JP3704206B2 - 誘導加熱用ワークコイルおよび誘導加熱方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属管や金属棒などの長尺金属材料を、長さ方向に突合わせて接合する場合などの加熱に際して使用される誘導加熱用ワークコイルおよび誘導加熱方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
鋼管等の金属管同士、あるいは棒鋼等の金属棒同士を長さ方向に突合せ接合する手段として、MIG溶接やTIG溶接等の溶接、圧接、拡散接合などが知られている。拡散接合には、接合すべき両材料間に非晶質金属箔からなるインサートメタルを挟み、加圧下で加熱して該メタルの含有元素を両材料中に拡散させる方法もある。
【0003】
この拡散接合法は、インサートメタル中の非晶質金属元素が容易に拡散することから、大気中で加熱して接合することも可能である。したがって、油井鋼管の現地施工などにおいて、MIG溶接やTIG溶接に替わる安価かつ簡易な接合手段として注目されている。
【0004】
本発明者らは、鋼管などの突合わせ接合用インサートメタルとして、特開平5−123890号公報に、急冷凝固箔よりなる円錐台リング用ろう材及びその製造法を提案している。該円錐台リングを使用した接合法を示すと、図10のように、接合しようとする管13および管14の端面を加工し、一方の管13には凹テーパを、他方の管14には凸テーパをそれぞれ形成し、両テーパの間に円錐台リング接合材12を挟んで加圧下で加熱するものである。
【0005】
これらの接合において、溶接の場合は、材料によっては溶接後の熱処理のための加熱が必要である。圧接や拡散接合の場合は、接合のための加熱が必要である。加熱手段としては誘導加熱が広く採用され、被加熱材の所要加熱深さに応じて適正な周波数が選択される。ところで、接合時の加熱や接合後の熱処理の際、接合部以外の母材が加熱されると、強度低下等の材質劣化が生じるという問題があるので、加熱部位は、接合部の両側で必要最小限の狭い範囲に制限することが望まれる。
【0006】
従来の誘導加熱は、被加熱材を囲繞するコイルを使用するので、加熱部位を狭くするにはコイルの巻きを密にするか、あるいは巻数を減らすことが必要である。しかし、コイルの巻き密度を高めるには各巻線間の絶縁維持の点で制約があり、巻数を減らすと、加熱部位を所定温度に加熱するためにはコイルに大電流を流すことが必要となり、電源を大容量かつ大型化しなければならない。また、従来のような被加熱材を囲繞するコイルを使用する場合、磁束がコイルで囲繞された部分以外にもれるため、加熱の効率が低下する。
【0007】
なお、板のエッジヒータや突合せ接合用の加熱装置としては、コイルと鉄心とからなる誘導加熱器を加熱部位に配設したものが、特開平5−69024号公報により知られている。しかし、該公報の技術を金属管や金属棒の長さ方向の制限された部位の加熱に適用することはできない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、鋼管等の金属管同士あるいは棒鋼等の金属棒同士を長さ方向に突合せ接合する場合等において、接合時の加熱あるいは接合後の熱処理等、長さ方向の制限された部位を誘導加熱するためのワークコイルおよび加熱方法であって、コイルの絶縁維持に問題がなく、かつ電源の大容量化、大型化も要しない装置および方法を提供することを第1の目的とする。
【0009】
また、上記接合等において、被加熱材を囲繞するコイルを使用して誘導加熱を行うには、図9に示すように被加熱材1をワークコイルの各コイル4内に挿入し、接合部2をワークコイルの長さ方向中央部に位置させて装着する必要がある。
油井管などの現地施工においては、接合前は容易にワークコイルを装着できるが、接合後には、長尺の鋼管等から取り外すために、ワークコイルを長い距離にわたって移動させるのが困難となる場合がある。
【0010】
そこで本発明は、金属管や金属棒などの長尺金属材料を、インサートメタルを挟んで長さ方向に突合わせ、加圧下で加熱して拡散接合する場合などの加熱に際して、被加熱材の任意の位置での着脱を容易にした、周方向に分割可能な誘導加熱用ワークコイルおよび加熱方法を提供することを第2の目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための本発明装置は、鉄心およびコイルがともに被加熱材の同一周上を囲繞するリング状に構成し、該鉄心の端部であるコアサイドを該リングの内側に位置せしめると共に、コアサイド両端間を遮蔽版を挟んで近接し、前記コイルは鉄心に巻きつけて配置されていることを特徴とする誘導加熱用ワークコイルである。そして、鉄心が被加熱材の周方向に分割され、該分割された鉄心毎にコイルが形成されていることが好ましい。
【0012】
また、上記目的を達成するための本発明法は、上記本発明のワークコイルにより、被加熱材の加熱部位の全断面を通る磁束の回路を形成して、対面する該被加熱材に誘導電流を生起させることを特徴とする誘導加熱方法である。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明のワークコイルを図面に示す例により説明する。図1は被加熱材1に装着した状態の斜視図であり、その縦断面図を図2に、横断面図を図4に示す。本発明のワークコイルは、図1および図4に示すように、鉄心3およびコイル4がともに被加熱材1の同一周上を囲繞するリング状をなしている。鉄心3は、図2に示すようにコアサイド7がリングの内側に位置し、遮蔽板5を挟んでたがいに近接している。なお、コアサイド7は鉄心3の図2に示す端部である。
【0014】
遮蔽板5は、銅、銅合金、アルミニウム等の磁気シールド材からなる板を図3のように絶縁板6でサンドイッチ状に挟んだもので構成される。絶縁板6としてはガラスクロス等を採用することができる。また、遮蔽板5は、加熱防止のため、内部に冷却水を通して冷却する構造としてもよい。なお、遮蔽板5は、図2のように被加熱材1の表面に垂直にするほか、例えば図5のように傾斜していてもよい。
【0015】
このような本発明のワークコイルを被加熱材1に装着し、コイル4を電源16に接続して高周波等の電流を通じると、図2に示すように、磁束8が鉄心3の端部から被加熱材1の制限された部位に集中して通る回路を形成するので、該制限された部位には誘導電流が生起して加熱される。この制限された加熱部位の中央に例えば接合部2を位置させることで、接合部2およびその両側の必要な部位を選択的に加熱することができる。
【0016】
そして、本発明のワークコイルによると、鉄心3のコアサイド7がたがいに近接しているので、図6(a)に示すように、磁束8が被加熱材1の加熱部位の全断面を通る回路を形成し、被加熱材1の肉厚全範囲が加熱される。これに対して図6(b)のように、コアサイド7が離れていると、被加熱材1の加熱部位内で磁束8が通らない部分が生じ、該部分では誘導電流が生起されず、加熱不足となる。
【0017】
なお、鉄心3は電磁鋼やソフトフェライト等で構成することができる。コイル4は図2の例のような1巻のほか、必要に応じて複数巻にすることもできる。また、コイル4は、電流を通じることで自身が加熱され、さらに加熱被加熱材1からの伝熱で加熱されて、変形や溶融のおそれがある場合は中空にして水冷するのが好ましい。そして、被加熱材1と鉄心3の間に断熱材11を介在させることが好ましい。断熱材11は鉄心3の被加熱材1側に貼付けておいてもよい。
【0018】
本発明ワークコイルの好ましい態様は、図7に示すように、鉄心3が被加熱材1の周方向に分割され、該分割された鉄心3毎にコイル4が形成されている。図7の例では2分割されている。そして分割された各鉄心3,3は、蝶番9および止具10により係止されて、被加熱材1の同一周上を囲繞するリング状に装着される。蝶番9および止具10は、鉄心3と磁気的に絶縁され、コイル4と電気的に絶縁されるように、遮蔽板5と同様、銅等の磁気シールド材をガラスクロス等の絶縁板で挟んだもので遮蔽することが好ましい。
【0019】
この好ましい態様のワークコイルを使用して長尺金属材料を接合するときは、接合前に分割箇所をあらかじめ接続したものを一方の金属材料に装着しておき、他方の金属材料を接触させた後、接合部が中央部となるよう位置調整を行い、各コイル4,4に高周波電流等の電流を流して誘導加熱する。加熱が終了し接合部が接合された後は、止具10を外し蝶番9を開いて、ワークコイルを容易に取り外すことができる。また、被加熱材1の所要の加熱部位で分割箇所を接続して装着することもでき、あるいは任意の部位に装着して所要の加熱部位に移動させることもできる。取り外しも任意の位置で行うことができる。
【0020】
加熱の際、例えば非晶質金属箔からなるインサートメタルを介した鋼材の拡散接合においては、被加熱材1の温度は1200℃程度の高温となるので、ワークコイルを保護するため、被加熱材1の周囲に断熱材11を巻き付けておく。コイル4の巻数は、被加熱材1の材料や加熱条件に応じて適宜定める。複数巻の場合は、各コイル4が短絡しないような距離を保ち、必要に応じて絶縁物を介在させる。
【0021】
上記例のような非晶質金属箔を挟んだ拡散接合は、MIG溶接やTIG溶接、あるいは圧接など他の接合手段に比べて安価かつ容易に行うことができるので、油井管の現地施工、あるいは各種建設工事の現地における鋼管や鋼棒等の接合に適している。そして本発明の採用により、従来ワークコイルの着脱が困難あるいは不可能であった箇所においても、容易に着脱して接合を行うことができる。
【0022】
本発明のワークコイルは、上記金属管の例のほか、金属棒同士の拡散接合にも適用することができる。また、拡散接合に限らず、金属管同士、金属棒同士あるいは金属線同士を圧接する場合の加熱や溶接後の熱処理等にも適用することができる。さらに、図8のようなリング状の被加熱材1に分割型のワークコイル15を装着して加熱することもできる。この場合、被加熱材1は接合部に限らず、矢印で示すように被加熱材1を走行させつつ全長にわたって熱処理等の加熱を行うこともできる。
【0023】
なお、本発明のワークコイルあるいは被加熱材1に回転機構を設けて周方向に回転させ、被加熱材1を周方向に均一加熱することもできる。
また、本発明のワークコイルは、被加熱材1が上記のような断面円形のものに限らず、角形等各種形状のものにも適用することができる。その場合、リング状をなす鉄心3およびコイル4の形状は被加熱材1の形状に合せたものとする。
さらに、本発明のワークコイルの端部に冷却装置を設けて、熱伝導等により加熱部位以外が加熱されることを防ぐ構造としてもよい。
【0024】
つぎに本発明法は、上記本発明のワークコイルにより、被加熱材1の加熱部位の全断面を通る磁束8の回路を形成して、対面する被加熱材1に誘導電流を生起させることを特徴とする誘導加熱方法である。誘導電流は、図6(a)に示すように、鉄心3のコアサイド7から被加熱材1の制限された部位に集中して全断面を通る磁束8により生起されるので、被加熱材1の該部位が選択的に均一加熱される。
そして、本発明法により、被加熱材1とワークコイルの間を適正間隔に維持し、必要に応じて被加熱材の温度検出、電力の制御を行うことで、被加熱材1の目的に合致した高精度の加熱を行うことができる。
【0025】
【実施例】
図5に示すような本発明のワークコイルを使用して鋼管同士を拡散接合した。鋼管は JIS G 3444 に規定されるSTK400、外径264.4mm、内径228.8mm、肉厚17.8mmである。両鋼管の管端には、図10に示すような傾斜角α=45°の凸テーパおよび凹テーパを加工し、非晶質金属箔のインサートメタルとして円錐台リング接合材12を挟んで嵌合させ、約900kgの荷重をかけて加熱した。インサートメタルは、Fe−9wt%Si−1.5wt%Bからなる組成の非晶質合金箔で、厚さは30μmである。
【0026】
ワークコイルは、内径330mmφの2分割型で、各鉄心3,3はソフトフェライトを成形したもので、被加熱材1の長さ方向の幅(図2のa)を40mmとした。各コイル4,4の巻数は2巻である。各コイル4,4は、外径10mmφの銅製パイプで、内部に水を通して水冷し、ガラスクロスを被覆してコイル同士の接触による短絡を防止した。各鉄心3,3の端部間の間隔は10mmであり、銅板製の遮蔽板5をガラスクロス製の絶縁板6で挟んだものを介在させた。また、被加熱材1には、断熱材11として、初期厚さ15mmの円筒状のセラミックファイバーを巻き付けた。
【0027】
各コイル4,4に接続した電源16は、最高出力50kW、周波数8kHz の小容量、小型の高周波電源である。この電源により、二次側電力を40kWとして誘導加熱し、およそ8℃/秒の昇温速度で1200℃に加熱し5分保定後、電源を切って放冷した。冷却後、止具10を外し蝶番9を開いてワークコイルを取り外した。取り外したワークコイルは、つぎの接合にも十分使用可能であった。また接合部の強度および靭性は、構造部材として十分なものであった。
【0028】
【発明の効果】
本発明は、金属管や金属棒などの長尺金属材料を長さ方向に突合せ接合する場合等において、接合部の加熱あるいは接合後の熱処理等、長さ方向の制限された部位を誘導加熱するものであって、制限された狭い範囲の加熱部位を全断面にわたって所定温度に加熱し、加熱部位を外れた部位では母材の強度低下等の材質劣化を抑制することができる。そして、コイルの絶縁維持に問題がなく、電源の大容量化、大型化も要しない。
【0029】
また、本発明の好ましい態様は、誘導加熱用ワークコイルを、被加熱材の周方向に分割可能な構造としているので、金属管や金属棒あるいは金属線などの長尺金属材料を、インサートメタルを挟んで長さ方向に突合わせ、加圧下で加熱して拡散接合する場合などの加熱に際して、着脱が容易であり、従来は誘導加熱が困難あるいは不可能であった箇所においても、容易に加熱することができる。
したがって、油井管の現地施工、あるいは各種建設工事の現地における鋼管や鋼棒等の接合や熱処理に適している。
【0030】
また、拡散接合に限らず、金属管同士、金属棒同士あるいは金属線同士を圧接する場合の加熱や溶接後の熱処理にも適用できる。さらに、金属線などの両端をたがいに突合わ接合してリング状にしたり、リング状材料の熱処理や加工に適用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明ワークコイルの適用例を示す斜視図である。
【図2】本発明ワークコイルの例を示す縦断面図である。
【図3】本発明ワークコイルにおける遮蔽板の例を示す断面図である。
【図4】本発明ワークコイルの例を示す横断面図である。
【図5】本発明ワークコイルの別の例を示す縦断面図である。
【図6】ワークコイルの作用を示す断面図であって、(a)は本発明例、(b)は比較例である。
【図7】本発明ワークコイルの別の例を示す横断面図である。
【図8】本発明ワークコイルの別の適用例を示す斜視図である。
【図9】従来のワークコイルの例を示す斜視図である。
【図10】金属管同士をインサートメタルを挟んで拡散接合する方法の説明図である。
【符号の説明】
1…被加熱材
2…接合部
3…鉄心
4…コイル
5…遮蔽板
6…絶縁板
7…コアサイド
8…磁束
9…蝶番
10…止具
11…断熱材
12…円錐台リング接合材
13,14…管
15…ワークコイル
16…電源
Claims (3)
- 鉄心およびコイルがともに被加熱材の同一周上を囲繞するリング状に構成し、該鉄心の端部であるコアサイドを該リングの内側に位置せしめると共に、コアサイド両端間を遮蔽版を挟んで近接し、前記コイルは鉄心に巻きつけて配置されていることを特徴とする誘導加熱用ワークコイル。
- 鉄心が被加熱材の周方向に分割され、該分割された鉄心毎にコイルが形成されていることを特徴とする請求項1記載の誘導加熱用ワークコイル。
- 請求項1または2記載のワークコイルにより、被加熱材の加熱部位の全断面を通る磁束の回路を形成して、対面する該被加熱材に誘導電流を生起させることを特徴とする誘導加熱方法。
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