JP3716517B2 - 高吸湿性ポリアミド繊維及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、快適なインナーウェアやレッグウェア等の素材として最適な高吸湿性ポリアミド繊維に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
合成繊維の一つであるポリアミド繊維は、高強度、細繊度、耐摩耗性、ソフトさ、光沢特性、染色鮮明性などの優れた特徴を持っている。そのために、パンティストッキング等のレッグウェアやインナーウェア、スポーツウェア等の衣料用途に好まれて用いられてきている。特に、インナーウェアについては、ポリアミド繊維の有するしなやかさ、ドレープ性や表面のなめらかなタッチ、着用時のひんやり感等が好まれ、女性用のランジェリーやファンデーションとして多く用いられてきている。
【0003】
一方、綿や羊毛等に代表される天然繊維はその風合いや着心地の良さが好まれ、特に、肌に直接当たるインナーウェアや中衣には適度な吸湿性を有する綿が多く用いられている。
【0004】
しかし、綿のインナーウェアは、しなやかさ、ドレープ性、光沢感等の審美性に欠けると共に、表面のなめらかなタッチ、着用時のひんやり感等についても不十分であり、特に女性のインナーウェア用には不向きであった。
【0005】
これに対し、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維等の熱可塑性合成繊維は、強度や染色堅牢性などに優れた特性を有するものの、天然繊維に比べ吸湿性が劣っている。そのため、着用により生じた水蒸気は十分吸湿されないので衣服外に放出されず、特に夏の高温多湿時の蒸れ感は大きく不快を感じるものであった。ポリアミド繊維は、ポリエステル繊維よりも平衡水分率(標準状態での吸湿性)が高いものの、それでも着用の快適感の観点からは未だ不十分であった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明者らは、先に、ポリアミド繊維の吸湿性を向上すべくポリアミドにポリビニルピロリドン(PVP)とポリエーテルアミド(PEA)および/またはポリエーテルエステルアミド(PEEA)とを添加する技術を提案した(特開平7−150414号公報)。しかし、この技術では、目標とする吸湿特性は得られるものの、色調が悪いので審美性を追及する衣料製品には不満足なものであり、しかも、より高い品質風合いを目指し、極細糸や高変形糸を製造しようとすると糸切れが多発し、安定生産が困難であるという問題があった。
【0007】
また同様に、本発明者らは特開平7−150415号公報に記載のごとく、還元剤を併用して練込むことにより白度の良好な吸湿性ポリアミド繊維が得られる技術を先に提案した。そこに記載した技術によると明るさの点で白に近い繊維は得られるものの、黄色っぽい色調を消すことは困難であるので、依然、未染色状態での黄色度については不満足なものであった。さらに加えて、極細糸や高変形糸などを製糸する際の糸切れが多く、生産性を十分満足させることは困難であった。
【0008】
そこで、本発明者らは、上記のような従来技術の欠点の解消についてさらに検討を続けた結果、本発明をなすに至ったものである。
【0009】
即ち、本発明は、高吸湿性を有するとともに優れた色調を有するポリアミド繊維を提供すること、さらに、製糸性良く安定生産が可能な高吸湿性繊維を効率的に製造する方法を提供することを主な目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するため、本発明の高吸湿性ポリアミド繊維は、ポリビニルピロリドンを、ポリアミドに対し3〜15wt%の量で含有するポリアミドからなり、かつ、該ポリアミド中のピロリドンの含有率がポリビニルピロリドン含有量の0.05wt%以下であり、繊維の未染色状態での黄色度が10以下であり、かつ、水溶性成分の溶出率が5%以下であることを特徴とする。
【0011】
さらに、その製造方法は、イソプロピルアルコールを溶媒として合成され、ピロリドン含有率が0.1wt%以下かつK値が20〜70であるポリビニルピロリドンを、酸素濃度8%以下の環境下で練り混み法によりポリアミドと混合させ、ポリビニルピロリドン濃度が10〜50wt%である高濃度マスタポリマを製造した後、チップブレンド法によりPVPが所定濃度のポリマ組成物とし、溶融紡糸により製糸することを特徴とする。
【0013】
このように、本発明では、従来とは異なる特定のポリビニルピロリドンを用いることが必要であり、これによって、従来のポリアミド繊維の長所を具備したままで、かつ、黄色度が低くて色調に優れ、吸湿性に優れ、染色性や洗濯耐久性等も良好であり、しかも、極細糸や高変形糸などの安定的製糸が可能となるものである。
【0014】
その特定のポリビニルピロリドンは、その中に含まれるピロリドンの量が0.05wt%以下と極めて少ないことを特徴とするものであり、これは、イソプロピルアルコールを重合時溶媒として用いる合成法によって得ることができる。
【0015】
これに対し、従来のポリビニルピロリドンは、水を重合時溶媒として製造された物であるので、その製造時の重合工程において副生成物としてのピロリドンの発生が多く、その結果、得られるポリビニルピロリドンはピロリドン含有率が0.13〜0.30wt%程度と多い物であった。このようにピロリドン含有率が多いと、それをポリアミドに添加して繊維とした場合、当然にポリアミド中のピロリドン含有量が多くなって黄色度が高くなるので、黄色度を10以下に低減させることは困難である。この結果、黄色度が高くて染色後の色調にくすみ感がでてしまい、審美性が追及される衣料用途には不満足なものとなる。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明の吸湿性ポリアミド繊維では、所望の吸湿特性を得るためにポリアミドに対し3〜15wt%の量のポリビニルピロリドン(以下PVPという)を含有することが必要である。さらに、前記したようにピロリドン含有量が極端に少ないPVPを用いるので、本発明の吸湿性ポリアミド繊維では、繊維中に含まれるピロリドンの含有率が、PVP量の0.05wt%以下と少ない。
【0017】
PVPは、所望の高吸湿特性を繊維に付与するために、ポリアミドに対し3〜15wt%含有させることが必要であり、特に4〜8wt%が好ましい。PVPの含有率が3wt%未満と少な過ぎると十分な吸湿性が得られない。また15wt%を越える程に多過ぎるとべたつき感が発現し感触不良となり、しかも、製糸性が不良となって安定して生産することができなくなる。
【0018】
また、ピロリドンの含有率はPVPの0.05wt%以下であり、さらに好ましくは0.03wt%以下である。このピロリドン含有率が上記範囲にある場合は、未染色状態での黄色度を10以下とすることができ、衣料用に適した色調良好な繊維が得られるのである。即ち、未染色状態でのポリアミドフィラメントの黄色度が10を越えないと、染色した後の色調にくすみ感がなく、色調が良好で高級感のある繊維製品が得られるのである。
【0019】
本発明で用いるピロリドン含有率0.05wt%以下のPVPは、イソプロピルアルコールを重合時溶媒として製造することによって得られる。また、その際、重合開始剤として過酸化水素系の触媒を含まないことが、黄色度の原因となる副生成物のピロリドンの発生をさらに抑制するために好ましい。
【0020】
また、本発明で用いるPVPは、そのK値が20〜70であることが好ましく、特に20〜60であることがより好ましい。K値が低過ぎるPVPはポリアミド中に練り込んでも、後述するポリアミド分子鎖との絡み合いが弱く、練り混み後のガットの冷却水処理によりその多くが溶出し易いので、所望の高吸湿特性を得るには多くのPVPを練り込まねばならず生産効率が低下する。一方、K値が高過ぎると、ポリアミド中に練り込む際の増粘が大きく、溶融吐出によるチップ化が困難となるので、やはり生産効率が低下する。
【0021】
さらに、本発明のポリアミドフィラメントは水溶性成分の溶出率が5%以下であることが好ましく、特に3wt%以下がより好ましい。この溶出率は、本発明のポリアミドフィラメントを沸騰水中で30分間処理した際の重量変化率から求めた水溶性成分溶出率の値である。
【0022】
PVPは極めて水溶性が高いので、ポリマ中に含有させた後でも、ポリマ表面へブリードアウトし易い性質を持っている。また、副生成物のピロリドンもきわめて水溶性が高く、同様にポリマ表面へブリードアウトし易い。
【0023】
従って、PVPの含有による高吸湿性ポリアミド繊維では、その中に含有するPVPやピロリドンの溶出を抑えることが、吸湿特性の保持、及び、良好な繊維風合や感触の保持のために好ましい。例えば、溶出率が5%以下のポリアミドフィラメントでは、繊維製品とした後の着用時にPVPがフィラメント表面に実質的に析出せず、しなやかな風合いとなめらかな感触の点で極めて良好なものとなる。
【0024】
溶出率を所望の低水準とするためにはPVPとナイロンポリマとの分子鎖の絡み合いを強くする手段をとることが好ましい。例えば、PVPをエクストルーダーによりポリアミド中に練り混みマスタポリマとする方法が、ナイロン分子鎖とPVP分子鎖の絡み合いを強くすることができ、好ましいものである。
【0025】
その練込みは、8%以下のような低酸素濃度での練り混み法により行うことが紡糸時の糸切れを低減させるために好ましい。これに対し、大気中の酸素濃度(約20%)と同水準あるいはそれ以上の高い酸素濃度の環境下で練り込みをしたマスタポリマを用いる場合は、紡糸時の糸切れが多発し、安定した生産が困難となる。その低酸素濃度の水準は、8%以下であればよく、そのためには、窒素のごとき不活性気体をホッパーやシリンダーに流して酸素濃度を低減させる方法をとればよい。
【0026】
マスタポリマ中のPVPの練り込み濃度は10〜50wt%とする。10wt%未満ではマスタポリマの本来の効果が奏し難く生産性が劣る。50wt%を超えると安定して練り込むことが困難である。
【0027】
このようにして得られたPVP含有ポリアミドマスタポリマチップは、次に、実質的に無添加のチップとチップブレンドされて濃度調整するチップブレンド法によって濃度調整された後に、溶融紡糸に供給される。
【0028】
なお、特開平7−150414公報に記載したようにポリエーテルアミド(PEA)及び/又はポリエーテルエステルアミド(PEEA)を併用する場合には、ポリアミドの重合前のカプロラクタム水溶液に、PVPとPEA及び/又はPEEAとを添加する方法をとることもできる。しかし、PEAやPEEAを併用しない場合には、溶出率を5wt%以下と抑えるために、前記したマスタポリマ法を用いることが必要である。
【0029】
所定濃度のPVPを含有するポリアミドは通常の方法で溶融紡糸法により製糸される。その製糸方法は、溶融紡糸、冷却、給油の後に、紡糸速度1000m/分以上で引取り、一旦巻き取ることなく延伸して巻取る直接紡糸延伸方法によってもよいし、また、3000m/分以上の高速で紡糸引取りし、延伸することなく巻取る高速紡糸法によってもよい。
【0030】
これに対し、一旦巻き取った後に延伸する2段製糸法では、未延伸糸巻取りパッケージの巻きフォームが、その吸湿速度の速さのために大きく崩れ易く、安定した製糸が困難である。
【0031】
なお、製糸されて得られた高吸湿性ポリアミドフィラメントは、通常、マルチフィラメントとして得られ、その単糸の断面形状は丸断面でもよく、三葉や四葉のような変形断面でもよいが、本発明によると変形断面の場合でも、安定した製糸が可能となる。また、その繊度は特に限定されないが、単糸繊度が0.5〜8.0デニール程度であるマルチフィラメントの場合に好適である。
【0032】
得られた高吸湿性マルチフィラメントは、特別な条件をとることなく、通常の方法で後加工や製編織され、縫製されて、各種衣料用製品とされる。なかでも、直接肌に着用されるインナーウェア(ランジェリー、ファウンデーション等)や靴下類(ストッキング、パンティストッキング、タイツあるいはソックス等)、あるいは、発汗し易い状態で着用されるスポーツウェア(ウィンドブレーカー、テニスウェア、スキーウェア、トレーニングウェア等)として好適である。
【0033】
これら衣料用製品において吸湿効果を発揮するためには、本発明の吸湿性ポリアミド繊維を30重量%以上用いることが好ましい。
【0034】
また、本発明の吸湿性ポリアミド繊維を含む衣料製品は、乾燥速度が0.015cc/分以上と速いことがべたつき感を抑え着用快適性に優れた製品とするために好適である。そのためにはPVP含有率や溶出率が大き過ぎない適正水準となるように調整する等の手段をとればよい。
【0035】
ここで、本発明における各種特性値の測定方法について述べる。
<ピロリドン含有率>
繊維試料100mgにヘキサフルオロイソプロパノール3mlとクロロホルム1mlとを加え、繊維を溶解した。得られた溶液に、エタノールを加えてポリマ成分を再沈させ20mlに定容した。溶液成分を定法によりガスクロマトグラム分析を行う。装置はGC14A(島津製作所製)、カラムはNB−1(15m)を使用する。ピロリドンの定量にはバレロラクタムの検量線をあらかじめ作成し、用いる。下記式によりピロリドン含有率を求める。
ピロリドン含有率(wt%) =[(GCピーク面積/検量線係数)(mg/ml) ×溶液量(ml)/試料量(mg)]×100
<K値>
PVPを濃度1%の水溶液とし、その相対粘度を測定し、Fikentscherの式により求める。
logZ=C[75k2 /(1+1.5kC)+k]
但し、Z:濃度Cの水溶液の相対粘度、k:K値×10−3、C:水溶液濃度(W/V%)である。
<溶出率>
ポリアミドフィラメントを110℃、8時間乾燥した後、重量を測定する。その後、沸騰水で30分間処理した後、再度110℃8時間乾燥し、処理前後の重量減少率を溶出率とする。
<黄色度>
27Gの筒編み機により、編み密度45本/インチの筒編地を作成する。得られた筒編地を2つ折りとして日本電色工業製カラーメーターΣ80により、同測定器所定の方法にて3刺激値X,Y,Zを測定し、下記式により黄色度を求める。
YI(黄色度)=100×[1.28X−1.06Z]/Y
<最高吸湿率、標準吸湿率>
ポリアミドフィラメントにより27ゲージ筒編み試料を作製する。作製した試料を精練し、油剤を除去した後、その約1gをガラス秤量瓶(風袋重量F)にいれ、乾燥機中110℃2時間の条件で乾燥する。瓶を密封し、デシケータ中で30分間放冷した後、試料の入った秤量瓶の総重量(K)を測定する。次に、20℃65%RHに設定された恒温恒湿槽((株)田葉井製作所製の恒温恒湿槽“レインボー”)に開放状態で入れ、24時間放置する。その後再び密封状態でデシケーター30分間放置後、試料の入った秤量瓶の重量(H)を測定する。引続き、30℃90%RHに設定された恒温恒湿槽に開放状態にした秤量瓶を入れ、24時間後の総重量(S)を同様に測定する。以上の各値から下記式により算出する。
最高吸湿率=[(S−K)/(K−F)]×100(%)
標準吸湿率=[(H−K)/(K−F)]×100(%)
<乾燥速度>
上述と同様に試料を作成し、乾燥・放冷・秤量した後、1ccの蒸留水を試料に滴下し、試料の入った秤量瓶の総重量(W0 )を測定する。次に、20℃65%RHに設定された恒温恒湿槽に開放状態で入れた時から10分間隔で上述の方法と同様に試料の入った秤量瓶の重量(WT :Tは時間(分))を90分間測定し続ける。各乾燥時間Tに対応する水分率を下記式により求める。
時間Tの時の水分率=[(WT −K)/(W0 −K)]×100(%)
時間Tに対してWT をプロットして乾燥曲線を描き、得られた乾燥曲線のT=0における接線の傾きから乾燥速度(CC/min)を求める。このとき水分率100%の時の水分量(cc)は滴下した蒸留水の量に等しいとする。
【0036】
【実施例】
[実施例1]
PVPとして、イソプロピルアルコールを溶媒として通常の方法で合成されたK値が30のPVP(BASF社製“ルビスコール”K30スペシャルグレード:以下K30SPと略記する)を用いた。このPVP(K30SP)中のピロリドン含有量は0.02wt%であった。このPVPをエクストルーダー(φ40mm、2条、2軸)を用いて、98%硫酸相対粘度ηr が2.72のナイロン6に練り混み、ガット状に押し出し、冷却後にペレタイズすることで、PVP濃度30wt%のマスタポリマチップとした。この際、ホッパー、シリンダーに窒素を流すことで、酸素濃度を8%以下とした。
【0037】
回転式真空乾燥機中で、ナイロン6チップと上記マスタポリマチップとを所定の割合でブレンドしながら通常の方法で乾燥した。乾燥して得られたブレンドチップにおけるナイロン6に対するPVPの含有率は、3、7、15wt%とした。
【0038】
それぞれのブレンドチップを270℃で溶融し、13ホールのY型孔口金より吐出して、紡糸速度1300m/分、延伸倍率2.3倍、巻き取り速度3000m/分の直接紡糸延伸法により製糸して、変形度2.6の三葉断面で、30デニール13フィラメントのPVP含有ポリアミドマルチフィラメントを得た(水準 No.3、4、5)。
【0039】
得られたフィラメントにおける溶出率は0.7〜2.9wt%と低いものであった。
【0040】
表1に示すように、いずれの水準も、黄色度も溶出率もともに十分に低く、最高吸湿率が8%以上と高く、最高吸湿率と標準吸湿との差が4%以上と大きく、色調、風合感触、吸湿特性ともに優れていた。また、乾燥速度が0.015cc/分以上と高かった。
【0041】
得られた繊維を通常の方法でターコイズブルーに染色したところ、明度35、彩度40の良好な発色性の繊維が得られた。
【0042】
[比較例1]
回転式真空乾燥機中でのポリマブレンド割合を変えPVPの含有率を0.5、2、18wt%とした以外は実施例1と同様にしてPVP含有ポリアミドブレンドチップを得て、同様にマルチフィラメントを製糸し(水準 No.1、2、6)、筒編地として実施例1と同様の測定を実施した。
【0043】
表1に示すように0.5、2wt%の水準( No.1、2)は最高吸湿率が7.2%以下と低過ぎ、また標準吸湿率との差も3.2%以下と低過ぎ、吸湿特性が劣っていた。また、18wt%の水準( No.6)は、乾燥速度が低くてべたつき感があり、感触や風合が劣っていた。
【0044】
[比較例2]
PVPの品種を変更し、水を溶媒として合成され、ピロリドン含有率が0.15wt%、K値が30のPVP(BASF社製“ルビスコール”K30通常グレード:以下K30と略記する)を用いた以外はすべて実施例1の No.3、4と同様に実施し、PVPの添加率が3wt%、7wt%のポリアミドマルチフィラメントを製造した。
【0045】
得られたフィラメントを未染色状態で黄色度(YI)を測定したところ、表1に示すように、15.0、21.2と極めて高かった。
【0046】
得られた繊維を実施例1と同様に染色したところ、明度32、彩度28とくすんだ色調となった。
【0047】
[実施例2]
PVPの品種を変更し、イソプロピルアルコールを溶媒として合成され、ピロリドン含有率が0.02wt%、K値が17、60又は90PVP(BASF社製の“ルビスコール”K17グレード、K60グレード又はK90グレード:以下それぞれK17、K60又はK90と略記する)を用い、また、回転式真空乾燥機中でのポリマブレンド割合を変えPVPの含有率を5wt%とした以外はすべて実施例1と同様に実施し、PVPの添加率が5wt%のポリアミドマルチフィラメントを製造した(水準 No.9、10又は11)。
【0048】
得られたフィラメントは、いずれの水準も所望の色調及び吸湿特性ともに満足すめるものであった。さらに、 No.10のフィラメントは、紡糸性も特に問題なく生産性が良好であった。
【0049】
ただし、 No.9及び No.11の場合は次のとおり生産性の点で不十分なものであった。K17を練り込んだマスタポリマはガットを冷却水に通過したところ、ガットからPVPの一部が溶出し、吸湿特性が低下した。一方、K90を練り込んだ場合はその練り混み時の粘度上昇が高く、吐出安定性低下し、収率が低下した。
【0050】
[比較例3]
ナイロン6チップにPVP粉末を10wt%ブレンドして乾燥する方法により溶融紡糸に供するブレンドチップを製造した以外は、実施例1と同様にして、PVP含有率10wt%のポリアミドフィラメントを製造したところ、得られたフィラメントは、溶出率が5.8%と大きくなり、フィラメント表面にざらつき感が生じた。
【0051】
【表1】
【0052】
【表2】
【0053】
【発明の効果】
本発明によると、ポリビニルピロリドンにより高吸湿化したポリアミド繊維の黄色度を著しく低減させることができ、色調に優れ、染色後の色くすみの問題を解消することができる。
【0054】
従って、吸湿性、色調等がともに優れ、着用感に優れたポリアミド繊維製の衣料用布帛製品とすることができ、特に、吸湿性とともに審美性も要求される各種衣料用ポリアミド繊維製品として、例えば、肌に直接着用されるインナーウェアや靴下として、また、スポーツウェアとして好適である。
Claims (5)
- ポリビニルピロリドンを、ポリアミドに対し3〜15wt%の量で含有するポリアミドからなり、かつ、該ポリアミド中のピロリドンの含有率がポリビニルピロリドン含有量の0.05wt%以下であり、繊維の未染色状態での黄色度が10以下であり、かつ、水溶性成分の溶出率が5%以下であることを特徴とする高吸湿性ポリアミド繊維。
- ポリビニルピロリドンのK値が20〜70であることを特徴とする請求項1記載の高吸湿ポリアミド繊維。
- ポリビニルピロリドンとしてイソプロピルアルコールを溶媒として合成された物を用いることを特徴とする請求項1または2記載の高吸湿性ポリアミド繊維。
- 変形断面糸であることを特徴とする請求項1、2または3記載の高吸湿性ポリアミド繊維。
- イソプロピルアルコールを溶媒として合成され、ピロリドン含有率が0.05wt%以下かつK値が20〜70であるポリビニルピロリドンを、酸素濃度8%以下の環境下で練り混み法によりポリアミドと混合させ、ポリビニルピロリドン濃度が10〜50wt%である高濃度マスタポリマを製造した後、チップブレンド法によりPVPが所定濃度のポリマ組成物とし、溶融紡糸により製糸することを特徴とする高吸湿性ポリアミド繊維の製造方法。
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