JP3690944B2 - セラミックス回路基板 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、パワーモジュール等に使用される高信頼性のセラミックス回路基板に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、熱発生の大きい半導体素子等を搭載するためのパワーモジュール等の回路基板として、アルミナ(Al2O3)セラミックスなどのような絶縁性に優れたセラミックス基板の表面に、導電性を有する回路層を接合した回路基板が広く普及している。
【0003】
しかし、近年これら半導体素子は機器類の小型化、高性能化に伴って熱発生の密度が増加する傾向にあり、信頼性高く安定動作を得るためには半導体素子の発生する熱を放散して、素子のジャンクションが破壊されない温度より充分低くできるようにすることが一層重要な課題となってきており、前記回路基板の特性として電気絶縁性が高いことに加え、より高い熱伝導性が要求されてきている。
【0004】
上記の要求に伴って、熱伝導性の高い窒化アルミニウム(AlN)などのセラミックスを基板材料として用いた、放熱性の高い銅回路基板が開発されている。しかし、前記銅回路基板は機械的特性が不十分であり、回路基板として用いる場合には、半導体素子の作動に伴う繰り返しの熱サイクルや動作環境の温度変化等で、銅回路層の接合部付近のセラミックス部分にクラックが発生しやすく、信頼性が低いという問題点があった。
【0005】
この問題の解決として、例えば特開平4−12554号公報や特開平4−18746号公報に回路材料として銅よりも降伏耐力の小さいアルミニウム(Al)を用いたセラミックス回路基板が開示されている。
【0006】
しかし、信頼性の指標となる−40℃から125℃までの繰り返し冷却、加熱する耐ヒートサイクル性についは、前記回路基板であっても3000回以内でセラミックス基板にクラックが入る等の問題が発生し、上述のように高い信頼性の要求される用途には充分対応ができない。
【0007】
また、特開平8−208359号公報には、Alの溶湯を用いてAlを直接AlN基板に接合した回路基板が開示されている。この発明によれば、Al回路基板単体で3000回を越える耐ヒートサイクル性が達成されている。
【0008】
しかし、このようにして得られたAl回路基板を実際に使用されるモジュール形態に組み上げた後に耐ヒートサイクル性を調べると1000回程度でクラックや回路材の剥離が生じるだけでなく、しわ状の表面の凹凸が激しくなる等の問題があり、実用上満足できるものではない。
【0009】
特に、表面に発生する凹凸は、その程度が激しい場合には、半導体チップ等を実装したときに、半田接合強度の低下やワイヤーボンディングにおける密着強度低下等をきたしてしまう等、信頼性低下の原因となる。さらに、Al溶湯を用いて直接接合しているために、Al回路層の厚さのバラツキが大きく、安定して信頼性の高い回路基板が得られないだけでなく、設備費や設備の維持管理がかかりコストアップになるという問題もあった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記公知技術の事情に鑑みてなされたものであり、例えば、電気自動車や電気鉄道等の用途に適用できるパワーモジュールのような、高い信頼性が要求される用途に対応できるセラミックス回路基板を提供することを目的とするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、回路材料であるアルミニウム(Al)材の純度を調整することにより、Alの降伏耐力等の機械的性質をを制御できることに着目し、ヒートサイクルによる熱応力に耐えることができることを見出し、本発明に至ったものである。
【0012】
すなわち、本発明は、セラミックス基板の少なくとも一方の主面にアルミニウム板が接合されたセラミックス回路基板であって、前記アルミニウム板の純度が99.0重量%以上99.95重量%以下であることを特徴とするセラミックス回路基板であり、特にセラミックスが窒化アルミニウムからなることを特徴とし、ことに、アルミニウム板がセラミックス基板に、Mgを含み、さらにSi、Ge、Cuのいずれか1種以上を含有し、しかも液相を生じる温度が500℃〜630℃であるAl合金を介して接合されていることを特徴とする。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明で用いるアルミニウム(Al)板の純度は99.0重量%以上99.95重量%以下である。99.0重量%よりも低純度では降伏耐力が大きく、回路基板とした場合に、回路基板単体だけでもヒートサイクル試験において1000回以下で基板にクラックやAl回路剥離等が発生し、99.99重量%以上では、モジュール化後のヒートサイクル試験において1000回以下でクラックや回路剥離等が発生する。また、99.95重量%を越えて高純度であると、ヒートサイクルでしわ状の表面凹凸が激しくなる。この理由については、明確な理由はわからないが、あまりに高純度のAl材は、不純物の多いAl材に比べて、不純物による欠陥基点が少なく、加熱接合時にAl粒成長が促進され、そして、大きなAl粒子ほどヒートサイクル時の応力発生で表面凹凸が大きくなるためと推察される。一方、パワーモジュール等の大電力素子に用いることを考慮すると、回路における電力ロスを低く抑えるためにはできるだけ電気抵抗が低い方がよく、また、発生した熱を効率よく除去するためには熱伝導性の高いより高純度の材料を選ぶ方がよい。前記状況から、本発明に於いてAl純度は前記範囲が選択されるが、好ましくは99.50重量%以上99.90重量%以下である。
【0014】
また、基材となるセラミックスとしては、電気絶縁性で熱伝導性に富むものならばどの様なものでも構わず、例えば、アルミナ(Al2O3)やベリリア(BeO)を添加した炭化珪素(SiC)、窒化珪素、窒化アルミニウム等を挙げることができるが、これらの内では、電力が大きなパワーデバイスで熱の発生が大きいことを考慮すると絶縁耐圧が高く、熱伝導性の高いことから窒化アルミニウム(AlN)基板が最も適している。
【0015】
本発明の回路基板は、アルミニウム板と窒化アルミニウム基板等のセラミックス基板とを接合材を用いて加熱接合した後、エッチングする方法、或いは、アルミニウム板から打ち抜き法等により予め回路パターンを形成し、これをセラミックス基板に接合材を用いて接合する方法等によって製造することができる。
【0016】
上記のいずれの接合方法においても、接合時の熱応力をできるだけ低く抑えるためにより低温で接合できることが重要であるが、本発明者らがアルミニウム板と窒化アルミニウム基板等のセラミックス基板との接合について、いろいろ実験的に検討を重ねた結果、液相を生じる温度が500℃〜630℃である低融点ロウ材を用いて接合するときに、得られるセラミックス回路基板、更にそれを用いて作製したモジュールの信頼性を高く改善できるという知見を得て、本発明に至ったものである。
【0017】
即ち、本発明に於いて、界面を活性化する作用のあるとされるMgを含み、更に、アルミニウム材の融点以下の温度でアルミニウム板や窒化アルミニウム等のセラミックス基板に良く濡れるように、Si、Ge、Cuのいずれか一種以上を含むAl合金が、前記アルミニウム板とセラミックス基板の接合材として好ましく選択される。また、前記合金は500℃〜630℃の温度範囲で液相を形成するものが良い。即ち、500℃未満では接合性の面で充分でないことがあるし、630℃を越える温度ではアルミニウム板やセラミックス基板に残留する熱応力が大きくなるうえ、アルミニウム材の融点に近くなるためロウ接欠陥が生じやすくなるからである。尚、前記合金を用いてアルミニウム板とセラミックス基板とを接合(ろう接)する場合、接合する面に1〜50kgf/cm2の垂直力を付加することが望ましい。
【0018】
【実施例】
以下、実施例と比較例とをあげて、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0019】
〔実施例1〜10および比較例1〜5〕
セラミックス基板として、50mm×50mm×0.635mmの窒化アルミニウム基板で、レーザーフラッシュ法による熱伝導率は175W/mK、3点曲げ強さの平均値は420MPaである。
【0020】
前記窒化アルミニウム基板の表裏両面に、表1に示す各種純度の厚さ0.4mmのアルミニウム板を、表2に示す20μmのロウ材合金箔を介して重ね、垂直方向に35kgf/cm2で加圧した。そして、10-4Torrの真空中、温度480℃〜650℃の条件下で加圧をしながらアルミニウム板と窒化アルミニウム基板とを接合した。実施例、比較例の各々の接合条件を表3に示す。
【0021】
【表1】
【0022】
【表2】
【0023】
【表3】
【0024】
接合後、アルミニウム板表面の所望部分にエッチングレジストをスクリーン印刷して、塩化第二鉄溶液にてエッチング処理し回路パターンを形成した。次いで、レジストを剥離した後、無電解Ni−Pメッキを3μm行い、回路基板とした。得られた回路基板について、以下に示すように信頼性の評価を行った。その結果を表4に示す。
【0025】
(1)回路基板単体での評価;回路基板をそのまま−40℃×30分→室温×10分→125℃×30分→室温×10分を1サイクルとするヒートサイクルを3000回実施した。その後、目視及び超音波探傷による回路板の剥離や窒化アルミニウム基板におけるクラック発生状況等の異常の有無、および、回路板の皺の発生状況を観察し、さらに回路板のピール強度を測定した。
【0026】
(2)モジュールでの評価;回路基板の回路側には0.4mm厚さ×15mm角のSiチップ2枚をPb−Sn共晶はんだではんだ付けし、さらに0.5mm径のアルミニウムワイヤーを超音波で60本ボンディングした。また、放熱板側には70×100×3mmのAl−SiC複合材からなるヒートシンク(熱膨張率7.5ppm/K、熱伝導率200W/mK)をPb−Sn共晶はんだではんだ付けしてモジュールを作製する。このモジュールに付いて、上記の回路基板単体での評価と同じヒートサイクルを負荷した。その後、ボンディングワイヤーの剥離状況、回路部の剥離状況、窒化アルミニウム基板でのクラック発生状況、はんだ部分でのクラック発生等、異常の有無を観察した。
【0027】
【表4】
【0028】
表4に示す通り、実施例は基板単体ではもちろん、モジュールでの評価においてもクラック発生等の異常はなく、高信頼性の回路基板であることがわかるが、Mgが添加されていない場合は、実用上は問題ないがアルミ回路部のピール強度がやや低い。これに対して、比較例ではハンダクラックが発生しており信頼性の点で不十分であることがわかる。
【0029】
【発明の効果】
本発明によれば、セラミックス回路基板のアルミニウムの純度を特定範囲に制御することによって、セラミックス回路基板ばかりでなくモジュールの評価においても、回路の剥離や基板でのクラックの発生等の異常がなく、高信頼性の回路基板を再現良く、しかも低コストで提供でき、産業上有用である。
Claims (2)
- セラミックス基板の少なくとも一方の主面にアルミニウム板が接合されたセラミックス回路基板であって、前記アルミニウム板の純度が99.0重量%以上99.95重量%以下であり、且つ、前記アルミニウム板がセラミックス基板に、Mgを含み、さらにSi、Ge、Cuのいずれか1種以上を含有し、しかも液相を生じる温度が500℃〜630℃であるAl合金を介して接合されていることを特徴とするセラミックス回路基板。
- セラミックス基板が窒化アルミニウムからなることを特徴とする請求項1記載のセラミックス回路基板。
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