。この理由は10より大きいと非晶質の珪酸アルカリを構成できず、そのためカチオン交換能や耐吸湿性が不充分で、複合アルカリ金属塩としての特性に利点が得られないからであり、一方、1.0より小さくすることは工業的に難しく、且つ物理的改善にも飽和するからである。
【0019】
本発明に係る複合アルカリ金属塩は、前記のような構成上の特徴をもつが、それ故に、後記で定義されたカチオン交換能(CEC)が少なくとも200mg−CaO/g、好ましくは230mg−CaO/g、及び同じく後記で定義された吸湿率が5重量%以下、好ましくは3重量%以下と顕著な機能を有する。
【0020】
ゼオライトAやこれに代わる結晶性二珪酸ナトリウム(Na2Si2O5)のCECは150mg−CaO/g程度であり、二珪酸ナトリウムの耐吸湿性のなさに比較すると、本発明に係る複合アルカリ金属塩のもつ上記の顕著な機能は合成洗剤用ビルダーとして好適なものとして扱われるであろう。この複合アルカリ金属塩を合成洗剤用ビルダーとして使用する場合、それ自体は勿論のことであるが、必要に応じてゼオライトA、二珪酸ナトリウム(δ−Na2Si2O5)、トリポリリン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、各種アミノ酸ナトリウム、ホスホン酸ナトリウム類、炭酸ナトリウム、過炭酸ナトリウム、過ホウ酸ナトリウム等から選ばれた1種または2種以上の他の公知のビルダー成分と併用することができる。
【0021】
本発明に係る複合アルカリ金属塩の製造方法は、前記したように結晶性層状珪酸アルカリに水分の存在下で炭酸ガスを導入して炭酸アルカリの結晶粒子を析出すると共に珪酸アルカリの結晶性層状構造を不規則化して
結晶化度(S:%)=(I 2 /I 1 )×100
(ただし、I 1 は結晶性層状珪酸アルカリの最高X線回折強度、I 2 は結晶性層状珪酸アルカリの炭酸化後の最高X線回折強度を言う)で示される結晶化度が50%以下の非晶質粒子となるまで炭酸化反応を行わせることを特徴とするものである。
【0022】
出発原料として用いる結晶性層状珪酸アルカリはそれ自体がカチオン交換能の大きいものであれば、特に限定されるものではないが、多くの場合SiO2/M2O(Mは上述と同意義をもつ)モル比が1.7〜2.5の範囲にあり、特に、二珪酸ナトリウム(δ−Na2SiO2O5)と二珪酸カリウム(K2Si2O5)が好ましい。
【0023】
かかる結晶性珪酸アルカリは、必要に応じ、ホウ素やアルミニウム等の成分で結晶格子の一部を置換して変性されたものであっても差し支えない。なお、塩基度を調整するため、必要に応じ、苛性アルカリや水ガラスから誘導される他の非晶質珪酸アルカリや、メタ珪酸アルカリ、オルソ珪酸アルカリのごとき他の結晶質珪酸アルカリを適宜補助原料として使用することができる。尤も、このような補助原料は主原料たる層状珪酸アルカリの製造工程の中で扱うことができ、また、その方が好ましい。
【0024】
結晶性層状珪酸アルカリ粉末の製造方法は公知であり、本発明における主原料もこの公知の方法で容易に得ることができるが、一例を挙げれば次の方法が採られる:
即ち、SiO2/M2Oモル比が2.1〜4.2、好ましくは2.3〜3.7にあり、SiO2含量が23〜38重量%の珪酸アルカリ水溶液、または前記モル比で、SiO2含量が45〜63重量%の粉末珪酸アルカリと、必要に応じ前記のアルカリ剤や変性剤である補助材料を混合し、混合物を100〜350℃の範囲で乾燥する。
次いで、この乾燥物をNa塩にあっては650〜800℃、K塩では500〜650℃、混合塩では450〜750℃の温度で焼成処理を施して結晶化させる。焼成時間は0.1〜3時間の範囲がよい。
得られる結晶粉末は層状構造を有する珪酸アルカリで、本発明における好ましい出発原料となる。
【0025】
本発明にかかる結晶性層状珪酸アルカリに水分の存在下で炭酸ガスを導入して炭酸化反応を行わせる。このような炭酸化は、5〜50kPaの水蒸気を含有する炭酸ガスで行うことが好ましい。この理由は、水蒸気圧が上記範囲より高くなりすぎると、例えば二珪酸アルカリを炭酸化する場合、次式(1)の反応が進行し、生成したアルカリ溶液に珪酸アルカリが溶解し、元の水ガラスに戻ってしまう恐れがあり好ましくない。
【0026】
【化1】
M2Si2O5+nH2O=MHSi2O5+MOH・(n−1)H2O・・(1)
【0027】
逆に、炭酸化における水蒸気圧が低すぎると、反応が進まず、時間がかかり過ぎ工業的に好ましくない。
【0028】
このような炭酸化反応を実施する態様としては、例えば所望の加温水に炭酸ガスを通過させて行う方法が均一な炭酸化が進行するので好ましい。
【0029】
本発明における炭酸化は、層状構造をもつ結晶性珪酸アルカリを実質的に非晶質化するまで行うことが必要である。このことは、多くの場合、含水炭酸ガスが実質的な吸収飽和するまでは炭酸化を続けることによって、定常的に安定した組成の炭酸化を行うことができる。
【0030】
かくして結晶性珪酸アルカリは規則的層状構造が不規則になって、実質的に非晶質化すると共に、炭酸アルカリの結晶粒子、好ましくはMHCO3の炭酸水素アルカリの結晶が生成して複合アルカリ金属塩に転換する。このような複合アルカリ金属塩は前記した物理化学的な特性を有し、合成洗剤用ビルダーとして最適である。
【0031】
本発明に係る複合アルカリ金属塩は、下記の理論的根拠に基づいて、Na2Si2O5のごとき層状結晶構造を有する珪酸アルカリを水の存在下で炭酸化して得られるものである。即ち、ゼオライトAより硬水軟化能が大きいとされる二珪酸ナトリウムNa2Si2O5(分子量182)は2個のNaが1個のCaとイオン交換する。従って、理論交換容量はCaO(分子量56)で約300mg/gを有するが、実際には溶解性のために、この値の半分程度しか能力を示さない。Na2Si2O5を水分の存在下で炭酸化すると次式(2)に沿って得られた反応生成物(生成物分子量244)は2個のCaを捕捉でき、その理論固定量は460mg/gとなってNa2Si2O5よりも1.5倍となる。
【化2】
Na2Si2O5+H2O+CO2=NaHSi2O5+NaHCO3 ・・(2)
【0032】
同様に、K2Si2O5の理論交換容量は260mg−CaO/gで、その炭酸化生成物(KHSi2O5+KHCO3)は410mg−CaO/gで、前者の1.6倍のカチオン捕捉能が理論的にあって、硬水軟化能は大きい。
【0033】
その特徴の1つは、Na2Si2O5やK2Si2O5の欠点である水溶性が炭酸化によるアルカリの中和で抑制されて吸湿性がほとんどなくなり、粉体固結性が改善された点にある。第2の特徴は、原体の層状構造が不規則化していることである。
これは粉末法X線回折パターンで確認することができる。本発明の複合結晶体はNaHCO3やKHCO3の回折パターンを有するが、原体の回折パターンやNaHSi2O5やKHSi2O5の回折パターンは全くないか、有っても結晶化度が低いのである。層間での炭酸塩結晶の成長などが珪酸構造を壊しているものと考えられるが、このような不規則化した珪酸構造がイオン交換能の活性化に役立っているものと推測される。
【0034】
第3の特徴は、硬水軟化速さが極めて速いことにある。この原因は炭酸根と硬水成分の反応速度によるものではない。なぜなら炭酸根による場合では、硬水軟化能力の半分が初期に発現した後、珪酸塩の効果が出るという2段階の現象を示すはずである。ところが本発明の複合アルカリ金属塩は多くの場合、瞬時にして全部の硬水軟化能力を発現する。このことから推定するに、上述の原体の層状構造の不規則化はイオン交換に有利になるような新しい構造、例えば層間距離の拡大された構造、を意味していると推定される。
【0035】
また、遊離のアルカリ成分も中和された適度の塩基度を有することから、界面活性剤の機能をより好ましく発揮することが可能であることから、合成洗剤用のビルダーとして好適であり、洗剤のコンパクト化に追随できるビルダーとして推奨できるものである。
【0036】
【実施例】
以下に、本発明を具体的に説明するために実施例及び比較例を挙げて説明するが、本発明は以下の実施例等に限定されるものではない。なお、本実施例における測定値は次に示す方法により測定した。
【0037】
(1−a)カチオン交換能(CEC)
試料0.1gを精秤し、NH4Cl緩衝液2mlを添加した塩化カルシウム水溶液(濃度はCaCO3として500ppmであり、pHは約10.5)100ml中に加え、25℃で10分間撹拌した後、孔サイズ0.2μmのメンブレンフィルター(アドバンチック社、ニトロセルロース製)を用いて濾過を行い、その濾液10ml中に含まれるCa量をEDTA滴定により測定した。その値より試料のカルシウムイオン交換容量(mg−CaO/g)を求めた。なお、NH4Cl緩衝液は試薬特級のNH4Cl70gと試薬特級のアンモニア水570mlを純水に溶解し、1リットルに定容して調製した。
【0038】
(1−b)カチオン交換速さ
試料0.25gを精秤し、上記と同じNH4Cl緩衝液2mlを添加した塩化カルシウム水溶液(濃度はCaCO3として500ppm)500ml中に加え、25℃でCa2+イオン電極を使用して、経時的にCa2+イオン濃度の変化を測定した。その値より試料のカルシウムイオン交換量(mg−CaO/g)の経時変化を算出した。測定装置は堀場製作所製PH/ION METER F23型を使用した。
【0039】
(2)吸湿性
試料1.0gを100mlビーカーに精秤し、30℃、相対湿度80%の恒温恒湿室内に静置保存する。5時間保存後の重量増加量を精秤し、保存粉体の重量増加率(%)を求めた。
【0040】
実施例1
3号珪酸ソーダ[日本化学工業(株)製:SiO2=29.0%、Na2O=9.5%、SiO2/Na2Oモル比=3.15]10kgを容器に仕込み、撹拌下にフレーク苛性ソーダ[旭硝子(株)製:NaOH=99.5%]740gを投入し、80℃に加熱して溶解した。この珪酸ソーダをテフロン製バットに入れ、熱風温度300℃の乾燥機で乾燥し、1mm以下に粉砕し、粉末状の珪酸ソーダとした。次いで、得られた粉末状の珪酸ソーダをニッケル製容器に採り、電気炉を用いて750℃の温度で3時間焼成し結晶化を行った。得られた結晶性層状珪酸ソーダを次に1mm以下に粉砕した。この結晶性層状珪酸ソーダのSiO2/Na2Oモル比は1.97であり、この結晶性層状珪酸ソーダの粉末法X線回折パターンを測定したところ、δ−Na2Si2O5の回折パターンであることが確認された。
【0041】
この結晶性層状珪酸ソーダ100gを撹拌機付きの容器に仕込み、撹拌を行い、40℃の温水中を通過させたCO2ガスを容器内に100ml/分で導入した。このときの水蒸気分圧は7kPaであった。珪酸ソーダは135gまで重量増加し、これ以上ガスの導入を続けても重量の変化はなかった。得られた複合アルカリ金属塩の粉末法X線回折パターンは図1に示すように主としてNaHCO3の回折パターンであり、δ−Na2Si2O5の回折パターンは痕跡を示すだけで、珪酸ソーダの層状結晶構造が壊れたことが確認された。また、CECと吸湿重量増加率は表1に示すように優れた値となった。また、化学分析による複合アルカリ金属塩のモル比は、SiO2:Na2O:CO2が1.97:1.0:1.25であった。
【0042】
比較例1
実施例1の中間生成物である結晶性層状珪酸ソーダ(δ−Na2Si2O5)を用いて、CECと吸湿重量増加率を測定し、得られた結果を表1に示す。
【0043】
実施例2
珪酸カリ[日本化学工業(株)製:SiO2=28.96%、K2O=21.75%、SiO2/K2Oモル比=2.09]10kgを容器に仕込み、撹拌下にフレーク苛性カリ[旭硝子(株)製:KOH=99.5%]112gを投入し、80℃に加熱して溶解した。この珪酸カリをスプレードライヤーにて出口熱風温度110℃で乾燥して粉末状の珪酸カリとした。次いで、粉末状の珪酸カリをニッケル製容器に採り、電気炉を用いて650℃の温度で1時間焼成し、結晶化を行った。得られた結晶性層状珪酸カリを次に1mm以下に粉砕した。この結晶性層状珪酸カリのSiO2/K2Oモル比は2.0であり、この結晶性層状珪酸カリの粉末法X線回折パターンを測定したところ、K2Si2O5の回折パターンであることが確認された。
【0044】
この結晶性層状珪酸カリ100gを撹拌機付きの容器に仕込み、撹拌を行い、50℃の温水中を通過させたCO2ガスを容器内に100ml/分で導入した。なお、このときの水蒸気分圧は12kPaであった。珪酸カリは148gまで重量増加し、これ以上ガスの導入を続けても重量変化はなかった。得られた複合アルカリ金属塩の粉末法X線回折パターンは図2に示すように主としてKHCO3の回折パターンであって、K2Si2O5の回折パターンは痕跡を示すだけであった。また、CECと吸湿重量増加率は表1に記載するように優れた値となった。この複合アルカリ金属塩の化学分析によるモル比は、SiO2:K2O:CO2が2.0:1.0:1.5であった。
【0045】
比較例2
実施例2の中間生成物である結晶性層状珪酸カリ(K2Si2O5)を用いて、CECと吸湿重量増加率を測定し、得られた結果を表1に示す。
【0046】
実施例3
1号珪酸ソーダ[日本化学工業(株)製:SiO2=32.0%、Na2O=15.5%、SiO2/Na2Oモル比=2.13]4.53kg及び実施例2で使用した珪酸カリ15.0kgを容器に仕込み、撹拌下にフレーク苛性ソーダ63g及びフレーク苛性カリ168gを投入し、80℃に加熱して溶解した。この珪酸カリ・ソーダをスプレードライヤーにて出口熱風温度110℃で乾燥し粉末状の珪酸カリ・ソーダとした。更に、粉末状の珪酸カリ・ソーダを300℃の送風乾燥機で30分間乾燥し、次いで、粉末状の珪酸カリ・ソーダをニッケル製容器に採り、電気炉を用いて550℃の温度で1時間焼成し、結晶化を行った。得られた結晶性層状珪酸カリ・ソーダを次に1mm以下に粉砕した。この結晶性層状珪酸カリ・ソーダのSiO2/(Na2O+K2O)モル比は2.0であり、カリとソーダのモル比はNa2O/K2Oで0.33であった。粉末法X線回折パターンは図3に示すように明瞭なK2Si2O5の回折パターンと僅かなδ−Na2Si2O5の回折パターンであった。
【0047】
この結晶性層状珪酸カリ・ソーダ100gを撹拌機付きの容器に仕込み、撹拌を行い、50℃の温水中を通過させたCO2ガスを容器内に100ml/分で導入した。なお、このときの水蒸気分圧は12kPaであった。珪酸カリ・ソーダは175gまで重量増加し、これ以上ガスの導入を続けても重量変化はなかった。得られた複合アルカリ金属塩の粉末法X線回折パターンは図4に示すように主としてKHCO3とNaHCO3の回折パターンであり、K2Si2O5の回折パターンは痕跡を示すだけで、珪酸カリ・ソーダの層状結晶構造が壊れたことが確認された。また、CECと吸湿重量増加率は表1に記載するように優れた値となった。この複合アルカリ金属塩の化学分析によるモル比は、SiO2:M2O:CO2=2.0:1.0:1.5であった。
【0048】
比較例3
実施例3の中間生成物である結晶性層状珪酸カリ・ソーダを用いて、CECと吸湿重量増加率を測定し、得られた結果を表1に示す。
【0049】
実施例4
実施例3と同じ1号珪酸ソーダ18.1kg及び実施例2と同じ珪酸カリ5.0kgを容器に仕込み、撹拌下にフレーク苛性ソーダ188g及びフレーク苛性カリ56gを投入し、80℃に加熱して溶解した。この珪酸カリ・ソーダをテフロン製バットに入れ、熱風温度300℃の乾燥機で乾燥し、1mm以下に粉砕し、粉末状の珪酸カリ・ソーダとした。次いで、粉末状の珪酸カリ・ソーダをニッケル製容器に採り、電気炉を用いて670℃の温度で1時間焼成し、結晶化を行った。得られた結晶性層状珪酸カリ・ソーダを次に1mm以下に粉砕した。この結晶性層状珪酸カリ・ソーダのSiO2/(Na2O+K2O)モル比は2.0であり、カリとソーダのモル比はNa2O/K2Oで3.0であった。この結晶性層状珪酸カリ・ソーダの粉末法X線回折パターンを測定したところ、δ−Na2Si2O5とK2Si2O5の回折パターンを示すことが確認された。
【0050】
この結晶性層状珪酸カリ・ソーダ100gを撹拌機付きの容器に仕込み、撹拌を行い、50℃の温水中を通過させたCO2ガスを容器内に100ml/分で導入した。なお、このときの水蒸気分圧は12kPaであった。珪酸カリ・ソーダは171gまで重量増加し、これ以上CO2ガスの導入を続けても重量変化はなかった。得られた複合アルカリ金属塩の粉末法X線回折パターンは主としてKHCO3とNaHCO3の回折パターンであり、Na2Si2O5の回折パターンは痕跡を示すだけで、層状結晶構造が壊れたことが確認された。また、CECと吸湿重量増加率は表1に示すように優れた値となった。この複合アルカリ金属塩の化学分析によるモル比は、SiO2:M2O:CO2=2.0:1.0:1.5であった。
【0051】
比較例4
実施例4の中間生成物である結晶性層状珪酸カリ・ソーダを用いて、CECと吸湿重量増加率を測定し、表1に記載した。
【0052】
【表1】
【0053】
実施例5及び比較例5
実施例1で得られた複合アルカリ金属塩及び比較例1のδ−Na2Si2O5を用いてカチオン交換速さの測定を行った。得られた結果を図5のグラフに示す。図5の結果から、実施例1で得られた複合アルカリ金属塩は、投入後瞬時にしてCa固定能力の全力を発揮できることが明らかとなり、徐々に効果を発揮するδ−Na2Si2O5とは格段の違いがあることが判った。
【0054】
実施例6
実施例1の炭酸化を途中で中断し、図6に示す粉末法X線回折パターンのようにδ−Na2Si2O5の残存する複合アルカリ金属塩を製造した。なお、原料となるδ−Na2Si2O5の粉末法X線回折パターンは2θ=22゜の最高X線回折線強度(I1)が6500cpsであり、図6の炭酸化処理後の最高X線回折線強度(I2)は1300cpsであったので、結晶化度(S)%は20%であった。得られた複合アルカリ金属塩のCECと吸湿重量増加率を測定したところ、215mg−CaO/gと1.5重量%であった。また、複合アルカリ金属塩の化学分析によるモル比は、SiO2:Na2O:CO2=1.97:1.0:0.65であった。
【0055】
【発明の効果】
本発明によれば、高いCaイオン交換能、優れたCaイオン交換速さ及び優れた耐吸湿性を有し、従って、合成洗剤用ビルダーとして有用な高い硬水軟化能を有し、且つ耐吸湿性に優れた複合アルカリ金属塩及びその工業的に有利に生産できる新規な製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で得られた複合アルカリ金属塩の粉末法X線回折パターンを示す図である。
【図2】実施例2で得られた複合アルカリ金属塩の粉末法X線回折パターンを示す図である。
【図3】実施例3で炭酸化処理の原料として使用した結晶性層状珪酸カリ・ソーダの粉末法X線回折パターンを示す図である。
【図4】実施例3で得られた複合アルカリ金属塩の粉末法X線回折パターンを示す図である。
【図5】実施例5並びに比較例5のカチオン交換速さを示すグラフである。
【図6】実施例6で得られた複合アルカリ金属塩の粉末法X線回折パターンを示す図である。
Claims (7)
- MHCO 3 (Mは、Na、KまたはLiを表す)で表される結晶性炭酸アルカリ金属塩の粒子と、SiO 2 :M 2 Oモル比=1.7〜2.5:1をもつ結晶性層状珪酸アルカリを炭酸化して層状結晶構造を
結晶化度(S:%)=(I 2 /I 1 )×100
(ただし、I 1 は結晶性層状珪酸アルカリの最高X線回折強度、I 2 は結晶性層状珪酸アルカリの炭酸化後の最高X線回折強度を言う)で示される結晶化度が50%以下へ非晶質化した珪酸アルカリ金属塩の粒子よりなる複合集合体であって、該複合集合体はSiO2:M2 O:CO2モル比=1.7〜2.5:1:0.25〜2.0をもち、且つ吸湿率が5重量%以下であることを特徴とする複合アルカリ金属塩。 - 結晶性層状珪酸アルカリに水分の存在下で炭酸ガスを導入して炭酸アルカリの結晶粒子を析出すると共に珪酸アルカリの結晶性層状構造を不規則化して
結晶化度(S:%)=(I 2 /I 1 )×100
(ただし、I 1 は結晶性層状珪酸アルカリの最高X線回折強度、I 2 は結晶性層状珪酸アルカリの炭酸化後の最高X線回折強度を言う)で示される結晶化度が50%以下の非晶質粒子となるまで炭酸化反応を行うことを特徴とする複合アルカリ金属塩の製造方法。 - 結晶性層状珪酸アルカリは、SiO2:M2O(MはNa、KまたはLiを表す)モル比=1.7〜2.5:1を有するM2Si2O5(MはNa、KまたはLiを表す)を主組成とするものである請求項2記載の複合アルカリ金属塩の製造方法。
- 結晶性層状珪酸アルカリの水分の存在下での炭酸化は、5〜50kPaの水蒸気を含有する炭酸ガスを該珪酸アルカリに常温下で導入することにより行われる請求項2または3記載の複合アルカリ金属塩の製造方法。
- 請求項1記載の複合アルカリ金属塩を有効成分とする合成洗剤用ビルダー。
- 複合アルカリ金属塩はカチオン交換容量(CEC)が少なくとも200mg−CaO/gの値を有する請求項5記載の合成洗剤用ビルダー。
- 請求項5または6記載の合成洗剤用ビルダーに、ゼオライトA、二珪酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、アミノ酸ナトリウム及びホスホン酸ナトリウムからなる群から選択された少なくとも1種のビルダー成分を含有させてなることを特徴とする合成洗剤用ビルダー。
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