JP3714246B2 - 二次電池の充電率推定装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、二次電池の充電率(SOC)を推定する装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
二次電池の充電率SOC(充電状態とも言う)は開路電圧V(通電遮断時の電池端子電圧であり、起電力、開放電圧とも言う)と相関があるので、開路電圧Vを求めれば充電率を推定することが出来る。しかし、二次電池の端子電圧は、通電を遮断(充放電を終了)した後も安定するまでに時間を要するので、正確な開路電圧Vを求めるには、充放電を終了してから所定の時間が必要である。したがって充放電中や充放電直後では、正確な開路電圧Vを求めることが出来ないので、上記の方法で充電率SOCを求めることが出来ない。そのため、従来は、下記のような種々の方法を用いて開路電圧Vを推定している。
【0003】
二次電池の充電率(SOC)を推定する技術に関する第一の公知例としては、特開2000−323183号公報に記載されたものがある。この公知例においては、所定時間にわたって、電池の端子電圧(単に電圧とも言う)Vと電池が充放電される電流Iと電池の温度Tとを検出し、電流Iの積算値Qとその変動幅△Qを算出し、変動幅△Qが所定値より小さい場合に限り、検出した電流Iと電圧VをI−V直線(V=R・I+V)で近似し、その傾きから内部抵抗Rを算出し、また切片から電池の開路電圧Vを算出し、予め測定しておいた開路電圧Vと充電率SOCとの相関から、充電率SOCを算出する技術が記載されている。
【0004】
また、第二の公知例(論文“適応デジタルフィルタを用いた鉛電池の開路電圧と残存容量の推定”四国総研、四国電力、湯浅電池 T.IEEE Japan Vol.112-C,No.4 1992)に記載された電池状態検出手法は、通電中の二次電池(鉛電池やリチウムイオン電池等の充放電可能な電池)の端子電圧と電流の計測データに、「適応デジタルフィルタ」を用いて開路電圧Vを推定(パラメータ同定)して、この値から電池の充電率SOCを推定するものである。
【0005】
また、第三の公知例(特開2000−268886号公報)に記載された電池状態検出装置は、等価回路モデルを用いて、電池電圧推定値Vmを算出し、計測された電池電圧Vとの差異で、電流積算量(放電量)を補正して充電率SOCを推定し、このSOC推定値によって電池モデルのパラメータを修正する、という操作を繰り返すものであり、一種の適応アルゴリズムである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記のごとき従来例においては次のような問題があった。まず、第一の公知例において、変動幅△Qが所定の変動幅より小さい場合でも、電池の開路電圧Vは電流Iに応じて充放電している最中に時々刻々と変化する特徴がある。第一の公知例では、変動幅△Qが所定値より小さい場合に限り充電率SOCを算出するという構成になっていたため、充電率SOCを算出できる機会が極めて少ないし、無理に、変動幅△Qが所定値より大きい場合に同様の推定を行っても推定誤差が極端に大きくなるという問題があった。
【0007】
また、第二の公知例においては、実際の電池の物理特性とは全く異なる「非回帰型の電池モデル(出力値が入力値の現在値および過去値だけで決るモデル)」に相当する下記(数1)式に、「適応デジタルフィルタ(逐次型のモデルパラメータ同定アルゴリズム)」を用いて、(数1)式中のパラメータの一つである開路電圧Cを算出して、この値から充電率SOCを算出している。
【0008】
【数1】
Figure 0003714246
ただし、V:端子電圧 Ij−k:kサンプル周期前の電流
:開路電圧 bk,j:定数 N:次数
そのため、実際の電池特性(入力:電流、出力:電圧)に応用した場合、電池特性によっては推定演算が全く収束しなかったり、真値に収束しないという問題があった。
【0009】
また、第三の公知例においては、モデル推定誤差(V−Vm)を用いて、電流積算値(放電量)のみをまず補正してSOC推定値を確定させてから、このSOCに応じて予め設定したマップに従って電池モデルの各パラメータ(開路電圧を除く)を修正するという構成になっていたが、モデル推定誤差(V−Vm)は、当然、開路電圧V(起電力)および内部抵抗値Rや容量C等の全ての影響を受けており、これらを同時に配慮しないと誤った修正を行い真値に推定値が収束しない可能性が高いという問題があった。また、この公知例では、SOC推定値と計測温度のみからモデルパラメータ(開路電圧を除く)を算出するという構成になっていたので、電池劣化が、総容量やモデルパラメータに及ぼす影響が考慮されていないため、電池劣化の影響を受けてSOC推定精度が悪化しやすいという問題があった。
【0010】
本発明は上記のごとき従来技術の問題を解決するためになされたものであり、充電率SOCおよびその他のパラメータを正確に推定することの出来る二次電池の充電率推定装置を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明においては特許請求の範囲に記載するように構成している。
まず、請求項1においては、二次電池の電流Iと端子電圧Vとを計測し、適応デジタルフィルタを用いて、上記電流Iと端子電圧Vの計測値から開路電圧Vを推定し、予め求めた開路電圧Vと充電率SOCとの関係に基づいて充電率を推定する充電率推定装置であって、二次電池の電池モデルを(数2)式に示すように定義し、この(数2)式と等価な(数3)式に対して両辺を時間微分することによって(数4)式を求め、この(数4)式に対して適応デジタルフィルタ演算を行い、A(s)、B(s)の係数パラメータを一括推定し、この推定結果を(数3)式に代入することによって開路電圧Vを求め、予め求めた開路電圧Vと充電率SOCとの関係に基づいて充電率を推定するように構成している。
なお、上記の「(数3)式の両辺を時間微分してすることによって(数4)式を算出する」は、「(数3)式において、s・V≒0と近似することで(数4)式を算出する」と同等である。
また、この構成は例えば後記実施例1に相当する。
【0012】
また、請求項2においては、二次電池の電池モデルを(数16)式(=数2)に示すように定義し、開路電圧Vを(数17)式で近似し、この(数17)式を(数16)式に代入することによって(数18)式を得、この(数18)式と等価な(数19)式に対して適応デジタルフィルタ演算を行い、A(s)とB(s)の係数パラメータと変数dとを一括推定し、この変数dを(数17)式に代入することによって開路電圧Vを求め、予め求めた開路電圧Vと充電率SOCとの関係に基づいて充電率を推定するように構成している。
なお、この構成は例えば後記実施例3に相当する。
【0013】
また、請求項3においては、請求項2に記載の二次電池の充電率推定装置において、(数19)式に対して適応デジタルフィルタ演算を行い、A(s)とB(s)の係数パラメータと変数dとを一括推定し、その推定したA(s)とB(s)の係数パラメータを、(数16)式と等価な(数20)式に代入することにより、G1p(s)・Vを求め、この値を開路電圧Vの代用として、予め求めた開路電圧Vと充電率SOCとの関係に基づいて充電率を推定するように構成している。なお、この構成は例えば後記実施例3で説明する構成に相当する。
【0014】
また、請求項4においては、請求項1乃至請求項3において、電池モデルの次数を1次に限定したものである。
ただし、請求項1と請求項2(および請求項3)とでは、適用する数式が異なるので、電池モデルの次数を1次に限定した際には、各々下記のようになる。 まず、請求項1において次数を1次に限定した電池モデルは下記(数5)式で示され、その場合には前記(数2)式〜(数4)式は、下記(数6)式〜(数8)式にそれぞれ対応することになる。
なお、この構成は例えば後記実施例1で説明する構成に対応する。
【0015】
【数5】
Figure 0003714246
【0016】
【数6】
Figure 0003714246
【0017】
【数7】
Figure 0003714246
【0018】
【数8】
Figure 0003714246
ただし、(数6)式、(数7)式、(数8)式において、
=Glp(s)・V
=s・Glp(s)・V
=s・Glp(s)・V
'=Glp(s)・V
=Glp(s)・I
=s・Glp(s)・I
=s・Glp(s)・I
lp(s)は2次以上のローパスフィルタ
一方、請求項2において、次数を1次に限定した電池モデルは下記(数21)式(=数5)で示され、その場合には前記(数16)式、(数18)式、(数19)式は、下記(数22)式(=数6)、(数25)式、(数29)式にそれぞれ対応することになる。
なお、この構成は例えば後記実施例3に対応する。
【0019】
【数21】
Figure 0003714246
【0020】
【数22】
Figure 0003714246
【0021】
【数25】
Figure 0003714246
【0022】
【数29】
Figure 0003714246
なお、請求項2において、次数を1次に限定した構成としては、推定したT、T、Kを、前記(数17)式の代わりに前記(数22)式と等価な下記(数34)式に代入することで、Glp(s)・Vを算出し、それを開路電圧Vの代用とするように構成することも出来る。
なお、この構成は例えば後記実施例4に相当する。
【0023】
【数34】
Figure 0003714246
また、請求項5においては、請求項1乃至請求項4において、適応デジタルフィルタを用いて推定されたパラメータの中で、定常項については上記推定値を用い、過渡項については予め設定された値を用いて開路電圧Vを推定するように構成している。
なお、この構成は例えば後記実施例2または実施例5に相当する。
【0024】
また、請求項6においては、請求項5において、開路電圧Vを(数17)式で近似することで(数16)式を(数18)式とし、その(数18)式と等価な(数19)式に対して適応デジタルフィルタ演算を行い、A(s)とB(s)の係数パラメータおよび変数dを一括推定し、これら推定値の中から直達項(e=b/a)を算出し、その算出した直達項eと設定値fとでe×fを算出し、次いで推定した値aの代わりに上記設定値fと、推定した値bの代わりに上記e×fと、推定した値an−1〜aおよびbn−1〜bとを、(数16)式と等価な(数20)式に代入してGlp(s)・Vを算出し、これを開路電圧Vの代用とするように構成している。上記のように請求項6においては、過渡項aを設定値fとし、直達項e=b/aは推定し、過渡項bはb=e×f=(推定値b/推定値a)×固定値aで求めるものである。
なお、この構成は例えば後記実施例6に相当する。
【0025】
また、請求項7は、請求項6において、二次電池の温度を検出する手段と、二次電池の温度に対する過渡項aの代わりとする設定値fのマップと、を備え、上記温度に応じて上記マップから設定値fを決定するように構成している。
なお、この構成は例えば後記実施例7に相当する。
【0026】
また、請求項8は、請求項6において、二次電池の温度を検出する手段と、二次電池の温度に対する過渡項aおよびbのマップとを設け、上記温度に応じて上記各マップから過渡項aおよびbを算出し、マップから算出した過渡項aおよびbから直達項のしきい値を算出し、上記直達項のしきい値で上記直達項の収束を判断し、収束前は、マップから算出した過渡項aおよびbと、推定した値an−1〜aおよびbn−1〜bとを上記(数20)式に代入してGlp(s)・Vを算出し、収束後は、マップから算出した過渡項aに相当する設定値fと、直達項eから算出したe×fと、推定したan−1〜aおよびbn−1〜bとを上記(数20)式に代入してGlp(s)・Vを算出するように構成している。
なお、この構成は例えば後記実施例8に相当する。
【0027】
また、請求項9においては、二次電池の電池モデルを連続時間系の(数22)式に示すように定義し、開路電圧Vを(数23)式で近似することで(数22)式を(数25)式に変形し、その(数25)式と等価な(数29)式に対して適応デジタルフィルタ演算を行い、過渡項TおよびK・T、内部抵抗K、変数dを一括推定し、これら推定値の中から直達項(a=K・T/T)を算出し、次いで過渡項Tの代わりに設定値bと、推定した値K・Tの代わりに直達項から算出したa×bと、推定した内部抵抗値Kとを、(数22)式と等価な(数35)式に代入してGlp(s)・Vを算出し、これを開路電圧Vの代用として充電率を算出するように構成している。
なお、この構成は例えば後記実施例9に相当する。
【0028】
また、請求項10は、請求項9において、二次電池の温度を検出する手段と、電池の温度に対する過渡項Tの代わりに用いる設定値bのマップと、を備え、上記温度に応じて上記マップから設定値bを決定するように構成している。
なお、この構成は例えば後記実施例10に相当する。
【0029】
また、請求項11は、請求項9において、二次電池の温度を検出する手段と、電池の温度に対する過渡項Tおよび過渡項K・Tのマップと、を設け、上記温度に応じて上記各マップから過渡項TおよびK・Tを算出し、上記マップから算出した過渡項TおよびK・Tから直達項aのしきい値を算出し、上記直達項aのしきい値で上記直達項の収束を判断し、収束前は、推定したTの代わりに上記マップから算出した過渡項Tと、推定したK・Tの代わりに上記マップから算出した過渡項K・Tと、推定した値Kとを(数35)式に代入してGlp(s)・Vを算出し、収束後は、推定したTの代わりに上記マップから算出したTに相当する設定値bと、推定したK・Tの代わりに直達項aを用いて算出したa×bと、推定した値Kとを(数35)式に代入してGlp(s)・Vを算出するように構成している。
なお、この構成は例えば後記実施例11に相当する。
【0030】
【発明の効果】
(請求項1の効果)
請求項1においては、二次電池の電流Iと端子電圧Vの関係を、(数4)式のように近似することで、計測可能な電流Iと端子電圧Vをフィルタ〔s・Glp(s)〕で処理した値と、未知パラメータ〔A(s)やB(s)の係数〕の積和式が得られるので、通常の適応デジタルフィルタを連続時間領域のまま適用することが可能となる。その結果、まず、未知パラメータを一括推定することができ、更に、その結果を(数3)式に代入することで、開路電圧Vの推定値としてGlp(s)・Vを容易に算出できる。これらパラメータは、充電率SOCや温度や電池の劣化度などに影響されて時々刻々変化するものであるが、適応デジタルフィルタにより精度良く逐次推定することが可能である。また、連続時間領域でモデルのパラメータ推定を行うので、離散時間領域で行う場合に比べて、推定誤差による安定性への影響が小さく、推定値が速やかに収束しやすい。なお、ローパスフィルタ特性Glp(s)は、電流Iと端子電圧Vの計測ノイズのレベルに応じて設定することが可能である。
また、開路電圧Vと充電率SOCの関係(後記図5参照)は、温度や電池の劣化度に影響されにくく一定の相関関係にあるため、この特性を予め記憶しておけば、開路電圧Vから充電率SOCが直接算出できる。したがって、充電率SOCについても開路電圧Vと同様に、条件によらず正確な推定が可能である。なお、本発明によれば二次電池の通電(充電、放電時)中でも充電率SOCを計測することが可能である。
【0031】
(請求項2の効果)
請求項2においては、電池の電流Iと端子電圧Vの関係を、(数19)式のように近似することでオフセット項Vを含まない。そのため、計測可能な電流Iと端子電圧Vをフィルタ処理〔s・Glp(s)〕した値と、未知パラメータ〔A(s)やB(s)の係数パラメータおよびd〕の積和式が得られるので、通常の適応デジタルフィルタを連続時間系のまま適用することが可能になる。そのため離散時間系で適用する場合に比べて、推定誤差による安定性への影響が小さく、推定値が速やかに収束しやすいという効果が得られる。
【0032】
(請求項3の効果)
(数17)式から開路電圧Vを算出すると、変数dが収束する前に積分した誤差が、収束後も定常的に残ってしまう。しかし、請求項3の(数20)式では積分を使用しないので、推定パラメータが収束する前の誤差は残らず、収束後は正確な開路電圧Vを算出できるという効果がある。なお、開路電圧Vは変化が緩やかなので、Glp(s)・Vで代用できる。
【0033】
(請求項4の効果)
請求項4においては、請求項1〜請求項3と同様の効果が得られ、かつ、電池モデルが1次で構造が簡単なだけ、推定演算負荷も低く実現が容易である。
【0034】
(請求項5の効果)
一般に適応デジタルフィルタ手法では、モデルの未知パラメータの中で、定常項に比べて過渡項の推定速度や推定精度が劣りやすい傾向がある。したがって請求項5のように、開路電圧Vの推定に特に影響が大きい定常項(内部抵抗に相当)のみに適応デジタルフィルタ推定値を用い、過渡項(時定数など)は予め設定した値を用いて、開路電圧Vを最後に算出することにより、推定精度を向上させることができる。
【0035】
(請求項6の効果)
適応デジタルフィルタで電池パラメータを推定した場合、定常項aおよびb、直達項(b/a、つまりbとaの比率)の推定精度は良好だが、過渡項(a〜aおよびb〜b)の推定精度がやや劣る傾向がある。(数20)式に代入する過渡項aおよびbの比率が、実際の電池の値と大きく異なる場合には、(数20)式から算出する推定開路電圧Glp(s)・Vの過渡的な推定精度が悪化(推定遅れや、オーバーシュートが大きくなる)する。しかし、請求項6においては、過渡項aだけを固定値fとし、推定値を用いて直達項(e=b/a)を算出し、推定精度が良い直達項から過渡項bをe×fとして算出するので、(数20)式に代入する過渡項aおよびbの比率が、実際の電池パラメータの値と近いために、(数20)式から算出する推定開路電圧はオーバーシュートせずに、かつ推定値をそのまま(数20)式に代入した場合よりも推定精度が良いという効果がある。
【0036】
(請求項7の効果)
過渡項aは温度に応じて変化することが判っているので、請求項6の設定値fを固定値とはせず、二次電池の温度に対応したマップから読み出することにより、温度変化に対応した最適な設定値fを決定できるので、オーバーシュートの可能性を少なくできるという効果がある。
【0037】
(請求項8の効果)
推定演算開始から直達項を使用すると、直達項の収束は内部抵抗よりも遅いので、収束前の直達項から算出するe×fのために、開路電圧推定値がハンチングするおそれがある。しかし、請求項8のように、予め測定した温度に対する過渡項aおよびbの数値をマップにしておき、マップから求めた過渡項aおよびbから収束判断用のしきい値を決め、推定した直達項の収束を判断し、直達項の収束前は直達項ではなく設定値を用い、直達項の収束後は直達項から算出する方法を用いることにより、開路電圧推定値がハンチングするおそれを解決できるという効果がある。
【0038】
(請求項9の効果)
適応デジタルフィルタで電池パラメータを推定した場合、内部抵抗Kと直達項(K・T/T、つまりK・TとTの比率)の推定精度は良好だが、過渡項TおよびK・Tの推定精度がやや劣る傾向がある。そのため(数35)式に代入する過渡項TおよびK・Tの比率が、実際の電池の値と大きく異なる場合には、(数35)式から推定する開路電圧Glp(s)・Vの過渡的な推定精度が悪化(推定遅れや、オーバーシュートが大きくなる)する。しかし、請求項9においては、過渡項Tだけを固定値bとし、推定値を用いて直達項(a=K・T/T)を算出し、推定精度が良い直達項から過渡項K・Tをa×bとして算出するので、(数35)式に代入する過渡項TおよびK・Tの比率が、実際の電池パラメータの値に近くなるため、(数35)式から算出する開路電圧はオーバーシュートせず、かつ推定値をそのまま(数35)式に代入した場合よりも推定精度が良いという効果がある。
【0039】
(請求項10の効果)
過渡項Tは温度に応じて変化することが判っているので、請求項9の設定値bを固定値とはせず、二次電池の温度に対応したマップから読み出することにより、温度変化に対応した最適な設定値bを決定できるので、オーバーシュートの可能性を少なくできるという効果がある。
【0040】
(請求項11の効果)
請求項9においては、推定演算開始から直達項を使用している。しかし、直達項の収束は内部抵抗よりも遅いので、収束前の直達項から算出するa×bのために、開路電圧推定値がハンチングするおそれがある。しかし、請求項11のように、予め測定した温度に対する過渡項TおよびK・Tの数値をマップにしておき、マップから求めた過渡項TおよびK・Tから収束判断用のしきい値を決め、推定した直達項aの収束を判断し、直達項の収束前は直達項ではなく設定値を用い、直達項の収束後は直達項から算出する方法を用いることにより、開路電圧推定値がハンチングするおそれを解決できるという効果がある。
【0041】
【発明の実施の形態】
(実施例1)
図1は、本発明の実施例1を機能ブロックで表した図である。図1において、1は電池の端子電圧を検出する端子電圧V(k)検出手段、2は電池の電流を検出する電流I(k)検出手段、3a〜3c、4a〜4cはそれぞれフィルタ演算手段、7は適応デジタルフィルタ演算手段〔パラメータθ(k)を推定〕、8は開路電圧演算手段〔V(k)を演算〕、9は開路電圧から充電率を演算するSOC演算手段である。
【0042】
図2は、実施例1の具体的な構成を示すブロック図である。この実施例は、二次電池でモータ等の負荷を駆動したり、モータの回生電力で二次電池を充電するシステムに、二次電池の充電率推定装置を設けた例を示す。
図2において、10は二次電池(単に電池ともいう)、20はモータ等の負荷、30は電池の充電状態を推定する電子制御ユニットで、プログラムを演算するCPUやプログラムを記憶したROMや演算結果を記憶するRAMから成るマイクロコンピュータと電子回路等で構成される。40は電池から充放電される電流を検出する電流計、50は電池の端子電圧を検出する電圧計、60は電池の温度を検出する温度計であり、それぞれ電子制御ユニット30に接続される。上記の電子制御ユニット30は前記図1のフィルタ演算手段3a〜3c、4a〜4c、適応デジタルフィルタ演算手段7、開路電圧V(k)演算手段8およびSOC演算手段9の部分に相当する。また、電流計40は電流I(k)検出手段2に、電圧計50は端子電圧V(k)検出手段1に、それぞれ相当する。
【0043】
本発明は、通電中の二次電池の端子電圧Vと電流Iの計測データに、適応デジタルフィルタを用いて開路電圧Vを推定し、公知の開路電圧Vと充電率SOCの関係から充電率を推定する装置であり、二次電池の電池モデルを下記(数2)式の様に定義し、この(数2)式と等価な(数3)式に対して両辺を時間微分することにより、(数4)式を求め、この(数4)式に対して適応デジタルフィルタを用いてA(s)とB(s)の係数パラメータを一括推定し、この推定結果を(数3)式に代入することにより開路電圧Vを求め、公知の開路電圧と充電率の関係から充電率を推定するものである。
【0044】
【数2】
Figure 0003714246
【0045】
【数3】
Figure 0003714246
【0046】
【数4】
Figure 0003714246
なお、sはラプラス演算子、A(s)とB(s)はsの多項式関数、Glp(s)はsの分数多項式関数つまり伝達関数である。このGlp(s)はローパスフィルタ特性であり、A(s)の次数+1以上の次数を有する。
【0047】
上記の内容を具体的に説明すると次のようになる。
まず、本実施例で用いる「電池モデル」を説明する。図3は、二次電池の等価回路モデルを示す図であり、下記(数5)式で示される。
(数5)式において、モデル入力は電流I[A](正値は充電、負値は放電)、モデル出力は端子電圧V[V]、R〔Ω]は電荷移動抵抗、R[Ω]は純抵抗、C[F]は電気二重層容量、V[V]は開路電圧である。なお、sはラプラス演算子である。本モデルは、正極、負極を特に分離していないリダクションモデル(一次)であるが、実際の電池の充放電特性を比較的正確に示すことが可能である。
【0048】
【数5】
Figure 0003714246
上記(数5)式に基づいて、下記の(数6)式〜(数8)式が導出される。つまり、電池モデルの次数を1次に限定することにより、前記(数2)式〜(数4)式は下記(数6)式〜(数8)式となる。
【0049】
【数6】
Figure 0003714246
【0050】
【数7】
Figure 0003714246
【0051】
【数8】
Figure 0003714246
ただし、V=s・Glp(s)・V
=s・Glp(s)・V
=Glp(s)・V
'=Glp(s)・V
=s・Glp(s)・I
=s・Glp(s)・I
=Glp(s)・I
上記式中のV、V、V、I、I、Iは、実際に計測可能な電池の電流Iと端子電圧Vを、ローパスフィルタGlp(s)、バンドパスフィルタs・Glp(s)、s・Glp(s)で処理した値である。なお、ローパスフィルタGlp(s)、バンドパスフィルタs・Glp(s)、s・Glp(s)は、図1のフィルタ演算手段3a〜3c、4a〜4cに相当し、上記の各式と次のごとき対応関係にある。
=s・Glp(s)・V :3c
=s・Glp(s)・V :3b
=Glp(s)・V :3a
=s・Glp(s)・I :4c
=s・Glp(s)・I :4b
=Glp(s)・I :4a
上記(数8)式は、計測可能な値と、未知パラメータとの積和式になっており、一般的な「適応デジタルフィルタ」の標準形である下記(数9)式と一致する。
y=ω・θ …(数9)
ただし、ω=[V,I,I]、θ=[−T,K・T,K]
したがって、電流Iと端子電圧Vを各フィルタ演算手段3a〜3c、4a〜4cで処理した信号を、適応デジタルフィルタ演算に用いることで、未知パラメータベクトルθを推定することが出来る。
特に本実施例では、単純な「最小二乗法による適応デジタルフィルタ」などの論理的な欠点、つまり一旦、推定値が収束すると、その後、パラメータが変化しても再度正確な推定ができない点を改善した「両限トレースゲイン方式」を用いる。
【0052】
前記の(数9)式を前提として未知パラメータベクトルθを推定するための逐次推定アルゴリズムは下記(数10)式に示すようになる。ただしk時点のパラメータ推定値をθ(k)とする。
【0053】
【数10】
Figure 0003714246
ただし、λ、λ、γ、γは初期設定値で、0<λ<1、0<λ(k)<∞とする。また、P(0)は十分大きな値を初期値とし、θ(0)は非ゼロな十分小さな値を初期値とする。trace{P}は行列Pのトレース(対角要素の和)を意味する。P'(k)は(数10)式で定義される。
【0054】
図4は、電子制御ユニット(図2の30)のマイクロコンピュータが行う処理のフローチャートであり、実施例1の処理に相当する。同図のルーチンは一定周期T毎に実施される。なお、(k)は今回の値、(k−n)はnサンプル周期前(n回前)の値を意味する。
【0055】
図4において、ステップS10では、電流I(k)、端子電圧V(k)、温度T(k)を計測する。つまり図2の電流計40、電圧計50、温度計60の値を読み込む。
ステップS20では、SOC推定演算(同定アルゴリズム)を実行するか否かを判定する。本電子制御ユニットは、バッテリ遮断リレーの制御も行っており、リレー遮断時(電流I=0)は推定を停止してステップS30へ進む。リレー締結時は、ステップS40へ直接行って推定演算を実行する。
ステップS30では、端子電圧V(k)を端子電圧初期値V_iniとして記憶する。
【0056】
ステップS40では、端子電圧差分値△V(k)=V(k)−V_iniを演算する。これは、非ゼロの電圧値が適応デジタルフィルタに初期値として入力されると誤った推定をする可能性があるので、これを避ける目的である。なお、電源リレー締結開始時から適応デジタルフィルタ演算を行うので、電流値I(k)はゼロを初期値として入力される。したがって、電流値I(k)は、必ずしも偏差を用いる必要性はない。
ステップS50では、ローパスフィルタGlp(s)、バンドパスフィルタs・Glp(s)、s・Glp(s)のフィルタ処理を、電流I(k)および端子電圧差分値△V(k)に施して、V、V、V、I、I、Iを算出する。本実施例では、ローパスフィルタおよびバンドパスフィルタの特性を下記(数11)式に示すものとする。
【0057】
【数11】
Figure 0003714246
実際の演算は、連続時間系で記述された上記の伝達関数をタスティン近似等で離散時間化して、下記(数12)式に示すような漸化式を求めて処理を行う。
【0058】
【数12】
Figure 0003714246
ただし、(k−n)は、n演算周期前の値を示す。
次に、ステップS60では、ステップS50で算出したV(k)、V(k)、I(k)、I(k)を用いて、適応デジタルフィルタ演算〔前記(数10)式〕を行って未知パラメータベクトルθ(k)を算出する。
ただし、ω=[V,I,I]、θ=[−T,K・T,K]である。
ステップS70では、ステップS50で算出したV(k)、V(k)、I(k)、I(k)と、ステップS60で算出した未知パラメータベクトルθ(k)とを、前記(数7)式に代入することで、△V’〔=Glp(s)・V〕を算出する。しかし、これで求まるのは、同定アルゴリズム開始時からの開路電圧の変化分△V(k)であるから、これに開路電圧初期値V_ini(=端子電圧初期値V_ini)を加算して下記(数13)式に示すように開路電圧V(k)を算出する。
【0059】
【数13】
Figure 0003714246
次に、ステップS80では、図5に示すような開路電圧Vと充電率SOCの相関マップを用いて、上記の算出したV(k)から充電率SOC(k)を算出する。ただし、図5中のVはSOC=0%に、VはSOC=100%に相当する開路電圧である。
【0060】
上記のように実施例1においては、二次電池の電流Iと端子電圧Vの関係を、(数4)式または(数8)式のように近似することで、計測可能な電流Iと端子電圧Vをフィルタ〔s・Glp(s)〕で処理した値と、未知パラメータ〔A(s)やB(s)の係数〕の積和式が得られるので、通常の適応デジタルフィルタ(最小二乗法などの公知の推定アルゴリズム)を連続時間領域のまま適用することが可能となる。その結果、まず、未知パラメータ〔A(s)やB(s)の係数〕を一括推定することができ、更に、(数3)式または(数7)式に代入することで、開路電圧Vの推定値としてGlp(s)・Vを容易に算出できる。
【0061】
これらパラメータは、SOCや温度や劣化度などに影響され時々刻々変化するものであるが、適応デジタルフィルタ(公知の推定アルゴリズム)により精度良く逐次推定することが可能である。また、連続時間領域でモデルのパラメータ推定を行うので、離散時間領域で行う場合に比べて、推定誤差による安定性への影響が小さく、推定値が速やかに収束しやすい。なお、ローパスフィルタ特性Glp(s)は、電流Iと端子電圧Vの計測ノイズのレベルに応じて設定することが可能である。
【0062】
また、開路電圧Vと充電率SOCの関係(図5)は、温度や電池の劣化度に影響されにくく一定の相関関係にあるため、この特性を予め記憶しておけば、開路電圧Vから充電率SOCが直接算出できる。したがって、充電率SOCについても開路電圧Vと同様に、条件によらず正確な推定が可能である。
【0063】
以上の効果は、図6に示すシミュレーション結果で確認できる。図6は、時点200sを境に、0℃電池特性から25℃電池特性にステップ的に切り替えた場合の結果である。このような急激な変化は、実際には有り得ない条件ではあるが、特性変化の影響を確認するために設定したものである。図6から判るように、急激に特性が切り換わった直後を除けば、開路電圧Vは真値に収束しており、本発明の効果が明瞭に示されている。
また、本実施例においては、電池モデルの次数を1次にすることにより、電池モデルの構造が簡単になるので、推定演算負荷も低くなり、容易に実現することが可能になる。
【0064】
(実施例2)
実施例2としては、前記実施例1における図4のフローチャートにおいて、ステップS70の処理を下記のように変更する。
すなわち、図4のステップS70において、ステップS50で算出したV(k)、V(k)、I(k)、I(k)と、ステップS60で推定算出した未知パラメータベクトルθ(k)の中の定常項K(k)と、予め用意した時定数T、Tを、前記(数7)式に代入することで、△V’〔=Glp(s)・V〕を算出する。
つまり、この実施例2においては、適応デジタルフィルタを用いて推定された未知パラメータの中で、定常項K(内部抵抗R)など一部のパラメータのみを利用し、過渡項(時定数T、T)については予め設定された値を用いて開路電圧を推定するように構成している。
一般に「適応デジタルフィルタ手法」では、モデルの未知パラメータの中で、定常項に比べて過渡項の推定速度や推定精度が劣りやすい傾向がある。この傾向が大きい電池の場合には、開路電圧Vの推定に特に影響が大きい定常項(内部抵抗に相当)のみ適応デジタルフィルタ推定値を用いて、過渡項(時定数など)は予め設定した値を用いて、開路電圧Vを最後に算出することで、推定精度が向上する場合がある。
【0065】
(実施例3)
適応デジタルフィルタを用いて開路電圧を推定する方法としては、オフセット項Vを電流Iに依存しない定数項として扱い、公知の適応デジタルフィルタである拡大最小二乗法を、下記(数14)式(=数2)を離散時間系にした下記(数15)式に適用する方法(本出願人の先願:特願平2001−268314号:未公開)も考えられる。
【0066】
【数14】
Figure 0003714246
【0067】
【数15】
Figure 0003714246
ただし、a、b、cは虚数、nは次数、r(k)は式誤差、e(k)は平均値零、分散σの白色雑音、C(z−1)・r(k)=e(k)、C(z−1)はz−1の多項式、pはその次数である。
しかし、上記の方法では、ノイズ等の影響によって、推定パラメータaが離散時間系の不安定領域〔A(z−1)=0の根、つまり極が半径1の円外〕に誤推定されると、推定値が収束しなかったり、推定精度が悪化する、ことがある。
これは、離散時間系では安定な極と不安定な極が、連続系に比べて著しく近くに存在する場合があるためである。
【0068】
また、離散時間系モデルに適応デジタルフィルタを用いた場合、電池モデルのパラメータ値に応じて、例えば、温度0℃では0.05s、温度25℃では0.1sと言うように、最適なサンプリング時間(適応デジタルフィルタの演算周期)があることが分かっている。そのため、一定のサンプリング時間で離散化して(数15)式にすると、異なる温度環境で使用される電池では、パラメータの推定精度が悪化する場合がある。実施例3〜実施例5は上記の点を改良したものである。以下、説明する。
【0069】
図7は実施例3の機能ブロック図である。
図7において、11〜15はそれぞれフィルタ演算手段であり、11はs・Glp(s)の特性を有しV(k)を算出する。12はs・Glp(s)の特性を有しV(k)を算出する。13はGlp(s)の特性を有しI(k)を算出する。14はs・Glp(s)の特性を有しI(k)を算出する。15はs・Glp(s)の特性を有しI(k)を算出する。16は適応デジタルフィルタ演算手段〔d(k)を演算〕である。17は開路電圧演算手段であり、適応デジタルフィルタ演算手段16で求めたd(k)と電流検出手段2で検出した電流I(k)を用いて開路電圧V(k)を算出する。その他、図1と同符号は同じ名称のブロックを示す。また、図2、図3、図5は前記と同じである。
【0070】
本実施例では、二次電池の電池モデルを下記(数16)式(=数2=数14)のように定義し、開路電圧を下記(数17)式で近似し、この(数17)式を(数16)式に代入することにより下記(数18)式を得、この(数18)と等価な下記(数19)式に対して適用デジタルフィルタを用いてA(s)とB(s)の係数パラメータと変数dとを一括推定し、この変数dを(数17)に代入することにより開路電圧を求め、公知の開路電圧Vと充電率SOCの関係から充電率を推定するように構成している。
【0071】
【数16】
Figure 0003714246
【0072】
【数17】
Figure 0003714246
【0073】
【数18】
Figure 0003714246
【0074】
【数19】
Figure 0003714246
なお、実施例3の変形として次のごとき構成も考えられる。すなわち、(数16)式の電池モデル(連続時間系)を用いて、開路電圧Vを(数17)式で近似することで、(数16)式を(数18)式とし、(数18)式と等価な(数19)式に対して適応デジタルフィルタ演算を行い、A(s)とB(s)の係数パラメータ及び変数dを一括推定し、次いで(数17)式の代わりに(数16)式と等価な下記(数20)式に、推定したA(s)とB(s)の係数パラメータを代入してGlp(s)・Vを算出し、これを開路電圧Vの代用とすることも出来る。
【0075】
【数20】
Figure 0003714246
実施例3の内容を具体的に説明すると次のようになる。
「電池モデル」は前記図3と同じであり、下記(数21)式(=数5)で示される。
(数21)式において、モデル入力は電流I[A](正値は充電、負値は放電)、モデル出力は端子電圧V[V]、R〔Ω]は電荷移動抵抗、R[Ω]は純抵抗、C[F]は電気二重層容量、V[V]は開路電圧である。なお、sはラプラス演算子である。本モデルは、正極、負極を特に分離していないリダクションモデル(一次)であるが、実際の電池の充放電特性を比較的正確に示すことが可能である。
【0076】
【数21】
Figure 0003714246
上記(数21)式を変形すると下記(数22)式(=数6)になる。
【0077】
【数22】
Figure 0003714246
ただし、T=C・R
=C・R・R/(R+R
K=R+R
開路電圧Vは、電流Iに可変な効率dを乗じたものを、ある初期状態から積分したものと考えれば、下記(数23)式(=数17)で示すことが出来る。
【0078】
【数23】
Figure 0003714246
(数23)式を(数22)式に代入すれば(数24)式になり、整理すれば(数25)式になる。
【0079】
【数24】
Figure 0003714246
【0080】
【数25】
Figure 0003714246
安定なローパスフィルタGlp(s)を(数25)式の両辺に乗じ、整理すれば(数26)式になる。
【0081】
【数26】
Figure 0003714246
実際に計測可能な電流Iや端子電圧Vに、ローパスフィルタやバンドパスフィルタ(図7の11〜15)を処理した値を下記(数27)式のように定義する。
【0082】
【数27】
Figure 0003714246
上記(数27)式で示す変数を用いて(数26)式を書き直せば、(数28)式になる。
【0083】
【数28】
Figure 0003714246
(数28)式を更に変形すれば、(数29)式になる。
【0084】
【数29】
Figure 0003714246
ただし、V=s・Glp(s)・V
=s・Glp(s)・V
=s・Glp(s)・I
=s・Glp(s)・I
=Glp(s)・I
上記のように、電池モデルの次数を1次に限定することで、前記(数16)式、(数18)式、(数19)式は、それぞれ(数22)式、(数25)式、(数29)式に対応することになる。
(数29)式は、計測可能な値と未知パラメータの積和式になっているので、一般的な適応デジタルフィルタの標準形(数30)式と一致する。
y=ω・θ …(数30)
ただし、y=V、ω=[V,I,I,I
θ=[−T,K・T,K,d]
従って、電流Iと端子電圧Vにフィルタ処理した信号を、適応デジタルフィルタ演算に用いることで、未知パラメータベクトルθを推定することが出来る。 本実施例では、単純な「最小二乗法による適応デジタルフィルタ」の論理的な欠点、すわち、一度推定値が収束すると、その後パラメータが変化しても再度正確な推定ができない点を改善した「両限トレースゲイン方式」を用いる。
【0085】
上記(数30)式を前提に未知パラメータベクトルθを推定するための逐次推定アルゴリズムは下記(数31)式(=数10)に示すようになる。ただし、k時点のパラメータ推定値をθ(k)とする。
【0086】
【数31】
Figure 0003714246
ただし、λ、λ、γ、γは初期設定値で、0<λ<1、0<λ(k)<∞とする。また、P(0)は十分大きな値、θ(0)は非ゼロな十分小さな値を初期値とする。trace{P}は行列Pのトレース(対角要素の和)を意味する。P'(k)は(数31)式で定義される。
【0087】
図8は、実施例3における処理のフローチャートである。
図8のルーチンは一定周期T毎に実施される。また、(k)は今回の値、(k−q)はq回前の値を意味する。
まず、ステップS10では、電流I(k)、端子電圧V(k)を計測する。つまり、前記図2の電流計40、電圧計50の検出値を読み込む。
ステップS20では、二次電池の遮断リレーの判断する。バッテリーコントローラは二次電池の遮断リレーの制御も行っており、リレー遮断時(電流I=0)はステップS30へ進む。リレー締結時はステップS40へ進む。
ステップS30では、端子電圧V(k)を端子電圧初期値V_iniとして記憶する。
【0088】
ステップS40では、端子電圧差分値△V(k)を算出する。
△V(k)=V(k)−V_ini
これは、適応デジタルフィルタ内の推定パラメータの初期値を約0としているので、推定演算開始時に推定パラメータが発散しないように、入力を全て0とするためである。リレー遮断時はステップS30を通るので、I=0かつ△V(k)=0なので、推定パラメータは初期状態のままである。
ステップS50では、電流I(k)と端子電圧差分値△V(k)に、(数27)式に基づきローパスフィルタGlp(s)、バンドパスフィルタs・Glp(s)、s・Glp(s)のフィルタ処理を施し、V、V、V、I、I、Iを算出する。実施例ではGlp(s)を下記(数32)式に示すような3次とする。
【0089】
【数32】
Figure 0003714246
実際の演算は、連続時間系で記述された伝達関数をタスティン近似等で離散時間化し、下記(数33)式のような漸化式でフィルタ処理を行う。係数α〜α、β〜βはGlp(s)を離散時間化した際の定数である。
Figure 0003714246
ステップS60では、ステップS50で算出したI(k)、I(k)、I(k)、V(k)、V(k)を前記(数30)式に代入する。そして適応デジタルフィルタ演算である前記(数31)式を行い、パラメータ推定値θ(k)を算出する。ただし、y=V、ω=[V,I,I,I]、θ=[−T,K・T,K,d]である。
【0090】
ステップS70では、ステップS60で算出したパラメータ推定値θ(k)の中からd(k)を用い、前記(数23)式に基づき開路電圧推定値を算出する。ただし、ここで求まるのは推定演算開始時からの開路電圧推定値の変化分△V(k)である。実際の演算は、連続時間系で記述された前記(数23)式をタスティン近似等で離散時間化した漸化式で行う。
ステップS80では、ステップS70で算出した△V(k)は同定アルゴリズム開始時からの開路電圧の変化分であるから、開路電圧初期値すなわち端子電圧初期値V_iniを加算して開路電圧推定値V(k)を算出する。
【0091】
(k)=△V(k)+V_ini
ステップS90では、前記図5に示した開路電圧Vと充電率SOCの相関マップを用いて、ステップS80で算出したV(k)から充電率SOC(k)を算出する。ただし、図5中のVはSOC=0%に、VはSOC=100%に相当する開路電圧である。
ステップS100では、次回の演算に必要な数値を保存して、今回演算を終了する。
【0092】
上記のように、実施例3においては、電池の電流Iと端子電圧Vの関係を、前記(数19)式のように近似することでオフセット項Vを含まない。そのため、計測可能な電流Iと端子電圧Vをフィルタ処理〔s・Glp(s)〕した値と、未知パラメータ〔A(s)やB(s)の係数パラメータ及びd〕の積和式が得られるので、通常の適応デジタルフィルタを連続時間系のまま適用することが可能になる。そのため離散時間系で適用する前記先行技術(本出願人の先願:特願平2001−268314号)に比べて、推定誤差による安定性への影響が小さく、推定値が速やかに収束しやすいと言う効果が得られる。
【0093】
図9は、電池モデルのパラメータを温度25℃から0℃のものに、時間200sを境に変化させた条件で、上記先行技術でパラメータ同定した場合のシミュレーション結果を示す図である。ここでは前記(数15)式中の次数をn=1としている。
【0094】
図9において、推定パラメータaが離散時間系での不安定領域であるa<−1になると(図9の▲1▼)、開路電圧の推定精度が悪化する(図9の▲2▼)。また、時間200s以降の温度0℃の領域では、サンプリング時間が温度25℃に最適な0.1s設定なので、開路電圧の推定精度が悪くなる。
これに対して、実施例3においては、オフセット項Vを含まない電池モデルを用いた構成なので、適応デジタルフィルタを連続時間系で適用できる。
【0095】
図10は、電池モデルのパラメータを温度25℃から0℃のものに、時間200sを境に変化させた条件で、実施例3でパラメータ同定した場合のシミュレーション結果を示す図である。
図10においては、温度が25℃から0℃に切り替わる直後であっても、安定性を乱されること無く、推定パラメータは真値に速やかに収束している。また、サンプリング時間は一定な0.1s設定でも、温度0℃及び25℃共に推定パラメータは真値に速やかに収束している。
【0096】
また、前記(数20)式を用いる構成においては、次のごとき利点がある。すなわち、前記(数23)式(=数17)から開路電圧Vを算出すると、変数dが収束する前(図10の▲1▼や▲2▼)に積分した誤差が、収束後も定常的に残ってしまう。しかし、前記(数20)式では積分を使用しないので、推定パラメータが収束する前の誤差は残らず、収束後は正確な開路電圧Vを算出できるという効果がある。なお、開路電圧Vは変化が緩やかなので、Glp(s)・Vで代用できる。
【0097】
また、本実施例においては、電池モデルの次数を1次にすることにより、電池モデルの構造が簡単になるので、推定演算負荷も低くなり、容易に実現することが可能になる。
【0098】
(実施例4)
実施例4は、実施例3において、電池モデルの次数を1次に限定し、かつ、推定したT、T、Kを、前記(数23)式(=数17)の代わりに前記(数22)式と等価な下記(数34)式に代入することで、Glp(s)・Vを算出し、それを開路電圧Vの代用とするように構成したものである。
【0099】
【数34】
Figure 0003714246
ただし、V=Glp(s)・V
図11は、実施例4の機能ブロック図である。図11において、21〜26はそれぞれフィルタ演算手段であり、図示のような特性を有し、V(k)、V(k)、V(k)、I(k)、I(k)、I(k)を算出する。また、適応デジタルフィルタ演算手段27ではT(k)、T(k)、K(k)を算出する。開路電圧演算手段28では適応デジタルフィルタ演算手段27で算出したT(k)、T(k)、K(k)とフィルタ演算手段21、22、24、25で算出したV(k)、V(k)、I(k)、I(k)を用いて開路電圧V(k)を算出する。その他、図1と同符号は同じ名称のブロックを示す。また、図2、図3、図5は前記と同じである。
【0100】
実施例4における演算処理は、図8のフローチャートにおいて、ステップS70の内容を下記のように変更したものである。
すなわち、ステップS70において、ステップS60で算出したパラメータ推定値θ(k)の中からT、K・T、Kを用い、前記(数22)式と等価な前記(数34)式に基づきGlp(s)・Vを算出し、これを開路電圧Vの代用とする。開路電圧Vは変化が緩やかなので、Glp(s)・Vで代用できる。ただし、ここで求まるのは推定演算開始時からの開路電圧推定値の変化分△V(k)である。
【0101】
(実施例5)
実施例5としては、図8のフローチャートにおいて、ステップS70の内容を下記のように変更する。
すなわち、ステップS70において、ステップS60で算出したパラメータ推定値θ(k)の中からKだけを用い、T、Tは予め設定した値を用い、前記(数22)式と等価な前記(数34)式に基づきGlp(s)・Vを算出し、これを開路電圧Vの代用とする。開路電圧Vは変化が緩やかなので、Glp(s)・Vで代用できる。ただし、ここで求まるのは推定演算開始時からの開路電圧推定値の変化分△V(k)である。
【0102】
上記のように、実施例5においては、適応デジタルフィルタを用いて推定された未知パラメータの中で、定常項K(内部抵抗R)など一部のパラメータのみを利用し、過渡項については予め設定された値を用いて開路電圧Vを推定するように構成している。一般に適応デジタルフィルタ手法では、モデルの未知パラメータの中で、定常項に比べて過渡項の推定速度や推定精度が劣り易い傾向がある。この傾向が強い電池の場合には、開路電圧Vの推定に特に影響が大きい定常項(内部抵抗に相当)のみについて適応デジタルフィルタからの推定値を用い、過渡項(時定数など)は予め設定した値を用いて、開路電圧Vを算出することで、推定精度が向上する場合もある。
【0103】
(実施例6)
前記実施例5においては、適応デジタルフィルタを用いて推定された未知パラメータの中で、定常項(内部抵抗R)など一部のパラメータのみを利用し、過渡項については予め設定された値を用いて開路電圧Vを推定するように構成している。そのため、温度が一定で電池パラメータが変化しない場合は、全て推定値を用いる場合よりも位相遅れが改善される。しかし、温度変化によって実際の電池パラメータが固定値から変化した場合には、直達項が実際とずれるために、開路電圧の過渡的な推定精度が悪化(推定遅れや、オーバーシュートが大きくなる)することがある。
【0104】
実施例6は、上記の点を改良したものであり、過渡項aを固定値fとし、直達項e=b/aで推定し、過渡項bはb=e×f=(推定値b/推定値a)×固定値aで求めるように構成している。温度変化の影響分は直達項eに現れるので、結果的に算出される過渡項bの推定精度が固定値を用いた場合よりもよくなり、温度影響を受けずに、推定精度を向上させることが出来る。
【0105】
図12は、実施例6の機能ブロック図である。図12において、31は電圧値処理用の(n+1)個のフィルタ演算手段、32は電流値処理用の(n+1)個のフィルタ演算手段であり、s・Glp(s)におけるsの羃乗数が奇数の場合は、その出力が適応デジタルフィルタ演算手段33へ送られ、偶数(0を含む)の場合には、その出力が開路電圧演算手段35へ送られる。また、適応デジタルフィルタ演算手段33はa(k)、b(k)およびan−1(k)〜a(k)、bn−1(k)〜b(k)を演算する。設定値決定手段34はfとe(k)×fを出力する。開路電圧演算手段35は設定値決定手段34で求めたfとe(k)×fおよびフィルタ演算手段31、32で求めた結果を用いて開路電圧V(k)を算出する。
その他、図1と同符号は同じ名称のブロックを示す。また、図2、図3、図5は前記と同じである。
【0106】
本実施例では、二次電池の電池モデルを前記(数16)式のように定義し、開路電圧を前記(数17)式で近似し、この(数17)式を(数16)式に代入することにより前記(数18)式を得、この(数18)式と等価な前記(数19)式に対して適用デジタルフィルタを用いてA(s)とB(s)の係数パラメータと変数dとを一括推定し、これら推定値の中から直達項(e=b/a)を算出し、次いで推定値aの代わりに設定値fと、推定値bの代わりに直達項から算出するe×fと、推定したan−1〜aおよびbn−1〜bを、前記(数19)式と等価な前記(数20)式に代入してGlp(s)・Vを算出し、これを開路電圧Vの代用とするように構成している。
【0107】
上記のように構成したことにより、実施例6においては次のごとき効果が得られる。
適応デジタルフィルタで電池パラメータを推定した場合、定常項aおよびb、直達項(b/a、つまりbとaの比率)の推定精度は良好であるが、過渡項(a〜aおよびb〜b)の推定精度がやや劣る傾向がある。前記(数20)式に代入する過渡項aおよびbの比率が、実際の電池の値と大きく異なる場合には、(数20)式から推定した開路電圧Glp(s)・Vの過渡的な推定精度が悪化(推年遅れや、オーバーシュートが大きくなる)する。
【0108】
また、過渡項aおよびb(または全過渡項a〜aおよびb〜b)の両方に固定値を用いると、温度変化で実際の電池パラメータが変化した場合には、固定値である直達項(b/a)と実際の電池パラメータとが異なるために、前記(数20)式から算出する開路電圧はオーバーシュートする。
【0109】
その点、本実施例では、過渡項aだけ固定値fとし、推定値を用いて直達項(e=b/a)を算出し、推定精度が良い直達項から過渡項bをe×fとして算出しするので、前記(数20)式に代入する過渡項aおよびbの比率が、実際の電池パラメータの値と近いために、前記(数20)式から算出する開路電圧はオーバーシュートせず、かつ推定値をそのまま前記(数20)式に代入した場合よりも推定精度が良いという効果がある。
【0110】
(実施例7)
本実施例は、前記実施例6において、電池の温度(例えば表面温度)を検出する手段と、電池の温度に対する過渡項aのマップとを設け、温度に応じて前記マップから設定値fを決定するように構成したものである。
上記のように構成したことにより、実施例7においては、次のごとき効果が得られる。すなわち、実施例6では、設定値fを一定値に決定している。しかし、過渡項aは温度に応じて変化することが分かつているので、実施例6では温度変化に対応できないために、オーバーシュートの可能性が残る。その点、実施例7では、予め測定した温度に対する過渡項aに相当する設定値fの数値をマップにしておき、温度に応じて設定値fを決定するため、温度変化に対応した最適な設定値fを決定できるので、オーバーシュートの可能性を少なくできる。
【0111】
(実施例8)
実施例8は、前記実施例7において、電池の温度に対する過渡項aのマップの他に、電池の温度に対する過渡項bのマップをも設け、前記温度に応じて前記各マップから過渡項aおよびbを算出し、マップから算出した過渡項aおよびbから直達項のしきい値を算出し、前記直達項のしきい値で前記直達項の収束を判断する。そして、収束前はマップから算出した過渡項aおよびbと、推定したan−1〜aおよびbn−1〜bとを前記(数20)式に代入してGlp(s)・Vを算出し、収束後はマップから算出した設定値fと、直達項eから算出したe×fと、推定したan−1〜aおよびbn−1〜bとを前記(数20)式に代入してGlp(s)・Vを算出するように構成している。
実施例6においては、推定演算開始から直達項を使用している。しかし、直達項の収束は内部抵抗よりも遅いので、収束前の直達項から算出するe×fのために、開路電圧推定値がハンチングするおそれがある。しかし、実施例8のように、予め測定した温度に対する過渡項aおよびbの数値をマップにしておき、マップから求めた過渡項aおよびbから収束判断用のしきい値を決め、推定した直達項の収束を判断し、直達項の収束前は直達項ではなく設定値を用い、直達項の収束後は直達項から算出する方法を用いることにより、開路電圧推定値がハンチングするおそれを解決できる。
【0112】
(実施例9)
前記実施例5においては、過渡項TおよびK・Tの推定精度が内部抵抗Kに比べて劣る場合があるので、内部抵抗だけ推定値を用い、過渡項TおよびK・Tは推定値でなく固定値を用いて開路電圧を算出するように構成している。そのため、温度が一定で電池パラメータが変化しない場合は、全て推定値を用いる場合よりも位相遅れが改善される。しかし、温度変化によって実際の電池パラメータが固定値から変化した場合には、直達項(K・T/T、つまりK・TとTの比率)が実際とずれるために、開路電圧の過渡的な推定精度が悪化(推定遅れや、オーバーシュートが大きくなる)することがある。実施例9は、上記の点を改良したものである。
【0113】
図13は、実施例9の機能ブロック図である。図13において、41は複数の電圧値処理用のフィルタ演算手段、42は複数の電流値処理用のフィルタ演算手段である。適応デジタルフィルタ演算手段43はT(k)、KT(k)、K(k)を演算する。設定値決定手段44はbとa(k)×bを出力する。開路電圧演算手段45は設定値決定手段44で求めたbとa(k)×bおよびフィルタ演算手段41、42で求めた結果を用いて開路電圧V(k)を算出する。その他、図12と同符号は同じ名称のブロックを示す。また、図2、図3、図5は前記と同じである。
【0114】
本実施例においては、開路電圧Vを前記(数23)式(=数17)で近似することで前記(数22)式を前記(数25)式に変形し、前記(数25)式と等価な前記(数29)式に対して適応デジタルフィルタ演算を行い、過渡項T及びK・T、内部抵抗K、変数dを一括推定し、これら推定値の中から直達項(a=K・T/T)を算出し、次いで推定値Tの代わりに設定値bと、推定値K・Tの代わりに直達項から算出するa×bと、推定値Kとを、前記(数22)式と等価な下記(数35)式に代入してGlp(s)・Vを算出し、これを開路電圧Vの代用とするように構成している。
【0115】
【数35】
Figure 0003714246
ただし、T、K・Tは過渡項、Kは内部抵抗、Glp(s)は2次以上のローパスフィルタ、sはラプラス演算子である。
【0116】
図14は、実施例9における処理のフローチャートであり、同図のルーチンは一定周期T毎に実施される。なお、(k)は今回の値、(k−q)はq回前の値を意味する。
図14において、まず、ステップS10では、電流I(k)、端子電圧V(k)を計測する。つまり前記図2の電流計40、電圧計50の値を読み込む。
ステップS20では、二次電池の遮断リレーの判断する。バッテリーコーントローラは二次電池の遮断リレーの制御も行っており、リレー遮断時(電流I=0)はステップS30へ進む。リレー締結時はステップS40へ進む。
【0117】
ステップS30では、端子電圧V(k)を端子電圧初期値V_iniとして記憶する。
ステップS40では、端子電圧差分値△V(k)を算出する。
△V(k)=V(k)−V_ini
これは、適応デジタルフィルタ内の推定パラメータの初期値を約0としているので、推定演算開始時に推定パラメータが発散しないように、入力を全て0とするためである。リレー遮断時はステップS30を通るので、I=0かつ△V(k)=0なので、推定パラメータは初期状態のままである。
【0118】
ステップS50では、電流I(k)と端子電圧差分値△V(k)に、前記(数27)式に基づきローパスフィルタGlp(s)、バンドパスフィルタs・Glp(s)、s・Glp(s)のフィルタ処理を施し、I、I、I、V、V、Vを算出する。本実施例では前記(数32)式で示したようにGlp(s)を3次とする。
実際の演算は、連続時間系で記述された伝達関数をタスティン近似等で離散時間化し、前記(数33)式で示したような漸化式でフィルタ処理を行う。
【0119】
ステップS60では、ステップS50で算出したI(k)、I(k)、I(k)、V(k)、V(k)を前記(数30)式に代入する。そして適応デジタルフィルタ演算である前記(数31)式を行ってパラメータ推定値θ(k)を算出する。
ただし、y=V(k)
ω=[V(k),I(k),I(k),I(k)]
θ=[−T(k),K・T(k),K(k),d(k)]である。
ステップS70においては、ステップS60で算出したパラメータ推定値θ(k)の中から、T(k)=0か否かで場合分けをし、T(k)=0の場合はステップS80へ行き、その他の場合はステップS90へ行く。
【0120】
ステップS80では、直達項aとして前回値を保持する。
a(k)=a(k−1)
ステップS90では、直達項aを算出する。
a(k)=K・T(k)/T(k)
ステップS100では、
▲1▼電流I(k)および端子電圧V(k)と、
▲2▼推定値T(k)ではなく、予め設定した固定値bと、
▲3▼推定値K・T(k)ではなく、直達項a(k)から算出したa(k)×bと、
▲4▼推定値K(k)とを、それぞれ前記(数22)式と等価な前記(数35)式に代入することにより、Glp(s)・Vを算出し、これを開路電圧Vの代用とする。開路電圧Vは変化が緩やかなので、Glp(s)・Vで代用できる。
ただし、ここで求まるのは推定演算開始時からの開路電圧推定値の変化分△V(k)である。
【0121】
ステップS110では、ステップS100で算出した△V(k)は同定アルゴリズム開始時からの開路電圧の変化分であるから、開路電圧初期値すなわち端子電圧初期値V_iniを加算して開路電圧推定値V(k)を算出する。
(k)=△V(k)+V_ini
ステップS120では、前記図5に示した開路電圧と充電率の相関マップを用いて、ステップS110で算出したV(k)から充電率SOC(k)を算出する。
ステップS130では、次回の演算に必要な数値を保存して、今回の演算を終了する。
【0122】
上記のように構成したことにより、実施例9においては下記のごとき効果が得られる。
適応デジタルフィルタで電池パラメータを推定した場合、内部抵抗Kと直達項(K・T/T、つまりK・TとTの比率)の推定精度は良好であるが、過渡項TおよびK・Tの推定精度がやや劣る傾向がある。前記(数35)式に代入する過渡項TおよびK・Tの比率が、実際の電池の値と大きく異なる場合には、(数35)式から算出する開路電圧Glp(s)・Vの過渡的な推定精度が悪化(推定遅れや、オーバーシュートが大きくなる)することがある。
また、過渡項TおよびK・Tとして共に固定値を用いた場合には、温度変化で実際の電池パラメータが変化した場合に、固定値の直達項(K・T/T)と、実際の電池パラメータの値とが異なるため、前記(数35)式から算出する開路電圧はオーバーシュートする。
【0123】
その点、本実施例では、過渡項Tだけを固定値bとし、推定値を用いて直達項(a=K・T/T)を算出し、推定精度が良い直達項から過渡項K・Tをa×bとして算出するので、前記(数35)式に代入する過渡項TおよびK・Tの比率が、実際の電池パラメータの値と近くなるので、前記(数35)式から算出する開路電圧はオーバーシュートせず、かつ推定値をそのまま前記(数35)式に代入した場合よりも推定精度が良いと言う効果がある。
【0124】
図15および図16は、温度を約25℃から約10℃に緩やかに変化させながら、充放電を繰り返した場合のパラメータ同定結果を示す図であり、全て推定値を用いた場合を参考例として点線で示し、実施例9の特性を実線で示している。図15は温度が約25℃の部分で、図16は温度が約10℃の部分であり、共に参考例と本実施例の方法で開路電圧を推定している。参考例と本実施例の固定値は、共に温度25℃の参照値を用いている。
【0125】
図15は、温度が約25℃の部分である。適応デジタルフィルタの推定値に関しては、内部抵抗Kは温度25℃の参照値に収束しているが、過渡項TおよびK・Tは温度25℃の参照値に収束していない。参考例では、過渡項TおよびK・Tは、共に温度25℃の参照値を固定値としている。本実施例では、過渡項Tは温度25℃の参照値を固定値とし、過渡項K・Tの算出値は温度25℃の参照値に収束している(図15の▲1▼)。その結果、開路電圧の推定値に関して、参考例と本実施例はほぼ一致している。そして、参考例と本実施例は共に、適応デジタルフィルタの推定値の全てを用いて開路電圧を算出した場合よりも、位相遅れが改善されている(図15の▲2▼)。
【0126】
図16は、温度が約10℃の部分である。適応デジタルフィルタの推定値に関しては、内部抵抗Kは温度10℃の参照値に収束しているが、過渡項TおよびK・Tは温度10℃の参照値に収束していない。参考例では、温度約10℃であるにも関わらず、過渡項TおよびK・Tは共に温度25℃の参照値を固定値としている。その結果、参考例は開路電圧がオーバーシュートしている(図16の点線▲2▼)。
【0127】
本実施例では、過渡項Tは温度25℃の参照値を固定値としているが、過渡項K・Tの算出値は温度10℃の参照値にほぼ収束している(図16の実線▲1▼)。その結果、過渡項Tは温度10℃の参照値とは異なるが、直達項(K・TとTの比率)としては温度10℃の参照値に収束しているので、本実施例は開路電圧がオーバーシュートせず、かつ適応デジタルフィルタの推定値の全てを用いて開路電圧を算出した場合よりも、位相遅れが改善されている(図16の実線▲2▼)。
【0128】
(実施例10)
実施例10は、実施例9において、電池の温度に対する過渡項Tのマップを設けておき、温度に応じて前記マップから設定値bを決定するように構成したものである。
実施例10の処理内容は実施例9のフローチャートにおいて、下記の部分を変更したものである。すなわち、前記図14において、ステップS20〜ステップS90は、実施例9と同様である。
【0129】
ステップS10では、電流I(k)、端子電圧V(k)、温度TH(k)を計測する。つまり、前記図2の電流計40、電圧計50および温度計60の値を読み込む。
ステップS100では、前記(数22)式中の過渡項Tは温度で変化することが分かつているので、予め測定した数値をマップにしておき、温度TH(k)に応じて設定値b(k)を決定する。そして
▲1▼電流I(k)および端子電圧V(k)と、
▲2▼推定値T(k)ではなく設定値b(k)と、
▲3▼推定値K・T(k)ではなく、直達項a(k)から算出するa(k)×b(k)と、
▲4▼推定値K(k)と、
を前記(数22)式と等価な前記(数35)式に代入することにより、Glp(s)・Vを算出し、これを開路電圧Vの代用とする。開路電圧Vは変化が緩やかなので、Glp(s)・Vで代用できる。ただし、ここで求まるのは推定演算開始時からの開路電圧推定値の変化分△V(k)である。
【0130】
上記のように構成したことにより、実施例10においては、次のごとき効果が得られる。すなわち、実施例9では、設定値bを一定値に決定している。しかし、前記(数22)式中の過渡項Tは温度に応じて変化することが分かつているので、実施例9では温度変化に対応できないために、オーバーシュートの可能性が残る。その点、実施例10では、予め測定した温度に対する過渡項Tの数値をマップにしておき、温度に応じて設定値bを決定するため、温度変化に対応した最適な設定値bを決定できるので、オーバーシュートの可能性を少なくできる。
【0131】
(実施例11)
本実施例は、前記実施例10において、電池の温度に対する過渡項K・Tのマップを設け、前記温度に応じて前記マップから過渡項TおよびK・Tを算出し、マップから算出した過渡項TおよびK・Tから直達項のしきい値を算出し、前記直達項のしきい値で前記直達項の収束を判断する。そして、収束前はマップから算出した過渡項TおよびK・Tと推定値Kを前記(数35)式に代入してGlp(s)・Vを算出し、収束後はマップから算出した設定値bと、直達項aから算出したa×bと、推定値Kとを前記(数35)式に代入してGlp(s)・Vを算出するように構成している。
【0132】
図17は実施例11の処理内容を示すフローチャートである。
図17において、ステップS20〜ステップS90は、前記図14に示した実施例9のフローチャートと同じであり、下記のステップが異なっている。
まず、ステップS10では、電流I(k)、端子電圧V(k)、温度TH(k)を計測する。つまり、前記図2の電流計40、電圧計50および温度計60の値を読み込む。
【0133】
ステップS100では、直達項a(k)も推定値なので、収束したか否かを判断する。前記前記(数22)式中の過渡項TおよびK・Tは、温度で変化することが分かつているので、直達項aも同様である。したがって予め測定した数値を各々マップにしておき、温度TH(k)に応じて設定値MAP_T(k)およびMAP_K・Tを決定し、それらから収束判断用のしきい値MAP_aを算出する。直達項a(k)がしきい値MAP_aの所定範囲内に所定時間連続してある場合は、収束したと判断してステップS110へ行く。なお、一度収束した後は同様にステップS110へ行く。上記以外の場合、収束していないと判断してステップS120へ行く。
【0134】
ステップS110では収束後なので、直達項a(k)を使用し、ステップS100で算出した設定値MAP_T(k)を設定値b(k)とする。そして
▲1▼電流I(k)および端子電圧V(k)と、
▲2▼推定値T(k)ではなく設定値b(k)と、
▲3▼推定値K・T(k)ではなく直達項a(k)から算出するa(k)×b(k)と、
▲4▼推定値K(k)とを、前記(数22)式と等価な前記(数35)式に代入することにより、Glp(s)・Vを算出し、これを開路電圧Vの代用とする。
開路電圧Vは変化が緩やかなので、Glp(s)・Vで代用できる。ただし、ここで求まるのは推定演算開始時からの開路電圧推定値の変化分△V(k)である。
【0135】
また、ステップS120では、収束前なので、直達項a(k)を使用せず、ステップS100で算出した設定値MAP_T(k)およびMAP_K・Tを決定する。そして
電流I(k)および端子電圧V(k)と、
推定値T(k)ではなくMAP_T(k)と、
推定値K・TではなくMAP_K・Tと、
推定値K(k)とを前記(数35)式に代入して、Glp(s)・Vを算出し、これを開路電圧Vの代用とする。開路電圧Vは変化が緩やかなので、Glp(s)・Vで代用できる。ただし、ここで求まるのは推定演算開始時からの開路電圧推定値の変化分△V(k)である。
【0136】
ステップS110およびステップS120の終了後は、ステップS130へ行く。
ステップS130では、ステップS110またはステップS120で算出した△V(k)は同定アルゴリズム開始時からの開路電圧の変化分であるから、開路電圧初期値すなわち端子電圧初期値V_iniを加算して開路電圧推定値V(k)を算出する。
(k)=△V(k)+V_ini
次に、ステップS140では、前記図5に示した開路電圧と充電率の相関マップを用いて、ステップS130で算出したV(k)から充電率SOC(k)を算出する。
ステップS150では、次回演算に必要な数値を保存して、今回演算を終了する。
【0137】
上記のように構成したことにより、実施例11においては次のごとき効果が得られる。
前記実施例10では、推定演算開始から直達項を使用している。しかし、直達項の収束は内部抵抗よりも遅いことが分かつているので、収束前の直達項から算出するa×bのために、開路電圧推定値がハンチングすることがある。その点、実施例11においては、予め測定した温度に対する過渡項TおよびK・Tの数値をマップにしておき、そのマップから温度に応じた過渡項TおよびK・Tを求め、そのマップ引きした過渡項TおよびK・Tから収束判断用のしきい値を決め、推定した直達項aの収束を判断する。そして収束前は、マップ引きした設定値TおよびK・Tと、内部抵抗Kだけは推定値を用いて、前記(数35)式に適用する。収束後は、マップ引きした過渡項Tを設定値bとし、過渡項K・Tは直達項aから算出したa×bを使用し、内部抵抗Kは推定値を用いて、前記(数35)式に適用する。つまり、直達項の収束前は直達項でなく設定値を用い、直達項の収束後は直達項から算出する方法を用いているので、収束前の直達項により開路電圧推定値がハンチングするというおそれがなくなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1を機能ブロックで表した図。
【図2】実施例1の具体的な構成を示すブロック図。
【図3】二次電池の等価回路モデルを示す図。
【図4】実施例1における処理内容を示すフローチャート。
【図5】開路電圧Vと充電率SOCの相関マップ。
【図6】実施例1におけるパラメータ同定のシミュレーション結果を示す図。
【図7】実施例3を機能ブロックで表した図。
【図8】実施例3における処理内容を示すフローチャート。
【図9】先行技術におけるパラメータ同定のシミュレーション結果を示す図。
【図10】実施例3におけるパラメータ同定のシミュレーション結果を示す図。
【図11】実施例4を機能ブロックで表した図。
【図12】実施例6を機能ブロックで表した図。
【図13】実施例9を機能ブロックで表した図。
【図14】実施例9における処理内容を示すフローチャート。
【図15】パラメータ同定のシミュレーション結果(25℃の部分)を示す図。
【図16】パラメータ同定のシミュレーション結果(10℃の部分)を示す図。
【図17】実施例11における処理内容を示すフローチャート。
【符号の説明】
1…端子電圧検出手段 2…電流検出手段
3a〜3c…フィルタ演算手段 4a〜4c…フィルタ演算手段
7…適応デジタルフィルタ演算手段
8…開路電圧演算手段 9…SOC演算手段
10…二次電池 20…負荷
30…電子制御ユニット 40…電流計
50…電圧計 60…温度計
11〜15…フィルタ演算手段 16…適応デジタルフィルタ演算手段
17…開路電圧演算手段 21〜26…フィルタ演算手段
27…適応デジタルフィルタ演算手段 28…開路電圧演算手段
31…電圧値処理用のフィルタ演算手段
32…電流値処理用のフィルタ演算手段
33…適応デジタルフィルタ演算手段
34…設定値決定手段 35…開路電圧演算手段
41…電圧値処理用のフィルタ演算手段
42…電流値処理用のフィルタ演算手段
43…適応デジタルフィルタ演算手段
44…設定値決定手段 45…開路電圧演算手段

Claims (11)

  1. 二次電池の電流Iと端子電圧Vとを計測し、適応デジタルフィルタを用いて、上記電流Iと端子電圧Vの計測値から開路電圧Vを推定し、予め求めた開路電圧Vと充電率SOCとの関係に基づいて充電率を推定する充電率推定装置であって、
    二次電池の電池モデルを下記(数2)式に示すように定義し、この(数2)式と等価な下記(数3)式に対して両辺を時間微分することによって下記(数4)式を求め、この(数4)式に対して適応デジタルフィルタ演算を行い、A(s)、B(s)の係数パラメータを一括推定し、この推定結果を上記(数3)式に代入することによって開路電圧Vを求め、予め求めた開路電圧Vと充電率SOCとの関係に基づいて充電率を推定する手段を備えたことを特徴とする二次電池の充電率推定装置。
    Figure 0003714246
    Figure 0003714246
    Figure 0003714246
    ただし、sはラプラス演算子、A(s)とB(s)はsの多項式関数、Glp(s)はローパスフィルタ特性を持つ伝達関数であり、A(s)の次数+1以上の次数を有する。
  2. 二次電池の電流Iと端子電圧Vとを計測し、適応デジタルフィルタを用いて、上記電流Iと端子電圧Vの計測値から開路電圧Vを推定し、予め求めた開路電圧Vと充電率SOCとの関係に基づいて充電率を推定する充電率推定装置であって、
    二次電池の電池モデルを下記(数16)式に示すように定義し、開路電圧Vを下記(数17)式で近似し、この下記(数17)式を上記(数16)式に代入することによって下記(数18)式を得、この(数18)式と等価な下記(数19)式に対して適応デジタルフィルタ演算を行い、A(s)とB(s)の係数パラメータと変数dとを一括推定し、この変数dを上記(数17)式に代入することによって開路電圧Vを求め、予め求めた開路電圧Vと充電率SOCとの関係に基づいて充電率を推定する手段を備えたことを特徴とする二次電池の充電率推定装置。
    Figure 0003714246
    Figure 0003714246
    Figure 0003714246
    Figure 0003714246
    ただし、sはラプラス演算子、A(s)とB(s)はsの多項式関数、dは変数、Glp(s)はローパスフィルタ特性を持つ伝達関数であり、A(s)の次数+1以上の次数を有する。
  3. 請求項2に記載の二次電池の充電率推定装置において、
    上記(数19)式に対して適応デジタルフィルタ演算を行い、A(s)とB(s)の係数パラメータと変数dとを一括推定し、その推定したA(s)とB(s)の係数パラメータを、上記(数16)式と等価な下記(数20)式に代入することにより、G1p(s)・Vを求め、この値を開路電圧Vの代用として、予め求めた開路電圧Vと充電率SOCとの関係に基づいて充電率を推定する手段を備えたことを特徴とする二次電池の充電率推定装置。
    Figure 0003714246
    ただし、sはラプラス演算子、A(s)とB(s)はsの多項式関数、dは変数、Glp(s)はローパスフィルタ特性を持つ伝達関数であり、A(s)の次数+1以上の次数を有する。
  4. 上記電池モデルの次数を1次にすることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載の二次電池の充電率推定装置。
  5. 請求項1乃至請求項4の何れかに記載の二次電池の充電率推定装置において、適応デジタルフィルタを用いて推定されたパラメータの中で、定常項については上記推定値を用い、過渡項については予め設定された値を用いて開路電圧Vを推定することを特徴とする二次電池の充電率推定装置。
  6. 請求項5に記載の二次電池の充電率推定装置において、
    開路電圧Vを上記(数17)式で近似することで上記(数16)式を(数18)式とし、その(数18)式と等価な(数19)式に対して適応デジタルフィルタ演算を行い、A(s)とB(s)の係数パラメータおよび変数dを一括推定し、これら推定値の中から直達項(e=b/a)を算出し、その算出した直達項eと設定値fとでe×fを算出し、次いで推定した値aの代わりに上記設定値fと、推定した値bの代わりに上記e×fと、推定した値an−1〜aおよびbn−1〜bとを上記(数16)式と等価な上記(数20)式に代入してGlp(s)・Vを算出し、これを開路電圧Vの代用とする手段を備えたことを特徴とする二次電池の充電率推定装置。
  7. 請求項6に記載の二次電池の充電率推定装置において、
    二次電池の温度を検出する手段と、二次電池の温度に対する過渡項aの代わりに用いる設定値fのマップと、を備え、上記温度に応じて上記マップから設定値fを決定することを特徴とする二次電池の充電率推定装置。
  8. 請求項6に記載の二次電池の充電率推定装置において、
    二次電池の温度を検出する手段と、二次電池の温度に対する過渡項aおよびbのマップとを設け、上記温度に応じて上記各マップから過渡項aおよびbを算出し、マップから算出した過渡項aおよびbから直達項のしきい値を算出し、上記直達項のしきい値で上記直達項の収束を判断し、収束前は、マップから算出した過渡項aおよびbと、推定した値an−1〜aおよびbn−1〜bとを上記(数20)式に代入してGlp(s)・Vを算出し、収束後は、マップから算出した過渡項aに相当する設定値fと、直達項eから算出したe×fと、推定したan−1〜aおよびbn−1〜bとを上記(数20)式に代入してGlp(s)・Vを算出することを特徴とする二次電池の充電率推定装置。
  9. 二次電池の電流Iと端子電圧Vとを計測し、適応デジタルフィルタを用いて、上記電流Iと端子電圧Vの計測値から開路電圧Vを推定し、予め求めた開路電圧Vと充電率SOCとの関係に基づいて充電率を推定する充電率推定装置であって、
    二次電池の電池モデルを連続時間系の下記(数22)式に示すように定義し、開路電圧Vを下記(数23)式で近似することで上記(数22)式を下記(数25)式に変形し、その(数25)式と等価な下記(数29)式に対して適応デジタルフィルタ演算を行い、過渡項TおよびK・T、内部抵抗K、変数dを一括推定し、これら推定値の中から直達項(a=K・T/T)を算出し、次いで過渡項Tの代わりに設定値bと、推定した値K・Tの代わりに直達項から算出したa×bと、推定した内部抵抗値Kとを、上記(数22)式と等価な下記(数35)式に代入してGlp(s)・Vを算出し、これを開路電圧Vの代用として充電率を算出する手段を備えたことを特徴とする二次電池の充電率推定装置。
    Figure 0003714246
    Figure 0003714246
    Figure 0003714246
    Figure 0003714246
    Figure 0003714246
    ただし、T、K・Tは過渡項、Kは内部抵抗、Glp(s)は2次以上のローパスフィルタ、sはラプラス演算子
  10. 請求項9に記載の二次電池の充電率推定装置において、
    二次電池の温度を検出する手段と、電池の温度に対する過渡項Tの代わりに用いる設定値bのマップと、を備え、上記温度に応じて上記マップから設定値bを決定することを特徴とする二次電池の充電率推定装置。
  11. 請求項9に記載の二次電池の充電率推定装置において、
    二次電池の温度を検出する手段と、電池の温度に対する過渡項Tおよび過渡項K・Tのマップと、を設け、上記温度に応じて上記各マップからTおよびK・Tを算出し、上記マップから算出したTおよびK・Tから直達項aのしきい値を算出し、上記直達項aのしきい値で上記直達項の収束を判断し、収束前は、推定した過渡項Tの代わりに上記マップから算出したTと、推定した過渡項K・Tの代わりに上記マップから算出したK・Tと、推定した値Kとを上記(数35)式に代入してGlp(s)・Vを算出し、収束後は、推定した過渡項Tの代わりに上記マップから算出したTに相当する設定値bと、推定した過渡項K・Tの代わりに直達項aを用いて算出したa×bと、推定した値Kとを上記(数35)式に代入してGlp(s)・Vを算出することを特徴とする二次電池の充電率推定装置。
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