JP3709937B2 - 昇華型感熱転写材用積層フィルム - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、昇華型感熱転写材として好適な積層フィルムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
熱可塑性樹脂としてポリエステル、特にポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリブチレンテレフタレートあるいはポリ−1、4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート及びこれらを主体とするポリエステルは優れた物理的、化学的特性を有しており、繊維、フィルムあるいはシート、更にはその成型品として広く使用されている。
【0003】
特に、ポリエステルフィルムは耐熱性、耐薬品性、機械的特性など優れた性質を有するために、磁気記録材料、電気絶縁材料、感光材料、感熱材料、製図材料、写真材料をはじめとした一般工業材料、包装材料など多くの用途の基材フィルムとして使用されている。
【0004】
これらの用途においてはポリエステルフィルム単体で使用されることは無く、フィルム表面に種々の被覆物、例えば磁性塗料、UVインキ、ケミカルマット塗料、ジアゾ感光塗料、昇華型インキ、ゼラチン組成物、ヒートシール付与組成物などを塗布あるいは印刷して使用される。特に、感熱転写材用途、中でも昇華型感熱転写材に用いられるフィルムには、各フィルム面に以下のような機能が要求されている。昇華型インキ層を設ける側には、昇華型インキと基材フィルムとの易接着性が求められている。また、反対面のスティック防止層側には、転写時のサーマルヘッドとの摩擦の低減とともに、熱伝導性の向上、即ち粗大突起の低減によるサーマルヘッドとの接触面積の増大、ひいてはその印刷特性の向上も強く求められている。
【0005】
一般に二軸配向ポリエステルフィルムは表面が高度に結晶配向しているため接着性に乏しく、直接フィルム表面に種々の被覆物、例えば磁性塗料、UVインキ、ケミカルマット塗料、ジアゾ感光塗料、昇華型インキ、ゼラチン組成物、ヒートシール付与組成物などを塗布あるいは印刷しても全く密着しない。このため塗布あるいは印刷する際には、該被覆物との接着性を良好とするためにフィルム表面上に各種ガス雰囲気下でのコロナ放電処理、プラズマ処理、紫外線照射処理などの物理的な処理やアルカリ、トリクロロ酢酸、アミン、フェノール類などによる化学的処理、あるいはこれらを併用した処理方法などが試みられているがいずれも充分な密着性が得られていない。またフィルム表面のプライマ処理による易接着化が処理工程、作業上の安全性及びフィルム加工商品の高品質維持などの利点があることで広く行われており、しかもフィルム製造工程内で一気にプライマ処理(ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂などの水性塗料を塗布後、延伸して塗膜層を形成)を行う方法が工程簡略化や製造コストの点で有力視され、盛んに実施されている。
【0006】
また、感熱転写材として使用した場合、転写時のサーマルヘッドとの摩擦低減のためフッ素系やシリコーン系の易滑層が設けられているが、近年の感熱転写機器の高速化に伴い、サーマルヘッドにかけられる熱量が大きくなってきている。このためサーマルヘッドと基材フィルムが融着するスティック現象を防止するためスティック防止層を厚くする必要があるが、これは印字の際の熱量不足につながり逆効果である。このため、従来並の厚みで易滑性を出すため基材フィルムの突起を大きくしたり、粗大突起を与えたりする方法が取られている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前述した従来技術においては次のような問題点がある。
【0008】
例えば、被覆物との易接着性を付与するために、ポリエステル樹脂をポリエステルフィルムに積層あるいは塗布したものは基材フィルムとの接着性は非常に優れているものの、反面被覆物との密着性が劣る傾向がある。特に、被覆物として昇華型インキを用いた場合には、バインダ中の染料によって易接着層が染着されやすいため受像紙に転写した時に本来の色濃度や転写性が不十分であるなどの問題などを生じる。また、アクリル樹脂をポリエステルフィルムに積層あるいは塗布したものは、上記したポリエステル樹脂の被覆物との密着性で生じる問題点はクリアされるものの、逆に基材フィルムとの密着性が劣るという欠点がある。
【0009】
一方、スティック防止のため、基材フィルムの突起を大きくしたり、粗大突起を与えたりする方法が取られているが、この方法はサーマルヘッドとの接触面積の減少を招き、印字の際の熱量不足につながり、印刷特性を低下させる。このような理由から、粗大突起の無い均一な突起を有し、印刷特性に優れた基材フィルムが求められている。
【0010】
本発明はこれらの欠点を解消せしめるとともに、熱可塑性樹脂Aと熱可塑性樹脂Bとの積層構成の二軸配向熱可塑性樹脂フィルムであって、熱可塑性樹脂Aに特定サイズの無機粒子を集中させて含有させることにより、熱可塑性樹脂A側のフィルム表面特性の改良をはかった二軸配向熱可塑性樹脂フィルムを採用することにより、フィルム表面に効率よく、高密度でかつ高さの均一な突起を形成できるようになり、粗大突起の無い均一な突起とすることで、基材フィルムの易滑性が良好であるばかりでなく、特に感熱転写材用途では転写時の熱伝導性を高めることで印刷特性が向上するものである。更に、アクリル樹脂とポリエステル樹脂を主たる構成成分とする層(C層)を設けることで被覆物との密着性にも優れた昇華型感熱転写材に好適な積層フィルムを提供することにある。
【0011】
本発明は熱可塑性樹脂Aと無機粒子とを主成分とするフィルムAを熱可塑性樹脂Bを主成分とするフィルムBの少なくとも片面に積層し、前記フィルムのAの厚さが0.005〜5μm、該フィルムA中に含有される前記粒子の体積平均径がフィルムAの厚さの0.1〜3倍、該粒子のフィルムA中の含有量が0.05〜50重量%である二軸配向熱可塑性樹脂積層フィルムであって、該積層フィルムの少なくとも片面にアクリル樹脂とポリエステル樹脂を主たる構成成分とする層(C層)が形成されてなる昇華型感熱転写材用積層フィルムをその骨子とするものである。
【0012】
本発明における熱可塑性樹脂Aはポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリフェニレンスルフィドなど特に限定されるものではないが、特にポリエステル、中でもエチレンテレフタレート、エチレン−2,6−ナフタレート、ブチレンテレフタレート、エチレン−α、β−ビス(2−クロロフェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボキシレートなどから選ばれた少なくとも1種の構成成分を主要構成成分とする場合に、フィルム表面に高密度かつ均一高さの突起の形成がより一層良好となるので好ましい。また、本発明を構成する熱可塑性樹脂は結晶性である場合に、熱可塑性樹脂Aは層表面に目標とする突起を形成し易くなるので極めて望ましい。ここでいう結晶性とはいわゆる非晶質ではないことを示すものであり、定量的には結晶化パラメータにおける冷結晶化温度Tccが検出され、かつ結晶化パラメータ△Tcgが150℃以下のものである。更に、示差走査熱量計で測定された融解熱(融解エンタルピ変化)が7.5cal/g以上の結晶性を示す場合に、熱可塑性樹脂A層の表面突起形成能に優れるので極めて望ましい。また、エチレンテレフタレートを主要構成成分とするポリエステルの場合に、熱可塑性樹脂A層の表面突起形成特性がより一層良好となるので特に好ましい。尚、本発明を阻害しない範囲内で、2種以上の熱可塑性樹脂を混合しても良いし、共重合ポリマを用いても良いし、また酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、紫外線吸収剤などの有機添加剤が通常添加される程度添加されていてもよい。
【0013】
本発明の熱可塑性樹脂A中の無機粒子の形状は、特に限定されないが、フィルム中での粒径比(無機粒子の長径/短径)が1.0〜1.3の無機粒子、特に、球形状の無機粒子の場合に、均一高さのフィルム表面突起を形成し易いので望ましい。
【0014】
また、本発明の熱可塑性樹脂A中の無機粒子はフィルム中での単一粒子指数が0.7以上、好ましくは0.9以上である場合に均一高さの突起を高密度で形成し易いので特に望ましい。
【0015】
本発明の熱可塑性樹脂A中の無機粒子の種類は特に限定されないが、上記の好ましい粒子特性を満足させるには、アルミナ珪酸塩、1次粒子が凝集した状態のシリカ、内部析出粒子などは好ましくない。好ましい無機粒子として、コロイダルシリカに起因する実質的に球形のシリカ粒子などがある。コロイダルシリカに起因する球状シリカの場合にはアルコキシド法で製造された、ナトリウム含有量が少ない、実質的に球形のシリカが望ましい。しかしながら、その他の無機粒子、例えば炭酸カルシウム、二酸化チタン、アルミナ等の粒子でもフィルム厚さと体積平均径の適切なコントロールにより十分使いこなせるものである。
【0016】
本発明の熱可塑性樹脂Aを主成分とするフィルム層の厚さは0.005〜5μm、好ましくは0.01〜1μm、さらに好ましくは0.03〜0.5μmであることが必要である。フィルム厚さが上記の範囲より小さいと積層フィルム層としての耐久性が確保できなくなり、逆に大きいと含有無機粒子との関係から、適切な高さの表面突起を高密度に形成するのが困難になる。
【0017】
上記熱可塑性樹脂Aのフィルム中に含有される無機粒子の大きさは、該粒子を含有する積層フィルム中での体積平均径が該積層フィルム厚さの0.1〜10倍、好ましくは0.5〜5倍、さらに好ましくは1.1〜3倍の範囲とされる。体積平均径/フィルム厚さ比が上記の範囲より小さいと、形成されるフィルム表面突起のバラツキが大きくなって、また易滑性が低下しフィルムのハンドリング性が低下したりする。逆に大きくても突起高さの不均一化、後述のフィルム表面の粒子濃度比の低下を招きやすくなって、印刷特性が不良となるので好ましくない。
【0018】
また、熱可塑性樹脂A中の無機粒子のフィルム中での体積平均径(直径)が0.005〜3μm、好ましくは0.02〜0.45μmの範囲である場合に、印刷特性がより一層良好となるので望ましい。
【0019】
そして、このような無機粒子が、0.05〜50重量%、好ましくは0.075〜10重量%、より好ましくは0.1〜5重量%熱可塑性樹脂Aのフィルム中に含有される。これより小さいと、フィルム表面突起形成密度が低くなりすぎるので易滑性が十分に得られず、逆に高すぎると、含有無機粒子の割合が高くなりすぎ、積層フィルム層自身が脆くなりすぎるので好ましくない。
【0020】
さらに、上記粒子により形成される、熱可塑性樹脂Aの積層フィルム層の表面突起の平均高さは、好ましくは無機粒子の体積平均径の1/3.5以上である。このような平均高さの表面突起は、前述の範囲から、積層フィルム厚さに対し含有無機粒子の体積平均径を適切に選択、設定することにより得られる。
【0021】
つまり、本発明における熱可塑性樹脂Aの積層フィルム層には、該フィルム厚さ近傍あるいはそれよりも大きな体積平均径の無機粒子が含有される。換言すれば、極薄積層フィルムに、そのフィルム厚さ近傍あるいはそれよりも大きな体積平均径の微小無機粒子が含有される。したがって、二軸配向熱可塑性樹脂フィルム全体に対し、その厚さ方向に、実質的に積層フィルム層のみに集中して無機粒子を分布させることができる。その結果、積層フィルム中に置ける粒子密度を容易に高くすることができ、該粒子により形成されるフィルム表面の突起の密度も容易に高めることができる。また、無機粒子は、上記積層フィルム中に含有されることで、二軸配向熱可塑性樹脂フィルム全体に対し、その厚さ方向に位置規制されることになり、しかも積層フィルムの厚さと体積平均径とは前述の如き関係にあるから、該粒子により形成される表面突起の高さは、極めて均一になる。高密度かつ均一高さの表面突起形成により、易滑性はもとよりその平滑性により印刷特性が大幅に高められる。
【0022】
上記熱可塑性樹脂Aと無機粒子とを主成分とするフィルムが、熱可塑性樹脂Bを主成分とするフィルムに積層される。
【0023】
熱可塑性樹脂Bは、前述の熱可塑性樹脂Aと同様のものからなり、熱可塑性樹脂Bと熱可塑性樹脂Aとは同じ種類のものでも異なるものでもよい。熱可塑性樹脂Aのフィルム層は、熱可塑性樹脂Bからなるフィルム層の片面、又は両面に積層される。つまり、積層構成がA/B、A/B/Aの場合である(ここで、A、Bそれぞれの熱可塑性樹脂の種類は同種でも、異種でもよい)。
【0024】
熱可塑性樹脂Bとしても、結晶性ポリマが望ましく、特に、結晶化パラメータ△Tcgが20〜100℃の範囲の場合に、例えば感熱転写材としての基材フィルム全体の耐久性がより一層良好となるので望ましい。具体例として、ポリエステル、ポリアミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリオレフィンが挙げられるが、ポリエステルの場合にフィルム全体としての耐久性がより一層良好となるので特に望ましい。また、ポリエステルとしては、エチレンテレフタレート、エチレン−2,6−ナフタレート、エチレン−α、β−ビス(2−クロロフェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボキシレートなどから選ばれた少なくとも一種の構成単位を主要構成成分とするものが、感熱転写材用フィルムとしては好ましい。ただし、本発明を阻害しない範囲内、望ましい結晶性を損なわない範囲内で、好ましくは5モル%以内であれば他成分が共重合されていてもよい。
【0025】
また、本発明の熱可塑性樹脂Bにも、本発明の目的を阻害しない範囲内で、他種ポリマをブレンドしてもよいし、また酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、紫外線吸収剤などの有機添加剤が通常添加される程度添加されていてもよい。
【0026】
熱可塑性樹脂Bを主成分とするフィルム中には粒子を含有している必要は特にないが、平均粒径が0.007〜2μm、特に0.02〜0.45μmの粒子が0.001〜0.2重量%、特に0.005〜0.15重量%、更には0.005〜0.12重量%含有されていると、例えばフィルムの巻姿が良好となるなどの点で好ましい。含有する粒子の種類は熱可塑性樹脂Aに望ましく用いられるものを使用することが望ましい。熱可塑性樹脂AとBに含有される粒子の種類、大きさは同じでも異なっていても良い。
【0027】
上述の如き無機粒子を含有する熱可塑性樹脂Aと、熱可塑性樹脂Bとが共押し出しにより積層され、シート状に成型された後、二軸に延伸され、二軸配向熱可塑性樹脂フィルムとされる。本発明における共押出による積層とは、無機粒子を含有する熱可塑性樹脂Aと、熱可塑性樹脂Bとをそれぞれ異なる押出装置で押出し、口金から積層シートを吐出する前にこれらを積層することをいう。この積層は、シート状に成型、吐出するための口金内(例えばマニホルド)で行ってもよいが、前述の如く積層フィルム層が極薄であることから、口金に導入する前のポリマ管内で行うことが好ましい。特にポリマ管内の積層部を、矩形に形成しておくと、幅方向に均一に積層できるので特に好ましい。ポリマ管内矩形積層部で積層された溶融ポリマは、口金内マニホルドでシート幅方向に所定幅まで拡幅され、口金からシート状に吐出された後、二軸に延伸される。従って、たとえ二軸配向後の積層フィルムが極薄であっても、ポリマ管内矩形積層部では、無機粒子含有熱可塑性ポリマを、かなりの厚さで積層することになるので、容易にかつ精度よく積層できる。
【0028】
また、上記熱可塑性樹脂Aと熱可塑性樹脂Bとからなる二軸配向熱可塑性樹脂フィルムにおいては、無機粒子を含む積層フィルム側の表層の無機粒子による粒子濃度比が0.1以下であることが好ましい。この表層粒子濃度比は、後述の測定法に示す如く、フィルム表面突起を形成する無機粒子がフィルム表面において如何に熱可塑性樹脂Aの薄膜で覆われているかを示すものであり、無機粒子がフィルム表面に実質的に直接露出している度合いが高いほど表層粒子濃度比が高く、表面突起は形成するが熱可塑性樹脂Aの薄膜に覆われている度合いが高いほど表層粒子濃度比は低い。突起を形成する無機粒子が熱可塑性樹脂Aの薄膜で覆われていることにより、無機粒子が高密度に極薄積層フィルム層に分布している状態にあっても、該粒子が該積層フィルム層、ひいては熱可塑性樹脂Bのベースフィルム層にしっかりと保持されることになる。従って表層粒子濃度比を上記値以下とすることにより、無機粒子の脱落等が防止されて、フィルム表面の耐久性が高く維持される。このような表層粒子濃度比は、共押出による積層を行うことによって達成可能となる。
【0029】
そして、上記のような熱可塑性樹脂Aのフィルム層と熱可塑性樹脂Bのフィルム層との積層構成のフィルムに、アクリル樹脂とポリエステル樹脂を主たる構成成分とする層(C層)が積層されて本発明の積層フィルムが完成する。
【0030】
積層構成としては、考え得るいずれの積層構成でもよいが、積層フィルム上に被覆物を設ける場合は、少なくとも易接着層(C層)上に被覆物を設けるのが望ましく、特に感熱転写材として用いる時には、A層上に直接スティック防止層が、その反対面(少なくともC層が設けられている)に昇華型インキ層が設けられた状態が望ましい。
【0031】
上記C層の積層は、二軸配向熱可塑性樹脂フィルム製造工程における、各工程で可能であるが、C層が極薄層であることから、C層積層後C層またはフィルム全体として成型固定されるまでに、C層表面にロール等が接触しないようにするのが好ましい。従って、例えば長手方向延伸、続いて幅方向延伸を行う逐次二軸延伸における幅方向延伸前あるいは幅方向延伸後、あるいは同時二軸延伸における延伸前等においてC層を積層することが好ましい。積層は、フィルム連続製造工程中でコーティングする、いわゆるインラインコーティング等が工業的には好ましいが、オフラインで専用の別工程にて行っても良い。
【0032】
C層として本発明のアクリル樹脂とポリエステル樹脂を主たる構成成分とする層を積層することにより、二軸配向熱可塑性樹脂フィルムとの相乗効果により、易接着性に優れ、かつ印刷特性にも優れるものである。
【0033】
本発明の易接着層の構成成分であるアクリル樹脂は、従来公知のもので特に限定されない。アクリル樹脂を構成するモノマ成分としては公知の物を使用することができる。例えば、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート(アルキル基としてはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、ラウリル基、ステアリル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基、フェニルエチル基等)、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等のヒドロキシ基含有モノマ、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N,N−ジメチロールアクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−メトキシメチルメタクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド等のアミド基含有モノマ、N,N−ジエチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート等のアミノ基含有モノマ、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等のエポキシ基含有モノマ、アクリル酸、メタクリル酸及びそれらの塩(リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等)等のカルボキシル基またはその塩を含有するモノマなどが挙げられ、これらは1種もしくは2種以上を用いて共重合される。更に、これらは他種のモノマと併用することができる。
【0034】
他種のモノマとしては例えば、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有モノマ、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸及びそれらの塩(リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等)等のスルホン酸基またはその塩を含有するモノマ、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸及びそれらの塩(リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等)等のカルボキシル基またはその塩を含有するモノマ、無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物を含有するモノマ、ビニルイソシアネート、アリルイソシアネート、スチレン、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルトリスアルコキシシラン、アルキルマレイン酸モノエステル、アルキルフマール酸モノエステル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アルキルイタコン酸モノエステル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、塩化ビニル等が挙げられる。
【0035】
また、本発明のアクリル樹脂としては、変性ポリエステル共重合体、例えばアクリル、ウレタン、エポキシ等で変性したブロック共重合体、グラフト共重合体等を用いることも可能である。
【0036】
本発明のアクリル樹脂の分子量は10万以上が好ましく、更に好ましくは30万以上とするのが密着性の点で望ましい。
【0037】
本発明において、前記した結晶配向が完了する前のポリエステルフィルムに塗布し、延伸、熱処理により結晶配向を完了させる方法によって易接着層を設ける場合(インラインコーティング)には、高温での熱処理が可能であることや、均一で薄膜の易接着層が得られるので特に好ましい。上記方法によって易接着層を積層する場合には、アクリル系樹脂は水に溶解あるいは乳化、懸濁し得るものが環境汚染や防爆性の点で好ましく、このようなアクリル系樹脂は親水性基を有するモノマ(アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、ビニルスルホン酸およびその塩など)との共重合や反応性乳化剤や界面活性剤を用いた乳化重合、懸濁重合、ソープフリー重合など公知の方法によって作成することができる。
【0038】
本発明の易接着層の構成成分であるポリエステル樹脂は、従来公知のもので特に限定されない。ポリエステル樹脂のジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,5−ジメチルテレフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,2−ビスフェノキシエタン−p,p’−ジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等及びそれらのエステル形成性誘導体が挙げられる。
【0039】
ポリエステル樹脂のグリコール成分としては、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリメチロールプロパン等を挙げることができる。
【0040】
また、ポリエステル樹脂の水溶性化を容易にするため、カルボン酸塩基を含む化合物や、スルホン酸塩基を含む化合物を共重合することが好ましい。
【0041】
カルボン酸塩基を含む化合物としては、例えばトリメリット酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、無水ピロメリット酸、4−メチルシクロヘキセン−1,2,3−トリカルボン酸、トリメシン酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4−ペンタンテトラカルボン酸、3,3´,4,4´−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、5,(2,5−ジオキソテトラヒドロフルフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフルフリル)−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸、エチレングリコールビストリメリテート、2,2´,3,3´−ジフェニルテトラカルボン酸、チオフェン−2,3,4,5−テトラカルボン酸、エチレンテトラカルボン酸等あるいはこれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0042】
スルホン酸塩基を含む化合物としては、例えばスルホテレフタル酸、5−スルホイソフタル酸、4−スルホイソフタル酸、4−スルホナフタレン−2,7−ジカルボン酸、スルホ−p−キシリレングリコール、2−スルホ−1,4−ビス(ヒドロキシエトキシ)ベンゼン等あるいはこれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0043】
また、ポリエステル樹脂としては、変性ポリエステル共重合体、例えばアクリル、ウレタン、エポキシ等で変性したブロック共重合体、グラフト共重合体等を用いることも可能である。
【0044】
本発明のポリエステル樹脂は、従来から公知の製造技術によって製造することができる。例えば、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸、グリコール成分としてエチレングリコール、ネオペンチルグリコールからなるポリエステル樹脂について説明すると、テレフタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸とエチレングリコール、ネオペンチルグリコールとを直接エステル化反応させるか、テレフタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸及びエチレングリコール、ネオペンチルグリコールとをエステル交換反応させる第一段階と、この第一段階の反応生成物を重縮合反応させる第二段階とによって製造する方法等を挙げることができる。
【0045】
この際、反応触媒として、従来公知のアルカリ金属、アルカリ土類金属、マンガン、コバルト、亜鉛、アンチモン、ゲルマニウム、チタン化合物等が用いられる。
【0046】
また、本発明のポリエステル樹脂の固有粘度は特に限定されないが、接着性の点で0.3dl/g以上、好ましくは0.35dl/g以上、更に好ましくは0.4dl/g以上が望ましい。
【0047】
前記アクリル樹脂とポリエステル樹脂は任意の比率で混合してもよいが、本発明の効果をより顕著に発現させるには以下の比率(固形分重量比とする)で混合するとよい。アクリル樹脂/ポリエステル樹脂が90/10〜2/98、好ましくは80/20〜5/95、更に好ましくは60/40〜10/90であるのが望ましい。
【0048】
本発明においては、アクリル樹脂とポリエステル樹脂を主たる構成成分とする易接着層を設けることを特徴とするものであるが、メラミン系架橋剤を添加することにより密着性が更に向上するので好ましい。
【0049】
メラミン系架橋剤としては、従来公知のもので特に限定されないが、例えば官能基としてイミノ基、メチロール基、あるいはメトキシメチル基やブトキシメチル基等のアルコキシメチル基を1分子中に有するもので、イミノ基型メチル化メラミン樹脂、メチロール基型メラミン樹脂、メチロール基型メチル化メラミン樹脂、完全アルキル型メチル化メラミン樹脂等が挙げられる。その中でもヘキサメチロール化メラミン樹脂が最も好ましい。更に、メラミン系架橋剤の熱硬化を促進するため、例えばp−トルエンスルホン酸等の酸性触媒を用いることが好ましい。
【0050】
メラミン系架橋剤の添加量としては、前記アクリル樹脂とポリエステル樹脂100重量部に対し、メラミン系架橋剤を1〜50重量部、好ましくは2〜40重量部、更に好ましくは5〜20重量部であるのが望ましい。
【0051】
本発明の易接着層は前記アクリル樹脂とポリエステル樹脂の2種の構成成分を主成分とした塗剤を塗布し、乾燥、硬化させたものであり、主成分とは上記2種が易接着層中において50重量%以上、好ましくは80重量%以上、更に好ましくは90重量%以上を占めることをいう。
【0052】
また、易接着層中には本発明の効果を阻害しない範囲内で公知の添加剤、例えば酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、有機の易滑剤、顔料、染料、有機または無機の微粒子、充填剤、帯電防止剤、核剤、メチロール化あるいはアルキロール化された尿素系、エポキシ系、ブロック化イソシアネート化合物、オキサゾリン化合物など各種架橋剤などを配合しても良い。
【0053】
塗膜の厚みは特に限定しないが、通常は0.03〜5μm、好ましくは0.05〜2μm、更に好ましくは0.07μm〜0.5μmの範囲が好ましい。特に薄すぎると密着性不良となる場合がある。
【0054】
基材フィルム上への塗布の方法は公知の塗布方法、例えばリバースコート法、グラビアコート法、ロッドコート法、ダイコート法等を用いることができる。
【0055】
次に本発明の昇華型感熱転写材用積層フィルムの製造方法について説明する。
【0056】
まず、熱可塑性樹脂Aに無機粒子を含有せしめる方法としては、重合後、重合中、重合前のいずれでも良いが、ポリマにベント方式の二軸押出機を用いて練り込む方法が、本発明範囲の表面形態のフィルムを得るのに有効である。また、無機粒子の含有量を調節する方法としては、上記方法で高濃度マスタを作っておき、それを製膜時に無機粒子を実質的に含有しない熱可塑性樹脂で希釈して無機粒子の含有量を調節する方法が、本発明範囲の表面形態のフィルムを得るのに有効である。さらにこの無機粒子高濃度マスタポリマの溶融粘度、共重合成分などを調節して、その結晶化パラメータ△Tcgを30〜80℃の範囲にしておく方法は延伸破れが少なく、本発明範囲の表面形態のフィルムを得るのに有効である。
【0057】
かくして、無機粒子を含有するペレットAを十分乾燥した後、公知の溶融押出機に供給し、スリット状のダイからシート状に押出し、キャスティングロール上で冷却固化せしめて未延伸フィルムを作る。すなわち、2または3台の押出機、2または3層用の合流ブロックあるいは口金を用いて、これらの熱可塑性樹脂を積層する。合流ブロック方式を用いる場合は積層部分を前述の如く矩形のものとし、両者の熱可塑性樹脂の粘度の差(絶対値)を0〜2000ポイズ、好ましくは0〜1000ポイズの範囲にしておくことが本発明範囲の表面形態のフィルムを安定して、幅方向の斑なく、工業的に製造するのに有効である。
【0058】
次にこの多層の未延伸フィルムを二軸延伸し、二軸配向せしめる。二軸延伸の方法は同時二軸延伸、逐次二軸延伸法のいずれでもよいが、長手方向、幅方向の順に延伸する逐次二軸延伸法の場合に本発明範囲の表面形態のフィルムを安定して、幅方向の斑なく、工業的に製造するのに有効である。逐次二軸延伸の場合、長手方向の延伸を、3段階、特に4段階以上に分けて、40〜150℃の範囲で、かつ、1000〜5000%/分の延伸速度で、3〜6倍行う方法は本発明範囲の表面形態を有するフィルムを得るのに有効である。幅方向の延伸温度、速度は80〜170℃、1000〜20000%/分の範囲が好適である。延伸倍率は3〜10倍が好適である。また、必要に応じてさらに長手方向、幅方向の少なくとも一方向に延伸することもできる。また必要に応じて無機粒子を含有する極めて薄い層を設けてから、面積延伸倍率(長手方向倍率×幅方向倍率)として9倍以上の延伸を行う方法を用いることもできる。次にこの延伸フィルムを熱処理する。この場合の熱処理条件としては、幅方向に弛緩、微延伸、定長下のいずれかの状態で、140〜280℃、好ましくは160〜260℃の範囲で0.5〜60秒間が好適であるが、熱処理にマイクロ波加熱を併用すると、本発明の表面形態を有するフィルムが得られ易くなるので望ましい。
【0059】
本発明におけるC層の積層時期は、フィルムの製造工程中に塗布し、基材と共に延伸する方法が最も好ましい。例えば、溶融押し出しされた結晶配向前のフィルムを長手方向に2.5〜5倍程度延伸し、連続的に塗布する面にコロナ放電処理を施し、その処理面に塗布液を塗布する。塗布されたフィルムは段階的に加熱されたゾーンを通過しつつ乾燥され、幅方向に2.5〜5倍程度延伸される。さらに連続的に150〜250℃の加熱ゾーンに導かれ結晶配向を完了させる方法によって得られる。この熱処理工程中で必要に応じて幅方向あるいは長手方向に3〜12%の弛緩熱処理を施してもよい。この場合に用いる塗布液は環境汚染や防爆性の点で水系が好ましい。
【0060】
かくして得られた積層フィルムは、易接着性層を介して昇華型インキを設け、他方の面にスティック防止層を設けることにより、昇華型感熱転写材として好適に使用される。
【0061】
特にフィルム表面に効率良く、高密度でかつ高さの均一な突起を形成できるようになり、粗大突起の無い均一な突起とすることにより基材フィルムの易滑性が良好であるばかりでなく、感熱転写材用途では転写時の熱伝導性を高めることによって印刷特性が向上する。さらに、アクリル樹脂とポリエステル樹脂を主たる構成成分とする層を設けることによって昇華型インキとの密着性にも優れ、昇華型感熱転写材として特に好適に使用される。
【0062】
【特性値の測定方法および評価方法】
本発明における特性の測定方法および効果の評価方法は次の通りである。
【0063】
(1)無機粒子の体積平均径、粒子数
フィルムからポリマをプラズマ低温灰化処理法で除去し、無機粒子を露出させる。処理条件はポリマは灰化されるが無機粒子は極力ダメージを受けない条件を選択する。その無機粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、無機粒子の画像をイメージアナライザで処理する。SEMの倍率はおよそ2000〜10000倍、また1回の測定で視野は1辺がおよそ10〜50μmから適宜選択する。観察箇所を変えて粒子数5000個以上で、粒径とその体積分率から次式で体積平均径dを得る。
d=Σdi ・Nviここで、di は粒径、Nvi はその体積分率である。
【0064】
粒子数は、積層厚みと体積平均径の関係を満たすものについて、体積分率から求め、mm2 当りに換算する。
【0067】
(2)無機粒子の含有量
熱可塑性樹脂は溶解し無機粒子は溶解させない溶媒を選択し、無機粒子を熱可塑性樹脂から遠心分離し、無機粒子の全体重量に対する比率(重量%)をもって無機粒子含有量とする。場合によっては赤外分光法の併用も有用である。
【0068】
(3)ガラス転移点Tg、冷結晶化温度Tcc、結晶化パラメータ△Tcg、及び融点
パーキンエルマ社製のDSC(示差走査熱量計)II型を用いて測定した。DSCの測定条件は次の通りである。即ち、試料10mgをDSC装置にセツトし、300℃の温度で5分間溶融した後、液体窒素中で急冷する。この急冷試料を10℃/分で昇温し、ガラス転移点Tgを検知する。更に昇温を続け、ガラス状態からの結晶化発熱ピーク温度をもって冷結晶化温度Tccとした。さらに昇温を続け融解ピーク温度を融点とした。また、TccとTgの差(Tcc−Tg)を結晶化パラメータ△Tcgと定義する。
【0069】
(4)表面突起の平均高さ
2検出器方式の走査型電子顕微鏡[ESM−3200、エリオニクス(株)製]と断面測定装置[PMS−1、エリオニクス(株)製]においてフィルム表面の平坦面の高さを0として走査した時の突起の高さ測定値を画像処理装置[IBAS2000、カールツァイス 製]に送り、画像処理装置上にフィルム表面突起画像を再構築する。次に、この表面突起画像で突起部分を2値化して得られた個々の突起の面積から円相当径を求め、これをその突起の平均径とする。また、この2値化された個々の突起部分の中で最も高い値をその突起の高さとし、これを個々の突起について求める。この測定を場所を変えて500回繰り返し、突起個数を求め、測定された全突起についてその高さの平均値を平均高さとした。また、走査型電子顕微鏡の倍率は、1000〜8000倍の間の値を選択する。なお、場合によっては、高精度光干渉式3次元表面解析装置(WYKO社製TOPO−3D、対物レンズ:40〜200倍、高解像カメラ使用が有効)を用いて得られる高さ情報を上記SEMの値に読み替えて用いてもよい。
【0070】
(5)表層粒子濃度比
2次イオンマススペクトル(SIMS)を用いて、フィルム中の無機粒子に起因する元素の内の最も高濃度の元素と熱可塑性樹脂の炭素元素の濃度比を粒子濃度とし、厚さ方向の分析を行う。SIMSによって測定される最表層粒子濃度(深さ0の点)における粒子濃度Aとさらに深さ方向の分析を続けて得られる最高濃度Bの比、A/Bを表層粒子濃度比と定義した。測定装置、条件は下記の通りである。
【0071】
測定装置
2次イオン質量分析装置(SIMS)
***、ATOMIKA社製 A−DIDA3000
測定条件
1次イオン種 : O2 +
1次イオン加速電圧 : 12kV
1次イオン電流 : 200nA
ラスタ領域 : 400μm□
分析領域 : ゲート30%
測定真空度: 6.0×109 Torr
E−GUN: 0.5kV−3.0A
(6)単一粒子指数
フィルムの断面を透過型電子顕微鏡(TEM)で写真観察し、無機粒子を検知する。観察倍率を100000倍程度にすれば、それ以上分けることができない1個の無機粒子が観察できる。無機粒子の占める全面積をA、その内2個以上の無機粒子が凝集している凝集体の占める面積をBとした時、(A−B)/Aをもって、単一粒子とする。TEM条件は下記の通りであり1視野面積:2μm2 の測定を場所を変えて、500視野測定する。
【0072】
・装置:日本電子製JEM−1200EX
・観察倍率:100000倍
・切片厚さ:約1000オングストローム
(7)粒径比
上記(1)の測定において個々の無機粒子の長径の平均値/短径の平均値の比である。即ち、下式で求められる。
【0073】
長径=ΣD1i/N
短径=ΣD2i/N
D1i、D2iはそれぞれ個々の無機粒子の長径(最大径)、短径(最短径)、Nは総個数である。
【0074】
(8)積層されたフィルム中の熱可塑性樹脂A層の厚さ
2次イオン質量分析装置(SIMS)を用いて、表層から深さ3000nmの範囲のフィルム中の無機粒子の内、最も高濃度の無機粒子に起因する元素とポリエステルの炭素元素濃度比(M+ /C+ )を粒子濃度とし、表面から深さ3000nmまで厚さ方向の分析を行う。表層では表面という界面のために粒子濃度は低く表面から遠ざかるにつれて粒子濃度は高くなる。本発明フィルムの場合は、一旦極大値となった粒子濃度がまた減少し始める。この濃度分布曲線をもとに表層粒子濃度が極大値の1/2になる深さ(この深さは極大値となる深さよりも深い)を求め、これを積層厚さとした。条件は(5)と同様である。
【0076】
(9)共重合ポリエステルの極限粘度:[η]
o−クロロフェノール溶媒を用い、25℃で測定した。
【0077】
(10)昇華型インキ密着性
以下の昇華型インキを乾燥後の厚みが約5μmとなるようにバーコータを用いて塗布する。塗布後120℃で2分間乾燥し、25℃、相対湿度60%下で24時間放置後、昇華型インキ層上にスコッチ・メンディングテープ(住友3M(株)製)を貼付け、手で強く圧着した後、180℃方向に剥離する。この時の基材フィルム側に残存した昇華型インキの状態により以下の5段階評価をした。(◎)、(○)を密着性良好とする。
【0078】
◎ :剥離面のインキが100%残存しているもの
○ : 〃 80%以上残存しているもの
△ : 〃 50%以上残存しているもの
× : 〃 50%未満残存しているもの
××:全く無抵抗に剥離するもの
「昇華型インキ組成」
・分散染料KST−B−136(日本火薬(株)製) 4重量%
・エチルヒドロキシエチルセルロース 6重量%
・メチルエチルケトン 45重量%
・トルエン 45重量%
(11)感熱転写材の印刷特性
前記(10)で、スティック防止層を設けて作成した昇華型感熱転写材の印刷特性を、シャープカラービデオプリンタGZ−P11W(シャープ(株)製)を用いて印刷状態を目視で行い、以下の基準で評価した。
【0079】
◎:印刷状態が極めて良好
○:印刷特性良好
△:やや不良
×:著しく不良
(12)塗布層の厚み
日立製作所(株)製透過型電子顕微鏡HU−12型を用い、積層フィルムの超薄膜面切片を観察し、厚みを求めた。
【0080】
【実施例】
次に実施例に基づいて本発明を説明するが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0081】
実施例1〜10、比較例1〜7
体積平均径の異なるコロイダルシリカに起因する球状シリカ粒子を含有するエチレングリコールスラリを調製し、このエチレングリコールスラリを190℃で1.5時間熱処理した後、テレフタル酸ジメチルとエステル交換反応後、重縮合し、該粒子を0.01〜55重量%含有するポリエチレンテレフタレート(以下PETと略称する)のペレットを作った。このペレットを用いて熱可塑性樹脂Aを調製し、また、常法によって、0.03μm径の球状シリカ粒子を0.3重量%含有するPETを製造し、熱可塑性樹脂Bとした。これらのポリマをそれぞれ180℃で3時間減圧乾燥(3Torr)した。熱可塑性樹脂Aを押出機1に供給し285℃で溶融し、さらに、熱可塑性樹脂Bを押出機2に供給、280℃で溶融し、これらのポリマを矩形積層部を備えた合流ブロックで合流積層し、静電印加キャスト法を用いて表面温度30℃のキャスティング・ドラムに巻き付けて冷却固化し、2層又は両面に熱可塑性樹脂A層を有する3層構造の未延伸フィルムを作った。この時、それぞれの押出機の吐出量を調節し総厚さ、熱可塑性樹脂A層の厚さを調節した。この未延伸フィルムを温度90℃にて長手方向に3.5倍延伸した。この延伸は2組ずつのロールの周速差で、4段階で行った。この一軸延伸フィルムにインラインコーティングし、そのコーティング一軸延伸フィルムをステンタを用いて延伸速度2000%/分で100℃で幅方向に4.0倍延伸、長手方向に2kg/mの張力下で、220℃にて5秒間熱処理し、総厚さ7μm、熱可塑性樹脂A層厚さ0.05〜6μmの二軸配向積層フィルムを得た。これらのフィルムのパラメータ及び積層構成は表1及び表2に示した通りである。
【0082】
本発明の積層フィルムに積層するC層としては、アクリル樹脂とポリエステル樹脂を主たる構成成分とするものであれば特に限定されるものではないが、水系の塗剤が好ましい。C層を構成する塗剤組成は、表1及び表2にしめした通りである。但し、アクリル樹脂として、メチルメタクリレート/エチルアクリレート/アクリル酸/N−メチロールアクリルアミドを72/25/2/1(重量比)で共重合させた水系アクリル樹脂塗剤。ポリエステル樹脂としてテレフタル酸/イソフタル酸/5−ナトリウムスルホイソフタル酸/エチレングリコール/1,4−ブタンジオールを30/15/5/25/25(重量比)で縮合重合させた水系ポリエステル樹脂塗剤を用いた。
【0083】
結果を表1及び表2に示す。
【0084】
実施例11
基材フィルムとして、ポリエチレンテレフタレートの代わりに、ポリエチレン−2,6−ナフタレートを用いた以外は、実施例1と同様にしてC層を積層した本発明の積層フィルムを得た。結果を表1に示す。
【0085】
【表1】
【表2】
【0086】
【発明の効果】
熱可塑性樹脂Aと無機粒子とを主成分とするフィルムAを、熱可塑性樹脂Bを主成分とするフィルムBの少なくとも片面に積層し、前記フィルムAの厚さが0.005〜5μm、該フィルムA中に含有される前記粒子の体積平均径が積層厚さの0.1〜3倍、該粒子のフィルムA中の含有量が0.1〜50重量%である二軸配向熱可塑性樹脂フィルムであって、該積層フィルムの少なくとも片面にアクリル樹脂とポリエステル樹脂を主たる構成成分とする層(C層)が積層されてなる積層フィルムであって、易接着性、印刷特性に優れ、昇華型感熱転写材に好ましく用いられる。
Claims (2)
- 熱可塑性樹脂Aと無機粒子とを主成分とするフィルムAを、熱可塑性樹脂Bを主成分とするフィルムBの少なくとも片面に積層し、前記フィルムAの厚さが0.005〜5μm、該フィルムA中に含有される前記粒子の体積平均径がフィルムAの厚さの0.1〜3倍、該粒子のフィルムA中の含有量が0.05〜50重量%である二軸配向熱可塑性樹脂積層フィルムであって、該積層フィルムの少なくとも片面にアクリル樹脂とポリエステル樹脂を主たる構成成分とする層(C層)が形成されてなることを特徴とする昇華型感熱転写材用積層フィルム。
- 前記二軸配向熱可塑性樹脂積層フィルムが、ポリエチレンテレフタレートフィルム又はポリエチレン−2,6−ナフタレートフィルムからなることを特徴とする請求項1記載の昇華型感熱転写材用積層フィルム。
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