JP3704870B2 - 冷間鍛造品の溶接方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【技術分野】
本発明は,溶接品質に優れた冷間鍛造品の溶接方法に関する。
【0002】
【従来技術】
冷間鍛造加工は,金属素材を金型等により圧縮成型する加工方法であり,一般的に,金属素材に予め潤滑用のリン酸亜鉛被膜(ボンデ被膜)をコーティングした状態で行われる。得られる冷間鍛造品は,寸法精度に優れまた低コストでもあるため,種々の製品の部品として広く利用されている。また,冷間鍛造品は,他部材と溶接されて新たな部品を構成する場合もある。
ところで,リン酸亜鉛被膜の特性として,潤滑性,密着性及び展伸性がある。これらの特性を保つために被膜中には結晶水が含まれる。
【0003】
そのため,冷間鍛造品と他部材とを溶接する際にこれらを直接溶接した場合には,冷間鍛造品の上記ボンデ被膜の存在によって,穴あき(ブローホール)等の欠陥が発生する。それ故,従来,冷間鍛造品と他部材とを溶接するに当たっては,冷間鍛造時に塗布された上記ボンデ被膜を除去する前処理が必ず行われていた。また,この前処理としては,切削加工,ショットピーニング,酸洗浄等の種々の被膜除去方法がある。
【0004】
【解決しようとする課題】
しかしながら,上記従来の冷間鍛造品の溶接方法においては次の問題がある。即ち,上記切削加工によるボンデ被膜除去は切削コストが高く,また切削後の防錆処理に注意が必要である。また,上記ショットピーニングにおいては,ショット条件のばらつきにより,ボンデ被膜除去性が不十分となり,溶接品質が悪化する場合がある。
【0005】
また,上記酸洗浄においては,洗浄後の水洗及び中和が不十分な場合に,母材における水素脆性や応力腐食割れ等が起こるおそれがある。また,この場合には上記切削加工の場合と同様に洗浄後の防錆処理が必要である。
つまり,従来の前処理は,不安定要素を多分に含み,ボンデ被膜除去が不十分になったり他の錆等の不具合を誘発するおそれがあった。
【0006】
また,上記前処理は,冷間鍛造品の寸法仕上げの目的も兼ねていた面もあったが,近年の冷間鍛造技術の進歩による寸法精度の向上によりこの面からの前処理の必要性は薄れた。
そのため,例えばスポット溶接やプロジェクション溶接のように溶接部材を溶融させることなく接合する固相接合においては,上記ボンデ被膜を除去する前処理を行わずに溶接する方法も実際にとられている。
【0007】
しかしながら,レーザ溶接においては,高密度高エネルギーを用いて接合部材を溶融し,接合するため,上記の結晶水のごとき低融点成分が存在するとこれがベーパライトしてブローホールになりやすい。そのため,かかるレーザ溶接のように溶接すべき2種の部材の溶接部分を互いに溶融させる溶融接合においては,上記のブローホール発生等の溶接品質の問題から,ボンデ被膜を除去せずに直接溶接する例はなかった。
そのため,ボンデ被膜を除去する従来の前処理に替わる簡易な前処理方法により,いわば直接的に溶融接合できる方法の開発が望まれていた。
【0008】
本発明は,かかる従来の問題に鑑みてなされたもので,溶接品質を確実に改善することができ,かつ,直接的に溶融溶接することができる,冷間鍛造品の溶接方法を提供しようとするものである。
【0009】
【課題の解決手段】
請求項1の発明は,冷間鍛造加工用の金属素材の表面にZn3 (PO4 )2 ・4H2 O又はZn2 Fe(PO4 )2 ・4H2 Oからなるボンデ被膜を形成し,
次いで上記金属素材に冷間鍛造加工を施して冷間鍛造品を作製し,
次いで該冷間鍛造品に対して他部材を重ね合わせ,溶接所望部分にレーザ光を照射して上記冷間鍛造品と上記他部材を部分的に溶融させると共に両者の材料が互いに混合した溶接部分を形成するレーザ溶接を行うに当たり,
上記冷間鍛造品における少なくとも上記溶接所望部分を100〜500℃に加熱する熱処理を行い,上記ボンデ被膜中の上記結晶水を解離させると共にこれを放出させ,その後,上記溶接所望部分にレーザ光を照射してレーザ溶接を行うことを特徴とする冷間鍛造品の溶接方法にある。
【0010】
本発明において最も注目すべきことは,上記レーザ溶接を行う前に,冷間鍛造品における少なくとも上記溶接所望部分を100〜500℃に加熱する熱処理を行うことである。そして,この熱処理により,上記ボンデ被膜中の上記結晶水を解離させると共にこれを放出させることである。
【0011】
上記熱処理における加熱温度が100℃未満の場合には,ボンデ被膜中の結晶水が十分に解離しないという問題があり,一方,500℃を超える場合には,鍛造品自体の性質を変化させるおそれがあるという問題がある。
また,上記熱処理は,例えば,加熱炉内に保持する方法や,高周波加熱,電子ビーム等の照射による加熱など,種々の方法により行うことができる。
また,上記熱処理は,少なくとも冷間鍛造品の溶接所望部分に対して行う。なお,後述するごとく,冷間鍛造品の全体を熱処理しても差し支えない。
【0012】
上記冷間鍛造加工用の金属素材へのボンデ被膜の形成は,従来より一般的に行われている方法により行う。例えば,上記金属素材を脱脂洗浄後,リン酸亜鉛を含有する化成処理液を用いてスプレー又はディップ処理することにより,金属素材表面にボンデ被膜を形成する。
また,上記レーザ溶接は,公知のごとく,上記冷間鍛造品及び他部材の寸法に適した出力のレーザ光を溶接所望部分に照射することにより行う。
【0013】
次に,本発明の作用につき説明する。
本発明の冷間鍛造品の溶接方法においては,レーザ溶接を行う前に,冷間鍛造品に対して上記熱処理を行う。これにより,冷間鍛造品の表面に形成されていたZn3 (PO4 )2 ・4H2 O又はZn2 Fe(PO4 )2 ・4H2 Oよりなるボンデ被膜は,その結晶水が解離して放出された状態となる。
【0014】
次いで,上記冷間鍛造品と他部材とを重ね合わせてレーザ光を照射することにより,冷間鍛造品と他部材の溶接部分が互いに溶融して混ざり合う。このとき,結晶水が解離したボンデ被膜は,上記の溶融部分に分散すると考えられるが,結晶水(H2 O)を含有していないため,ベーパライトすることがない。
【0015】
そのため,従来のように溶接部分にブローホール等が発生することがなく,溶接品質に優れた溶接継ぎ手が形成される。
このように,本発明においては,上記熱処理をレーザ溶接前に施すことにより,確実に溶接品質を確保することができ,しかも,ボンデ被膜を実質上除去することなく直接的に溶融接合することができる。
それ故,本発明によれば,溶接品質を確実に改善することができ,かつ直接的に溶融溶接することができる,冷間鍛造品の溶接方法を提供することができる。
【0016】
次に,上記レーザ光としては,CO2 レーザその他の種々のレーザ光を利用することができるが,請求項2の発明のように,上記レーザ光はYAGレーザを用いることもできる。
【0017】
また,請求項3の発明のように,上記熱処理は上記冷間鍛造品の全体を加熱することもできる。例えば,冷間鍛造品の外形が小さい場合には,溶接所望部分を部分的に熱処理するよりも冷間鍛造品の全体を加熱する方が合理的な場合もあり,適宜最適な加熱方法をとることができる。
【0018】
また,上記熱処理は,冷間鍛造品を他部材と重ね合せる前に単独で行ってもよいし,冷間鍛造品と他部材とを重ね合わせた状態でレーザ光照射前に行ってもよい。
【0019】
【発明の実施の形態】
実施形態例1
本発明の実施形態例にかかる冷間鍛造品の溶接方法につき,図1〜図4を用いて説明する。
本例の冷間鍛造品の溶接方法は,図1に示すごとく円柱状の冷間鍛造品1と,管状の他部材2とを重ね合わせて溶接する場合の例である。
【0020】
まず,冷間鍛造品1を作製するに当たっては,冷間鍛造加工用の金属素材の表面にZn3 (PO4 )2 ・4H2 Oからなるボンデ被膜を形成する。具体的には,金属素材を脱脂洗浄後,リン酸亜鉛を含有した溶液にディップ処理して,表面に上記Zn3 (PO4 )2 ・4H2 Oからなるボンデ被膜を形成した。
【0021】
次いで,ボンデ被膜を伴った金属素材に冷間鍛造加工を施して冷間鍛造品1を作製した。本例の冷間鍛造品1は,図1に示すごとく,鋼製の中実丸棒である。また,他部材2としては,冷間鍛造品1をスムーズに挿入することができるサイズの鋼管を準備した。
【0022】
そして,レーザ溶接を行う前に,冷間鍛造品1の少なくとも溶接所望部分10を熱処理する。本例においては,冷間鍛造品1全体を空気雰囲気の加熱炉内に装入し,温度400℃に加熱する熱処理を行った。
これにより,冷間鍛造品1の表面のボンデ被膜は,その結晶水が解離され放出された状態となる。
【0023】
次に,図2に示すごとく,冷間鍛造品1を他部材2に挿入してこれらを重ね合わせ,他部材2の溶接所望部分20の外周面にYAGレーザ8を照射した。これにより,冷間鍛造品1と他部材2を部分的に溶融させると共に両者の材料が互いに混合した溶接部分15が形成された。
【0024】
図3には,得られた溶接部分15の外観を示す。また,図4には,溶接部分15の断面状態を示す。図3,図4より知られるごとく,溶接部分15は,ブローホール等の発生がなく非常に優れた品質状態を呈していた。
これにより,従来行っていた切削加工等の前処理を省略することができ,冷間鍛造品1と他部材2との接合コストを大幅に削減することができる。
【0025】
比較例
次に,上記実施形態例1の効果をさらに明確にすべく,比較として上記熱処理を行わなずに直接冷間鍛造品1と他部材2とをレーザ溶接した。その他の条件は実施形態例1と同様にした。
本比較例により得られた溶接部分95の外観状態及び断面状態を,それぞれ図5,図6に示す。図5,図6より知られるごとく,本比較例の場合には,ブローホール99が点在し,溶接品質の悪い溶接部分95が形成された。
【0026】
上記実施形態例1及び比較例の結果から,冷間鍛造品に対して溶接前に上記熱処理を行うことが,ボンデ被膜を有する冷間鍛造品の溶融接合の品質改善に多大な効果を発揮することが確認された。
なお,上記他部材2が冷間鍛造品である場合には,この他部材2の溶接所望部分に対して上記と同様の熱処理を行うことにより上記と同様の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態例1における,冷間鍛造品と他部材とを示す説明図。
【図2】実施形態例1における,冷間鍛造品と他部材との重ね合わせ状態を示す,(A)断面図,(B)正面図。
【図3】実施形態例1における,溶接部分の外観状態を示す説明図。
【図4】実施形態例1における,溶接部分の断面状態を示す説明図。
【図5】比較例における,溶接部分の外観状態を示す説明図。
【図6】比較例における,溶接部分の断面状態を示す説明図。
【符号の説明】
1...冷間鍛造品,
10...溶接所望部分,
15...溶接部分,
2...他部材,
【技術分野】
本発明は,溶接品質に優れた冷間鍛造品の溶接方法に関する。
【0002】
【従来技術】
冷間鍛造加工は,金属素材を金型等により圧縮成型する加工方法であり,一般的に,金属素材に予め潤滑用のリン酸亜鉛被膜(ボンデ被膜)をコーティングした状態で行われる。得られる冷間鍛造品は,寸法精度に優れまた低コストでもあるため,種々の製品の部品として広く利用されている。また,冷間鍛造品は,他部材と溶接されて新たな部品を構成する場合もある。
ところで,リン酸亜鉛被膜の特性として,潤滑性,密着性及び展伸性がある。これらの特性を保つために被膜中には結晶水が含まれる。
【0003】
そのため,冷間鍛造品と他部材とを溶接する際にこれらを直接溶接した場合には,冷間鍛造品の上記ボンデ被膜の存在によって,穴あき(ブローホール)等の欠陥が発生する。それ故,従来,冷間鍛造品と他部材とを溶接するに当たっては,冷間鍛造時に塗布された上記ボンデ被膜を除去する前処理が必ず行われていた。また,この前処理としては,切削加工,ショットピーニング,酸洗浄等の種々の被膜除去方法がある。
【0004】
【解決しようとする課題】
しかしながら,上記従来の冷間鍛造品の溶接方法においては次の問題がある。即ち,上記切削加工によるボンデ被膜除去は切削コストが高く,また切削後の防錆処理に注意が必要である。また,上記ショットピーニングにおいては,ショット条件のばらつきにより,ボンデ被膜除去性が不十分となり,溶接品質が悪化する場合がある。
【0005】
また,上記酸洗浄においては,洗浄後の水洗及び中和が不十分な場合に,母材における水素脆性や応力腐食割れ等が起こるおそれがある。また,この場合には上記切削加工の場合と同様に洗浄後の防錆処理が必要である。
つまり,従来の前処理は,不安定要素を多分に含み,ボンデ被膜除去が不十分になったり他の錆等の不具合を誘発するおそれがあった。
【0006】
また,上記前処理は,冷間鍛造品の寸法仕上げの目的も兼ねていた面もあったが,近年の冷間鍛造技術の進歩による寸法精度の向上によりこの面からの前処理の必要性は薄れた。
そのため,例えばスポット溶接やプロジェクション溶接のように溶接部材を溶融させることなく接合する固相接合においては,上記ボンデ被膜を除去する前処理を行わずに溶接する方法も実際にとられている。
【0007】
しかしながら,レーザ溶接においては,高密度高エネルギーを用いて接合部材を溶融し,接合するため,上記の結晶水のごとき低融点成分が存在するとこれがベーパライトしてブローホールになりやすい。そのため,かかるレーザ溶接のように溶接すべき2種の部材の溶接部分を互いに溶融させる溶融接合においては,上記のブローホール発生等の溶接品質の問題から,ボンデ被膜を除去せずに直接溶接する例はなかった。
そのため,ボンデ被膜を除去する従来の前処理に替わる簡易な前処理方法により,いわば直接的に溶融接合できる方法の開発が望まれていた。
【0008】
本発明は,かかる従来の問題に鑑みてなされたもので,溶接品質を確実に改善することができ,かつ,直接的に溶融溶接することができる,冷間鍛造品の溶接方法を提供しようとするものである。
【0009】
【課題の解決手段】
請求項1の発明は,冷間鍛造加工用の金属素材の表面にZn3 (PO4 )2 ・4H2 O又はZn2 Fe(PO4 )2 ・4H2 Oからなるボンデ被膜を形成し,
次いで上記金属素材に冷間鍛造加工を施して冷間鍛造品を作製し,
次いで該冷間鍛造品に対して他部材を重ね合わせ,溶接所望部分にレーザ光を照射して上記冷間鍛造品と上記他部材を部分的に溶融させると共に両者の材料が互いに混合した溶接部分を形成するレーザ溶接を行うに当たり,
上記冷間鍛造品における少なくとも上記溶接所望部分を100〜500℃に加熱する熱処理を行い,上記ボンデ被膜中の上記結晶水を解離させると共にこれを放出させ,その後,上記溶接所望部分にレーザ光を照射してレーザ溶接を行うことを特徴とする冷間鍛造品の溶接方法にある。
【0010】
本発明において最も注目すべきことは,上記レーザ溶接を行う前に,冷間鍛造品における少なくとも上記溶接所望部分を100〜500℃に加熱する熱処理を行うことである。そして,この熱処理により,上記ボンデ被膜中の上記結晶水を解離させると共にこれを放出させることである。
【0011】
上記熱処理における加熱温度が100℃未満の場合には,ボンデ被膜中の結晶水が十分に解離しないという問題があり,一方,500℃を超える場合には,鍛造品自体の性質を変化させるおそれがあるという問題がある。
また,上記熱処理は,例えば,加熱炉内に保持する方法や,高周波加熱,電子ビーム等の照射による加熱など,種々の方法により行うことができる。
また,上記熱処理は,少なくとも冷間鍛造品の溶接所望部分に対して行う。なお,後述するごとく,冷間鍛造品の全体を熱処理しても差し支えない。
【0012】
上記冷間鍛造加工用の金属素材へのボンデ被膜の形成は,従来より一般的に行われている方法により行う。例えば,上記金属素材を脱脂洗浄後,リン酸亜鉛を含有する化成処理液を用いてスプレー又はディップ処理することにより,金属素材表面にボンデ被膜を形成する。
また,上記レーザ溶接は,公知のごとく,上記冷間鍛造品及び他部材の寸法に適した出力のレーザ光を溶接所望部分に照射することにより行う。
【0013】
次に,本発明の作用につき説明する。
本発明の冷間鍛造品の溶接方法においては,レーザ溶接を行う前に,冷間鍛造品に対して上記熱処理を行う。これにより,冷間鍛造品の表面に形成されていたZn3 (PO4 )2 ・4H2 O又はZn2 Fe(PO4 )2 ・4H2 Oよりなるボンデ被膜は,その結晶水が解離して放出された状態となる。
【0014】
次いで,上記冷間鍛造品と他部材とを重ね合わせてレーザ光を照射することにより,冷間鍛造品と他部材の溶接部分が互いに溶融して混ざり合う。このとき,結晶水が解離したボンデ被膜は,上記の溶融部分に分散すると考えられるが,結晶水(H2 O)を含有していないため,ベーパライトすることがない。
【0015】
そのため,従来のように溶接部分にブローホール等が発生することがなく,溶接品質に優れた溶接継ぎ手が形成される。
このように,本発明においては,上記熱処理をレーザ溶接前に施すことにより,確実に溶接品質を確保することができ,しかも,ボンデ被膜を実質上除去することなく直接的に溶融接合することができる。
それ故,本発明によれば,溶接品質を確実に改善することができ,かつ直接的に溶融溶接することができる,冷間鍛造品の溶接方法を提供することができる。
【0016】
次に,上記レーザ光としては,CO2 レーザその他の種々のレーザ光を利用することができるが,請求項2の発明のように,上記レーザ光はYAGレーザを用いることもできる。
【0017】
また,請求項3の発明のように,上記熱処理は上記冷間鍛造品の全体を加熱することもできる。例えば,冷間鍛造品の外形が小さい場合には,溶接所望部分を部分的に熱処理するよりも冷間鍛造品の全体を加熱する方が合理的な場合もあり,適宜最適な加熱方法をとることができる。
【0018】
また,上記熱処理は,冷間鍛造品を他部材と重ね合せる前に単独で行ってもよいし,冷間鍛造品と他部材とを重ね合わせた状態でレーザ光照射前に行ってもよい。
【0019】
【発明の実施の形態】
実施形態例1
本発明の実施形態例にかかる冷間鍛造品の溶接方法につき,図1〜図4を用いて説明する。
本例の冷間鍛造品の溶接方法は,図1に示すごとく円柱状の冷間鍛造品1と,管状の他部材2とを重ね合わせて溶接する場合の例である。
【0020】
まず,冷間鍛造品1を作製するに当たっては,冷間鍛造加工用の金属素材の表面にZn3 (PO4 )2 ・4H2 Oからなるボンデ被膜を形成する。具体的には,金属素材を脱脂洗浄後,リン酸亜鉛を含有した溶液にディップ処理して,表面に上記Zn3 (PO4 )2 ・4H2 Oからなるボンデ被膜を形成した。
【0021】
次いで,ボンデ被膜を伴った金属素材に冷間鍛造加工を施して冷間鍛造品1を作製した。本例の冷間鍛造品1は,図1に示すごとく,鋼製の中実丸棒である。また,他部材2としては,冷間鍛造品1をスムーズに挿入することができるサイズの鋼管を準備した。
【0022】
そして,レーザ溶接を行う前に,冷間鍛造品1の少なくとも溶接所望部分10を熱処理する。本例においては,冷間鍛造品1全体を空気雰囲気の加熱炉内に装入し,温度400℃に加熱する熱処理を行った。
これにより,冷間鍛造品1の表面のボンデ被膜は,その結晶水が解離され放出された状態となる。
【0023】
次に,図2に示すごとく,冷間鍛造品1を他部材2に挿入してこれらを重ね合わせ,他部材2の溶接所望部分20の外周面にYAGレーザ8を照射した。これにより,冷間鍛造品1と他部材2を部分的に溶融させると共に両者の材料が互いに混合した溶接部分15が形成された。
【0024】
図3には,得られた溶接部分15の外観を示す。また,図4には,溶接部分15の断面状態を示す。図3,図4より知られるごとく,溶接部分15は,ブローホール等の発生がなく非常に優れた品質状態を呈していた。
これにより,従来行っていた切削加工等の前処理を省略することができ,冷間鍛造品1と他部材2との接合コストを大幅に削減することができる。
【0025】
比較例
次に,上記実施形態例1の効果をさらに明確にすべく,比較として上記熱処理を行わなずに直接冷間鍛造品1と他部材2とをレーザ溶接した。その他の条件は実施形態例1と同様にした。
本比較例により得られた溶接部分95の外観状態及び断面状態を,それぞれ図5,図6に示す。図5,図6より知られるごとく,本比較例の場合には,ブローホール99が点在し,溶接品質の悪い溶接部分95が形成された。
【0026】
上記実施形態例1及び比較例の結果から,冷間鍛造品に対して溶接前に上記熱処理を行うことが,ボンデ被膜を有する冷間鍛造品の溶融接合の品質改善に多大な効果を発揮することが確認された。
なお,上記他部材2が冷間鍛造品である場合には,この他部材2の溶接所望部分に対して上記と同様の熱処理を行うことにより上記と同様の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態例1における,冷間鍛造品と他部材とを示す説明図。
【図2】実施形態例1における,冷間鍛造品と他部材との重ね合わせ状態を示す,(A)断面図,(B)正面図。
【図3】実施形態例1における,溶接部分の外観状態を示す説明図。
【図4】実施形態例1における,溶接部分の断面状態を示す説明図。
【図5】比較例における,溶接部分の外観状態を示す説明図。
【図6】比較例における,溶接部分の断面状態を示す説明図。
【符号の説明】
1...冷間鍛造品,
10...溶接所望部分,
15...溶接部分,
2...他部材,
Claims (3)
- 冷間鍛造加工用の金属素材の表面にZn3 (PO4 )2 ・4H2 O又はZn2 Fe(PO4 )2 ・4H2 Oからなるボンデ被膜を形成し,
次いで上記金属素材に冷間鍛造加工を施して冷間鍛造品を作製し,
次いで該冷間鍛造品に対して他部材を重ね合わせ,溶接所望部分にレーザ光を照射して上記冷間鍛造品と上記他部材を部分的に溶融させると共に両者の材料が互いに混合した溶接部分を形成するレーザ溶接を行うに当たり,
上記冷間鍛造品における少なくとも上記溶接所望部分を100〜500℃に加熱する熱処理を行い,上記ボンデ被膜中の上記結晶水を解離させると共にこれを放出させ,
その後,上記溶接所望部分にレーザ光を照射してレーザ溶接を行うことを特徴とする冷間鍛造品の溶接方法。 - 請求項1において,上記レーザ光はYAGレーザであることを特徴とする冷間鍛造品の溶接方法。
- 請求項1又は2において,上記熱処理は上記冷間鍛造品の全体を加熱することを特徴とする冷間鍛造品の溶接方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP05976997A JP3704870B2 (ja) | 1997-02-26 | 1997-02-26 | 冷間鍛造品の溶接方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP05976997A JP3704870B2 (ja) | 1997-02-26 | 1997-02-26 | 冷間鍛造品の溶接方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
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JPH10235482A JPH10235482A (ja) | 1998-09-08 |
JP3704870B2 true JP3704870B2 (ja) | 2005-10-12 |
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ID=13122834
Family Applications (1)
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JP05976997A Expired - Fee Related JP3704870B2 (ja) | 1997-02-26 | 1997-02-26 | 冷間鍛造品の溶接方法 |
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JP7154824B2 (ja) * | 2018-05-30 | 2022-10-18 | ミネベアミツミ株式会社 | モータ |
CN111408834B (zh) * | 2019-01-08 | 2022-04-22 | 天津大学 | 冷金属过渡焊接在线激光后热处理的装置及方法 |
-
1997
- 1997-02-26 JP JP05976997A patent/JP3704870B2/ja not_active Expired - Fee Related
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JPH10235482A (ja) | 1998-09-08 |
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