JP3697996B2 - 高率初期活性化処理で少ない充放電回数での高放電容量化並びに低温高率放電容量の向上を可能とする電池負極用水素吸蔵合金 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、電池の負極として適用した場合、電池に対する速い放電速度での初期活性化処理(以下、高率初期活性化処理と云う)で、少ない充放電回数で電池に高い放電容量を具備せしめることのできる、云いかえれば許容最大放電容量の増大を図ることのでき、かつ電池に高い低温高率放電容量を具備せしめることのできる水素吸蔵合金に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、電池負極用水素吸蔵合金として、例えば特開平10−25528号公報に記載される通り、質量%で(以下、%は質量%を示す)、
Laおよび/またはCeを主体とする希土類元素:32〜38%、
Co:0.1〜17%、 Al:0.5〜3.5%、
Mn:0.5〜10%、 水素:0.005〜0.5%、
を含有し、残りがNiと不可避不純物からなる組成、並びに、
CaCu5 型結晶構造相を有する素地に希土類元素水素化物が分散分布した組織、
をもった水素吸蔵合金が知られており、かつ、この水素吸蔵合金を電池の負極として用いた場合、これのCaCu5 型結晶構造相の素地に分散分布する希土類元素水素化物の作用で、前記電池が著しく速い水素吸収放出速度を発揮するようになることも知られている。
【0003】
また、上記の水素吸蔵合金を電池の負極として実用に供するに際しては、上記組成の水素吸蔵合金溶湯を調製し、各種鋳造法、例えば金型鋳造法や遠心鋳造法、急冷ロール鋳造法、さらにガスアトマイズ法などによって所定の形状の水素吸蔵合金素材とし、ついで、前記素材に、必要に応じて真空または不活性ガスの非酸化性雰囲気中、1173〜1323K(900〜1050℃)の範囲内の所定温度に所定時間保持の条件で均質化熱処理を施し状態で、水素雰囲気中、673〜1273K(400〜1000℃)の範囲内の所定の温度に所定時間保持後冷却の条件で水素化熱処理を施して、CaCu5 型結晶構造相の素地に希土類元素水素化物が分散分布した組織とし、この状態で、通常の機械的粉砕により所定粒度の粉末とするか、あるいは加圧水素中、283〜473K(10〜200℃)の範囲内の所定温度での水素吸収と、真空排気による水素放出からなる水素化粉砕によって粉末とする処理が施されている。
【0004】
さらに、上記の水素吸蔵合金粉末が負極として組込まれた電池には、電池固有の放電容量(許容最大放電容量)を具備せしめるために、種々の条件、例えば電池の用途が低出力装置用であれば、例えば0.25Cの遅い放電速度での初期活性化処理(低率初期活性化処理)が、また高出力装置用であれば、例えば10Cのきわめて速い放電速度での初期活性化処理(高率初期活性化処理)がそれぞれ施されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
一方、高出力が要求される各種機械装置、例えば電動工具や電動アシスト付き自転車、さらに電気自動車などの電池の需要が高まりつつあり、上記の従来水素吸蔵合金を負極として用いた電池のこれら高出力装置への適用も検討されているが、このような高出力装置用電池の場合、上記の通り高率初期活性化処理が不可欠となるが、この高率初期活性化処理で電池の許容最大放電容量に所望の増大(高放電容量化)は図れず、さらに前記許容最大放電容量を具備せしめるに至るまでに数多くの充放電回数、例えば30〜50回の充放電を必要とするなどのことから、実用化が困難であるのが現状である。
【0006】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者等は、上述のような観点から、高率初期活性化処理で、少ない充放電回数で許容最大放電容量の向上が可能な電池を開発すべく、特に電池の負極として用いられている上記の従来水素吸蔵合金に着目し、研究を行なった結果、
上記の従来水素吸蔵合金に施されている希土類元素水素化物形成のための水素化熱処理において、その昇温過程の室温から473〜673K(200〜400℃)の範囲内の所定温度への加熱を、真空または不活性ガス雰囲気で行うと、これに続く水素雰囲気中、673〜1273K(400〜1000℃)の範囲内の所定の温度に所定時間保持後冷却の条件での水素化熱処理、すなわち希土類元素水素化物の形成が、CaCu5 型結晶構造相の素地にCe2 Ni7 型結晶構造相が分散分布した組織の状態で開始されるようになり、この結果水素化熱処理後の合金は、例えば図1に実施例の本発明合金2の走査型電子顕微鏡による組織(倍率:15000倍)が模写図で示される通り、X線回折および走査型電子顕微鏡による組織観察で、連続相と分散相からなり、前記連続相がCaCu5 型結晶構造相で構成され、前記分散相が、Ce2 Ni7 型結晶構造相と、前記Ce2 Ni7 型結晶構造相の水素化熱処理反応生成物である希土類元素水素化物およびCaCu5 型結晶構造相の3相で構成され、かつ前記分散相のCaCu5 型結晶構造相が、同じく分散相の前記Ce2 Ni7 型結晶構造相と希土類元素水素化物の間に介在した組織をもつようになり、この組織の合金を電池の負極として適用した場合、いずれも前記合金の分散相を構成するCe2 Ni7 型結晶構造相およびCaCu5 型結晶構造相の作用によって、電池の高率初期活性化処理で、許容最大放電容量が著しく向上する、すなわち高い許容最大放電容量をもつようになるばかりでなく、この増大した高い許容最大放電容量に少ない充放電回数で到達し、さらに電池は高い低温高率放電容量をもつようになり、しかも同じく分散相を構成する希土類元素水素化物によって従来水素吸蔵合金におけると同様に速い速度での水素吸収および水素放出も行われるようになるという研究結果を得たのである。
【0007】
この発明は、上記の研究結果に基づいてなされたものであって、
Laおよび/またはCeを主体とする希土類元素:32〜38%、
Co:0.1〜17%、 Al:0.1〜3.5%、
Mn:0.5〜10%、 水素:0.005〜0.2%、
を含有し、残りがNiと不可避不純物からなる全体組成、並びに、
X線回折および走査型電子顕微鏡による組織観察で、連続相と分散相からなり、前記連続相がCaCu5 型結晶構造相で構成され、前記分散相が、Ce2 Ni7 型結晶構造相と、前記Ce2 Ni7 型結晶構造相の水素化熱処理反応生成物である希土類元素水素化物およびCaCu5 型結晶構造相の3相で構成され、かつ前記分散相のCaCu5 型結晶構造相が、同じく分散相の前記Ce2 Ni7 型結晶構造相と希土類元素水素化物の間に介在した組織、
を有する、高率初期活性化処理で少ない充放電回数での高放電容量化並びに低温高率放電容量の向上を可能ならしめる電池負極用水素吸蔵合金に特徴を有するものである。
【0008】
つぎに、この発明の水素吸蔵合金において、これの組成を上記の通りに限定した理由を説明する。
(a) Laおよび/またはCeを主体とする希土類元素
これらの希土類元素は、Niと共に水素吸蔵作用を有するCaCu5 型結晶構造相の連続相を形成すると共に、水素吸収放出速度の促進に寄与する希土類元素水素化物、並びに電池の高率初期活性化処理で少ない充放電回数での高放電容量化および低温高率放電容量の向上に寄与するCe2 Ni7 型結晶構造相を形成するが、その含有量が32%未満でも、またその含有量が38%を越えても許容最大放電容量が低下するようになることから、その含有量を32〜38%、望ましくは33〜35%と定めた。
【0009】
(b) Co
Co成分には、素地に固溶して、水素の吸収放出時の体積の膨張収縮を抑制し、もって合金の微粉化を防止し、使用寿命の延命化に寄与する作用があるが、その含有量が0.1%未満では、前記作用に所望の効果が得られず、一方その含有量が17%を越えると、高率初期活性化処理での許容最大放電容量に至るまでの充放電回数に増加傾向が現れるようになることから、その含有量を0.1〜17%、望ましくは6〜12%と定めた。
【0010】
(c) Al
Al成分には、素地に固溶して、これの耐食性を向上させる作用があるが、その含有量が0.1%未満では所望の耐食性向上効果が得られず、一方その含有量が3.5%を越えると許容最大放電容量および低温高率放電容量が低下するようになることから、その含有量を0.1〜3.5%、望ましくは1〜2%と定めた。
【0011】
(d) Mn
Mn成分には、素地に固溶して、これの平衡水素解離圧を低下させ、もって許容最大放電容量の上昇に寄与する作用があるが、その含有量が0.5%未満では許容最大放電容量の向上に所望の効果が得られず、一方その含有量が10%を越えると、許容最大放電容量に低下傾向が現れるようになることから、その含有量を0.5〜10%、望ましくは3〜8%と定めた。
【0012】
(e) 水素
水素は、高温での水素化熱処理で優先的に希土類元素と結合して、水素吸収放出速度の向上に寄与する希土類元素水素化物を形成するが、その含有量が0.005%未満では、前記希土類元素水素化物の形成割合が不充分で、これのもつ作用効果を十分に発揮することができず、一方その含有量が0.2%を越えると、前記希土類元素水素化物の割合が多くなり過ぎ、この結果相対的にCaCu5 型結晶構造相の割合が低くなり過ぎてしまい、許容最大放電容量に急激な低下傾向が現れるようになることから、その含有量を0.005〜0.2%、望ましくは0.01〜0.15%と定めた。
【0013】
【発明の実施の形態】
つぎに、この発明の水素吸蔵合金を実施例により具体的に説明する。
通常の高周波誘導溶解炉にて、原料としてそれぞれ99.9%以上の純度をもったNi、La、Ce、Co、Al、およびMn、さらにミッシュメタルを用い、真空中で溶解して、それぞれ表1〜3に示される組成をもった合金溶湯を調製し、これらの合金溶湯を、以下に示す処理手段、すなわち、
(A)合金溶湯を水冷銅鋳型に鋳造してインゴットとし、このインゴットに、真空中、1123〜1323K(850〜1050℃)の範囲内の所定温度に10時間保持の条件で均質化熱処理を施す鋳型鋳造−均質化熱処理法(以下、A法と云う)、
(B)合金溶湯を水冷銅鋳型に鋳造してインゴットとする鋳型鋳造法(以下、B法と云う)、
(C)周速:25m/秒の速さで回転している直径:50cmの銅製水冷ロールの表面に、合金溶湯を20cmの高さから1mmの溶湯径で流下させて薄板(箔)にする急冷ロール法(以下、C法と云う)、
(D)周速:15m/秒の速さで回転している内径:100cm×長さ:200cmの銅製水冷ドラムの内面に、合金溶湯を20cmの高さから流量:120kg/秒の速度で鋳造して円筒材とする遠心鋳造法(以下、D法と云う)、
(E)直径:3mmの出湯口から流下する溶湯に、ガス圧:2.45MPa(25kg/cm2)、ガス流量:12Nm3 /分の条件でArガスを吹き付けて粉末とするガスアトマイズ法(以下、E法と云う)、
以上A法〜E法のうちのいずれかの溶湯処理手段を、表1〜4に示される組み合わせで適用して、所定形状の水素吸蔵合金素材とし、ついで、上記A法〜E法の溶湯処理手段のうちのA法〜D法で得られた前記素材については、これを熱処理炉に装入し、まず、水素化熱処理を施すに際して、室温から393〜673K(120〜400℃)の範囲内の所定温度迄の昇温を0.13Pa(10-3Torr)の真空中で行って、合金がCaCu5 型結晶構造相の素地にCe2 Ni7 型結晶構造相が分散分布した組織をもつものとし、引続いて前記真空雰囲気を0.11〜1.01MPa(1.1〜10気圧)の範囲内の所定の圧力の水素雰囲気に変え、この水素雰囲気で昇温を続行して673〜1273K(400〜1000℃)の範囲内の所定温度に加熱し、この温度に1時間保持してから573K(300℃)以下の温度に冷却の条件で水素化熱処理を施し、さらに前記の冷却過程における283〜473K(10〜200℃)の範囲内の所定温度での水素吸収と、これに続く真空排気による水素放出からなる水素化粉砕を行うことにより、いずれも75μm(200mesh)以下の粒度をもった粉末とし、また、上記E法で得られた上記素材については、前記の水素化粉砕を行わない以外は同一の条件で水素化熱処理を行い、ただしこの場合篩分による75μm(200mesh)以下の粒度調整は行うことにより本発明水素吸蔵合金(以下、本発明合金という)1〜32をそれぞれ製造した。
【0014】
また、比較の目的で、合金溶湯の組成を表4に示される通りとし、かつ上記A法〜E法のうちのいずれかの溶湯処理手段を、同じく表4に示される組み合わせで適用して、所定形状の水素吸蔵合金素材とし、この素材に対する水素化熱処理を、0.11〜1.01MPa(1.1〜10気圧)の範囲内の所定の圧力の水素雰囲気中で、673〜1273K(400〜1000℃)の範囲内の所定温度に加熱昇温し、この加熱昇温温度に1時間保持してから573K(300℃)以下の温度に冷却の条件で行う以外は同一の条件で従来水素吸蔵合金(以下、従来合金という)1〜10をそれぞれ製造した。
【0015】
この結果得られた本発明合金1〜32および従来合金1〜10について、X線回折および走査型電子顕微鏡を用いて組織観察(観察用試料は集束イオンビーム法にて作成)したところ、本発明合金1〜32は、いずれも図1に本発明合金2の組織が模写図で示される通り、連続相と分散相からなり、前記連続相がCaCu5 型結晶構造相で構成され、前記分散相が、Ce2 Ni7 型結晶構造相と、前記Ce2 Ni7 型結晶構造相の水素化処理反応生成物である希土類元素水素化物およびCaCu5 型結晶構造相の3相で構成され、かつ前記分散相のCaCu5 型結晶構造相が、同じく分散相の前記Ce2 Ni7 型結晶構造相と希土類元素水素化物の間に介在した組織を示し、また従来合金1〜10は、いずれもCaCu5 型結晶構造相の素地に、希土類元素水素化物が分散分布した組織を示した。
【0016】
つぎに、上記の本発明合金1〜32および従来合金1〜10について、これを電池の負極として組込んだ場合の電池特性を調査した。
まず、上記本発明合金1〜32および従来合金1〜10のそれぞれに、導電剤として酸化第一銅(Cu2 O)、結着剤としてポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、および増粘剤としてカルボキシルメチルセルロース(CMC)を加えてペースト状とした後、95%の気孔率を有する市販の多孔質Ni焼結板に充填し、乾燥し、加圧して、平面寸法:30mm×40mm、厚さ:0.40〜0.43mmの形状(前記活物質粉末充填量:約1.8g)とし、これの一辺にリードとなるNi薄板を溶接により取り付けて負極を形成し、一方正極は、活物質としてNi(OH)2 を用い、これに導電剤として一酸化コバルト(CoO)、結着剤としてポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、および増粘剤としてカルボキシルメチルセルロース(CMC)を加えてペースト状とし、これを上記多孔質Ni焼結板に充填し、乾燥し、加圧して、平面寸法:30mm×40mm、厚さ:0.71〜0.73mmの形状とし、同じくこれの一辺にNi薄板を取り付けることにより形成し、ついで、上記負極の両側に、それぞれポリプロピレンポリエチレン共重合体のセパレータ板を介して上記正極を配置し、さらに前記正極のそれぞれの外面から活物質の脱落を防止する目的で塩化ビニール製の保護板で挟んで一体化し、これを塩化ビニール製のセルに装入し、前記セルに電解液として前記セルを除いた全質量に占める割合で28%のKOH水溶液を装入することにより電池を製造した。
【0017】
ついで、上記の電池に、充電速度:0.25C、充電電気量:負極容量の135%、放電速度:10C(前記充電速度の40倍に相当する速い放電速度)、放電終止電圧:−650mVVSHg/HgOの条件での充放電、すなわち高率初期活性化処理を行ない、前記充電と放電を充放電1回と数え、この充放電を繰り返し5回、10回、および15回行った時点での放電容量を測定すると共に、前記放電容量に変化が現れなくなるまで行い、この限界放電容量を許容最大放電容量とした。この測定結果を表5、6に示した。
【0018】
さらに、上記本発明合金1〜32および従来合金1〜10のそれぞれに、導電剤としてカルボニルニッケル、結着剤としてポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、および増粘剤としてカルボキシルメチルセルロース(CMC)を加えてペースト状とした後、95%の気孔率を有する市販の多孔質Ni焼結板に充填し、乾燥し、加圧して、平面寸法:320mm×31mm、厚さ:0.40〜0.43mmの形状(前記活物質粉末充填量:約10g)とし、これの一辺にリードとなるNi薄板を溶接により取り付けて負極を形成し、一方正極は、活物質としてNi(OH)2 を用い、これに導電剤として一酸化コバルト(CoO)、結着剤としてポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、および増粘剤としてカルボキシルメチルセルロース(CMC)を加えてペースト状とし、これを上記多孔質Ni焼結板に充填し、乾燥し、加圧して、平面寸法:295mm×31mm、厚さ:0.50〜0.53mmの形状とし、同じくこれの一辺にNi薄板を取り付けることにより形成し、ついで、上記負極と正極をポリプロピレンポリエチレン共重合体のセパレータ板を介して重ね合わせ、これを渦巻き状に捲回して直径:約20.5mmとし、これを内径:21mmのNi製円筒容器に収容し、前記渦巻体との合量に占める割合で28%の水酸化カリウム水溶液を注入し、封止することにより定格容量:2700mAhの密閉型円筒電池を製造した。
【0019】
上記の本発明合金1〜32および従来合金1〜10がそれぞれ負極として組み込まれた密閉型円筒電池について、まず、これに以下の条件で初期活性化処理、すなわち室温:20℃の恒温室にて、充電速度:0.25C、充電時間:4.8時間、放電速度:0.25C、放電終止電圧:0.9Vの条件での充放電を行ない、前記充電と放電を充放電1回と数え、この充放電を繰り返し5回行なう初期活性化処理を施した後、同じく室温:20℃の恒温室にて、充電速度:0.25C、充電時間:4.8時間の条件で充電を施した状態で、これを室温:−15℃の恒温室内に5時間放置し、前記電池自体が−15℃で安定した状態にあることを確認してから、この室温が−15℃に保持された恒温室内で、急速放電条件である2Cの放電速度で放電終止電圧が0.9Vになるまで放電を行ない、放電容量(以下、低温高率放電容量と云う)を測定した。この測定結果も同じく表5、6に示した。
【0020】
【表1】
【0021】
【表2】
【0022】
【表3】
【0023】
【表4】
【0024】
【表5】
【0025】
【表6】
【0026】
【発明の効果】
表1〜6に示される結果から、本発明合金1〜32を電池の負極として用いた場合、いずれも合金の分散相を形成するCe2 Ni7 型結晶構造相およびCaCu5 型結晶構造相の作用で、前記電池の高率初期活性化処理での許容最大放電容量の増加、すなわち高放電容量化は著しく、かつ相対的に数少ない充放電回数で前記許容最大放電容量を具備するようになるばかりでなく、低温(―15℃)でも高い高率放電容量を示すのに対して、従来合金1〜10のそれでは、いずれも電池の許容最大放電容量は相対的に低く、かつ前記許容最大放電容量をもつようになるのに多数の充放電を必要とすると共に、低温では相対的に低い高率放電容量しか示さないことが明らかである。
上述のように、この発明の水素吸蔵合金は、特に電池の負極として適用した場合、高率初期活性化処理で、高い許容最大放電容量を確保することができ、さらに低温でも高い高率放電容量を示すので、電池の高出力が要求される各種機械装置、例えば電動工具や電動アシスト付き自転車、さらに電気自動車などの電池としての適用を可能とするばかりでなく、低温での実用でも十分な電池性能を発揮することができ、同じく高率初期活性化処理が数少ない充放電回数で完了するので、電池の長寿命化および低コスト化にも寄与するなど工業上有用な特性を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】走査型電子顕微鏡を用いて組織観察(倍率:15000倍)した本発明合金2の模写図である。
【発明の属する技術分野】
この発明は、電池の負極として適用した場合、電池に対する速い放電速度での初期活性化処理(以下、高率初期活性化処理と云う)で、少ない充放電回数で電池に高い放電容量を具備せしめることのできる、云いかえれば許容最大放電容量の増大を図ることのでき、かつ電池に高い低温高率放電容量を具備せしめることのできる水素吸蔵合金に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、電池負極用水素吸蔵合金として、例えば特開平10−25528号公報に記載される通り、質量%で(以下、%は質量%を示す)、
Laおよび/またはCeを主体とする希土類元素:32〜38%、
Co:0.1〜17%、 Al:0.5〜3.5%、
Mn:0.5〜10%、 水素:0.005〜0.5%、
を含有し、残りがNiと不可避不純物からなる組成、並びに、
CaCu5 型結晶構造相を有する素地に希土類元素水素化物が分散分布した組織、
をもった水素吸蔵合金が知られており、かつ、この水素吸蔵合金を電池の負極として用いた場合、これのCaCu5 型結晶構造相の素地に分散分布する希土類元素水素化物の作用で、前記電池が著しく速い水素吸収放出速度を発揮するようになることも知られている。
【0003】
また、上記の水素吸蔵合金を電池の負極として実用に供するに際しては、上記組成の水素吸蔵合金溶湯を調製し、各種鋳造法、例えば金型鋳造法や遠心鋳造法、急冷ロール鋳造法、さらにガスアトマイズ法などによって所定の形状の水素吸蔵合金素材とし、ついで、前記素材に、必要に応じて真空または不活性ガスの非酸化性雰囲気中、1173〜1323K(900〜1050℃)の範囲内の所定温度に所定時間保持の条件で均質化熱処理を施し状態で、水素雰囲気中、673〜1273K(400〜1000℃)の範囲内の所定の温度に所定時間保持後冷却の条件で水素化熱処理を施して、CaCu5 型結晶構造相の素地に希土類元素水素化物が分散分布した組織とし、この状態で、通常の機械的粉砕により所定粒度の粉末とするか、あるいは加圧水素中、283〜473K(10〜200℃)の範囲内の所定温度での水素吸収と、真空排気による水素放出からなる水素化粉砕によって粉末とする処理が施されている。
【0004】
さらに、上記の水素吸蔵合金粉末が負極として組込まれた電池には、電池固有の放電容量(許容最大放電容量)を具備せしめるために、種々の条件、例えば電池の用途が低出力装置用であれば、例えば0.25Cの遅い放電速度での初期活性化処理(低率初期活性化処理)が、また高出力装置用であれば、例えば10Cのきわめて速い放電速度での初期活性化処理(高率初期活性化処理)がそれぞれ施されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
一方、高出力が要求される各種機械装置、例えば電動工具や電動アシスト付き自転車、さらに電気自動車などの電池の需要が高まりつつあり、上記の従来水素吸蔵合金を負極として用いた電池のこれら高出力装置への適用も検討されているが、このような高出力装置用電池の場合、上記の通り高率初期活性化処理が不可欠となるが、この高率初期活性化処理で電池の許容最大放電容量に所望の増大(高放電容量化)は図れず、さらに前記許容最大放電容量を具備せしめるに至るまでに数多くの充放電回数、例えば30〜50回の充放電を必要とするなどのことから、実用化が困難であるのが現状である。
【0006】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者等は、上述のような観点から、高率初期活性化処理で、少ない充放電回数で許容最大放電容量の向上が可能な電池を開発すべく、特に電池の負極として用いられている上記の従来水素吸蔵合金に着目し、研究を行なった結果、
上記の従来水素吸蔵合金に施されている希土類元素水素化物形成のための水素化熱処理において、その昇温過程の室温から473〜673K(200〜400℃)の範囲内の所定温度への加熱を、真空または不活性ガス雰囲気で行うと、これに続く水素雰囲気中、673〜1273K(400〜1000℃)の範囲内の所定の温度に所定時間保持後冷却の条件での水素化熱処理、すなわち希土類元素水素化物の形成が、CaCu5 型結晶構造相の素地にCe2 Ni7 型結晶構造相が分散分布した組織の状態で開始されるようになり、この結果水素化熱処理後の合金は、例えば図1に実施例の本発明合金2の走査型電子顕微鏡による組織(倍率:15000倍)が模写図で示される通り、X線回折および走査型電子顕微鏡による組織観察で、連続相と分散相からなり、前記連続相がCaCu5 型結晶構造相で構成され、前記分散相が、Ce2 Ni7 型結晶構造相と、前記Ce2 Ni7 型結晶構造相の水素化熱処理反応生成物である希土類元素水素化物およびCaCu5 型結晶構造相の3相で構成され、かつ前記分散相のCaCu5 型結晶構造相が、同じく分散相の前記Ce2 Ni7 型結晶構造相と希土類元素水素化物の間に介在した組織をもつようになり、この組織の合金を電池の負極として適用した場合、いずれも前記合金の分散相を構成するCe2 Ni7 型結晶構造相およびCaCu5 型結晶構造相の作用によって、電池の高率初期活性化処理で、許容最大放電容量が著しく向上する、すなわち高い許容最大放電容量をもつようになるばかりでなく、この増大した高い許容最大放電容量に少ない充放電回数で到達し、さらに電池は高い低温高率放電容量をもつようになり、しかも同じく分散相を構成する希土類元素水素化物によって従来水素吸蔵合金におけると同様に速い速度での水素吸収および水素放出も行われるようになるという研究結果を得たのである。
【0007】
この発明は、上記の研究結果に基づいてなされたものであって、
Laおよび/またはCeを主体とする希土類元素:32〜38%、
Co:0.1〜17%、 Al:0.1〜3.5%、
Mn:0.5〜10%、 水素:0.005〜0.2%、
を含有し、残りがNiと不可避不純物からなる全体組成、並びに、
X線回折および走査型電子顕微鏡による組織観察で、連続相と分散相からなり、前記連続相がCaCu5 型結晶構造相で構成され、前記分散相が、Ce2 Ni7 型結晶構造相と、前記Ce2 Ni7 型結晶構造相の水素化熱処理反応生成物である希土類元素水素化物およびCaCu5 型結晶構造相の3相で構成され、かつ前記分散相のCaCu5 型結晶構造相が、同じく分散相の前記Ce2 Ni7 型結晶構造相と希土類元素水素化物の間に介在した組織、
を有する、高率初期活性化処理で少ない充放電回数での高放電容量化並びに低温高率放電容量の向上を可能ならしめる電池負極用水素吸蔵合金に特徴を有するものである。
【0008】
つぎに、この発明の水素吸蔵合金において、これの組成を上記の通りに限定した理由を説明する。
(a) Laおよび/またはCeを主体とする希土類元素
これらの希土類元素は、Niと共に水素吸蔵作用を有するCaCu5 型結晶構造相の連続相を形成すると共に、水素吸収放出速度の促進に寄与する希土類元素水素化物、並びに電池の高率初期活性化処理で少ない充放電回数での高放電容量化および低温高率放電容量の向上に寄与するCe2 Ni7 型結晶構造相を形成するが、その含有量が32%未満でも、またその含有量が38%を越えても許容最大放電容量が低下するようになることから、その含有量を32〜38%、望ましくは33〜35%と定めた。
【0009】
(b) Co
Co成分には、素地に固溶して、水素の吸収放出時の体積の膨張収縮を抑制し、もって合金の微粉化を防止し、使用寿命の延命化に寄与する作用があるが、その含有量が0.1%未満では、前記作用に所望の効果が得られず、一方その含有量が17%を越えると、高率初期活性化処理での許容最大放電容量に至るまでの充放電回数に増加傾向が現れるようになることから、その含有量を0.1〜17%、望ましくは6〜12%と定めた。
【0010】
(c) Al
Al成分には、素地に固溶して、これの耐食性を向上させる作用があるが、その含有量が0.1%未満では所望の耐食性向上効果が得られず、一方その含有量が3.5%を越えると許容最大放電容量および低温高率放電容量が低下するようになることから、その含有量を0.1〜3.5%、望ましくは1〜2%と定めた。
【0011】
(d) Mn
Mn成分には、素地に固溶して、これの平衡水素解離圧を低下させ、もって許容最大放電容量の上昇に寄与する作用があるが、その含有量が0.5%未満では許容最大放電容量の向上に所望の効果が得られず、一方その含有量が10%を越えると、許容最大放電容量に低下傾向が現れるようになることから、その含有量を0.5〜10%、望ましくは3〜8%と定めた。
【0012】
(e) 水素
水素は、高温での水素化熱処理で優先的に希土類元素と結合して、水素吸収放出速度の向上に寄与する希土類元素水素化物を形成するが、その含有量が0.005%未満では、前記希土類元素水素化物の形成割合が不充分で、これのもつ作用効果を十分に発揮することができず、一方その含有量が0.2%を越えると、前記希土類元素水素化物の割合が多くなり過ぎ、この結果相対的にCaCu5 型結晶構造相の割合が低くなり過ぎてしまい、許容最大放電容量に急激な低下傾向が現れるようになることから、その含有量を0.005〜0.2%、望ましくは0.01〜0.15%と定めた。
【0013】
【発明の実施の形態】
つぎに、この発明の水素吸蔵合金を実施例により具体的に説明する。
通常の高周波誘導溶解炉にて、原料としてそれぞれ99.9%以上の純度をもったNi、La、Ce、Co、Al、およびMn、さらにミッシュメタルを用い、真空中で溶解して、それぞれ表1〜3に示される組成をもった合金溶湯を調製し、これらの合金溶湯を、以下に示す処理手段、すなわち、
(A)合金溶湯を水冷銅鋳型に鋳造してインゴットとし、このインゴットに、真空中、1123〜1323K(850〜1050℃)の範囲内の所定温度に10時間保持の条件で均質化熱処理を施す鋳型鋳造−均質化熱処理法(以下、A法と云う)、
(B)合金溶湯を水冷銅鋳型に鋳造してインゴットとする鋳型鋳造法(以下、B法と云う)、
(C)周速:25m/秒の速さで回転している直径:50cmの銅製水冷ロールの表面に、合金溶湯を20cmの高さから1mmの溶湯径で流下させて薄板(箔)にする急冷ロール法(以下、C法と云う)、
(D)周速:15m/秒の速さで回転している内径:100cm×長さ:200cmの銅製水冷ドラムの内面に、合金溶湯を20cmの高さから流量:120kg/秒の速度で鋳造して円筒材とする遠心鋳造法(以下、D法と云う)、
(E)直径:3mmの出湯口から流下する溶湯に、ガス圧:2.45MPa(25kg/cm2)、ガス流量:12Nm3 /分の条件でArガスを吹き付けて粉末とするガスアトマイズ法(以下、E法と云う)、
以上A法〜E法のうちのいずれかの溶湯処理手段を、表1〜4に示される組み合わせで適用して、所定形状の水素吸蔵合金素材とし、ついで、上記A法〜E法の溶湯処理手段のうちのA法〜D法で得られた前記素材については、これを熱処理炉に装入し、まず、水素化熱処理を施すに際して、室温から393〜673K(120〜400℃)の範囲内の所定温度迄の昇温を0.13Pa(10-3Torr)の真空中で行って、合金がCaCu5 型結晶構造相の素地にCe2 Ni7 型結晶構造相が分散分布した組織をもつものとし、引続いて前記真空雰囲気を0.11〜1.01MPa(1.1〜10気圧)の範囲内の所定の圧力の水素雰囲気に変え、この水素雰囲気で昇温を続行して673〜1273K(400〜1000℃)の範囲内の所定温度に加熱し、この温度に1時間保持してから573K(300℃)以下の温度に冷却の条件で水素化熱処理を施し、さらに前記の冷却過程における283〜473K(10〜200℃)の範囲内の所定温度での水素吸収と、これに続く真空排気による水素放出からなる水素化粉砕を行うことにより、いずれも75μm(200mesh)以下の粒度をもった粉末とし、また、上記E法で得られた上記素材については、前記の水素化粉砕を行わない以外は同一の条件で水素化熱処理を行い、ただしこの場合篩分による75μm(200mesh)以下の粒度調整は行うことにより本発明水素吸蔵合金(以下、本発明合金という)1〜32をそれぞれ製造した。
【0014】
また、比較の目的で、合金溶湯の組成を表4に示される通りとし、かつ上記A法〜E法のうちのいずれかの溶湯処理手段を、同じく表4に示される組み合わせで適用して、所定形状の水素吸蔵合金素材とし、この素材に対する水素化熱処理を、0.11〜1.01MPa(1.1〜10気圧)の範囲内の所定の圧力の水素雰囲気中で、673〜1273K(400〜1000℃)の範囲内の所定温度に加熱昇温し、この加熱昇温温度に1時間保持してから573K(300℃)以下の温度に冷却の条件で行う以外は同一の条件で従来水素吸蔵合金(以下、従来合金という)1〜10をそれぞれ製造した。
【0015】
この結果得られた本発明合金1〜32および従来合金1〜10について、X線回折および走査型電子顕微鏡を用いて組織観察(観察用試料は集束イオンビーム法にて作成)したところ、本発明合金1〜32は、いずれも図1に本発明合金2の組織が模写図で示される通り、連続相と分散相からなり、前記連続相がCaCu5 型結晶構造相で構成され、前記分散相が、Ce2 Ni7 型結晶構造相と、前記Ce2 Ni7 型結晶構造相の水素化処理反応生成物である希土類元素水素化物およびCaCu5 型結晶構造相の3相で構成され、かつ前記分散相のCaCu5 型結晶構造相が、同じく分散相の前記Ce2 Ni7 型結晶構造相と希土類元素水素化物の間に介在した組織を示し、また従来合金1〜10は、いずれもCaCu5 型結晶構造相の素地に、希土類元素水素化物が分散分布した組織を示した。
【0016】
つぎに、上記の本発明合金1〜32および従来合金1〜10について、これを電池の負極として組込んだ場合の電池特性を調査した。
まず、上記本発明合金1〜32および従来合金1〜10のそれぞれに、導電剤として酸化第一銅(Cu2 O)、結着剤としてポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、および増粘剤としてカルボキシルメチルセルロース(CMC)を加えてペースト状とした後、95%の気孔率を有する市販の多孔質Ni焼結板に充填し、乾燥し、加圧して、平面寸法:30mm×40mm、厚さ:0.40〜0.43mmの形状(前記活物質粉末充填量:約1.8g)とし、これの一辺にリードとなるNi薄板を溶接により取り付けて負極を形成し、一方正極は、活物質としてNi(OH)2 を用い、これに導電剤として一酸化コバルト(CoO)、結着剤としてポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、および増粘剤としてカルボキシルメチルセルロース(CMC)を加えてペースト状とし、これを上記多孔質Ni焼結板に充填し、乾燥し、加圧して、平面寸法:30mm×40mm、厚さ:0.71〜0.73mmの形状とし、同じくこれの一辺にNi薄板を取り付けることにより形成し、ついで、上記負極の両側に、それぞれポリプロピレンポリエチレン共重合体のセパレータ板を介して上記正極を配置し、さらに前記正極のそれぞれの外面から活物質の脱落を防止する目的で塩化ビニール製の保護板で挟んで一体化し、これを塩化ビニール製のセルに装入し、前記セルに電解液として前記セルを除いた全質量に占める割合で28%のKOH水溶液を装入することにより電池を製造した。
【0017】
ついで、上記の電池に、充電速度:0.25C、充電電気量:負極容量の135%、放電速度:10C(前記充電速度の40倍に相当する速い放電速度)、放電終止電圧:−650mVVSHg/HgOの条件での充放電、すなわち高率初期活性化処理を行ない、前記充電と放電を充放電1回と数え、この充放電を繰り返し5回、10回、および15回行った時点での放電容量を測定すると共に、前記放電容量に変化が現れなくなるまで行い、この限界放電容量を許容最大放電容量とした。この測定結果を表5、6に示した。
【0018】
さらに、上記本発明合金1〜32および従来合金1〜10のそれぞれに、導電剤としてカルボニルニッケル、結着剤としてポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、および増粘剤としてカルボキシルメチルセルロース(CMC)を加えてペースト状とした後、95%の気孔率を有する市販の多孔質Ni焼結板に充填し、乾燥し、加圧して、平面寸法:320mm×31mm、厚さ:0.40〜0.43mmの形状(前記活物質粉末充填量:約10g)とし、これの一辺にリードとなるNi薄板を溶接により取り付けて負極を形成し、一方正極は、活物質としてNi(OH)2 を用い、これに導電剤として一酸化コバルト(CoO)、結着剤としてポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、および増粘剤としてカルボキシルメチルセルロース(CMC)を加えてペースト状とし、これを上記多孔質Ni焼結板に充填し、乾燥し、加圧して、平面寸法:295mm×31mm、厚さ:0.50〜0.53mmの形状とし、同じくこれの一辺にNi薄板を取り付けることにより形成し、ついで、上記負極と正極をポリプロピレンポリエチレン共重合体のセパレータ板を介して重ね合わせ、これを渦巻き状に捲回して直径:約20.5mmとし、これを内径:21mmのNi製円筒容器に収容し、前記渦巻体との合量に占める割合で28%の水酸化カリウム水溶液を注入し、封止することにより定格容量:2700mAhの密閉型円筒電池を製造した。
【0019】
上記の本発明合金1〜32および従来合金1〜10がそれぞれ負極として組み込まれた密閉型円筒電池について、まず、これに以下の条件で初期活性化処理、すなわち室温:20℃の恒温室にて、充電速度:0.25C、充電時間:4.8時間、放電速度:0.25C、放電終止電圧:0.9Vの条件での充放電を行ない、前記充電と放電を充放電1回と数え、この充放電を繰り返し5回行なう初期活性化処理を施した後、同じく室温:20℃の恒温室にて、充電速度:0.25C、充電時間:4.8時間の条件で充電を施した状態で、これを室温:−15℃の恒温室内に5時間放置し、前記電池自体が−15℃で安定した状態にあることを確認してから、この室温が−15℃に保持された恒温室内で、急速放電条件である2Cの放電速度で放電終止電圧が0.9Vになるまで放電を行ない、放電容量(以下、低温高率放電容量と云う)を測定した。この測定結果も同じく表5、6に示した。
【0020】
【表1】
【0021】
【表2】
【0022】
【表3】
【0023】
【表4】
【0024】
【表5】
【0025】
【表6】
【0026】
【発明の効果】
表1〜6に示される結果から、本発明合金1〜32を電池の負極として用いた場合、いずれも合金の分散相を形成するCe2 Ni7 型結晶構造相およびCaCu5 型結晶構造相の作用で、前記電池の高率初期活性化処理での許容最大放電容量の増加、すなわち高放電容量化は著しく、かつ相対的に数少ない充放電回数で前記許容最大放電容量を具備するようになるばかりでなく、低温(―15℃)でも高い高率放電容量を示すのに対して、従来合金1〜10のそれでは、いずれも電池の許容最大放電容量は相対的に低く、かつ前記許容最大放電容量をもつようになるのに多数の充放電を必要とすると共に、低温では相対的に低い高率放電容量しか示さないことが明らかである。
上述のように、この発明の水素吸蔵合金は、特に電池の負極として適用した場合、高率初期活性化処理で、高い許容最大放電容量を確保することができ、さらに低温でも高い高率放電容量を示すので、電池の高出力が要求される各種機械装置、例えば電動工具や電動アシスト付き自転車、さらに電気自動車などの電池としての適用を可能とするばかりでなく、低温での実用でも十分な電池性能を発揮することができ、同じく高率初期活性化処理が数少ない充放電回数で完了するので、電池の長寿命化および低コスト化にも寄与するなど工業上有用な特性を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】走査型電子顕微鏡を用いて組織観察(倍率:15000倍)した本発明合金2の模写図である。
Claims (1)
- 質量%で、
Laおよび/またはCeを主体とする希土類元素:32〜38%、
Co:0.1〜17%、 Al:0.1〜3.5%、
Mn:0.5〜10%、 水素:0.005〜0.2%、
を含有し、残りがNiと不可避不純物からなる全体組成、並びに、
X線回折および走査型電子顕微鏡による組織観察で、連続相と分散相からなり、前記連続相がCaCu5 型結晶構造相で構成され、前記分散相が、Ce2 Ni7 型結晶構造相と、前記Ce2 Ni7 型結晶構造相の水素化熱処理反応生成物である希土類元素水素化物およびCaCu5 型結晶構造相の3相で構成され、かつ前記分散相のCaCu5 型結晶構造相が、同じく分散相の前記Ce2 Ni7 型結晶構造相と希土類元素水素化物の間に介在した組織、
を有することを特徴とする、高率初期活性化処理で少ない充放電回数での高放電容量化並びに低温高率放電容量の向上を可能とする電池負極用水素吸蔵合金。
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