JP3698256B2 - ポリエステルの製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、飲料用ボトルをはじめとする中空成形体、フィルム、シ−トなどの成形体の素材として好適に用いられるポリエステルの製造方法に関するものであり、特に、透明性及び耐熱寸法安定性に優れ、結晶化速度変動が少ない中空成形体や透明性、滑り性および成形後の寸法安定性に優れたシ−ト状物を与えるポリエステルの製造方法に関するものである。また、本発明は,中空成形体を成形する際に熱処理金型からの離型性が良好で、長時間連続成形性に優れたポリエステルの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレ−トであるポリエステル(以下PETと略称することがある)は、その優れた透明性、機械的強度、耐熱性、ガスバリア−性等の特性により、炭酸飲料、ジュ−ス、ミネラルウォ−タ等の容器の素材として採用されており、その普及はめざましいものがある。これらの用途において、ポリエステル製ボトルに高温で殺菌した飲料を熱充填したり、また飲料を充填後高温で殺菌したりするが、通常のポリエステル製ボトルでは、このような熱充填処理時等に収縮、変形が起こり問題となる。ポリエステル製ボトルの耐熱性を向上させる方法として、ボトル口栓部を熱処理して結晶化度を高めたり、また延伸したボトルを熱固定させたりする方法が提案されている。特に口栓部の結晶化が不十分であったり、また結晶化度のばらつきが大きい場合にはキャップとの密封性が悪くなり、内容物の漏れが生ずることがある。
【0003】
また、果汁飲料、ウ−ロン茶およびミネラルウオ−タなどのように熱充填を必要とする飲料の場合には、プリフォ−ムまたは成形されたボトルの口栓部を熱処理して結晶化する方法(特開昭55−79237号公報、特開昭58−110221号公報等に記載の方法)が一般的である。このような方法、すなわち口栓部、肩部を熱処理して耐熱性を向上させる方法は、結晶化処理をする時間・温度が生産性に大きく影響し、低温でかつ短時間で処理できる、結晶化速度が速いPETであることが好ましい。一方、胴部についてはボトル内容物の色調を悪化させないように、成形時の熱処理を施しても透明であることが要求されており、口栓部と胴部では相反する特性が必要である。
【0004】
また、ボトル胴部の耐熱性を向上させるため、例えば、特公昭59−6216号公報に見られる通り、延伸ブロ−金型の温度を高温にして熱処理する方法が採られる。しかし、このような方法によって同一金型を用いて多数のボトル成形を続けると、長時間の運転に伴って得られるボトルが白化して透明性が低下し、商品価値のないボトルしか得られなくなる。これは金型表面にPETに起因する付着物が付き、その結果金型汚れとなり、この金型汚れがボトルの表面に転写するためであることが分かった。 特に、近年では、ボトルの小型化とともに成形速度が高速化されてきており、生産性の面から口栓部の結晶化のための加熱時間短縮や金型汚れはより大きな問題となってきている。
【0005】
また、PETをシ−ト状物に押出し、これを真空成形して得た成形体に食品を充填後同一素材からなる蓋をし放置しておくと収縮が起こり蓋の開封性が悪くなったり、また該成形体を長期間放置しておくと収縮が起こり蓋が出来なくなったりする。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
このような問題を解決するために種々の提案がなされている。例えば、ポリエチレンテレフタレ−トにカオリン、タルク等の無機核剤を添加する方法(特開昭56−2342号公報、特開昭56−21832号公報)、モンタン酸ワックス塩等の有機核剤を添加する方法(特開昭57−125246号公報、特開昭57−207639号公報)があるが、これらの方法は異物やくもりの発生を伴い実用化には問題がある。また、原料ポリエステルに、該ポリエステルから溶融成形して得たポリエステル成形体を粉砕した処理ポリエステルを添加する方法(特開平5−105807号公報)があるが、この方法は溶融成形粉砕という余分な工程が必要であり、さらにこのような後工程でポリエステル以外の夾雑物が混入する危険性があり、経済的および品質的に好ましい方法ではない。また、耐熱性樹脂製ピ−スを口栓部に挿入する方法(特開昭61−259946号公報、特開平2−269638号公報)が提案されているが、ボトルの生産性が悪く、また、リサイクル性にも問題がある。
【0007】
また、PETチップを流動条件下にポリエチレン部材と接触させることによるPETの改質法(特開平9−71639号公報)や、同様の条件下にポリプロピレン系樹脂またはポリアミド系樹脂からなる部材と接触させることによるPETの改質法(特開平11−209492号公報)が提案されているが、このような方法によっても安定した結晶化速度や透明性を得るのが非常に難しいことが分かった。
【0008】
本発明は、上記従来の方法の有する問題点を解決し、透明性および耐熱寸法安定性に優れ、結晶化速度変動が少ない成形体、特に耐熱性中空成形体を効率よく生産することができ、また金型を汚すことの少ない長時間連続成形性に優れたポリエステルおよびそれからなる成形体を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明のポリエステルの製造方法は、ポリエステルのチップを、結晶性熱可塑性樹脂からなる部材と流動条件下において接触処理させるポリエステルの製造方法において、該部材の表面積(cm2)と該ポリエステルチップの単位時間当たり処理量(トン/時)の比Aが下記の式を満足することを特徴とする。
Figure 0003698256
【0010】
この場合において、該接触処理前および/または該接触処理後のポリエステルのファイン含有量、フイルム状物含有量、あるいはファイン含有量とフイルム状物含有量の合計含有量のいずれかの含有量が、300ppm以下であることができる。
【0011】
ここで、ファインとはJIS−Z8801による呼び寸法1.7mmの金網をはった篩いを通過したポリエステルの微粉末を意味し、またフイルム状物とはJIS−Z8801による呼び寸法5.6mmの金網をはった篩い上に残ったポリエステルのうち、2個以上のチップが融着したり、あるいは正常な形状より大きく切断されたチップ状物を除去後の、厚みが約0.5mm以下のフイルム状物を意味し、これらの含有量は下記の測定法によって測定する。
【0012】
この場合において、該接触処理前および/または該接触処理後のポリエステル中に含まれるファインおよび/またはフイルム状物の、融解ピ−ク温度の最も高温側のピ−ク温度が、265℃以下であることができる。
【0013】
ここで、下記に記載するようにファイン等の融点は示差走査熱量計(DSC)で測定するが、DSCの融解ピ−ク温度を融点と呼ぶ。そして、この融点を表す融解ピ−クは、1つ、またはそれ以上の複数の融解ピ−クから構成される。本発明では、該ピ−ク温度が1つの場合は、このピ−ク温度に、また該ピ−ク温度が複数の場合には、これらの複数の融解ピ−クの内、最も高温側の融解ピ−ク温度に注目する。
【0014】
この場合において、該接触処理前のポリエステルの密度が、1.37g/cm3以上であることができる。
この場合において、該接触処理前のポリエステルが、これを290℃の温度で60分間溶融したときの環状3量体増加量が0.30重量%以下であることができる。
この場合において、該結晶性熱可塑性樹脂が、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタ−ル樹脂、ポリブチレンテレフタレ−ト樹脂からなる群から選ばれた少なくとも一種の樹脂であることができる。
またこの場合において、ポリエステルが、極限粘度0.55〜1.30デシリットル/グラムの、主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレ−トから構成されるポリエステルであることができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明に係るポリエステルは、好ましくは、主として芳香族ジカルボン酸成分とグリコ−ル成分とから得られる結晶性ポリエステルであり、さらに好ましくは、芳香族ジカルボン酸単位が酸成分の85モル%以上含むポリエステルであり、特に好ましくは、芳香族ジカルボン酸単位が酸成分の95モル%以上含むポリエステルである。
【0016】
本発明に係るポリエステルを構成する芳香族ジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、2、6−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニ−ル−4,4'−ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸及びその機能的誘導体等が挙げられる。
【0017】
また本発明に係るポリエステルを構成するグリコ−ル成分としては、エチレングリコ−ル、トリメチレングリコ−ル、テトラメチレングリコ−ル、シクロヘキサンジメタノ−ル等の脂環族グリコ−ル等が挙げられる。
【0018】
前記ポリエステル中に共重合して使用される酸成分としては、テレフタル酸、2、6−ナフタレンジカルボン酸、イソフタル酸、ジフェニ−ル−4,4'−ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、p−オキシ安息香酸、オキシカプロン酸等のオキシ酸及びその機能的誘導体、アジピン酸、セバシン酸、コハク酸、グルタル酸、ダイマ−酸等の脂肪族ジカルボン酸及びその機能的誘導体、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸及びその機能的誘導体などが挙げられる。
【0019】
前記ポリエステル中に共重合して使用されるグリコ−ル成分としては、エチレングリコ−ル、トリメチレングリコ−ル、テトラメチレングリコ−ル、ジエチレングリコ−ル、ネオペンチルグリコ−ル等の脂肪族グリコ−ル、シクロヘキサンジメタノ−ル等の脂環族グリコ−ル、ビスフェノ−ルA、ビスフェノ−ルAのアルキレンオキサイド付加物等の芳香族グリコ−ル、ポリエチレングリコ−ル、ポリブチレングリコ−ル等のポリアルキレングリコ−ルなどが挙げられる。
【0020】
さらに、ポリエステルが実質的に線状である範囲内で多官能化合物、例えばトリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、トリカルバリル酸、グリセリン、ペンタエリスリト−ル、トリメチロ−ルプロパン等を共重合してもよく、また単官能化合物、例えば安息香酸、ナフトエ酸等を共重合させてもよい。
【0021】
本発明に係るポリエステルの好ましい一例は、主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレ−トから構成されるポリエステルであり、さらに好ましくはエチレンテレフタレ−ト単位を85モル%以上含む線状ポリエステルであり、特に好ましいのはエチレンテレフタレ−ト単位を95モル%以上含む線状ポリエステル、即ち、ポリエチレンテレフタレ−ト(以下、PETと略称)である。
【0022】
また本発明に係るポリエステルの好ましい他の一例は、主たる繰り返し単位がエチレン−2、6−ナフタレ−トから構成されるポリエステルであり、さらに好ましくはエチレン−2、6−ナフタレ−ト単位を85モル%以上含む線状ポリエステルであり、特に好ましいのは、エチレン−2、6−ナフタレ−ト単位を95モル%以上含む線状ポリエステル、即ち、ポリエチレンナフタレ−トである。
また本発明に係るポリエステルの好ましいその他の例としては、プロピレンテレフタレ−ト単位を85モル%以上含む線状ポリエステル、1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレ−ト単位を85モル%以上含む線状ポリエステル、またはブチレンテレフタレ−ト単位を85モル%以上含む線状ポリエステルである。
【0023】
上記のポリエステルは、従来公知の製造方法によって製造することが出来る。即ち、PETの場合には、テレフタ−ル酸とエチレングリコ−ル及び必要により他の共重合成分を直接反応させて水を留去しエステル化した後、減圧下に重縮合を行う直接エステル化法、または、テレフタル酸ジメチルとエチレングリコ−ル及び必要により他の共重合成分を反応させてメチルアルコ−ルを留去しエステル交換させた後、減圧下に重縮合を行うエステル交換法により製造される。さらに必要に応じて極限粘度を増大させ、アセトアルデヒド含有量等を低下させる為に固相重合を行ってもよい。固相重合前の結晶化促進のため、溶融重合ポリエステルを吸湿させたあと加熱結晶化させたり、また水蒸気を直接ポリエステルチップに吹きつけて加熱結晶化させたりしてもよい。
【0024】
前記溶融重縮合反応は、回分式反応装置で行っても良いし、また連続式反応装置で行っても良い。これらいずれの方式においても、溶融重縮合反応は1段階で行っても良いし、また多段階に分けて行っても良い。固相重合反応は、溶融重縮合反応と同様、回分式装置や連続式装置で行うことが出来る。溶融重縮合と固相重合は連続で行っても良いし、分割して行ってもよい。
【0025】
以下にはポリエチレンテレフタレ−トを例にして連続方式での好ましい製造方法の一例について説明する。
まず、エステル化反応により低重合体を製造する場合について説明する。テレフタル酸またはそのエステル誘導体1モルに対して1.02〜1.5モル、好ましくは1.03〜1.4モルのエチレングリコ−ルが含まれたスラリ−を調整し、これをエステル化反応工程に連続的に供給する。
【0026】
エステル化反応は、少なくとも2個のエステル化反応器を直列に連結した多段式装置を用いてエチレングリコ−ルが還流する条件下で、反応によって生成した水またはアルコ−ルを精留塔で系外に除去しながら実施する。第1段目のエステル化反応の温度は240〜270℃、好ましくは245〜265℃、圧力は0.2〜3kg/cm2G、好ましくは0.5〜2kg/cm2Gである。最終段目のエステル化反応の温度は通常250〜280℃好ましくは255〜275℃であり、圧力は通常0〜1.5kg/cm2G、好ましくは0〜1.3kg/cm2Gである。3段階以上で実施する場合には、中間段階のエステル化反応の反応条件は、上記第1段目の反応条件と最終段目の反応条件の間の条件である。これらのエステル化反応の反応率の上昇は、それぞれの段階で滑らかに分配されることが好ましい。最終的にはエステル化反応率は90%以上、好ましくは93%以上に達することが望ましい。これらのエステル化反応により分子量500〜5000程度の低次縮合物が得られる。
【0027】
上記エステル化反応は原料としてテレフタル酸を用いる場合は、テレフタル酸の酸としての触媒作用により無触媒でも反応させることができるが重縮合触媒の共存下に実施してもよい。
【0028】
また、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルアミン、ベンジルジメチルアミンなどの第3級アミン、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラ−n−ブチルアンモニウム、水酸化トリメチルベンジルアンモニウムなどの水酸化第4級アンモニウムおよび炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、酢酸ナトリウムなどの塩基性化合物を少量添加して実施すると、ポリエチレンテレフタレ−トの主鎖中のジオキシエチレンテレフタレ−ト成分単位の割合を比較的低水準(全ジオ−ル成分に対して5モル%以下)に保持できるので好ましい。
【0029】
次に、エステル交換反応によって低重合体を製造する場合は、テレフタル酸ジメチル1モルに対して1.1〜1.6モル、好ましくは1.2〜1.5モルのエチレングリコ−ルが含まれた溶液を調整し、これをエステル交換反応工程に連続的に供給する。
【0030】
エステル交換反応は、1〜2個のエステル交換反応器を直列に連結した装置を用いてエチレングリコ−ルが還留する条件下で、反応によって生成したメタノ−ルを精留塔で系外に除去しながら実施する。第1段目のエステル交換反応の温度は180〜250℃、好ましくは200〜240℃である。最終段目のエステル交換反応の温度は通常230〜270℃、好ましくは240〜265℃であり、エステル交換触媒として、Zn,Cd,Mg,Mn,Co,Ca,Baなどの脂肪酸塩、炭酸塩やPb,Zn,Sb,Ge酸化物等を用いる。これらのエステル交換反応により分子量約200〜500程度の低次縮合物が得られる。
【0031】
次いで得られた低次縮合物は多段階の液相縮重合工程に供給される。重縮合反応条件は、第1段階目の重縮合の反応温度は250〜290℃、好ましくは260〜280℃であり、圧力は500〜20Torr、好ましくは200〜30Torrで、最終段階の重縮合反応の温度は265〜300℃、好ましくは275〜295℃であり、圧力は10〜0.1Torr、好ましくは5〜0.5Torrである。3段階以上で実施する場合には、中間段階の重縮合反応の反応条件は、上記第1段目の反応条件と最終段目の反応条件の間の条件である。これらの重縮合反応工程の各々において到達される極限粘度の上昇の度合は滑らかに分配されることが好ましい。
【0032】
重縮合反応は、重縮合触媒を用いる。重縮合触媒としては、Ge、Sb、Ti、またはAlの化合物が用いられるが、Ge化合物とTi化合物、Ge化合物とAl化合物、Sb化合物とTi化合物、Sb化合物とGe化合物の混合触媒の使用も好都合である。これらの化合物は、粉体、水溶液、エチレングリコ−ル溶液、エチレングリコ−ルのスラリ−等として反応系に添加される。
【0033】
Ge化合物としては、無定形二酸化ゲルマニウム、結晶性二酸化ゲルマニウム粉末またはエチレングリコ−ルのスラリ−、結晶性二酸化ゲルマニウムを水に加熱溶解した溶液またはこれにエチレングリコ−ルを添加加熱処理した溶液等が使用されるが、特に本発明で用いるポリエステルを得るには二酸化ゲルマニウムを水に加熱溶解した溶液、またはこれにエチレングリコ−ルを添加加熱した溶液を使用するのが好ましい。これらの重縮合触媒はエステル化工程中に添加することができる。Ge化合物を使用する場合、その使用量はポリエステル樹脂中のGe残存量として10〜150ppm、好ましくは13〜100ppm、更に好ましくは15〜70ppmである。
【0034】
Ti化合物としては、テトラエチルチタネ−ト、テトライソプロピルチタネ−ト、テトラ−n−プロピルチタネ−ト、テトラ−n−ブチルチタネ−ト等のテトラアルキルチタネ−トおよびそれらの部分加水分解物、蓚酸チタニル、蓚酸チタニルアンモニウム、蓚酸チタニルナトリウム、蓚酸チタニルカリウム、蓚酸チタニルカルシウム、蓚酸チタニルストロンチウム等の蓚酸チタニル化合物、トリメリット酸チタン、硫酸チタン、塩化チタン等が挙げられる。Ti化合物は、生成ポリマ−中のTi残存量として0.1〜10ppmの範囲になるように添加する。
【0035】
Sb化合物としては、三酸化アンチモン、酢酸アンチモン、酒石酸アンチモン、酒石酸アンチモンカリ、オキシ塩化アンチモン、アンチモングリコレ−ト、五酸化アンチモン、トリフェニルアンチモン等が挙げられる。
Sb化合物は、生成ポリマ−中のSb残存量として50〜250ppmの範囲になるように添加する。
【0036】
また、Al化合物としては、蟻酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、プロピオン酸アルミニウム、蓚酸アルミニウム等のカルボン酸塩、酸化物、水酸化アルミニウム、塩化アルミニウム、水酸化塩化アルミニウム、炭酸アルミニウム等の無機酸塩、アルミニウムメトキサイド、アルミニウムエトキサイド等のアルミニウムアルコキサイド、アルミニウムアセチルアセトネ−ト、アルミニウムアセチルアセテ−ト等とのアルミニウムキレ−ト化合物、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム等の有機アルミニウム化合物およびこれらの部分加水分解物等があげられる。これらのうち酢酸アルミニウム、塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化塩化アルミニウム、およびアルミニウムアセチルアセトネ−トが特に好ましい。Al化合物は、生成ポリマ−中のAl残存量として5〜200ppmの範囲になるように添加する。
【0037】
また、本発明のポリエステルの製造方法においては、アルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物を併用してもよい。アルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物は、これら元素の酢酸塩等のカルボン酸塩、アルコキサイド等があげられ、粉体、水溶液、エチレングリコ−ル溶液等として反応系に添加される。アルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物は、生成ポリマ−中のこれらの元素の残存量として1〜50ppmの範囲になるように添加する。
【0038】
また、安定剤として種々のP化合物を使用することができる。本発明で使用されるP化合物としては、リン酸、亜リン酸およびそれらの誘導体等が挙げられる。具体例としてはリン酸、リン酸トリメチルエステル、リン酸トリエチルエステル、リン酸トリブチルエステル、リン酸トリフェニ−ルエステル、リン酸モノメチルエステル、リン酸ジメチルエステル、リン酸モノブチルエステル、リン酸ジブチルエステル、亜リン酸、亜リン酸トリメチルエステル、亜リン酸トリエチルエステル、亜リン酸トリブチルエステル等であり、これらは単独で使用してもよく、また2種以上を併用してもよい。P化合物は、生成ポリマ−中のP残存量として1〜1000ppmの範囲になるように前記のポリエステル生成反応工程の任意の段階で添加することができる。
【0039】
また、低フレ−バ−飲料用耐熱容器や飲料用金属缶の内面用フイルム等のように低アセトアルデヒド含有量や低環状3量体含有量を要求される場合は、このようにして得られた溶融重縮合されたポリエステルは固相重合される。前記のポリエステルを従来公知の方法によって固相重合する。まず固相重合に供される前記のポリエステルは、不活性ガス下または減圧下あるいは水蒸気または水蒸気含有不活性ガス雰囲気下において、100〜210℃の温度で1〜5時間加熱して予備結晶化される。次いで不活性ガス雰囲気下または減圧下に190〜230℃の温度で1〜30時間の固相重合を行う。
【0040】
本発明に係るポリエステル、特に、主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレ−トから構成されるポリエステルの極限粘度は0.55〜1.30デシリットル/グラム、好ましくは0.60〜1.20デシリットル/グラム、さらに好ましくは0.65〜0.90デシリットル/グラムの範囲である。極限粘度が0.55デシリットル/グラム未満では、得られた成形体等の機械的特性が悪い。また、1.30デシリットル/グラムを越える場合は、成型機等による溶融時に樹脂温度が高くなって熱分解が激しくなり、保香性に影響を及ぼす遊離の低分子量化合物が増加したり、成形体が黄色に着色する等の問題が起こる。
【0041】
また本発明に係るポリエステル、特に、主たる繰り返し単位がエチレン−2、6−フタレ−トから構成されるポリエステルの極限粘度は0.40〜1.00デシリットル/グラム、好ましくは0.42〜0.95デシリットル/グラム、さらに好ましくは0.45〜0.90デシリットル/グラムの範囲である。極限粘度が0.40デシリットル/グラム未満では、得られた成形体等の機械的特性が悪い。また、1.00デシリットル/グラムを越える場合は、成型機等による溶融時に樹脂温度が高くなって熱分解が激しくなり、保香性に影響を及ぼす遊離の低分子量化合物が増加したり、成形体が黄色に着色する等の問題が起こる。
【0042】
ポリエステルのチップの形状は、シリンダ−型、角型、球状または扁平な板状等の何れでもよく、その平均粒径は、通常1.5〜5mm、好ましくは1.6〜4.5mm、さらに好ましくは1.8〜4.0mmの範囲である。例えば、シリンダ−型の場合は、長さは1.5〜4mm、径は1.5〜4mm程度であるのが実用的である。球状粒子の場合は、最大粒子径が平均粒子径の1.1〜2.0倍、最小粒子径が平均粒子径の0.7倍以上であるのが実用的である。また、チップの重量は15〜30mg/個の範囲が実用的である。
【0043】
また、チップ化工程の冷却水中のナトリウムの含有量、マグネシウムの含有量、珪素の含有量及びカルシウムの含有量をそれぞれN、M、S、Cとした場合、下記の(1)〜(4)の少なくとも一つ、好ましくはすべてを満足するようにして溶融重縮合ポリエステルのチップ化を行うのが好ましい。
N ≦ 1.0(ppm) (1)
M ≦ 0.5(ppm) (2)
S ≦ 2.0(ppm) (3)
C ≦ 1.0(ppm) (4)
【0044】
前記の条件を外れる冷却水を用いた場合には、これらの金属含有化合物がポリエステルチップ表面に付着し、得られた最終のポリエステルの結晶化速度が非常に早く、またその変動が大きくなり好ましくない。
【0045】
また、本発明に係るポリエステルのアセトアルデヒド含有量は10ppm以下、好ましくは8ppm以下、更に好ましくは5ppm以下、ホルムアルデヒド含有量は7ppm以下、好ましくは6ppm以下、更に好ましくは4ppm以下であることが望ましい。アセトアルデヒド含有量が10ppm以上、およびホルムアルデヒド含有量が7ppm以上の場合は、このポリエステル組成物から成形された容器等の内容物の風味や臭い等が悪くなる。
【0046】
また、本発明に係るポリエステル中に共重合されたジエチレングリコ−ル量は該ポリエステルを構成するグリコ−ル成分の1.0〜5.0モル%、好ましくは1.3〜4.5モル%、更に好ましくは1.5〜4.0モル%である。ジエチレングリコ−ル量が5.0モル%を越える場合は、熱安定性が悪くなり、成型時に分子量低下が大きくなったり、またアセトアルデヒド含有量やホルムアルデヒド含有量の増加量が大となり好ましくない。またジエチレングリコ−ル含有量が1.0モル%未満の場合は、得られた成形体の透明性が悪くなる。
【0047】
また、本発明に係るポリエステルの環状3量体の含有量は0.50重量%以下、好ましくは0.45重量%以下、さらに好ましくは0.40重量%以下であることが望ましい。本発明のポリエステルから耐熱性の中空成形体等を成形する場合は加熱金型内で熱処理を行うが、環状3量体の含有量が0.50重量%以上含有する場合には、加熱金型表面へのオリゴマ−付着が急激に増加し、得られた中空成形体等の透明性が非常に悪化する。
【0048】
前記のポリエステルから得られる成形体の結晶化速度を早め、その変動を抑えるために、前記のようにして溶融重縮合により得られたポリエステル、または溶融重縮合およびこれに引き続く固相重合により得られたポリエステルは、チップ状形態で結晶性熱可塑性樹脂からなる部材と接触処理される。
【0049】
ポリエステルを結晶性熱可塑性樹脂製の部材に接触処理させる方法としては、該結晶性熱可塑性樹脂製の部材が存在する空間内で、ポリエステルを該部材に衝突接触させることが好ましく、具体的には、例えば、ポリエステルの溶融重縮合直後または固相重合直後、また、ポリエステルの製品としての輸送段階等での輸送用容器への充填時あるいは同容器からの排出時、また、ポリエステルの成形段階での成形機投入時、等における気力輸送用配管、重力輸送用配管、サイロ、マグネットキャッチャ−のマグネット部等の一部を前記の結晶性熱可塑性樹脂製とするか、または、前記の結晶性熱可塑性樹脂をライニングするとか、或いは前記移送経路内に棒状体、板状体、管状体又は網状体等の結晶性熱可塑性樹脂製部材を設置する等して、ポリエステルを移送する方法が挙げられる。ポリエステルの前記部材との接触時間は、通常、0.01秒〜数分程度の短時間であるが、ポリエステルに前記の結晶性熱可塑性樹脂を微量配合させることができる。
また、本発明に係るポリエステルが主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレ−トから構成されるポリエステルである場合は、接触処理前のポリエステルとしては、このポリエステルから得られた段付成形板(2mm厚み)の昇温時の結晶化温度(Tc1)が150℃以上、好ましくは155℃以上のポリエステルを用いることが望ましい。
【0050】
本発明は、ポリエステルのチップを、結晶性熱可塑性樹脂からなる部材と流動条件下において接触処理させるポリエステルの製造方法において、該部材の表面積(cm2)と該ポリエステルチップの単位時間当たり処理量(トン/時)の比Aが下記の式を満足することを特徴とするポリエステルの製造方法である。
Figure 0003698256
【0051】
該部材の表面積(cm2)と該ポリエステルチップの単位時間当たり処理量(トン/時)の比Aは、好ましくは5〜4000、さらに好ましくは10〜3000である。該部材の表面積(cm2)と該ポリエステルチップの単位時間当たり処理量(トン/時)の比Aが3未満の場合は、ポリエステルへの該結晶性熱可塑性樹脂の配合量が少なくなり、このため得られた成形体の結晶化速度が不充分、かつその変動が非常に大きくなる。そして中空成形体の口栓部の結晶化が不充分となり、このため口栓部の収縮量が規定値範囲内におさまらないためキャッピング不良現象が発生する。また該部材の表面積(cm2)と該ポリエステルチップの単位時間当たり処理量(トン/時)の比Aが5000を超える場合は、ポリエステルへの該結晶性熱可塑性樹脂の配合量が過大となり、かつ配合量の変動が非常に大きくなる。このため得られた成形体の結晶化速度が早くなり、かつその変動が非常に大きくなる。そして中空成形体の口栓部の結晶化が過大となり、このため口栓部の収縮量が規定値範囲内におさまらないため口栓部のキャッピング不良となり内容物の漏れが生じたり、また中空成形用予備成形体が白化し、このため正常な延伸が不可能となる。
【0052】
本発明において用いられる結晶性熱可塑性樹脂としては、融点が250℃以下の結晶性熱可塑性樹脂が好ましく、代表的には、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタ−ル樹脂、ポリブチレンテレフタレ−ト樹脂からなる群から選ばれたいずれかの樹脂が挙げられる。
【0053】
本発明において用いられるポリオレフィン系樹脂としては、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン−1等の炭素数2〜8程度のα−オレフィンの単独重合体、それらのα−オレフィンと、エチレン、プロピレン、ブテン−1、3−メチルブテン−1、ペンテン−1、4−メチルペンテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、デセン−1等の炭素数2〜20程度の他のα−オレフィンや、酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン等のビニル化合物との共重合体等が挙げられ、具体的には、例えば、低・中・高密度ポリエチレン等(分岐状又は直鎖状)のエチレン単独重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン−1共重合体、エチレン−4−メチルペンテン−1共重合体、エチレン−ヘキセン−1共重合体、エチレン−オクテン−1共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体等のエチレン系樹脂、ブロピレン単独重合体、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−エチレン−ブテン−1共重合体等のプロピレン系樹脂、及び、ブテン−1単独重合体、ブテン−1−エチレン共重合体、ブテン−1−プロピレン共重合体等のブテン−1系樹脂等が挙げられる。
【0054】
また、本発明において用いられるポリアミド樹脂としては、例えば、ブチロラクタム、δ−バレロラクタム、ε−カプロラクタム、エナントラクタム、ω−ラウロラクタム等のラクタムの重合体、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸等のアミノカルボン酸の重合体、ヘキサメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、2,2,4−又は2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン、1,3−又は1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ビス(p−アミノシクロヘキシルメタン)等の脂環式ジアミン、m−又はp−キシリレンジアミン等の芳香族ジアミン等のジアミン単位と、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸等のジカルボン酸単位との重縮合体、及びこれらの共重合体等が挙げられ、具体的には、例えば、ナイロン4、ナイロン6、ナイロン7、ナイロン8、ナイロン9、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン66、ナイロン69、ナイロン610、ナイロン611、ナイロン612、ナイロン6T、ナイロン6I、ナイロンMXD6、ナイロン6/66、ナイロン6/610、ナイロン6/12、ナイロン6/6T、ナイロン6I/6T等が挙げられる。
【0055】
また、本発明において用いられるポリアセタ−ル樹脂としては、例えばポリアセタ−ル単独重合体や共重合体が挙げられる。ポリアセタ−ル単独重合体としては、ASTM−D792の測定法により測定した密度が1.40〜1.42g/cm3、ASTMD−1238の測定法により、190℃、荷重2160gで測定したメルトフロ−比(MFR)が0.5〜50g/10分の範囲のポリアセタ−ルが好ましい。
【0056】
また、ポリアセタ−ル共重合体としては、ASTM−D792の測定法により測定した密度が1.38〜1.43g/cm3、ASTMD−1238の測定法により、190℃、荷重2160gで測定したメルトフロ−比(MFR)が0.4〜50g/10分の範囲のポリアセタ−ル共重合体が好ましい。これらの共重合成分としては、エチレンオキサイドや環状エ−テルが挙げられる。
【0057】
また、本発明において用いられるポリブチレンテレフタレ−ト樹脂としては、例えばテレフタル酸と1,4−ブタンジオ−ルからなるポリブチレンテレフタレ−ト単独重合体やこれにナフタレンジカルボン酸、ジエチレングリコ−ル、1,4−シクロヘキサンジメタノ−ル等を共重合した共重合体が挙げられる。
【0058】
また、本発明において用いられる該結晶性熱可塑性樹脂のポリエステルへの配合割合は、0.1ppb〜1000ppm、好ましくは0.3ppb〜100ppm、より好ましくは0.5ppb〜1ppm、さらに好ましくは0.5ppb〜45pbbである。配合量が0.1ppb未満の場合は、結晶化速度が非常におそくなり、中空成形体の口栓部の結晶化が不十分となるため、サイクルタイムを短くすると口栓部の収縮量が規定値範囲内におさまらないためキャッピング不良となったり、また、耐熱性中空成形体を成形する延伸熱固定金型の汚れが激しく、透明な中空成形体を得ようとすると頻繁に金型掃除をしなければならない。また1000ppmを超える場合は、結晶化速度が早くなり、中空成形体の口栓部の結晶化が過大となり、このため口栓部の収縮収縮量が規定値範囲内におさまらないためキャッピング不良となり内容物の漏れが生じたり、また中空成形体用予備成形体が白化し、このため正常な延伸が不可能となる。また、シ−ト状物の場合、1000ppmを越えると透明性が非常に悪くなり、また延伸性もわるくなって正常な延伸が不可能で、厚み斑の大きな、透明性の悪い延伸フイルムしか得られない。
【0059】
前記の結晶性熱可塑性樹脂からなる部材とポリエステルを接触処理させる場合、該結晶性熱可塑性樹脂はポリエステルチップの表面に付着した状態で存在しているのが望ましいが、ポリエステルチップが該部材へ衝突する際の衝撃力や接触する際の圧着力等の大きさによって、あるいは該結晶性熱可塑性樹脂部材の耐衝撃性や耐剥離性等の性質によって、該結晶性熱可塑性樹脂部材がポリエステルチップに付着しない状態で、すなわちポリエステルチップとは独立した状態で、前記の接触処理されたポリエステルチップと混合された状態になっているものもある。このような混合状態のポリエステルから得られた成形体は、その結晶化速度が非常に早くなりすぎたり、またその速度の変動が非常に大きくなる。中空成形体用予備成形体の場合には、これの白化や透明性の斑がひどく、正常な延伸が不可能で、厚み斑が大きい、透明性の悪い中空成形体しか得られない。また通常は微細な細粒として存在するが、時には平均粒径が約0.5〜数mmの大きさの粒状体や塊状体の形態でポリエステルチップと独立した状態で前記の接触処理されたポリエステル中に混在する場合もある。このような場合には、該結晶性熱可塑性樹脂は得られた成形体中で異物となり、その結果、得られた成形体には、厚み斑、空孔、白化等の欠点が非常に多くなる。したがって、ポリエステルチップと独立して存在している該結晶性熱可塑性樹脂の細粒状体、粒状体や塊状体を成形前に除去しておくことが望ましい。
【0060】
該結晶性熱可塑性樹脂からなる部材と接触処理されたポリエステルから該結晶性熱可塑性樹脂の細粒状体、粒状体や塊状体を分離除去する方法としては下記のような方法が挙げられる。すなわち、溶融重縮合ポリエステルまたは固相重合ポリエステルを結晶性熱可塑性樹脂からなる部材と接触処理させたあと、振動篩工程及び空気流による気流分級工程等で処理する方法、あるいはイオン交換水による水洗工程で処理する方法、あるいは浮遊選別処理する方法等によって処理することによって、これらの細粒状、粒状及び塊状の結晶性熱可塑性樹脂を除去する。このような該結晶性熱可塑性樹脂の細粒状体、粒状体や塊状体を分離除去する方法は、後記のポリエステルのファインやフイルム状物を除去する方法としても有効である。
【0061】
また通常、溶融重縮合されたポリエステルはチップ化されたあと、輸送配管中を貯蔵用サイロ等へ輸送されたり、また該接触工程、固相重合工程や水処理工程などの次の工程に輸送される。また固相重合したポリエステルチップも同様に次工程や貯蔵用サイロ等へ輸送される。このようなチップの輸送を、例えば空気を使用した強制的な低密度輸送方法で行うと、ポリエステルのチップの表面には配管との衝突によって大きな衝撃力がかかり、この結果ファインやフイルム状物が多量に発生する。このようなファインやフイルム状物はポリエステルの結晶化を促進させる効果を持っており、多量に存在する場合には得られた成形体の透明性が非常に悪くなる。また、このようなファインやフイルム状物等には、正常な融点より約10〜20℃以上高い融点を持つものが含まれる。また、回転式の固相重合装置を用いて固相重合したり、あるいはポリエステルチップに衝撃力やせん断力がかかる送り装置を用いたりする場合にも、正常な融点より約10〜20℃以上高い融点のファインやフイルム状物が非常に多量に発生する。これは、チップ表面に加わる衝撃力等の大きな力のためにチップが発熱すると同時にチップ表面においてポリエステルの配向結晶化が起こり、緻密な結晶構造が生じるためではないかと推定される。
【0062】
前記のファイン等の融点は、示差走査熱量計(DSC)を用いて下記の方法で測定するが、溶融重縮合ポリエステルのチップの融点は通常1つであり、また固相重合ポリエステルの融点は、固相重合条件によって1つであったり、2つであったりする。一方、ファイン等の融点を表す融解ピ−ク温度は、1つ、あるいは複数のピ−クから構成されており、複数ピ−クの場合は最も高温側の融解ピ−ク温度に注目する。
【0063】
前記のような正常な融点より約10〜20℃以上高い融点を持つポリエステルのファインやフイルム状物をポリエステルチップと共に固相重合処理したり、また後記のようにして引き続き水処理等の処理をすると、これらの融点はこれらの処理前よりさらに高くなる。また、正常な融点より約10℃以上高くない融点を持つファインやフイルム状物でも、前記のこれらの処理によって、これらの融点は正常な融点より約10〜20℃以上高い融点を持つようになる。これは、これらの処理により、結晶構造がさらに緻密な結晶構造に変化するためであろうと推定される。
【0064】
このような正常な融点より約10〜20℃以上高い融点のファインやフイルム状物を含むポリエステルを通常の成形条件で成形する場合は、溶融成形時に結晶が完全に溶融せず、結晶核として残る。この結果、加熱時の結晶化速度が早くなるため中空成形容器の口栓部の結晶化が過大となり、このため口栓部の収縮量が規定値範囲内におさまらなくなり、口栓部のキャッピング不良となり内容物の漏れが生じるという問題が起こる。また中空成形用予備成形体が白化し、このため正常な延伸が不可能となり、厚み斑が生じ、また結晶化速度が速いため得られた中空成形体の透明性が悪くなり、また透明性の変動も大となる。
【0065】
一般にポリエステルは、製造方法にもよるが、前記のような正常な融点より約10〜20℃以上高い融点を持つファインやフイルム状物を含むファイン等を約1〜約1000ppm含有しており、しかもこのようなファイン等はポリエステルチップに均一な混合状態で存在しているのではなくて偏在している。したがって、このようなポリエステルを流動条件下にポリエチレン等の融点が結晶性熱可塑性樹脂からなる部材と接触処理を行うと、結晶化速度はさらに早くなるが、その速度が非常に変動したポリエステルしか得られず問題となる。
【0066】
したがって、本発明では、該部材との接触処理前および/または該接触処理後のポリエステルのファイン含有量、フイルム状物含有量、あるいはファイン含有量とフイルム状物含有量の合計含有量のいずれかの含有量が、300ppm以下、好ましくは100ppm以下、より好ましくは50ppm以下に低下させることによって上記の問題点をより一層解決することができる。
また、このようにファイン等含有量を低下さすことによって前記のポリエステルチップとは独立に存在する該結晶性熱可塑性樹脂の粒状体や塊状体を除去することもできる。
該部材との接触処理前および/または該接触処理後のポリエステルのファイン含有量、フイルム状物含有量、あるいはファイン含有量とフイルム状物含有量の合計含有量のいずれかの含有量が300ppmを越える場合は、得られたポリエステルからの成形体の加熱時の結晶化速度が早くなるため中空成形容器の口栓部の結晶化が過大となり、このため口栓部の収縮量が規定値範囲内におさまらなくなり、口栓部のキャッピング不良となり内容物の漏れが生じるという問題が生じる。また中空成形用予備成形体が白化し、このため正常な延伸が不可能となり、厚み斑が生じ、また結晶化速度が速いため得られた中空成形体の透明性が悪くなり、また透明性の変動も大となる。
【0067】
また、主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレ−トであるポリエステルの場合は、該部材との接触処理前および/または該接触処理後のポリエステル中に含まれるファインおよび/またはフイルム状物の融解ピ−ク温度の最も高温側のピ−ク温度が、265℃を越える場合には、得られたポリエステルの結晶化速度が早くなりすぎたり、またその変動が非常に大きくなり問題となる。
【0068】
したがって本発明は、該部材との接触処理前および/または該接触処理後のポリエステル中に含まれるファインおよび/またはフイルム状物の融解ピ−ク温度の最も高温側のピ−ク温度が、265℃以下であることによって上記の問題点をさらにより一層解決するものである。
【0069】
該部材との接触処理前および/または該接触処理後のポリエステルからファインおよび/またはフイルム状物を分離除去する方法としては下記のような方法が挙げられる。すなわち、溶融重縮合ポリエステルの場合には、ポリエステルを結晶性熱可塑性樹脂からなる部材と接触処理する直前あるいは該接触処理後において振動篩工程及び空気流による気流分級工程等で処理する方法等がある。また固相重合ポリエステルの場合には、固相重合工程の直前及び前記の結晶性熱可塑性樹脂からなる部材と接触処理する工程の直前や直後に別々に設置した振動篩工程及び空気流による気流分級工程、等で処理する方法等が挙げられる。
【0070】
また融解ピ−ク温度の最も高温側の融解ピ−ク温度が265℃を越えるファインおよび/またはフイルム状物を含まないようにする方法としては、該結晶性熱可塑性樹脂と接触処理した後に前記のようなファイン等除去工程で処理する方法が挙げれる。
【0071】
前記の製造方法によって得られたポリエステルを用いることによって透明性に優れ、結晶化速度の変動が少ない成形体を得ることができるが、前記の理由から該結晶性熱可塑性樹脂からなる部材との接触処理前のポリエステルが含有するファインやフイルム状物の含有量やそれらの性状等についても注意を払うことが必要である。
【0072】
また、該結晶性熱可塑性樹脂との接触処理前のポリエステルがこのような高温の融点を持つファイン等を含まないようにする方法の具体的な例をつぎに説明する。溶融重縮合ポリエステルの場合は、溶融重縮合後ダイスより溶融ポリエステルを水中に押出して水中でカットする方式、あるいは大気中に押出した後、直ちに冷却水で冷却しながらカットする方式によってチップ化し、ついでチップ状に形成したポリエステルチップを水切り後、振動篩工程や振動篩工程および空気流による気流分級工程によって所定のサイズ以外の形状のチップやファインやフイルム状物を除去し、プラグ輸送方式やバケット式コンベヤ−輸送方式により貯蔵用タンクに送る。該タンクからのチップの抜出はスクリュ−式フィ−ダ−により、次工程へはプラグ輸送方式やバケット式コンベヤ−輸送方式によって輸送し、該接触処理工程の直前や直後に空気流による気流分級工程によってファイン除去処理を行う。また、固相重合ポリエステルの場合には、前記のファインやフイルム状物の除去処理を行った溶融重縮合ポリエステルを再度、固相重合工程直前で空気流による気流分級工程によってファインやフイルム状物の除去を行い、固相重合工程へ投入する。溶融重縮合したプレポリマ−チップを固相重合設備へ輸送する際や固相重合後のポリエステルチップを篩分工程、該接触処理工程や貯槽等へ輸送する際には、これらの輸送の大部分はプラグ輸送方式やバケット式コンベヤ輸送方式を採用し、また結晶化装置や固相重合反応器からのチップの抜出しはスクリュ−フィ−ダ−を使用するなどして、チップと工程の機器や輸送配管等との衝撃を出来るだけ抑えることができる装置を使用する。
【0073】
また、溶融重縮合後や固相重合後のポリエステル、あるいは該結晶性熱可塑性樹脂からなる部材と接触処理後のポリエステルと接触する気体として、粒径0.3〜5μmの粒子が1000000(個/立方フィ−ト)以下の、好ましくは500000(個/立方フィ−ト)以下、さらに好ましくは100000(個/立方フィ−ト)以下の、系外より導入される気体を使用することが望ましい。気体中の粒径5μmを超える粒子は、特に限定するものではないが、好ましくは5(個/立方フィ−ト)以下、さらに好ましくは1(個/立方フィ−ト)以下である。
【0074】
ポリエステルの製造工程において、溶融重縮合工程や固相重合工程等から篩分工程や気流分級工程等の各工程を経由してサイロ、成形機のホッパ−、輸送用コンテナ−等の容器に充填されるが、これらの工程間のポリエステルの輸送や乾燥には、一般に送風機等によって処理設備近辺の空気を工程に採りいれて使用される。従来は、このような空気は、これを未処理のままで使用するか、または、JIS B 9908(1991)で規定される形式3のような低性能フィルタユニットを装着した清浄機によって処理しただけで使用するのが一般的であった。しかし、このような工程で処理されたポリエステルからは、透明性が悪い成形体しか得られないという問題が生じる場合があった。特に、該結晶性熱可塑性樹脂からなる部材との接触処理工程の前後において、ポリエステルと接触する気体として前記のような品質の空気を用いると、得られた成形体の結晶化速度や透明性等の変動が大となり問題となる可能性が大きい。
【0075】
したがって、本発明の該結晶性熱可塑性樹脂からなる部材との接触処理によるポリエステルの製造方法においては、溶融重縮合工程または固相重合工程以降の工程においてポリエステルと接触する気体として、粒径0.3〜5μmの粒子が1000000(個/立方フィ−ト)以下の系外より導入される気体を使用することが望ましい。
【0076】
なお、気体中の粒径0.3μm未満の粒子に関しては、特に規定するものではないが、透明な成形体を与える樹脂を得るためには、少ない方が好ましい。粒径0.3μm未満の粒子数としては好ましくは10000000(個/立方フィ−ト)以下、より好ましくは5000000(個/立方フィ−ト)以下、さらに好ましくは2000000(個/立方フィ−ト以下)である。
【0077】
以下に、系外から導入する気体中の粒径0.3〜5μmの粒子数を1000000(個/立方フィ−ト)以下に制御する方法を例示するが、本発明はこれに限定するものではない。
【0078】
系外から導入する気体中の粒径0.3〜5μmの粒子数を1000000(個/立方フィ−ト)以下にする方法としては、系外から導入する気体がポリエステルチップと接触するまでの工程中の少なくとも1ケ所以上に該粒子を除去する清浄化装置を設置する。該気体が処理設備近辺の空気の場合は、該空気採りいれ口から送風機によって導入した空気がポリエステルチップと接触するまでの工程中に、JIS B 9908(1991)で規定される形式1又は/及び形式2のフィルタユニットを装着した気体清浄装置を設置し、該空気中の粒径0.3〜5μmの粒子数を1000000(個/立方フィ−ト)以下にすることが好まし。また、該空気採りいれ口にJIS B 9908(1991)で規定される形式3のフィルタユニットを装着した気体清浄装置を設置して、前記のフィルタユニットを装着した気体清浄装置と併用することによって前記のフィルタユニットの寿命を延ばすことが可能である。
【0079】
気体中の粒子を除去するJIS B 9908(1991)で規定される形式1の超高性能のフィルタ(以下、HEPAフィルタと略称する)ユニットの素材としては、ガラス繊維からなる濾紙が挙げられる。
【0080】
また、JIS B 9908(1991)で規定される形式2の高性能フィルタユニットの素材としては、ポリプロピレン繊維からなるフィルタやポリテトラフルオロエチレンフイルムとPET繊維布の積層体からのフィルタ等が挙げられる。
一般には、ポリプロピレン繊維製の静電フィルタが使用される。
【0081】
また、JIS B 9908(1991)で規定される形式3の低性能フィルタユニットの素材としては、PETやポリプロピレンからなる不織布等が挙げられる。
【0082】
また、本発明において、該結晶性熱可塑性樹脂からなる部材との接触処理前のポリエステルは、290℃の温度で60分間溶融したときの環状3量体増加量が0.30重量%以下、より好ましくは0.20重量%以下、さらに好ましくは0.10重量%以下のポリエステルである。
【0083】
290℃の温度で60分間溶融した時の環状3量体の増加量が0.30重量%以下のポリエステルは、溶融重縮合後や固相重合後に得られたポリエステルの重縮合触媒を失活処理することにより製造することができる。ポリエステルの重縮合触媒を失活処理する方法としては、溶融重縮合後や固相重合後にポリエステルチップを水や水蒸気または水蒸気含有気体と接触処理する方法が挙げられる。
【0084】
前記のポリエステルチップを水や水蒸気または水蒸気含有気体と接触処理する方法を次に述べる。
熱水処理方法としては、水中に浸ける方法やシャワ−でチップ上に水をかける方法等が挙げられる。処理時間としては5分〜2日間、好ましくは10分〜1日間、さらに好ましくは30分〜10時間で、水の温度としては20〜180℃、好ましくは40〜150℃、さらに好ましくは50〜120℃である。
【0085】
以下に水処理を工業的に行う方法を例示するが、これに限定するものではない。また処理方法は連続方式、バッチ方式のいずれであっても差し支えないが、工業的に行うためには連続方式の方が好ましい。
【0086】
ポリエステルのチップをバッチ方式で水処理する場合は、サイロタイプの処理槽が挙げられる。すなわちバッチ方式でポリエステルのチップをサイロへ受け入れ水処理を行う。ポリエステルのチップを連続方式で水処理する場合は、塔型の処理槽に継続的又は間欠的にポリエステルのチップを上部より受け入れ、水処理させることができる。
【0087】
水処理方法が連続方式の場合であってもバッチ方式の場合であっても、系外から導入する水の中に存在する粒径が1〜25μmの粒子の個数をX、ナトリウムの含有量をN、マグネシウムの含有量をM、カルシウムの含有量Cを、珪素の含有量をSとした場合、下記(5)〜(9)の少なくとも一つ、好ましくはすべてを満足させて水処理を行うのが望ましい。
1 ≦ X ≦ 50000 (個/10ml) (5)
0.001 ≦ N ≦ 1.0 (ppm) (6)
0.001 ≦ M ≦ 0.5 (ppm) (7)
0.001 ≦ C ≦ 0.5 (ppm) (8)
0.01 ≦ S ≦ 2.0 (ppm) (9)
【0088】
水処理槽に導入する水中の粒子個数、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、珪素の含有量のいずれかを上記範囲に設定することにより、スケ−ルと呼ばれる酸化物や水酸化物等の金属含有物質が処理水中に浮遊、沈殿、さらには処理槽壁や配管壁に付着したりし、これがポリエステルチップに付着、浸透して、成形時での結晶化が促進され、透明性の悪いボトルになることを防ぐことができる。
【0089】
以下に水処理に用いる、粒径1〜25μmの粒子を1〜50000個/10ml含む水を得る方法を例示する。
水中の粒子数を50000個/10ml以下にする方法としては、工業用水等の自然水を処理槽に供給するまでの工程の少なくとも1ヶ所以上に粒子を除去する装置を設置する。好ましくは自然界の水の採取口から、前記した処理槽、処理槽から排水した水を再度処理槽に戻す配管、ファイン除去装置等、水処理に必要な付帯設備を含めた処理装置に至るまでの間に粒子を除去する装置を設置し、処理装置に供給する水中の、粒径1〜25μmの粒子の含有量を1〜50000個/10mlにすることが好ましい。粒子を除去する装置としてはフィルタ−濾過装置、膜濾過装置、沈殿槽、遠心分離器、泡沫同伴処理機等が挙げられる。例えばフィルタ−濾過装置であれば、方式としてベルトフィルタ−方式、バグフィルタ−方式、カ−トリッジフィルタ−方式、スクリ−ンフィルタ−方式、遠心濾過方式等の濾過装置が挙げられる。中でも連続的に行うにはベルトフィルタ−方式、遠心濾過方式、バグフィルタ−方式、スクリ−ンフィルタ−方式の濾過装置が適している。またベルトフィルタ−方式の濾過装置であれば濾材としては、紙、金属、布等が挙げられる。また粒子の除去と処理水の流れを効率良く行なうため、フィルタ−の目のサイズは5〜100μm、好ましくは10〜70μm、さらに好ましくは15〜40μmがよい。
【0090】
また系外からの水中のナトリウムやマグネシウム、カルシウム、珪素を前記の範囲に低減させるために、処理槽に工業用水が送られるまでの工程で少なくとも1ヶ所以上にナトリウムやマグネシウム、カルシウム、珪素を除去する装置を設置する。また、粒子状になった二酸化珪素やアルミノ珪酸塩等の粘土鉱物を除去するためにはフィルタ−を設置する。ナトリウムやマグネシウム、カルシウム、珪素を除去する装置としては、イオン交換装置、限外濾過装置などが挙げられる。
【0091】
水処理の方法が連続的、又はバッチ的のいずれの場合であっても、処理槽から排出した処理水のすべて、あるいは殆どを工業排水としてしまうと、新しい水が多量に入用であるばかりでなく、排水量増大による環境への影響が懸念される。即ち、処理槽から排出した少なくとも一部の処理水を、水処理槽へ戻して再利用することにより、必要な水量を低減し、また排水量増大による環境への影響を低減することが出来、さらには水処理槽へ返される排水がある程度温度を保持していれば、処理水の加熱量も小さく出来るため、処理層から排出された処理水は水処理層へ戻して再利用されることが好ましい。また、水を再利用させることで処理層中の処理水の流量を上げることができ、結果としてポリエステルチップに付着したファインを洗い流すことができるため、ファイン除去効果も生まれる。ここで、水処理槽から排出された後、再び処理槽に戻して再利用される処理水としては、水処理槽のオ−バ−フロ−口から排出された水と処理槽よりポリエステルチップと共に排出され、次いで該チップから分離された処理水がある。
【0092】
しかし、水処理において処理槽から排出される処理水には、処理槽にポリエステルチップを受け入れる段階で既にポリエステルチップに付着しているファインや、水処理時にポリエステルチップ同士あるいは処理槽壁との摩擦で発生するポリエステルのファインが含まれている。また新しい処理水中にも無機物質由来の微粒子や腐敗植物、動物に起因する有機微粒子等が含まれている。
【0093】
したがって、処理槽から排出した処理水を再度処理槽へ戻して再利用すると、処理槽内の処理水に含まれるファイン量や微粒子量は次第に増加し、処理水中に含まれているファインや微粒子が処理槽壁や配管壁に付着して、配管を詰まらせる場合があった。
【0094】
また処理水中に含まれているファインや微粒子がポリエステルチップに付着し、この後、水分を乾燥除去する段階でポリエステルチップにファインや微粒子が付着あるいは浸透するため、ポリエステルのファインや微粒子の含有量が非常に多くなり、このようにして得られたポリエステルは結晶性が促進されて、得られたボトルの透明性は悪くなり、またボトル口栓部結晶化時の結晶化度が過大となって口栓部の寸法が規格に入らなくなり、そのため口栓部のキャッピング不良、内容物の漏れが生じる場合があった。
【0095】
したがって、本発明において、水処理槽から排出された後、少なくともその一部を再度処理槽へ戻して再利用される処理水中に存在する粒径が1〜40μmの粒子を100000個/10ml以下、好ましくは80000個/10ml以下、さらに好ましくは50000個/10ml以下に維持するのが望ましい。ここでは、このようにして処理槽に戻して再利用される処理水をリサイクル水と称する。
【0096】
以下に該リサイクル水中の粒径が1〜40μmの粒子数を100000個/10ml以下にする方法を例示するが、本発明はこの限りではない。該リサイクル水中の粒径が1〜40μmの粒子数を100000個/10ml以下にする方法としては、処理槽から排出した処理水が再び処理槽に返されるまでの工程で少なくとも1ヶ所以上にファインと微粒子を除去する装置を設置する。ファインと微粒子を除去する装置としてはフィルタ−濾過装置、膜濾過装置、沈殿槽、遠心分離器、泡沫同伴処理機等が挙げられる。例えばフィルタ−濾過装置であれば、方式として自動自己洗浄方式、ベルトフィルタ−方式、バグフィルタ−方式、カ−トリッジフィルタ−方式、遠心濾過方式等の濾過装置が挙げられる。中でも連続的に行うにはベルトフィルタ−方式、遠心濾過方式、バグフィルタ−方式の濾過装置が適している。またベルトフィルタ−方式の濾過装置であれば濾材としては、紙、金属、布等が挙げられる。またファインの除去と処理水の流れを効率良く行なうため、フィルタ−の目のサイズは5〜100μm、好ましくは5〜70μm、さらに好ましくは5〜40μmがよい。
【0097】
また、系外から導入する水は、水処理槽からチップと共に排出され、次いで濾過等の処理を行ったあと再利用される処理水と一緒にして処理槽へ供給することも可能である。
【0098】
またポリエステルのチップと水蒸気または水蒸気含有ガスとを接触させて処理する場合は、50〜150℃、好ましくは50〜110℃の温度の水蒸気または水蒸気含有ガスあるいは水蒸気含有空気を好ましくは粒状ポリエチレンテレフタレ−ト1kg当り、水蒸気として0.5g以上の量で供給させるか、または存在させて粒状ポリエチレンテレフタレ−トと水蒸気とを接触させる。
この、ポリエステルのチップと水蒸気との接触は、通常10分間〜2日間、好ましくは20分間〜10時間行われる。
【0099】
以下に粒状ポリエチレンテレフタレ−トと水蒸気または水蒸気含有ガスとの接触処理を工業的に行なう方法を例示するが、これに限定されるものではない。また処理方法は連続方式、バッチ方式のいずれであっても差し支えない。
【0100】
ポリエステルのチップをバッチ方式で水蒸気と接触処理をする場合は、サイロタイプの処理装置が挙げられる。すなわちポリエステルのチップをサイロへ受け入れ、バッチ方式で、水蒸気または水蒸気含有ガスを供給し接触処理を行なう。ポリエステルのチップを連続的に水蒸気と接触処理する場合は塔型の処理装置に連続で粒状ポリエチレンテレフタレ−トを上部より受け入れ、並流あるいは向流で水蒸気を連続供給し水蒸気と接触処理させることができる。
上記の如く、水又は水蒸気で処理した場合は粒状ポリエチレンテレフタレ−トを、例えば振動篩機、シモンカ−タ−などの水切り装置で水切りし、必要に応じて次の乾燥工程へ移送する。
【0101】
水又は水蒸気と接触処理したポリエステルのチップの乾燥は通常用いられるポリエステルの乾燥処理を用いることができる。連続的に乾燥する方法としては、上部よりポリエステルのチップを供給し、下部より乾燥ガスを通気するホッパ−型の通気乾燥機が通常使用される。
【0102】
バッチ方式で乾燥する乾燥機としては大気圧下で乾燥ガスを通気しながら乾燥してもよい。
乾燥ガスとしては大気空気でも差し支えないが、ポリエステルの加水分解や熱酸化分解による分子量低下を防止する点からは乾燥窒素、除湿空気が好ましい。
【0103】
本発明の製造方法によるポリエステルは、該ポリエステルを溶融成形して得た厚さ2mmの成形体からの試験片の昇温時の結晶化温度(以下「Tc1」と称する)が150〜168℃の範囲、好ましくは155〜165℃の範囲であるのが好ましい。Tc1が168℃を越える場合は、加熱結晶化速度が非常に遅くなり結晶化の改良効果が期待できない。また、Tc1が150℃未満の場合は、中空成形体の透明性が低下し問題となる。
【0104】
本発明に用いられるポリエステルには、必要に応じて他の添加剤、例えば、公知の紫外線吸収剤、酸化防止剤、酸素吸収剤、酸素捕獲剤、外部より添加する滑剤や反応中に内部析出させた滑剤、離型剤、核剤、安定剤、帯電防止剤、顔料などの各種の添加剤を配合してもよい。
【0105】
上記の本発明の製造方法によって得られたポリエステルは、射出成形及び延伸ブロ−成形されて延伸中空成形体に、また押出成形されてシ−ト状物等に成形される。
【0106】
【実施例】
以下本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、本明細書中における主な特性値の測定法を以下に説明する。
【0107】
(1)ポリエステルの極限粘度(IV)
1,1,2,2−テトラクロルエタン/フェノ−ル(2:3重量比)混合溶媒中30℃での溶液粘度から求めた。
【0108】
(2)ポリエステルのジエチレングリコ−ル含有量(以下[DEG含有量」という)
メタノ−ルによって分解し、ガスクロマトグラフィ−によりDEG量を定量し、全グリコ−ル成分に対する割合(モル%)で表した。
【0109】
(3)ポリエステルの環状3量体の含有量(以下「CT含有量」という)
試料をヘキサフルオロイソプロパノ−ル/クロロフォルム混合液に溶解し、さらにクロロフォルムを加えて希釈する。これにメタノ−ルを加えてポリマ−を沈殿させた後、濾過する。濾液を蒸発乾固し、ジメチルフォルムアミドで定容とし、液体クロマトグラフ法よりエチレンテレフタレ−ト単位から構成される環状3量体を定量した。
【0110】
(4)ポリエステルのアセトアルデヒド含有量(以下「AA含有量」という)
試料/蒸留水=1グラム/2ccを窒素置換したガラスアンプルに入れた上部を溶封し、160℃で2時間抽出処理を行い、冷却後抽出液中のアセトアルデヒドを高感度ガスクロマトグラフィ−で測定し、濃度をppmで表示した。
【0111】
(5)ポリエステルの溶融時の環状3量体増加量(△CT量)
乾燥したポリエステルチップ3gをガラス製試験管に入れ、窒素雰囲気下で290℃のオイルバスに60分浸漬させ溶融させる。溶融時の環状3量体増加量は、次式により求める。
溶融時の環状3量体増加量(重量%)=溶融後の環状3量体含有量(重量%)−溶融前の環状3量体含有量(重量%)
【0112】
(6)ファインの含有量およびフイルム状物含有量の測定
樹脂約0.5kgを、JIS−Z8801による呼び寸法5.6mmの金網をはった篩(A)と呼び寸法1.7mmの金網をはった篩(直径20cm)(B)を2段に組合せた篩の上に乗せ、テラオカ社製揺動型篩い振トウ機SNF−7で1800rpmで1分間篩った。この操作を繰り返し、樹脂を合計20kg篩った。
前記の篩(A)上に、厚みが約0.5mm以下のフイルム状物とは別に、2個以上のチップがお互いに融着したものや正常な形状より大きなサイズに切断されたチップ状物が捕捉されている場合は、これらを除去した残りの、厚みが約0.5mm以下のフイルム状物および篩(B)の下にふるい落とされたファインは、別々にイオン交換水で洗浄し岩城硝子社製G1ガラスフィルターで濾過して集めた。これらをガラスフィルターごと乾燥器内で100℃で2時間乾燥後、冷却して秤量した。再度、イオン交換水で洗浄、乾燥の同一操作を繰り返し、恒量になったことを確認し、この重量からガラスフィルターの重量を引き、ファイン重量およびフイルム状物の重量を求めた。ファイン含有量あるいはフイルム状物含有量は、ファイン重量またはフイルム状物重量/篩いにかけた全樹脂重量、である。これらの値より合計含有量を求める。
【0113】
(7)ファインおよびフイルム状物の融点測定
セイコー電子工業(株)製の示差走査熱量計(DSC)、RDC−220を用いて測定。(5)において、
20kgのポリエステルから集めたファインを25℃で3日間減圧下に乾燥し、これから一回の測定に試料4mgを使用して昇温速度20℃/分でDSC測定を行い、融解ピーク温度の最も高温側の融解ピーク温度を求める。測定は最大10ケの試料について実施し、最も高温側の融解ピーク温度の平均値を求める。
【0114】
(8)ポリエステルチップの平均密度およびパリソン口栓部の密度
硝酸カルシュウム/水混合溶液の密度勾配管で30℃で測定した。
【0115】
(9)ヘイズ(霞度%)およびヘイズ斑
下記(13)の成形体(肉厚5mm)および(14)の中空成形体の胴部(肉厚約0.45mm)より試料を切り取り、日本電色(株)製ヘイズメ−タ−、modelNDH2000で測定。また、10回連続して成形した成形板(肉厚5mm)のヘイズを測定し、ヘイズ斑は下記により求めた。
ヘイズ斑=ヘイズの最大値/ヘイズの最小値
【0116】
(10)成形体の昇温時の結晶化温度(Tc1)
セイコ−電子工業株式会社製の示差熱分析計(DSC)、RDC−220で測定。下記(13)の成形板の2mm厚みのプレ−トの中央部からの試料10mgを使用。昇温速度20度C/分で昇温し、その途中において観察される結晶化ピ−クの頂点温度を測定し、昇温時結晶化温度(Tc1)とする。
【0117】
(11)パリソン口栓部の加熱による密度上昇
パリソン口栓部を自家製の赤外線ヒ−タ−によって60秒間熱処理し、天面から試料を採取し密度を測定した。
【0118】
(12)ボトルの厚み斑
後記する(14)の中空成形体の胴中央部からランダムに4ケ所試料(3cm×3cm)を切り取りデジタル厚み計でその厚さを測定した(同一試料内を5点づつ測定し、その平均を試料厚みとした)。厚み斑は下記により求めた。
厚み斑=厚みの最大値/厚みの最小値
【0119】
(13)段付成形板の成形
乾燥したポリエステルを名機製作所製M−150C(DM)射出成型機により、シリンダ−温度290℃において、10℃の水で冷却した段付平板金型(表面温度約22℃)を用い成形する。得られた段付成形板は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11mmの厚みの約3cm×約5cm角のプレ−トを階段状に備えたもので、1個の重量は約146gである。2mm厚みのプレ−トはTc1測定に、5mm厚みのプレ−トはヘイズ(霞度%)測定に使用する。
【0120】
(14)中空成形体の成形
ポリエステルを脱湿空気を用いた乾燥機で乾燥し、各機製作所製M−150C(DM)射出成型機により樹脂温度290℃でプリフォ−ムを成形した。このプリフォ−ムの口栓部を自家製の口栓部結晶化装置で加熱結晶化させた。次にこの予備成形体をCOPOPLAST社製のLB−01E成形機で縦方法に約2.5倍、周方向に約3.8倍の倍率に二軸延伸ブロ−し、引き続き約150℃に設定した金型内で約7秒間熱固定し、容量が2000ccの容器(胴部肉厚0.45mm)を成形した。延伸温度は100℃にコントロ−ルした。
【0121】
(15)中空成形体からの内容物の漏れ評価
前記(14)で成形した中空成形体に90℃の温湯を充填し、キャッピング機によりキャッピングをしたあと容器を倒し放置後、内容物の漏洩を調べた。また、キャッピング後の口栓部の変形状態も調べた。
【0122】
(16)チップ化工程の冷却水および水処理工程の導入水中のナトリウム含有量、カルシウム含有量、マグネシウム含有量および珪素含有量
粒子除去およびイオン交換済みの冷却水または導入水を採取し、岩城硝子社製1G1ガラスフィルタ−で濾過後、濾液を原子吸光法またはプラズマ発光分析法で測定。
【0123】
(17)水処理時導入水中およびリサイクル水中の粒子数の測定
粒子除去およびイオン交換済みの導入水、または濾過装置(5)および吸着塔(8)で処理したリサイクル水を光遮断法による粒子測定器である株式会社セイシン企業製のPAC 150を用いて測定し、粒子数を個/10mlで表示した。
【0124】
(18)ポリエステルチップと接触する気体中の粒子数の測定
気体を強制的に送るための送風機等によって送られ、気体清浄装置を通過した気体をチップと接触する前に気体本流と分岐して粒子測定器に導入して測定する。5回測定を繰返し、平均値を求め、気体1立方フィ−ト当たりの個数を計算する。
粒子測定器としては、リオン株式会社製の光散乱式粒子測定器、KC−01Bを用いた。
【0125】
(実施例1)
予め反応物を含有している第1エステル化反応器に、高純度テレフタル酸とエチルグリコ−ルとのスラリ−を連続的に供給し、撹拌下、約250℃、0.5kg/cm2Gで平均滞留時間3時間反応を行った。この反応物を第2エステル化反応器に送付し、撹拌下、約260℃、0.05kg/cm2Gで所定の反応度まで反応を行った。また、結晶性二酸化ゲルマニウムを水に加熱溶解し、これにエチレングリコ−ルを添加加熱処理した触媒溶液および燐酸のエチレングリコ−ル溶液を別々にこの第2エステル化反応器に連続的に供給した。このエステル化反応生成物を連続的に第1重縮合反応器に供給し、撹拌下、約265℃、25torrで1時間、次いで第2重縮合反応器で撹拌下、約265℃、3torrで1時間、さらに最終重縮合反応器で撹拌下、約275℃、0.5〜1torrで約1.5時間重縮合させた。得られた溶融重縮合PETの極限粘度は0.73デシリットル/グラム、環状3量体含有量は1.02重量%であった。
【0126】
溶融重縮合反応物を冷却水(ナトリウム含有量が0.01ppm、マグネシウム含有量が0.02ppm、カルシウム含有量が0.03ppm、珪素含有量が0.07ppm)で冷却しながらチップ化後、貯蔵用タンクへ輸送し、次いで振動式篩分工程および気流分級工程によってファインおよびフイルム状物を除去することにより、これらの合計含有量を約10ppm以下とし、次いで気流分級工程のあとに設置した輸送用容器充填工程に接続するSUS304製の輸送配管の一部に、直鎖状低密度ポリエチレン(MI=約0.9g/10分、密度=約0.923g/cm3)製の内径70mm、長さ700mmの円筒パイプを接続した輸送配管内を約3トン/時で輸送し接触処理を行った。ポリエステルチップの単位時間当たり処理量(トン/時)に対する円筒パイプの表面積(cm2)の比Aは、約513であった。
【0127】
接触処理後、気流分級工程でさらに処理した。処理後のPET中に含有されるファイン等含有量は約12ppm、またその融解ピ−ク温度の最も高温側のピ−ク温度は265℃以下であった。
【0128】
このPETについて成形板及び二軸延伸成形ボトルによる評価を実施した。
段付成形板(5mm厚み)のヘイズは5.3%、Tc1は163℃、中空成形体の口栓部の密度は1.371g/cm3と問題のない値であり、ボトルの透明性も1.2%、ヘイズ斑は1.05、厚み斑は1.02と良好であった。
【0129】
(実施例2)
予め反応物を含有している第1エステル化反応器に、高純度テレフタル酸とエチルグリコ−ルとのスラリ−を連続的に供給し、撹拌下、約250℃、0.5kg/cm2Gで平均滞留時間3時間反応を行った。この反応物を第2エステル化反応器に送付し、撹拌下、約260℃、0.05kg/cm2で所定の反応度まで反応を行った。また、結晶性二酸化ゲルマニウムを水に加熱溶解し、これにエチレングリコ−ルを添加加熱処理した触媒溶液および燐酸のエチレングリコ−ル溶液を別々にこの第2エステル化反応器に連続的に供給した。このエステル化反応生成物を連続的に第1重縮合反応器に供給し、撹拌下、約265℃、25torrで1時間、次いで第2重縮合反応器で撹拌下、約265℃、3torrで1時間、さらに最終重縮合反応器で撹拌下、約275℃、0.5〜1torrで1時間重縮合させた。溶融重縮合反応物を冷却水(ナトリウム含有量が0.01ppm、マグネシウム含有量が0.02ppm、カルシウム含有量が0.03ppm、珪素含有量が0.07ppm)で冷却しながらチップ化後、貯蔵用タンクへ輸送し、次いで振動式篩分工程および気流分級工程によってファインおよびフイルム状物を除去することにより、これらの合計含有量を約5ppm以下とし、次いで連続式固相重合装置へ輸送した。窒素雰囲気下、約155℃で結晶化し、さらに窒素雰囲気下で約200℃に予熱後、連続固相重合反応器に送り窒素雰囲気下で約207℃で固相重合した。
【0130】
処理槽上部の原料チップ供給口(1)、処理槽の処理水上限レベルに位置するオ−バ−フロ−排出口(2)、処理槽下部のポリエステルチップと処理水の混合物の排出口(3)、オ−バ−フロ−排出口から排出された処理水と、処理槽下部の排出口から排出されたポリエステルチップの水切り装置(4)を経由した処理水が、濾材が紙の連続式フィルタ−であるファイン濾過除去装置(5)および吸着塔(8)を経由して再び水処理槽へ送られる配管(6)、ISP社製のGAFフィルタ−バッグPE−1P2S(ポリエステルフェルト、濾過精度1μm)である水中の粒子除去装置とイオン交換装置を経由した、系外からの新しいイオン交換水をこの配管(6)の途中の導入口(9)に導入して得た水の導入口(7)を備えた内容量50m3の塔型の、図1に示す処理槽を使用してポリエチレンテレフタレ−ト(以下、PETと略称)チップを連続的に水処理した。
【0131】
前記の固相重合PETチップを振動式篩分工程および気流分級工程によって処理し、ファイン及びフイルム状物の含有量を約15ppm(ファイン等の融解ピ−ク温度の最も高温側のピ−ク温度は、248℃であった)とした後、処理水温度95℃にコントロ−ルされた処理槽の上部の供給口(1)から連続投入し、水処理時間3時間で水処理槽下部の排出口(3)からPETチップを処理水と共に連続的に抜出しながら水処理を行った。上記処理装置のイオン交換水導入口(9)の手前で採取した導入水中の粒径1〜25μmの粒子含有量は約1900個/10ml、ナトリウム含有量が0.01ppm、マグネシウム含有量が0.02ppm、カルシウム含有量が0.03ppm、珪素含有量が0.07ppmであり、また濾過装置(5)および吸着塔(8)で処理後のリサイクル水の粒径1〜40μmの粒子数は約18000個/10mlであった。
【0132】
水処理後、加熱した乾燥空気で連続的に乾燥し、引き続き振動式篩分工程および気流分級工程で処理してファイン及びフイルム状物を除去し、その合計含有量を約10ppmとした。このファイン等の融解ピ−ク温度の最も高温側のピ−ク温度は、248℃であった。
【0133】
気流分級工程のあとに設置した輸送用容器充填工程に接続するSUS304製の輸送配管の一部に、直鎖状低密度ポリエチレン(MI=約0.9g/10分、密度=約0.923g/cm3)製の内径70mm、長さ300mmの円筒パイプを接続した輸送配管内を約3トン/時で輸送し接触処理を行った。接触処理後、気流分級工程でさらに処理した。
【0134】
得られたPETの極限粘度は0.74デシリットル/グラム、DEG含有量は2.5モル%、環状3量体の含有量は0.30重量%、環状3量体増加量は0.04重量%、平均密度は1.4030g/cm3、AA含有量は2.5ppm、ファイン含有量は約10ppm、ポリエチレン含有量は約12ppbであった。
【0135】
また、固相重合したPETチップをそれ以降の工程へ送る空気および乾燥用の除湿空気として、JIS B 9908(1991)の形式3のPET不織布製フィルタユニットを装着した空気清浄機及びJIS B 9908(1991)の形式1の粒子捕集率99%以上のHEPAフィルタユニットを装着した空気清浄機で濾過した空気(粒径0.3〜5μmの粒子数は530個/立方フィ−ト)を使用した。
【0136】
このPETについて成形板及び二軸延伸成形ボトルによる評価を実施した。結果を表1に示す。
成形板のヘイズは4.1%、Tc1は165℃、口栓部の密度は1.371g/cm3と問題のない値であり、ボトルの透明性も1.1%、ヘイズ斑は1.05、厚み斑は1.02と良好であった。
また、内容物の漏れ試験でも、問題はなく、口栓部の変形もなかった。ボトルのAA含有量は14.8ppmと問題のない値であった。5000本以上の連続延伸ブロ−成形を実施したが、金型汚れは認められず、またボトルの透明性も良好であった。
【0137】
(実施例3)
実施例2で得られた固相重合後のPETを振動式篩分工程および気流分級工程で処理してファイン及びフイルム状物を除去した後、水処理を行わずに実施例2と同一の設備および方法によりポリエチレンとの接触処理およびファイン等除去処理を行った。但し、接触処理用ポリエチレン配管の長さを1m、処理時のポリエステルの単位時間当たり処理量(トン/時)を約2トン/時とした。
【0138】
結果を表1に示す。成形板のヘイズ、ボトルのヘイズやヘイズ斑、厚み斑および内容物の漏れ試験の結果は問題なかった。5000本以上の連続延伸ブロ−成形を実施したが、金型汚れは認められず、またボトルの透明性も良好であった。
【0139】
(実施例4)
実施例2で得られた固相重合後のPETを振動式篩分工程および気流分級工程で処理してファイン及びフイルム状物を除去し、次いで水処理を行わずに気流分級工程の下に設置した輸送用容器充填工程に接続するSUS304製の重力輸送配管の一部に、直鎖状低密度ポリエチレン(MI=約0.9g/10分、密度=約0.923g/cm3)製の直径約1cm、長さ約20cmの棒状体を3本取り付けた接触装置を接続した垂直配管内部を単位時間当たり処理量(トン/時)、約4トン/時で落下させて接触処理を行った。この接触処理後、気流分級工程でさらに処理した。
結果を表1に示すが、全ての結果は問題なかった。
【0140】
(比較例1)
接触処理用ポリエチレン製棒状体を直径約1cm、長さが5cmのポリエチレン製棒状体1本に、また接触時のPETの単位時間当たり処理量(トン/時)を約15トン/時に変更する以外は実施例4と同様にしてPETを製造した。このPET中に含有されるファイン等の融解ピ−ク温度の最も高温側のピ−ク温度は、250℃であった。
【0141】
得られたPET、これを成形した成形板及び二軸延伸成形ボトルの特性を表1に示す。
得られたPETの極限粘度は0.74デシリットル/グラム、DEG含有量は2.5モル%、環状3量体の含有量は0.31重量%、平均密度は1.4030g/cm3、AA含有量は2.5ppm、ファイン含有量は約10ppmであった。
成形板のヘイズおよびボトルの透明性は問題があり、口栓部の結晶化速度が遅く、また、内容物の漏れ試験では内容物の漏れが認められた。
【0142】
(比較例2)
接触処理用ポリエチレン配管の長さを3m、また処理時のPETの単位時間当たり処理量(トン/時)を約0.4トン/時とする以外は実施例3と同様にしてPETを製造した。
得られたPET、これを成形した成形板及び二軸延伸成形ボトルの特性を表1に示す。
成形板のヘイズは37.3%と非常に高く、またヘイズ斑が非常にあり問題であった。また、内容物の漏れ試験では内容物の漏れが認められた。得られたボトルの胴部ヘイズは18.3%、ヘイズ斑は1.8、厚み斑は1.5と非常に高く問題があった。
【0143】
(比較例3)
溶融重縮合後、固相重合後および接触処理後のファイン及びフイルム状物の除去工程および水処理工程を省く以外は実施例2と同様にしてPETを製造した。得られたPET、これを成形した成形板及び二軸延伸成形ボトルの特性を表1に示す。
成形板のヘイズは45.0%と非常に高く、またヘイズ斑が非常にあり問題であった。また、内容物の漏れ試験では内容物の漏れが認められた。得られたボトルの胴部ヘイズは22.0%、ヘイズ斑は4.5、厚み斑は1.5と非常に高く問題があった。
【0144】
【表1】
Figure 0003698256
【0145】
【発明の効果】
本発明の製造方法では、結晶性熱可塑性樹脂からなる部材と接触処理するさいの該部材の表面積(cm2)とポリエステルチップの単位時間当たり処理量(トン/時)の比Aを前記の範囲に維持して処理するため、透明性のよい、透明性斑および厚み斑のない、耐熱寸法安定性が優れ、口栓部の結晶化が適正である中空成形体を成形することができる。また、シ−ト成形、ボトル成形等において金型汚れが少なくなり、長時間、多数の成形体を透明性が優れた状態で容易に成形することができる。これは、PETチップへの結晶性熱可塑性樹脂の配合量が適正な範囲になり、また配合量の変動が少ないため、得られた成形体の透明性等の特性が改良されるためである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例で用いた水処理装置の概略図である。
【符号の説明】
1 原料チップ供給口
2 オ−バ−フロ−排出口
3 ポリエステルチップと処理水との排出口
4 水切り装置
5 ファイン除去装置
6 配管
7 リサイクル水または/およびイオン交換水の導入口
8 吸着塔
9 イオン交換水導入口

Claims (7)

  1. ポリエステルのチップを、結晶性熱可塑性樹脂からなる部材と流動条件下において接触処理させるポリエステルの製造方法において、該部材の表面積(cm2)と該ポリエステルチップの単位時間当たり処理量(トン/時)の比Aが下記の式を満足することを特徴とするポリエステルの製造方法。
    A=〔結晶性熱可塑性樹脂からなる部材の表面積(cm2)〕/〔ポリエステルチップの単位時間当たり処理量(トン/時)〕=3〜5000
  2. 該接触処理前および/または該接触処理後のポリエステルのファイン含有量、フイルム状物含有量、あるいはファイン含有量とフイルム状物含有量の合計含有量のいずれかの含有量が、300ppm以下であることを特徴とする請求項1に記載のポリエステルの製造方法。
  3. 該接触処理前および/または該接触処理後のポリエステル中に含まれるファインおよび/またはフイルム状物の融解ピ−ク温度の最も高温側のピ−ク温度が、265℃以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリエステルの製造方法。
  4. 該接触処理前のポリエステルの密度が、1.37g/cm3以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリエステルの製造方法。
  5. 該接触処理前のポリエステルが、これを290℃の温度で60分間溶融したときの環状3量体増加量が0.30重量%以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のポリエステルの製造方法。
  6. 該結晶性熱可塑性樹脂が、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタ−ル樹脂、ポリブチレンテレフタレ−ト樹脂からなる群から選ばれた少なくとも一種の樹脂であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のポリエステルの製造方法。
  7. ポリエステルが、極限粘度0.55〜1.30デシリットル/グラムの、主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレ−トから構成されるポリエステルであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のポリエステルの製造方法。
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