JP3717482B2 - 単焦点レンズ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、特に小型の撮像装置への搭載に適した単焦点レンズに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、CCD(Charge Coupled Device:電荷結合素子)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)などの撮像素子を用いた撮像装置が知られている。このような撮像装置では、撮像素子上に被写体像を結像させて、その画像を電子的に読み取ることで撮影がなされる。このような撮像装置は、近年、撮像素子の小型化が進んでいることから、装置全体としても非常に小型化が図られてきている。特に、携帯電話における画像入力用のモジュールカメラやデジタルスチルカメラ(以下、単にデジタルカメラという。)などは、近年、小型化が著しい。
【0003】
従来、小型の撮像装置で使用可能な撮像レンズとしては、例えば以下の公報記載のものがある。特許文献1記載のレンズは、3枚構成のレンズとなっている。特許文献2記載のレンズは、2枚構成のレンズとなっている。
【0004】
【特許文献1】
特開平10−301022号公報
【特許文献2】
特開2000−258684号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、近年では、撮像素子の性能が向上し、素子全体のサイズを大きくすることなく、小型で高画素化が図られたものが開発されてきている。このような高画素化に伴い、それに使用される撮像レンズについても、従来より高い光学性能が要求されてきている。
【0006】
撮像素子の高画素化に耐えうる光学性能を得るためには、レンズの枚数を増やすことが考えられる。しかしながら、上記特許文献1記載の3枚構成のレンズのように、レンズ枚数を増やすことで結像性能を向上させることができる一方、全長の点で不利となり、撮像装置に搭載した場合に、小型・携帯性が失われてしまうおそれがある。そこで、必要な光学性能を満足しつつ、小型・携帯性のために、バックフォーカスも短く、全長のコンパクト化の図られた撮像レンズの開発が求められている。特許文献2記載のレンズは、2枚構成で簡易化が図られているものの、これよりもさらに高性能なレンズの開発が望まれている。
【0007】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、バックフォーカスが短く、全長のコンパクト化を図ることができる単焦点レンズを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明による単焦点レンズは、撮像レンズとして用いられる単焦点レンズであって、物体側より順に、絞りと、両面が非球面形状で正のパワーを有する第1レンズと、両面が非球面形状で正のパワーを有する第2レンズとを備え、第1レンズは、物体側の面が、周辺に行くにつれて正のパワーが強くなる非球面形状であり、像側の面が、近軸近傍では凹面形状であり周辺部に行くにつれて凸面形状となる非球面形状で構成され、第2レンズは、物体側の面が、近軸近傍では凸面形状で周辺に行くにつれて負のパワーが強くなる非球面形状であり、像側の面が、近軸近傍では凹面形状で周辺部に行くにつれて凸面形状となる非球面形状で構成され、かつ、以下の条件式(1),(2)を満足するように構成されているものである。
【0009】
f1/f2<1.0 ……(1)
3.0<R2/R1 ……(2)
ただし、f1は、第1レンズの近軸焦点距離を示し、f2は、第2レンズの近軸焦点距離を示し、R1は、第1レンズの前側(物体側)の面の近軸曲率半径を示し、R2は、第1レンズの後側(像側)の面の近軸曲率半径を示している。
【0010】
本発明による単焦点レンズでは、すべての面を非球面形状にすることで、2枚という少ないレンズ枚数でありながら、全長のコンパクト化を図りつつ、良好な光学性能を得やすくしている。特に、式(1)を満足することで、第1レンズの正のパワーが第2レンズよりも大きくなり、バックフォーカスを短くし易くなっている。また特に、式(2)を満足することで、像面湾曲の補正がし易くなっている。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0012】
図1は、本発明の一実施の形態に係る単焦点レンズの構成例を示している。この構成例は、後述の第1の数値実施例(図3)のレンズ構成に対応している。また、図2は、本実施の形態に係る単焦点レンズの他の構成例を示している。図2の構成例は、後述の第2の数値実施例(図4)のレンズ構成に対応している。なお、図1,図2において、符号Riは、絞りStも含めて最も物体側の構成要素の面を0番目として、像側(結像側)に向かうに従い順次増加するようにして符号を付したi番目(i=0〜6)の面の曲率半径を示す。符号Diは、i番目の面とi+1番目の面との光軸Z1上の面間隔を示す。なお、各構成例共に基本的な構成は同じなので、以下では、図1に示した単焦点レンズの構成を基本にして説明する。
【0013】
この単焦点レンズは、例えば、CCDやCMOSなどの撮像素子を用いた小型の撮像装置用の撮像レンズとして使用されるものである。この単焦点レンズは、光軸Z1に沿って、物体側より順に、絞りStと、両面が非球面形状で正のパワーを有する第1レンズG1と、両面が非球面形状で正のパワーを有する第2レンズG2とを備えている。この単焦点レンズの結像面(撮像面)には、図示しないCCDなどの撮像素子が配置される。CCDの撮像面付近には、撮像面を保護するためのカバーガラスCGが配置されている。その他、第2レンズG2と結像面(撮像面)との間には、カバーガラスCGのほか、赤外線カットフィルタやローパスフィルタなどの光学部材が配置されていても良い。
【0014】
第1レンズG1は、前側(物体側)の面が、周辺に行くにつれて正のパワーが強くなる非球面形状であり、後側(像側)の面が、近軸近傍では凹面形状であり周辺部に行くにつれて凸面形状となる非球面形状で構成されている。
【0015】
第2レンズG2は、物体側の面が、周辺に行くにつれて負のパワーが強くなる非球面形状であり、像側の面が、近軸近傍では凹面形状で周辺部に行くにつれて凸面形状となる非球面形状で構成されている。第2レンズG2の物体側の面は、近軸近傍では、凸面形状となっている。
【0016】
この単焦点レンズは、以下の条件式(1),(2)を満足するように構成されている。ただし、式(1),(2)において、f1は、第1レンズG1の焦点距離(近軸上の焦点距離)を示し、f2は、第2レンズG2の焦点距離(近軸上の焦点距離)を示し、R1は、第1レンズG1の前側(物体側)の面の近軸曲率半径を示し、R2は、第1レンズG1の後側(像側)の面の近軸曲率半径を示している。
f1/f2<1.0 ……(1)
3.0<R2/R1 ……(2)
【0017】
なお、本実施の形態において、「近軸近傍」とは、後述の非球面式(A)において、係数Kに係る部分のみ(係数Aiに係る多項式部分を除いた部分)によって表される形状部分のことをいう。
【0018】
次に、以上のように構成された単焦点レンズの作用および効果を説明する。
【0019】
この単焦点レンズでは、第1レンズG1および第2レンズG2共に、両面を独特な非球面形状にしているので、球面レンズのみで構成した場合に比べて、2枚という少ないレンズ枚数でありながら、全長のコンパクト化を図りつつ、像面湾曲、歪曲収差、およびコマ収差をバランス良く補正し、良好な光学性能が得られる。例えば、第2レンズG2の像側の面を、近軸近傍では凹面形状で周辺部に行くにつれて凸面形状となるような非球面形状にしていることにより、像面湾曲が補正し易くなる。
【0020】
条件式(1)は、第1レンズG1と第2レンズG2との焦点距離f1,f2の比に関するものである。条件式(1)の数値範囲を満足することで、第1レンズG1の正のパワーが第2レンズG2よりも大きくなり、バックフォーカスを短くし易くなる。一方、条件式(1)の数値範囲を外れると、バックフォーカスが長くなり、全長をコンパクトにすることが困難になる。
【0021】
条件式(2)は、第1レンズG1の形状に関するものである。条件式(2)の数値範囲を満足することで、像面湾曲の補正がし易くなる。一方、条件式(2)の数値範囲を外れると、像面湾曲を補正するのが困難となる。
【0022】
このように、本実施の形態に係る単焦点レンズによれば、2枚という少ないレンズ枚数でありながら、良好な光学性能を維持しつつ、バックフォーカスが短く、全長のコンパクト化を図ることができる。これにより、特に、小型の撮像装置への搭載に適した撮像レンズを提供できる。
【0023】
【実施例】
次に、本実施の形態に係る単焦点レンズの具体的な数値実施例について説明する。以下では、第1および第2の数値実施例(実施例1,2)をまとめて説明する。図3(A),(B)は、図1に示した単焦点レンズの構成に対応する具体的なレンズデータ(実施例1)を示している。また、図4(A),(B)は、図2に示した単焦点レンズの構成に対応する具体的なレンズデータ(実施例2)を示している。図3(A)および図4(A)には、その実施例のレンズデータのうち基本的なデータ部分を示し、図3(B)および図4(B)には、その実施例のレンズデータのうち非球面形状に関するデータ部分を示す。
【0024】
各図に示したレンズデータにおける面番号Siの欄には、各実施例の単焦点レンズについて、絞りStも含めて最も物体側の構成要素の面を0番目として、像側に向かうに従い順次増加するようにして符号を付したi番目(i=0〜6)の面の番号を示している。曲率半径Riの欄には、図1,図2で付した符号Riに対応させて、物体側からi番目の面の曲率半径の値を示す。面間隔Diの欄についても、図1,図2で付した符号に対応させて、物体側からi番目の面Siとi+1番目の面Si+1との光軸上の間隔を示す。曲率半径Riおよび面間隔Diの値の単位はミリメートル(mm)である。Ndj,νdjの欄には、それぞれ、カバーガラスCGも含めて、物体側からj番目(j=1〜3)のレンズ要素のd線(587.6nm)に対する屈折率およびアッベ数の値を示す。なお、カバーガラスCGの両面の曲率半径R5,R6の値が0(ゼロ)となっているが、これは、平面であることを示す。
【0025】
図3(A)および図4(A)にはまた、諸データとして、全系の焦点距離f(mm)、Fナンバー(FNO.)、画角2ω(ω:半画角)の値を同時に示す。
【0026】
図3(A)および図4(A)の各レンズデータにおいて、面番号の左側に付された記号「*」は、そのレンズ面が非球面形状であることを示す。各実施例共に、第1レンズG1の両面(第1面および第2面)と第2レンズG2の両面(第3面および第4面)とが非球面形状となっている。基本レンズデータには、これらの非球面の曲率半径として、光軸近傍(近軸近傍)の曲率半径の数値を示している。
【0027】
図3(B)および図4(B)の各非球面データの数値において、記号“E”は、その次に続く数値が10を底とした“べき指数”であることを示し、その10を底とした指数関数で表される数値が“E”の前の数値に乗算されることを示す。例えば、「1.0E−02」であれば、「1.0×10-2」であることを示す。
【0028】
各非球面データには、以下の式(A)によって表される非球面形状の式における各係数Ai,Kの値を記す。Zは、より詳しくは、光軸から高さhの位置にある非球面上の点から、非球面の頂点の接平面(光軸に垂直な平面)に下ろした垂線の長さ(mm)を示す。
【0029】
Z=C・h2/{1+(1−K・C2・h2)1/2}+A3・h3+A4・h4+A5・h5+A6・h6+A7・h7+A8・h8+A9・h9+A10・h10 ……(A)
ただし、
Z:非球面の深さ(mm)
h:光軸からレンズ面までの距離(高さ)(mm)
K:離心率
C:近軸曲率=1/R
(R:近軸曲率半径)
Ai:第i次(i=3〜10)の非球面係数
【0030】
図5は、上述の条件式(1),(2)に対応する値を、各実施例についてまとめて示したものである。図5に示したように、各実施例の値が、条件式(1),(2)の数値範囲内となっている。
【0031】
図6(A)〜(C)は、実施例1の単焦点レンズにおける球面収差、非点収差、およびディストーション(歪曲収差)を示している。各収差図には、d線を基準波長とした収差を示すが、球面収差図には、g線(波長435.8nm),C線(波長656.3nm)についての収差も示す。非点収差図において、実線はサジタル方向、破線はタンジェンシャル方向の収差を示す。同様に、実施例2についての諸収差を図7(A)〜(C)に示す。
【0032】
以上の各レンズデータおよび各収差図から分かるように、各実施例について、良好に収差補正がなされている。また、バックフォーカスが短く、全長のコンパクト化が図られている。
【0033】
なお、本発明は、上記実施の形態および各実施例に限定されず種々の変形実施が可能である。例えば、各レンズ成分の曲率半径、面間隔および屈折率の値などは、上記各数値実施例で示した値に限定されず、他の値をとり得る。
【0034】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の単焦点レンズによれば、物体側より順に、絞りと、両面が非球面形状で正のパワーを有する第1レンズと、両面が非球面形状で正のパワーを有する第2レンズとを備え、第1レンズの物体側の面を、周辺に行くにつれて正のパワーが強くなる非球面形状にし、像側の面を、近軸近傍では凹面形状であり周辺部に行くにつれて凸面形状となる非球面形状にし、第2レンズの物体側の面を、周辺に行くにつれて負のパワーが強くなる非球面形状にし、像側の面を、近軸近傍では凹面形状で周辺部に行くにつれて凸面形状となる非球面形状にし、かつ、各レンズの焦点距離に関して所定の条件式(1)を満足し、第1レンズの両面の近軸曲率半径に関して所定の条件式(2)を満足するようにしたので、球面レンズのみで構成した場合に比べて、2枚という少ないレンズ枚数でありながら、全長のコンパクト化を図りつつ、良好な光学性能を得ることができる。特に、条件式(1)を満足することで、第1レンズの正のパワーが第2レンズよりも大きくなり、バックフォーカスを短くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係る単焦点レンズの構成例を示すものであり、実施例1に対応するレンズ断面図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係る単焦点レンズの他の構成例を示すものであり、実施例2に対応するレンズ断面図である。
【図3】実施例1に係る単焦点レンズのレンズデータを示す図である。
【図4】実施例2に係る単焦点レンズのレンズデータを示す図である。
【図5】各実施例に係る単焦点レンズが満たす条件式の値を示す図である。
【図6】実施例1に係る単焦点レンズの球面収差、非点収差、およびディストーションを示す収差図である。
【図7】実施例2に係る単焦点レンズの球面収差、非点収差、およびディストーションを示す収差図である。
【符号の説明】
CG…カバーガラス、Gj…物体側から第j番目のレンズ、Ri…物体側から第i番目のレンズ面の曲率半径、Di…物体側から第i番目と第i+1番目のレンズ面との面間隔、Z1…光軸。
Claims (1)
- 撮像レンズとして用いられる単焦点レンズであって、
物体側より順に、絞りと、両面が非球面形状で正のパワーを有する第1レンズと、両面が非球面形状で正のパワーを有する第2レンズとを備え、
前記第1レンズは、物体側の面が、周辺に行くにつれて正のパワーが強くなる非球面形状であり、像側の面が、近軸近傍では凹面形状であり周辺部に行くにつれて凸面形状となる非球面形状で構成され、
前記第2レンズは、物体側の面が、近軸近傍では凸面形状で周辺に行くにつれて負のパワーが強くなる非球面形状であり、像側の面が、近軸近傍では凹面形状で周辺部に行くにつれて凸面形状となる非球面形状で構成され、
かつ、以下の条件式(1),(2)を満足するように構成されている
ことを特徴とする単焦点レンズ。
f1/f2<1.0 ……(1)
3.0<R2/R1 ……(2)
ただし、
f1:第1レンズの近軸焦点距離
f2:第2レンズの近軸焦点距離
R1:第1レンズの前側(物体側)の面の近軸曲率半径
R2:第1レンズの後側(像側)の面の近軸曲率半径
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