JP3688775B2 - 軟質樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は軟質樹脂組成物に関し、さらに詳しくは、柔軟性及び環境改善性を有し、かつ耐ブロッキング性,反スベリ性,成形加工性に優れ、床材などの各種シートの基材などとして好適な軟質樹脂組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
クッションフロア,タイル,カーペットなどの床材には軟質材料が用いられており、この軟質材料としては、従来ポリ塩化ビニル系樹脂が広く使用されている。しかしながら、このポリ塩化ビニル系樹脂は、焼却時に有害な塩素や塩化水素を発生し、さらにはダイオキシンなどが発生するおそれがあり、環境上問題となっている。このため、ポリ塩化ビニル系樹脂やこれらを使用した複合材料に代わる材料の開発が望まれている。
このような材料としては、例えば熱可塑性ポリオレフィン系エラストマーや低結晶性のポリオレフィンなどが知られている。しかしながら、これらの材料は、軟質としての性質は満足するものの、成形加工性,耐ブロッキング性,反スベリ性,耐熱性などを兼ね備えたものではなく、用途が制限されるのを免れないという欠点がある。
【0003】
一方、軟質性と耐熱性を満足するポリプロピレン系樹脂に、軟質エラストマーを配合した樹脂組成物が知られている(特開平3−168233号公報)。しかしながら、この樹脂組成物は、成形加工性が必ずしも充分でない場合があり、また、用途によっては、難燃性に問題がある。さらに、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−ブタジエンブロック共重合体ゴム(SBR)などのエラストマーに、無機充填剤を配合した組成物も知られている。しかしながら、この組成物は、耐ブロッキング性,反スベリ性,成形加工性の点で不充分であり、用途,成形品の保管条件,成形加工条件が制限される場合があるという問題を有している。なお、耐ブロッキング性は、主として成形品の保管性(段づみ,巻きなど)の観点から要求され、反スベリ性は、成形品がコンクリート上等に施工されることが多く、主として施工性の観点から要求される。また、成形加工性については、成形の容易さ、成形不良(ロールの汚れなど)の発生のないことなどが要求される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような状況下で、柔軟性を有するとともに、耐ブロッキング性,反スベリ性,成形加工性に優れ、かつ環境改善性を有し、各種シートの基材などとして好適な軟質樹脂組成物を提供することを目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記の好ましい性質を有する軟質樹脂組成物を開発すべく鋭意研究を重ねた結果、軟質プロピレン系樹脂,エラストマー及び水酸基含有無機充填剤をそれぞれ所定の割合で含有し、場合によりさらに他の充填剤を所定の割合で含有する組成物がその目的に適合しうることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明は、
(1)(A)軟質プロピレン系樹脂4〜45重量%、(B)エラストマー2〜50重量%、(C)水酸基含有無機充填剤10〜70重量%、及び(D)他の充填剤0〜40重量%を含有することを特徴とする軟質樹脂組成物、
を提供するものである。
【0006】
また、本発明の好ましい態様は、
(2)(A)成分の軟質プロピレン系樹脂が、引張弾性率600MPa以下のものである上記(1)記載の軟質樹脂組成物、
(3)(A)成分の軟質プロピレン系樹脂が、(a)(イ)同位体炭素核磁気共鳴スペクトル(13C−NMR)によるペンタッド分率において、rrrr/(1−mmmm)×100が20〜60%、(ロ)示差走査熱量分析計(DSC)にて測定した融解ピーク温度が150℃以上及び(ハ)DSCにて測定した融解エンタルピー(ΔH)が100J/g以下であるプロピレンの単独重合体及び/又は4重量%以下の他のオレフィン単位を含有する共重合体からなるプロピレン系樹脂、又は(b)該プロピレン系樹脂とプロピレン以外のオレフィン単位を含有するプロピレン系ランダム共重合体との混合物である上記(1),(2)記載の軟質樹脂組成物、及び
(4)(D)成分の他の充填剤が、水酸基含有無機充填剤以外の無機充填剤である上記(1)〜(3)記載の軟質樹脂組成物、
である。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の軟質樹脂組成物における(A)成分の軟質プロピレン系樹脂については特に制限はないが、その、引張弾性率(JIS K7113準拠)が600MPa以下、好ましくは500〜10MPa、より好ましくは400〜30MPaのプロピレン単独重合体、及び/又はプロピレンとエチレンなどの他のオレフィンの含有量が70重量%以下の共重合体である。これらの中でも、(a)下記の(イ)〜(ハ)に示す性状を有するプロピレンの単独重合体及び/又は4重量%の他のオレフィン単位を含有する共重合体からなるプロピレン系樹脂、又は(b)該プロピレン系樹脂とプロピレン以外のオレフィン単位を含有するプロピレン系ランダム共重合体との混合物が好ましく用いられる。
上記プロピレン系樹脂においては、まず、(イ)同位体炭素核磁気共鳴スペクトル(13C−NMR)によるペンタッド分率において、rrrr/(1−mmmm)×100が20〜60%の範囲である。この値が20%未満では耐熱性が不十分であり、また60%を超えると柔軟性が不十分である。耐熱性及び柔軟性のバランスの面から、好ましいrrrr/(1−mmmm)×100は25〜55%の範囲である。ここでrrrrとは任意の連続する5つのプロピレン単位で構成される炭素−炭素結合による主鎖に対して、側鎖である5つのメチル基が交互に反対方向に位置する立体構造あるいはその割合を意味し、mmmmとは任意の連続する5つのプロピレン単位で構成される炭素−炭素結合による主鎖に対して、側鎖である5つのメチル基がいずれも同方向に位置する立体構造あるいはその割合を意味する。
【0008】
なお、このrrrr/(1−mmmm)×100は次のようにして測定した値である。すなわち、JNM−FX−200(日本電子社製,13C−核共鳴周波数50.1MHz)を用い、測定モード:プロトン完全デカップリング法,パルス幅:6.9μs(45°),パルス繰り返し時間:3s,積算回数:10000回,溶媒:1,2,4−トリクロロベンゼン/重ベンゼン(90/10容量%),試料濃度250mg/2.5ミリリットル溶媒,測定温度:130℃の条件にて、13C−NMR測定を行い、メチル基の立体規則性によるケミカルシフトの違いにより、すなわち、22.5〜19.5ppm領域に現れるmmmm〜mrrmの各ピークの面積強度比から、ペンタッド分率を測定し、rrrr/(1−mmmm)×100の値を求めた。
mmmm:21.86ppm
mmmr:21.62ppm
mmrr:21.08ppm
mmrm+rrmr:20.89ppm
rrrr:20.36ppm
mrrm:19.97ppm
【0009】
次に、(ロ)示差走査熱量分析計(DSC)にて測定した融解ピーク温度(Tm)が150℃以上である。Tmが150℃未満では充分な耐熱性が得られない。このTmは、通常150〜165℃の範囲である。なお、該Tmは、Perkin−Elmer社製DSC−7を用いて測定を行い、JIS K−7121に準拠して融解ピークの温度として求めた値である。
さらに、(ハ)DSCにて測定した融解エンタルピー(ΔH)が100J/g以下である。ΔHが100J/gを超えると柔軟性が損なわれ、本発明の目的が達せられない。このΔHは、通常20〜100J/g、好ましくは30〜70J/gの範囲である。なお、該ΔHは、Perkin−Elmer社製DSC−7を用いて測定を行い、JIS K−7122に準拠して、結晶融解時に吸収される総熱エネルギーとして求めた値である。
【0010】
また、上記(a)成分のプロピレンの単独重合体及び4重量%以下の他のオレフィン単位を含有する共重合体は、沸騰n−ヘプタン可溶分量が10〜70重量%の範囲にあるものが好ましい。この沸騰n−ヘプタン可溶分量が10重量%未満では柔軟性が損なわれるおそれがあり、また、70重量%を超えると充分な機械的強度及び耐熱性が得られない傾向がみられる。柔軟性、機械的強度及び耐熱性のバランスの面から、より好ましい沸騰n−ヘプタン可溶分量は20〜50重量%の範囲である。なお、沸騰n−ヘプタン可溶分量は、ソックスレー抽出試験器を用い、沸騰n−ヘプタンで6時間抽出した後の抽出残分量から、可溶分量を算出して得られた値である。
さらに、このプロピレンの単独重合体及び4重量%以下の他のオレフィン単位を含有する共重合体においては、そのプロピレン連鎖部において、通常側鎖のメチル基を有する炭素が隣接して並ぶことはなく、すなわち逆転結合はなく、一つおきに整然と並んでいる。つまり、本発明においては、各プロピレン単位が頭−尾(head-tail)結合により連結しており、頭−頭(head-head)結合や尾−尾(tail-tail)結合は実質的に皆無である。
【0011】
また、上記4重量%以下の他のオレフィン単位を含有するプロピレン共重合体において、他のオレフィン単位を形成するコモノマーのオレフィン類としては、例えば、エチレン;ブテン−1;ペンテン−1;4−メチル−1−ペンテン;ヘキセン−1;ヘプテン−1;オクテン−1;ノネン−1;デセン−1などのα−オレフィンを挙げることができる。これらの中では、エチレンが好適である。これらのオレフィン類はそれぞれ単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。また、これらのコモノマーのオレフィン類は、得られるプロピレン共重合体中の該オレフィン類に由来する単位の含有量が4重量%以下になるように用いる。
【0012】
本発明の組成物においては、該(A)成分の軟質プロピレン系樹脂として、上記(a)プロピレンの単独重合体及び/又は4重量%以下の他のオレフィン単位を含有する共重合体からなるプロピレン系樹脂を用いてもよく、また、(b)このプロピレン系樹脂とプロピレン以外のオレフィン単位を含有するプロピレン系ランダム共重合体との混合物を用いてもよい。
上記(b)成分の混合物に用いられるプロピレン以外のオレフィン単位を含有するプロピレン系ランダム共重合体において、プロピレン以外のオレフィン単位としては、例えばエチレン;ブテン−1;ペンテン−1;4−メチル−1−ペンテン;ヘキセン−1;ヘプテン−1;オクテン−1;ノネン−1;デセン−1などが挙げられ、これらは一種を用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。このランダム共重合体におけるプロピレン以外のオレフィン単位の含有量は、通常10〜70重量%の範囲である。
【0013】
また、この(b)成分の混合物におけるプロピレン以外のオレフィン単位を含有するプロピレン系ランダム共重合体の含有量は、通常90〜5重量%、好ましくは70〜5重量%である。この含有量が90重量%を超えると軟質プロピレン系樹脂としての性能が充分に発揮されず、本発明の目的が達せられない。
本発明の組成物においては、該(A)成分の軟質プロピレン系樹脂は、メルトインデックス(MI)が0.1〜50g/10分の範囲にあるのが望ましい。このMIが0.1g/10分未満では成形が困難であり、また50g/10分を超えると得られる成形品の機械的物性が不充分となる。成形性及び成形品の機械的物性のバランスの面から、より好ましいMIは0.2〜30g/10分の範囲である。なお、このMIは、荷重2.16kgf,温度230℃の条件で測定した値である。さらに、この軟質プロピレン系樹脂は、引張弾性率が600MPa以下であるのが望ましい。この引張弾性率が600MPa超えると、シートにした場合腰が強くなり触感が悪くなる。また、あまり低すぎるとシート成形が困難となる。触感及びシート成形性などの面から、より好ましい引張弾性率は400〜30MPaの範囲である。なお、この引張弾性率は、JIS K7113に基づき、JIS2号ダンベルを用いた引張試験で測定した値である。
【0014】
本発明の組成物における(A)成分の軟質プロピレン系樹脂は、例えば気相一段重合法,スラリー一段重合法,気相多段重合法,スラリー多段重合法又はブレンド法などによって製造することができる。
例えば、重合法によって製造する場合には、
(W)(i)マグネシウム,チタン,ハロゲン原子及び電子供与体からなる固体触媒成分、及び必要に応じて用いられる(ii)結晶性ポリオレフィンから構成される固体成分と、
(X)有機アルミニウム化合物と、
(Y)一般式(I)
【0015】
【化1】
【0016】
〔式中、R1 は炭素数1〜20のアルキル基、R2 は炭素数1〜10の炭化水素基、水酸基又はニトロ基を示し、mは1〜6の整数、nは0〜(6−m)の整数を示す。〕
で表されるアルコキシ基含有芳香族化合物と、
必要に応じて用いられる(Z)電子供与性化合物とからなる触媒系の存在下、プロピレンを単独重合又はプロピレンとその他のオレフィン類とを共重合させればよい。
【0017】
上記(W)固体成分は、(i)成分のマグネシウム,チタン,ハロゲン原子及び電子供与体からなる固体触媒成分と、必要に応じて用いられる(ii)成分の結晶性ポリオレフィンとから構成されている。該(i)成分の固体触媒成分は、マグネシウム,チタン,ハロゲン原子及び電子供与体を必須成分とするものであって、マグネシウム化合物とチタン化合物と電子供与体とを接触させることによって調製することができる。なお、この場合、ハロゲン原子は、ハロゲン化物としてマグネシウム化合物及び/又はチタン化合物などに含まれる。
【0018】
該マグネシウム化合物としては、例えばマグネシウムクロリドなどのマグネシウムジハライド、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、ハイドロタルサイト、マグネシウムのカルボン酸塩、ジエトキシマグネシウムなどのアルコキシマグネシウム、アリロキシマグネシウム、アルコキシマグネシウムハライド、アリロキシマグネシウムハライド、エチルブチルマグネシウムなどのアルキルマグネシウム、アルキルマグネシウムハライド、あるいは有機マグネシウム化合物と電子供与体、ハロシラン、アルコキシシラン、シラノール及びアルミニウム化合物等との反応物などを挙げることができるが、これらの中でマグネシウムハライド、アルコキシマグネシウム、アルキルマグネシウム、アルキルマグネシウムハライドが好適である。またこれらのマグネシウム化合物は一種だけで用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
また、マグネシウム化合物として、金属マグネシウムとハロゲンとアルコールとの反応生成物を用いることもできる。この際用いられる金属マグネシウムは特に制限はなく、任意の粒径の金属マグネシウム、例えば顆粒状、リボン状、粉末状などのものを用いることができる。また、金属マグネシウムの表面状態も特に制限はないが、表面に酸化マグネシウムなどの被膜が生成されていないものが好ましい。
さらに、アルコールとしては任意のものを用いることができるが、炭素数1〜6の低級アルコールを用いることが好ましく、特に、エタノールは触媒性能の発現を著しく向上させる固体触媒成分を与えるので好適である。アルコールの純度及び含水量も限られないが、含水量の多いアルコールを用いると金属マグネシウム表面に水酸化マグネシウムが形成されるので、含水量が1重量%以下、特に2000ppm以下のアルコールを用いることが好ましく、水分は少なければ少ないほど有利である。
【0020】
ハロゲン及び/又はハロゲン含有化合物の種類に制限はなく、ハロゲン含有化合物としては、ハロゲン原子をその分子中に含む化合物であればいずれのものでも使用できる。この場合、ハロゲン原子の種類については特に制限されないが、塩素,臭素又はヨウ素、特にヨウ素が好適に使用される。ハロゲン含有化合物の中ではハロゲン含有金属化合物が特に好ましい。これらの状態,形状,粒度などは特に限定されず、任意のものでよく、例えばアルコール系溶媒(例えば、エタノール)中の溶液の形で用いることができる。
アルコールの使用量は、金属マグネシウム1モルに対して2〜100モル、好ましくは5〜50モルの範囲で選ばれる。アルコール量が多すぎると、モルフォロジーの良好なマグネシウム化合物が得られにくい傾向がみられ、少ない場合は、金属マグネシウムとの反応がスムーズに行われなくなるおそれがある。
【0021】
ハロゲン及び/又はハロゲン含有化合物は通常、金属マグネシウム1グラム原子に対して、ハロゲン原子として0.0001グラム原子以上、好ましくは0.0005グラム原子以上、さらに好ましくは0.001グラム原子以上の割合で用いられる。0.0001グラム原子未満では、得られたマグネシウム化合物を粉砕することなく用いた場合、担持量,活性,立体規則性,生成ポリマーのモルフォロジーなどが低下し、粉砕処理が不可欠なものとなり好ましくない。また、ハロゲン及び/又はハロゲン含有化合物の使用量を適宜選択することにより、得られるマグネシウム化合物の粒径を任意にコントロールすることが可能である。
【0022】
金属マグネシウムとアルコールとハロゲン及び/又はハロゲン含有化合物との反応それ自体は、公知の方法を用いて行うことができる。例えば、金属マグネシウムとアルコールとハロゲン及び/又はハロゲン含有化合物とを、還流下で、水素ガスの発生が認められなくなるまで、通常約20〜30時間反応させて所望のマグネシウム化合物を得る方法である。具体的には、例えばハロゲンとしてヨウ素を用いる場合には、アルコール中に金属マグネシウム及び固体状のヨウ素を投入したのち、加熱し還流する方法、アルコール中に金属マグネシウム及びヨウ素のアルコール溶液を滴下投入後加熱し還流する方法、金属マグネシウムを含むアルコール溶液を加熱しつつヨウ素のアルコール溶液を滴下する方法などが挙げられる。いずれの方法も、例えば窒素ガス,アルゴンガスなどの不活性ガス雰囲気下で、場合により不活性有機溶媒(例えば、n−ヘキサンなどの飽和炭化水素)を用いて行うことが好ましい。金属マグネシウム、アルコール、ハロゲン及び/又はハロゲン含有化合物の投入については、最初からそれぞれ全量を反応槽に投入しておく必要はなく、分割して投入してもよい。特に好ましい形態は、アルコールを最初から全量投入しておき、金属マグネシウムを数回に分割して投入する方法である。
【0023】
このようにした場合、水素ガスの一時的な大量発生を防ぐことができ、安全面から非常に望ましい。また、反応槽も小型化することが可能となる。さらには、水素ガスの一時的な大量発生により引き起こされるアルコールやハロゲン及び/又はハロゲン含有化合物の飛沫同伴を防ぐことも可能となる。分割する回数は、反応槽の規模を勘案して決めればよく、操作の煩雑さを考えると通常5〜10回が好適である。また、反応自体は、バッチ式,連続式のいずれでもよいことは言うまでもない。さらには、変法として、最初から全量投入したアルコール中に金属マグネシウムを先ず少量投入し、反応により生成した生成物を別の槽に分離して除去したのち、再び金属マグネシウムを少量投入するという操作を繰り返すということも可能である。
こうして得たマグネシウム化合物を、次の固体触媒成分の調製に用いる場合、乾燥させたものを用いてもよく、またろ別後ヘプタンなどの不活性溶媒で洗浄したものを用いてもよい。いずれの場合においても、得られたマグネシウム化合物は、粉砕あるいは粒度分布をそろえるための分級操作をすることなく次工程に用いることができる。
【0024】
また、該チタン化合物としては、例えばテトラメトキシチタン,テトラエトキシチタン,テトラ−n−プロポキシチタン,テトライソプロポキシチタン,テトラ−n−ブトキシチタン,テトライソブトキシチタン,テトラシクロヘキシロキシチタン,テトラフェノキシチタンなどのテトラアルコキシチタン、四塩化チタン,四臭化チタン,四ヨウ化チタンなどのテトラハロゲン化チタン、メトキシチタニウムトリクロリド,エトキシチタニウムトリクロリド,プロポキシチタニウムトリクロリド,n−ブトキシチタニウムトリクロリド,エトキシチタニウムトリブロミドなどのハロゲン化アルコキシチタン、ジメトキシチタニウムジクロリド,ジエトキシチタニウムジクロリド,ジプロポキシチタニウムジクロリド,ジ−n−ブトキシチタニウムジクロリド,ジエトキシチタニウムジブロミドなどのジハロゲン化ジアルコキシチタン、トリメトキシチタニウムクロリド,トリエトキシチタニウムクロリド,トリプロポキシチタニウムクロリド,トリ−n−ブトキシチタニウムクロリドなどのモノハロゲン化トリアルコキシチタンなどが挙げられるが、これらの中で高ハロゲン含有チタン化合物、特に四塩化チタンが好適である。またこれらのチタン化合物は一種だけで用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
また、電子供与体としては、後で(Z)成分の電子供与性化合物として例示するものを用いることができる。
該(i)固体触媒成分の調製は、公知の方法(特開昭53−43094号公報,特開昭55−135102号公報、特開昭55−135103号公報、特開昭56−18606号公報、特開昭56−166205号公報、特開昭57−63309号公報、特開昭57−190004号公報、特開昭57−300407号公報、特開昭58−47003号公報)で行うことができる。
【0026】
このようにして調製された(i)固体触媒成分の組成は通常、マグネシウム/チタン原子比が2〜100、ハロゲン/チタン原子比が5〜100、電子供与体/チタンモル比が0.1〜10の範囲にある。
また、(W)固体成分の調製において必要に応じて用いられる(ii)成分の結晶性ポリオレフィンとしては、例えば、ポリエチレン,ポリプロピレン,ポリブテン,ポリ4−メチル−1−ペンテンなどの炭素数2〜10のα−オレフィンから得られる結晶性ポリオレフィンが挙げられる。この結晶性ポリオレフィンは、(1)前記(i)固体触媒成分と有機アルミニウム化合物と必要に応じて用いられる電子供与性化合物とを組み合わせたものの存在下に、オレフィンを予備重合させる方法(予備重合法)、(2)粒径の揃った結晶性ポリエチレンやポリプロピレンなどの結晶性パウダーに、前記(i)固体触媒成分と必要に応じて用いられる有機アルミニウム化合物と電子供与性化合物(融点100℃以上)とを分散させる方法(分散法)、(3)上記(1)の方法と(2)の方法とを組み合わせる方法などを用いることにより得ることができる。
【0027】
上記(1)の予備重合法においては、アルミニウム/チタン原子比は通常0.1〜100、好ましくは0.5〜5の範囲で選ばれ、また電子供与化合物/チタンのモル比は0〜50、好ましくは0.1〜2の範囲で選ばれる。
(W)固体成分における、(i)固体触媒成分と(ii)結晶性ポリオレフィンとの割合については、(i)成分に対する(ii)成分の重量比が通常、0.33〜200、好ましくは0.10〜50の範囲になるように選ばれる。
【0028】
次に、(X)成分として用いられる有機アルミニウム化合物としては、一般式(II)
AlR3 p X3-p ・・・(II)
〔式中、R3 は炭素数3〜20のアルキル基又は炭素数6〜20のアリール基、Xはハロゲン原子、pは1〜3の数を示す。〕
で表される化合物を挙げることができる。例えば、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリオクチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム、ジエチルアルミニウムモノクロリド、ジイソプロピルアルミニウムモノクロリド、ジイソブチルアルミニウムモノクロリド、ジオクチルアルミニウムモノクロリドなどのジアルキルアルミニウムモノハライド、エチルアルミニウムセスキクロリドなどのアルキルアルミニウムセスキハライドなどを好適に使用することができる。これらのアルミニウム化合物は一種だけで用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
本発明における触媒系には、(Y)成分として、一般式(I)
【0030】
【化2】
【0031】
〔式中、R1 は炭素数1〜20のアルキル基、R2 は炭素数1〜10の炭化水素基、水酸基又はニトロ基を示し、mは1〜6の整数、nは0〜(6−m)の整数を示す。〕
で表されるアルコキシ基含有芳香族化合物が用いられる。
【0032】
このアルコキシ基含有芳香族化合物の具体例としては、m−メトキシトルエン;o−メトキシフェノール;m−メトキシフェノール;2−メトキシ−4−メチルフェノール;ビニルアニソール;p−(1−プロペニル)アニソール;p−アリルアニソール;1,3−ビス(p−メトキシフェニル)−1 −ペンテン;5−アリル−2−メトキシフェノール;4−ヒドロキシ−3−メトキシベンジルアルコール;メトキシベンジルアルコール;ニトロアニソール;ニトロフェネトールなどのモノアルコキシ化合物、o−ジメトキシベンゼン;m−ジメトキシベンゼン;p−ジメトキシベンゼン;3,4−ジメトキシトルエン;2,6−ジメトキシフェノール;1−アリル−3,4−ジメトキシベンゼンなどのジアルコキシ化合物、1,3,5−トリメトキシベンゼン;5−アリル−1,2,3−トリメトキシベンゼン;5−アリル−1,2,4−トリメトキシベンゼン;1,2,3−トリメトキシ−5−(1−プロペニル)ベンゼン;1,2,4−トリメトキシ−5−(1−プロペニル)ベンゼン;1,2,3−トリメトキシベンゼン;1,2,4−トリメトキシベンゼンなどのトリアルコキシ化合物などが挙げられるが、これらの中でジアルコキシ化合物及びトリアルコキシ化合物が好適である。これらのアルコキシ基含有芳香族化合物は一種だけで用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
さらに、該触媒には、必要に応じ(Z)成分として電子供与性化合物が用いられる。この電子供与性化合物は、酸素,窒素,リン,イオウ,ケイ素などを含有する化合物であり、基本的にはプロピレンの重合において、規則性の向上性能を有するものが考えられる。
このような電子供与性化合物としては、例えば、有機ケイ素化合物,エステル類,チオエステル類,アミン類,ケトン類,ニトリル類,ホスフィン類,エーテル類,チオエーテル類,酸無水物,酸ハライド類,酸アミド類,アルデヒド類,有機酸類,アゾ化合物などを挙げることができる。
【0034】
例えば、ジフェニルジメトキシシラン,ジフェニルジエトキシシラン,ジベンジルジメトキシシラン,テトラメトキシシラン,テトラエトキシシラン,テトラフェノキシシラン,メチルトリメトキシシラン,メチルトリエトキシシラン,メチルトリフェノキシシラン,フェニルトリメトキシシラン,フェニルトリエトキシシラン,ベンジルトリメトキシシランなどの有機ケイ素化合物、モノメチルフタレート,モノエチルフタレート,モノプロピルフタレート,モノブチルフタレート,モノイソブチルフタレート,モノアミルフタレート,モノイソアミルフタレート,モノメチルテレフタレート,モノエチルテレフタレート,モノプロピルテレフタレート,モノブチルテレフタレート,モノイソブチルテレフタレート,ジメチルフタレート,ジエチルフタレート,ジプロピルフタレート,ジブチルフタレート,ジイソブチルフタレート,ジアミルフタレート,ジイソアミルフタレート,メチルエチルフタレート,メチルイソブチルフタレート,メチルプロピルフタレート,エチルブチルフタレート,エチルイソブチルフタレート,エチルプロピルフタレート,プロピルイソブチルフタレート,ジメチルテレフタレート,ジエチルテレフタレート,ジプロピルテレフタレート,ジイソブチルテレフタレート,メチルエチルテレフタレート,メチルイソブチルテレフタレート,メチルプロピルテレフタレート,エチルブチルテレフタレート,エチルイソブチルテレフタレート,エチルプロピルテレフタレート,プロピルイソブチルテレフタレート,ジメチルイソフタレート,ジエチルイソフタレート,ジプロピルイソフタレート,ジイソブチルイソフタレート,メチルエチルイソフタレート,メチルイソブチルイソフタレート,メチルプロピルイソフタレート,エチルブチルイソフタレート,エチルイソブチルイソフタレート,エチルプロピルイソフタレート,プロピルイソブチルイソフタレートなどの芳香族ジカルボン酸エステル、ギ酸メチル,ギ酸エチル,酢酸メチル,酢酸エチル,酢酸ビニル,酢酸プロピル,酢酸オクチル,酢酸シクロヘキシル,プロピオン酸エチル,酪酸メチル,酪酸エチル,吉草酸エチル,クロル酢酸メチル,ジクロル酢酸エチル,メタクリル酸メチル,クロトン酸エチル,ビバリン酸エチル,マレイン酸ジメチル,シクロヘキサンカルボン酸エチル,安息香酸メチル,安息香酸エチル,安息香酸プロピル,安息香酸ブチル,安息香酸オクチル,安息香酸シクロヘキシル,安息香酸フェニル,安息香酸ベンジル,トルイル酸メチル,トルイル酸エチル,トルイル酸アミル,エチル安息香酸エチル,アニス酸メチル,アニス酸エチル,エトキシ安息香酸エチル,p−ブトキシ安息香酸エチル,o−クロル安息香酸エチル,ナフトエ酸エチルなどのモノエステル、γ−ブチロラクトン,δ−バレロラクトン,クマリン,フタリド,炭酸エチレンなどのエステル類、安息香酸,p−オキシ安息香酸などの有機酸類、無水コハク酸,無水安息香酸,無水p−トルイル酸などの酸無水物、アセトン,メチルエチルケトン,メチルイソブチルケトン,アセトフェノン,ベンゾフェノン,ベンゾキノンなどのケトン類、アセトアルデヒド,プロピオンアルデヒド,オクチルアルデヒド,トルアルデヒド,ベンズアルデド,ナフチルアルデヒドなどのアルデヒド類、アセチルクロリド,アセチルブロミド,プロピオニルクロリド,ブチリルクロリド,イソブチリルクロリド,2−メチルプロピオニルクロリド,バレリルクロリド,イソバレリルクロリド,ヘキサノイルクロリド,メチルヘキサノイルクロリド,2−エチルヘキサノイルクロリド,オクタノイルクロリド,デカノイルクロリド,ウンデカノイルクロリド,ヘキサデカノイルクロリド,オクタデカノイルクロリド,ベンジルカルボニルクロリド,シクロヘキサンカルボニルクロリド,マロニルジクロリド,スクシニルジクロリド,ペンタンジオレイルジクロリド,ヘキサンジオレイルジクロリド,シクロヘキサンジカルボニルジクロリド,ベンゾイルクロリド,ベンゾイルブロミド,メチルベンゾイルクロリド,フタロイルクロリド,イソフタロイルクロリド,テレフタロイルクロリド,ベンゼン−1,2,4−トリカルボニルトリクロリドなどの酸ハロゲン化物類、メチルエーテル,エチルエーテル,イソプロピルエーテル,n−ブチルエーテル,イソプロピルメチルエーテル,イソプロピルエチルエーテル,t−ブチルエチルエーテル,t−ブチル−n−プロピルエーテル,t−ブチル−n−ブチルエーテル,t−アミルメチルエーテル,t−アミルエチルエーテル,アミルエーテル,テトラヒドロフラン,アニソール,ジフェニルエーテル,エチレングリコールブチルエーテルなどのエーテル類、酢酸アミド,安息香酸アミド,トルイル酸アミドなどの酸アミド類、トリブチルアミン,N、N’−ジメチルピペラジン,トリベンジルアミン,アニリン,ピリジン,ピロリン,テトラメチルエチレンジアミンなどのアミン類、アセトニトリル,ベンゾニトリル,トルニトリルなどのニトリル類、2,2’−アゾビス(2−メチルプロパン),2,2’−アゾビス(2−エチルプロパン),2,2’−アゾビス(2−メチルペンタン)などのアゾ結合に立体障害置換基が結合してなるアゾ化合物などが挙げられる。
【0035】
これらの中で有機ケイ素化合物、エステル類,ケトン類,エーテル類,チオエーテル類,酸無水物,酸ハライド類が好ましく、特に、ジフェニルジメトキシシラン,フェニルトリエトキシシランなどの有機ケイ素化合物、ジ−n−ブチルフタレート,ジイソブチルフタレートなどの芳香族ジカルボン酸ジエステル、安息香酸,p−メトキシ安息香酸,p−エトキシ安息香酸,トルイル酸などの芳香族モノカルボン酸のアルキルエステルなどが好適である。これらの電子供与性化合物は一種だけで用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
触媒系の各成分の使用量については、(W)固体成分はチタン原子に換算して反応容積1リットル当たり、通常0.0005〜1モルの範囲になるような量が用いられる。また、(X)有機アルミニウム化合物は、アルミニウム/チタン原子の比が、通常1〜3000、好ましくは40〜800になるような量が用いられ、この量が前記範囲を逸脱すると触媒活性が不充分になるおそれがある。さらに、(Y)アルコキシ基含有芳香族化合物は(W)固体成分中のチタン原子に対するモル比が通常、0.01〜500、好ましくは1〜300になるような割合で用いられ、この量が0.01未満では生成ポリマーの物性が低下するおそれがあり、500を超えると触媒活性が不充分になるおそれがある。
【0036】
本発明において、(A)成分の軟質プロピレン系樹脂として、(a)プロピレンの単独重合体及び/又は4重量%以下の他のオレフィン単位を含有する共重合体からなるプロピレン系樹脂を用いる場合は、前記触媒系の存在下に、例えば一段重合法にてプロピレンの単独重合又はプロピレンと少量の他のオレフィンとを共重合させることにより製造することができる。
また、(b)上記プロピレン系樹脂とプロピレン以外のオレフィン単位を含有するプロピレン系ランダム共重合体との混合物を用いる場合は、一段目の重合において、上記と同様にしてプロピレン系樹脂を製造し、次いで二段目の重合において、プロピレン以外のオレフィンとを共重合させる二段重合法により、該混合物を製造することができる。もちろん、該プロピレン系樹脂とプロピレン以外のオレフィン単位を含有するプロピレン系ランダム共重合体を別々に製造し、それらをブレンドしてもよい。
【0037】
重合形式としては、特に制限はなく、スラリー重合,気相重合,バルク重合,溶液重合,懸濁重合などが用いられる。
気相重合により重合を行う場合、重合圧力は通常10〜45kg/cm2 、好ましくは20〜30kg/cm2 、重合温度は通常40〜90℃、好ましくは60〜75℃の範囲で適宜選ばれる。重合体の分子量調節は、公知の手段、例えば、重合器中の水素濃度を調節することにより行うことができる。また、重合工程で比較的高分子量の(共)重合体を製造し、得られた(共)重合体を有機過酸化物の存在下に溶融混練することにより調節することもできる。重合時間は5分〜10時間程度で適宜選ばれる。
重合に際しては、触媒系を構成する各成分、すなわち、(W)〜(Z)成分を所定の割合で混合し、接触させたのち、ただちに原料モノマーを導入し、重合を開始してもよいし、接触後0.2〜3時間程度熟成させたのち、原料モノマーを導入してもよい。さらに、この触媒成分は不活性溶媒や原料モノマーのオレフィンなどに懸濁して供給することができる。
【0038】
重合後の後処理は常法により行うことができる。すなわち、気相重合法においては、重合後、重合器から導出されるポリマー粉体に、その中に含まれる未反応モノマーなどを除くために、窒素気流などを通過させてもよい。また、所望に応じて押出機によりペレット化してもよく、その際、触媒を完全に失活させるために、少量の水、アルコールなどを添加することもできる。また、バルク重合法においては、重合後、重合器から導出されるポリマーから完全に未反応モノマーを分離したのち、ペレット化することもできる。
本発明の組成物において、(B)成分として用いられるエラストマーについては特に制限はなく、様々なものを用いることができるが、スチレン系エラストマー及びオレフィン系エラストマーが好適である。スチレン系エラストマーとしては、例えばスチレン−ブタジエンブロック共重合体ゴム(SBR),スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS),水素添加スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SEBS),スチレン−イソプレンブロック共重合体(SIR),スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS),水素添加スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)などが挙げられる。一方、オレフィン系エラストマーとしては、例えばエチレン−プロピレンゴム(EPR),エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM),エチレン−ブチレンゴム(EBM)などが挙げられる。
【0039】
これらのエラストマーは単独で用いてもよく、二種以上を組み合せて用いてもよい。また、スチレン系エラストマーを用いる場合には、SEBSと他のスチレン系エラストマーとの併用が好ましい。
本発明の組成物において、(C)成分として用いられる水酸基含有無機充填剤としては、特に制限はなく、分子内に水酸基及び/又は水分子を有するもの、例えば水酸化アルミニウム,水酸化マグネシウム,水酸化カルシウム,水酸化バリウム,水和アルミナ,水和石こう,ホウ酸亜鉛,ホウ酸バリウム,ホウ砂,明バン石,塩基性炭酸マグネシウムなどが挙げられる。これらの中で、効果の点から特に水酸化アルミニウム及び水酸化マグネシウムが好適である。これらの水酸基含有無機充填剤は一種用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の軟質樹脂組成物における各成分の含有割合は、(A)成分の軟質プロピレン系樹脂が4〜45重量%、(B)成分のエラストマーが2〜50重量%及び(C)成分の水酸基含有無機充填剤が10〜70重量%である。(A),(B)及び(C)の各成分の含有割合が上記範囲を逸脱すると耐ブロッキング性,反スベリ性,成形加工性のバランスに優れた軟質樹脂組成物が得られず、本発明の目的が達せられない。耐ブロッキング性,反スベリ性,成形加工性が高いレベルでバランスした軟質樹脂組成物が得られる点から、各成分の好ましい含有量は、(A)成分が5〜40重量%、(B)成分が5〜40重量%及び(C)成分が20〜60重量%の範囲である。また、(A)成分を含有させることにより、成形可能温度が広がるという効果がある。
【0040】
また、本発明の組成物においては、所望により、成形品に適度の剛性を付与するなどの目的で(D)成分として、他の充填剤を40重量%以下の割合で含有させてもよい。この含有量が40重量%を超えると成形加工性が低下するとともに、柔軟性が悪くなる。成形加工性及び柔軟性をあまり損なうことなく、適度の剛性を付与するためには、この(D)成分は、30重量%以下の割合で含有させるのが好ましい。
ここで、他の充填剤としては、上記水酸基含有無機充填剤以外の無機充填剤や有機充填剤が用いられる。水酸基含有無機充填剤以外の無機充填剤としては、例えば球状フィラー,板状フィラー,繊維状フィラーなどがある。球状フィラーとしては、例えば炭酸カルシウム,カオリン(ケイ酸アルミニウム),シリカ、パーライト,シラスバルーン,セリサイト,ケイソウ土,亜硫酸カルシウム,焼成アルミナ,ケイ酸カルシウム,結晶質ゼオライト,非晶質ゼオライトなどが、板状フィラーとしては、例えばタルクやマイカなどが、繊維状フィラーとしては、例えばウオラストナイトのような針状のもの、マグネシウムオキシサルフェイト,チタン酸カリウム繊維,繊維状炭酸カルシウムのような繊維状のもの、さらには、ガラス繊維のような完全に繊維状のものなどが挙げられる。また、カーボンブラックなどの無機系着色剤も用いることができる。
【0041】
一方、有機充填剤としては、例えば木粉や木綿粉などの木質粒子,モミ殻粉末,架橋ゴム粉末,プラスチック粉末,コラーゲン粉末などが挙げられる。
これらの充填剤の中で、特に無機充填剤が好適である。なお、上記充填剤は一種用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の軟質樹脂組成物には、所望により他の樹脂や各種添加成分、例えば他の熱可塑性樹脂,加工助剤,各種安定剤,帯電防止剤,塩素捕捉剤,アンチブロッキング剤,防曇剤,有機系難燃剤,難燃助剤,染料,顔料,プロセスオイル,ワックスなどを配合することができる。
上記他の熱可塑性樹脂としては、高圧法低密度ポリエチレン,高密度ポリエチレン,ポリプロピレン,ポリブテン,ポリ塩化ビニル,ポリスチレン,ポリアミド等の他、変性ポリオレフィン,アクリル樹脂,ABS樹脂,ポリエステル,ポリカーボネートなどが挙げられる。
【0042】
これらの中でも、各種ポリエチレン,ポリプロピレン,ポリブテンなどのポリオレフィン系樹脂が相溶性の点で好ましく、特にポリエチレン,変性ポリオレフィンが好ましい。
変性ポリオレフィンとしては、例えばポリエチレン,ポリプロピレン,エチレン−α−オレフィン共重合体,エチレン−α−オレフィン−非共役ジエン化合物共重合体(例えばEPDMなど),エチレン−芳香族モノビニル化合物−共役ジエン化合物共重合ゴムなどのポリオレフィンを、アクリル酸,メタクリル酸,マレイン酸などの不飽和カルボン酸,無水マレイン酸などの不飽和カルボン酸の無水物、アクリル酸メチル,マレイン酸モノメチルなどの不飽和カルボン酸のエステル、アクリル酸アミド,マレイン酸モノアミドなどの不飽和カルボン酸のアミド、マレイミド,N−ブチルマレイミドなどの不飽和カルボン酸のイミドなどを用いて化学変性したものが挙げられる。
この化学変性方法としては、例えば該ポリオレフィンを適当な溶媒中において、ベンゾイルパーオキシドなどのラジカル発生剤を用いて、前記不飽和カルボン酸やその誘導体と反応させる方法などを用いることができる。
また、加工助剤としては、例えばステアリン酸亜鉛やグリセリンモノステアレートなどが挙げられ、これらを用いることにより、成形温度範囲(成形可能ロール温度,樹脂温度範囲)がより広がり、加工性がさらに改善される。
【0043】
上記、各種安定剤としては酸化劣化、熱劣化等に対する安定剤の使用が最も一般的であり、例えば、フェノール系安定剤、有機ホスファイト系安定剤、チオエーテル系安定剤、ヒンダードアミン系安定剤などを用いることができる。
フェノール系安定剤としては、従来公知のもの、例えば、2,6‐ジ‐t‐ブチル‐4‐メチルフェノール、2,6‐ジ‐t‐ブチル‐4‐エチルフェノール、2,6‐ジシクロヘキシル‐4‐メチルフェノール、2,6‐ジイソプロピル‐4‐エチルフェノール、2,6‐ジ‐t‐アミル‐4‐メチルフェノール、2,6‐ジ‐t‐オクチル‐4‐n‐プロピルフェノール、2,6‐ジシクロヘキシル‐4‐n‐オクチルフェノール、2‐イソプロピル‐4‐メチル‐6‐t‐ブチルフェノール、2‐t‐ブチル‐2‐エチル‐6‐t‐オクチルフェノール、2‐イソブチル‐4‐エチル‐5‐t‐ヘキシルフェノール、2‐シクロヘキシル‐4‐n‐ブチル‐6‐イソプロピルフェノール、スチレン化混合クレゾール、dl‐α‐トコフェロール、t‐ブチルヒドロキノン、2,2′‐メチレンビス(4‐メチル‐6‐t‐ブチルフェノール)、4,4′‐ブチリデンビス(3‐メチル‐6‐t‐ブチルフェノール)、4,4′‐チオビス(3‐メチル‐6‐t‐ブチルフェノール)、2,2′‐チオビス(4‐メチル‐6‐t‐ブチルフェノール)、4,4′‐メチレンビス(2,6‐ジ‐t‐ブチルフェノール)、2,2′‐メチレンビス[6‐(1‐メチルシクロヘキシル)‐p‐クレゾール]、2,2′‐エチリデンビス(4,6‐ジ‐t‐ブチルフェノール)、2,2′‐ブチリデンビス(2‐t‐ブチル‐4‐メチルフェノール)、1,1,3‐トリス(2‐メチル‐4‐ヒドロキシ‐5‐t‐ブチルフェニル)ブタン、トリエチレングリコール‐ビス[3‐(3‐t‐ブチル‐5‐メチル‐4‐ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6‐ヘキサンジオール‐ビス[3‐(3,5‐ジ‐t‐ブチル‐4‐ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2′‐チオジエチレンビス[3‐(3,5‐ジ‐t‐ブチル‐4‐ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N′‐ヘキサメチレンビス(3,5‐ジ‐t‐ブチル‐4‐ヒドロキシ‐ヒドロシンナミド)、3,5‐ジ‐t‐ブチル‐4‐ヒドロキシベンジルホスホネート‐ジエチルエステル、1,3,5‐トリス(2,6‐ジメチル‐3‐ヒドロキシ‐4‐t‐ブチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5‐トリス[(3,5‐ジ‐t‐ブチル‐4‐ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシエチル]イソシアヌレート、トリス(4‐t‐ブチル‐2,6‐ジメチル‐3‐ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、2,4‐ビス(n‐オクチルチオ)‐6‐(4‐ヒドロキシ‐3,5‐ジ‐t‐ブチルアニリノ)‐1,3,5‐トリアジン、テトラキス[メチレン‐3‐(3,5‐ジ‐t‐ブチル‐4‐ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ビス(3,5‐ジ‐t‐ブチル‐4‐ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル)カルシウム、ビス(3,5‐ジ‐t‐ブチル‐4‐ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル)ニッケル、ビス[3,3‐ビス(3‐t‐ブチル‐4‐ヒドロキシフェニル)ブチリックアシド]グリコールエステル、N,N′‐ビス[3‐(3,5‐ジ‐t‐ブチル‐4‐ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、2,2′‐オキザミドビス[エチル‐3‐(3,5‐ジ‐t‐ブチル‐4‐ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ビス[2‐t‐ブチル‐4‐メチル‐6‐(3‐t‐ブチル‐5‐メチル‐2‐ヒドロキシベンジル)フェニル]テレフタレート、1,3,5‐トリメチル‐2,4,6‐トリス(3,5‐ジ‐t‐ブチル‐4‐ヒドロキシベンジル)ベンゼン、3,9‐ビス〔1,1‐ジメチル‐2‐[β‐(3‐t‐ブチル‐4‐ヒドロキシ‐5‐メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル〕‐2,4,8,10‐テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、2,2‐ビス〔4‐[2‐(3,5‐ジ‐t‐ブチル‐4‐ヒドロキシヒドロシンナモイルオキシ)]エトキシフェニル〕プロパン及びステアリル‐β‐(4‐ヒドロキシ‐3,5‐ジ‐t‐ブチルフェノール)プロピオネートなどのβ‐(3,5‐ジ‐t‐ブチル‐4‐ヒドロキシフェニル)プロピオン酸アルキルエステルなどが挙げられる。これらの中では、2,6‐ジ‐t‐ブチル‐4‐メチルフェノール、ステアリル‐β‐(4‐ヒドロキシ‐3,5‐ジ‐t‐ブチルフェノール)プロピオネート、2,2′‐エチリデンビス(4,6‐ジ‐t‐ブチルフェノール)及びテトラキス[メチレン‐3‐(3,5‐ジ‐t‐ブチル‐4‐ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンが好適である。
【0044】
また、有機ホスファイト系安定剤としては、例えば、トリオクチルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリストリデシルホスファイト、トリスイソデシルホスファイト、フェニルジイソオクチルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、フェニルジ(トリデシル)ホスファイト、ジフェニルイソオクチルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、ジフェニルトリデシルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4‐ジ‐t‐ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(ブトキシエチル)ホスファイト、テトラトリデシル‐4,4′‐ブチリデンビス(3‐メチル‐6‐t‐ブチルフェノール)‐ジホスファイト、4,4′‐イソプロピリデン‐ジフェノールアルキルホスファイト(ただし、アルキルは炭素数12〜15程度)、4,4′‐イソプロピリデンビス(2‐t‐ブチルフェノール)・ジ(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ビフェニル)ホスファイト、テトラ(トリデシル)‐1,1,3‐トリス(2‐メチル‐5‐t‐ブチル‐4‐ヒドロキシフェニル)ブタンジホスファイト、トリス(3,5‐ジ‐t‐ブチル‐4‐ヒドロキシフェニル)ホスファイト、水素化‐4,4′‐イソプロピリデンジフェノールポリホスファイト、ビス(オクチルフェニル)・ビス[4,4′‐ブチリデンビス(3‐メチル‐6‐t‐ブチルフェノール)]・1,6‐ヘキサンジオールジホスファイト、ヘキサトリデシル‐1,1,3‐トリス(2‐メチル‐4‐ヒドロキシ‐5‐t‐ブチルフェノール)ジホスファイト、トリス[4,4′‐イソプロピリデンビス(2‐t‐ブチルフェノール)]ホスファイト、トリス(1,3‐ジステアロイルオキシイソプロピル)ホスファイト、9,10‐ジヒドロ‐9‐ホスファフェナンスレン‐10‐オキシド、テトラキス(2,4‐ジ‐t‐ブチルフェニル)‐4,4′‐ビフェニレンジホスホナイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ジ(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、フェニル・4,4′‐イソプロピリデンジフェノール・ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4‐ジ‐t‐ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6‐ジ‐t‐ブチル‐4‐メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト及びフェニルビスフェノール‐A‐ペンタエリスリトールジホスファイトなどが挙げられる。
これらの中では、トリス(2,4‐ジ‐t‐ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト及びテトラキス(2,4‐ジ‐t‐ブチルフェニル)‐4,4′‐ビフェニレンジホスファイトが好ましく、特にトリス(2,4‐ジ‐t‐ブチルフェニル)ホスファイトが好適である。
【0045】
さらに、有機チオエーテル系安定剤としては、ジアルキルチオジプロピオネート及びアルキルチオプロピオン酸の多価アルコールエステルを用いることが好ましい。ここで使用されるジアルキルチオジプロピオネートとしては、炭素数6〜20のアルキル基を有するジアルキルチオジプロピオネートが好ましく、またアルキルチオプロピオン酸の多価アルコールエステルとしては、炭素数4〜20のアルキル基を有するアルキルチオプロピオン酸の多価アルコールエステルが好ましい。この場合に多価アルコールエステルを構成する多価アルコールの例としては、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール及びトリスヒドロキシエチルイソシアヌレートなどを挙げることができる。
このようなジアルキルチオジプロピオネートとしては、例えば、ジラウリルチオジプロピオネート、ジミリスチルチオジプロピオネート及びジステアリルチオジプロピオネートなどを挙げることができる。一方、アルキルチオプロピオン酸の多価アルコールエステルとしては、例えば、グリセリントリブチルチオプロピオネート、グリセリントリオクチルチオプロピオネート、グリセリントリラウリルチオプロピオネート、グリセリントリステアリルチオプロピオネート、トリメチロールエタントリブチルチオプロピオネート、トリメチロールエタントリオクチルチオプロピオネート、トリメチロールエタントリラウリルチオプロピオネート、トリメチロールエタントリステアリルチオプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラブチルチオプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラオクチルチオプロピオネート、ペンタエリスリトールテトララウリルチオプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラステアリルチオプロピオネートなどを挙げることができる。これらの中では、ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、ペンタエリスリトールテトララウリルチオプロピオネートが好適である。
【0046】
ヒンダードアミン系安定剤としては、例えば、ビス(2,2,6,6‐テトラメチル‐4‐ピペリジル)セバケート、コハク酸ジメチル‐1‐(2‐ヒドロキシエチル)‐4‐ヒドロキシ‐2,2,6,6‐テトラメチルピペリジン重縮合物、ポリ[6‐(1,1,3,3‐テトラメチルブチル)イミノ‐1,3,5‐トリアジン‐2,4‐ジイル][(2,2,6,6‐テトラメチル‐4‐ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[2,2,6,6‐テトラメチル‐4‐ピペリジル)イミノ]、テトラキス(2,2,6,6‐テトラメチル‐4‐ピペリジル)‐1,2,3,4‐ブタンテトラカルボキシレート、2,2,6,6‐テトラメチル‐4‐ピペリジルベンゾエート、ビス‐(1,2,6,6‐ペンタメチル‐4‐ピペリジル)‐2‐(3,5‐ジ‐t‐ブチル‐4‐ヒドロキシベンジル)‐2‐n‐ブチルマロネート、ビス‐(N‐メチル‐2,2,6,6‐テトラメチル‐4‐ピペリジル)セバケート、1,1′‐(1,2‐エタンジイル)ビス(3,3,5,5‐テトラメチルピペラジノン)、(ミックスト2,2,6,6‐テトラメチル‐4‐ピペリジル/トリデシル)‐1,2,3,4‐ブタンテトラカルボキシレート、(ミックスト1,2,2,6,6‐ペンタメチル‐4‐ピペリジル/トリデシル)‐1,2,3,4‐ブタンテトラカルボキシレート、ミックスト〔2,2,6,6‐テトラメチル‐4‐ピペリジル/β,β,β′,β′‐テトラメチル‐3,9‐[2,4,8,10‐テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン]ジエチル〕‐1,2,3,4‐ブタンテトラカルボキシレート、ミックスト〔1,2,2,6,6‐ペンタメチル‐4‐ピペリジル/β,β,β′,β′‐テトラメチル‐3,9‐[2,4,8,10‐テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン]ジエチル〕‐1,2,3,4‐ブタンテトラカルボキシレート、N,N′‐ビス(3‐アミノプロピル)エチレンジアミン‐2,4‐ビス[N‐ブチル‐N‐(1,2,2,6,6‐ペンタメチル‐4‐ピペリジル)アミノ]‐6‐クロロ‐1,3,5‐トリアジン縮合物、ポリ[6‐N‐モルホリル‐1,3,5‐トリアジン‐2,4‐ジイル][(2,2,6,6‐テトラメチル‐4‐ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,2,6,6‐テトラメチル‐4‐ピペリジル)イミド]、N,N′‐ビス(2,2,6,6‐テトラメチル‐4‐ピペリジル)ヘキサメチレンジアミンと1,2‐ジブロモエタンとの縮合物、[N‐(2,2,6,6‐テトラメチル‐4‐ピペリジル)‐2‐メチル‐2‐(2,2,6,6‐テトラメチル‐4‐ピペリジル)イミノ]プロピオンアミドなどを挙げることができる。
【0047】
これらのヒンダードアミン系安定剤の中では、特に、コハク酸ジメチル‐1‐(2‐ヒドロキシエチル)‐4‐ヒドロキシ‐2,2,6,6‐テトラメチルピペリジン重縮合物、ポリ[6‐(1,1,3,3‐テトラメチルブチル)イミノ‐1,3,5‐トリアジン‐2,4‐ジイル][(2,2,6,6‐テトラメチル‐4‐ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,2,6,6‐テトラメチル‐4‐ピペリジル)イミノ]、テトラキス(2,2,6,6‐テトラメチル‐4‐ピペリジル)‐1,2,3,4‐ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,6,6‐ペンタメチル‐4‐ピペリジル)‐2‐(3,5‐ジ‐t‐ブチル‐4‐ヒドロキシベンジル)‐2‐n‐ブチルマロネート、1,1′‐(1,2‐エタンジイル)ビス(3,3,5,5‐テトラメチルピペラジノン)、(ミックスト2,2,6,6‐テトラメチル‐4‐ピペリジル/トリデシル)‐1,2,3,4‐ブタンテトラカルボキシレート、(ミックスト1,2,2,6,6‐ペンタメチル‐4‐ピペリジル/トリデシル)‐1,2,3,4‐ブタンテトラカルボキシレート、ミックスト〔2,2,6,6‐テトラメチル‐4‐ピペリジル/β,β,β′,β′‐テトラメチル‐3,9‐[2,4,8,10‐テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン]ジエチル〕‐1,2,3,4‐ブタンテトラカルボキシレート、ミックスト〔1,2,2,6,6‐ペンタメチル‐4‐ピペリジル/β,β,β′,β′‐テトラメチル‐3,9‐[2,4,8,10‐テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン]ジエチル〕‐1,2,3,4‐ブタンテトラカルボキシレート、N,N′‐ビス(3‐アミノプロピル)エチレンジアミン‐2,4‐ビス[N‐ブチル‐N‐(1,2,6,6‐ペンタメチル‐4‐ピペリジル)アミノ]‐6‐クロロ‐1,3,5‐トリアジン縮合物、ポリ[6‐N‐モルホリル‐1,3,5‐トリアジン‐2,4‐ジイル][(2,2,6,6‐テトラメチル‐4‐ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,2,6,6‐テトラメチル‐4‐ピペリジル)イミド]、N,N′‐ビス(2,2,6,6‐テトラメチル‐4‐ピペリジル)ヘキサメチレンジアミンと1,2‐ジブロモエタンとの縮合物、[N‐(2,2,6,6‐テトラメチル‐4‐ピペリジル)‐2‐メチル‐2‐(2,2,6,6‐テトラメチル‐4‐ピペリジル)イミノ]プロピオンアミドが好適である。
【0048】
本発明の軟質樹脂組成物の調製方法については特に制限はなく、従来公知の方法を用いることができる。例えば(A)成分の軟質プロピレン系樹脂、(B)成分のエラストマー、(C)成分の水酸基含有無機充填剤、及び場合により用いられる(D)成分の他の充填剤や各種添加成分を、バンバリーミキサーなどのバッチ系ミキサーや、二軸混練機,二軸押出機,単軸押出機などの混練押出機を用いて溶融混練し、場合により造粒することにより、軟質樹脂組成物を調製することができる。各成分を混練押出機に供給する場合は、各成分を全量ドライブレンドして供給してもよく、各成分を分けて供給してもよい。
このようにして調製された本発明の軟質樹脂組成物は、各種シートの基材などとして用いられる。シートの成形方法としては特に制限はなく、従来慣用されているTダイ成形などの押出成形法を用いることができるが、混練溶触樹脂を直接ミキシングロール,カレンダーロール,シート成形ロールなどに供給し、所定の厚みのシートに加工するのが好ましい。この場合、各成分を上記混練機により混練押出し、造粒することなく、直接シート加工してもよく、また混練後造粒してペレット化したのち、このペレットを各種成形機により押出し加工し、シートを成形してもよい。
【0049】
【実施例】
次に、本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、プロピレン系樹脂の各物性は明細書本文に記載した方法に従って測定した。
【0050】
製造例
(1)マグネシウム化合物の調製
内容積約6リットルの撹拌機付きガラス製反応器を窒素ガスで充分に置換した後、これにエタノール約2,430g、ヨウ素16g及び金属マグネシウム160gを仕込み、撹拌しながら加熱して、還流条件下で系内からの水素ガスの発生がなくなるまで反応させ、固体状反応生成物を得た。この固体状生成物を含む反応液を減圧下乾燥させることによりマグネシウム化合物を得た。
【0051】
(2)固体触媒成分(W)の調製
窒素ガスで充分に置換した内容積5リットルのガラス製反応器に、上記(1)で得られたマグネシウム化合物(粉砕していないもの)160g,精製ヘプタン800ミリリットル,四塩化ケイ素24ミリリットル及びフタル酸ジエチル23ミリリットルを仕込み、系内を80℃に保ち、撹拌しながら四塩化チタン770ミリリットルを加えて110℃で2時間反応させた後、固体成分を分離して90℃の精製ヘプタンで洗浄した。さらに、四塩化チタ1,220ミリリットルを加え、110℃で2時間反応させた後、精製ヘプタンで充分に洗浄し、固体触媒成分(W)を得た。
【0052】
(3)気相重合
内容積200リットルの重合槽に、上記(2)で得られた固体触媒成分(W)6.0g/時間、トリイソブチルアルミニウム(TIBA)0.2モル/時間、1−アリル−3,4−ジメトキシベンゼン(ADMB)0.012モル/時間、ジフェニルジメトキシシラン(DPDMS)0.005モル/時間、プロピレン37kg/時間で供給し、70℃,28kg/cm2 Gで前段の重合を行ったが、ポリマーの生成量は30kg/時間であった。
この前段の重合で得られたポリマーを連続して後段の重合槽へ移送し、エチレンを15kg/時間及びプロピレンを5kg/時間で供給し、50℃、15kg/cm2 Gで重合を行い、エチレン単位含有量16.5重量%、後段での反応比40%のポリマーを得た。
【0053】
前段の重合で得られたポリマーは、プロピレンホモポリマーであり、その極限粘度〔η〕(135℃,デカリン中)は、4.27デシリットル/gであった。
また、上記ホモポリマーの沸騰n−ヘプタン不溶成分量は60.0重量%であり、該沸騰n−ヘプタン不溶成分の〔η〕は4.76デシリットル/g、沸騰n−ヘプタン可溶成分の〔η〕は2.65デシリットル/gであった。
一方、該ホモポリマーの13C−NMRスペクトルから算出したペンタッド分率rrrr/(1−mmmm)×100は34.5%であり、DSCにて測定した融解ピーク温度(Tm)は158℃、融解エンタルピー(ΔH)は54J/gであった。また、プロピレンの頭−尾間の結合に関する逆転結合はみられなかった。得られたホモポリマーのメルトインデックス(MI)は、該ポリプロピレンのパウダーに、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルパーオキシ)−ヘキサンを混合し、さらに酸化防止剤、熱安定剤、塩素捕捉剤を添加した後、40mmφ押出機で押し出してペレットとして測定し、2.0g/10分であることが分かった。
なお、上記ポリマーを過酸化物で分解して低分子量化したが、この低分子量化ポリマーにあっても、上述したペンタッド分率,融解ピーク温度及び融解エンタルピーに変化はなかった。
【0054】
次いで、後段の重合で得られたポリマーについて説明する。このポリマーは、プロピレンホモポリマーとエチレン−プロピレンランダム共重合体との混合物からなる軟質プロピレン系樹脂であり、本発明に係る(A)成分の軟質プロピレン系樹脂における(b)成分に相当する。
なお、該後段の重合で得られたポリマーのトータルの極限粘度〔η〕は4.77デシリットル/gであった。また、MIは、重合で得られたパウダーに、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルパーオキシ)−ヘキサンを混合し、これにさらに酸化防止剤,安定剤,塩素捕捉剤を添加して混合し、40mmφで押し出して得られたペレットについて測定し、MI(230℃,2.16kgf)2.5g/10分なる値を得た。
また、このポリマーの引張弾性率は230MPaであった。
【0055】
実施例1〜14及び比較例1〜10
第1表及び第2表に示す種類と量の各成分を予めドライブレンドしたのち、バッチミキサー(MS−1.7型,南千住製作所製)により、設定温度120℃で5分間混練した。混練終了後、混練物を取り出し、溶融状態のまま10インチミキシングロール(西村社製)に供給し、3分間混練したのち、物性評価用のシートを取り出した。
なお、ミキシングロールでの混練の際、以下に示す要領で成形性(成形可能温度範囲)を評価した。また、シートの物性を以下に示す要領で評価した。
【0056】
〈成形性評価〉
代表的なサンプルについて、ミキシングロール温度を変化させ、成形上限温度として、ロールに付着し、ロールから剥離しない温度を求め、成形下限温度として、ロールに付着せず、シート表面荒れが発生する温度を求めた。
【0057】
〈シートの物性評価〉
(1)引張弾性率
厚さ1mmシートについて、JIS K7113に基づき、JIS2号ダンベルを用いた引張試験にて引張弾性率を求めた。
(2)破断強度
厚さ1mmシートについて、JIS K7113に基づき、JIS2号ダンベルを用いた引張試験にて破断強度を求めた。
(3)動摩擦係数,静摩擦係数(反スベリ性)
厚さ3mm×63.5mm×63.5mmの試験片を用い、JIS K7125に準拠した設備を用いて引速200mm/minで測定し、動摩擦係数及び静摩擦係数を求めた。
(4)剥離荷重(ブロッキング性)
厚さ1mmシートについて、評価サンプル:75×25mm,圧着部:30×25mm,圧着条件:温度60℃,荷重5kgにて、剥離荷重を求めた。
これらの結果を第3表及び第4表に示す。
【0058】
【表1】
【0059】
【表2】
【0060】
【表3】
【0061】
【表4】
【0062】
(注)
TPO:製造例で得られた軟質プロピレン系樹脂
SBR:スチレン−ブタジエンブロック共重合体ゴム,旭化成(株)製タフデンT2003
SEBS:水素添加スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体,旭化成(株)製 タフテックH1052
EPR:エチレン−プロピレンゴム,日本合成ゴム(株)製 EP07P
EPDM:エチレン−プロピレン−ジエンゴム,日本合成ゴム(株)製 EP57P
水酸化アルミニウム:昭和電工(株)製 ハジライトH−21
水酸化マグネシウム:協和化学(株)製 キスマー5B
炭酸カルシウム:日東粉化社製 NS#400
SBS:スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体,旭化成(株)製ソルプレンT475
【0063】
【表5】
【0064】
【表6】
【0065】
【表7】
【0066】
【表8】
【0067】
〔注〕
1)成形下限温度〜成形上限温度
2)実施例5の組成物100重量部にステアリン酸亜鉛0.5重量部を添加した場合の成形温度範囲は145〜180℃である。
3)実施例7の組成物100重量部にステアリン酸亜鉛0.5重量部を添加した場合の成形温度範囲は130〜170℃である。
【0068】
以上の結果から、次のことが分かる。すなわち、(1)本発明の軟質樹脂組成物は、同一弾性率レベルで比較した場合、現在使用されている組成物(比較例1,2)に比べて、耐ブロッキング性(剥離強度が小さい)、反スベリ性(摩擦係数が大きい)に優れる。(2)軟質プロプレン系樹脂(TPO)単独では反スベリ性に劣り、成形可能温度も高く、範囲も狭い(比較例5)。(3)無機充填剤の配合量が多くなると破断強度の低下が著しい(比較例9,10)。(4)水酸化アルミニウムを添加しない場合や軟質プロピレン系樹脂の添加量が少ない場合、耐ブロッキング性が著しく悪い(比較例3,4,6,7,8)。(5)現在使用されている組成物(比較例1,2)の成形可能温度範囲は約10℃であるのに対し、本発明の組成物は約20℃と大幅に改良されている。
【0069】
【発明の効果】
本発明の軟質樹脂組成物は、柔軟性を有するとともに、耐ブロッキング性,反スベリ性,成形加工性に優れ、しかも環境改善性及びリサイクル性を有しており、クッションフロア,タイル,カーペットなどの床材をはじめ、各種シートの基材などとして好適に用いられる。
Claims (3)
- (A)軟質プロピレン系樹脂として、(a)(イ)同位体炭素核磁気共鳴スペクトル(13C−NMR)によるペンタッド分率において、rrrr/(1−mmmm)×100が20〜60%、(ロ)示差走査熱量分析計(DSC)にて測定した融解ピーク温度が150℃以上及び(ハ)DSCにて測定した融解エンタルピー(ΔH)が100J/g以下であるプロピレンの単独重合体及び/又は4重量%以下の他のオレフィン単位を含有する共重合体からなるプロピレン系樹脂、又は(b)該プロピレン系樹脂とプロピレン以外のオレフィン単位を含有するプロピレン系ランダム共重合体との混合物4〜45重量%、(B)エラストマー2〜50重量%、(C)水酸基及び/又は水分子含有無機充填剤10〜70重量%、及び(D)他の充填剤10〜40重量%を含有することを特徴とする軟質樹脂組成物。
- (A)成分の軟質プロピレン系樹脂が、引張弾性率600MPa以下のものである請求項1記載の軟質樹脂組成物。
- (D)成分の他の充填剤が、水酸基及び/又は水分子含有無機充填剤以外の無機充填剤である請求項1記載の軟質樹脂組成物。
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