JP3700936B2 - 動圧軸受及びこの動圧軸受を用いたスピンドルモータ並びにこのスピンドルモータを備えた記録ディスク駆動装置 - Google Patents

動圧軸受及びこの動圧軸受を用いたスピンドルモータ並びにこのスピンドルモータを備えた記録ディスク駆動装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は作動流体としてオイルを使用する動圧軸受及びこの動圧軸受を用いたスピンドルモータ並びにこのスピンドルモータを備えたディスク駆動装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
ハードディスク等のディスク状記録媒体を回転駆動するために使用されるスピンドルモータは、ディスクの記憶容量の増大や記録ヘッドによるデータへのアクセス速度の向上にともない、これまでロータの回転を支持するための軸受手段として主に採用されてきたボールベアリングの限界性能近くにまで回転速度が高速化しつつあり、これに代わって回転時に動圧発生溝のポンピングアクションによってオイル等の作動流体に誘起される動圧を利用し、非接触状態でロータの回転を支持することが可能な動圧軸受が採用されるようになってきた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上述のような動圧軸受装置を備えたスピンドルモータにおいては、例えばスピンドルモータのステータの発熱によってモータ内部の空間が高温となると、オイルの粘度低下や動圧軸受部を構成する各部材の熱膨張係数の差異等による微小間隙の間隙寸法の変化が発生し、ロータの回転時に動圧発生用溝によって誘起される動圧が低下し、十分な軸受剛性を得ることができず、ロータの回転が不安定になるという問題がある。
【0004】
オイルの粘度低下を防止しようとして粘度指数の高いオイルを使用すると、ロータの回転時に、動圧発生用溝のオイルに対する粘性抵抗が増加し、これが回転負荷として加わることとなるため、スピンドルモータの消費電力が増大する。
【0005】
また、米国特許第5,664,889号に開示されるように、温度上昇時にラジアル軸受部において規定される間隙を縮小することで動圧の低下が防止されるよう、シャフトをスリーブよりも熱膨張係数の大きな部材から形成した動圧軸受装置も提案されている。しかしながら、ラジアル軸受部は、ロータの回転中の姿勢を保持するためにスラスト軸受部に規定される間隙の寸法よりも小に設定されているため、部材の熱膨張によって間隙寸法を正確に制御するのは困難である。従って、ラジアル軸受部側の間隙で、軸受部の構成によって温度変化による軸受特性変化に対する対策を行う場合、シャフトとスリーブとの接触による軸受面の損傷や焼付きを来すおそれがある。
【0006】
本発明は、高温環境下においても十分な軸受剛性を確保することができると共に、部材の熱膨張による接触を回避することが可能な動圧軸受及びこの動圧軸受を用いたスピンドルモータ並びにこのスピンドルモータを備えたディスク駆動装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、シャフトと、該シャフトの一方の端部外周面から半径方向外方に向かって延設されるフランジ状のスラストプレートと、該シャフトの外周面との間にラジアル軸受部が構成される微小間隙を介して半径方向に対向する内周面と該スラストプレートの一方の面との間に一方のスラスト軸受部が構成される微小間隙を介して軸線方向に対向する一方の端面とを有する円筒状のスリーブと、内周面に該スリーブが嵌合固定される両端開放状の中空孔を規定するハウジングと、該中空孔の一方開口を閉塞し且つ該スラストプレートの他方の面との間に他方のスラスト軸受部が構成される微小間隙を介して軸線方向に対向する封止部材とを備えてなる動圧軸受において、前記シャフトの外周面と前記スリーブの内周面との間の微小間隙及び前記スラストプレートの一方の面と前記スリーブの一方の端面並びに前記スラストプレートの他方の面と前記封止部材との間の微小間隙にはオイルが保持されると共に、前記スラストプレートの一方の面と軸線方向に対向する前記スリーブの一方の端面とは軸線方向反対側に位置する他方の端面に隣接して、前記シャフトの外周面と前記スリーブの内周面との間の微小間隙が該スリーブの他方の端面側に向かって漸次拡大するテーパシール部が設けられており、前記スリーブは、前記テーパシール部の半径方向外方に位置する部位のみにおいて前記ハウジングに嵌合固定されると共に、前記スリーブの外周面と前記ハウジングの中空孔の内周面との間には、該嵌合部を除き隙間が形成されている。
【0008】
すなわち、スリーブとハウジングとが嵌合部のみにおいて嵌合固定されており、嵌合部以外の領域には隙間が形成されているので、スリーブとハウジングとの嵌合部からスリーブのスラストプレートと対向する側の端面までの部位が、温度上昇時には、軸線方向に膨張することとなる。従って、オイルの粘度が高い低温時にはスラスト軸受部の隙間寸法を比較的に広くして粘性抵抗を抑制すると共に、オイルの粘度が低い高温時には、スラスト軸受部の隙間寸法を比較的に小さくすることで、軸受剛性を維持することが可能な構成となる。
【0009】
また、スリーブとハウジングとの嵌合位置を、シャフトとスリーブとの間の隙間の半径方向の寸法が軸受部よりも大きいテーパシール部の外周側とすることによって、スリーブとハウジングとの嵌合時に発生する締結応力に起因して発生するスリーブの変形、歪み等の軸受部への悪影響を可能な限り排除する。
【0010】
請求項2に記載の発明は、前記シャフト並びに前記スラストプレートと前記スリーブとは熱膨張係数がほぼ同一の材料から形成されると共に、前記ハウジングは、前記シャフト並びに前記スラストプレートと前記スリーブを構成する部材の熱膨張係数よりも、大きな熱膨張係数を有する部材から形成されている。
【0011】
シャフト並びにスラストプレートとスリーブとを熱膨張係数がほぼ同一の材料から形成することで、温度上昇時にもラジアル軸受部側の隙間寸法の変化量は僅かとなり、隙間寸法の小さなラジアル軸受部であっても部材の熱膨張による接触を回避することが可能となる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、前記シャフトの外周面と前記スリーブの内周面との間には、ラジアル軸受部が一対構成されており、該一対のラジアル軸受部の間には、前記スリーブ並びに前記ハウジングを半径方向に貫通し且つ前記スリーブの外周面と前記中空孔の内周面との間の隙間を介して外気に連通する連通孔が開口されると共に、前記スリーブの外周面と前記中空孔の内周面との間の隙間には、前記スリーブの一方の端面に近接して、前記隙間の半径方向の隙間寸法が前記スリーブの一方の端面から遠離るにしたがって漸次拡大する第2のテーパシール部が設けられているものである。
【0013】
ハウジングの中空孔とスリーブとの嵌め合い構造によって、両スラスト軸受部の軸受端部から嵌合部に至る隙間が形成されることとなる。よって、一対のラジアル軸受部の間に、この隙間を介して外気に連通する連通孔を設けることによって、一対のラジアル軸受部の軸受端部と両スラスト軸受部の軸受端部とが外気に開放されることとなる。
【0014】
軸受部へのオイル注入工程等にオイル内に気泡が混入する場合がある。オイル内に混入した気泡は、温度上昇や軸受外部環境の減圧等の要因によって体積膨張し、その結果、オイルが軸受部から外部に押し出され、オイル保持量の不足による軸受剛性の低下及びこれにともなう振れ回り特性の悪化といった問題が発生する。しかしながら、一対のラジアル軸受部の軸受端部と両スラスト軸受部の軸受端部とが外気に開放されることで、気泡がオイル内に滞留しても各軸受端部から排出可能な構成となる。また、スリーブのスラストプレート側端面に近接して第2のテーパシール部を設けることで、このシール部内に保持されるオイルが、軸受部に保持されるオイルの減少にともなって順次供給されることとなる。
【0015】
請求項4に記載の発明は、ステータを保持するブラケットと、該ブラケットに対して相対回転するロータと、該ロータに固着され該ステータと協働して回転磁界を発生するロータマグネットと、該ロータの回転を支持する動圧軸受とを備えたスピンドルモータにおいて、前記動圧軸受は、請求項1乃至4のいずれかに記載した動圧軸受を用いたものである。
【0016】
本発明の動圧軸受を軸受手段として用いることで、幅広い温度範囲で安定した軸受剛性が得られると共に、消費電力を抑制することが可能なスピンドルモータとなる。
【0017】
請求項5に記載の発明は、情報を記録できる円板状記録媒体が装着されるディスク駆動装置において、ハウジングと、該ハウジングの内部に固定され該記録媒体を回転させるスピンドルモータと、該記録媒体の所要の位置に情報を書き込み又は読み出すための情報アクセス手段とを有するディスク駆動装置であって、前記スピンドルモータとして、請求項5に記載したスピンドルモータを備えたものである。
【0018】
本発明のスピンドルモータは、幅広い温度範囲で安定した軸受剛性を得ることが可能であると共に、消費電力量を抑制することが可能であることから、例えば外径がハードディスクを駆動するディスク駆動装置において好適に使用可能であるが、これに限定されず、ハードディスク等の固定式又はCD−ROM、DVD等の着脱式の記録媒体を駆動するディスク駆動装置においても同様に使用可能となる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の各実施形態について図面を参照して説明するが、本発明は以下に示す実施例に限定されるものではない。
【0020】
(第1の実施形態)
図1に図示されるスピンドルモータは、外周部にハードディスク(図5においてディスク板53として示す)が保持されるロータハブ2と、このロータハブ2に取付けられるシャフト4と、シャフト4の自由端部(ロータハブ2に取付けられる側とは反対側の端部)の外周面から半径方向外方に延伸する円板状のスラストプレート6とから構成されるロータと、ブラケット8に設けられた円筒状ボス部8aに中空円筒状のハウジング9を介して固定されるスリーブ10とを有する。ハウジング9の内周面上端部には、半径方向内方に突出する嵌め合い部9aが設けられており、この嵌め合い部9aの内周面と、スリーブ10の外周面上端部とが圧入固定されている。ハウジング9の内周面とスリーブ10の外周面とは、嵌合部Aのみにおいて相互に圧入固定されており、この嵌合部A以外の領域では、ハウジング9の内周面とスリーブ10の外周面との間に隙間Cが全周にわたって設けられている。尚、嵌合部Aにおけるハウジング9とスリーブ10と嵌合構造については、後に詳細に説明する。また、ロータハブ2の内面側には、ロータマグネット12が接着等の手段によって取付けられ、ブラケット8にはこのロータマグネット12と半径方向に対向してステータ14が配置される。
【0021】
スリーブ10には、スリーブ10を軸線方向に貫通する貫通孔10aが形成されており、シャフト4は、この貫通孔10aとの間に微小間隙を形成して挿通される。このスリーブ10とスラストプレート6とはほぼ等しい外径を有しており、スリーブ10の下端面はスラストプレート6の上側面との間に微小間隙を形成する。また、ハウジング9の下端部内周側には段部9bが設けられており、この段部9bには、ハウジング9の下端部側の開口を閉塞するスラストブッシュ16が接着等の手段によって取付けられており、このスラストブッシュ16は、スラストプレート6の下側面並びにシャフト4の自由端部側端面との間に隙間を形成している。
【0022】
これら貫通孔10aの内周面とシャフト4の外周面との間に形成される微小間隙、スリーブ10の下端面とスラストプレート6の上側面との間の微小間隙並びにハウジング9の内周面とスラストプレート6の外周面との間の隙間、更には、スラストブッシュ16とスラストプレート6の下側面との間の隙間は、全て連続しており、これら連続する各隙間内には、オイルが途切れることなく保持されている。また、これら一連の間隙内に保持されるオイルは、毛細管現象によって、隙間C内にも浸入している。
【0023】
嵌合部Aの内周側に位置する貫通孔10aの内周面上端部は、シャフト4の外周面との間に形成される微小間隙の半径方向の隙間寸法が、ロータハブ2側に向かって漸次拡大するよう構成されたテーパ面10a1が設けられており、このテーパ面10a1とシャフト4の外周面との間にオイルと外気との界面が形成され、テーパシール部S1が形成される。尚、図1に図示される実施形態においては、上述のとおりシャフト4並びにスラストプレート6とスリーブ10、ハウジング9及びスラストブッシュ16との間に形成される各隙間には、オイルが途切れることなく連続して保持されており、オイルはテーパシール部S1内においてのみ外気と接している。
【0024】
スリーブ10の貫通孔10aの内周面には、テーパシール部S1に隣接して、回転方向に対して相反する方向に傾斜した一対のスパイラル溝を連結して構成される略「く」の字状のヘリングボーングルーブによる周状の動圧発生溝列18aが形成されており、シャフト4の外周面との間に上部ラジアル動圧軸受部18が構成されている。
【0025】
この動圧発生溝列18aにおけるヘリングボーングルーブは、テーパシール部S1側、つまりオイルの界面側に位置するスパイラル溝部が、スラストプレート6側に位置する他方のスパイラル溝部よりも軸線方向寸法が大に形成されており、他方のスパイラル溝部によるポンピング圧を上回るポンピング圧を発生する。この発生する動圧が軸線方向にアンバランスなヘリングボーングルーブによって、シャフト4の回転に応じて、スパイラル溝の連結部において発生する流体動圧が極大となり、必要な荷重支持圧を発生すると同時に、テーパシール部S1側のスパイラル溝部と他方のスパイラル溝部とのポンピング力のアンバランス量分、オイルに対して界面側からスラストプレート6側に向かって押し込む押し込み圧が生じる。この押し込み圧によって、上部ラジアル動圧軸受部18で高められたオイル内圧がスラストプレート6側に伝播される。
【0026】
また、スリーブ10の貫通孔10aの内周面には、スリーブ10の下端面に隣接して、ロータ6の回転時にオイルに流体動圧を誘起する、相反する方向に傾斜した一対のスパイラル溝を連結して構成される略「く」の字状のヘリングボーングルーブによる周状の動圧発生溝列20aが形成されており、シャフト4の外周面との間で下部ラジアル動圧軸受部20が構成される。
【0027】
下部ラジアル動圧軸受部20に形成される動圧発生溝列20aにおけるヘリングボーングルーブは、各スパイラル溝部が実質的に同等のポンピング力を発生するよう、回転軸心に対する傾斜角度、溝深さ、全長及び幅寸法が略同一となる、
つまり、各スパイラル溝が連結部に対して線対称になるよう設定されている。従って、下部ラジアル動圧軸受部20では、軸受部の軸線方向中央部(スパイラル溝の連結部)において発生する流体動圧が極大となり、オイルに対して軸線方向いずれかの方向に向かう押し込み圧を発生することはない。
【0028】
スリーブ10の下端面には、スパイラルグルーブによる動圧発生溝列22aがスラストプレート6と同心円状に形成されており、スラストプレート6の上側面との間に上部スラスト動圧軸受部22が構成されている。この動圧発生溝列22aにおけるスパイラルグルーブは、スラストプレート6の回転に応じてオイルを半径方向内方、つまりシャフト4側に作用する動圧が発生するようポンプイン形状を有しており、動圧発生溝列22aによって発生した流体動圧によって、スラストプレート6がスリーブ10の下端面から離間する方向に作用する軸支持力が得られる。
【0029】
更に、スラストプレート6の下側面と軸線方向に対向する、スラストブッシュ16の内面には、スパイラルグルーブによる動圧発生溝列24aがスラストプレート6と同心円状に形成されており、スラストプレート6の下側面との間に下部スラスト動圧軸受部24が構成されている。この動圧発生溝列24aスパイラルグルーブは、上部スラスト動圧軸受部22に形成される動圧発生溝列22aにおけるスパイラルグルーブと同様に、スラストプレート6の回転に応じてオイルを半径方向内方、つまりスラストプレート6の回転中心部側に作用する動圧が発生するよう、ポンプイン形状を有しており、動圧発生溝列24aによって発生した流体動圧によって、スラストプレート6がスラストブッシュ16に対して浮上する。
【0030】
各動圧軸受部18,20,22及び24に設けられる動圧発生溝列18a,20a,22a及び24aの溝パターンを上記のとおりとすることによって、スピンドルモータの回転に応じて、上部及び下部ラジアル動圧軸受18,20では、動圧発生溝列18a,20aによるポンピング力が高まり、ラジアル方向の荷重を支持するために必要な支持圧を発生すると同時に、上部ラジアル動圧軸受部では、軸線方向にアンバランスな形状を有するヘリングボーングルーブのポンピングによって、オイルに対して界面側からスラストプレート6側に作用する押し込み圧が生じる。
【0031】
この上部ラジアル動圧軸受部18で発生したオイルに対する押し込み圧によって、上部ラジアル動圧軸受部18よりもスラストプレート6側に位置する間隙中に保持されるオイルの内圧が大気圧以上となり、連続して保持されるオイルのいずれの領域においても、負圧の発生が防止される。
【0032】
(第2の実施形態)
次に図2を参照して本発明の第2の実施形態について、軸受部のみを示して説明するが、この図2に示す実施形態も、当然に図1に図示する如きスピンドルモータに適用可能である。また、上記第1の実施形態と実質上同じ構造を有する部位については同じ番号を付し、その説明を省略する。
【0033】
図2に図示される第2の実施形態において、シャフト4’の外周面には、軸線方向略中央部付近に環状凹部4’aが設けられている。この環状凹部4’aは、軸線方向両端部側に向かって外径が漸次増加する一対のテーパ面を有しており、スリーブ10’の貫通孔10’aの内周面との間に、それぞれ軸線方向の相反する方向を向く一対にテーパシール部S2,S3が形成される空気保持部26が規定される。この空気保持部26によって、シャフト4’の外周面と貫通孔10’aとの間に形成される形成される微小間隙に保持されるオイルは、軸線方向に分断されることとなる。尚、貫通孔10’aの上端部には、第1の実施形態と同様にテーパ面10’a1が設けられており、シャフト4’の外周面との間にテーパシール部S1が形成されている。
【0034】
ハウジング9’の内周面とスリーブ10’の外周面とは、テーパシール部S1の外周部に位置する嵌合部A’のみにおいて相互に圧入固定されており、この嵌合部A’以外の領域では、ハウジング9’の内周面とスリーブ10’の外周面との間に隙間C’が全周にわたって設けられている。この嵌合部A’では、ハウジング9’の内周面上端部から半径方向内方に突出する嵌め合い部9’aの内周面と、スリーブ10’の外周面上端部とが圧入固定されているが、その詳細については、上記第1の実施形態における嵌合構造と併せて後に詳述する。
【0035】
スリーブ10’には空気保持部26に開口するように半径方向の貫通孔28aが設けられており、またこのスリーブ10’が嵌合固定されるハウジング9’にも貫通孔28aに連続する貫通孔28bが設けられている。これら貫通孔28a,28bは、空気保持部に保持される空気を隙間C’を介して外気に連通する連通孔28を構成している。この連通孔28によって、テーパシール部S1とテーパシール部S2との間に保持されるオイルは、両端界面がともに等しい空気圧に晒されることとなりバランスする。
【0036】
テーパシールS3よりも軸線方向下部側に位置するシャフト4’と貫通孔10’aの内周面との間の微小間隙、スリーブ10’の下端面とスラストプレート6の上側面との間の微小間隙並びにハウジング9’の内周面とスラストプレート6の外周面との間の隙間、更には、ハウジング9’の下端部開口に設けられた段部9’bに接着等の手段によって取付けられることでこれを閉塞するスラストブッシュ16とスラストプレート6の下側面との間の隙間は連続しており、これら連続する各隙間内には、オイルが途切れることなく保持されている。また、これら連続する一連の隙間内に保持されるオイルは、後に説明するとおり隙間C’の一部にも毛細管現象によって浸入し、保持されている。
【0037】
スリーブ10’の外周面には、ハウジング9’の内周面との間に形成される隙間C’がスリーブ10’の下端面から遠離るにつれて漸次拡大するよう、テーパ面10’a2が設けられている。尚、このテーパ面10’a2は、スリーブ10’の下端面に近接して設けられている。
【0038】
上記したとおり、スリーブ10’の外周面とハウジング9’の内周面との間に形成される隙間C’は、空気保持部26と外気とを連通する連通孔28を構成する貫通孔28a,28bに連結しており、貫通孔28a,28b間に介在する隙間C’内にも空気が保持されている。従って、毛細管現象によって隙間C’内に浸入したオイルは、テーパ面10’a2において連通孔28によって取り込まれた空気との界面が形成され保持される。つまり、このテーパ面10’a2とハウジング9’の内周面との間にテーパシール部S4が形成されることとなる。
【0039】
すなわち、空気保持部26の軸線方向下部側に位置するテーパシール部S3とこのテーパシールS4との間に保持されるオイルは、テーパシール部S3及びS4において同じ空気圧に晒されることとなり、バランスする。
【0040】
テーパシール部S1及びS2間に位置するスリーブ10’の貫通孔10’aの内周面には、回転時にオイルに流体動圧を誘起する、相反する方向に傾斜した一対のスパイラル溝を連結して構成される略「く」の字状のヘリングボーングルーブによる周状の動圧発生溝列18’aが形成されており、シャフト4’の外周面との間で上部ラジアル動圧軸受部18’が構成される。
【0041】
上部ラジアル動圧軸受部18’に形成される動圧発生溝列18’aにおけるヘリングボーングルーブは、各スパイラル溝部が実質的に同等のポンピング力を発生するよう、回転軸心に対する傾斜角度、溝深さ、全長及び幅寸法が略同一となる、つまり、各スパイラル溝が連結部に対して線対称になるよう設定されている。従って、上部ラジアル動圧軸受部18’では、軸受部の軸線方向中央部(スパイラル溝の連結部)において発生する流体動圧が極大となる。
【0042】
また、テーパシール部S3と下端面との間に位置するスリーブ10’の貫通孔10’aの内周面には、回転方向に対して相反する方向に傾斜した一対のスパイラル溝を連結して構成される略「く」の字状のヘリングボーングルーブによる周状の動圧発生溝列20’aが形成されており、シャフト4’の外周面との間に下部ラジアル動圧軸受部20’が構成されている。
【0043】
この動圧発生溝列20’aにおけるヘリングボーングルーブは、テーパシール部S3側、つまりオイルの界面側に位置するスパイラル溝部が、スラストプレート6側に位置する他方のスパイラル溝部よりも軸線方向寸法が大に形成されており、他方のスパイラル溝部によるポンピング圧を上回るポンピング圧を発生する。この発生する動圧が軸線方向にアンバランスなヘリングボーングルーブによって、回転時にはスパイラル溝の連結部において発生する流体動圧が極大となり、必要な荷重支持圧を発生すると同時に、テーパシール部S3側のスパイラル溝部と他方のスパイラル溝部とのポンピング力のアンバランス量分、オイルに対して界面側からスラストプレート6側に向かって押し込む押し込み圧が生じる。この押し込み圧によって、下部ラジアル動圧軸受部20’で高められたオイル内圧がスラストプレート6側に伝播される。
【0044】
スリーブ10’の下端面には、スパイラルグルーブによる動圧発生溝列22’aがスラストプレート6と同心円状に形成されており、スラストプレート6の上側面との間に上部スラスト動圧軸受部22’が構成されている。この動圧発生溝列22’aにおけるスパイラルグルーブは、回転時にオイルを半径方向内方、つまりシャフト4’側に圧送する動圧が発生するようポンプイン形状を有している。既に説明したとおり、下部ラジアル動圧軸受部20’では、軸線方向にアンバランスな形状のヘリングボーングルーブによる動圧発生溝列20’aによってスラストプレート6側へと伝播される圧力が誘起されており、この下部ラジアル動圧軸受部20’側からスラストプレート6側に伝播される圧力と、上部スラスト動圧軸受部22’の動圧発生溝列22’aによって誘起される半径方向内方に向かう動圧とによって、シャフト4’とスラストプレート6との角部、つまり下部ラジアル動圧軸受部20’と上部スラスト動圧軸受部22’との境界部において、動圧が極大となり、スラストプレート6がスリーブ10’の下端面から離間する方向に作用する軸支持力が得られる。
【0045】
更に、スラストプレート6の下側面と軸線方向に対向する、スラストブッシュ16の内面には、スパイラルグルーブによる動圧発生溝列24’aがスラストプレート6と同心円状に形成されており、スラストプレート6の下側面との間に下部スラスト動圧軸受部24’が構成されている。この動圧発生溝列24’aにおけるスパイラルグルーブは、上部スラスト動圧軸受部22’に形成される動圧発生溝列22’aにおけるスパイラルグルーブと同様に、スラストプレート6の回転に応じてオイルを半径方向内方、つまりスラストプレート6の回転中心部側に作用する動圧が発生するよう、ポンプイン形状を有しており、スラストプレート6の中央部付近にて動圧が極大となる領域が現れる。この動圧発生溝列24’aによって発生した流体動圧によって、スラストプレート6がスラストブッシュ16に対して浮上する。
【0046】
各動圧軸受部18’,20’,22’及び24’に設けられる動圧発生溝列18’a,20’a,22’a及び24’aの溝パターンを上記のとおりとすることによって、回転時には各軸受部の中央部(協働して軸支持する上部スラスト動圧軸受部22’と下部ラジアル動圧軸受20’では、その境界部)において動圧が極大となり、各テーパシール部S1乃至S4側に向かうにしたがって、順次低圧となる圧力勾配となる。従って、オイル内に気泡が混入した場合も、気泡は高圧側から低圧側へと移動することから、各各動圧軸受部18’,20’,22’及び24’から各テーパシール部S1乃至S4へと自ら移動して、排出される。
【0047】
また、上記第2の実施形態においては、テーパシール部S4がスリーブ10’の外周面に設けられていることから、各動圧軸受部と干渉することないので容積の確保が容易であり、オイルの体積や内圧の増減による界面の移動に対してテーパシール部S3とバランスしながら、十分に追随することができると共に、テーパシールS3よりも軸線方向下部側に位置するシャフト4’と貫通孔10’aの内周面との間の微小間隙、スリーブ10’の下端面とスラストプレート6の上側面との間の微小間隙並びにハウジング9’の内周面とスラストプレート6の外周面との間の隙間、更には、ハウジング9’の下端部開口を閉塞するスラストブッシュ16とスラストプレート6の下側面との間の一連の隙間内に保持されるオイルが、長期間の使用による蒸発等で減少した場合も、テーパシール部S4内に十分な量のオイルが貯えられているので、これがオイルリザーバとして機能し、軸受が長寿命化され、信頼性並びに耐久性が改善される。
【0048】
(ハウジングとスリーブとの嵌合構造の詳細)
上記第1及び第2の実施形態における動圧軸受のハウジングとスリーブとの嵌合構造について実施例と比較例とを対照して詳細を説明する。尚、重複した記載を防ぐための、以下の説明では第1の実施形態における軸受部の構造を例に上げて説明するが、嵌合部の構造並びにハウジング並びにスリーブを構成する部材等については第2の実施形態もこれに同様である。
【0049】
(実施例)
図3は、本発明における軸受部の一例である。尚、動圧軸受部の構成等については既に説明済みであるため番号を省略し、ハウジングとスリーブとの嵌合構造とその作用についてのみ説明する。
【0050】
まず、ハウジング9の内周面の上端部には、内周面が半径方向内方に突出する環状の嵌め合い部9aが形成されており、この嵌め合い部9aの内周面と、テーパシール部S1の外周側に位置するスリーブ10の外周面とが圧入され、嵌合部A(本発明の第2の実施形態においては、嵌合部A’)が構成される。尚、既に説明したとおり、ハウジング9の内周面とスリーブ10の外周面との間は、嵌合部Aよりも軸線方向下側の領域は全て隙間Cとなっており、接触していない。
【0051】
この実施例において、シャフト4及びスラストプレート6をSUS304Se等SUS300系の材料から形成する。このSUS300系材料の熱膨張係数は、概ね17.3×10-6である。また、スリーブ10は、C5191等の銅系の材料から形成する。この銅系材料の熱膨張係数は、概ね17.6×10-6である。更に、スリーブ10が嵌合固定されるハウジング9をSUS440C等SUS400系の材料から形成する。このSUS400系材料の熱膨張係数は、概ね10.1×10-6である。従って、シャフト4並びにスラストプレート6とスリーブ10とは熱膨張係数がほぼ同一の材料から形成されると共に、ハウジング9は、シャフト4並びにスラストプレート6とスリーブ10を構成する部材の熱膨張係数よりも大きな熱膨張係数を有する部材から形成されることとなる。尚、ハウジング9とスリーブ10との嵌合部である嵌合部Aの下端からスリーブ10の下端面までの軸線方向寸法、すなわち隙間Cの軸線方向寸法は10mm、嵌合部Aの下端からスラストブッシュ16上面までの軸線方向寸法は11.02mm、スラストプレート6の肉厚(軸線方向の厚み寸法)は1mmに設定されている。すなわち、上下スラスト動圧軸受部における微小間隙を意味する、スラストプレート6が軸線方向に移動可能な隙間として、0.02mmの隙間が形成されている。
【0052】
(比較例)
図4に図示する軸受は、ハウジングaとスリーブbとの嵌合部Bが、スリーブbの軸線方向略中央部に位置する比較例であり、嵌合部Bの軸線方向両側には、ハウジングaの内周面とスリーブbの外周面との間に、それぞれ隙間1及び隙間2が形成されている。尚、比較例における、嵌合構造以外の構成は図3に示す実施例と同様であり、シャフトc並びにスラストプレートd、スリーブb及びハウジングcも、それぞれシャフト4及びスラストプレート6、スリーブ10及びハウジング9と同じ材料から形成され、熱膨張係数についても同じ値である。また、各部の寸法関係も同一であるが、嵌合部Bの上端からスリーブbの上端面までの軸線方向寸法、すなわち隙間1の軸線方向寸法と嵌合部Bの下端からスリーブbの下端面までの軸線方向寸法、すなわち隙間2の軸線方向寸法とがそれぞれ5mmづつである点並びに嵌合部Bの下端からスラストブッシュeの上面までの軸線方向寸法が5.02mmである点のみ図3に示す本発明の実施例と異なる。
【0053】
(比較)
上記構成の実施例及び比較例について、それぞれ60゜Cの温度上昇があった場合の各寸法関係の変化を計算によって求めたところ、以下のような結果となった。
【0054】
【表1】
Figure 0003700936
つまり、実施例は比較例に比べてスラストプレート6が軸線方向に移動可能な隙間寸法が0.002mm小さくなった。すなわち、上部及び下部スラスト動圧軸受部の微小間隙の寸法が、それぞれ0.001mmづつ小さくなったこととなる。
【0055】
(考察)
上記スラストプレートが軸線方向に移動可能な隙間寸法の差は、ハウジングとスリーブとの嵌合部の位置の違いによるものであることが見て取れる。実施例の場合、嵌合部Aがスリーブ10の上端部に位置しているため、ハウジング9とスリーブ10との熱膨張差によって、嵌合部Aからスリーブ10の下端面までの軸線方向寸法10mm分の熱膨張が得られるのに対し、比較例では、嵌合部Bがスリーブbの軸線方向中央部に位置しているため、嵌合部Bからスリーブbの下端面までの軸線方向寸法5mm分の熱膨張しか得られなかったこととなる。実施例と比較例との熱膨張差0.002mmは、一見すると僅かな差でしかないように思われるが、スラスト動圧軸受部においては、通常0.005mmから0.009mm程度の微小間隙しか形成されていないため、各軸受部で0.001mm隙間寸法が小さくなるだけでも軸受剛性やオイルの粘性抵抗が大きく異なる。
【0056】
また、実施例においては、テーパシール部S1の外周側に嵌合部Aが位置するよう構成しているが、これは、テーパシール部では、軸受部を構成するシャフト4の外周面とスリーブ10の貫通孔10aとの間に形成される微小間隙の隙間寸法に対して最大10倍前後隙間寸法に設定されるためである。嵌合部Aをテーパシール部S1の外周側、つまりスリーブ10の上端部に配置することで、ハウジング9とスリーブ10との熱膨張差によって、オイルの粘度が高く比較的に高い動圧を得やすい低温時にはスラスト動圧軸受部の微小間隙を比較的に広くし、オイルによる粘性抵抗を低減して軸受としての効率を向上することができると共に、オイルの粘度が低下して軸受剛性も低下する温度上昇時には、スラスト動圧軸受部の微小間隙の隙間寸法を比較的に狭くして、誘起する動圧を大きくして温度上昇による軸受特性の劣化分を補償することが可能になる。加えて、ハウジング9とスリーブ10との圧入嵌合時に生じる締結応力やスリーブ10とハウジング9との間の部材の熱膨張差に起因する熱応力により、スリーブ10の内周面に変形、歪み等が生じた場合も、その変形分を吸収してシャフト4とスリーブ10との接触を回避するという効果を奏することが可能となる。
【0057】
更に、シャフト4とスリーブ10とを熱膨張係数がほぼ同等の材料から形成することで、温度変化によらずラジアル動圧軸受部の微小間隙の隙間寸法を一定に維持し、軸受特性の変化が生じたり、あるいは隙間寸法が小さくなりすぎ、両部材間に接触が生じるといったことが防止される。また、外部衝撃の印加等によって万一シャフト4とスリーブ10との接触が生じた場合も、両部材を異種金属材料から形成しておけば、焼き付き等が生じる懸念を可及的に小さくすることが可能となる。
【0058】
尚、上記第2の実施形態の場合、既に説明したとおり、下部ラジアル動圧軸受部20’に設けられた、テーパシール部S3側に位置するスパイラル溝部がスラストプレート6側に位置するスパイラル溝部よりも軸線方向寸法が大に設定されたアンバランスなヘリングボーングルーブによる動圧発生溝列20’aによって、回転時にオイルはテーパシール部S3側からスラストプレート6側に押し込まれ、また、上部スラスト動圧軸受部22’に設けられたポンプイン形状のスパイラルグルーブによる動圧発生溝列22’aによって、回転時にオイルはスラストプレート6の外周側から内周側に押し込まれる。その結果、下部ラジアル動圧軸受部20’と上部スラスト動圧軸受部22’との境界部において動圧が極大となる。
【0059】
このとき、下部ラジアル動圧軸受部20’の動圧発生溝列20’aが、上部スラスト動圧軸受部22’のスパイラルグルーブによる動圧発生溝列22’aよりも、ポンピング力の高いヘリングボーングルーブであることから、オイルの界面が下部ラジアル動圧軸受部20’側に移動し、動圧発生溝列20’aのうちテーパシール部S3側にあるスパイラル溝部の一部は、空気中に露出した状態となる。
【0060】
上記比較例のように、温度変化によってもスラストプレートが軸線方向に移動可能な隙間寸法、すなわち上下スラスト動圧軸受部の微小間隙の隙間寸法にあまり変化のない場合、オイルの粘度低下と動圧発生溝列の一部が空気中に露出することによって、温度上昇時には発生する動圧が低下し、軸受剛性の不足が懸念されることとなる。しかしながら、実施例のごとく、上部及び下部スラスト動圧軸受部22’,24’部に形成される微小間隙の寸法が、低温時には広く、また温度上昇時には狭くなるようスリーブ10’が熱膨張することによって、上部スラスト動圧軸受部22’では、温度上昇時には微小間隙が狭くなり、高い動圧を発生するようになる。
【0061】
従って、温度の上昇とともに動圧発生溝列20’aによるオイルに対する押し込み圧が緩和され、オイルの界面の下部ラジアル動圧軸受部20’側への移動が抑制されるので、動圧発生溝列20’aのうち空気中に露出する部分が少なくなり、発生する動圧の低下により軸受剛性が不足することはない。また、低温時には、上部スラスト動圧軸受部22’の微小間隙が広くなるので、動圧発生溝列22’aの発生する動圧が低下し、下部ラジアル動圧軸受部20’ではオイルに対する押し込み圧がより強く作用するので、テーパシール部S3側のオイル界面の移動量が大きくなり、動圧発生溝列20’aのうち空気中に露出する部分が多くなる。この場合、空気中に露出する部分が多くなることで、動圧発生溝列20’aのポンピング力は低下するが、低温時にはオイルの粘度が比較的に高いため、必要以上に発生する動圧が低下することはなく、むしろ、動圧発生溝列20’aとオイルとの接触面積が少なくなることから、オイルの粘性抵抗が抑制され、損失が低減されることとなる。
【0062】
(ディスク駆動装置の構成)
図5に、一般的なディスク駆動装置50の内部構成を模式図として示す。ハウジング51の内部は塵・埃等が極度に少ないクリーンな空間を形成しており、その内部に情報を記憶する円板状のディスク板53が装着されたスピンドルモータ52が設置されている。加えてハウジング51の内部には、ディスク板53に対して情報を読み書きするヘッド移動機構57が配置され、このヘッド移動機構57は、ディスク板53上の情報を読み書きするヘッド56、このヘッドを支えるアーム55及びヘッド56及びアーム55をディスク板53上の所要の位置に移動させるアクチュエータ部54により構成される。
【0063】
このようなディスク駆動装置50のスピンドルモータ52として図1及び図2に示す実施形態の動圧軸受を有するスピンドルモータを使用することで、幅広い温度範囲において安定した回転精度を得つつも、消費電力量を抑制することが可能なディスク駆動装置50とすることができる。
【0064】
以上、本発明に従う動圧軸受及びこの動圧軸受を用いたスピンドルモータ並びにこのスピンドルモータを備えたディスク駆動装置の実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形乃至修正が可能である。
【0065】
例えば、上記各実施形態においては、ハウジング9,9’の内周面に半径方向内方に突出する環状の嵌め合い部9a,9’aを設ける構成について説明したが、嵌め合い部はスリーブ10,10’の外周面上端部から半径方向外方に突出する構成とすることも可能である。
【0066】
また、スリーブ10,10’については、シャフト4及びスラストプレート6を構成する部材とほぼ同一で且つハウジング9,9’を構成する部材よりも小さな熱膨張係数を有する部材から形成されていればよく、無垢の金属材だけではなく多孔質の焼結金属材から形成することも可能である。
【0067】
更に、ブラケット8は、ディスク駆動装置のハウジング(図5において、ハウジング51として示す)にネジ等の手段で固定されるが、ハウジングとブラケットとを一体化することで、このハウジングをブラケット8として用いることも可能である。
【0068】
【発明の効果】
本発明の請求項1の動圧軸受では、嵌合時の締結応力に起因するスリーブの変形、歪み等の軸受部への悪影響を可能な限り排除することが可能になる。また、オイルの粘度が高い低温時にはスラスト軸受部の隙間寸法を比較的に広くして粘性抵抗を抑制すると共に、オイルの粘度が低い高温時には、スラスト軸受部の隙間寸法を比較的に小さくすることで、軸受剛性を維持することが可能となる。
【0069】
本発明の請求項2の動圧軸受では、温度上昇時にもラジアル軸受部側の隙間寸法の変化量は僅かとなり、隙間寸法の小さなラジアル軸受部においても部材の熱膨張による接触を回避することが可能となる。また、シャフト並びにスラストプレートとスリーブとは熱膨張係数がほぼ同一の材料から形成されると共に、ハウジングをスリーブよりも大きな熱膨張係数を有する部材から形成することによる温度上昇時の熱応力に起因するスリーブの変形や歪み等は、ハウジングとスリーブとの嵌合部位をテーパシール部の外周側とすることで吸収され、軸受部に悪影響が生じることはない。
【0070】
本発明の請求項3の動圧軸受では、オイル内に発生する気泡を各軸受端部から排出可能な構成となる。また、スリーブのスラストプレート側端面に近接して第2のテーパシール部を設けることで、このシール部内に保持されるオイルが、軸受部に保持されるオイルの減少にともなって順次供給されることとなるので、軸受を長寿命化し、信頼性並びに耐久性を改善することが可能となる。
【0071】
本発明の請求項4のスピンドルモータでは、幅広い温度範囲で安定した軸受剛性が得られると共に、消費電力を抑制することが可能となる。
【0072】
本発明の請求項5のディスク駆動装置では、幅広い温度範囲において安定した回転精度を得つつも、消費電力量を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にの第1の実施形態にかかる動圧軸受及びこれを用いたスピンドルモータの概略構成を示す断面図である。
【図2】本発明の第2の実施形態にかかる動圧軸受の概略構成を示す断面図である。
【図3】本発明の実施例を説明するための断面図である。
【図4】本発明の比較例を説明するための断面図である。
【図5】ディスク駆動装置の内部構成を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
4,4’ シャフト
6 スラストプレート
9,9’ ハウジング
10,10’ スリーブ
16 スラストブッシュ(封止部材)
18,18’,20,20’ ラジアル動圧軸受部
22,22’,24,24’ スラスト動圧軸受部
S1 テーパシール部

Claims (5)

  1. シャフトと、該シャフトの一方の端部外周面から半径方向外方に向かって延設されるフランジ状のスラストプレートと、該シャフトの外周面との間にラジアル軸受部が構成される微小間隙を介して半径方向に対向する内周面と該スラストプレートの一方の面との間に一方のスラスト軸受部が構成される微小間隙を介して軸線方向に対向する一方の端面とを有する円筒状のスリーブと、内周面に該スリーブが嵌合固定される両端開放状の中空孔を規定するハウジングと、該中空孔の一方開口を閉塞し且つ該スラストプレートの他方の面との間に他方のスラスト軸受部が構成される微小間隙を介して軸線方向に対向する封止部材とを備えてなる動圧軸受において、
    前記シャフトの外周面と前記スリーブの内周面との間の微小間隙及び前記スラストプレートの一方の面と前記スリーブの一方の端面並びに前記スラストプレートの他方の面と前記封止部材との間の微小間隙にはオイルが保持されると共に、前記スラストプレートの一方の面と軸線方向に対向する前記スリーブの一方の端面とは軸線方向反対側に位置する他方の端面に隣接して、前記シャフトの外周面と前記スリーブの内周面との間の微小間隙が該スリーブの他方の端面側に向かって漸次拡大するテーパシール部が設けられており、
    前記スリーブは、前記テーパシール部の半径方向外方に位置する部位のみにおいて前記ハウジングに嵌合固定されると共に、前記スリーブの外周面と前記中空孔の内周面との間には、該嵌合部を除き隙間が形成されている、ことを特徴とする動圧軸受。
  2. 前記シャフト並びに前記スラストプレートと前記スリーブとは熱膨張係数がほぼ同一の材料から形成されると共に、前記ハウジングは、前記シャフト並びに前記スラストプレートと前記スリーブを構成する部材の熱膨張係数よりも大きな熱膨張係数を有する部材から形成されている、ことを特徴とする請求項1に記載の動圧軸受。
  3. 前記シャフトの外周面と前記スリーブの内周面との間には、前記ラジアル軸受部が一対構成されており、該一対のラジアル軸受部の間には、前記スリーブ並びに前記ハウジングを半径方向に貫通し且つ前記スリーブの外周面と前記中空孔の内周面との間の隙間を介して外気に連通する連通孔が開口されると共に、前記スリーブの外周面と前記中空孔の内周面との間の隙間には、前記スリーブの一方の端面に近接して、前記隙間の半径方向の隙間寸法が前記スリーブの一方の端面から遠離るにしたがって漸次拡大する第2のテーパシール部が設けられている、ことを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の動圧軸受。
  4. ステータを保持するブラケットと、該ブラケットに対して相対回転するロータと、該ロータに固着され該ステータと協働して回転磁界を発生するロータマグネットと、該ロータの回転を支持する動圧軸受とを備えたスピンドルモータにおいて、
    前記動圧軸受は、請求項1乃至3のいずれかに記載した動圧軸受であることを特徴とするスピンドルモータ。
  5. 情報を記録できる円板状記録媒体が装着されるディスク駆動装置において、ハウジングと、該ハウジングの内部に固定され該記録媒体を回転させるスピンドルモータと、該記録媒体の所要の位置に情報を書き込み又は読み出すための情報アクセス手段とを有するディスク駆動装置であって、
    前記スピンドルモータは、請求項4に記載したスピンドルモータであることを特徴とするディスク駆動装置。
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