JP3685814B2 - アミノペプチダーゼおよびその生産方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、アラニン特異的アミノペプチダーゼおよびこのようなペプチダーゼを細菌培養物から生産する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
食用肉の保存中に生じる遊離アミノ酸が保存肉質の味、風味を向上することが知られている(Nishimuraら、Agric.Biol.Chem.、52、2323(1988))。このような遊離アミノ酸は、肉質中に存在するアミノペプチダーゼのエキソプロテオリシスにより生成される。従って、このようなアミノペプチダーゼは、食肉加工分野において、肉質の改善、うま味の向上などの手段として有用である。
【0003】
従来から、この目的に用いる酵素として種々の動物に由来するアラニンアミノペプチダーゼが知られている。例えば、沖アミ(Kimotoら、Agric.Biol.Chem.、48(7)、1819(1984))、ボラ(Chiouら、Agric.Biol.Chem.、52(1)、235(1988))、アラスカタラ(Chiouら、J. Biochem.、105、505(1989))、ウサギの骨格筋(Nishimuraら、Agric.Biol.Chem.、52(9)、2183(1988))、あるいは牛、豚、および鶏の骨格筋(Nishimotoら、Agric.Biol.Chem.、54(11)、2769(1990))に由来するアラニンアミノペプチダーゼが知られている。これらの酵素は特にアラニン残基に対して親和性が高いという特徴がある。
【0004】
しかし、これらの酵素は、アラニンのみならずメチオニンなどの他のアミノ酸残基にも比較的高い基質親和性を有することから酵素の基質特異性は低く、メチオニンなどの含硫アミノ酸を遊離する難点がある。遊離の含硫アミノ酸は味質を低下するという欠点があり、含硫アミノ酸を遊離しない基質特異性の高いアラニンアミノペプチダーゼが望まれていた。
【0005】
また、上記従来のペプチダーゼは、海洋生物、あるいは高等動物の体組織、代表的にはほ乳類の骨格筋から単離されることから、安定的に大量に上記ペプチダーゼを提供することは困難であり、安価で大量に基質特異性の高いアラニンアミノペプチダーゼが提供されることが望まれていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来の課題を解決するものであり、その目的とするところは、新規なアラニンアミノペプチダーゼ、ならびに、その生産方法を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、海洋細菌であるAeromonas属に属する、新たに単離した菌株から、新規なアラニンアミノペプチダーゼを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明のアラニンアミノペプチダーゼは、次の特性を有する。
▲1▼作用:アミノペプチダーゼ活性を有する。
▲2▼至適pH:約6.5である。
▲3▼安定pH範囲:4℃で5時間処理する場合において、pH7.0〜10.0である。
▲4▼作用適温の範囲:至適温度は約45℃である。
▲5▼熱安定性:pH7.0で10分間保持した場合に、40℃まで安定である。
▲6▼基質特異性:アラニン残基に対して高い特異性を有する。
▲7▼分子量;ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)ポリアクリルアミドゲル電気泳動法における分子量が、約86キロダルトンであり、6量体で存在する。このことによって上記目的が達成される。
【0009】
本発明の好ましいアラニンアミノペプチダーゼは、チオールプロテアーゼとしての性状を包含する。このことによって上記目的が達成される。
【0010】
本発明のアラニンアミノペプチダーゼは、Aeromonas属の細菌、特に好ましくは平成6年4月1日に工業技術院生命工学工業技術研究所(生命研と略称する)に寄託したAeromonas salmonicida subsp.KUPD-1(生命研菌寄第14260号;FERM P-14260)により生産される。このことによって上記目的が達成される。
【0011】
上記細菌より生産される本発明のアラニンアミノペプチダーゼの種々の特性と上記沖アミEuphausia superba(Kimotoら、Agric.Biol.Chem.、48(7)、1819(1984))、およびボラMugil cephalus(Chiouら、Agric.Biol.Chem.、52(1)、235(1988))に由来する、既知のアラニンアミノペプチダーゼの同特性との差異を表1に示す。
【0012】
【表1】
【0013】
上記特性を有する、微生物由来アラニンアミノペプチダーゼは、これまで知られていない。
【0014】
本発明のアラニンアミノペプチダーゼの生産方法は、上記生産菌を培養し、培養物より該ペプチダーゼを分離精製する工程を包含する。このことによって上記目的が達成される。
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0016】
本発明のアラニンアミノペプチダーゼは、Aeromonas属菌、特にAeromonas salmonicida subsp.KUPD-1(生命研菌寄第14260号;FERM P-14260)により生産される。この菌株は、発明者らが長崎沖の海底土壌から分離した新菌株である。上記菌株の菌学的性質を次に示す。
【0017】
(1)形態および培養
本発明のアラニンアミノペプチダーゼ生産菌(以下、本菌という)は、Bergy's Manual of Systematic Bacteriology第2巻(Williams and Wilkins, Baltimore, 1986)に従ってAeromonas salmonicidaと同定され、Aeromonas salmonicida subsp.KUPD-1と命名した。本菌は、0.5〜0.7μm×0.9〜1.2μmの桿菌である。本菌の菌学的性状を表2に示す。
【0018】
【表2】
【0019】
次に、本菌から本発明のアラニンアミノペプチダーゼを生産するための条件について説明する。
【0020】
本菌を生育させる培地としては、特に限定されず、通常の液体培地または固体培地が用いられる。炭素源としては、グルコース、ショ糖、糖蜜等の糖類を用いる。窒素源としては、プロタミン、ポリペプトン、各種大豆分解物、酵母エキス、肉エキスなどの有機窒素の他、アンモニア等の無機窒素も使用し得る。必要に応じて各種無機塩類、ビタミン類が添加され得る。本菌の培養には、プロタミンを含ませることが好ましい。培地のpHを、4.0〜11.0に調製し、滅菌して使用する。本菌の最適培地を表3に示す。
【0021】
【表3】
【0022】
本菌の培養温度は本菌が生育できる温度であれば特に制限はないが、20〜40℃、好ましくは25〜37℃、より好ましくは30℃である。液体培養の場合は、1〜3日間、振とうまたは通気撹拌しながら行い得る。培養過程の菌増殖経時変化は、培養懸濁液の濁度変化(通常はO.D.660の計測)をモニターして知り得る。
【0023】
(2)培養懸濁液からのアラニンアミノペプチダーゼの分離精製
上記培養液から本発明のアラニンアミノペプチダーゼを分離精製するには、既知の精製法が単独もしくは併用して利用され得る。
【0024】
本発明のアラニンアミノペプチダーゼ(以下、本ペプチダーゼという)は、菌体内部に産生、蓄積される。従って、培養後、好ましくは対数増殖期後期の培養液中の菌体を集め、例えば緩衝液中に懸濁して、超音波処理などで物理的に菌体を破砕することによりあるいは細胞壁を酵素で処理して、菌体を破壊することにより、本ペプチダーゼが細胞から溶出され得る。次いで、この溶出液を濾過または遠心分離にかけて菌体を除去する。好ましい上記除去法は超遠心分離処理である。得られた上清(粗酵素液)を、硫安分画(塩析)、透析、各種クロマトグラフィー、ゲル濾過などの一般的な酵素の精製工程を行うことにより、本ペプチダーゼが精製され得る。例えば、上記得られた上清を硫安分画後、陰イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過に順次供試することにより、精製された高活性の本ペプチダーゼを含有する画分が得られる。
【0025】
(3)本ペプチダーゼ活性の測定
本願発明においては、本ペプチダーゼ活性は、L−アラニン−β−ナフチルアミドを基質として用い、1分間に1マイクロモルのβ−ナフチルアミンを遊離する量を1ユニット(U)として測定する。基本的には本願においては、粗酵素液、または各硫安分画液20μlを、1mML−アラニン−β−ナフチルアミド(10mMリン酸緩衝液pH6.5)780μlに添加し、35℃で10分反応させる。次いで0.4M塩酸/エタノールを100μl加え、室温まで冷却後、0.1%p-ジメチルアミノケイ皮アルデヒド/エタノールを100μl添加し、540nmの吸光度(O.D.540)を測定する。上記粗酵素液、または各硫安分画液中のタンパク質の量も同時に測定(Bio-rad法)される。上記540nmの吸光度から計算式(O.D.540×0.56×1ml)/(0.02ml×10分×タンパク濃度(mg/ml))によりタンパク質当りの比活性(U/mg)が計算される。
【0026】
以下の実施例にて、本発明をさらに詳細に説明するが、これらはなんら本発明を限定するものではない。
【0027】
【実施例】
実施例1
(Aeromonas salmonicida subsp.KUPD-1の培養条件)
20mlのL培地(1.0%バクト-トリプトン、0.5%酵母エキス、0.5%NaCl、0.1%ブドウ糖、pH7.0)を含有する100ml容三角フラスコにAeromonas salmonicida subsp.KUPD-1を植菌し、30℃で24時間、150rpmで振とう培養した。次いでこの培養液を100mlのL培地を含有する坂口フラスコ2本に植菌し、30℃で20時間、120rpmの振とう培養した。この培養液(O.D.660=8)200mlを、表3に示す最適培地20lに移し、30℃、43時間、300rpmの通気条件で培養した。
【0028】
実施例2
(本ペプチダーゼの分離精製)
上記実施例1の培養液を集めた(80l)後の菌体を遠心分離後、菌体を10mMリン酸緩衝液(pH7)で洗浄し、同緩衝液400mlに懸濁した。これを超音波破砕し、得られた破砕液を超遠心分離(105,000×g、4℃、1時間)し、得られた上澄み液を粗酵素液とした。この粗酵素液を、硫安濃度0〜40%、40〜50%、50〜60%、60〜70%、および70%以上の各条件で逐次硫安塩析し、各硫安分画液を調製した。これらの画分の、本ペプチダーゼ活性を上記の方法で測定した。結果を表4に示す。本ペプチダーゼは、主として40〜50%硫安画分に存在した。
【0029】
【表4】
【0030】
上記実施例1の培養スケールを80lとして、本菌を培養後、上記と同様に粗酵素液を得た。この粗酵素液を、硫安濃度0〜40%、40〜55%、および55〜80%の各条件で逐次硫安塩析し、各硫安分画液を調製した。これらを上記と同様に本ペプチダーゼ活性測定を行った。結果を表5に示す。本ペプチダーゼは、主として40〜55%硫安画分に存在した。
【0031】
【表5】
【0032】
実施例3
(本ペプチダーゼのクロマト精製)
(1)陰イオン交換カラムクロマトグラフィー
上記40〜55%硫安画分を10mMリン酸緩衝液(pH7.0)で透析後、QA52(ワットマン社製)を担体とする陰イオン交換カラムクロマトグラフィーに供試し、さらに分画精製した。カラム直径1.6cm、カラム長12cmの陰イオン交換カラムに、タンパク質濃度3.0mg/mlに調整した上記透析後の溶液を、23ml添加した。10mMリン酸緩衝液(pH7.0)を用いて、流速1.3ml/分、NaCl濃度が0から0.5Mへの濃度勾配で溶出し、4.0mlずつ溶出液を分画回収し、得られた各画分を、280nm紫外吸光度に基づくタンパク質量の測定、および本ペプチダーゼ活性の測定に供試した。結果を図1に示す。図中の横軸は溶出液を分画回収した、画分番号を表す。左側縦軸は280nm紫外吸光度(図中の○)、右側縦軸は本ペプチダーゼ活性値(U/ml;図中の●)を表し、図中の点線および欄外の右側縦軸は、NaClの濃度勾配(0〜0.5M)を表す。
【0033】
使用した陰イオン交換カラムクロマトグラフィーは、本ペプチダーゼの精製に有効であり、本ペプチダーゼは0.3M-NaCl濃度付近で溶出した。精製により、比活性が2.19U/mgタンパク質である活性画分が得られた。
【0034】
(2)疎水クロマトグラフィー
さらに本ペプチダーゼを精製するため、上記クロマトグラフィーで得られた活性画分(図中画分No.45)を疎水クロマトグラフィー(FPLC;Phenyl-superose充填カラム、ファルマシア社製)に供試した。カラム直径5mm、カラム長5cmのPhenyl-superose充填カラムに、タンパク質濃度5mg/mlに調整した上記活性画分を、200μl添加した。10mMリン酸緩衝液(pH7.0)を用いて、流速0.5ml/分、硫安濃度が20から0%への濃度勾配で溶出し、0.5mlずつ溶出液を分画回収し、得られた各画分を、280nm紫外吸光度に基づくタンパク質量の測定、および本ペプチダーゼ活性の測定に供試した。結果を図2に示す。図中の横軸は溶出液を分画回収した、画分番号を表す。左側縦軸は280nm紫外吸光度(図中の●)、右側縦軸は本ペプチダーゼ活性値(U/ml;図中の○)を表し、図中の点線および欄外の右側縦軸は、硫安の濃度勾配(20〜0%)を表す。
【0035】
使用した疎水クロマトグラフィーは、本ペプチダーゼの精製に有効であり、本ペプチダーゼは7%硫安濃度付近で溶出した。本精製により、比活性が16.5U/mgタンパク質である活性画分が得られた。
【0036】
(3)ゲル濾過カラムクロマトグラフィー
さらに本ペプチダーゼを精製するため、上記疎水クロマトグラフィーで得られた活性画分(図中画分No.30)をゲル濾過カラムクロマトグラフィー(FPLC;Superose12、ファルマシア社製)に供試した。カラム直径10mm、カラム長30cmのSuperose12充填カラムに、タンパク質濃度0.16mg/mlに調整した上記活性画分を、200μl添加した。0.15M-NaClを含む10mMリン酸緩衝液(pH7.0)を用いて、流速0.4ml/分で溶出し、0.4mlずつ溶出液を分画回収し、得られた各画分を、280nm紫外吸光度に基づくタンパク質量の測定、および本ペプチダーゼ活性の測定に供試した。結果を図3に示す。図中の横軸は溶出液を分画回収した、画分番号を表す。左側縦軸は280nm紫外吸光度(図中の○)、右側縦軸は本ペプチダーゼ活性値(U/ml;図中の●)を表す。
【0037】
使用したゲル濾過カラムクロマトグラフィーは、本ペプチダーゼの精製に有効であった。本ペプチダーゼは画分No.30付近で溶出した。精製により、比活性が29.9U/mgタンパク質である活性画分が得られた。
【0038】
上記(1)、(2)、および(3)の各精製工程における本発明の本ペプチダーゼの精製度およびタンパク質当りの比活性を表6に示す。
【0039】
【表6】
【0040】
実施例4
(本ペプチダーゼの至適pHおよび安定pH範囲)
(1)至適pH
Carmody広域緩衝液により、pHを4.0から10.0まで0.5間隔で調整した1mMのL−アラニン−β−ナフチルアミドを用い、上記実施例3(3)で得られた、精製された本ペプチダーゼの活性を測定した。結果を図4に示す。図中の横軸は反応pHを表し、縦軸は、最大活性値を100とした場合の相対活性(%)を表す。本ペプチダーゼの至適pHは、6.5であることが明らかとなった。
【0041】
(2)安定pH範囲
Carmody広域緩衝液により、上記実施例3(3)で得られた精製された本ペプチダーゼ溶液のpHを4.0から12.0まで0.5間隔で調整し、4℃で5時間インキュベートした。次いで、各pH処理液中の活性を測定した。結果を図5に示す。図中の横軸は処理pHを表し、縦軸は、最大活性値を100とした場合の相対活性(%)を表す。本ペプチダーゼの安定pH範囲は、約7.0から10.0であることが明らかとなった。
【0042】
実施例5
(本ペプチダーゼの作用適温の範囲および熱安定性)
(1)作用適温の範囲
上記実施例3(3)で得られた精製された本ペプチダーゼ活性を、種々の温度条件(20,30,35,40,45,50,55,60℃)下で測定した。結果を図6に示す。図中の横軸は反応温度(℃)を表し、縦軸は最大活性値を100とした場合の相対活性(%)を表す。本ペプチダーゼの至適温度は、45℃であることが明らかとなった。
【0043】
(2)熱安定性
上記実施例3(3)で得られた精製された本ペプチダーゼを種々の温度条件(4,30,40,45,50,55,60℃)下で10分間インキュベートして、活性を測定した。結果を図7に示す。図中の横軸は処理温度(℃)を表し、縦軸は最大活性値を100とした場合の相対活性(%)を表す。本ペプチダーゼは、40℃まで安定であることが明らかとなった。
【0044】
実施例6
(本ペプチダーゼの基質特異性)
種々のα−アミノアシル−β−ナフチルアミド類(L-Ala-βNA、L-Arg-βNA、L-Lys-βNA、L-Trp-βNA、L-Pro-βNA、L-Asp-βNA、Met-βNA、L-Phe-βNA、L-Ser-βNA、L-Leu-βNA、L-Tyr-βNA、L-Ileu-βNA、L-Glu-βNA、およびL-Val-βNA)、またはα−アミノアシル−p−ニトロアニリド類(Gly-pNA、L-Leu-pNA、L-Lys-pNA、L-Phe-pNA、DL-Arg-pNA、L-Cys-pNA、H-Glu-pNA、およびL-Tyr-pNA)を基質として供試し、上記実施例3(3)で得られた精製された本ペプチダーゼの活性を測定して、本ペプチダーゼの基質特異性を調べた。L−アラニン−β−ナフチルアミド(L-Ala-βNA)を基質とした場合の活性を100とした相対活性(%)を表7に示す。
【0045】
【表7】
【0046】
本ペプチダーゼは、アラニン残基に対して特に高い基質特異性を示すことが明らかとなった。
【0047】
実施例7
(本ペプチダーゼの分子量測定)
(1)SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動による分子量測定
SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)法(Laemmli,U.K.、Nature、227、680(1970))で本ペプチダーゼの分子量を測定した。
【0048】
スラブ電気泳動装置(ATTO社製)上のSDSポリアクリルアミドゲル(分離ゲル(12.5%)および濃縮ゲル(3%))に、上記実施例3(3)で得られた精製された本ペプチダーゼ20μgを載せ、40mAで110分泳動した。分子量マーカーとして、ホスホリラーゼb(分子量94,000)、牛血清アルブミン(分子量67,000)、卵白アルブミン(分子量43,000)、カルボニックアンヒドラーゼ(分子量30,000)、大豆トリプシンインヒビター(20,100)、およびα-ラクトアルブミン(分子量14,400)を同時に泳動した。泳動終了後、クーマシーブリリアントブルーで染色し、本ペプチダーゼと各分子量マーカーとの相対泳動距離より、本ペプチダーゼの分子量を測定した。結果を図8および図9に示す。図8は、泳動後染色したSDSポリアクリルアミドゲルの模式図を示す。右側のレーンは、本ペプチダーゼ、左側のレーンは、同時に泳動した各分子量マーカーである。模式図外側の数値は分子量サイズを表す。 図9は分子量マーカー検量線および本ペプチダーゼの相対分子量を示す。図の横軸はRf値、縦軸は分子量(104〜105)を表す。図中の○は、本ペプチダーゼ、そして●1、2、3、4、5、および6は、それぞれホスホリラーゼb(分子量94,000)、牛血清アルブミン(分子量67,000)、卵白アルブミン(分子量43,000)、カルボニックアンヒドラーゼ(分子量30,000)、大豆トリプシンインヒビター(20,100)、および、α-ラクトアルブミン(分子量14,400)を示す。 本SDS-PAGEにより、本ペプチダーゼは、単一バンドを示した。本ペプチダーゼのSDS-PAGEにおける分子量は、約86kDaであることが明らかとなった。
【0049】
(2)ゲル濾過による分子量測定
通常のゲル濾過法を用いて、本ペプチダーゼの分子量を測定した。
【0050】
0.15M-NaClを含む10mMリン酸緩衝液(pH7.0)で平衡化したFPLC Superose12(ファルマシア社)カラムに、上記実施例3(3)で得られた精製された本ペプチダーゼ、ならびに分子量マーカーとして、チログロブリン(分子量669,000)、フェリチン(分子量440,000)、カタラーゼ(分子量232,000)、およびアルドラーゼ(分子量158,000)を同時に添加し、上記緩衝液でゲル濾過を行った。結果を図10に示す。図中の横軸はゲル濾過開始後の溶出液量(ml)、縦軸は分子量(105〜106)を表す。図中の○は、本ペプチダーゼ、そして●1、2、3、および4は、それぞれチログロブリン(分子量669,000)、フェリチン(分子量440,000)、カタラーゼ(分子量232,000)、およびアルドラーゼ(分子量158,000)を表す。
【0051】
本ゲル濾過の検量線から、本ペプチダーゼは、約520kDaであった。従って、本結果および上記SDS-PAGEの結果より、本ペプチダーゼは、分子量約86kDaのペプチドが6量体で存在することが明らかとなった。
【0052】
実施例8
(プロテアーゼ阻害剤の影響)
本ペプチダーゼを種々のプロテアーゼ阻害剤で処理した。1mMフェニルメタンスルホニルフルオリド(PhMeSO2F)、10mMヨード酢酸、1mM-EDTA・2Na、0.1mMペプスタチン、0.1mMロイペプチン、および0.1mMピューロマイシンの各阻害剤で、上記実施例3(3)で得られた精製された本ペプチダーゼを処理(pH7.0、35℃、5分)し、活性を測定した。結果を表8に示す。
【0053】
【表8】
【0054】
本ペプチダーゼは、ヨード酢酸により、著しく阻害を受け、またロイペプチンによって、わずかに阻害された。また、拮抗阻害剤であるピューロマイシンにも若干阻害された。以上の結果より、本ペプチダーゼは、チオールプロテアーゼであることが明らかとなった。
【0055】
実施例9
(添加アミノ酸の影響)
種々のアミノ酸を反応液中に混在させ、本ペプチダーゼの活性に与える影響を調べた。種々のL-アミノ酸(ロイシン、グルタミン酸、アルギニン、フェニルアラニン、リジン、トリプトファン、メチオニン、チロシン、イソロイシン、アラニン、アスパラギン、セリン、スレオニン、プロリン)、およびグリシンを5mMとなるように反応液中に加え、上記実施例3(3)で得られた精製された本ペプチダーゼの活性を測定した。結果はアミノ酸無添加区を100とした相対活性(%)で表し、表9に示す。
【0056】
【表9】
【0057】
本ペプチダーゼは、共存するL-ロイシン、L-グルタミン酸、L-アルギニンなどで阻害された。しかしながら、L-プロリン、グリシン、L-スレオニンなどで活性化され、基質であるL-アラニンでは阻害されないことが明らかとなった。
【0058】
実施例10
(本ペプチダーゼのミカエリス定数)
L−アラニン−β−ナフチルアミドを基質とした場合の本ペプチダーゼのミカエリス定数を、上記実施例3(3)で得られた精製された本ペプチダーゼを用いて、計測した。さらに上記ピューロマイシンを種々の濃度で反応系に添加し、反応速度に及ぼす影響を測定した。これらの結果を図11、12、および13に示す。図11は、触媒反応曲線を表し、図中の横軸は、基質初濃度[S]0(mM)、そして縦軸は、反応速度V(ナノモル/分)を示す。図12は、Hanes-Woolf線型プロットを表し、図中の横軸は、基質初濃度[S]0(mM)、そして縦軸は、[S]0/V(分/ml)を示す。図13は、Dixonプロットを表し、図中の横軸は、添加したピューロマイシン量(μM)、そして縦軸は反応速度の逆数1/V(分/マイクロモル)を示す。図中の記号○、●、△、▲は、基質濃度が、それぞれ0.1、0.2、0.3、0.5mMの場合の結果を示す。
【0059】
これらの測定結果より、本ペプチダーゼは、ミカエリス-メンテンの速度論に従い、ミカエリス定数Kmが0.28mM、および最大反応速度Vmaxが49.4マイクロモル/分/mgであり、そして酵素−阻害剤複合体の解離定数を示すKiが18μMであることが明らかとなった。
【0060】
【発明の効果】
本発明によれば、高い基質特異性を有する新規アラニンアミノペプチダーゼ、およびその生産方法が提供される。本ペプチダーゼは、アラニンに特異性が高いため、肉質中に特定の遊離アミノ酸が生成され得る。このような酵素は貯蔵食用肉の味、風味改善に有用である。本ペプチダーゼは、細菌の培養によって生産されるため、安価に大量に本ペプチダーゼを提供することができ、試薬または工業用途に広く利用され得る。
【図面の簡単な説明】
【図1】粗酵素液の40〜55%硫安画分を添加した陰イオン交換カラムクロマトグラフィーによる各溶出画分のタンパク質紫外吸光度(280nm)およびアラニンアミノペプチダーゼ活性値(U/ml)を示す。
【図2】陰イオン交換カラムクロマトグラフィーによるアラニンアミノペプチダーゼ活性画分を添加した疎水クロマトグラフィーによる各溶出画分のタンパク質紫外吸光度(280nm)およびアラニンアミノペプチダーゼ活性値(U/ml)を示す。
【図3】疎水クロマトグラフィーによるアラニンアミノペプチダーゼ活性画分を添加したゲル濾過カラムクロマトグラフィーによる各溶出画分のタンパク質紫外吸光度(280nm)およびアラニンアミノペプチダーゼ活性値(U/ml)を示す。
【図4】 pH4〜10の範囲で本ペプチダーゼ活性を測定した場合の相対活性を示す。
【図5】本ペプチダーゼをpH4〜12の条件下、4℃で5時間インキュベーション後に測定した相対活性を示す。
【図6】 20〜60℃の範囲で本ペプチダーゼ活性を測定した場合の相対活性を示す。
【図7】本ペプチダーゼを4〜60℃の条件下、pH7.0で10分インキュベーション後に測定した相対活性を示す。
【図8】本ペプチダーゼのSDS-PAGEによる泳動パターンを示す。
【図9】 SDS-PAGEの検量線から測定した本ペプチダーゼの分子量を示す。
【図10】ゲル濾過の検量線から測定した本ペプチダーゼの分子量を示す。
【図11】本ペプチダーゼ反応における、基質初濃度と反応速度の関係を表した、触媒反応曲線を示す。
【図12】本ペプチダーゼ反応における、基質初濃度と基質初濃度/反応速度の関係を表した、Hanes-Woolf線型プロットを示す。
【図13】本ペプチダーゼ反応における、添加された阻害剤(ピューロマイシン)量と対応する反応速度の逆数を基質濃度別に表した、Dixonプロットを示す。
【産業上の利用分野】
本発明は、アラニン特異的アミノペプチダーゼおよびこのようなペプチダーゼを細菌培養物から生産する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
食用肉の保存中に生じる遊離アミノ酸が保存肉質の味、風味を向上することが知られている(Nishimuraら、Agric.Biol.Chem.、52、2323(1988))。このような遊離アミノ酸は、肉質中に存在するアミノペプチダーゼのエキソプロテオリシスにより生成される。従って、このようなアミノペプチダーゼは、食肉加工分野において、肉質の改善、うま味の向上などの手段として有用である。
【0003】
従来から、この目的に用いる酵素として種々の動物に由来するアラニンアミノペプチダーゼが知られている。例えば、沖アミ(Kimotoら、Agric.Biol.Chem.、48(7)、1819(1984))、ボラ(Chiouら、Agric.Biol.Chem.、52(1)、235(1988))、アラスカタラ(Chiouら、J. Biochem.、105、505(1989))、ウサギの骨格筋(Nishimuraら、Agric.Biol.Chem.、52(9)、2183(1988))、あるいは牛、豚、および鶏の骨格筋(Nishimotoら、Agric.Biol.Chem.、54(11)、2769(1990))に由来するアラニンアミノペプチダーゼが知られている。これらの酵素は特にアラニン残基に対して親和性が高いという特徴がある。
【0004】
しかし、これらの酵素は、アラニンのみならずメチオニンなどの他のアミノ酸残基にも比較的高い基質親和性を有することから酵素の基質特異性は低く、メチオニンなどの含硫アミノ酸を遊離する難点がある。遊離の含硫アミノ酸は味質を低下するという欠点があり、含硫アミノ酸を遊離しない基質特異性の高いアラニンアミノペプチダーゼが望まれていた。
【0005】
また、上記従来のペプチダーゼは、海洋生物、あるいは高等動物の体組織、代表的にはほ乳類の骨格筋から単離されることから、安定的に大量に上記ペプチダーゼを提供することは困難であり、安価で大量に基質特異性の高いアラニンアミノペプチダーゼが提供されることが望まれていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来の課題を解決するものであり、その目的とするところは、新規なアラニンアミノペプチダーゼ、ならびに、その生産方法を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、海洋細菌であるAeromonas属に属する、新たに単離した菌株から、新規なアラニンアミノペプチダーゼを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明のアラニンアミノペプチダーゼは、次の特性を有する。
▲1▼作用:アミノペプチダーゼ活性を有する。
▲2▼至適pH:約6.5である。
▲3▼安定pH範囲:4℃で5時間処理する場合において、pH7.0〜10.0である。
▲4▼作用適温の範囲:至適温度は約45℃である。
▲5▼熱安定性:pH7.0で10分間保持した場合に、40℃まで安定である。
▲6▼基質特異性:アラニン残基に対して高い特異性を有する。
▲7▼分子量;ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)ポリアクリルアミドゲル電気泳動法における分子量が、約86キロダルトンであり、6量体で存在する。このことによって上記目的が達成される。
【0009】
本発明の好ましいアラニンアミノペプチダーゼは、チオールプロテアーゼとしての性状を包含する。このことによって上記目的が達成される。
【0010】
本発明のアラニンアミノペプチダーゼは、Aeromonas属の細菌、特に好ましくは平成6年4月1日に工業技術院生命工学工業技術研究所(生命研と略称する)に寄託したAeromonas salmonicida subsp.KUPD-1(生命研菌寄第14260号;FERM P-14260)により生産される。このことによって上記目的が達成される。
【0011】
上記細菌より生産される本発明のアラニンアミノペプチダーゼの種々の特性と上記沖アミEuphausia superba(Kimotoら、Agric.Biol.Chem.、48(7)、1819(1984))、およびボラMugil cephalus(Chiouら、Agric.Biol.Chem.、52(1)、235(1988))に由来する、既知のアラニンアミノペプチダーゼの同特性との差異を表1に示す。
【0012】
【表1】
【0013】
上記特性を有する、微生物由来アラニンアミノペプチダーゼは、これまで知られていない。
【0014】
本発明のアラニンアミノペプチダーゼの生産方法は、上記生産菌を培養し、培養物より該ペプチダーゼを分離精製する工程を包含する。このことによって上記目的が達成される。
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0016】
本発明のアラニンアミノペプチダーゼは、Aeromonas属菌、特にAeromonas salmonicida subsp.KUPD-1(生命研菌寄第14260号;FERM P-14260)により生産される。この菌株は、発明者らが長崎沖の海底土壌から分離した新菌株である。上記菌株の菌学的性質を次に示す。
【0017】
(1)形態および培養
本発明のアラニンアミノペプチダーゼ生産菌(以下、本菌という)は、Bergy's Manual of Systematic Bacteriology第2巻(Williams and Wilkins, Baltimore, 1986)に従ってAeromonas salmonicidaと同定され、Aeromonas salmonicida subsp.KUPD-1と命名した。本菌は、0.5〜0.7μm×0.9〜1.2μmの桿菌である。本菌の菌学的性状を表2に示す。
【0018】
【表2】
【0019】
次に、本菌から本発明のアラニンアミノペプチダーゼを生産するための条件について説明する。
【0020】
本菌を生育させる培地としては、特に限定されず、通常の液体培地または固体培地が用いられる。炭素源としては、グルコース、ショ糖、糖蜜等の糖類を用いる。窒素源としては、プロタミン、ポリペプトン、各種大豆分解物、酵母エキス、肉エキスなどの有機窒素の他、アンモニア等の無機窒素も使用し得る。必要に応じて各種無機塩類、ビタミン類が添加され得る。本菌の培養には、プロタミンを含ませることが好ましい。培地のpHを、4.0〜11.0に調製し、滅菌して使用する。本菌の最適培地を表3に示す。
【0021】
【表3】
【0022】
本菌の培養温度は本菌が生育できる温度であれば特に制限はないが、20〜40℃、好ましくは25〜37℃、より好ましくは30℃である。液体培養の場合は、1〜3日間、振とうまたは通気撹拌しながら行い得る。培養過程の菌増殖経時変化は、培養懸濁液の濁度変化(通常はO.D.660の計測)をモニターして知り得る。
【0023】
(2)培養懸濁液からのアラニンアミノペプチダーゼの分離精製
上記培養液から本発明のアラニンアミノペプチダーゼを分離精製するには、既知の精製法が単独もしくは併用して利用され得る。
【0024】
本発明のアラニンアミノペプチダーゼ(以下、本ペプチダーゼという)は、菌体内部に産生、蓄積される。従って、培養後、好ましくは対数増殖期後期の培養液中の菌体を集め、例えば緩衝液中に懸濁して、超音波処理などで物理的に菌体を破砕することによりあるいは細胞壁を酵素で処理して、菌体を破壊することにより、本ペプチダーゼが細胞から溶出され得る。次いで、この溶出液を濾過または遠心分離にかけて菌体を除去する。好ましい上記除去法は超遠心分離処理である。得られた上清(粗酵素液)を、硫安分画(塩析)、透析、各種クロマトグラフィー、ゲル濾過などの一般的な酵素の精製工程を行うことにより、本ペプチダーゼが精製され得る。例えば、上記得られた上清を硫安分画後、陰イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過に順次供試することにより、精製された高活性の本ペプチダーゼを含有する画分が得られる。
【0025】
(3)本ペプチダーゼ活性の測定
本願発明においては、本ペプチダーゼ活性は、L−アラニン−β−ナフチルアミドを基質として用い、1分間に1マイクロモルのβ−ナフチルアミンを遊離する量を1ユニット(U)として測定する。基本的には本願においては、粗酵素液、または各硫安分画液20μlを、1mML−アラニン−β−ナフチルアミド(10mMリン酸緩衝液pH6.5)780μlに添加し、35℃で10分反応させる。次いで0.4M塩酸/エタノールを100μl加え、室温まで冷却後、0.1%p-ジメチルアミノケイ皮アルデヒド/エタノールを100μl添加し、540nmの吸光度(O.D.540)を測定する。上記粗酵素液、または各硫安分画液中のタンパク質の量も同時に測定(Bio-rad法)される。上記540nmの吸光度から計算式(O.D.540×0.56×1ml)/(0.02ml×10分×タンパク濃度(mg/ml))によりタンパク質当りの比活性(U/mg)が計算される。
【0026】
以下の実施例にて、本発明をさらに詳細に説明するが、これらはなんら本発明を限定するものではない。
【0027】
【実施例】
実施例1
(Aeromonas salmonicida subsp.KUPD-1の培養条件)
20mlのL培地(1.0%バクト-トリプトン、0.5%酵母エキス、0.5%NaCl、0.1%ブドウ糖、pH7.0)を含有する100ml容三角フラスコにAeromonas salmonicida subsp.KUPD-1を植菌し、30℃で24時間、150rpmで振とう培養した。次いでこの培養液を100mlのL培地を含有する坂口フラスコ2本に植菌し、30℃で20時間、120rpmの振とう培養した。この培養液(O.D.660=8)200mlを、表3に示す最適培地20lに移し、30℃、43時間、300rpmの通気条件で培養した。
【0028】
実施例2
(本ペプチダーゼの分離精製)
上記実施例1の培養液を集めた(80l)後の菌体を遠心分離後、菌体を10mMリン酸緩衝液(pH7)で洗浄し、同緩衝液400mlに懸濁した。これを超音波破砕し、得られた破砕液を超遠心分離(105,000×g、4℃、1時間)し、得られた上澄み液を粗酵素液とした。この粗酵素液を、硫安濃度0〜40%、40〜50%、50〜60%、60〜70%、および70%以上の各条件で逐次硫安塩析し、各硫安分画液を調製した。これらの画分の、本ペプチダーゼ活性を上記の方法で測定した。結果を表4に示す。本ペプチダーゼは、主として40〜50%硫安画分に存在した。
【0029】
【表4】
【0030】
上記実施例1の培養スケールを80lとして、本菌を培養後、上記と同様に粗酵素液を得た。この粗酵素液を、硫安濃度0〜40%、40〜55%、および55〜80%の各条件で逐次硫安塩析し、各硫安分画液を調製した。これらを上記と同様に本ペプチダーゼ活性測定を行った。結果を表5に示す。本ペプチダーゼは、主として40〜55%硫安画分に存在した。
【0031】
【表5】
【0032】
実施例3
(本ペプチダーゼのクロマト精製)
(1)陰イオン交換カラムクロマトグラフィー
上記40〜55%硫安画分を10mMリン酸緩衝液(pH7.0)で透析後、QA52(ワットマン社製)を担体とする陰イオン交換カラムクロマトグラフィーに供試し、さらに分画精製した。カラム直径1.6cm、カラム長12cmの陰イオン交換カラムに、タンパク質濃度3.0mg/mlに調整した上記透析後の溶液を、23ml添加した。10mMリン酸緩衝液(pH7.0)を用いて、流速1.3ml/分、NaCl濃度が0から0.5Mへの濃度勾配で溶出し、4.0mlずつ溶出液を分画回収し、得られた各画分を、280nm紫外吸光度に基づくタンパク質量の測定、および本ペプチダーゼ活性の測定に供試した。結果を図1に示す。図中の横軸は溶出液を分画回収した、画分番号を表す。左側縦軸は280nm紫外吸光度(図中の○)、右側縦軸は本ペプチダーゼ活性値(U/ml;図中の●)を表し、図中の点線および欄外の右側縦軸は、NaClの濃度勾配(0〜0.5M)を表す。
【0033】
使用した陰イオン交換カラムクロマトグラフィーは、本ペプチダーゼの精製に有効であり、本ペプチダーゼは0.3M-NaCl濃度付近で溶出した。精製により、比活性が2.19U/mgタンパク質である活性画分が得られた。
【0034】
(2)疎水クロマトグラフィー
さらに本ペプチダーゼを精製するため、上記クロマトグラフィーで得られた活性画分(図中画分No.45)を疎水クロマトグラフィー(FPLC;Phenyl-superose充填カラム、ファルマシア社製)に供試した。カラム直径5mm、カラム長5cmのPhenyl-superose充填カラムに、タンパク質濃度5mg/mlに調整した上記活性画分を、200μl添加した。10mMリン酸緩衝液(pH7.0)を用いて、流速0.5ml/分、硫安濃度が20から0%への濃度勾配で溶出し、0.5mlずつ溶出液を分画回収し、得られた各画分を、280nm紫外吸光度に基づくタンパク質量の測定、および本ペプチダーゼ活性の測定に供試した。結果を図2に示す。図中の横軸は溶出液を分画回収した、画分番号を表す。左側縦軸は280nm紫外吸光度(図中の●)、右側縦軸は本ペプチダーゼ活性値(U/ml;図中の○)を表し、図中の点線および欄外の右側縦軸は、硫安の濃度勾配(20〜0%)を表す。
【0035】
使用した疎水クロマトグラフィーは、本ペプチダーゼの精製に有効であり、本ペプチダーゼは7%硫安濃度付近で溶出した。本精製により、比活性が16.5U/mgタンパク質である活性画分が得られた。
【0036】
(3)ゲル濾過カラムクロマトグラフィー
さらに本ペプチダーゼを精製するため、上記疎水クロマトグラフィーで得られた活性画分(図中画分No.30)をゲル濾過カラムクロマトグラフィー(FPLC;Superose12、ファルマシア社製)に供試した。カラム直径10mm、カラム長30cmのSuperose12充填カラムに、タンパク質濃度0.16mg/mlに調整した上記活性画分を、200μl添加した。0.15M-NaClを含む10mMリン酸緩衝液(pH7.0)を用いて、流速0.4ml/分で溶出し、0.4mlずつ溶出液を分画回収し、得られた各画分を、280nm紫外吸光度に基づくタンパク質量の測定、および本ペプチダーゼ活性の測定に供試した。結果を図3に示す。図中の横軸は溶出液を分画回収した、画分番号を表す。左側縦軸は280nm紫外吸光度(図中の○)、右側縦軸は本ペプチダーゼ活性値(U/ml;図中の●)を表す。
【0037】
使用したゲル濾過カラムクロマトグラフィーは、本ペプチダーゼの精製に有効であった。本ペプチダーゼは画分No.30付近で溶出した。精製により、比活性が29.9U/mgタンパク質である活性画分が得られた。
【0038】
上記(1)、(2)、および(3)の各精製工程における本発明の本ペプチダーゼの精製度およびタンパク質当りの比活性を表6に示す。
【0039】
【表6】
【0040】
実施例4
(本ペプチダーゼの至適pHおよび安定pH範囲)
(1)至適pH
Carmody広域緩衝液により、pHを4.0から10.0まで0.5間隔で調整した1mMのL−アラニン−β−ナフチルアミドを用い、上記実施例3(3)で得られた、精製された本ペプチダーゼの活性を測定した。結果を図4に示す。図中の横軸は反応pHを表し、縦軸は、最大活性値を100とした場合の相対活性(%)を表す。本ペプチダーゼの至適pHは、6.5であることが明らかとなった。
【0041】
(2)安定pH範囲
Carmody広域緩衝液により、上記実施例3(3)で得られた精製された本ペプチダーゼ溶液のpHを4.0から12.0まで0.5間隔で調整し、4℃で5時間インキュベートした。次いで、各pH処理液中の活性を測定した。結果を図5に示す。図中の横軸は処理pHを表し、縦軸は、最大活性値を100とした場合の相対活性(%)を表す。本ペプチダーゼの安定pH範囲は、約7.0から10.0であることが明らかとなった。
【0042】
実施例5
(本ペプチダーゼの作用適温の範囲および熱安定性)
(1)作用適温の範囲
上記実施例3(3)で得られた精製された本ペプチダーゼ活性を、種々の温度条件(20,30,35,40,45,50,55,60℃)下で測定した。結果を図6に示す。図中の横軸は反応温度(℃)を表し、縦軸は最大活性値を100とした場合の相対活性(%)を表す。本ペプチダーゼの至適温度は、45℃であることが明らかとなった。
【0043】
(2)熱安定性
上記実施例3(3)で得られた精製された本ペプチダーゼを種々の温度条件(4,30,40,45,50,55,60℃)下で10分間インキュベートして、活性を測定した。結果を図7に示す。図中の横軸は処理温度(℃)を表し、縦軸は最大活性値を100とした場合の相対活性(%)を表す。本ペプチダーゼは、40℃まで安定であることが明らかとなった。
【0044】
実施例6
(本ペプチダーゼの基質特異性)
種々のα−アミノアシル−β−ナフチルアミド類(L-Ala-βNA、L-Arg-βNA、L-Lys-βNA、L-Trp-βNA、L-Pro-βNA、L-Asp-βNA、Met-βNA、L-Phe-βNA、L-Ser-βNA、L-Leu-βNA、L-Tyr-βNA、L-Ileu-βNA、L-Glu-βNA、およびL-Val-βNA)、またはα−アミノアシル−p−ニトロアニリド類(Gly-pNA、L-Leu-pNA、L-Lys-pNA、L-Phe-pNA、DL-Arg-pNA、L-Cys-pNA、H-Glu-pNA、およびL-Tyr-pNA)を基質として供試し、上記実施例3(3)で得られた精製された本ペプチダーゼの活性を測定して、本ペプチダーゼの基質特異性を調べた。L−アラニン−β−ナフチルアミド(L-Ala-βNA)を基質とした場合の活性を100とした相対活性(%)を表7に示す。
【0045】
【表7】
【0046】
本ペプチダーゼは、アラニン残基に対して特に高い基質特異性を示すことが明らかとなった。
【0047】
実施例7
(本ペプチダーゼの分子量測定)
(1)SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動による分子量測定
SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)法(Laemmli,U.K.、Nature、227、680(1970))で本ペプチダーゼの分子量を測定した。
【0048】
スラブ電気泳動装置(ATTO社製)上のSDSポリアクリルアミドゲル(分離ゲル(12.5%)および濃縮ゲル(3%))に、上記実施例3(3)で得られた精製された本ペプチダーゼ20μgを載せ、40mAで110分泳動した。分子量マーカーとして、ホスホリラーゼb(分子量94,000)、牛血清アルブミン(分子量67,000)、卵白アルブミン(分子量43,000)、カルボニックアンヒドラーゼ(分子量30,000)、大豆トリプシンインヒビター(20,100)、およびα-ラクトアルブミン(分子量14,400)を同時に泳動した。泳動終了後、クーマシーブリリアントブルーで染色し、本ペプチダーゼと各分子量マーカーとの相対泳動距離より、本ペプチダーゼの分子量を測定した。結果を図8および図9に示す。図8は、泳動後染色したSDSポリアクリルアミドゲルの模式図を示す。右側のレーンは、本ペプチダーゼ、左側のレーンは、同時に泳動した各分子量マーカーである。模式図外側の数値は分子量サイズを表す。 図9は分子量マーカー検量線および本ペプチダーゼの相対分子量を示す。図の横軸はRf値、縦軸は分子量(104〜105)を表す。図中の○は、本ペプチダーゼ、そして●1、2、3、4、5、および6は、それぞれホスホリラーゼb(分子量94,000)、牛血清アルブミン(分子量67,000)、卵白アルブミン(分子量43,000)、カルボニックアンヒドラーゼ(分子量30,000)、大豆トリプシンインヒビター(20,100)、および、α-ラクトアルブミン(分子量14,400)を示す。 本SDS-PAGEにより、本ペプチダーゼは、単一バンドを示した。本ペプチダーゼのSDS-PAGEにおける分子量は、約86kDaであることが明らかとなった。
【0049】
(2)ゲル濾過による分子量測定
通常のゲル濾過法を用いて、本ペプチダーゼの分子量を測定した。
【0050】
0.15M-NaClを含む10mMリン酸緩衝液(pH7.0)で平衡化したFPLC Superose12(ファルマシア社)カラムに、上記実施例3(3)で得られた精製された本ペプチダーゼ、ならびに分子量マーカーとして、チログロブリン(分子量669,000)、フェリチン(分子量440,000)、カタラーゼ(分子量232,000)、およびアルドラーゼ(分子量158,000)を同時に添加し、上記緩衝液でゲル濾過を行った。結果を図10に示す。図中の横軸はゲル濾過開始後の溶出液量(ml)、縦軸は分子量(105〜106)を表す。図中の○は、本ペプチダーゼ、そして●1、2、3、および4は、それぞれチログロブリン(分子量669,000)、フェリチン(分子量440,000)、カタラーゼ(分子量232,000)、およびアルドラーゼ(分子量158,000)を表す。
【0051】
本ゲル濾過の検量線から、本ペプチダーゼは、約520kDaであった。従って、本結果および上記SDS-PAGEの結果より、本ペプチダーゼは、分子量約86kDaのペプチドが6量体で存在することが明らかとなった。
【0052】
実施例8
(プロテアーゼ阻害剤の影響)
本ペプチダーゼを種々のプロテアーゼ阻害剤で処理した。1mMフェニルメタンスルホニルフルオリド(PhMeSO2F)、10mMヨード酢酸、1mM-EDTA・2Na、0.1mMペプスタチン、0.1mMロイペプチン、および0.1mMピューロマイシンの各阻害剤で、上記実施例3(3)で得られた精製された本ペプチダーゼを処理(pH7.0、35℃、5分)し、活性を測定した。結果を表8に示す。
【0053】
【表8】
【0054】
本ペプチダーゼは、ヨード酢酸により、著しく阻害を受け、またロイペプチンによって、わずかに阻害された。また、拮抗阻害剤であるピューロマイシンにも若干阻害された。以上の結果より、本ペプチダーゼは、チオールプロテアーゼであることが明らかとなった。
【0055】
実施例9
(添加アミノ酸の影響)
種々のアミノ酸を反応液中に混在させ、本ペプチダーゼの活性に与える影響を調べた。種々のL-アミノ酸(ロイシン、グルタミン酸、アルギニン、フェニルアラニン、リジン、トリプトファン、メチオニン、チロシン、イソロイシン、アラニン、アスパラギン、セリン、スレオニン、プロリン)、およびグリシンを5mMとなるように反応液中に加え、上記実施例3(3)で得られた精製された本ペプチダーゼの活性を測定した。結果はアミノ酸無添加区を100とした相対活性(%)で表し、表9に示す。
【0056】
【表9】
【0057】
本ペプチダーゼは、共存するL-ロイシン、L-グルタミン酸、L-アルギニンなどで阻害された。しかしながら、L-プロリン、グリシン、L-スレオニンなどで活性化され、基質であるL-アラニンでは阻害されないことが明らかとなった。
【0058】
実施例10
(本ペプチダーゼのミカエリス定数)
L−アラニン−β−ナフチルアミドを基質とした場合の本ペプチダーゼのミカエリス定数を、上記実施例3(3)で得られた精製された本ペプチダーゼを用いて、計測した。さらに上記ピューロマイシンを種々の濃度で反応系に添加し、反応速度に及ぼす影響を測定した。これらの結果を図11、12、および13に示す。図11は、触媒反応曲線を表し、図中の横軸は、基質初濃度[S]0(mM)、そして縦軸は、反応速度V(ナノモル/分)を示す。図12は、Hanes-Woolf線型プロットを表し、図中の横軸は、基質初濃度[S]0(mM)、そして縦軸は、[S]0/V(分/ml)を示す。図13は、Dixonプロットを表し、図中の横軸は、添加したピューロマイシン量(μM)、そして縦軸は反応速度の逆数1/V(分/マイクロモル)を示す。図中の記号○、●、△、▲は、基質濃度が、それぞれ0.1、0.2、0.3、0.5mMの場合の結果を示す。
【0059】
これらの測定結果より、本ペプチダーゼは、ミカエリス-メンテンの速度論に従い、ミカエリス定数Kmが0.28mM、および最大反応速度Vmaxが49.4マイクロモル/分/mgであり、そして酵素−阻害剤複合体の解離定数を示すKiが18μMであることが明らかとなった。
【0060】
【発明の効果】
本発明によれば、高い基質特異性を有する新規アラニンアミノペプチダーゼ、およびその生産方法が提供される。本ペプチダーゼは、アラニンに特異性が高いため、肉質中に特定の遊離アミノ酸が生成され得る。このような酵素は貯蔵食用肉の味、風味改善に有用である。本ペプチダーゼは、細菌の培養によって生産されるため、安価に大量に本ペプチダーゼを提供することができ、試薬または工業用途に広く利用され得る。
【図面の簡単な説明】
【図1】粗酵素液の40〜55%硫安画分を添加した陰イオン交換カラムクロマトグラフィーによる各溶出画分のタンパク質紫外吸光度(280nm)およびアラニンアミノペプチダーゼ活性値(U/ml)を示す。
【図2】陰イオン交換カラムクロマトグラフィーによるアラニンアミノペプチダーゼ活性画分を添加した疎水クロマトグラフィーによる各溶出画分のタンパク質紫外吸光度(280nm)およびアラニンアミノペプチダーゼ活性値(U/ml)を示す。
【図3】疎水クロマトグラフィーによるアラニンアミノペプチダーゼ活性画分を添加したゲル濾過カラムクロマトグラフィーによる各溶出画分のタンパク質紫外吸光度(280nm)およびアラニンアミノペプチダーゼ活性値(U/ml)を示す。
【図4】 pH4〜10の範囲で本ペプチダーゼ活性を測定した場合の相対活性を示す。
【図5】本ペプチダーゼをpH4〜12の条件下、4℃で5時間インキュベーション後に測定した相対活性を示す。
【図6】 20〜60℃の範囲で本ペプチダーゼ活性を測定した場合の相対活性を示す。
【図7】本ペプチダーゼを4〜60℃の条件下、pH7.0で10分インキュベーション後に測定した相対活性を示す。
【図8】本ペプチダーゼのSDS-PAGEによる泳動パターンを示す。
【図9】 SDS-PAGEの検量線から測定した本ペプチダーゼの分子量を示す。
【図10】ゲル濾過の検量線から測定した本ペプチダーゼの分子量を示す。
【図11】本ペプチダーゼ反応における、基質初濃度と反応速度の関係を表した、触媒反応曲線を示す。
【図12】本ペプチダーゼ反応における、基質初濃度と基質初濃度/反応速度の関係を表した、Hanes-Woolf線型プロットを示す。
【図13】本ペプチダーゼ反応における、添加された阻害剤(ピューロマイシン)量と対応する反応速度の逆数を基質濃度別に表した、Dixonプロットを示す。
Claims (7)
- 下記の特性:
▲1▼作用:アミノペプチダーゼ活性を有する;
▲2▼至適pH:約6.5;
▲3▼安定pH範囲:4℃で5時間処理する場合において、pH7.0〜10.0;
▲4▼作用適温の範囲:至適温度は約45℃である;
▲5▼熱安定性:pH7.0で10分間保持した場合に、40℃まで安定である。
▲6▼基質特異性:L-アラニン残基に対して高い特異性を有する;および
▲7▼分子量;ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)ポリアクリルアミドゲル電気泳動法における分子量が、約86キロダルトンであり、6量体で存在する;
を有するペプチダーゼ。 - ヨード酢酸で活性阻害を受けるチオールプロテアーゼである、請求項1記載のペプチダーゼ。
- Aeromonas属細菌由来である、請求項1または2に記載のペプチダーゼ。
- 前記Aeromonas属細菌が、Aeromonas salmonicida subsp.KUPD-1(生命研菌寄第14260号)である、請求項3に記載のペプチダーゼ。
- 下記の特性:
▲1▼作用:アミノペプチダーゼ活性を有する;
▲2▼至適pH:約6.5;
▲3▼安定pH範囲:4℃で5時間処理する場合において、pH7.0〜10.0;
▲4▼作用適温の範囲:至適温度は約45℃である;
▲5▼熱安定性:pH7.0で10分間保持した場合に、40℃まで安定である。
▲6▼基質特異性:L-アラニン残基に対して高い特異性を有する;および
▲7▼分子量;ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)ポリアクリルアミドゲル電気泳動法における分子量が、約86キロダルトンであり、6量体で存在する;
を有するペプチダーゼを生産する方法であって、該ペプチダーゼを生産するAeromonas属の細菌を培養し、培養物より該ペプチダーゼを分離する工程を包含する、ペプチダーゼの生産方法。 - 前記Aeromonas属細菌がAeromonas salmonicida subsp.KUPD-1(生命研菌寄第14260号)である、請求項5に記載の生産方法。
- 下記の特性:
▲1▼作用:アミノペプチダーゼ活性を有する;
▲2▼至適pH:約6.5;
▲3▼安定pH範囲:4℃で5時間処理する場合において、pH7.0〜10.0;
▲4▼作用適温の範囲:至適温度は約45℃である;
▲5▼熱安定性:pH7.0で10分間保持した場合に、40℃まで安定である。
▲6▼基質特異性:L-アラニン残基に対して高い特異性を有する;および
▲7▼分子量;ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)ポリアクリルアミドゲル電気泳動法における分子量が、約86キロダルトンであり、6量体で存在する;
を有するペプチダーゼを生産する、Aeromonas salmonicida subsp.KUPD-1(生命研菌寄第14260号)。
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