JP3687649B2 - 液体噴射ヘッドの固有振動周期測定方法、及び固有振動周期測定装置、並びに、液体噴射ヘッド、及び液体噴射装置 - Google Patents
液体噴射ヘッドの固有振動周期測定方法、及び固有振動周期測定装置、並びに、液体噴射ヘッド、及び液体噴射装置 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクジェット式記録装置、ディスプレー製造装置、電極形成装置、或いは、バイオチップ製造装置等に用いられ、各種の液体を液滴として吐出可能な液体噴射ヘッドに係り、圧力室内に収容された液体の固有振動周期を測定する方法及び装置、並びに、測定された固有振動周期に基づいて駆動信号の波形を定める液体噴射装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
液体を液滴の状態で吐出可能な液体噴射ヘッドを有する液体噴射装置としては、例えば、インク滴を吐出して記録紙上に画像等を記録する画像記録装置、液状の電極材を基板上に吐出して電極を形成する電極形成装置、生体試料を吐出してバイオチップを製造するバイオチップ製造装置、或いは、所定量の試料を容器に吐出するマイクロピペットが提案されている。
【0003】
上記の液体噴射ヘッドは、液滴を吐出させるにあたり、圧力室内に収容された液体の圧力変動を利用している。この液体噴射ヘッドでは、圧力変動に伴って圧力室内の液体には圧力室内が恰も音響管であるかのように振る舞う圧力振動が励起される。この圧力振動の周期は、液体噴射ヘッドの種類毎に定まるので固有振動周期とも呼ばれる。そして、この固有振動周期は、同種の液体噴射ヘッド同士の間でもばらつきが生じ得る。これは、液体噴射ヘッドを構成する部品の寸法や取付精度にばらつきが生じてしまうからである。この固有振動周期のばらつきによって、液滴の吐出特性、例えば、液滴の吐出量や飛行速度がばらついてしまう。これは、同一の駆動信号で駆動した場合、液体圧力の変化が固有振動周期に応じて異なり、液滴吐出時点におけるメニスカス(ノズル開口で露出している液体の自由表面)の位置や移動速度が相違するからである。
【0004】
このような事情に基づき、液体噴射ヘッドの固有振動周期を測定し、その測定結果に基づいて駆動信号を構成する各波形要素を制御する装置が提案されている。固有振動周期の測定方法は種々提案されているが、測定に長時間要すると生産性の低下を招く。この点を考慮し、励振信号から吐出信号までの時間間隔を異ならせた3種の評価パルスを用い、各評価パルスに対応する液体吐出量に基づいて液体噴射ヘッドを複数のTcランクに分類する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。この方法では、1つの液体噴射ヘッドについて吐出液体量の測定を3回行えば足りるので、測定作業を効率良く行うことができ、量産に適する。
【0005】
【特許文献1】
特開2002−154212号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、さらなる生産性の向上を図るには、固有振動周期の測定を一層効率化する必要がある。また、液滴の吐出量や飛行速度をより高い精度で制御すべく、その液体噴射ヘッドの固有振動周期そのものを測定することが望まれている。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、固有振動周期の測定を一層効率化すると共に、固有振動周期の測定精度を向上させることにある。また、他の目的は、液滴の吐出量や飛行速度をより高い精度で制御することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するために提案されたものであり、ノズル開口に連通すると共に液体を収容可能な圧力室と、該圧力室に液体を供給する液体供給口と、前記圧力室内の液体に圧力変動を生じさせる圧力発生素子とを備えた液体噴射ヘッドの前記圧力室内に収容された液体に対する固有振動周期を測定する固有振動周期測定方法において、
圧力室内の液体に圧力振動を励起させる励振要素、及び、該励振要素よりも後に発生されてノズル開口から液滴を吐出させる吐出要素とを含み、励振要素から吐出要素までの時間間隔を第1時間間隔に設定した第1評価パルスと前記時間間隔を第1時間間隔よりも長い第2時間間隔に設定した第2評価パルスとを圧力発生素子へ供給することで、第1評価パルスに対応する第1液体量と第2評価パルスに対応する第2液体量とを測定する液体量測定工程と、
該測定された第1液体量と第2液体量から液体量比を取得する液体量比取得工程と、
該液体量比を予め取得しておいた液体量比と固有振動周期の相関関係にあてはめることで、圧力室内の液体に関する固有振動周期を決定する固有振動周期決定工程とを経ることを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、ノズル開口に連通すると共に液体を収容可能な圧力室と、該圧力室に液体を供給する液体供給口と、前記圧力室内の液体に圧力変動を生じさせる圧力発生素子とを備えた液体噴射ヘッドの前記圧力室内に収容された液体に対する固有振動周期を測定する固有振動周期測定装置において、
圧力室内の液体に圧力振動を励起させる励振要素、及び、該励振要素よりも後に発生されてノズル開口から液滴を吐出させる吐出要素とを含み、励振要素から吐出要素までの時間間隔を第1時間間隔に設定した第1評価パルスと前記時間間隔を第1時間間隔よりも長い第2時間間隔に設定した第2評価パルスとを発生し、圧力発生素子に供給可能な駆動手段と、
前記第1評価パルスに対応する第1液体量と第2評価パルスに対応する第2液体量とを測定する液体量測定手段と、
液体量測定手段によって測定された第1液体量と第2液体量から液体量比を取得する液体量比取得手段と、
該液体量比取得手段が取得した液体量比を予め取得しておいた液体量比と固有振動周期の相関関係にあてはめることで、圧力室内の液体についての固有振動周期を決定する固有振動周期決定手段とを備えることを特徴とする。
【0010】
これらの発明によれば、第1液体量と第2液体量の液体量比を用いているので、1つの液体噴射ヘッドに対して液体量の測定が2回で済む。このため、簡便であり製造ラインの自動化への対応も容易である。従って、生産性を落とすことなく液体噴射へッドを製造でき、量産に適する。さらに、固有振動周期と液体量比とは高い相関関係を有しているので、上記測定によって得た液体量比を予め取得しておいた液体量比と固有振動周期の相関関係にあてはめることで、その液体噴射ヘッドの固有振動周期を精度良く決定できる。
【0011】
前記発明において、励振要素から吐出要素までの時間間隔を段階的に変えた複数の測定用信号を、最大固有振動周期の液体噴射ヘッドと最小固有振動周期の液体噴射ヘッドとに供給することで、最大周期液体量変動曲線と最小周期液体量変動曲線とを予め取得し、
前記固有振動周期の増加に伴って吐出液体量が増加する増加時間範囲内に前記吐出要素が供給されるように、第1時間間隔及び第2時間間隔の一方を設定すると共に、固有振動周期の増加に伴って吐出液体量が減少する減少時間範囲内に前記吐出要素が供給されるように、第1時間間隔及び第2時間間隔の他方を設定することが好ましい。
なお、「最大固有振動周期」とは液体噴射ヘッドの製造上生じ得る最大値の固有振動周期である。また、「最小固有振動周期」とは液体噴射ヘッドの製造上生じ得る最小値の固有振動周期である。また、「測定用信号」とは、液体量変動曲線(励振要素から吐出要素までの時間間隔と吐出液量との相関関係を示す曲線)を取得するために圧力発生素子に供給される信号である。
この発明によれば、固有振動周期が増加側(或いは減少側)に順次変化すると、第1液体量と第2液体量の一方は増加し他方は減少する。このため、固有振動周期の単位変化量に対する液体量比の変化量を、他の設定よりも大きくすることができる。その結果、固有振動周期を高い精度で決定できる。
【0012】
前記発明において、前記増加時間範囲を、最大周期液体量変動曲線におけるピーク点から最小周期液体量変動曲線における直近のボトム点までの範囲に設定し、前記減少時間範囲を、最大周期液体量変動曲線におけるボトム点から最小周期液体量変動曲線における直近のピーク点までの範囲に設定することが好ましい。
【0013】
前記発明において、前記励振要素から吐出要素までの時間間隔を段階的に変えた複数の測定用信号を標準固有振動周期を有する液体噴射ヘッドに供給することで、標準周期液体量変動曲線を予め取得し、
前記第1時間間隔及び第2時間間隔を、標準周期液体量変動曲線における単位時間当たりの液体量の変化が最大となるタイミングで吐出要素が供給される間隔に設定することが好ましい。さらに、前記増加時間範囲と減少時間範囲とを、互いに隣り合う時間範囲に定めることが好ましい。
なお、「標準固有振動周期」とはその液体噴射ヘッドにおける設計値通りの固有振動周期である。
この発明によれば、固有振動周期の変化幅に対する液体量比の変化幅を可及的に広げることができ、液体量比から固有振動周期を高い精度で決定できる。
【0014】
前記発明において、励振要素から吐出要素までの時間間隔を段階的に変えた複数の測定用信号を、最大固有振動周期の液体噴射ヘッドと最小固有振動周期の液体噴射ヘッドとに供給することで、最大周期液体量変動曲線と最小周期液体量変動曲線とを予め取得し、
前記第1時間間隔及び第2時間間隔は、吐出要素の供給タイミングが、最大周期液体量変動曲線のピーク点から直近の最小周期液体量変動曲線のピーク点までの範囲内となる間隔に設定されていることが好ましい。
【0015】
この発明によれば、測定対象となる液体噴射ヘッドの液体量変動曲線は、最大周期液体量変動曲線と最小周期液体量変動曲線の間に存在する。このため、液体量比取得工程で取得された液体量比に基づき、圧力室内の液体についての固有振動周期を極めて高い精度で決定できる。
【0016】
前記発明において、前記励振要素から吐出要素までの時間間隔を段階的に変えた複数の測定用信号を標準固有振動周期を有する液体噴射ヘッドに供給することで、標準周期液体量変動曲線を予め取得し、
該標準周期液体量変動曲線のボトム点に対応する励振要素から吐出要素までの時間間隔を標準時間間隔とすると共に、前記第1時間間隔と第2時間間隔の中央値を該標準時間間隔に一致させることが好ましい。
この発明において、前記第1時間間隔を標準時間間隔から標準固有振動周期の1/4を減じた時間間隔に設定し、第2時間間隔を標準時間間隔に標準固有振動周期の1/4を加えた時間間隔に設定することが好ましい。
【0017】
前記発明において、前記励振要素の電位差を、前記吐出要素の電位差の90%以上に設定することが好ましく、95%以上に設定することがより好ましい。
【0018】
前記発明において、液体量比取得工程で取得された液体量比が判断基準範囲内か否かを判定する液体量比判定工程と、
前記判断基準範囲を越えていると判定された場合に、第1評価パルスと第2評価パルスの少なくとも一方を再設定する評価パルス再設定工程と、
該評価パルス再設定工程で再設定された新たな評価パルスを用いて液体量を測定する液体量再測定工程と、
該液体量再測定工程で測定された液体量を用いて液体量比を再取得する液体量比再取得工程とを、前記固有振動周期決定工程に先立って行うことが好ましい。
この発明では、固有振動周期が設計値から大きく外れた液体噴射ヘッドであっても、その固有振動周期を精度良く測定することができる。
【0019】
前記発明において、前記評価パルス再設定工程は、前記液体量比取得工程で取得された液体量比を、仮の標準振動周期を示す情報として用い、第1評価パルスと第2評価パルスの両方を再設定することが好ましい。
また、前記発明において、前記評価パルス再設定工程は、第1評価パルスと第2評価パルスの一方を再設定し、前記液体量比再取得工程は、新たな評価パルスに対応する液体量と既測定の液体量とを用いて新たな液体量比を取得することが好ましい。具体的には、前記評価パルス再設定工程にて、決定された固有振動周期が許容判断基準範囲未満の場合に前記第1評価パルスの時間間隔を第1時間間隔よりも短い第3時間間隔に再設定し、決定された固有振動周期が許容判断基準範囲よりも長かった場合に前記第2評価パルスの時間間隔を第2時間間隔よりも長い第4時間間隔に再設定する。
【0020】
前記発明において、前記固有振動周期決定工程では、前記固有振動周期を、液体量比と固有振動周期の相関関係とに基づいて決定することが好ましい。この場合において、前記液体量比と固有振動周期の相関関係を、液体量比を変数とする一次式によって定めることが好ましい。具体的には、前記一次式は、複数設定された液体量比の範囲毎に傾き及び切片が与えられることが好ましい。さらに、この範囲は、標準固有振動周期に対応する標準液体量比よりも小さい側の第1範囲と、標準液体比以上の第2範囲とから構成される。また、この範囲は、標準固有振動周期に対応する標準液体量比を含む第3範囲と、第3範囲よりも小さい側の第4範囲と、第3範囲よりも大きい側の第5範囲とから構成される。
これらの発明によれば、液体量比に基づいて固有振動周期を精度良く決定できる。
【0021】
前記発明において、前記液体量測定工程では、圧力発生素子に対して10kHz以下の低周波数で第1評価パルス及び第2評価パルスを供給することが好ましい。さらには、5kHz以下の低周波数で第1評価パルス及び第2評価パルスを供給することがより好ましい。
この発明によれば、液滴を安定した状態で吐出させることができ、液滴の重量をより精度良く測定することができる。
【0022】
前記発明において、測定環境の温度を測定する環境温度測定工程と、測定された環境温度に基づいて固有振動周期を補正する固有振動周期補正工程とを行うことが好ましい。
なお、この発明において「固有振動周期の補正」とは、液体量を補正することによって固有振動周期を補正する場合と、決定された固有振動周期を直接的に補正する場合の両方を含む。
この発明によれば、測定環境の温度に応じて液体の粘性が変化しても精度良く固有振動周期を決定することができる。
【0023】
前記発明において、液体供給口、圧力室及びノズル開口のうちの少なくともいずれかの寸法情報を取得する寸法情報取得工程と、取得された寸法情報に基づいて固有振動周期を補正する固有周期補正工程とを行うことが好ましい。
なお、この発明において「固有振動周期の補正」とは、液体量を補正することによって固有振動周期を補正する場合と、決定された固有振動周期を直接的に補正する場合の両方を含む。
【0024】
前記発明において、前記液体は、描画用の色材を含有するインクであることが好ましい。
【0025】
また、前記発明で決定された固有振動周期は、その固有振動周期を示す固有情報(数値情報や液体量比を示す液体量比情報)の形態で情報付与媒体(固有情報記憶手段や表記部材)に記録され、液体噴射ヘッドに付与される。
そして、液体噴射ヘッドに付与された固有情報は波形設定手段に参照され、波形設定手段はこの固有情報に基づいて駆動信号の波形形状を適正化する。さらに、駆動信号発生手段は波形形状が適正化された駆動信号を発生し、この駆動信号は圧力発生素子に供給される。
具体的には、前記駆動信号は圧力発生素子に供給される駆動パルスを有するものであり、この駆動パルスを、液滴を吐出させるための吐出要素を含む複数の波形要素によって構成する。そして、前記波形設定手段は、前記固有情報に基づき、調整対象となる波形要素の制御因子を定める。
この発明によれば、適正化された駆動信号によって圧力発生素子を駆動するので、液滴の吐出量や飛行速度をより高い精度で制御することができる。
【0026】
上記発明において、前記制御因子を波形要素の発生時間とし、前記波形設定手段は、調整対象となる波形要素の発生時間を定めるにあたり、前記固有情報に応じて変動する第1補正時間を調整対象となる波形要素の基準発生時間に加算する構成が好ましい。さらに、前記波形設定手段は、装置が使用される環境温度に応じて変動する第2補正時間を前記基準発生時間に加算することで、調整対象となる波形要素の発生時間を定める構成が好ましい。
この発明によれば、演算によって波形要素の発生時間を容易に定めることができる。なお、この発明において、第1補正時間及び第2補正時間は、正数及び負数が含まれる。
【0027】
上記発明において、前記調整対象となる波形要素は、液滴吐出後におけるメニスカスの振動抑制に係わる振動抑制要素であることが好ましい。
例えば、圧力室を膨張させることで液滴吐出後における圧力室内の液体圧力の変動を緩和する膨張制振要素と、前記吐出要素と膨張制振要素との間に発生される一定電位の制振ホールド要素とを備えた駆動パルスにおいては、前記波形設定手段は、前記固有情報に応じて制振ホールド要素の発生時間を定める。また、圧力室を収縮させることで液滴吐出後における圧力室内の液体圧力の変動を吸収する収縮制振要素を備えた駆動パルスにおいては、前記波形設定手段は、前記固有情報に応じて収縮制振要素の発生時間を定める。
この発明によれば、振動抑制要素の適正化により、液滴吐出後のメニスカスの振動を速やかに収束させることができ、高周波駆動時における液滴の吐出特性を安定化できる。なお、「メニスカス」とは、ノズル開口で露出している液体の自由表面を意味する。
【0028】
上記発明において、前記調整対象となる波形要素は、吐出要素と膨張要素との間に発生される一定電位の膨張ホールド要素であることが好ましい。また、固有情報に応じて駆動信号の中間電位を定める構成であることが好ましい。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明では、液体噴射装置の一種であるインクジェット式プリンタ(以下、単にプリンタという)を例に挙げる。このプリンタは、画像記録装置の一種であり、インクジェット式記録へッド(液体噴射ヘッドの一種,以下、記録へッドという。)から液体状のインク(液体の一種)を液滴の状態で吐出させ、記録紙等の印刷記録媒体上に文字や画像を記録する。
【0030】
まず、図1及び図2に基づき、記録へッド1の構造について説明する。例示した記録へッド1は、複数の圧電振動子2、固定板3、及び、フレキシブルケーブル4等をユニット化した振動子ユニット5と、この振動子ユニット5を収納可能なケース6と、ケース6の先端面に接合される流路ユニット7を備えている。
【0031】
ケース6は、振動子ユニット5を収納し固定するための収納空部8を内部に形成した合成樹脂製のブロック状部材である。この収納空部8は、ケース6の高さ方向を貫通する空部であり、収納される振動子ユニット5の数と同じ数だけ設けられる。そして、振動子ユニット5は、圧電振動子2の先端面を収納空部8の先端側開口に臨ませた状態で収納され、固定板3が収納空部8を区画するケース6内壁面に接着されている。
【0032】
圧電振動子2は、圧力発生素子の一種であり、入力された電気エネルギーに応じて変形する電気機械変換素子の一種でもある。本実施形態の圧電振動子2は、30μm〜100μm程度の極めて細い幅の櫛歯状に切り分けられている。また、この圧電振動子2は、圧電体と内部電極とを交互に積層して構成された積層型の圧電振動子であり、圧電体と内部電極との間の電位差に応じ、電界方向と直交する方向に伸縮する。各圧電振動子2は、所謂片持ち梁の状態で固定板3上に取り付けられている。即ち、各圧電振動子2の基端側部分を固定板3上に接合することで、自由端部分を固定板3の縁よりも外側に突出させている。そして、各圧電振動子2の先端面は、それぞれ流路ユニット7の島部9に接合されている。また、フレキシブルケーブル4は、固定板3とは反対側となる基端側部分の表面で、各圧電振動子2と電気的に接続されている。
【0033】
流路ユニット7は、図2に示すように、流路形成基板10を間に挟んでノズルプレートを流路形成基板10の一方の表面に配置し、弾性板12をノズルプレート11とは反対側となる他方の表面に配置して接着することで構成されている。
【0034】
上記のノズルプレート11は、ドット形成密度に対応したピッチで複数のノズル開口13を列状に開設したステンレス鋼製の薄いプレートである。本実施形態では、180dpiのピッチで96個のノズル開口13を開設し、これらのノズル開口13によってノズル列を構成する。そして、このノズル列を、インク供給源毎、例えば、インクカートリッジ毎に複数列形成する。
【0035】
上記の流路形成基板10は、ノズルプレート11の各ノズル開口13と同じピッチで圧力室14となる空部及びインク供給口15となる溝部を複数形成すると共に、共通インク室16となる空部を形成した板状の部材である。この流路形成基板10は、例えばシリコンウエハーをエッチング加工したり、ニッケル等の金属板をプレス加工することにより作製されている。本実施形態では、この流路形成基板10を、シリコンウエハーのエッチング加工によって作成している。上記の圧力室14は、ノズル開口13の列設方向(ノズル列方向)に対して直交する方向に細長い室である。インク供給口15は、共通インク室16と圧力室14との間を連通する流路幅の狭い溝である。また、圧力室14内における共通インク室16から最も離れた位置には、ノズル開口13と圧力室14とを連通するためのノズル連通口17を板厚方向に貫通させた状態で設けている。
【0036】
弾性板12は、支持板18の表面に弾性体膜19を積層した二重構造である。本実施形態では、ステンレス製の支持板18の表面にPPS(ポリフェニレンサルファイド)やPI(ポリイミド)製の樹脂フィルムを弾性体膜19としてラミネートしている。そして、この弾性板12には、圧力室14の一方の開口面を封止するダイヤフラム部20が設けられると共に、共通インク室16の一方の開口面を封止するコンプライアンス部21が設けられている。そして、ダイヤフラム部20は、圧力室14に対応した部分の支持板18を環状にエッチング加工することで作製され、弾性体膜19のみの弾性部22と圧電振動子2が接合される島部9とが設けられている。また、コンプライアンス部21は、共通インク室16に対応する部分の支持板18をエッチング加工で除去し、弾性体膜19のみとしている。
【0037】
上記構成の記録へッド1では、振動子電位に応じて圧電振動子2が素子長手方向に伸縮し、圧力室14の容積が変化する。例えば、放電によって振動子電位を下降させると圧電振動子2は伸張し、島部9がノズルプレート11側に押圧される。この島部9の押圧によって、ダイヤフラム部20の弾性部22が変形して圧力室14は収縮する。一方、充電によって振動子電位を上昇させると圧電振動子2は収縮し、島部9が圧電振動子2側に引っ張られる。この島部9の移動によって圧力室14は膨張する。
【0038】
このような圧力室14の容積変化によって圧力室14内のインク圧力が変動する。即ち、インク圧力は、圧力室14の収縮によって上昇し、圧力室14の膨張によって下降する。従って、圧力室14の容積を制御することで、ノズル開口13からインク滴を吐出させることができる。例えば、膨張によって圧力室14内を負圧化し、インク供給口15を通じて圧力室14内にインクを充填する。インクの充填後に圧力室14を急激に収縮させると、圧力室14内のインクが加圧されるので、ノズル開口13からインク滴を吐出させることができる。
【0039】
次に、この記録へッド1の製造工程について説明する。この製造工程は、各構成部品から記録へッド1を組み立てる組立工程と、組立後の記録へッド1について圧力室14内のインク圧力についての固有振動周期Tcを測定する測定工程と、測定工程で得られた固有振動周期Tcを示す情報(固有情報)を記録へッド1に付与する情報付与工程とからなる。
【0040】
上記の組立工程では、それぞれ別個に作製されたケース6、振動子ユニット5、及び、流路ユニット7から記録へッド1を組み立てる。この組立工程では、まず、ケース6の先端面に流路ユニット7を接合する。この接合は、例えば、接着剤を用いて行う。ケース6と流路ユニット7とを接合したならば、振動子ユニット5をケース6の収納空部8内に収納し固定する。この場合、まず、振動子ユニット5を治具で支持して移動させ、収納空部8内に挿入する。そして、圧電振動子2の先端面を弾性板12の島部9に当接させた状態で位置決めする。位置決めをしたならば、この位置決め状態で固定板3の背面とケース6の内壁との間に接着剤を注入して振動子ユニット5を接着する。
【0041】
記録へッド1を組み立てたならば測定工程に移行する。この測定工程では、インク量の測定を行うインク量測定工程と、このインク量測定工程で得られたインク量に基づき、インク量比を取得するインク量比取得工程と、圧力室14内のインクの固有振動周期Tcを決定する固有振動周期決定工程とを順に行う。そして、これらの各工程は、図3に示す固有振動周期測定装置を用いて行われる。
【0042】
例示した固有振動周期測定装置は、圧電振動子2を駆動可能な駆動手段の一種である評価パルス発生回路31(圧電振動子2を駆動するための評価パルスTPを発生する評価パルス発生手段とも表現できる。)と、液体量測定手段の一種である電子天秤32(重量計測装置,重量計測手段とも表現できる。)と、これらの評価パルス発生回路31及び電子天秤32に対して電気的に接続され、液体量比取得手段及び固有振動周期決定手段の一種としても機能する制御部33とを備えている。この制御部33は、CPU33a,ROM33b,RAM33c,及び情報記憶部33d(例えばEEPROM)等を備えている。
【0043】
インク量測定工程は、本発明における液体量測定工程の一種である。本実施形態のインク量測定工程では、評価パルス発生回路31と記録へッド1とを電気的に接続し、評価パルス発生回路31が発生した評価パルスTPを圧電振動子2に供給して記録へッド1からインク滴を吐出させる。そして、吐出させたインク滴の重量を電子天秤32で測定する。
【0044】
このインク量測定工程において評価パルス発生回路31は、図4に示すように、励振要素PS1から吐出要素PS3までの時間間隔Pwh1を第1時間間隔にした第1評価パルスTP1と、この時間間隔Pwh1を第1時間間隔よりも長い第2時間間隔にした第2評価パルスTP2とをそれぞれ圧電振動子2に供給し、第1評価パルスTP1に対応する第1インク量IwSと第2評価パルスTP2に対応する第2インク量IwLとを測定する。なお、これらの評価パルスTP1,TP2については、後で詳しく説明する。
【0045】
また、これらの評価パルスTP1,TP2を用いた場合、記録へッド1から吐出されるインク滴は、1滴が十数ピコリットル(pL)程度の少量となる。このため、1滴の重量も十数ナノグラム(ng)程度であり、1滴毎に正確な重量を測定することは困難である。そこで、電子天秤32でインク滴の重量を測定する際には、複数のインク滴を各ノズル開口13から吐出させ、その総重量を測定する。例えば、総吐出回数が100,000回となるように各ノズル開口13からインク滴を吐出させ、全体の重量を測定する。
【0046】
この場合において、これらの評価パルスTP1,TP2は、10kHz以下の低周波数にて、特には5kHz以下の低周波数にて、圧電振動子2に供給されることが好ましい。これは、10kHzよりも高い高周波数で評価パルスTP1,TP2を圧電振動子2に供給すると、吐出されるインク量が、周波数変動の影響を受けて変動してしまう虞があるためである。評価パルスの供給周期とインク量の関係を図5に示す。
【0047】
そして、制御部33は、測定されたインク重量を第1インク量IwS或いは第2インク量IwLとして取得する。この場合において、制御部33は、測定されたインク重量をそのまま第1インク量IwS或いは第2インク量IwLとして取得してもよい。また、測定されたインク重量を総吐出回数で除算した1滴のインク重量を、第1インク量IwS或いは第2インク量IwLとして取得してもよい。なお、吐出されたインク量が判れば良いので、吐出されたインク滴を捕集し、その容積を測定してもよい。
【0048】
また、インク量比取得工程は、本発明における液体量比取得工程の一種である。本実施形態では、電子天秤32から受信した第1インク量IwSと第2インク量IwLの重量情報に基づき、制御部33がインク量比(第1インク量IwS/第2インク量IwL,液体量比の一種)を演算する。即ち、制御部33は、インク量比取得手段(液体量比取得手段の一種)として機能しており、演算結果をインク量比として取得する。
【0049】
また、固有振動周期決定工程は、予め取得しておいたインク量比と固有振動周期Tcの相関関係に基づき、測定対象となる記録ヘッド1の固有振動周期Tcを決定する。即ち、制御部33は、取得したインク量比をこの相関関係にあてはめることで固有振動周期Tcを決定する。従って、制御部33は、固有振動周期決定手段としても機能する。なお、本実施形態において、このインク量比と固有振動周期Tcの相関関係を示す情報(相関関係情報)は、上記のROM33b、又は、情報記憶部33dに記憶されている。
【0050】
以下、これらのインク量測定工程、インク量比取得工程、及び固有振動周期Tc取得工程について、詳細に説明する。
【0051】
まず、インク量測定工程について説明する。このインク量測定工程で使用する評価パルスTPは、上記したように、図4に示す形状のパルス信号である。即ち、評価パルスTPは、基準電位としての中間電位Vmから最大電位Vhまで一定勾配で電位を上昇させる励振要素PS1と、励振要素PS1に続いて発生されて最大電位Vhを維持する第1ホールド要素PS2と、第1ホールド要素PS2に続いて発生されて最大電位Vhから最低電位VLまで一定の急勾配で電位を下降させる吐出要素PS3と、吐出要素PS3に続いて発生されて最低電位VLを維持する第2ホールド要素PS4と、最低電位VLから中間電位Vmまで一定勾配で電位を上昇させる制振要素PS5とから構成されている。
【0052】
上記の励振要素PS1は、圧力室14内のインクに圧力振動を励起させる要素である。この励振要素PS1が圧電振動子2に供給されると、詳しくは、励振要素PS1を供給し、その後最大電位Vhを維持すると、圧力室14は、中間電位Vmに対応する基準容積から最大電位Vhに対応する最大容積まで膨張する。この最大電位Vhが供給されている期間において、圧力室14は最大容積を維持する。この容積変化によって圧力室14内のインク圧力は、例えば図6(a)に示すように変動する。即ち、圧力室14が膨張されると、圧力室14内のインク圧力は定常状態よりも低くなる。そして、励振要素PS1の供給が終了すると、続いて、インク供給口15を通じて圧力室14内にインクが流入する等によって圧力室14内のインク圧力は上昇し、定常状態よりも高くなる。その後、圧力室14内のインク圧力は降下し、定常状態よりも低くなる。その結果、この励振要素PS1が圧電振動子2に供給されると、圧力室14内のインクには固有振動周期Tcの圧力振動が励起される。
【0053】
この励振要素PS1の発生時間Pwc1、即ち、圧電振動子2への供給時間は、固有振動周期Tcの圧力振動を励起させ得る時間に設定される。そして、圧力振動を効率よく励起させるという目的からすれば、この時間Pwc1は、圧力室14内におけるインクの固有振動周期Tcの設計値以下に設定されることが好ましく、設計値の1/2以下に設定されるのがより好ましい。なお、本実施形態の記録へッド1では固有振動周期Tcの設計値が7.2μsであるので、励振要素PS1の発生時間Pwc1をその略1/2に相当する3.5μsに設定している。
【0054】
吐出要素PS3は、圧力室14を急激に収縮させることでインクを加圧し、ノズル開口13からインク滴を吐出させる要素である。この吐出要素PS3が圧電振動子2に供給されると、圧力室14は、最大電位Vhに対応する最大容積から最低電位VLに対応する最小容積まで急激に収縮される。この圧力室14の急激な収縮に伴い、圧力室14内のインク圧力が急激に上昇し、ノズル開口13からはインク滴が吐出される。
そして、この吐出要素PS3の発生時間Pwd1は、インク滴を吐出させるために必要な圧力が得られる時間に設定される。この発生時間Pwd1は、圧電振動子2を用いた記録へッド1の場合、好ましくは、圧電振動子2の固有振動周期Taの設計値に設定される。本実施形態において、固有振動周期Taの設計値が固有振動周期Tcの略1/2であることから、発生時間Pwd1は、励振要素PS1の発生時間Pwc1と同じ長さに設定されている。
【0055】
第1ホールド要素PS2は、励振要素PS1の終端から吐出要素PS3の始端までを同電位で接続する要素であり、励振要素PS1から吐出要素PS3までの時間間隔、言い換えれば、吐出要素PS3の供給タイミングを規定する。そして、この第1ホールド要素PS2の時間幅Pwh1を変化させると、吐出されるインク量が変化する。これは、励振要素PS1の供給によって圧力室14内のインクに固有振動周期Tcの圧力振動が生じるためである。
【0056】
以下、この点について説明する。上記の励振要素PS1を圧電振動子2へ供給して振動子電位を最大電位Vhで維持すると、図6(a)に模式的に示すように、圧力室14内のインク圧力は、その記録へッド1の固有振動周期Tcで周期的に上下動する。そして、このインク圧力の周期的な変動によってメニスカス(即ち、ノズル開口で露出しているインクの自由表面)の状態も変化する。
例えば、圧力室14内のインクが定常圧力の場合には、図6(b)に示すように、メニスカスMはノズル面(ノズルプレート11の外側表面)と略同一位置で静止する。そして、インク圧力が定常圧力よりも高い場合には、図6(c)に示すように、メニスカスMはノズル面よりも外側(インク滴の吐出側)に***した状態となる。一方、インク圧力が定常圧力よりも低い場合には、図6(d)に示すように、メニスカスMはノズル面よりも奥側(圧力室14側)に引き込まれた状態となる。
【0057】
そして、吐出されるインク量は、吐出要素PS3の供給タイミングにおけるメニスカスMの状態によって定められる。例えば、図6(b)に示す状態、即ち、メニスカスの定常状態で吐出要素PS3が供給された場合のインク量を基準にすると、図6(c)に示すメニスカスの***状態では、定常状態からの***分だけインク量が基準よりも増加する。一方、図6(d)に示すメニスカスの引き込み状態では、定常状態から引き込まれた分だけインク量が基準よりも減少する。
【0058】
これは、励振要素PS1の供給による圧力室14内のインクの振動エネルギーよりも、圧電振動子2から加えられるエネルギーの方が十分に大きいからと考えられる。即ち、圧電振動子2からの圧力変動がインクの圧力振動よりも十分に大きければ、インク滴吐出時における圧力室14の収縮速度や収縮量に関し、インクの圧力振動の影響は殆ど受けず、メニスカスMの位置の差がインク量の差となって現れると考えられる。
【0059】
そして、図6(a)に示すように、メニスカスMの状態は圧力室14内のインク圧力の変動に伴って周期的に変化する。このため、第1ホールド要素PS2の時間間隔Pwh1をt1に設定するとメニスカスMが定常状態となって基準インク量のインク滴が吐出される。また、この時間間隔Pwh1をt2に設定するとメニスカスMが***状態となって基準のインク量よりも多い量のインク滴が吐出される。さらに、この時間間隔Pwh1をt3に設定するとメニスカスMが引き込み状態となるので、基準のインク量よりも少ない量のインク滴が吐出される。従って、各評価パルスTP1,TP2を用いてインク量を測定すると、第1ホールド要素PS2の時間間隔に応じたインク量が得られる。
【0060】
ところで、上記の記録へッド1では、振動子ユニット5や流路ユニット7の寸法精度や取付精度等の累積公差によって、圧力室14内におけるインクの固有振動周期Tcにばらつきが生じる。また、この固有振動周期Tcが同じであったとしても、各圧電振動子2から発生される力(押圧力や引っ張り力)が振動子ユニット5毎にばらつく。そして、固有振動周期Tcがばらついた場合には、図8に示すように、インクの圧力変動周期が時間軸方向に伸縮し、これに伴いメニスカスMの振動周期も時間軸方向に伸縮する。このため、吐出されるインク量も、メニスカスMの振動周期と同期して変動する。その結果、吐出要素PS3の供給タイミングを一定にしたとしても、その記録へッド1の固有振動周期Tcに応じて吐出されるインク量が相違する。また、圧電振動子2からの力が変化した場合には、図7に示すように、インク量の変動周期は同じであるが、吐出されるインク量が相違する。以下、これらの点について説明する。
【0061】
まず、固有振動周期Tcの違いによって吐出されるインク量が変動する点について説明する。以下の説明では、設計値通りの固有振動周期Tcを有する標準の記録へッドと、製造上生じ得る最大の固有振動周期Tcの記録へッドと、製造上生じ得る最小の固有振動周期Tcの記録へッドの3種類の記録へッド1を例に挙げて説明することにする。
【0062】
なお、以下の説明においては、便宜上、設計値通りの固有振動周期Tcを標準固有振動周期Tcstdといい、この標準固有振動周期Tcstdを有する記録へッド1を標準周期記録へッドという。そして、製造上生じ得る最大の固有振動周期Tcを最大固有振動周期Tcmaxといい、この最大固有振動周期Tcmaxを有する記録へッド1を最大周期記録へッドという。また、製造上生じ得る最小の固有振動周期Tcを最小固有振動周期Tcminといい、この最小固有振動周期Tcminを有する記録へッド1を最小周期記録へッドという。
【0063】
また、組立後の記録へッド1から標準周期記録へッド、最大周期記録へッド、及び最小周期記録へッドを選別するには、その固有振動周期Tcを別方法で測定する必要がある。この固有振動周期Tcの測定は、例えば、インク量変動曲線における変動周期を測定することで行う。
【0064】
ここで、インク量変動曲線とは、図7の下半に、実線、二点鎖線、点線で示された曲線であって、第1ホールド要素PS2の時間間隔Pwh1と吐出されるインク量との関係を示す曲線である。このインク量変動曲線は、例えば、上記の時間間隔Pwh1を微小ステップ単位で段階的に異ならせた複数種類の評価パルスTP毎に測定用信号を構成し、各測定用信号を用いてインク量の測定を行うことで得られる。例示したインク量変動曲線では、時間間隔Pwh1が長くなる程にインク量が周期的に増減する。そして、このインク量変動曲線は、次式(1)によって近似することができる。
【0065】
Iw=A×sin{2π(t/Tc)+α}+O … (1)
この式(1)において、Iwはインク滴(液滴)重量,Aは振動重量振幅,αは初期位相項,Oはベース重量である。なお、上記Aは、吐出要素PS3の電位差A(図4参照)に対応する。
【0066】
図7及び図8から判るように、このインク量変動曲線の変動周期は、その記録へッド1における固有振動周期Tcに相当する。即ち、標準周期記録へッドでは、圧力室14内のインク圧力、メニスカスMの位置、及び、インク量は、それぞれ、図8に実線で示すように、標準固有振動周期Tcstdで周期的に変動する。そして、最大周期記録へッドでは、圧力室14内のインク圧力、メニスカスMの位置、及び、インク量は、それぞれ、図8に二点鎖線で示すように、最大固有振動周期Tcmaxで周期的に変動する。また、最小周期記録へッドでは、圧力室14内のインク圧力、メニスカスMの位置、及び、インク量は、それぞれ、図8に点線で示すように、最小固有振動周期Tcminで周期的に変動する。
【0067】
このため、インク量変動曲線における隣り合う2つのボトム点同士、或いは、ピーク点同士の時間間隔を測定することにより、その記録へッド1の固有振動周期Tcが測定できる。
なお、以下の説明においては、便宜上、標準周期記録へッドのインク量変動曲線を標準周期インク量変動曲線(標準周期液体量変動曲線の一種)という。同様に、最大周期記録へッドのインク量変動曲線を最大周期インク量変動曲線(最大周期液体量変動曲線の一種)といい、最小周期記録へッドのインク量変動曲線を最小周期インク量変動曲線(最小周期液体量変動曲線の一種)という。
【0068】
そして、記録へッド1の固有振動周期Tcが相違すると、第1ホールド要素PS2の発生時間Pwh1を固定しても吐出されるインク量が相違する。例えば、第1ホールド要素PS2の発生時間Pwh1をt4に設定した場合には、最大周期記録へッドにおけるインク量Iwa3は、標準周期記録へッドにおけるインク量Iwa2よりも多くなる。一方、最小周期記録へッドにおけるインク量Iwa1は、標準周期記録へッドにおけるインク量Iwa2よりも少なくなる。また、第1ホールド要素PS2の発生時間Pwh1をt5に設定した場合には、最大周期記録へッドにおけるインク量Iwb3は標準周期記録へッドのインク量Iwb2よりも少なくなり、最小周期記録へッドにおけるインク量Iwb1は標準周期記録へッドのインク量Iwb2よりも多くなる。
【0069】
次に、圧電振動子2からの力が変化した場合について説明する。この場合には、上記したように、インク量の変動周期は同じであるが、吐出されるインク量が相違する。例えば、標準的な力の圧電振動子2を有する振動子ユニット5を用いた場合には、図7に実線のインク量変動曲線で示すように、吐出されるインク量が周期的に変化する。そして、標準よりも強い力の圧電振動子2を有する振動子ユニット5を用いた場合には、図7に点線で示すように、インク量変動曲線は、標準的な振動子ユニット5によるインク量変動曲線よりも全体的に上昇すると共に、その上昇分に比例してインク量の変動幅も広くなる。反対に、標準よりも弱い力の圧電振動子2を有する振動子ユニット5を用いた場合には、図7に二点鎖線で示すように、インク量変動曲線は、標準的な振動子ユニット5によるインク量変動曲線よりも全体的に下降すると共に、その下降分に比例してインク量の変動幅も狭くなる。
従って、圧電振動子2からの力が相違した場合にも、固有振動周期Tcが相違した場合と同様に、第1ホールド要素PS2の発生時間Pwh1を固定したとしても吐出されるインク量が相違する。
【0070】
以上から、第1ホールド要素PS2の発生時間Pwh1を一定時間に固定した場合、吐出されるインク量は、その記録へッド1におけるインクの固有振動周期Tcに応じて変化するが、振動子ユニット5の特性等によっても変化することが判る。このため、1つの評価パルスTPのみを用いてインク量を測定した場合には、インク量の設計値からの差は判るが、その差が固有振動周期Tcの差に起因するものなのか、振動子ユニット5の特性差に起因するものなのかは判断できない。
【0071】
そこで、本実施形態では、インク量測定工程にて第1インク量IwSと第2インク量IwLを測定し、インク量比測定工程にてこれらの第1インク量IwSと第2インク量IwLとからインク量比(IwS/IwL)を求め、固有振動周期決定工程にてこのインク量比と固有振動周期Tcの相関関係から測定対象の記録へッド1の固有振動周期Tcを決定するようにした。以下、この点について説明する。
【0072】
振動子ユニット5の特性が相違する複数のインク量変動曲線同士の間では、上記したように、ベースレベル(例えば平均インク量)の変動に比例してその振幅が変化する。また、各インク量変動曲線の振動周期は、振動子ユニット5の特性に拘わらず揃っている。このため、上記のインク量比は、固有振動周期Tcが同じであればベースレベルが変動しても略一定値となる。
これに対して、固有振動周期Tcが相違する複数のインク量変動曲線は、固有振動周期Tcの差によって時間軸方向に伸縮する。このため、固有振動周期Tcが相違する場合、インク量比は固有振動周期Tcに応じて変化する。
【0073】
例えば、図7に示すように、振動子ユニット5の特性が相違する場合には、第1ホールド要素PS2の発生時間Pwh1をt6として測定したインク量Iwc1,Iwc2,Iwc3と、この発生時間Pwh1をt7として測定したインク量Iwd1,Iwd2,Iwd3の間では、次式(2)の関係が成立する。
【0074】
Iwc1/Iwd1=Iwc2/Iwd2=Iwc3/Iwd3 … (2)
【0075】
また、これらのインク量Iwd1,Iwd2,Iwd3と、第1ホールド要素PS2の発生時間Pwh1をt8として測定したインク量Iwe1,Iwe2,Iwe3との間では、次式(3)の関係が成立する。
【0076】
Iwd1/Iwe1=Iwd2/Iwe2=Iwd3/Iwe3 … (3)
【0077】
同様に、これらのインク量Iwc1,Iwc2,Iwc3と、インク量Iwe1,Iwe2,Iwe3との間では、次式(4)の関係が成立する。
【0078】
Iwc1/Iwe1=Iwc2/Iwe2=Iwc3/Iwe3 … (4)
【0079】
一方、固有振動周期Tcが相違する場合には、図8に示すように、第1ホールド要素PS2の発生時間Pwh1をt4及びt5に設定してそれぞれインク量を測定すると、即ち、最小周期記録へッドに対応するインク量Iwa1,Iwb1と、標準周期記録へッドに対応するインク量Iwa2,Iwb2と、最大周期記録へッドに対応するインク量Iwa3,Iwb3とを測定すると、次式(5)の関係が成立する。
【0080】
Iwa1/Iwb1<Iwa2/Iwb2<Iwa3/Iwb3 … (5)
【0081】
これらのインク量Iwa1、Iwa2、及び、Iwa3に関し、Iwa1はIwa2よりも少なく、Iwa2はIwa3よりも少ない。そして、Iwa1は最小固有振動周期Tcminにおけるインク量であり、Iwa3は最大固有振動周期Tcmaxにおけるインク量であるので、発生時間Pwh1をt4に設定した場合のインク量は、固有振動周期Tcが増加する程に増加している。
一方、Iwb1、Iwb2、及び、Iwb3に関し、Iwb1はIwb2よりも多く、Iwb2はIwb3よりも多い。そして、Iwb1は最小固有振動周期Tcminにおけるインク量であり、Iwb3は最大固有振動周期Tcmaxにおけるインク量であるので、発生時間Pwh1をt5に設定した場合のインク量は、固有振動周期Tcが増加する程に減少するといえる。
従って、第1ホールド要素PS2の発生時間Pwh1をt4及びt5に設定して取得したインク量比(Iwa/Iwb)は、その記録へッド1におけるインクの固有振動周期Tcと1対1に対応する。
【0082】
以上の説明から明らかなように、インク量比取得工程で取得する第1インク量IwSと第2インク量IwLのインク量比は、振動子ユニット5の特性差等に起因するインク量のばらつきについては無効化し、圧力室14内におけるインクの固有振動周期Tcの差に応じて変動するパラメータとなる。
従って、このインク量比(IwS/IwL)と固有振動周期Tcの相関関係を予め取得しておくことで、組立後の記録へッド1のインク量(即ち、インク量比)からその記録へッド1における固有振動周期Tcが決定できる。
【0083】
この場合において、上記励振要素PS1の電位差が大きい程、つまり、励振要素PS1の電位勾配が急峻である程、インク量変動曲線における振幅が大きくなるという知見が得られた。これは、励振要素PS1の電位差が大きい程にメニスカスMの振幅が大きくなるからと考えられる。例えば、図9に示すように、吐出要素PS3の電位差Aに対する励振要素PS1の電位差Bの比(B/A,図4参照)に関し、35%に設定した場合と95%に設定した場合とを比較すると、95%に設定した場合の方がインク量の変化が顕著になっている。このように、インク量の変化が顕著であると、固有振動周期Tcの僅かな違いをインク量比で表すことができる。このため、固有振動周期Tcの検出感度を向上させることができて好ましい。そして、この実験結果から、吐出要素PS3の電位差Aに対する励振要素PS1の電位差Bの比に関し、90%以上となっていることが好ましく、95%以上となっていることがより好ましいといえる。
【0084】
また、固有振動周期Tcを取得する際に用いる2種類の評価パルスTP1,TP2に関し、各評価パルスTP1,TP2における第1ホールド要素PS2の時間間隔Pwh1(第1時間間隔,第2時間間隔)、即ち、吐出要素PS3の供給タイミングは任意に設定できる。しかし、この第1ホールド要素PS2の時間間隔Pwh1の選択の仕方によって固有振動周期Tcの検出精度が相違する。例えば、第1時間間隔と第2時間間隔との差を比較的小さく設定すると、固有振動周期Tcの変化量に対するインク量比の変化量も小さくなり、検出感度が低くなってしまう。
【0085】
本実施形態では、図10に示すように、吐出要素PS3の供給タイミングが最大周期インク量変動曲線のピーク点から直近の最小周期インク量変動曲線のピーク点までの範囲となるように、時間間隔Pwh1(第1時間間隔,第2時間間隔)を設定する。言い換えれば、最大周期インク量変動曲線における2つの隣り合うピーク点同士の間に属し、且つ、最小周期インク量変動曲線における2つの隣り合うピーク点同士の間に属する重複範囲に時間間隔Pwh1を設定する。
この範囲に時間間隔Pwh1を設定すると、測定対象となる記録へッド1のインク量変動曲線は、最大周期インク量変動曲線と最小周期インク量変動曲線の間に存在する。このため、インク量比(IwS/IwL)からその記録へッド1における固有振動周期Tcを高精度に定めることができる。
【0086】
さらに詳しくは、上記範囲内において、標準周期インク量変動曲線のボトム点で吐出要素PS3が供給される時間間隔Pwh1(時間間隔t9)を標準時間間隔とし、第1時間間隔をこの標準時間間隔から標準固有振動周期Tcstdの1/4を減じた時間間隔に設定すると共に、第2時間間隔をこの標準時間間隔に標準固有振動周期Tcstdの1/4を加えた時間間隔に設定する。この設定により、第1時間間隔と第2時間間隔の中央値を標準時間間隔に一致させている。
【0087】
このように設定すると、標準固有振動周期Tcstdを有する記録へッド1については、第1評価パルスTP1に対応するインク量IwSと第2評価パルスTPに対応するインク量IwLとが略等しくなり、インク量比(IwS/IwL)は値1.000に近くなる。そして、標準固有振動周期Tcstdよりも短い固有振動周期Tcを有する記録へッド1については、インク量IwSがインク量IwLよりも小さくなり、インク量比は値1.000よりも小さくなる。また、標準固有振動周期Tcstdよりも長い固有振動周期Tcを有する記録へッド1については、インク量IwSがインク量IwLよりも大きくなり、インク量比は値1.000よりも大きくなる。
【0088】
なお、標準時間間隔と第1時間間隔の差、及び標準時間間隔と第2時間間隔の差は、上記の例に限らず適宜に設定することができる。少なくとも標準固有振動周期Tcの0.1倍(0.1Tcstd)程度の差があれば、固有振動周期Tcを好適に測定できる。
【0089】
次に、インク量比(IwS/IwL)から固有振動周期Tcを決定する工程、即ち、固有振動周期決定工程について説明する。
【0090】
ここで、図11は、固有振動周期Tcを縦軸に、インク量比を横軸にそれぞれ設定し、複数の記録へッド1について固有振動周期Tcとインク量比の関係を示した図である。この図11から、固有振動周期Tcとインク量比とは高い相関関係があることが判る。即ち、固有振動周期Tcが設計値よりも短ければ短いほどインク量比の値は小さくなり、固有振動周期Tcが設計値よりも長ければ長いほどインク量比の値は大きくなる。また、固有振動周期Tcが設計値(7.2μs)に近ければ近いほどインク量比は値1.000に近づく。
【0091】
さらに、この図11より、固有振動周期Tcとインク量比の相関関係は、インク量比を変数とする一次式によって表せることが判る。言い換えれば、固有振動周期Tcとインク量比との関係は、直線状の検量線で表すことができる。
この場合において、インク量比の全範囲を単一の一次式で近似することもできる。しかし、この例では、インク量比の値1.000(標準インク量比に相当)を境に、インク量比の小さい側と大きい側とで有意の差がみられる。このため、値1.000よりも小さい側の範囲(第1範囲に相当)と、値1.000以上の範囲(第2範囲に相当)とに分けて一次式を設定することが好ましい。例えば、値1.000よりも小さい側の範囲を符号LA1の検量線に相当する一次式で近似し、値1.000以上の範囲を符号LA2の検量線に相当する一次式で近似する。このように、複数範囲毎に一次式(LA1,LA2)を設定すると、単一の一次式で近似した場合よりも精度よく固有振動周期Tcを取得できる。
【0092】
なお、この観点からすれば、図12に示すように、インク量比の範囲を、値1.000を中心とし、値0.950以上であって値1.050未満に設定された標準範囲(第3範囲に相当)と、この標準範囲よりも小さい側の範囲(第4範囲に相当)と、標準範囲よりも大きい側の範囲(第5範囲に相当)とに分け、各範囲毎に一次式(検量線LB1〜LB3)を設定してもよい。このようにすれば、より高い精度で固有振動周期Tcを取得できる。
【0093】
このように、インク量比(IwS/IwL)と固有振動周期Tcが高い相関関係を有しているので、いくつかのサンプルを用いて一次式(検量線LA1〜LA2,検量線LB1〜LB3)を予め設定し、制御部33のROMやEEPROMに記憶させておくことで、インク量比から固有振動周期Tcを簡便に取得できる。即ち、制御部33(固有振動周期決定手段)は、上記の一次式にインク量比を代入する演算を行うことで、その記録へッド1における固有振動周期Tcを取得できる。そして、この方法では、インク量比が固有振動周期Tcに1対1に対応しているので、固有振動周期Tcを精度良く取得できる。
【0094】
組立後の記録へッド1について固有振動周期Tcを測定したならば、情報付与工程に移行し、得られた固有振動周期Tcを表す情報(固有情報)を記録へッド1に付与する。
【0095】
この情報付与工程では、例えば、得られた固有振動周期Tcの値を固有情報とし、図13(a)に示すように、固有振動周期Tcの値を文字やバーコード等の光学的に読み取り可能な態様で粘着シール35(表記部材の一種)に表記し、この粘着シール35をケース表面(例えば、側面)に貼設する。また、図13(b)に示すように、記録へッド1内に設けたROM等の情報記憶素子36(固有情報記憶手段の一種)に記憶させてもよい。即ち、固有振動周期Tcを表す固有情報は、粘着シール35や情報記憶素子36等の情報付与媒体を介して記録へッド1に付与される。
なお、上記したように、インク量比が固有振動周期Tcと1対1に対応しているので、上記の固有情報としてはインク量比の値を用いることもできる。
【0096】
以上説明した製造方法によれば、第1ホールド要素PS2の発生時間Pwh1が異なる2種類の評価パルスTP1,TP2を用いてインク量の測定を行うことで、その記録へッド1における固有振動周期Tcを測定できる。そして、このインク量測定は簡便であり、自動化への対応も容易であるので、量産に適する。
【0097】
ところで、上記した第1実施形態では、標準周期インク量変動曲線のボトム点に対応する標準時間間隔(時間間隔t9,図10参照。)を基準とし、この標準時間間隔から規定時間短い第1時間間隔、及び規定時間長い第2時間間隔を用いてインク量IwS,IwL、及びインク量比(IwS/IwL)を取得する構成について説明したが、本発明はこの構成に限定されるものではない。
例えば、固有振動周期Tcの増加に伴ってインク量が増加する増加時間範囲内で吐出要素PS3が供給されるように、第1時間間隔及び第2時間間隔の一方を設定し、且つ、固有振動周期Tcの増加に伴ってインク量が減少する減少時間範囲内で吐出要素PS3が供給されるように、第1時間間隔及び第2時間間隔の他方を設定してもよい。
【0098】
以下、このように構成した第2実施形態について説明する。なお、インク量比を用いることで振動子ユニット5の特性差等に起因するインク量のばらつきの影響は無視できるため、以下の説明では振動子ユニット5の特性差等に起因するインク量のばらつきは考慮しないことにする。
【0099】
図14は、図8のインク量変動曲線における符号Xで示す領域を拡大して示した図である。この図14において、点線は最小周期インク量変動曲線であり、二点鎖線は最大周期インク量変動曲線である。また、実線は標準周期インク量変動曲線である。さらに、この例では、最小周期記録へッドと標準周期記録へッドの中間の固有振動周期Tcを有する記録へッド1(便宜上、第1中間記録へッドという。)のインク量変動曲線を破線で示し、最大周期記録へッドと標準周期記録へッドの中間の固有振動周期Tcを有する記録へッド1(便宜上、第2中間記録へッドという。)のインク量変動曲線を一点鎖線で示している。
【0100】
また、この図14において、最大周期インク量変動曲線における1番目のピーク点をタイミングp1とし、最小周期インク量変動曲線における1番目のボトム点をタイミングp2としている。そして、最大周期インク量変動曲線における1番目のボトム点をタイミングp3とし、最小周期インク量変動曲線における2番目のピーク点をタイミングp4としている。この例では、上記の増加時間範囲は、タイミングp1以上であってタイミングp2以下の時間範囲X1となり、上記の減少時間範囲は、タイミングp3以上であってタイミングp4以下の時間範囲X2となる。
【0101】
この増加時間範囲内に属するタイミングp5でのインク量Iwf1〜Iwf5を比較すると次の関係が成立する。即ち、固有振動周期Tcが最も短い最小周期記録へッドのインク量Iwf1が最も少なく、固有振動周期Tcが2番目に短い第1中間記録へッドのインク量Iwf2が2番目に少なく、標準周期記録へッドのインク量が3番目に少なくなる。また、固有振動周期Tcが2番目に長い第2中間記録へッドのインク量Iwf4が2番目に多く、固有振動周期Tcが最も長い最大周期記録へッドのインク量Iwf5が最も多くなる。そして、これらのインク量Iwf1〜Iwf5の関係は、タイミングp1からp2の範囲で同じように成立する。言い換えると、各インク量変動曲線は、タイミングp1からp2の範囲内では交差しない。従って、このタイミングp1からp2の範囲内では、吐出要素PS3の供給タイミングを固定すると、記録へッド1の固有振動周期Tcの増加に伴ってインク量が増加する。
【0102】
一方、減少時間範囲内に属するタイミングp6でのインク量Iwg1〜Iwg5を比較すると次の関係が成立する。即ち、固有振動周期Tcが最も短い最小周期記録へッドのインク量Iwg1が最も多く、固有振動周期Tcが2番目に短い第1中間記録へッドのインク量Iwg2が2番目に多く、標準周期記録へッドのインク量が3番目に多い。また、固有振動周期Tcが2番目に長い第2中間記録へッドのインク量Iwg4が2番目に少なく、固有振動周期Tcが最も長い最大周期記録へッドのインク量Iwg5が最も少ない。そして、これらのインク量Iwg1〜Iwg5の関係は、タイミングp3からp4の範囲で同じように成立する。即ち、各インク量変動曲線は、タイミングp3からp4の範囲内では交差しない。従って、このタイミングp3からp4の範囲内では、吐出要素PS3の供給タイミングを固定すると、記録へッド1の固有振動周期Tcの増加に伴ってインク量が減少する。
【0103】
そして、第1評価パルスTP1における吐出要素PS3の供給タイミング(第1供給タイミング)を増加時間範囲内に設定し、第2評価パルスTP2における吐出要素PS3の供給タイミング(第2供給タイミング)を減少時間範囲内に設定すると、換言すれば、インク量変動曲線における同一次数のボトム範囲が第1供給タイミングと第2供給タイミングの間に存在するように設定すると、算出したインク量比からその記録へッド1の固有振動周期Tcを高い精度で取得することができる。
【0104】
即ち、インク量比は、第1評価パルスTP1の第1インク量IwSが分子となり、第2評価パルスTP2の第2インク量IwLが分母となっている。このため、固有振動周期Tcが増加する程に第1インク量IwSは増加し第2インク量IwLは減少することになる。反対に、固有振動周期Tcが減少する程に第1インク量IwSは減少し第2インク量IwLは増加することになる。
その結果、固有振動周期Tcの変化幅に対するインク量比の変化幅を、後述する比較例よりも大きくすることができ、インク量比からその記録へッド1における固有振動周期Tcを高い精度で取得することができる。
【0105】
例えば、第1評価パルスTP1における吐出要素PS3の供給タイミングをタイミングp2とし、第2評価パルスTP2における吐出要素PS3の供給タイミングをタイミングp3とした場合には、図15に示すように、固有振動周期Tcの変化幅が約6.6μs〜8.5μsの範囲であるのに対し、インク量比の変化幅が約0.850〜1.150になる。そして、この範囲内においては、実線で示すように、固有振動周期Tcとインク量比の相関関係は、インク量比を変数とする一次式(符号LCで示す検量線)で表すことができる。このように、固有振動周期Tcの変化幅に対してインク量比の変化幅が十分に広いため、インク量比からその記録へッド1における固有振動周期Tcを高い精度で取得することができる。
なお、この例に用いた記録へッド1は、固有振動周期Tcの設計値が7.5μsである。
【0106】
ところで、この図15の相関関係を取得する際に用いた各評価パルスTP1,TP2に関し、その吐出要素PS3の供給タイミングp2,p3は、何れもインク量変動曲線のボトム点に近い側であった。そして、これらの供給タイミングp2,p3は、固有振動周期Tcの変化幅に対するインク量の変化幅が、増加時間範囲や減少時間範囲内において比較的小さいタイミングである。
【0107】
例えば、この供給タイミングp2を供給タイミングp5と比較すると、供給タイミングp5では最小固有振動周期Tcminから最大固有振動周期Tcmaxまで固有振動周期Tcが変化すると、インク量がIwf1からIwf5まで変化する。これに対して、供給タイミングp2では、固有振動周期Tcが最小固有振動周期Tcminから最大固有振動周期Tcmaxまで変化すると、インク量がIwh1からIwh5まで変化する。そして、図から明らかなように、インク量Iwf5とIwf1の差はインク量Iwh5とIwh1の差よりも大きい。
また、供給タイミングp1では、最小固有振動周期Tcminから最大固有振動周期Tcmaxまで固有振動周期Tcが変化すると、インク量がIwi1からIwi5まで変化する。そして、その変化幅は、供給タイミングp5でのインク量Iwf1からIwf5までの差よりも小さい。
【0108】
以上から、増加時間範囲内及び減少時間範囲内において、吐出要素PS3の供給タイミングに最適値があることを意味する。以下、この最適値について説明する。
【0109】
図16は、上記の増加時間範囲(p1以上p2以下)におけるインク量の変化を、固有振動周期Tcが相違する上記5種類の記録へッド1毎に示した図であり、図17は、上記の減少時間範囲(p3以上p4以下)におけるインク量の変化を上記5種類の記録へッド1毎に示した図である。図16において、タイミングp12は、標準周期インク量変動曲線(実線)における単位時間当たりのインク量の変化が最大となるタイミングである。そして、タイミングp11はタイミングp1とp12の中間のタイミングであり、タイミングp13はタイミングp12とp2の中間のタイミングである。また、図17において、タイミングp22は、標準周期インク量変動曲線(実線)における単位時間当たりのインク量の変化が最大となるタイミングである。そして、タイミングp21はタイミングp3とp22の中間のタイミングであり、タイミングp23はタイミングp22とp4の中間のタイミングである。
【0110】
これらの図より明らかなように、増加時間範囲においては、各インク量変動曲線は、タイミングp12におけるインク量の変化幅(Iwj5−Iwj1)が最も大きい。同様に、減少時間範囲においては、各インク量変動曲線は、タイミングp22におけるインク量の変化幅(Iwk1−Iwk5)が最も大きい。
従って、増加時間範囲では吐出要素PS3の供給タイミングをタイミングp12に設定することで、固有振動周期Tcの増減に伴うインク量の増減幅を最大にできる。一方、減少時間範囲では吐出要素PS3の供給タイミングをタイミングp22に設定することで、固有振動周期Tcの増減に伴うインク量の増減幅を最大にできる。
その結果、固有振動周期Tcの変化幅に対するインク量比の変化幅を可及的に大きくすることができ、インク量比からその記録へッド1における固有振動周期Tcをより高い精度で取得できる。
【0111】
なお、この場合、第1評価パルスTP1及び第2評価パルスTP2を設定するにあたり、標準周期インク量変動曲線を取得する必要がある。この標準周期インク量変動曲線は、上記したように、励振要素PS1から吐出要素PS3までの時間間隔を変えた複数の評価パルスTPを測定用信号として用い、この測定用信号を標準周期記録へッドに供給することで測定できる。
【0112】
次に、比較例として、上記の増加時間範囲及び減少時間範囲外の時間範囲を用いた場合について説明する。ここでは、上記の増加時間範囲X1と減少時間範囲X2とに挟まれた範囲X3、即ち、タイミングp2よりも遅くタイミングp3よりも早い範囲(以下、ボトム範囲という。)を例に挙げて説明する。
【0113】
図18は、このボトム範囲内におけるにおけるインク量の変化を、固有振動周期Tcが相違する上記5種類の記録へッド1毎に示した図である。そして、この図18に示すように、ボトム範囲内には、インク量と固有振動周期Tcとが1対1に対応しないタイミングがある。例えば、タイミングp31を吐出要素PS3の供給タイミングにすると、標準周期記録へッドと最小周期記録へッドとがほぼ同じインク量Iwm1となる。さらに、第1中間記録へッドのインク量Iwm2は、上記のインク量Iwh1よりも少なくなっている。このことは、最小固有振動周期Tcminから標準固有振動周期Tcstdまでの範囲内では、インク量が固有振動周期Tcの増加に伴って一旦減少してから上昇するという逆転現象が生じていることを意味する。従って、測定対象の記録へッド1がこの範囲内の固有振動周期Tcを有する場合には、測定されたインク量に対する固有振動周期Tcが2つ存在することになる。
【0114】
同様に、上記のタイミングp31よりも少し遅いタイミングp33を吐出要素PS3の供給タイミングにした場合には、標準周期記録へッドと第2中間記録へッドとがほぼ同じインク量Iwn3となり最も少ない。さらに、最大周期記録へッドと第1中間記録へッドとがほぼ同じインク量Iwn4となる。このため、第1中間記録へッドの固有振動周期Tcから最大周期記録へッドの最大固有振動周期Tcmaxまでの広い範囲でインク量の逆転現象が生じ、1つのインク量に対する固有振動周期Tcが2つ存在することになる。
【0115】
従って、吐出要素PS3の供給タイミングをこのボトム範囲内に設定すると、1つのインク量に対する固有振動周期Tcが2つ存在するタイミング同士を用いることになり、測定精度を高めるという点で好ましくない。さらに、この範囲内は、インク量変動曲線のボトム点付近であるので、固有振動周期Tcの増加量に対するインク量の増減量が少ない。この点でも、測定精度を高め難くなるので好ましくない。
【0116】
その結果、2つの評価パルスTP1,TP2における吐出要素PS3の供給タイミングをこのボトム範囲内に設定した場合には、固有振動周期Tcの変化幅に対するインク量比の変化幅が、上記実施形態よりも小さくなり、固有振動周期Tcの測定精度が低下する。
例えば、第1評価パルスTP1における吐出要素PS3の供給タイミングをタイミングp32とし、第2評価パルスTP2における吐出要素PS3の供給タイミングをタイミングp33とした場合には、図19に符号LDの検量線で表される一次式のように、固有振動周期Tcの変化幅が約6.6μs〜8.5μsの範囲であるのに対し、インク量比の変化幅が約0.960〜1.070になる。
【0117】
これを、図15の例、即ち、上記した増加時間範囲及び減少時間範囲を用いた例と比較すると、固有振動周期Tcの変化幅は両方とも約6.6μs〜8.5μsである。しかし、インク量比の変化幅に関し、図13の例では約0.850〜1.150の範囲で変動するが、図19の例では約0.960〜1.070の範囲でしか変動しない。このため、増加時間範囲及び減少時間範囲を用いることで、測定対象の記録へッド1における固有振動周期Tcをより高い精度で測定できることが判る。
【0118】
そして、インク量比取得工程では、上記したように、測定工程で測定した第1インク量IwSと第2インク量IwLからインク量比を求め、固有振動周期決定工程では、求めたインク量比を固有振動周期Tcとインク量比との相関関係にあてはめることで、その記録へッド1における固有振動周期Tcを決定する。さらに、情報付与工程では、決定した固有振動周期Tcの情報を情報付与媒体を介して記録へッド1に付与する。
【0119】
図15の例で説明すると、その記録へッド1におけるインク量比が0.950であった場合には固有振動周期Tcは7.25μsと判定し、インク量比が0.990であった場合には固有振動周期Tcは7.5μsと判定する。
【0120】
以上説明したようにこの第2実施形態でも、第1ホールド要素PS2の発生時間Pwh1が異なる2種類の評価パルスTP1,TP2を用いてインク量の測定を行うことで、その記録へッド1における固有振動周期Tcを測定できる。そして、このインク量測定は簡便であり、自動化への対応も容易であるので、量産に適する。
さらに、この実施形態では、吐出要素PS3の供給タイミングに関し、第1評価パルスTP1は増加時間範囲内に設定し、第2評価パルスTP2は減少時間範囲内に設定しているので、測定対象の記録へッド1について固有振動周期Tcを精度良く測定することができる。
【0121】
なお、増加時間範囲と減少時間範囲の組み合わせに関し、上記実施形態の組み合わせに限られない。例えば、増加時間範囲に関し、図8に符号Yで示すように、最大周期インク量変動曲線における2番目のピーク点から最小周期インク量変動曲線における2番目のボトム点までの範囲としても良い。この場合、第1評価パルスTP1における吐出要素PS3の供給タイミングが減少時間範囲内に設定され、第2評価パルスTP2における吐出要素PS3の供給タイミングが増加時間範囲内に設定されることになる。そして、このように構成した場合にも、上記実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0122】
なお、増加時間範囲と減少時間範囲の組み合わせは、互いに隣り合う時間範囲であることが好ましい。これは、増加時間範囲と減少時間範囲の組み合わせが2周期以上時間軸方向に離隔すると、後側の時間範囲において、最小固有振動周期Tcminと最大固有振動周期Tcmaxとの差(変化幅)が大きくなり過ぎ、また、減衰によってインク量の変化幅も小さくなり過ぎてしまい、固有振動周期Tcの測定精度が低下する虞があるためである。
【0123】
ところで、上記各実施形態では、インク量比(IwS/IwL)を取得するための検量線(一次式)は、1種類の第1評価信号TP1及び第2評価信号TP2によって作成されていた。このため、測定対象となる記録へッド1の固有振動周期Tcが設計値から大きく外れている場合には、決定された固有振動周期Tcの精度が低くなってしまう。これは、検量線には最適な測定範囲があるからである。このような記録へッド1は、通常、不良品として扱われる。しかし、生産性向上のためには、このような記録へッド1であっても、固有振動周期Tcを精度良く測定してプリンタに搭載することが求められている。
【0124】
この場合において、インク量比取得工程で取得されたインク量比が判断基準範囲を越えていると判定された場合に、第1評価信号と第2評価信号の少なくとも一方を再設定すると、検量線による測定範囲を変えることができる。このため、固有振動周期Tcが設計値から大きく外れている記録へッド1であってもプリンタに搭載することができる。以下、このように構成した第3実施形態について説明する。
【0125】
この第3実施形態では、図20に示すように、検量線LE1〜LE3に対応する3種類の一次式を用いて固有振動周期Tcとインク量比の相関関係を表している。具体的には、標準固有振動周期Tc用の一次式(便宜上、第1の一次式LE1という。)と、標準固有振動周期Tcよりも短い固有振動周期Tc用の一次式(便宜上、第2の一次式LE2という。)と、標準固有振動周期Tcよりも長い固有振動周期Tc用の一次式(便宜上、第3の一次式LE3という。)によって固有振動周期Tcとインク量比の相関関係を表している。
なお、第1の一次式LE1は、インク量比取得工程で取得されたインク量比が判断基準範囲内であった場合に用いられる相関関係を表している。そして、第2の一次式LE2は、取得されたインク量比が判断基準範囲を超えて小さかった場合に用いられる相関関係を表している。また、第3の一次式LE3は、取得されたインク量比が判断基準範囲を超えて大きかった場合に用いられる相関関係を表している。
【0126】
本実施形態において第1の一次式LE1は、第1評価パルスTP1の時間間隔Pwh1(第1時間間隔)を3.5μsに、第2評価パルスTPの時間間隔Pwh1(第2時間間隔)を7μsにそれぞれ設定し、これらの評価パルスTP1,TP2を固有振動周期Tcが異なる複数の記録へッド1に供給して得られたインク量(インク量比)に基づいて定められている。
また、第2の一次式LE2は、第1評価パルスTP1の時間間隔Pwh1(第1時間間隔)を2.7μsに、第2評価パルスTPの時間間隔Pwh1(第2時間間隔)を5.7μsにそれぞれ設定し、これらの評価パルスTP1,TP2を固有振動周期Tcが異なる複数の記録へッド1に供給して得られたインク量(インク量比)に基づいて定められている。
同様に、第3の一次式LE3は、第1評価パルスTP1の時間間隔Pwh1(第1時間間隔)を4.3μsに、第2評価パルスTPの時間間隔Pwh1(第2時間間隔)を8.3μsにそれぞれ設定し、これらの評価パルスTP1,TP2を固有振動周期Tcが異なる複数の記録へッド1に供給して得られたインク量(インク量比)に基づいて定められている。
なお、本実施形態における標準固有振動周期Tcstd(固有振動周期Tcの設計値)は、6.8μsである。
【0127】
以下、本実施形態における測定工程について説明する。この測定工程では、まず、第1の一次式LE1の取得時に使用した評価パルスTP1,TP2(第1時間間隔=3.5μs,第2時間間隔=7μs)をそれぞれ圧電振動子2に供給することにより、ノズル開口13から所定数のインク滴を吐出させる。そして、このインク滴を捕集して電子天秤32で重量を測定し、基準となる第1インク量IwSと第2インク量IwLを得る(インク量測定工程)。
基準の第1インク量IwSと第2インク量IwLを測定したならば、制御部33は、電子天秤32から取得したこれらの第1インク量IwS及び第2インク量IwLからインク量比(IwS/IwL)を演算によって取得する(インク量比取得工程)。
【0128】
インク量比を取得したならば、制御部33は、このインク量比が判断基準範囲内にあるか、判断基準範囲を超えているかを判定する(インク量比判定工程,液体量比判定工程の一種)。
本実施形態では、判断基準範囲が0.9〜1.1である。このため、取得したインク量比が0.9以上1.1以下の範囲内にあれば、制御部33(液体量比判定手段)は、判断基準範囲内にあると判定する。そして、取得したインク量比が0.9よりも小さかった場合、制御部33は、インク量比が判断基準範囲を超えて小さいと判定する。同様に、取得したインク量比が1.1よりも大きかった場合、制御部33は、インク量比が判断基準範囲を超えて大きいと判定する。
【0129】
ここで、インク量比が判断基準範囲内にあると判定された場合には、制御部33(固有振動周期決定手段)は、第1の一次式LE1を用いて測定対象となる記録へッド1の固有振動周期Tcを決定する(固有振動周期決定工程)。
この場合には、上記した各実施形態と同様の手順で固有振動周期Tcが決定される。即ち、制御部33は、取得したインク量比を第1の一次式LE1に代入することで固有振動周期Tcを決定する。
【0130】
一方、インク量比が判断基準範囲を超えて小さいと判定された場合には、制御部33(評価パルス再設定手段)は、第1評価パルスTPと第2評価パルスTPの両方を再設定する。具体的には、第2の一次式LE2の取得時に使用した評価パルスTP1,TP2(第1時間間隔=2.7μs,第2時間間隔=5.7μs)に設定する(評価パルス再設定工程)。
【0131】
評価パルスTPを再設定したならば、制御部33は、再設定された新たな評価パルスTP1,TP2を圧電振動子2に供給する。そして、電子天秤32は、新たな第1インク量IwS及び第2インク量IwLを測定する(液体量再測定工程の一種であるインク量再測定工程。)。
なお、このインク量再測定工程における具体的動作は、上記のインク量取得工程と同様であるので、その説明は省略する。
【0132】
新たな第1インク量IwS及び第2インク量IwLを測定したならば、制御部33(液体量比再取得手段)は、これらの第1インク量IwS及び第2インク量IwLに基づいてインク量比(IwS/IwL)を再取得する(液体量比再取得工程の一種であるインク量比再取得工程)。
【0133】
インク量比を再取得したならば、制御部33(固有振動周期決定手段)は、第2の一次式LE2を用いて測定対象となる記録へッド1の固有振動周期Tcを決定する(固有振動周期決定工程)。
この場合にも、上記した各実施形態と同様の手順で固有振動周期Tcが決定される。即ち、制御部33は、再取得したインク量比を第2の一次式LE2に代入することで固有振動周期Tcを決定する。
【0134】
なお、インク量比が判断基準範囲を超えて大きいと判定された場合も、同様の手順によって固有振動周期Tcが決定される。
簡単に説明すると、まず、評価パルス再設定工程にて、制御部33は、第1評価パルスTP1の時間間隔Pwh1(第1時間間隔)を4.3μsに設定すると共に、第2評価パルスTP2の時間間隔Pwh1(第2時間間隔)を8.3μsに設定する。次に、インク量再測定工程に移行し、制御部33及び電子天秤32によって、新たな第1インク量IwS及び第2インク量IwLが測定される。そして、インク量比再取得工程に移行し、制御部33によって、新たな第1インク量IwS及び第2インク量IwLからインク量比が再取得される。最後に、固有振動周期決定工程に移行し、制御部33は、取得したインク量比と第3の一次式LE3とから測定対象となる記録へッド1の固有振動周期Tcを決定する。
【0135】
本実施形態の構成では、固有振動周期Tcの設計値を基準とする評価パルスTP1,TP2でインク量比を取得し、このインク量比が判断基準範囲(許容範囲)から外れていた場合、即ち、測定対象となる記録へッド1の固有振動周期Tcが設計値から大きく外れていた場合には、その固有振動周期Tcに適した評価パルスTP1,TP2でインク量比を再取得する。そして、再取得されたインク量比を、対応する一次式(第2の一次式LE2,第3の一次式LE3)にあてはめて固有振動周期Tcを決定する。このため、固有振動周期Tcが設計値から大きく外れた記録へッド1であっても、その固有振動周期Tcを精度良く測定することができる。
【0136】
なお、この実施形態では、インク量比が判断基準範囲を超えていると判定された場合、第1評価パルスTPと第2評価パルスTPの両方が再設定されるが、本発明は、この構成に限定されるものではない。例えば、インク量比が判断基準範囲を超えていると判定された場合、第1評価パルスTPと第2評価パルスTPの何れか一方を再設定する構成としてもよい。
【0137】
例えば、基準の評価パルスTP1、TP2で取得されたインク量比が判断基準範囲を超えて小さいと判定された場合、制御部33は、評価パルス再設定工程にて、時間間隔Pwh1の短い側である第1評価パルスTP1を再設定する。即ち、制御部33は、この第1評価パルスTP1の第1時間間隔を標準よりも短い時間(上記の例では2.7μs)に設定する。
反対に、判断基準範囲を超えて大きいと判定された場合には、制御部33は、時間間隔Pwh1の長い側である第2評価パルスTP2を再設定する。即ち、制御部33は、この第1評価パルスTP1の第1時間間隔を標準よりも長い時間(上記の例では8.3μs)に設定する。
【0138】
次に、インク量再測定工程では、制御部33及び電子天秤32は、再設定された評価パルスTPについてインク量を測定する。また、インク量比再取得工程では、再設定された評価パルスTPのインク量と、再設定されなかった評価パルスTPのインク量とを用いてインク量比を再取得する。
【0139】
インク量比を再取得したならば、上記の実施形態と同様の手順で固有振動周期Tcを決定する(固有振動周期決定工程)。
なお、この場合における一次式に関し、第2の一次式LE2は、第1時間間隔を2.7μsにした評価パルスTP1と第2時間間隔を7μsにした評価パルスTP2とによって作成される。また、第3の一次式LE3は、第1時間間隔を3.5μsにした評価パルスTP1と第2時間間隔を8.3μsにした評価パルスTP2とによって作成される。
【0140】
そして、この実施形態の構成でも、上記実施形態と同様に、固有振動周期Tcが設計値から大きく外れた記録へッド1であっても、その固有振動周期Tcを精度良く測定することができる。
【0141】
なお、上記構成は、第1実施形態のように評価パルスTP1,TP2の時間間隔Pwh1を、標準時間間隔(時間間隔t9)からの差で規定するようにした実施形態にも同様に適用できる。
この場合、制御部33は、インク量比取得工程で取得されたインク量比(IwS/IwL)を、仮の標準振動周期Tcstdを示す情報として用い、標準時間間隔を再設定する。そして、再設定された標準時間間隔を基準として第1評価パルスTPと第2評価パルスTPの両方を再設定する。
【0142】
ところで、発生時間Pwh1とインク重量(インク量)との相関関係は、環境温度に依存して変化する。これは、環境温度に応じてインクの粘度が変動するためと考えられる。即ち、図21に例示するように、インクの粘度が高いほど、インク滴の吐出量が減少することが確認できている。従って、測定温度が変化し得る環境下で固有振動周期Tcの測定を行う場合を考慮すると、測定環境の温度に応じて固有振動周期Tcの情報を補正できる構成が好ましい。
【0143】
この場合、例えば、図3に示すように、記録へッド1に設けられたサーミスタ37(温度検出手段の一種)によって測定環境の温度を測定し、測定結果(温度情報)を制御部33に入力する(環境温度測定工程)。そして、制御部33は、決定された固有振動周期Tcの値をこの温度情報に基づいて補正する(固有振動周期補正工程)。
これにより、測定環境が標準温度(例えば、測定装置の仕様で指定された環境温度)から外れざるを得ない環境下であっても、精度良く固有振動周期Tcを測定できる。
【0144】
なお、測定された温度情報に応じて吐出されたインク量を補正してもよい。この場合、例えば、サーミスタ38(温度検出手段の一種,図3参照)を電子天秤32に対して電気的に接続する。電子天秤32は、測定したインク重量の値をこのサーミスタ38からの測定結果(温度情報)に基づいて補正する(環境温度測定工程,固有振動周期補正工程)。そして、制御部33は、補正したインク重量の値に基づいてインク量比を取得し、固有振動周期Tcを決定する。この構成でも精度良く固有振動周期Tcを測定できる。
【0145】
また、発生時間Pwh1とインク重量(インク量)との相関関係は、インク供給口15、圧力室14、ノズル開口13のうちの少なくともいずれかの寸法に依存して変化し得る。例えば、図22に例示するように、ノズル開口13の開口径に関し、開口径が20μmの記録へッド1と21μmの記録へッド1とでは、20μmの記録へッド1の方がインク量が少し多くなることが確認できている。これは、他の因子、インク供給口15、圧力室14についても同様と考えられるので、寸法に対してインク量の情報を補正できる構成が好ましい。
【0146】
この場合、例えば、キーボードやバーコードリーダ等の各種入力装置(図示せず)を制御部33に対して電気的に接続し、この入力装置を通じて測定対象となる記録へッド1の寸法情報を制御部33に入力する。そして、制御部33は、決定された固有振動周期Tcの値をこの寸法情報に基づいて補正する(固有振動周期補正工程)。
また、寸法情報に基づいてインク量を補正してもよい。この場合には、上記の入力装置を電子天秤32に対して電気的に接続し、この入力装置を通じて測定対象となる記録へッド1の寸法情報を制御部に入力する。そして。電子天秤32は、インク重量の測定値(第1インク量IwS,第2インク量IwL)をこの寸法情報に基づいて補正する(固有振動周期補正工程)。これにより、記録へッド1の固有振動周期Tcを精度良く測定できる。
【0147】
次に、上記の手順で測定された固有振動周期Tcの使用方法について説明する。ここで、図23は、プリンタの電気的構成を説明するブロック図である。
【0148】
まず、プリンタの構成について説明する。例示したプリンタは、プリンタコントローラ41とプリントエンジン42とを備えている。プリンタコントローラ41は、ホストコンピュータ(図示せず)等からの印刷データ等を受信するインターフェース43と、各種データの記憶等を行うRAM44と、各種データ処理のための制御ルーチン等を記憶したROM45と、CPU等からなる制御部46と、発振回路47と、記録へッド1へ供給する駆動信号を発生する駆動信号発生回路48と、印刷データをドット毎に展開することで得られた記録データや駆動信号等をプリントエンジン42に送信するためのインターフェース49とを備えている。
【0149】
また、プリントエンジン42は、記録へッド1と、キャリッジ機構51と、紙送り機構52とから構成されている。そして、記録へッド1は、記録データがセットされるシフトレジスタ53と、シフトレジスタ53にセットされた記録データをラッチするラッチ回路54と、電圧増幅器として機能するレベルシフタ55と、圧電振動子2に対する駆動信号の供給を制御するスイッチ回路56と、圧電振動子2とを備えている。
なお、上記の記録へッド1には情報記憶素子36が備えられている。この情報記憶素子36は、固有情報記憶手段の一種であり、上記の固有情報が記憶されている。そして、この情報記憶素子36は制御部46と電気的に接続されている。これにより、制御部46は、情報記憶素子36に格納された固有情報(固有振動周期Tcを表す情報)を適宜読み出すことができる。
【0150】
また、固有情報を粘着シール35等の表記部材によって表記し、この表記部材を記録へッド1に貼設した場合には、スキャナーやラインセンサ等の情報読取装置61(情報読取手段)やキーボードやタッチパネル等の情報入力装置62(情報入力手段)によって固有情報が制御部46に送信される。例えば、固有情報がバーコード等の機械的に読み取り可能な情報であった場合には、情報読取装置61を用いて固有情報を読み取り、制御部46に送信する。また、固有情報がアルファベットや数字等によって構成されたコード情報であった場合には、情報入力装置62によってコード情報を入力し、制御部46に送信する。そして、制御部46は、受信した固有情報を不揮発性の情報記憶部(例えばEEPROM,固有情報記憶手段の一種,図示せず)に記憶する。
【0151】
上記の制御部46は主制御手段として機能し、ROM45に記憶された動作プログラムに基づいてプリンタの各部を制御する。そして、駆動信号発生回路48は、制御部46によって定められた波形形状の駆動信号COMを発生する。即ち、この駆動信号発生回路48は、駆動信号発生手段の一種として機能する。
駆動信号発生回路48から発生される駆動信号COMは、駆動パルス(インク滴を吐出させるために必要な波形要素を複数有するパルス信号)を印刷周期中に少なくとも1つ含んでおり、印刷周期単位で繰り返し発生される。そして、この駆動信号COM(駆動パルス)は、上記のスイッチ回路56を介して、圧電振動子2へ選択的に供給される。
【0152】
また、制御部46は波形設定手段としても機能し、情報記憶素子36に記憶された固有情報(波形設定情報)に基づいて波形要素の制御因子を定める。これにより、駆動パルスの波形形状を、使用される記録へッド1の固有振動周期Tcに応じて適正化する。
なお、制御因子とは、制御対象となる波形要素を定めるための条件であり、例えば発生時間や電位差がある。この制御因子は、その波形要素が定められれば良いので、発生時間と電位差の組み合わせに限られるものではない。例えば、発生時間と電位勾配の組み合わせであっても良い。そして、本実施形態では、後述するように、この制御因子を波形要素の発生時間に設定している。
【0153】
次に、駆動信号発生回路48が発生する駆動信号COMの具体例と、固有情報に基づく駆動信号COMの適正化(駆動パルスの適正化)について説明する。
【0154】
図24に例示した第1駆動信号COM1は、波形形状を同一にしたノーマルドット駆動パルスを複数一連に接続した信号である。即ち、この第1駆動信号COM1は、印刷周期Tの最初に発生される第1ノーマルドット駆動パルスDP1と、この第1ノーマルドット駆動パルスDP1に続いて発生される第2ノーマルドット駆動パルスDP2と、第2ノーマルドット駆動パルスDP2に続いて発生される第3ノーマルドット駆動パルスDP3とを備えており、これらの各ノーマルドット駆動パルスDP1〜DP3を印刷周期T毎に繰り返し発生する。
【0155】
これらの各ノーマルドット駆動パルスDP1〜DP3は、単独でインク滴を吐出可能な駆動パルスであり、中間電位VMから最大電位VPまでインク滴を吐出させない程度の一定勾配で電位を上昇させる膨張要素P11と、最大電位VPを所定時間保持する膨張ホールド要素P12と、最大電位VPから最低電位VLまで急勾配で電位を下降させる吐出要素P13と、最低電位VGを所定時間保持する制振ホールド要素P14と、最低電位VGから中間電位VMまで電位を上昇させる膨張制振要素P15とから構成されている。なお、これらの膨張要素P11〜膨張制振要素P15が、このノーマルドット駆動パルスDP1〜DP3における波形要素に相当する。
そして、各ノーマルドット駆動パルスDP1〜DP3が圧電振動子2に供給される毎に、ノーマルドットを形成し得る量、例えば、13pL程度のインク滴がノズル開口13から吐出される。
【0156】
この第1駆動信号COM1では、ドットパターンデータがスモールドットのデータであった場合に第2ノーマルドット駆動パルスDP2のみを圧電振動子2に供給する。また、ミドルドットのデータであった場合に第1ノーマルドット駆動パルスDP1と第3ノーマルドット駆動パルスDP3とを圧電振動子2に供給し、ラージドットのデータであった場合に各ノーマルドット駆動パルスDP1〜DP3を圧電振動子2に供給する。
【0157】
そして、制御部46(波形設定手段)は、その記録へッド1の固有情報(測定された固有振動周期Tc)に応じて駆動信号発生回路48(駆動信号発生手段)を制御し、メニスカスMの振動抑制に係わる波形要素の制御因子を定める。この例では、制振ホールド要素P14の発生期間Pwh12を定め、併せて、隣り合うノーマルドット駆動パルスDP1〜DP3同士の間隔Pdis1〜Pdis3を定める。
【0158】
この制振ホールド要素P14の発生期間Pwh12は、インク滴吐出後における膨張制振要素P15の供給開始タイミングを規定する。即ち、この発生期間Pwh12を設計値よりも短く設定すると膨張制振要素P15が早めのタイミングで供給され、設計値よりも長く設定すると膨張制振要素P15が遅めのタイミングで供給される。
そして、装着された記録へッド1の固有振動周期Tcが標準固有振動周期Tcstdよりも短い場合には膨張制振要素P15を早めのタイミングで供給し、標準固有振動周期Tcstdよりも長い場合には膨張制振要素P15を遅めのタイミングで供給する。
この構成により、膨張制振要素P15をその記録へッド1に適したタイミングで供給でき、メニスカスMの振動を効果的に(速やかに)収束させることができる。
【0159】
従って、制振ホールド要素P14の発生時間Pwh12に関し、測定された固有振動周期Tcが標準固有振動周期Tcstdに等しい場合には、この発生期間Pwh12も設計値に設定する。そして、測定された固有振動周期Tcが標準固有振動周期Tcstdよりも短い場合には、発生時間Pwh12を設計値よりも短く設定し、標準固有振動周期Tcstdよりも長い場合には、発生時間Pwh12を設計値よりも長く設定する。
【0160】
この発生時間Pwh12の設定は、テーブル情報を用いることで行うことができる。例えば、測定された固有振動周期Tcと発生時間Pwh12の関係を示すテーブル情報をプリンタコントローラ41のROM45や不揮発性の情報記憶部(例えばEEPROM,固有情報記憶手段の一種,図示せず)に記憶し、制御部46によって発生時間Pwh12を取得させる。即ち、制御部46は、このテーブル情報と情報記憶素子36の固有情報とに基づき、発生時間Pwh12を設定する。
【0161】
この場合において、発生時間Pwh12の変更ステップは、決定された固有振動周期Tcに応じて細かく設定することができる。例えば、発生時間Pwh12の調整代が設計値を中心に±1μsである場合、変更ステップを設計値よりも短い側に20ステップ(即ち、0.05μs間隔)及び長い側に20ステップ(即ち、0.05μs間隔)まで細かく設定できる。従って、その記録へッド1に最適な発生時間Pwh12を高い精度で設定できる。
【0162】
また、本実施形態では、制御因子が波形要素(制振ホールド要素P14)の発生時間であるので、固有情報に応じて変動する第1補正時間を、調整対象となる波形要素の基準発生時間に加算することで、この波形要素の発生時間を定めることができる。この場合において、プリンタが使用される環境温度に応じて変動する第2補正時間を、波形要素の基準発生時間に加算すると、調整対象となる波形要素の発生時間をより精度良く定めることができる。
【0163】
例えば、制御部46は、次式(6)〜(8)に示す計算式に基づいて発生時間Pwh12を定めることができる。
【0164】
Pwh12=BT+RT1+RT2 … (6)
RT1=(Tc−Tcstd)×a … (7)
RT2=b×(t−ta)/(tb−ta) … (8)
なお、上記各式において、Pwh12は制振ホールド要素の発生時間,BTは基準発生時間、RT1は第1補正時間、RT2は第2補正時間、Tcは測定された固有振動周期、Tcstdは標準固有振動周期、aは第1補正係数、bは第2補正係数、tは測定温度、taは温度範囲の上限値、tbは温度範囲の下限値である。
【0165】
また、ノーマルドット駆動パルス同士の間隔Pdis1〜Pdis3は、制振ホールド要素P14の発生時間Pwh12に併せて変更される。これは、記録周期Tは一定であるため、単に制振ホールド要素P14の発生時間Pwh12を変更しただけでは不都合が生じ得るからである。
【0166】
例えば、発生時間Pwh12を設計値よりも短く設定した場合には、第3ノーマルドット駆動パルスDP3の発生終了時から次記録周期における第1ノーマルドット駆動パルスDP1の発生開始時までの間隔Pdis1が、他の間隔Pdis2,Pdis3よりも長くなる。この間隔の違いによりインク滴の着弾間隔に差が生じ、ベタ記録の場合(塗りつぶしの場合)等において色むらの原因となる。従って、この場合には、発生時間Pwh12が短くなった分だけ間隔Pdis1〜Pdis3を長く設定し、ノーマルドット駆動パルス同士の間隔を揃える。
【0167】
一方、発生時間Pwh12を設計値よりも長く設定した場合には、第3ノーマルドット駆動パルスDP3の発生終了時が記録周期Tの発生終了時点を越えてしまう。この場合、第3ノーマルドット駆動パルスDP3の膨張制振要素P15が途中で切れてしまうことになる。従って、この場合には、発生時間Pwh12が長くなった分だけ間隔Pdis1〜Pdis3を短く設定し、ノーマルドット駆動パルス同士の間隔を揃えつつ各ノーマルドット駆動パルスDP1〜DP3を記録周期T内に収める。
【0168】
また、制御部46(波形設定手段)により、その記録へッド1の固有情報に応じて、膨張ホールド要素P12の発生時間Pwh11を変更するようにしてもよい。この場合には、吐出要素P13の供給タイミングにおけるメニスカスMの状態を、固有振動周期Tcの違いに拘わらず揃えることができる。これにより、インク滴の吐出量を揃えることができ、ひいては画質の向上が図れる。
【0169】
また、制御部46(波形設定手段)により、その記録へッド1の固有情報に応じて、第1駆動信号COM1の中間電位VM(基準電位)を変えてもよい。例えば、固有振動周期Tcが標準固有振動周期Tcstdよりも短い記録へッド1では、圧力室14内のインクの運動エネルギーが、標準固有振動周期Tcstdの記録へッド1における運動エネルギーよりも大きいと考えられる。反対に、固有振動周期Tcが標準固有振動周期Tcstdよりも長い記録へッド1では、圧力室14内のインクの運動エネルギーが、標準固有振動周期Tcstdの記録へッド1における運動エネルギーよりも小さいと考えられる。
【0170】
そして、中間電位VMは、膨張要素要素P11の電位差、即ち、圧力室14の膨張しろ(代)を規定する。このため、中間電位VMを設計値よりも低く設定することで圧力室14の膨張代が増え、圧力室14内のインクに付与される運動エネルギーをその分だけ高くできる。反対に、中間電位VMを設計値よりも高くすることにより圧力室14の膨張代が減り、圧力室14内のインクに付与される運動エネルギーをその分だけ低くできる。
【0171】
従って、固有振動周期Tcが設計値よりも短い記録へッド1については中間電位VMを設計値よりも高く設定し、固有振動周期Tcが設計値よりも長い記録へッド1については中間電位VMを設計値よりも低く設定することにより、固有振動周期Tcに応じてばらつくインクの運動エネルギーを均一化でき、インク滴の吐出特性を揃えることができる。
【0172】
次に、図25に例示した第2駆動信号COM2について説明する。この第2駆動信号COM2は、メニスカスMを微振動させる微振動パルスVP1と、この微振動パルスVP1の後に発生され、マイクロドットを形成し得る極く少量のインク滴をノズル開口13から吐出させるマイクロドット駆動パルスDP4と、ミドルドットを形成し得る少量のインク滴をノズル開口13から吐出させるミドルドット駆動パルスDP5とを含み、これらの各パルスVP1,DP4,DP5を印刷周期T毎に繰り返し発生する。
【0173】
この第2駆動信号COM2では、インク滴を吐出させない場合に微振動パルスVP1のみを選択して圧電振動子2に供給し、ドットパターンデータがマイクロドットのデータであった場合にマイクロドット駆動パルスDP4のみを圧電振動子2に供給する。また、ミドルドットのデータであった場合にミドルドット駆動パルスDP5のみを圧電振動子2に供給し、ラージドットのデータであった場合にマイクロドット駆動パルスDP4とミドルドット駆動パルスDP5とを圧電振動子2に供給する。
【0174】
なお、この第2駆動信号COM2における各インク滴のインク量は、対応する第1駆動信号COM1のインク滴のインク量よりも少ない。即ち、マイクロドット駆動パルスDP4の供給によって吐出されるインク量は、第2ノーマルドット駆動パルスDP2の供給によって吐出されるインク量よりも少ない。そして、ミドルドット駆動パルスDP5の供給によって吐出されるインク量は、2つのノーマルドット駆動パルスDP1,DP3によって吐出される合計のインク量よりも少ない。さらに、マイクロドット駆動パルスDP4及びミドルドット駆動パルスDP5の供給によって吐出される合計のインク量は、3つのノーマルドット駆動パルスDP1〜DP3の供給によって吐出される合計のインク量よりも少ない。
【0175】
上記の微振動パルスVP1は、最低電位VGから微振動膨張電位VEまで、インク滴を吐出させない程度の比較的緩やかな電位勾配で電位を上昇させる微振動膨張要素P21と、微振動膨張要素P21に続いて発生されて微振動膨張電位VEを所定時間維持する微振動ホールド要素P22と、微振動ホールド要素P22に続いて発生されて微振動膨張電位VEから最低電位VGまで比較的緩やかな電位勾配で電位を下降させる微振動収縮要素P23とから構成される。そして、この微振動パルスVP1が圧電振動子2に供給されると、インク滴が吐出されない程度の圧力変動が圧力室14内のインクに生じ、メニスカスMが微振動する。これにより、ノズル開口13付近のインク増粘が防止される。
【0176】
マイクロドット駆動パルスDP4は、最低電位VGから最大電位VPまで比較的急峻な勾配で電位を上昇させる引き込み要素P24と、引き込み要素P24に続いて発生されて最大電位VPを極く短時間維持する引き込みホールド要素P25と、最大電位VPから吐出電位VFまで比較的急峻な勾配で電位を下降させる吐出要素P26と、吐出電位VFを極く短い時間維持する吐出ホールド要素P27と、吐出電位VFから最低電位VGまで比較的緩やかな電位勾配で電位を下降させる収縮制振要素P28とから構成される。そして、このマイクロドット駆動パルスDP4が圧電振動子22に供給されると、上記したように極く少量のインク滴が吐出される。
【0177】
ミドルドット駆動パルスDP5は、インク滴を吐出する吐出パルスP1とこの吐出パルスP1の後に発生されてインク滴吐出後におけるメニスカスMの振動を抑制する制振パルスP2とを備える。
【0178】
吐出パルスP1は、最低電位VGから第2最大電位VP´までインク滴を吐出させない程度の勾配で電位を上昇させる充填要素P29と、充填要素P29に続いて発生されて第2最大電位VP´を所定時間維持する充填ホールド要素P30と、第2最大電位VP´から最低電位VGまで比較的急峻な勾配で電位を下降させる吐出要素P31とから構成される。なお、第2最大電位VP´は、最大電位VPよりも低く吐出電位VFよりも高い電位に設定される。
制振パルスP2は、最低電位VGから制振電位VDまで、インク滴を吐出させない程度の比較的緩やかな電位勾配で電位を上昇させる膨張制振要素P32と、膨張制振要素P32に続いて発生されて制振電位VDを所定時間維持する制振ホールド要素P33と、制振ホールド要素P33に続いて発生されて制振電位VDから最低電位VGまで比較的緩やかな電位勾配で電位を下降させる収縮復帰要素P34とから構成される。
そして、このミドルドット駆動パルスDP5では、これらの吐出パルスP1と制振パルスP2との間を定電位のパルス接続要素P35で接続している。
【0179】
このミドルドット駆動パルスDP5が圧電振動子2に供給されると、上記したように少量のインク滴が吐出される。そして、このミドルドット駆動パルスDP5では、吐出パルスP1の供給によってノズル開口13からインク滴が吐出され、制振パルスP2の供給によってインク滴吐出直後における圧力室14内のインクの圧力変動が吸収される。
【0180】
そして、制御部46(波形形状設定手段)は、その記録へッド1の固有情報に応じて駆動信号発生回路48(駆動信号発生手段)を制御し、メニスカスMの振動抑制に係わる波形要素の制御因子を定める。この例では、収縮制振要素P28の発生時間Pwdμ2、及び、パルス接続要素P35の発生時間Pwhm2を変更する。
【0181】
まず、収縮制振要素P28の発生時間Pwdμ2について説明する。この発生時間Pwdμ2は収縮制振要素P28による圧力室14の収縮速度を規定する。従って、発生時間Pwdμ2を設計値よりも短くすると圧力室14の収縮速度が設計値よりも速くなり、発生時間Pwdμ2を設計値よりも長くすると圧力室14の収縮速度が設計値よりも遅くなる。
【0182】
そして、収縮制振要素P28の発生時間Pwdμ2に関し、固有情報が示す固有振動周期Tcが標準固有振動周期Tcstdであった場合には、この発生時間Pwdμ2も設計値に設定する。そして、この固有振動周期Tcが標準固有振動周期Tcstdよりも短い場合には、発生時間Pwdμ2を設計値よりも短く設定する。一方、この固有振動周期Tcが標準固有振動周期Tcstdよりも長い場合には、発生時間Pwdμ2を設計値よりも長く設定する。このようにすると、収縮制振要素P28を固有振動周期Tcに応じて最適化でき、この固有振動周期Tcに応じて変化するインク滴吐出後のインクの運動エネルギーを効率良く吸収できる。
【0183】
なお、この収縮制振要素P28の発生時間Pwdμ2の変更は、上記した第1駆動信号COM1と同様にして行うことができる。例えば、固有振動周期Tcと発生時間Pwdμ2の関係を規定するテーブル情報を用意し、このテーブル情報を制御部46に参照させることで発生時間Pwdμ2を定めることができる。
この場合において、制御因子は波形要素の発生時間であるので、基準発生時間に第1補正時間と第2補正時間を加算することで発生時間Pwdμ2を定めてもよい。
【0184】
また、この収縮制振要素P28の発生時間Pwdμ2を設計値から変えた場合には、併せて、マイクロドット駆動パルスDP4の終端とミドルドット駆動パルスDP5(吐出パルスP1)の始端とを最低電位VGで接続する定電位要素P36の発生時間Pwhμ3も変更する。即ち、発生時間Pwdμ2を設計値よりも短く設定した場合には定電位要素P36の発生時間をPwhμ3をその分長く設定し、発生時間Pwdμ2を設計値よりも長く設定した場合には定電位要素P36の発生時間をPwhμ3をその分短く設定する。
これにより、マイクロドット駆動パルスDP4の終端とミドルドット駆動パルスDP5の間隔、詳しくは、吐出要素P26と吐出要素P31の間隔を一定にすることができ、インク滴の着弾位置のばらつきを防止できる。
【0185】
次に、パルス接続要素P35の発生時間Pwhm2について説明する。この発生時間Pwhm2は、ミドルドット駆動パルスDP5における膨張制振要素P32の供給開始タイミングを規定する。即ち、上記したノーマルドット駆動パルスDP1〜DP3における制振ホールド要素P14と同様な機能を有する。
従って、この発生時間Pwhm2に関し、固有情報が示す固有振動周期Tcが標準固有振動周期Tcstdであった場合には、この発生時間Pwhm2も設計値に設定する。そして、この固有振動周期Tcが標準固有振動周期Tcstdよりも短い場合には、Pwhm2を設計値よりも短く設定する。一方、この固有振動周期Tcが標準固有振動周期Tcstdよりも長い場合には、Pwhm2を設計値よりも長く設定する。
その結果、膨張制振要素P32をその記録へッド1に適したタイミングで供給でき、メニスカスMの振動を効果的に収束させることができる。
【0186】
次に、図26に例示した第3駆動信号COM3について説明する。この第3駆動信号COM3は、上記の第2駆動信号COM2と同じく、微振動パルスVP1(P21〜P23)、マイクロドット駆動パルスDP4(P24〜P28)、ミドルドット駆動パルスDP5(P29〜P35)とを含み、これらの各パルスVP1,DP4,DP5を印刷周期T毎に繰り返し発生する。これらの各パルスは、各波形要素の電位差や時間幅に多少の相違があるものの上記した第2駆動信号COM2の各パルスと同等なものであるので、その詳細な説明は省略する。
【0187】
この第3駆動信号COM3では、記録へッド1の往路走査時と復路走査時とでこれらの駆動パルスの発生順序を入れ替えている。即ち、記録へッド1の往路走査時において駆動信号発生回路48は、(a)に示すように、印刷周期の開始時からミドルドット駆動パルスDP5を発生し、次にマイクロドット駆動パルスDP4を発生し、最後に微振動パルスVP1を発生する。一方、記録へッド1の復路走査時において駆動信号発生回路48は、(b)に示すように、印刷周期の開始時からマイクロドット駆動パルスDP4を発生し、次に微振動パルスVP1を発生し、最後にミドルドット駆動パルスDP5を発生する。
【0188】
そして、制御部46(波形形状設定手段)は、その記録へッド1の固有情報に応じて駆動信号発生回路48(駆動信号発生手段)を制御し、メニスカスMの振動抑制に係わる波形要素の制御因子を定める。この例では、上記した第2駆動信号COM2と同様に、収縮制振要素P28の発生時間Pwdμ2、パルス接続要素P35の発生時間Pwhm2を変更する。
【0189】
なお、固有情報(測定された固有振動周期Tc)に基づく駆動パルスの適正化は、上記した各駆動パルスに限定されるものではない。即ち、種々の駆動パルスについて適正化することができる。例えば、図27に示すマイクロドット駆動パルスDP6についても固有情報に基づく適正化が行える。
【0190】
このマイクロドット駆動パルスDP6は、最低電位VGから第1最大電位VP1までインク滴を吐出させない程度の勾配で電位を可及的に上昇させる引き込み要素P41と、第1最大電位VP1を極く短時間保持する引き込みホールド要素P42と、第1最大電位VP1から吐出電位VFまで可及的急勾配で電位を下降させる吐出要素P43と、吐出電位VFを極く短時間維持する第1吐出ホールド要素P44と、吐出電位VFから第2最大電位VP2まで可及的急勾配で電位を上昇させる吐出引き込み要素P45と、第2最大電位を極く短時間維持する第1制振ホールド要素P46と、第2最大電位から制振電位VBまで一定勾配で電位を下降させる第1制振要素P47と、制振電位VBを所定時間維持する第2制振ホールド要素P48と、制振電位VBから最低電位VGまで一定勾配で電位を下降させる第2制振要素P49とから構成されている。
【0191】
このマイクロドット駆動パルスDP6が圧電振動子2に供給されると、ノズル開口13からはマイクロドットに対応する極く少量のインク滴が吐出される。なお、このマイクロドット駆動パルスDP6の供給によって吐出されるインク滴の量は、上記したマイクロドット駆動パルスDP4のの供給によって吐出されるインク滴の量よりも少ない。
【0192】
そして、制御部46(波形形状設定手段)は、その記録へッド1の固有情報に応じて駆動信号発生回路48(駆動信号発生手段)を制御し、メニスカスMの振動抑制に係わる波形要素の制御因子を定める。この例では、第1制振ホールド要素P46の発生時間Pwh3を変更して適正化する。この適正化により、インク滴吐出直後におけるメニスカスMの振動を速やかに収束させることができ、高周波駆動を行った場合に、インク滴の吐出量や飛行速度等を安定化することができる。
【0193】
以上説明したように、上記各実施形態において、制御部46は、固有情報に基づいて駆動パルスDP1〜DP6を構成する波形要素(例えば、制振ホールド要素P14,吐出ホールド要素P27)の制御因子(例えば、発生時間)を変更する。そして、この固有情報は、インク量比(IwS/IwL)に基づいて取得されているので、その記録へッド1の固有振動周期Tcを高い精度で表している。従って、圧力室14内のインクの固有振動周期Tcが個々の記録へッド1同士の間でばらついたとしても、その記録へッド1に適した波形形状の駆動信号COMで駆動することができる。その結果、製造段階における固有振動周期Tcのばらつきを補正でき、各記録へッド1におけるインク滴の吐出特性を揃えることができる。
【0194】
ところで、本発明は、上記の各実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて種々の変更が可能である。
【0195】
まず、固有情報に応じて変更される波形要素に関し、上記実施形態では、インク滴吐出後におけるメニスカスMの振動抑制に係わる波形要素として、制振ホールド要素P14、収縮制振要素P28、パルス接続要素P35などを例に挙げて説明したが、他の波形要素を変更してもよい。例えば、インク滴の飛行特性に影響を及ぼす波形要素、例えば、ノーマルドット駆動パルスDP1〜DP3の膨張要素P11や、ミドルドット駆動パルスDP5の充填ホールド要素P30を変更してもよい。
【0196】
また、上記の固有情報に代えて、インク量比を表すインク量比情報(本発明の波形設定情報の一種)を記録へッド1に付与してもよい。そして、制御部46は、情報記憶素子36に記憶される等したインク量比情報に基づき、駆動パルスに対する波形変更を同様に行う。
【0197】
また、圧力発生素子は、圧電振動子2に限られるものではなく、他の素子を用いてもよい。例えば、発熱素子を用いてもよい。また、磁歪素子や静電アクチュエータ等の電気機械変換素子も用いることができる。
【0198】
また、上記実施形態では、固有振動周期Tc(インク量比)を記録へッド1の全体で測定していたが、これをノズル列毎に測定するようにしてもよい。この場合には、各ノズル列毎に固有振動周期Tcが付与されるので、きめ細かな制御が実現できる。
【0199】
また、以上は、液体噴射装置の一種であるインクジェット式プリンタを例に挙げて説明したが、本発明は他の液体噴射装置にも適用することができる。例えば、液晶ディスプレー等のカラーフィルタを製造するディスプレー製造装置,有機EL(Electro Luminescence)ディスプレーやFED(面発光ディスプレー)等の電極を形成する電極製造装置,バイオチップ(生物化学素子)を製造するチップ製造装置,極く少量の試料溶液を正確な量供給するマイクロピペットにも適用することができる。
そして、ディスプレー製造装置では、色材噴射ヘッドからR(Red)・G(Green)・B(Blue)の各色材の溶液を吐出する。また、電極製造装置では、電極材噴射ヘッドから液状の電極材料を吐出する。チップ製造装置では、生体有機物噴射ヘッドから生体有機物の溶液を吐出する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 記録ヘッドの構造を説明する断面図である。
【図2】 流路ユニットの構造を説明する要部拡大断面図である。
【図3】 固有振動周期測定装置を説明するブロック図である。
【図4】 評価パルス発生回路から発生される評価パルスの説明図である。
【図5】 評価パルスの供給周期とインク量の関係を説明する図である。
【図6】 (a)は、励振要素を供給した際における圧力室の圧力変動及びメニスカスの位置を説明する図、(b)〜(d)は、励振要素を供給した際におけるメニスカスの位置を説明する図である。
【図7】 メニスカスの位置とインク量の関係を説明する図である。
【図8】 固有振動周期が相違する複数の記録ヘッドに関する圧力室の圧力変動、メニスカスの位置、インク量の関係を説明する図である。
【図9】 励振要素の電位差を変えた場合における発生時間Pwh1とインク量の関係を説明する図である。
【図10】 第1評価パルス及び第2評価パルスの設定を説明する図である。
【図11】 複数の記録へッドについて固有振動周期Tcとインク量比の関係を示した図であり、相関関係を2つの一次式で近似した例である。
【図12】 複数の記録へッドについて固有振動周期Tcとインク量比の関係を示した図であり、相関関係を3つの一次式で近似した例である。
【図13】 固有情報を付与する情報付与媒体を説明する図であり、(a)は粘着シールによる態様を示し、(b)は情報記憶素子による態様を示す。
【図14】 図8におけるX部を拡大した図である。
【図15】 複数の記録へッドについて固有振動周期Tcとインク量比の関係を示した図であり、相関関係を一次式で近似した例である。
【図16】 固有振動周期の相違に伴うインク量の違いを説明する図であり、増加時間範囲を拡大して示した図である。
【図17】 固有振動周期の相違に伴うインク量の違いを説明する図であり、減少時間範囲を拡大して示した図である。
【図18】 比較例を説明する図であり、ボトム範囲における固有振動周期毎のインク量の違いを説明する図である。
【図19】 比較例における固有振動周期Tcとインク量比の関係を示した図である。
【図20】 3種類の一次式を用いて固有振動周期Tcとインク量比の相関関係を近似した例である。
【図21】 測定環境の温度(インク粘度)が変化した場合における発生時間Pwh1とインク量の関係を説明する図である。
【図22】 ノズル開口の径が変化した場合における発生時間Pwh1とインク量の関係を説明する図である。
【図23】 プリンタの構成を説明するブロック図である。
【図24】 駆動信号発生回路から発生される第1駆動信号を説明する図である。
【図25】 駆動信号発生回路から発生される第2駆動信号を説明する図である。
【図26】 (a),(b)は、駆動信号発生回路から発生される第3駆動信号を説明する図である。
【図27】 マイクロドット駆動パルスの他の例を説明する図である。
【符号の説明】
1…インクジェット式記録ヘッド,2…圧電振動子,3…固定板,4…フレキシブルケーブル,5…振動子ユニット,6…ケース,7…流路ユニット,8…収納空部,9…島部,10…流路形成基板,11…ノズルプレート,12…弾性板,13…ノズル開口,14…圧力室,15…インク供給口,16…共通インク室,17…ノズル連通口,18…支持板,19…弾性体膜,20…ダイヤフラム部,21…コンプライアンス部,22…弾性部,31…評価パルス発生回路,32…電子天秤,33…固有振動周期測定装置の制御部,35…粘着シール,36…情報記憶素子,37,38…サーミスタ,41…プリンタコントローラ,42…プリントエンジン,43…インターフェース,44…RAM,45…ROM,46…制御部,47…発振回路,48…駆動信号発生回路,49…インターフェース,51…キャリッジ機構,52…紙送り機構,53…シフトレジスタ,54…ラッチ回路,55…レベルシフタ,56…スイッチ回路,61…情報読取装置,62…情報入力装置
Claims (41)
- ノズル開口に連通すると共に液体を収容可能な圧力室と、該圧力室に液体を供給する液体供給口と、前記圧力室内の液体に圧力変動を生じさせる圧力発生素子とを備えた液体噴射ヘッドの前記圧力室内に収容された液体に対する固有振動周期を測定する固有振動周期測定方法において、
圧力室内の液体に圧力振動を励起させる励振要素、及び、該励振要素よりも後に発生されてノズル開口から液滴を吐出させる吐出要素とを含み、励振要素から吐出要素までの時間間隔を第1時間間隔に設定した第1評価パルスと前記時間間隔を第1時間間隔よりも長い第2時間間隔に設定した第2評価パルスとを圧力発生素子へ供給することで、第1評価パルスに対応する第1液体量と第2評価パルスに対応する第2液体量とを測定する液体量測定工程と、
該測定された第1液体量と第2液体量から液体量比を取得する液体量比取得工程と、
該液体量比を予め取得しておいた液体量比と固有振動周期の相関関係にあてはめることで、圧力室内の液体に関する固有振動周期を決定する固有振動周期決定工程とを経ることを特徴とする液体噴射ヘッドの固有振動周期測定方法。 - 励振要素から吐出要素までの時間間隔を段階的に変えた複数の測定用信号を、最大固有振動周期の液体噴射ヘッドと最小固有振動周期の液体噴射ヘッドとに供給することで、最大周期液体量変動曲線と最小周期液体量変動曲線とを予め取得し、
前記固有振動周期の増加に伴って吐出液体量が増加する増加時間範囲内に前記吐出要素が供給されるように、第1時間間隔及び第2時間間隔の一方を設定すると共に、固有振動周期の増加に伴って吐出液体量が減少する減少時間範囲内に前記吐出要素が供給されるように、第1時間間隔及び第2時間間隔の他方を設定したことを特徴とする請求項1に記載の液体噴射ヘッドの固有振動周期測定方法。 - 前記増加時間範囲を、最大周期液体量変動曲線におけるピーク点から最小周期液体量変動曲線における直近のボトム点までの範囲に設定し、
前記減少時間範囲を、最大周期液体量変動曲線におけるボトム点から最小周期液体量変動曲線における直近のピーク点までの範囲に設定したことを特徴とする請求項2に記載の液体噴射ヘッドの固有振動周期測定方法。 - 前記励振要素から吐出要素までの時間間隔を段階的に変えた複数の測定用信号を標準固有振動周期を有する液体噴射ヘッドに供給することで、標準周期液体量変動曲線を予め取得し、
前記第1時間間隔及び第2時間間隔を、標準周期液体量変動曲線における単位時間当たりの液体量の変化が最大となるタイミングで吐出要素が供給される間隔に設定したことを特徴とする請求項2又は3に記載の液体噴射ヘッドの固有振動周期測定方法。 - 前記増加時間範囲と減少時間範囲とを、互いに隣り合う時間範囲に定めたことを特徴とする請求項2から4の何れかに記載の液体噴射ヘッドの固有振動周期測定方法。
- 励振要素から吐出要素までの時間間隔を段階的に変えた複数の測定用信号を、最大固有振動周期の液体噴射ヘッドと最小固有振動周期の液体噴射ヘッドとに供給することで、最大周期液体量変動曲線と最小周期液体量変動曲線とを予め取得し、
前記第1時間間隔及び第2時間間隔は、吐出要素の供給タイミングが、最大周期液体量変動曲線のピーク点から直近の最小周期液体量変動曲線のピーク点までの範囲内となる間隔に設定されていることを特徴とする請求項1に記載の液体噴射ヘッドの固有振動周期測定方法。 - 前記励振要素から吐出要素までの時間間隔を段階的に変えた複数の測定用信号を標準固有振動周期を有する液体噴射ヘッドに供給することで、標準周期液体量変動曲線を予め取得し、
該標準周期液体量変動曲線のボトム点に対応する励振要素から吐出要素までの時間間隔を標準時間間隔とすると共に、前記第1時間間隔と第2時間間隔の中央値を該標準時間間隔に一致させたことを特徴とする請求項6に記載の液体噴射ヘッドの固有振動周期測定方法。 - 前記第1時間間隔は、標準時間間隔から標準固有振動周期の1/4を減じた時間間隔であり、第2時間間隔は、標準時間間隔に標準固有振動周期の1/4を加えた時間間隔であることを特徴とする請求項7に記載の液体噴射ヘッドの固有振動周期測定方法。
- 前記励振要素の電位差を、前記吐出要素の電位差の90%以上に設定したことを特徴とする請求項1から8の何れかに記載の液体噴射ヘッドの固有振動周期測定方法。
- 前記励振要素の電位差を、前記吐出要素の電位差の95%以上に設定したことを特徴とする請求項1から8の何れかに記載の液体噴射ヘッドの固有振動周期測定方法。
- 液体量比取得工程で取得された液体量比が判断基準範囲内か否かを判定する液体量比判定工程と、
前記判断基準範囲を越えていると判定された場合に、第1評価パルスと第2評価パルスの少なくとも一方を再設定する評価パルス再設定工程と、
該評価パルス再設定工程で再設定された新たな評価パルスを用いて液体量を測定する液体量再測定工程と、
該液体量再測定工程で測定された液体量を用いて液体量比を再取得する液体量比再取得工程とを、前記固有振動周期決定工程に先立って行うことを特徴とする請求項1から10の何れかに記載の液体噴射ヘッドの固有振動周期測定方法。 - 前記評価パルス再設定工程は、前記液体量比取得工程で取得された液体量比を、仮の標準振動周期を示す情報として用い、第1評価パルスと第2評価パルスの両方を再設定することを特徴とする請求項11に記載の液体噴射ヘッドの固有振動周期測定方法。
- 前記評価パルス再設定工程は、第1評価パルスと第2評価パルスの一方を再設定し、
前記液体量比再取得工程は、新たな評価パルスに対応する液体量と既測定の液体量とを用いて新たな液体量比を取得することを特徴とする請求項11に記載の液体噴射ヘッドの固有振動周期測定方法。 - 前記評価パルス再設定工程は、決定された固有振動周期が許容判断基準範囲未満の場合に前記第1評価パルスの時間間隔を第1時間間隔よりも短い第3時間間隔に再設定し、決定された固有振動周期が許容判断基準範囲よりも長かった場合に前記第2評価パルスの時間間隔を第2時間間隔よりも長い第4時間間隔に再設定することを特徴とする請求項13に記載の液体噴射ヘッドの固有振動周期測定方法。
- 前記固有振動周期決定工程では、前記固有振動周期を、液体量比と固有振動周期の相関関係とに基づいて決定することを特徴とする請求項1から14の何れかに記載の液体噴射ヘッドの固有振動周期測定方法。
- 前記液体量比と固有振動周期の相関関係を、液体量比を変数とする一次式によって定めたことを特徴とする請求項15に記載の液体噴射ヘッドの固有振動周期測定方法。
- 前記一次式は、複数設定された液体量比の範囲毎に傾き及び切片が与えられることを特徴とする請求項16に記載の液体噴射ヘッドの固有振動周期測定方法。
- 前記液体量比の範囲は、標準固有振動周期に対応する標準液体量比よりも小さい側の第1範囲と、標準液体比以上の第2範囲とからなることを特徴とする請求項17に記載の液体噴射ヘッドの固有振動周期測定方法。
- 前記液体量比の範囲は、標準固有振動周期に対応する標準液体量比を含む第3範囲と、第3範囲よりも小さい側の第4範囲と、第3範囲よりも大きい側の第5範囲とからなることを特徴とする請求項17に記載の液体噴射ヘッドの固有振動周期測定方法。
- 前記液体量測定工程は、圧力発生素子に対して10kHz以下の低周波数で第1評価パルス及び第2評価パルスを供給することを特徴とする請求項1から19の何れかに記載の液体噴射ヘッドの固有振動周期測定方法。
- 前記液体量測定工程は、圧力発生素子に対して5kHz以下の低周波数で第1評価パルス及び第2評価パルスを供給することを特徴とする請求項1から19の何れかに記載の液体噴射ヘッドの固有振動周期測定方法。
- 測定環境の温度を測定する環境温度測定工程と、測定された環境温度に基づいて固有振動周期を補正する固有振動周期補正工程とを行うことを特徴とする請求項1から21の何れかに記載の液体噴射ヘッドの固有振動周期測定方法。
- 液体供給口、圧力室及びノズル開口のうちの少なくともいずれかの寸法情報を取得する寸法情報取得工程と、取得された寸法情報に基づいて固有振動周期を補正する固有周期補正工程とを行うことを特徴とする請求項1から22の何れかに記載の液体噴射ヘッドの固有振動周期測定方法。
- 前記液体が描画用の色材を含有するインクであることを特徴とする請求項1から23の何れかに記載の液体噴射ヘッドの固有振動周期測定方法。
- ノズル開口に連通すると共に液体を収容可能な圧力室と、該圧力室に液体を供給する液体供給口と、前記圧力室内の液体に圧力変動を生じさせる圧力発生素子とを備え、圧力室内に生じた圧力変動を利用してノズル開口から液滴を吐出可能な液体噴射ヘッドの前記圧力室内に収容された液体の固有振動周期を測定する固有振動周期測定装置において、
圧力室内の液体に圧力振動を励起させる励振要素、及び、該励振要素よりも後に発生されてノズル開口から液滴を吐出させる吐出要素とを含み、励振要素から吐出要素までの時間間隔を第1時間間隔に設定した第1評価パルスと前記時間間隔を第1時間間隔よりも長い第2時間間隔に設定した第2評価パルスとを発生し、圧力発生素子に供給可能な駆動手段と、
前記第1評価パルスに対応する第1液体量と第2評価パルスに対応する第2液体量とを測定する液体量測定手段と、
液体量測定手段によって測定された第1液体量と第2液体量から液体量比を取得する液体量比取得手段と、
該液体量比取得手段が取得した液体量比を予め取得しておいた液体量比と固有振動周期の相関関係にあてはめることで、圧力室内の液体についての固有振動周期を決定する固有振動周期決定手段とを備えていることを特徴とする液体噴射ヘッドの固有振動周期測定装置。 - 請求項1から24の何れかに記載の固有振動周期測定方法で固有振動周期が測定された液体噴射ヘッドであって、
前記決定された固有振動周期を固有情報として付与したことを特徴とする液体噴射ヘッド。 - 請求項1から24の何れかに記載の固有振動周期測定方法で固有振動周期が測定された液体噴射ヘッドであって、
前記取得された液体量比を固有情報として付与したことを特徴とする液体噴射ヘッド。 - 前記固有情報を記憶する固有情報記憶手段を備えたことを特徴とする請求項26又は27に記載の液体噴射ヘッド。
- 前記固有情報を光学的に読み取り可能な態様で表記部材に表記し、該表記部材をケース表面に貼設したことを特徴とする請求項26又は27に記載の液体噴射ヘッド。
- 圧力発生素子の作動によって圧力室内の液体に圧力変動を生じさせることでノズル開口から液滴を吐出可能であって、圧力室内の液体についての固有振動周期を示す固有情報が付与された液体噴射ヘッドと、
圧力発生素子に供給するための駆動信号を発生する駆動信号発生手段と、
前記固有情報に基づき駆動信号の波形形状を適正化する波形設定手段とを備えた液体噴射装置において、
前記固有情報は、請求項1から24の何れかに記載の固有振動周期測定方法によって測定された固有振動周期を示す情報であることを特徴とする液体噴射装置装置。 - 前記固有情報は、圧力室内の液体についての固有振動周期の数値を示す数値情報であることを特徴とする請求項30に記載の液体噴射装置。
- 前記固有情報は、前記液体量比を示す液体量比情報であることを特徴とする請求項30に記載の液体噴射装置。
- 前記固有情報を記憶可能な固有情報記憶手段を設け、
前記波形設定手段は、前記固有情報記憶手段に記憶された固有情報に基づいて波形形状を適正化することを特徴とする請求項30から32の何れかに記載の液体噴射装置。 - 前記駆動信号は圧力発生素子に供給される駆動パルスを有し、該駆動パルスを液滴を吐出させるための吐出要素を含む複数の波形要素によって構成し、
前記波形設定手段は、前記固有情報に基づき、調整対象となる波形要素の制御因子を定めることを特徴とする請求項30から33の何れかに記載の液体噴射装置。 - 前記制御因子が波形要素の発生時間であり、
前記波形設定手段は、前記固有情報に応じて変動する第1補正時間を、調整対象となる波形要素の基準発生時間に加算することで、当該波形要素の発生時間を定めることを特徴とする請求項34に記載の液体噴射装置。 - 前記波形設定手段は、装置が使用される環境温度に応じて変動する第2補正時間を前記基準発生時間に加算することで、調整対象となる波形要素の発生時間を定めることを特徴とする請求項35に記載の液体噴射装置。
- 前記調整対象となる波形要素は、液滴吐出後におけるメニスカスの振動抑制に係わる振動抑制要素であることを特徴とする請求項34から36の何れかに記載の液体噴射装置。
- 前記駆動パルスは、圧力室を膨張させることで液滴吐出後における圧力室内の液体圧力の変動を緩和する膨張制振要素と、前記吐出要素と膨張制振要素との間に発生される一定電位の制振ホールド要素とを備え、
前記波形設定手段は、前記固有情報に応じて制振ホールド要素の発生時間を定めることを特徴とする請求項35から37の何れかに記載の液体噴射装置。 - 前記駆動パルスは、圧力室を収縮させることで液滴吐出後における圧力室内の液体圧力の変動を吸収する収縮制振要素を備え、
前記波形設定手段は、前記固有情報に応じて収縮制振要素の発生時間を定めることを特徴とする請求項35から37の何れかに記載の液体噴射装置。 - 前記駆動パルスは、圧力室を膨張させることでメニスカスを圧力室側に引き込む膨張要素と、前記吐出要素と膨張要素との間に発生される一定電位の膨張ホールド要素とを備え、
前記波形設定手段は、前記固有情報に応じて膨張ホールド要素の発生時間を定めることを特徴とする請求項35から37の何れかに記載の液体噴射装置。 - 前記駆動信号は圧力発生素子に供給される駆動パルスを有し、該駆動パルスの始終端電位を駆動信号における中間電位に設定し、
前記波形設定手段は、前記固有情報に応じて駆動信号の中間電位を定めることを特徴とする請求項34に記載の液体噴射装置。
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