JP3710679B2 - 内燃機関用ピストンの構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関において、シリンダ内を往復動するピストンの構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、内燃機関においてシリンダ内を往復動するピストンは、その内部の左右両側にボス部を一体的に設け、この両ボス部に穿設したピン孔内に、ピストンピンを、前記両ボス部間に挿入したコンロッドの先端部を貫通するように嵌挿するという構成にしていることは周知の通りである。
【0003】
この構成において、前記ピストンピンのうち前記ピストンの両ボス部におけるピン孔内に嵌まる部分には、潤滑油を常時供給することが必要である。
【0004】
そこで、従来は、例えば、実開平4−49611号公報等に記載されているように、ピストンの外周面に設けられているオイルリング溝と、前記両ボス部のピン孔内とを、オイル通路にて連通し、オイルリングでシリンダの内面から掻き落された潤滑油を、前記オイル通路を介して両ボス部のピン孔内に導入することにより、この部分の潤滑を行うように構成している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、内燃機関用のピストンにおいては、その両ボス部におけるピン孔に対して、当該ピン孔のうちボス部の内側面寄りの部分における内径をボス部の内側面に向かって極く緩やかな傾斜角度でテーパ状に広げるといういわゆるコニカル加工を施すことにより、ピストンにおける内部応力の低減を図ることが行われている(例えば、特開平11−303993号公報等を参照)。
【0006】
このように、両ボス部におけるピン孔に対してコニカル加工が施されている場合において、前記オイルリング溝からのオイル通路における前記ピン孔内への開口部を、前記ピン孔のうち前記コニカル加工が施されていない部分、つまり、平行孔の部分に位置するという構成にすると、前記コニカル加工が施されている部分、つまり、テーパ孔の部分に対する潤滑油の供給が不足することになる。また、前記オイルリング溝からのオイル通路における前記ピン孔内への開口部を、前記ピン孔のうち前記コニカル加工が施されている部分、つまり、テーパ孔の部分に位置するという構成にすると、前記ピン孔のうち前記コニカル加工が施されていない部分、つまり、平行孔の部分に対する潤滑油の供給が不足するという問題があった。
【0007】
本発明は、この問題を解消することを技術的課題とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
この技術的課題を達成するため本発明は、
「内面に左右一対の両ボス部を、外周面にオイルリング溝を各々備え、前記両ボス部にピストンピンが嵌まるピン孔を穿設し、このピン孔の内面に、外周におけるオイルリング溝から延びるオイル通路を開口する一方、前記ピン孔のうちボス部の内側面寄りの部分に、内径を極く緩やかな傾斜角度でテーパ状に広げるコニカル加工部を設けて成るピストンにおいて、
前記オイルリング溝からのオイル通路を、ピン孔における内面のうち前記コニカル加工部を設けていない平行孔の部分と、前記コニカル加工部を設けたテーパ孔の部分との両方に対して開口する。」
という構成にした。
【0009】
【発明の作用・効果】
このように、オイルリング溝からのオイル通路を、ピン孔における内面のうちコニカル加工部を設けていない平行孔の部分と、コニカル加工部を設けたテーパ孔の部分との両方に対して開口することにより、オイルリング溝でシリンダの内面から掻き落とした潤滑油を、オイル通路を介して、ピン孔における内面のうちコニカル加工部を設けていない平行孔の部分と、コニカル加工部を設けたテーパ孔の部分との両方に確実に供給することができる。
【0010】
従って、本発明によると、ピストンをコンロッドの先端部に連結するピストンピンのうち前記ピストンの両ボス部におけるピン孔内に嵌まる部分の全体にわたって、十分な量の潤滑油の供給を確保することができる効果を有する。
【0011】
この場合において、請求項2に記載したように、前記オイル通路を、前記オイルリング溝からピン孔の軸線方向に穿設した横向きドリル孔と、前記ボス部にそのピン孔を横断して前記横向きドリル孔に連通するように穿設した縦向きドリル孔とで構成し、縦向きドリル孔を、ピン孔内のうち平行孔の部分とテーパ孔の部分との境界の箇所に位置するという構成にする。
【0012】
この構成により、縦向きドリル孔は、ピン孔内のうち平行孔の部分とテーパ孔の部分との両方に開口するから、ピストンに対して、オイル通路を構成する横向きドリル孔と縦向きドリル孔とを穿設するだけで、ピン孔内のうち平行孔の部分とテーパ孔の部分との両方に潤滑油を供給することができ、換言すると、ボス部に対して一つの縦向きドリル孔を穿設するだけで、ピン孔内のうち平行孔の部分とテーパ孔の部分との両方に対して十分な量の潤滑油を供給できるものでありながら、縦向きドリル孔を穿設することによるボス部の強度の低下、及びドリル孔を穿設するための加工工数を、縦向きドリル孔を平行孔の部分とテーパ孔の部分との両方に対して別々に独立して穿設する場合よりも確実に低減することができて、強度のアップとコストのダウンとを達成できるのである。
【0013】
また、請求項3に記載したように、前記オイル通路を、前記オイルリング溝からピン孔の軸線方向に穿設した横向きドリル孔と、前記ボス部にそのピン孔を横断して前記横向きドリル孔に連通するように穿設した第1縦向きドリル孔及び第2縦向きドリル孔とで構成し、第1縦向きドリルを前記ピン孔のうち平行孔の部分に位置する一方、前記第2縦向きドリル孔を、前記第1縦向きドリルよりも大きい内径にして前記ピン孔のうちテーパ孔の部分に位置するという構成にする。
【0014】
これにより、オイルリング溝から延びる横向きドリル孔内に導入した潤滑油を、ピン孔内のうち平行孔の部分と、テーパ孔の部分との両方に対して、第1縦向きドリル孔と第2縦向きドリル孔とを介して確実に供給することができるものでありながら、第2縦向きドリル孔の内径を大きくしたことで、平行孔の部分とテーパ孔の部分との両方に対する潤滑油の供給量を略等しくすることができ、しかも、オイルリング溝から延びる横向きドリル孔が一本で済むから、換言すると、一本の横向きドリル孔を、第1縦向きドリル孔と第2縦向きドリル孔との両方について共通化できるから、ドリル孔を穿設するための加工工数が、横向きドリル孔を第1縦向きドリル孔と第2縦向きドリル孔との両方について別々に独立して穿設する場合よりも少なくなり、コストのダウンを図ることができる。
【0015】
更にまた、請求項4に記載したように、前記オイル通路を、オイルリング溝からピン孔内のうち平行孔の部分に至る第1オイル通路と、オイルリング溝からピン孔内のうちテーパ孔の部分に至る第2オイル通路との二本にし、更に、これら第1及び第2オイル通路の各々を、前記オイルリング溝からピン孔の軸線方向に穿設した横向きドリル孔と、前記ボス部にそのピン孔を横断して前記横向きドリル孔に連通するように穿設した縦向きドリル孔とで構成し、前記第1オイル通路における縦向きドリル孔と、前記第2オイル通路における縦向きドリル孔とを、ピン孔の軸線方向から見て互いに交差するように構成する。
【0016】
これにより,ピン孔のうち平行孔の部分と,テーパ孔の部分との両方に,その各々について独立する第1及び第2オイル通路を介して潤滑油をより確実に供給することができるものでありながら,これら両オイル通路における縦向きドリル孔を,一つのボス部に穿設することによるボス部の強度低下を,この二つの縦向きドリル孔をピン孔の軸線方向から見て互いに交差したことにより,当該二つの縦向きドリル孔をピン孔の軸線方向から見て同じ位置においてピン孔の軸線に沿って一直線上に並べて穿設した場合よりも確実に小さくすることができ,ボス部の強度を確保することができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面について説明する。
【0018】
図1及び図2は、第1の実施の形態を示す。
【0019】
この図において、符号1は、内燃機関においてシリンダ(図示せず)内を往復動するピストンを示し、このピストン1の外周面には、ピストンリング(図示せず)が嵌まる二本のピストンリング溝2と、オイルリングが嵌まる一本のオイルリング溝3とが設けられ、また、その内部における左右両側には、内向きに突出するボス部4が一体的に設けられている。
【0020】
前記両ボス部4には、図示しないコンロッドの先端部に前記ピストン1を連結するためのピストンピン(図示せず)が嵌まるピン孔5が穿設され、このピン孔5には、当該ピン孔5のうち前記ボス部4の内側面4a寄りの部分における内径をボス部4の内側面4aに向かって極く緩やかな傾斜角度でテーパ状に広げるといういわゆるコニカル加工が施されることにより、ピン孔5内に、前記コニカル加工が施さていない平行孔5aの部分と、前記コニカル加工が施されたテーパ孔5bの部分とが形成されている。
【0021】
そして、前記ピストン1に、前記オイルリング溝3と、前記ピン孔5内とを連通するオイル通路6を穿設するに際して、このオイル通路6を、前記オイルリング溝3からピン孔5の軸線5cと平行に穿設した内径d0の横向きドリル孔6aと、前記ボス部4の下面からピン孔5を横断して前記横向きドリル孔6aに連通するように穿設した縦向きドリル孔6bとで構成し、この縦向きドリル孔6bを、その内径Dを前記横向きドリル孔6aの内径よりも大きくして、前記ピン孔5内のうち平行孔5aの部分とテーパ孔5bの部分との境界部に位置する。
【0022】
このように構成することで、オイル通路6における縦向きドリル孔6bは、ピン孔5内のうち平行孔5aの部分とテーパ孔5bの部分との両方に開口することにより、前記オイルリング溝3の箇所における潤滑油を、ピン孔5内のうち平行孔5aの部分とテーパ孔5bの部分との両方に対して確実に供給することができるのである。
【0023】
この場合において、前記縦向きドリル孔6bを、ピン孔5内のうち平行孔5aの部分とテーパ孔5bの部分との境界部に位置したことにより、ボス部4に対してこの一つの縦向きドリル孔6bを穿設するだけで良いから、この縦向きドリル孔を穿設することによるボス部4の強度の低下、及びドリル孔を穿設するための加工工数を、縦向きドリル孔を平行孔5aの部分とテーパ孔5bの部分との両方に対して別々に独立して穿設する場合よりも低減することができる。
【0024】
次に、図3は、第2の実施の形態を示す。
【0025】
この第2の実施の形態は、ピストン1に、オイルリング溝3とピン孔5内とを連通するオイル通路16を穿設するに際して、このオイル通路16を、前記オイルリング溝3からピン孔5の軸線5cと平行に穿設した内径d0の横向きドリル孔16aと、前記ボス部4にそのピン孔5を横断して前記横向きドリル孔16aに連通するように穿設した第1縦向きドリル孔16b′及び第2縦向きドリル孔16b″とで構成し、第1縦向きドリル16b′を前記ピン孔5のうち平行孔5aの部分に位置する一方、前記第2縦向きドリル孔16b″を、その内径d2を前記第1縦向きドリル孔16b′の内径d1よりも大きくして前記ピン孔5のうちテーパ孔5bの部分に位置したものである。
【0026】
これにより、オイルリング溝3から延びる横向きドリル孔16a内に導入した潤滑油を、ピン孔5内のうち平行孔5aの部分と、テーパ孔5bの部分との両方に対して、第1縦向きドリル孔16b′と第2縦向きドリル孔16b″とを介して確実に供給することができる。
【0027】
この場合において、第2縦向きドリル孔16b″の内径d2を、横向きドリル孔16aへの潤滑油の入り口に近い第1縦向きドリル孔16b′の内径d1よりも大きくしたことで、平行孔5aの部分とテーパ孔5bの部分との両方に対する潤滑油の供給量を略等しくすることができる。なお、第1縦向きドリル孔16b′の内径d1は、横向きドリル孔16aの内径d0よりも小さくすることが好ましい。
【0028】
また、オイルリング溝3から延びる横向きドリル孔16aが一本で済むから、換言すると、一本の横向きドリル孔16aを、第1縦向きドリル孔16b′と第2縦向きドリル孔16b″との両方について共通化できるから、ドリル孔を穿設するための加工工数を、横向きドリル孔を第1縦向きドリル孔と第2縦向きドリル孔との両方について別々に独立して穿設する場合よりも少なくできる。
【0029】
そして、図4及び図5は、第3の実施の形態を示す。
【0030】
この第3の実施の形態は、前記オイル通路を、オイルリング溝3からピン孔5内のうち平行孔5aの部分に至る第1オイル通路26と、オイルリング溝3からピン孔5内のうちテーパ孔5bの部分に至る第2オイル通路36との二本にし、更に、これら第1及び第2オイル通路26,36の各々を、前記オイルリング溝3からピン孔5の軸線5cと平行に穿設した横向きドリル孔26a,36aと、前記ボス部4にそのピン孔5を横断して前記横向きドリル孔26a,36aに連通するように穿設した縦向きドリル孔26b,36bとで構成し、前記第1オイル通路26における縦向きドリル孔26bと、前記第2オイル通路36における縦向きドリル孔36bとを、ピン孔5の軸線方向から見て、適宜角度θの角度で互いに交差するように構成したものである。
【0031】
この構成により、ピン孔5のうち平行孔5aの部分と、テーパ孔5bの部分との両方に、その各々について独立する第1及び第2オイル通路26,36を介して潤滑油をより確実に供給することができる。
【0032】
一方,これら両オイル通路26,36における縦向きドリル孔26b,36bを,一つのボス部4に穿設することによるボス部4の強度低下を,この二つの縦向きドリル孔26b,36bをピン孔5の軸線方向から見て互いに交差したことにより,当該二つの縦向きドリル孔26b,36bをピン孔5の軸線方向から見て同じ位置においてピン孔5の軸線5cに沿って一直線上に並べて穿設した場合よりも確実に小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態を示す縦断正面図である。
【図2】図1のII−II視断面図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態を示す縦断正面図である。
【図4】本発明の第3の実施の形態を示す縦断正面図である。
【図5】図4のV−V視断面図である。
【符号の説明】
1 ピストン
2 ピストンリング溝
3 オイルリング溝
4 ボス部
5 ピン孔
5a ピン孔の平行孔部分
5b ピン孔のテーパ孔部分
5c ピン孔の軸線
6,16,26,36 オイル通路
6a,16a,26a,36a 横向きドリル孔
6b,16b′,16b″,26b,36b 縦向きドリル孔
Claims (4)
- 内面に左右一対の両ボス部を、外周面にオイルリング溝を各々備え、前記両ボス部にピストンピンが嵌まるピン孔を穿設し、このピン孔の内面に、外周におけるオイルリング溝から延びるオイル通路を開口する一方、前記ピン孔のうちボス部の内側面寄りの部分に、内径を極く緩やかな傾斜角度でテーパ状に広げるコニカル加工部を設けて成るピストンにおいて、
前記オイルリング溝からのオイル通路を、ピン孔における内面のうち前記コニカル加工部を設けていない平行孔の部分と、前記コニカル加工部を設けたテーパ孔の部分との両方に対して開口したことを特徴とする内燃機関用ピストンの構造。 - 前記請求項1の記載において、前記オイル通路を、前記オイルリング溝からピン孔の軸線方向に穿設した横向きドリル孔と、前記ボス部にそのピン孔を横断して前記横向きドリル孔に連通するように穿設した縦向きドリル孔とで構成し、縦向きドリル孔を、ピン孔内のうち平行孔の部分とテーパ孔の部分との境界の箇所に位置したことを特徴とする内燃機関用ピストンの構造。
- 前記請求項1の記載において、前記オイル通路を、前記オイルリング溝からピン孔の軸線方向に穿設した横向きドリル孔と、前記ボス部にそのピン孔を横断して前記横向きドリル孔に連通するように穿設した第1縦向きドリル孔及び第2縦向きドリル孔とで構成し、第1縦向きドリルを前記ピン孔のうち平行孔の部分に位置する一方、前記第2縦向きドリル孔を、前記第1縦向きドリルよりも大きい内径にして前記ピン孔のうちテーパ孔の部分に位置したことを特徴とする内燃機関用ピストンの構造。
- 前記請求項1の記載において、前記オイル通路を、オイルリング溝からピン孔内のうち平行孔の部分に至る第1オイル通路と、オイルリング溝からピン孔内のうちテーパ孔の部分に至る第2オイル通路との二本にし、更に、これら第1及び第2オイル通路の各々を、前記オイルリング溝からピン孔の軸線方向に穿設した横向きドリル孔と、前記ボス部にそのピン孔を横断して前記横向きドリル孔に連通するように穿設した縦向きドリル孔とで構成し、前記第1オイル通路における縦向きドリル孔と、前記第2オイル通路における縦向きドリル孔とを、ピン孔の軸線方向から見て互いに交差するように構成したことを特徴とする内燃機関用ピストンの構造。
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