JP3700453B2 - 画像処理装置、及び画像処理方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、カラー複写機などに搭載される画像処理装置に関し、さらに詳しくは、原稿画像中の黒文字又は線画の印字再現性を高めるための画像処理装置及び画像処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の画像処理装置において、カラー画像に含まれる黒文字又は線画の再現品質を向上させるために、原稿画像中の黒文字又は線画の部分を領域判別処理により判別し、その判別結果に基づいてエッジ強調などの画像処理が行われている。以下、その画像処理について簡単に説明する。
【0003】
まず、原稿画像を読みとって得られた入力画像信号を一次微分フィルタ及び二次微分フィルタに通すことにより、原稿画像中のエッジ部分を抽出する。また、入力画像信号の低彩度領域を抽出する。これらの抽出結果から、原稿画像中の黒文字又は線画部分とその輪郭とを判別する。なお、二次微分フィルタの出力が正であるか負であるかによって、エッジの外側(背景側)であるか内側(黒線上)であるかを判別することができる。以下の説明において、エッジの外側を黒外エッジ部といい、エッジの内側を黒内エッジ部という。原稿画像中の黒文字又は線画領域の輪郭は、黒内エッジ部及び黒外エッジ部として識別される。
【0004】
次に、黒文字又は線画の再現品質を向上させるために、黒内エッジ部と黒外エッジ部に関して別々に以下のような処理を行う。
黒内エッジ部の画素については、黒色成分の画像データKに対して明度エッジ成分(VMTF)を加算するエッジ強調処理を行う。また、カラー成分の画像データC(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)に対しては、エッジ強調処理を行わず、5×5又は3×3の画素マトリクス内において最も小さな値の画素データ(つまり、最も濃度が低い画像データ)で注目画素の画像データを置き換える処理を行う。
【0005】
黒外エッジ部の画素については、黒色成分及びカラー成分いずれの色成分の画像データK,C,M,Yに対してもエッジ強調は行わず、5×5又は3×3の画素マトリクス内において最も小さな値の画素データで注目画素の画像データを置き換える処理を行う。
【0006】
このような処理により、原稿画像中の黒文字又は線画のエッジ近傍において、C,M,Yのカラー成分が抑えられるとともに、黒内エッジが強調され、黒文字又は線画の再現性が向上する。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、近年の画像読取装置の高解像度化にともない、上記のような従来の画像処理のみでは色ずれを抑えて黒文字又は線画の再現性を高める効果が十分ではなくなってきた。
【0008】
電子写真式のプリンタなどにおいて、C,M,Y,Kの4色を重ねて印刷する際に、各色毎の画像の位置ずれに起因する色ずれが生ずる。この色ずれは、上記のように、黒内エッジにおいてC,M,Yについての画像データをマトリクス内の最小値に置き換える処理により緩和される。例えば5×5の画素マトリクスを用いた場合は、2画素分の幅でC,M,Yの濃度が抑えられることになる。したがって、例えば解像度400dpiで印字可能なプリンタの場合に、2画素分の幅に相当する約128μm以上の色ずれ(C,M,Y画像間の位置ずれ)が生ずると、上記の処理による色ずれ緩和効果が薄れ、黒文字又は線画のエッジにC,M,Yの色がにじむ現象が生ずるようになる。
【0009】
一方、高解像度化に対応して画像処理マトリクスの大きさ(マトリクスサイズ)を大きくすれば、色ずれ量に対して十分な幅で上記の処理を行うことができるので、黒文字又は線画のエッジにC,M,Yの色がにじむといった問題は解消され得る。しかし、この場合は、マトリクスサイズの増大にともなって画像データを蓄積するのに必要なメモリの容量も増大し、コスト上昇が大きくなる。
【0010】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、コスト上昇を抑えた簡単な構成で高解像度化に対応しつつ黒文字又は線画の再現性を高めることができる画像処理装置及び画像形成方法を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る装置は、入力画像のエッジ領域を検出するエッジ検出部と、入力画像の低明度・低彩度領域を検出する明度・彩度検出部とを備え、両検出部の検出信号から判別された黒文字又は線画のエッジ領域において画像処理(例えばエッジ強調など)を行う画像処理装置であって、前記エッジ検出部で検出されたエッジ領域を拡大するエッジ拡大部と、拡大されたエッジ領域における各色成分の濃度を増減する手段と、入力画像におけるブロック領域毎にモノクロ/カラー比率を検出する手段と、前記モノクロ/カラー比率に応じて前記エッジ拡大部によるエッジ領域の拡大量を制御するための手段と、を有する。このような処理により、エッジ部における色ずれが目立たなくなり、黒文字又は線画の再現性が高められる。
【0012】
また、モノクロ/カラー比率に応じて、エッジ領域の拡大量(エッジ拡大量)が制御される。エッジ拡大量の制御のために、例えば、9×9マトリクスによる4画素分のエッジ領域拡大、7×7マトリクスによる3画素分のエッジ領域拡大、5×5マトリクスによる2画素分のエッジ領域拡大、3×3マトリクスによる1画素分のエッジ領域拡大のうちから、適当なエッジ拡大量が設定される。
【0013】
例えば、モノクロの比率が高いブロック領域においては、エッジ拡大量が、4画素分又は3画素分などのように大きく設定される。これによって、黒文字又は黒線画の領域については、エッジ部における色ずれ緩和効果が高くなる。 また、モノクロの比率が低いブロック領域においては、エッジ拡大量が、1画素分又は0画素分などのように小さく設定される。これによって、例えばカラーの写真領域については、不必要な色ずれ防止処理が行われることなく、自然な写真画像が得られる。
【0014】
ブロック領域として、種々の大きさの領域を用いることができる。例えば、原稿を複数のブロック領域に分割してもよい。また、原稿の全体を1つのブロック領域としてもよい。
【0015】
より具体的な構成として、請求項1の発明に係る装置では、エッジ検出部で検出されたエッジ領域を拡大するエッジ拡大部と、拡大されたエッジ領域におけるカラー成分の濃度、つまり例えば、C、M、Yの各色成分の濃度を減量するとともに、黒色成分の濃度、つまり例えば、Bの色成分の濃度を増量するように、各色成分の画像データを変換する手段とを備える。
【0016】
請求項2の発明に係る装置では、前記エッジ拡大部により拡大されたエッジ領域のうち、黒文字又は線画の背景部の拡大領域を、前記入力画像の低明度領域を表す低明度信号を用いてキャンセルする修正を行うエッジキャンセル部をさらに備え、前記色成分の画像データを変換する手段は、前記修正された拡大エッジ領域について、C,M,Yのカラー成分の濃度を減量するとともに黒色の濃度を増量するように各色成分の画像データの変換を行う。したがって、黒文字又は線画の背景部(下地部)については、画像データの変換処理が行われない。
【0017】
このようにして、黒内エッジ領域を黒文字又は線画の内側方向へ拡大し、拡大された黒内エッジ領域に対してC,M,Yのカラー成分の画像濃度を下げるとともに、その減少分を補償するようにKの黒色成分の画像濃度を高める処理が行われる。
【0018】
なお、本明細書において「黒文字又は線画」と記載した場合に、それは「黒文字」又は「黒線画」を意味する。
【0019】
【発明の実施の形態】
図1は本発明の実施形態に係る画像処理装置M1のブロック図、図2は画像処理装置M1のエッジ拡大部6の構成例を示す回路図、図3はエッジ字拡大部6の9×9マトリクス回路109の構成例を示す図、図4は画像処理装置M1のエッジ検出部4の入力信号、内部信号、及び出力信号の波形例を示す図、図5は画像処理装置M1のエッジキャンセル部8の入力信号、内部信号、及び出力信号の波形例を示す図、図6は画像処理装置M1の黒色増量回路13の変換特性例を示すグラフ、図7は画像処理装置M1のカラー減量回路15の変換特性例を示すグラフ、図8は領域カラー検出部21における原稿SCの分割の様子を示す図、図9はブロック領域BEのモノクロ/カラー比率とエッジ拡大量との関係を説明するための図である。
【0020】
図1に示す画像処理装置M1は、例えばデジタル式のカラー複写機に組み込まれている。カラー複写機には、図示しないCCDイメージセンサ及びその駆動系を含む画像読み取り装置が設けられている。画像読み取り装置において、図8に示すような原稿SCを走査することによって、3原色の入力画像信号(カラー画像信号)R,G,Bが得られる。入力画像信号R,G,Bは、画像処理装置M1の最小値回路1及び最大値回路2に入力される。
【0021】
図1において、最小値回路1は、入力画像信号R,G,Bの最小値Min(R,G,B)を疑似明度Vとして出力する。最大値回路2は、入力画像信号R,G,Bの最大値Max(R,G,B)を出力する。彩度信号生成回路3は、最大値Max(R,G,B)と、最小値Min(R,G,B)すなわち疑似明度Vとの差[Max(R,G,B)−Min(R,G,B)]を、彩度信号Wとして出力する。
【0022】
疑似明度Vは、エッジ検出部4及び明度・彩度検出部5に入力される。エッジ検出部4は、5×5マトリクスからなる主走査方向及び副走査方向の一次微分フィルタ及び二次微分フィルタから構成されている。微分結果が所定のしきい値よりも大きければ、出力信号であるエッジ判別信号(以下、単に「エッジ信号」という)EDG1をL(低)レベルにする。Lレベルがアクティブである。エッジ信号EDG1がLレベルであれば、入力画像のエッジ部分であることを示す。
【0023】
エッジ検出部4は、また、二次微分フィルタの出力の絶対値信号LAPを出力する。文字又は線画部分の入力画像信号、一次微分信号、二次微分信号とその絶対値信号LAP、及びエッジ信号EDG1の波形例を図4に示す。
【0024】
明度・彩度検出部5は、前述の疑似明度信号Vが所定のしきい値(Th1、例えば256階調の場合は15〜20)よりも小さい場合に、明度が低い(黒っぽい)ことを表す低明度信号VLを出力する。また、疑似彩度信号Wが所定のしきい値(Th2)よりも小さい場合に、白黒(モノクロ)画像であることを表すモノクロ信号BKを出力する。
【0025】
エッジ信号EDG1はエッジ拡大部6に入力される。エッジ拡大部6は、図2に示すように、ラインメモリ101〜108、9×9マトリクス回路109、負論理OR回路110〜113、及び拡大量選択回路114から構成されている。ラインメモリ101〜108は、エッジ信号EDG1をライン遅延させるための回路である。この構成では9×9マトリクスの演算が可能であり、エッジ信号EDG1を主走査方向及び副走査方向にそれぞれ最大4画素の幅で拡大することができる。
【0026】
9×9マトリクス回路109は、シフトレジスタ群を用いて、例えば図3に示すように構成される。エッジ信号EDG1が直接入力されるD1入力について、1画素ずつ遅延したD11〜D19出力が得られ、1ライン分遅延したD2入力について、同様に1画素ずつ遅延したD21〜D29出力が得られる。以下、同様にして、2ライン分遅延したD3入力から8ライン分遅延したD9入力までの9個の入力のそれぞれについて、1画素ずつ遅延したD31〜D39、…D91〜D99の各出力が得られる。このようにして、得られた9×9個の出力画素データの論理和を負論理OR回路110で演算することにより、エッジ信号EDG1を主走査方向及び副走査方向にそれぞれ4画素の幅で拡大した拡大エッジ信号EDG99が得られる。
【0027】
図2に示すエッジ拡大部6の構成では、上記の拡大エッジ信号EDG99は拡大量選択回路114に入力され、その選択出力が図1の拡大エッジ信号EDG2としてエッジ拡大部6から出力される。拡大量選択回路114には、他のエッジ拡大量の拡大エッジ信号EDG77,EDG55,EDG33も入力され、2ビットの拡大量制御信号Con(S0,S1)によって、これらの4通りの拡大エッジ信号EDG99,EDG77,EDG55,EDG33のうちのいずれか1つが選択され、拡大エッジ信号EDG2として出力される。
【0028】
拡大エッジ信号EDG77,EDG55,EDG33は、それぞれ、7×7,5×5,3×3のマトリクス演算によって、エッジ信号EDG1を主走査方向及び副走査方向に、それぞれ3画素、2画素、1画素の幅で拡大した拡大エッジ信号である。
【0029】
図2において、負論理OR回路111,112,113は、それぞれ7×7個,5×5個,3×3個の画素データの論理和を演算して拡大エッジ信号EDG77,EDG55,EDG33を出力する。図2では複雑になるのを避けるために省略されているが、負論理OR回路111の49個の入力は9×9マトリクス回路109の7×7個の出力D11〜D17、…D71〜D77に接続されている。同様に、負論理OR回路112の25個の入力は9×9マトリクス回路109の5×5個の出力D11〜D15、…D51〜D55に接続され、負論理OR回路113の9個の入力は9×9マトリクス回路109の3×3個の出力D11〜D13、…D31〜D33に接続されている。
【0030】
上記のように4通りの拡大エッジ信号EDG99,EDG77,EDG55,EDG33のうちのいずれか1つを選択するための拡大量制御信号Conは、図1に示すCPU7からエッジ拡大部6に与えられる。CPU7は、領域カラー検出部21の検出結果に基づいて、4通りの拡大量制御信号Conを出力する。
【0031】
図8において、原稿SCは、その画像が画像読み取り装置によって読み取られた後で、領域カラー検出部21において、複数のブロック領域BEに分割される。したがって、この場合には、原稿SCのサイズに応じて、ブロック領域BEの個数が決定される。ブロック領域BEの個数に応じて、モノクロ/カラー比率の判定処理のための図示しないメモリ領域が確保される。
【0032】
なお、1つのブロック領域BEの大きさは、例えば、512×512画素である。この場合に、解像度が400dpiであれば、サイズは約3×3cmである。また、ブロック領域BEが1024×1024画素で解像度が400dpiである場合には、サイズは約6×6cmである。
【0033】
領域カラー検出部21では、それぞれのブロック領域BEにおいて、各画素毎に彩度データを算出する。画素の彩度データが所定のしきい値(Th3)よりも大きい場合に、その画素をカラー画素であると判定する。カラー画素でない画素がモノクロ画素である。各ブロック領域BEにおいて、カラー画素又はモノクロ画素の個数をカウントする。カラー画素又はモノクロ画素の個数、全画素数に対するカラー画素又はモノクロ画素の個数の比率、又はカラー画素とモノクロ画素との比率などが、モノクロ/カラー比率RMCとして求められる。求められたモノクロ/カラー比率RMCは、CPU7に出力される。
【0034】
CPU7は、モノクロ/カラー比率RMCに基づいて、拡大量制御信号Con(S0,S1)を生成し、それをエッジ拡大部6に出力する。例えば、図9に示すように、カラー画素のみである場合には、拡大量制御信号Conを(0,0)とし、モノクロの画素のみである場合には、拡大量制御信号Conを(1,1)とし、それらの中間である場合には、拡大量制御信号Conを(0,1)又は(1,0)とする。この拡大量制御信号Conに応じて、エッジ拡大部6においてエッジ拡大量が制御される。
【0035】
エッジ拡大部6において、拡大量制御信号Conに基づいて、例えば、文字原稿であった場合は、黒文字の描画位置ずれに起因する色ずれ(又は色にじみ)が目立つので、大きい拡大マトリクスサイズの出力、すなわち例えば拡大エッジ信号EDG99を選択する。逆に、写真原稿のように黒文字又は線画が少ない原稿であった場合は、小さな拡大出力、すなわち例えば拡大エッジ信号EDG33が選択される。
【0036】
なお、上に述べた実施形態では、細分化されたブロック領域BE毎に拡大量制御信号Conを設定したが、原稿SCを1つのブロック領域と見なし、原稿SCの全体に対して1つの拡大量制御信号Conを設定してもよい。この場合には、各ブロック領域BEにおいて、当該ブロック領域BEがカラーブロック領域であるか否かを判定する。
【0037】
つまり、各ブロック領域BEにおいて、カラー画素の個数が所定のしきい値(Th4)よりも大きい場合に、当該ブロック領域BEはカラーブロック領域であると判定する。カラーブロック領域でないブロック領域BEがモノクロブロック領域である。そして、カラーブロック領域又はモノクロブロック領域の個数をカウントする。それらの比率などを、モノクロ/カラー比率RMCとして求める。このモノクロ/カラー比率RMCに基づいて、エッジ拡大部6において、原稿SCの全体に対してエッジ拡大量が制御される。
【0038】
また、ブロック領域BEのサイズは種々変更することができる。ブロック領域BEのサイズを小さくすれば、画像の品質は向上するが処理に時間を要する。また、カラー領域であるかモノクロ領域であるかの判定方法、及びモノクロ/カラー比率RMCの決定方法も種々のものを採用することができる。
【0039】
なお、モノクロ/カラー比率RMCと拡大量制御信号Conとは、必ずしも比例関係にはない。これらの関係は、カラー複写機において設定された複写モードに応じて変化することがある。例えば、複写モードが写真モードに設定されている場合には、原稿SCの大部分又は主要部分が写真である可能性が高いので、エッジ拡大量を0とするように制御が行われる。
【0040】
なお、モノクロ/カラー比率RMCを検出する部分について、その機能の一部は、ACS(自動カラー検出装置)として従来から公知である。
エッジ拡大部6から出力される拡大エッジ信号EDG2は、図1のエッジキャンセル部8に入力される。エッジキャンセル部8は、拡大エッジ信号EDG2の内側へ拡大された部分つまり黒線上の部分をそのまま(Lレベルのまま)残しながら、外側へ拡大された部分つまり背景の部分をキャンセルしてHレベルに戻す処理を行う。そのような処理によって、修正拡大エッジ信号EDG3を生成し、出力する。エッジ拡大部6から出力される拡大エッジ信号EDG2には、黒文字又は線図の背景(下地)の部分も含まれており、この部分にも後述する画像処理を施すのは好ましくないからである。
【0041】
上記のエッジキャンセル処理のために、前述の低明度信号VLが用られる。図5に示すように、低明度信号VLがLレベルでない画素、つまりHレベル(非アクティブ)で明度が高い(黒っぽくない)画素については、拡大エッジ信号EDG2のLレベルをキャンセルしてHレベル(非アクティブ)にする。すなわち、拡大エッジ信号EDG2と低明度信号VLとの負論理でのAND演算により修正拡大エッジ信号EDG3を生成する。このようにして、黒文字又は線図の背景部分の(黒っぽくない)画素については、Hレベル(非アクティブ)に戻した修正拡大エッジ信号EDG3が得られる。
【0042】
図1において、修正拡大エッジ信号EDG3は、負論理ANDゲート9に入力され、前述のモノクロ信号BKとの論理積が黒エッジ信号BKEDG3として出力される。この黒エッジ信号BKEDG3は、明度が低くつまり黒っぽく、且つ、彩度が低いつまりモノクロである黒色の拡大されたエッジ領域を、Lレベルで表すことになる。
【0043】
また、拡大前のエッジ信号EDG1についても、負論理ANDゲート10にてモノクロ信号BKとの論理積演算が行われ、第2の黒エッジ信号BKEDG1として出力される。この黒エッジ信号BKEDG1は、彩度が低いつまりモノクロである黒色の拡大前のエッジ領域を、Lレベルで表している。黒エッジ信号BKEDG3及びBKEDG1は、負論理ORゲート11にて論理和演算が行われ、エッジ選択信号EDGSELとして出力される。
【0044】
また、図1において、前述の二次微分フィルタ出力の絶対値信号LAPはVMTF変換用ルックアップテーブル(LUT)12に入力され、ここで明度エッジ成分信号VMTFに変換される。
【0045】
ところで、カラー複写機においては、原稿を走査して得られたRGB加色系カラー画像データはCMY減色系カラー画像データに変換されるが、その際に、又はその後で、C,M,Yのカラー成分及びKの黒色成分の4色の色成分の画像データが生成される。生成されたC,M,Y,Kの各画像データは、必要な画像処理が加えられて、カラー画像データC1,M1,Y1及び黒色画像データK1となる。
【0046】
このようにして得られた黒色画像データK1は、黒色増量回路13に入力され、黒色増量画像データf(K1)として出力される。黒色増量回路13は、例えば図6に特性カーブCV1で示すような変換特性を有する。
【0047】
つまり、後述のように、拡大黒エッジ領域でカラー画像データC1,M1,Y1の濃度が減量されるのを補償して印字後の黒の再現濃度を保持するように、K1<f(K1)となる変換を行って黒色画像データK1の濃度を増量する。この特性カーブCV1は、例えば変換用のルックアップテーブルで構成され、具体的な増量特性はインク又はトナーの特性などに応じて設定される。なお、図6の縦軸は、数値が大きいほど濃度が高いことを示している。
【0048】
上記の明度エッジ成分信号VMTF及び黒色増量画像データf(K1)は、加算回路16に入力される。加算回路16は、これらの入力信号を加算して黒文字又は線画のエッジが強調された黒色増量画像データ[f(K1)+VMTF]を出力する。黒色増量画像データ[f(K1)+VMTF]は、セレクタ18の一方の入力Aに与えられる。セレクタ18の他方の入力には、黒色濃度増量前の黒色画像データK1が入力されている。また、セレクタ18の選択制御入力には、前述のエッジ選択信号EDGSELが入力されている。
【0049】
セレクタ18は、エッジ選択信号EDGSELがLレベルであれば、すなわち拡大エッジ領域であれば、エッジが強調された黒色増量画像データ[f(K1)+VMTF]を選択して最終的な黒色画像データK2として出力する。エッジ選択信号EDGSELがHレベルであれば、すなわち拡大エッジ領域以外の領域については、黒色濃度増量処理及びエッジ強調処理が施されていない元の黒色画像データK1が選択され、選択された黒色画像データK1が最終的な黒色画像データK2として出力される。
【0050】
一方、カラー画像データC1,M1,Y1は、最小値回路14及びカラー減量回路15に入力される。最小値回路14は、5×5又は3×3の画素マトリクス内で最も小さな値のデータを求め、カラー画像データC1,M1,Y1それぞれの最小値minC1,minM1,minY1を出力する。なお、図1では複雑になるのを避けるために最小値回路14をまとめて描いているが、実際にはカラー画像データC1,M1,Y1のそれぞれについて計3個の最小値回路が設けられている。以下に説明する回路15,17,19についても同様である。
【0051】
カラー減量回路15は、例えば図7の特性カーブCV2で示すような変換特性によってカラー画像データC1,M1,Y1の濃度を減量し、カラー減量画像データf(C1),f(M1),f(Y1)として出力する。なお、図7は、シアン画像データC1を例にとって示している。図6と同様に、図7の場合も縦軸は数値が大きいほど濃度が高いことを示しており、特性カーブCV2は例えば変換用のルックアップテーブルで構成される。カラー画像データC1,M1,Y1の濃度の減量は後述のように拡大黒エッジ領域で行われ、これによってカラー画像間の位置ずれに起因する色にじみが目立たないようにする。
【0052】
すなわち、エッジ部分を拡大した拡大黒エッジ領域においてカラー画像データC1,M1,Y1の濃度が減量されるので、印刷の際のより大きな位置ずれに対応が可能であり、より大きな位置ずれに対して色ずれ緩和効果がある。これによって、黒文字又は線画のエッジでの色にじみが減少する。また、カラー画像データC1,M1,Y1の濃度の減量にともなって黒色画像データK1が増量されているので、濃度段差は生じない。
【0053】
なお、具体的な減量特性は、各色の印字再現特性に応じて実験的に求めることが好ましい。
上記のカラー画像データの最小値minC1,minM1,minY1及びカラー減量画像データf(C1),f(M1),f(Y1)は、更に最小値選択回路17に入力され、各色毎にminC1とf(C1)、minM1とf(M1)、又はminY1とf(Y1)とが比較される。そして、小さいほうの値が選択されて最小値カラー画像データminC2,minM2,minY2として出力され、セレクタ19の一方の入力Aに与えられる。セレクタ19の他方の入力には、カラー濃度減量などの処理前のカラー画像データC1,M1,Y1が入力されている。また、セレクタ19の選択制御入力には、前述のエッジ選択信号EDGSELが入力されている。
【0054】
セレクタ19は、エッジ選択信号EDGSELがLレベルであれば、すなわち拡大エッジ領域であれば、カラー濃度を減量した値及びマトリクス内最小値のうちの小さい方の値である最小値カラー画像データminC2,minM2,minY2を選択し、それを最終的なカラー画像データC2,M2,Y2として出力する。エッジ選択信号EDGSELがHレベルであれば、すなわち拡大エッジ領域以外の領域については、カラー濃度減量などの処理前のカラー画像データC1,M1,Y1が選択され、これらが最終的なカラー画像データC2,M2,Y2として出力される。
【0055】
上記のようにして得られた黒色画像データK2及びカラー画像データC2,M2,Y2を用いて、公知のプリントエンジンによりカラー印字(印刷)が行われる。
【0056】
なお、図1に示す実施形態の画像処理装置M1に対し、エリア濃度検出部を付加してもよい。そのようなエリア濃度検出部には、黒色画像データK1及びカラー画像データC1,M1,Y1が入力される。エリア濃度検出部は、補正対象の画素を含む所定エリア(例えば3×3マトリクス)内の各画素濃度値からそのエリアの平均濃度値を算出する。また、平均濃度値ではなく中央値を算出することもある。
【0057】
そして、この場合に、黒色増量回路13及びカラー減量回路15は、それぞれ複数の変換特性(例えば変換テーブル)を備えている。つまり、図6及び図7に示した変換特性f(K1),f(C1),f(M1),f(Y1)のそれぞれについて、例えば入力画像データ対出力画像データの傾きが異なる複数の変換テーブルを備えている。そして、複数の変換テーブルのうち、最も適切な変換テーブルが、エリア濃度検出部から出力される選択信号によって選択される。選択信号は、平均濃度値(又は中央値)に基づいて生成される。
【0058】
このようにして、多様な原稿に対応して、黒エッジ部における黒(K)濃度の増量とそれにともなうカラー(C,M,Y)濃度の減量との増減量を自動補正することができる。例えば、カラー(C,M,Y)画像データの平均濃度が高い場合は、図7に示した特性カーブCV2の傾きを小さくする。つまり、カラー濃度減量の程度を大きくする。これとともに、図6に示した特性カーブCV1の傾きを大きくして黒(K)画像データの濃度増量の程度を大きくする。
【0059】
上述の実施形態において、エッジ拡大量を4種類としたが、3種類以下又は5種類以上としてもよい。拡大量制御信号Conの形態は種々のものとすることができる。その他、画像処理装置M1の全体又は各部の構成、回路、処理内容又は順序、処理タイミングなどは、本発明の趣旨に沿って適宜変更することができる。
【0060】
【発明の効果】
本発明によると、コスト上昇を抑えた簡単な構成で高解像度化に対応しつつ黒文字又は線画の再現性を高めることができる。しかも、エッジ領域の拡大量は、画像のモノクロ/カラー比率に応じて制御されるので、画像の状態に応じて最適の拡大量を設定することができる。また、プリンタ部の位置ずれ特性などに応じて容易に調整することがも可能である。
【0061】
具体的には、入力画像信号中の黒文字又は線画のエッジ部を検出してそのエッジ領域を拡大し、拡大されたエッジ領域に対して、カラー成分の濃度を減量し、黒色成分の濃度を増量する処理を行うので、各カラー成分の画像の位置ずれに起因するエッジ部の色にじみを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に係る画像処理装置の回路を示すブロック図である。
【図2】図1に示す画像処理装置のエッジ拡大部の構成例を示す回路図である。
【図3】図2に示すエッジ字拡大部の9×9マトリクス回路の構成例を示す図である。
【図4】図1に示す画像処理装置のエッジ検出部の入力信号、内部信号、及び出力信号の波形例を示す図である。
【図5】図1に示す画像処理装置のエッジキャンセル部の入力信号、内部信号、及び出出力信号の波形例を示す図である。
【図6】図1に示す画像処理装置の黒色増量回路の変換特性例を示すグラフである。
【図7】図1に示す画像処理装置のカラー減量回路の変換特性例を示すグラフである。
【図8】領域カラー検出部における原稿の分割の様子を示す図である。
【図9】ブロック領域のモノクロ/カラー比率とエッジ拡大量との関係を説明するための図である。
【符号の説明】
M1 画像処理装置
4 エッジ検出部
5 明度・彩度検出部
6 エッジ拡大部
7 CPU(エッジ領域の拡大量を制御するための手段)
8 エッジキャンセル部
13 黒色増量回路(画像データを変換する手段)
14 最小値回路(画像データを変換する手段)
15 カラー減量回路(画像データを変換する手段)
16 加算回路(画像データを変換する手段)
17 最小値選択回路(画像データを変換する手段)
18,19 セレクタ(画像データを変換する手段)
21 領域カラー検出部(モノクロ/カラー比率を検出する手段)
Claims (3)
- 入力画像のエッジ領域を検出するエッジ検出部と、入力画像の低明度・低彩度領域を検出する明度・彩度検出部とを備え、両検出部の検出信号から判別された黒文字又は線画のエッジ領域において画像処理を行う画像処理装置であって、
前記エッジ検出部で検出されたエッジ領域を拡大するエッジ拡大部と、
拡大されたエッジ領域におけるカラー成分の濃度を減量するとともに黒色成分の濃度を増量するように各色成分の画像データを変換する手段と、
入力画像におけるブロック領域毎にモノクロ/カラー比率を検出する手段と、
前記モノクロ/カラー比率に応じて前記エッジ拡大部によるエッジ領域の拡大量を制御するための手段と、
を備えたことを特徴とする画像処理装置。 - 前記エッジ拡大部により拡大されたエッジ領域のうち、黒文字又は線画の背景部の拡大領域を、前記入力画像の低明度領域を表す低明度信号を用いてキャンセルする修正を行うエッジキャンセル部をさらに備え、
前記色成分の画像データを変換する手段は、前記修正された拡大エッジ領域について、C,M,Yのカラー成分の濃度を減量するとともに黒色の濃度を増量するように各色成分の画像データの変換を行う、
請求項1記載の画像処理装置。 - 入力画像のエッジ領域と入力画像の低明度・低彩度領域を検出することによって黒文字又は線画のエッジ領域の画像処理を行う画像処理方法であって、
入力画像におけるブロック領域毎にモノクロ/カラー比率を検出し、このモノクロ/カラー比率に応じた拡大量に基づいて前記エッジ領域の拡大を行い、この拡大されたエッジ領域のカラー成分の濃度を減量するとともに黒色成分の濃度を増量するように各色成分の画像データを変換する、
ことを特徴とする画像処理方法。
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