JP3691622B2 - 両面粘着テープ及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
この発明は、両面粘着テープ及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来技術】
抄紙法によって製造される不織布の両面に粘着剤が積層された両面粘着テープは、柔軟で被着体になじみ易いので、各種物品の固定用として広く使用されてきた。不織布としては一般にレーヨン 50重量%と、パルプ 50重量%とを抄紙機を用いて混抄したものが安価で湿潤寸法安定性が良く、又、粘着剤の浸透性が優れるために、巻姿の経日変化が小さく、すなわち、形状安定性が良いため多く用いられてきた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、レーヨンは、その製造工程中に爆発性と毒性が強い二硫化炭素を使用し、さらに毒性と悪臭の甚だしい硫化水素を副生するなど、周辺の環境を汚染するため、その汚損防止に多額の費用を要し、そのために製品コストが高くなるとともに、生産も減少しつつある。
【0004】
従って、この発明は、上記問題点を解消するためになされたものであって、レーヨンの使用を大幅に削減して、製品品質の維持と、製品コストの低減及び環境汚染の防止を図ることができる両面粘着テープ及びその製造方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、マーセル化針葉材パルプ繊維と、針葉材クラフトパルプ繊維及び、強度向上成分を必須成分とする紙と、この紙の両面に積層され、かつ紙層内部まで浸透した粘着剤層とを有する両面粘着テープをその要旨としている。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1において、マーセル化針葉材パルプ繊維と、針葉材クラフトパルプ繊維の重量和の1/2以下の重量の、レーヨン繊維、ビニロン繊維、ポリエステル繊維、ポリアクリロニトリル繊維から選ばれた一種又は二種以上の繊維を含有することをその要旨としている。
【0007】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2において、マーセル化針葉材パルプ繊維と針葉材クラフトパルプ繊維の重量比が、5:1から1:5の間であることをその要旨としている。
【0008】
請求項4の発明は、請求項1乃至3のうちいずれかにおいて、強度向上成分が繊維状ポリビニルアルコール又は紙力増強効果を有するカチオン性ポリマーであることをその要旨としている。
【0009】
請求項5の発明は、マーセル化針葉材パルプ繊維と、針葉材クラフトパルプ繊維が重量比5:1から1:5の間で混合後に叩解されるか、或いは叩解された後に混合されて混合水性スラリーを形成し、次いで強度向上成分を混合して、製紙用スラリーを調製し、この後、これを抄紙し、次いで両面に粘着剤を積層し、積層された粘着剤を紙層内部までに浸透させることを特徴とする両面粘着テープの製造方法をその要旨としている。
【0010】
マーセル化針葉材パルプ繊維は、針葉材をクラフト法でパルプ化した後に苛性アルカリでマーセル化処理を施したもので、商品名:ポロサニア−J(Porosanier −J、会社名:レオニア社)が知られている。
【0011】
針葉材クラフトパルプ繊維及び強度向上成分は、従来例のレーヨン混抄不織布に用いられているものと同一のものが使用できる
マーセル化針葉材クラフトパルプ繊維は嵩高な紙層構造を形成することは知られているが、叩解によって粘着テープ原紙として必要な繊維間接合性を得ることは容易ではない。さらに、叩解によって接合性が出現しても叩解によるフリーネスの変化が極めて小さいため、粘着テープ原紙のように管理された強度特性の要求される用途に応用するには、より一段の改良が好ましい。
【0012】
この叩解工程の管理はマーセル化針葉材パルプ繊維と針葉材クラフトパルプ繊維を混合して叩解する。特に好ましくは、重量比率5:1〜1:5の比率で混合して叩解することによって、混合物の比較的大きいフリーネスの変化が得られる紙シートの強度特性と容易に対応づけられるようになり、強度特性が精度よく管理できる。この管理は叩解をビーターではなく、リファイナーで行う場合に特に有効である。重量比率はマーセル化針葉材パルプ繊維がこれより少ないと、粘着剤の浸透が不十分になり、針葉材クラフトパルプ繊維がこれより少ないと、フリーネス変化の管理が困難になる傾向がある。
【0013】
又、叩解された後にも、マーセル化針葉材パルプ繊維及び針葉材クラフトパルプ繊維を混合しても同等の効果が得られる。
さらに、粘着剤層を紙層内に良好に浸透させることと、両面粘着性により物品を固定して強固に保持するための紙層強度とを最適に両立させるには、マーセル化針葉材パルプ繊維と針葉材クラフトパルプ繊維の叩解を紙層強度的にやや低レベルに抑制して、強度向上成分の接合効果によって紙層強度を両面粘着テープ原紙として必要なレベルまで高めるために、強度向上成分を混合して抄紙した紙を用いる。強度向上成分の混合量は、マーセル化針葉材パルプ繊維の0. 5〜10重量%の値が適切である。
【0014】
この他に混合される繊維は、外部剪断力に対向する粘着固定力の向上や、紙層間強度、破裂強度等の実用的強度特性の改善を目的として、繊維長が3mm以上の、好ましくは5mm以上のレーヨン繊維、ビニロン繊維、ポリエステル繊維、ポリアクリルニトリル繊維の中から一種、又は二種以上から選ばれる。混合量はマーセル化針葉材パルプ繊維と針葉材クラフトパルプ繊維の合計量の1/2以下が適する。これより多いと、実用的強度特性が低下し、この低下防止に強度向上成分を過剰に使用せねばならなくなる。又、繊維によって強度向上成分の混合量は適切に追加する必要がある。
【0015】
レーヨン繊維やビニロン繊維の場合には、強度向上成分として繊維状ポリビニルアルコールが適し、強度向上成分の量は他に混合される繊維の量の10%が最適であるが、ポリエステル繊維やポリアクリルニトリル繊維の場合は、増量した方が良い場合がある。
【0016】
強度向上成分として、繊維状ポリビニルアルコールは接合効果に良いが、粘着剤の浸透には、負の効果を及ぼすため、特に実用強度上必要でなければ少ない方が良い。
【0017】
強度向上成分として、上記繊維状ポリビニルアルコール以外に、カチオン性ポリマーがある。カチオン性ポリマーとしては、ポリアミド・アミン・エピクロルヒドリン樹脂等を挙げることができる。
【0018】
強度向上成分の混合量は積層される粘着剤の種類、例えば、天然ゴム系、アクリル樹脂系、及びホットメルト系によっても異なる。
抄紙は常法により、円網抄紙機、短網抄紙機、傾斜ワイヤー、長網抄紙機等が使用できる。又、これらを組み合わせた抄き合わせも可能である。ただし、重さが20g/m2 未満の原紙には長網抄紙機や抄き合わせの適用は適さない。
【0019】
粘着剤の積層は、溶液型又は溶剤分散型粘着剤の場合には離型紙を用いる塗布機により行う。一例を挙げると、離型紙上に乾燥後の粘着剤量が数10g/m2 又は数10μm厚さになるように塗布し、乾燥後に原紙を重ね、さらにその上に同様に粘着剤を塗布して乾燥し、巻き取る。この間に粘着剤が原紙の紙層間に浸透する。粘着剤の浸透が終了した後に、最終製品に必要な巻芯に必要な長さに巻き分けて必要な幅に切断する。粘着剤の浸透が不十分なまま巻分けると、最終形状のままで浸透が進み、巻径収縮力が発生するが、原紙の寸法が変化しないために、巻の直径不同による表面凹凸が発生し、又、内部には「巣」が発生する。このために巻戻し不安定になり、例えばネームプレートの自動接合機でテープが破断する等のトラブルが発生する原因となる。
【0020】
【実施例】
(実施例1〜3)
マーセル化針葉材パルプ繊維として、ポロサニア−J(Porosanier −J、会社名:レオニア社)、針葉材クラフトパルプ繊維としてNBKPを等量混合し、テストパルパーで離解後、及びテストビーターで、10分及び16分の叩解を行い、ショッパーリーグラー濾水度SR7°,9°及び11°のスラリーを調成した。次に、強度向上成分としてポリアミド・アミン・エピクロルヒドリン樹脂を固型分とし、この強度向上成分をマーセル化針葉材パルプ繊維と針葉材クラフトパルプ繊維の合計量に対して1. 5重量%加えて、手抄きシートを形成し、実施例1〜3とした。
【0021】
又、上記のスラリーのままで、上記の強度向上成分(ポリアミド・アミン・エピクロルヒドリン樹脂)を加えないで、手抄きシートを形成し、比較例1〜3とした。
【0022】
この他にNBKPの中でも繊維の粗い種を選び、単独で7分間叩解してショッパーリーグラー濾水度SR11°のスラリーを調成し、強度向上成分を1. 5重量%加えて手抄きシートを形成し、これを比較例4とした。
【0023】
なお、実施例及び比較例とも設定重さは65g/m2 である。
上記の実施例1〜3、及び比較例1〜4を表1に示す項目に従って測定した。その結果を表1及び表2に示す。
【0024】
マーセル化針葉材パルプ繊維の効果は、著しく低い比透気度と密度に現れる。これにより、粘着剤の塗布時に良好な浸透性が得られる。
これに対して、比較例4では、高い比透気度と密度により、浸透性が劣る。この例は裂断長と比破裂強さは高いが、引裂強さが実施例2,3よりも低い。
【0025】
強度向上成分の効果は、実施例1〜3と比較例1〜3の差となる。
比引裂強さがほぼ同等である他は、すべての強度特性が大幅に向上し、しかも、比透気度や密度及び粘着剤浸透性に対する悪影響は無いか、極めて少ない。特に、カチオン性ポリマーの使用の場合は悪影響は無視できる範囲である。
(実施例4〜6、及び比較例5,6)
マーセル化針葉材パルプ繊維として、ポロサニア−J(Porosanier −J、会社名:レオニア社)、針葉材クラフトパルプ繊維としてNBKPをそれぞれ重量比、20/80,35/65,50/50にて混合し、テストパルパーで離解後、及びテストビーターで、10分及び16分の叩解を行い、ショッパーリーグラー濾水度SR11°のスラリーを調成した。次に、強度向上成分としてポリアミド・アミン・エピクロルヒドリン樹脂を固型分とし、この強度向上成分をマーセル化針葉材パルプ繊維と針葉材クラフトパルプ繊維の合計量に対して1. 0%加えて、手抄きシートを形成し、実施例4〜6とした。
【0026】
又、 マーセル化針葉材パルプ繊維として、ポロサニア−J(Porosanier −J、会社名:レオニア社)、針葉材クラフトパルプ繊維としてNBKPをそれぞれ重量比、20/80,35/65にて混合し、テストパルパーで離解後、及びテストビーターで、10分の叩解を行い、ショッパーリーグラー濾水度SR11°のスラリーを調成した。次に、強度向上成分を加えないで手抄きシートを形成し、比較例5,6とした。なお、実施例及び比較例とも設定重さは65g/m2 である。
【0027】
上記の実施例4〜6、及び比較例5,6を表3に示す項目に従って測定した。その結果を表3に示す。なお、表中、Aはマーセル化針葉材パルプ繊維、Bは針葉材クラフトパルプ繊維を、Cは強度向上成分をあらわす。
【0028】
マーセル化針葉材パルプ繊維/針葉材クラフトパルプ繊維の重量比率は、実施例、比較例とも比透気度と密度に大きく影響する。粘着剤浸透性も実施例、比較例とも重量比に大きく影響する。
【0029】
重量比20/80のものでは、35/65の重量比のものとは約2倍の比透気度に悪化している。この関係は、強度向上成分が含まれない比較例との関係でも同様である。粘着剤の浸透性も数倍の浸透時間を要した。
【0030】
そして、実施例4〜6は、いずれも強度向上成分のために、比較例よりも、紙層内部強度が向上している。
(実施例7,8及び比較例7, 8)
次に実施例7,8及び比較例7,8を説明する。この実施例及び比較例は、表4に示す実施例7, 8の及び比較例7, 8の配合により、叩解度は、それぞれの配合について引裂強度と透気度の最適値を選び調成し、小幅の円網抄紙機を用いて、目標坪量14g/m2 の原紙を抄造した。強度向上成分としてレーヨン配合紙には繊維状ポリビニルアルコールとカチオン性ポリマーとしてポリアミド・アミン・エピクロルヒドリン樹脂を、レーヨンを配合しない紙には同カチオン性ポリマーのみを用いた。
【0031】
さらに、この紙を原紙として、天然ゴム系粘着剤を離型紙上に厚さ25μmになるように塗布・乾燥した上に重ねて巻取り、一夜放置後に巻戻して、同量の同一粘着剤を紙面に重ねて塗布し、巻取って、さらに一日放置後、長さ20mに巻返して、これを幅20mmに輪切りにして、1ヶ月放置した。
【0032】
上記の実施例7,8、及び比較例7,8を表4に示す項目に従って測定した。その結果を表4に示す。
比較例7は巻径の減少が著しく、巻き等が凹凸のある円周を示し、又、巻ほぐしも凹凸の位置で引っ掛かり、テープが破断する場合もあった。
【0033】
又、銘板の貼着の寸法に型刃で打抜いた切断面を比較したところ、比較例8は若干の毛羽が認められ、型刃の鋭利さによっては外観不良を生じた。実施例7, 8は巻姿も、切断面も問題無かった。
【0034】
【表1】
【0035】
【表2】
【0036】
【表3】
【0037】
【表4】
なお、各実施例及び比較例における試験方法は下記の通りである。
【0038】
◎手抄きシート(実施例1〜6、比較例1〜6)
裂断長 : JIS P−8210に準拠した測定
比破裂強さ: JIS P−8210に準拠した測定
比引裂強さ: JIS P−8210に準拠した測定
紙層内部強度: 試料の表裏を布テープで補強し、エルメンドルフ引裂試験機に取付け、荷重を加えて紙層割れした時の指示値に定数を乗じて算出する。
【0039】
比透気度 :シート1枚の100cc透気度を重さg/m2 で除した値
粘着剤浸透性:シリコーン系剥離紙上に粘着剤(綜研化学SKダイン)を乾燥後30μm厚さになるように塗布し、乾燥後に試料シート又は紙を重ねて、さらに透明プラスチックフィルムを重ね、金属ロールで1回圧着し、1日間恒温恒湿で放置し、非塗布面への滲出を観察する。
◎機械抄き紙(実施例7,8、比較例7,8)
引張強さ: JIS P−8113に準拠した測定
引裂強さ: JIS P−8116に準拠した測定
透気度 :JIS P−8117に準拠した測定。ただし、試料を32枚重ねて100cc透気度を読む。
【0040】
両面テープ加工性:実施例中に記載。
切断面 :実施例中に記載。
【0041】
【発明の効果】
請求項1及び請求項5の発明は、レーヨンの使用を大幅に削減することができ、製品コストの低減及び環境汚染の防止を図ることができる。
【0042】
請求項2の発明は、外部剪断力に対向する粘着固定力の向上や、紙層間強度、破裂強度等の実用的強度特性の改善を行うことができる。
請求項3の発明は、混合物の比較的大きいフリーネスの変化が得られる紙シートの強度特性と容易に対応づけられるようになり、強度特性が精度よく管理できる。
Claims (5)
- マーセル化針葉材パルプ繊維と、針葉材クラフトパルプ繊維及び、強度向上成分を必須成分とする紙と、
この紙の両面に積層され、かつ紙層内部まで浸透した粘着剤層とを有する両面粘着テープ。 - マーセル化針葉材パルプ繊維と、針葉材クラフトパルプ繊維の重量和の1/2以下の重量の、レーヨン繊維、ビニロン繊維、ポリエステル繊維、ポリアクリロニトリル繊維から選ばれた一種又は二種以上の繊維を含有する請求項1に記載の両面粘着テープ。
- マーセル化針葉材パルプ繊維と針葉材クラフトパルプ繊維の重量比が、5:1から1:5の間である請求項1又は請求項2に記載の両面粘着テープ。
- 強度向上成分が繊維状ポリビニルアルコール又は紙力増強効果を有するカチオン性ポリマーである請求項1乃至3のうちいずれかに記載の両面粘着テープ。
- マーセル化針葉材パルプ繊維と、針葉材クラフトパルプ繊維が重量比5:1から1:5の間で混合後に叩解されるか、或いは叩解された後に混合されて混合水性スラリーを形成し、次いで強度向上成分を混合して、製紙用スラリーを調製し、この後、これを抄紙し、次いで両面に粘着剤を積層し、積層された粘着剤を紙層内部までに浸透させることを特徴とする両面粘着テープの製造方法。
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JP03490997A JP3691622B2 (ja) | 1997-02-19 | 1997-02-19 | 両面粘着テープ及びその製造方法 |
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