JP3692612B2 - パイル布帛 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はパイル布帛に関するものであり、詳細には多くの機能を有し、多方面に使用することのできるパイル布帛に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
タオル織物を代表とするパイル布帛は、主に、濡れた身体や頭髪の水分、また汗等を拭き取るといった目的で使用されており、この様な観点から従来では、素材として吸水・吸湿性の良い綿100%を用いることが多かった(従来例▲1▼)。
ところが上記従来例▲1▼の様に綿100%では、伸縮性に劣る為、使い勝手の悪いものであった。
【0003】
そこで、伸縮性を改良したタオル織物が実開昭62-166282 に提案されている(従来例▲2▼)。該従来例▲2▼は、パイル糸に吸湿・吸水性を有する糸条を用い、且つ縦及び/または横の地糸として伸縮性糸、例えば伸縮性合成繊維フィラメント糸を用いて製織し、縦及び/または横方向に10%以上の伸長率を有する様にしたものである。
【0004】
また他に、特開平3-249246には、タオルとしての風合いに優れると共に、頭髪等に巻きつけて使用したときに水分を吸収し易く、且つずり落ち難いループ状タオルが提案されている(従来例▲3▼)。該従来例▲3▼は、70%以上がアクリル系長繊維の仮撚加工糸と吸水性繊維からなり(このうちの50〜90%をアクリル系長繊維の仮撚加工糸が占める)、その他はポリアミドまたはポリエステルとポリウレタンとからなるフィラメント撚糸で構成され、このタオルに5kgの荷重を付与した際には、元の長さの50%以上の伸度を有し、且つ前記荷重を除いたときには5秒以内に10%の伸び以下に戻る様な回復度を有するというものである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
以上の様に、吸水・吸湿性を保持すると共に伸縮性があり、また風合いの良いパイル布帛が提案されているが、現在の多様化したパイル布帛の用途からみると、更に改良すべき課題がある。
【0006】
即ち、例えば上記従来例▲2▼,▲3▼は、吸水・吸湿性能は有しているが、吸水・吸湿速度や、乾き易さ等に関する検討がなされていないものである。また上記従来例▲2▼,▲3▼では、伸縮性を有する合成繊維フィラメントの種類または糸条形態によっては、繰り返し使用した際の回復性が大きく変化するものであるから、この点についても検討する必要がある。更に、上記伸縮糸が露出している場合には、風合いが悪いことに加え、長期間経過すると伸縮糸がしだいに劣化して伸縮性が悪くなる等の問題があった。
【0007】
上記の様な吸水・吸湿速度等の特性は重要であるから検討すべき点であり、加えて、最近では用途の多様化等を背景に、種々の機能を有するパイル布帛が望まれている。
【0008】
そこで、本発明は、伸縮特性や吸水・吸湿特性の点に関し、上記従来例から残された問題を検討し、加えて他の種々の機能、例えば抗菌性,消臭性,抗ピリング性,制電性,pH緩衝性等の特性を有するパイル布帛を提供することを目的とする。尚、上記pH緩衝性を有するパイル布帛は肌にやさしいものであり、また上記例示した諸機能は使用者の要望が高いものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るパイル布帛は、そのパイル糸が吸湿性架橋アクリレート系繊維を20重量%以上含有する糸条であり、地組織が50〜150%の伸縮率を有する複合糸条であって、芯部にエーテル系ポリウレタンフィラメントを有し、鞘部にセルロース系繊維を配した複合糸で構成されたものであることを要旨とする。
【0010】
前記吸湿性架橋アクリレート系繊維は、20℃,湿度65%における飽和吸湿率が15〜35重量%で、この様に吸水性が良く、また乾燥し易いものであり、加えて抗菌性,消臭性,抗ピリング性,制電性,pH緩衝性等を調和機能として合わせ有する。
【0011】
そして本発明のパイル布帛は、上記吸湿性架橋アクリレート系繊維をパイル糸に含有することによって、上記諸機能を製品に反映している。この様に、上記機能をパイル布帛に発現させる為には、吸湿性架橋アクリレート系繊維を20重量%以上含有する必要があり、好ましくは30重量%以上含有するのが良い。含有量の上限は特に定めるものではないが、該吸湿性架橋アクリレート系繊維が多い場合はコストアップにつながることから、なるべく少なくすることが薦められる。また地組織に伸縮性のある糸条を用いることによって、パイル布帛に伸縮性を付与している。
【0012】
上記吸湿性架橋アクリレート系繊維は、単繊維として紡績し、糸条とするのが好ましい。長繊維で糸条とするよりも、吸湿・吸水率が向上し、また風合いとしてもぬめり感がなくなるからである。
【0013】
加えて、本発明に係るパイル布帛は、パイル糸に、前記吸湿性架橋アクリレート系繊維の他、セルロース系繊維を含有させるのが好ましい。該セルロース系繊維は吸水性があるからである。また、木綿風合いを好む使用者が多いという点から、セルロース系繊維のうち特に木綿を混紡することが推奨され、該木綿風合いを発現させる為には、上記吸湿性架橋アクリレート系繊維の含有量を70重量%以下とし、木綿を30重量%以上含有させることが望まれる。
また、本発明に係るパイル布帛は、パイル糸に、前記吸湿性架橋アクリレート系繊維の他、アクリル系繊維を混紡させると、可紡性が向上するから好ましい。
【0014】
上記の通り本発明において、前記地組織が、芯部にエーテル系ポリウレタンフィラメントを有し、鞘部にセルロース系繊維を配した複合糸で構成されたものとする。この様にすることで、芯部で伸縮性を確保しつつ、鞘部で使用者に好まれる風合い及び吸湿・吸水性を発現できる。
【0015】
上記エーテル系ポリウレタン繊維は、繰り返し伸縮動作をした時に生ずるクリープ現像が少なく、且つ湿分,水分,アルカリ性石鹸等による加水分解作用に抵抗性があるから、伸縮性繊維として好ましい。
【0016】
加えて、前記地組織の鞘部が、前記セルロース系繊維の他、吸湿性架橋アクリレート系繊維を20重量%以上含有することがより好ましい。地組織からも上記諸機能を発現させることができるからである。更にアクリル系繊維を前記鞘部が含有することが、上述と同様の理由から、より一層好ましい。
【0017】
また、前記芯部の表面の70%以上を、前記鞘部が被覆していることが望ましく、より望ましくは80%以上被覆していることである。この様に、芯部に配置されるエーテル系ポリウレタンフィラメントが、鞘部の繊維によって被覆され、露出部を少なくしているから、日光の紫外線等によって上記エーテル系ポリウレタンフィラメントが劣化するのを防止することができる。
【0018】
また、本発明に係るパイル布帛は、その布帛の経及び/または緯方向の伸長率が50%以上(1.5kg加重時)であり、伸長回復率が70%以上であることが好ましい。この際、糸条が、元の長さに対して1.5〜2.5倍、即ち50〜150%の伸長率を有し、且つ伸長回復率が70%以上であることが必要である。伸長率が50%未満の場合は、布帛にした際に十分な伸長性が得られず、一方、150%より高い場合は伸長回復率が悪くなるからであり、また糸条の伸長回復率が70%以上ない場合は、布帛にした際の瞬間回復率も70%以上を望めないからである。
【0019】
【発明の実施の形態】
前記吸湿性架橋アクリレート系繊維を得る方法としては、アクリル繊維を原料繊維とし、まずヒドラジン処理により架橋構造を導入し、窒素含有量の増加を1.0〜8.0重量%の範囲内に調整する。次に、加水分解を行うことにより、残存しているニトリル基量の1.0〜5.0meq/g にカルボキシル基を導入し、残部にアミド基を導入する。次いで、上記カルボキシル基の50〜90mol %を、Mg,Ca,Cu,Zn,Al,Ag,Feから選択される1種または2種以上の金属による金属塩とし、その後、乾熱温度100〜230℃で最終熱処理を行うことにより、吸湿性架橋アクリレート系繊維を得る。
【0020】
パイル布帛とする際には、上記吸湿性架橋アクリレート系繊維を20重量%以上含有する糸条をパイル糸とし、また50〜150%の伸縮率を有する複合糸条を地組織として用いる。地組織を形成する縦糸,横糸及びパイル糸からなるパイル織物方式や、丸編のシンカーパイル方式等によって織物や編物のパイル布帛を製造する。
上記パイル糸には、前述の様に、適宜アクリル系繊維やセルロース系繊維を混紡する。
【0021】
上記地組織を芯鞘構造の複合糸とする場合には、芯部にエーテル系ポリウレタンフィラメント、鞘部にセルロース系繊維等を用い、精紡機を用いたコアヤーン方式や精紡交撚方式により複合糸とする。これらの方式は芯糸を被覆する度合いの高い方式であるから、前述の様に、芯部の表面の70%以上、或いは更に80%以上を、鞘部が被覆できる。しかもこれら上記方式は、伸長時にも露出が極めて少ない複合糸を製造できる。尚、被覆度が高いという点から、コアヤーン方式が最も好ましい。この様に、複合糸の形態として伸縮糸が他繊維により被覆され露出部が極力少ないものは、日光等による伸縮糸の劣化が少なくなる。尚、上記被覆の割合は、50倍の顕微鏡写真を用いる等して被覆面積割合を求める。
【0022】
尚、他に、芯鞘構造の複合糸を製造する方式として、カバリング方式について検討したところ、該方式ではたとえカバリング撚数を相当多くした場合であっても、複合糸の伸長時に、芯部の伸縮糸が露出してしまい、目的に合わない複合糸であった。
【0023】
【実施例】
《1》まず、吸湿性架橋アクリレート系繊維について述べる。
アクリロニトリル90%及びアクリル酸メチル10%のアクリルニトリル系重合体を、48%のロダンソーダ水溶液で溶解し、この溶解した紡糸原液を、常法に従って紡糸した後、水洗、延伸、捲縮、熱処理を行い、0.8デニール×70mmの原料繊維(アクリル繊維)を得た。
【0024】
該原料繊維1kgに30重量%の加水ヒドラジン5kgを加え、98℃で3時間架橋処理した。尚、窒素増加量は5.0%であった。該架橋繊維を水洗後、3重量%の水酸化ナトリウム5kgを加え、90℃で2時間加水分解した。次いで、1規定HNO3 水溶液で処理して、カルボキシル基をH型に変換し、その後水洗を行い、次に1規定NaOHでpHを6.5に調整し、塩化カルシウム50g を添加して、60℃で2時間、金属塩処理を施した。
【0025】
この繊維を十分水洗した後、脱水、油剤処理、及び熱処理(150℃)を施し、吸湿性架橋アクリレート系繊維を得た。
得られた繊維の特性を下記表1に示す。また比較対照として、木綿,羊毛,アクリル,ポリエステル繊維の特性も、下記表1に併せて示す。
【0026】
【表1】
【0027】
上記表1から分かる様に、吸湿性架橋アクリレート系繊維の吸湿率は27%であり、木綿の約3.8倍も高く、吸湿性に優れた繊維である。また、保水性に関しても、吸湿性架橋アクリレート系繊維は木綿と同程度の高い保水率を示し、好ましい繊維である。加えて、吸湿速度定数や放湿速度定数が小さく、吸湿・吸水速度が速く、乾き易いということが分かる。
更に、吸湿性架橋アクリレート系繊維はアンモニア消臭率が99%以上と高く、アンモニアに対して高度の消臭機能も有することが分かる。
【0028】
尚、上記各特性の測定方法は下記の通りである。
<吸湿率(%)>
試料繊維約5.0g を、熱風乾燥機で105℃,16時間乾燥し、重量を測定する(これをW1gとする)。次に、温度20℃で相対湿度65%に調整された恒温恒湿機に、上記乾燥した試料繊維を24時間入れておき、この様にして吸湿した試料繊維の重量を測定する(これをW2gとする)。これら測定結果から次式(1) を用いて吸湿率を算出する。
吸湿率(%)={(W2 −W1 )/W1 }×100 …(1)
【0029】
<pH緩衝性(μeq/g)>
十分乾燥した試供繊維を約0.4g精秤し(これをXg とする)、これに200mlの水を加えた後、0.1N塩酸水溶液或いは0.1N苛性ソーダ水溶液を滴下し、上記塩酸水溶液を滴下した場合はpH5.0になるまでに、また上記苛性ソーダ水溶液を滴下した場合はpH7.0になるまでに、消費された塩酸水溶液または苛性ソーダ水溶液の消費量(これをYccとする)を求め、次式(2) を用いて酸またはアルカリに対する緩衝能力を算出する。
pH緩衝性(μeq/g)=1000Y/X …(2)
【0030】
<保水率(%)>
試料編地5g を純水中に浸潰し、30±5℃で3時間放置の後、1000Gの回転で3分間遠心脱水機による脱水処理を行う。該脱水した試料編地の重量を測定する(これをW3gとする)。次に該試料編地を90℃の熱風乾燥機内で絶乾まで乾燥し、該乾燥した試料の重量求め(これをW4gとする)、次式(3) を用いて保水率(%)を算出する。
保水率(%)={(W3 −W4 )/W4 }×100 …(3)
【0031】
<吸湿速度定数:k1 (mm-1)>
5×20cmの試料編地を105℃熱風乾燥機で絶乾後、デシケーター内で20℃に冷却する。20℃,湿度65%RHに調整した恒温恒湿器内に、該試料編地を置き、120分間経過毎に絶乾からの吸湿率(Wd )を連続的に測定する。該試料編地を、更に24時間恒温恒湿器内に入れ、飽和吸湿率(We )を測定する。下記速度式(4) を用いて吸湿速度定数(k1 )を算出する。
【0032】
【数1】
【0033】
t:絶乾からの経過時間(分)
Wd :絶乾から時間tにおける吸湿率(%)
We :20℃,65%RH飽和吸湿率(%)
k1 :吸湿速度定数
e:自然対数
【0034】
<放湿度速定数:k2 (mm-1)>
5×20cmの試料編地を20℃,80%RHに調整した恒温恒湿器に24時間入れ、同温湿度における飽和吸湿率(Wb )を測定する。次に、該試料編地を20℃,30%RHに調整した恒温恒湿器内に入れ、120分間毎の吸湿率(Wc )を測定する。更に、該試料編地を20℃,30%RHに調整した恒温恒湿器内に24時間入れ、20℃,30%RHにおける飽和吸湿率(We )を測定する。下記速度式(5) を用いて放湿速度定数(k2 )を算出する。
【0035】
【数2】
【0036】
Wc :Wb から時間tにおける吸湿率(%)
Wa :20℃,30%RHにおける飽和吸湿率(%)
Wb :20℃,80%RHにおける飽和吸湿率(%)
k2 :放湿速度定数
t:30分まで(120 分間連続測定したところ、直線性がみられるのは 30分までであったので、0〜30分について係数算出を行った。)
【0037】
<アンモニア消臭率(%)>
試料繊維2g をテドラーバックに入れて密封し、空気を3リットル注入する。次に400ppm のアンモニアを上記テドラーバック内に注入し、室温で120分放置した後、テドラーバック内のアンモニア濃度(W6 :ppm )を北川式検知管を用いて測定する。また、試料繊維を入れていないテドラーバックに、400ppm のアンモニアを注入し、120分後にアンモニア濃度(W7 :ppm )を測定し、これを空試験とする。以上の結果から、次式(6) を用いて、アンモニア消臭率を算出する。
アンモニア消臭率(%)={(W5 −W6 )/W7 }×100 …(6)
W5 :テドラーバック内に注入したアンモニア濃度(400ppm )
【0038】
《2》次に、種々の繊維を用いて編地サンプルを製造し、これらに関する実験について述べる。
下記表2に示す様に、上記吸湿性架橋アクリレート系繊維(1.8d ×38mm)単独のもの、また上記吸湿性架橋アクリレート系繊維とコーマ綿を表2に示す混紡率で混紡した繊維を用い、常法に従って、カード、練篠、祖紡、精紡を行って、20番手の単糸を紡出した。尚、撚係数は3.5とした。
【0039】
また比較として、アクリル繊維、羊毛(カットウールを使用)、木綿(コーマ綿を使用)、またポリエステル繊維(1.5d ×38mm)について、同様に単糸を作った。
これら単糸を、20ゲージの両面編機を用いてスムース編地を編成した後、常法で染色仕上加工を施した。これら編地サンプルの特性値を表2に示す。
【0040】
【表2】
【0041】
表2から分かる様に、吸湿性架橋アクリレート系繊維を100%用いた編地(編地No. 1)は、上記表1に示した原繊維と同じレベルの特性を発現している。特に、水吸上げ長に関しては、木綿製の編地の約1.2倍であり、また吸湿率に関しては、木綿製の編地の約3.8倍と大きいものであり、また、それにもかかわらず乾燥時間が木綿製の編地の3倍以上の速さである。また、他の繊維を混紡した編地No. 2,3に関しても、吸湿性架橋アクリレート系繊維の特性が発揮され、混紡率換算値から予想される性能と同等以上の性能を発現していることが分かる。従って、編地No. 1〜3は、親水性でしかも乾きが速く、湿潤感が少ないことが分かる。
【0042】
尚、上記各特性の測定方法は下記の通りである。
<水吸い上げ長(mm)>
JIS L 1018のメリヤス生地試験方法の吸水速度B法(バイレック法)に基づき、測定開始30分経過後の吸上げ長を求めた。
【0043】
<乾燥時間(分)>
試料編地10×10cmを純水中に1時間浸潰した後、遠心脱水機を用いて300Gの回転で2分間脱水処理を行い、20℃,65%RHの雰囲気内に設置したテンシロン/UTM-11-20 型に、上記脱水後の試料編地を取り付け、試料編地の重量変化と時間を測定し、触感における乾燥時間を求めた。
【0044】
<抗菌性>
繊維製品衛生加工協議会(SEK)で定める方法に従い、滅菌試料布に試験菌のブイヨン懸濁液を注加し、密閉容器中で、37℃、18時間の培養の後、生菌数を計測し、下記式(7),(8) を用いて、植菌数Aに対する標準布の菌数Bと、試料の菌数Cの増減値差で求める。尚、試験菌株は黄色葡萄状球菌(Stapylococcus aureus IFO 12732)である。
増減値=log C−log A …(7)
増減値差=(log B−log A)−(log C−log A) …(8)
【0045】
<抗ピリング性>
JIS L 1076の織物及び編物のピリング試験方法A法のうち、ICI型試験機を用いる方法に従って行った。
<制電性>
JIS L 1094の織物及び編物の帯電性試験方法に従って行った。
【0046】
<伸縮性複合糸条の伸長率(%)、伸縮伸長率(%)>
JIS L 1090に示される合成繊維フィラメント嵩高加工糸試験方法に従って測定した。ただしコアヤーン等の特性を考慮し、同法の伸縮復元率測定方法を応用して、最初の試料長は標準温湿度状態で測定し、その後の測定は沸騰水で2分間処理した後の試料で実施した。
【0047】
《3》次に、パイル布帛を製造した場合の実施例について述べる。
上記の結果及び紡績工程におけるの紡績性,操業性等を考慮し、吸湿性架橋アクリレート系繊維30%,アクリル繊維5%,木綿繊維65%の混紡率としてパイル布帛用の糸条(20番単糸)を作った。尚、20番単糸は、従来の綿製パイル布帛と同じ番手である。
【0048】
地繊維用の糸条としては、パイル糸の場合と同じ混紡率で粗糸を作り、精紡工程において、該粗糸を鞘糸とし、エーテル系ポリウレタンフィラメント70d (ドラフト4.0)を芯糸として合わせ、コアヤーンにした。尚、撚係数は4.5とした。
該コアヤーンの沸水処理前後の伸長率を測定した結果、85%であり、本発明の目的に合う特性を有していた。尚、伸長率の測定方法は下述の通りである。
【0049】
地組織の経糸に上記コアヤーンを45本/インチ用い、また地組織の緯糸に上記パイル用の糸条を代用として40本/インチ用い、またパイル糸として上記パイル用の糸条を45本用いて、タオル用パイル織物を製造した(パイル布帛No. 1)。
得られたパイル布帛No. 1の経方向の伸長率は65%で、伸長回復率は85%であった。
【0050】
次に、比較のパイル布帛について述べる。上記パイル布帛No. 1では地組織の芯部にエーテル系ポリウレタンフィラメントを用いたが、これに替えてエステル系ポリウレタンフィラメント70d (ドラフト4.0)を用いてコアヤーンとし、これ以外は上記パイル布帛No. 1と同じ方法,条件でタオル用パイル織物を製造した(パイル布帛No. 2)。
【0051】
下記表3に示す様に、得られたパイル布帛No. 2の初期の伸長率及び伸長回復率については、パイル布帛No. 1とほぼ同等の特性を示したが、洗濯後の伸長率及び伸長回復率は、洗濯回数が増加するほど、パイル布帛No. 1に比べてパイル布帛No. 2は劣るものであった。
【0052】
【表3】
【0053】
尚、伸長率,伸長回復率の測定法は下述の通りである。
<織物の伸長率(%)、伸長回復率(%)>
JIS L 1096B に示される一般織物試験方法に従い、加重1.5kgで行った。
【0054】
【発明の効果】
本発明に係るパイル布帛は、pH緩衝性,抗菌性,消臭性,抗ピリング性,制電性,吸水性,乾燥のし易さの各機能を良好に発現し、且つ伸縮性を有するものであり、入浴後や遊泳後等に使用するときの様な、一時的に身体を包纏する際のバスタオルや、洗髪後の水分の拭き取り用のタオルとして、或いは多量の発汗を拭う為のスポーツタオルとして、またサポーターとして、更にまたストレッチ体操の器具として等、多方面使用することができる。
Claims (6)
- パイル布帛におけるパイル糸が、吸湿性架橋アクリレート系繊維を20重量%以上含有する糸条であり、
前記パイル布帛の地組織が、50〜150%の伸縮率を有する複合糸条であって、芯部にエーテル系ポリウレタンフィラメントを有し、鞘部にセルロース系繊維を配した複合糸で構成されたものであることを特徴とするパイル布帛。 - 前記パイル糸が、前記吸湿性架橋アクリレート系繊維の他、アクリル系繊維を含有する請求項1に記載のパイル布帛。
- 前記パイル糸が、前記吸湿性架橋アクリレート系繊維の他、セルロース系繊維を含有する請求項1または2に記載のパイル布帛。
- 前記鞘部が、前記セルロース系繊維の他、吸湿性架橋アクリレート系繊維を20重量%以上含有する請求項1〜3のいずれかに記載のパイル布帛。
- 前記鞘部が、更にアクリル系繊維を含有する請求項1〜4のいずれかに記載のパイル布帛。
- 前記芯部の表面の70%以上を、前記鞘部が被覆している請求項1〜5のいずれかに記載のパイル布帛。
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