JP3685545B2 - 可溶性ポリイミド樹脂 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、有機溶剤に可溶で成形加工性に優れ、かつ耐熱性、接着性に優れたポリイミド樹脂に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリイミド樹脂は、耐熱性が高く難燃性で電気絶縁性に優れていることから電気、電子材料として広く使用されている。フィルムとしてフレキシブル印刷配線板や耐熱性接着テープの基材に、樹脂ワニスとして半導体の絶縁皮膜、保護皮膜に広く使用されている。しかし、従来のポリイミド樹脂は吸湿性が高く、耐熱性に優れている反面不溶不融であったり極めて融点が高く、加工性の点で決して使いやすい材料とはいえなかった。また半導体の実装材料として層間絶縁膜、表面保護膜などに使用されているが、これらは有機溶剤に可溶な前駆体ポリアミック酸を半導体表面に塗布し、加熱処理によって溶剤を除去すると共にイミド化を進めている。この時用いる酸アミド系溶剤は高沸点であり、皮膜の発泡の原因になったり、完全に溶媒を揮散させるために250℃以上の高温乾燥工程を必要とし素子を高温にさらすためアセンブリ工程の収率を劣化させる。また、皮膜の吸湿性が高いため、高温時に吸収した水分が一気に蒸発して膨れやクラックの原因となるなどの問題があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、有機溶剤に可溶で成形加工性に優れ、かつ耐熱性、接着性に優れたポリイミド樹脂を得るべく鋭意研究を重ねた結果、特定構造のポリイミド樹脂が上記課題を解決することを見出し、本発明に到達したものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明のポリイミド樹脂は、アミン成分の選択が重要であり、一般式(1)で表される多官能性アミノ化合物をアミン成分総量の3〜20重量%、一般式(3)で表されるシロキサン化合物をアミン成分総量の5〜40重量%を含有し、式(2)で表される酸二無水物を酸成分として有機溶媒中で反応させ、脱水閉環させてなる有機溶剤に可溶であることを特徴とする。
【0005】
【化1】
【0006】
【化2】
(式中、X:4価の有機基)
【0007】
式(1)で表される多官能性アミノ化合物として具体的にはアニリン樹脂が好ましく、その量比は上記範囲内にあることが好ましい、さらには5〜15重量%であることが好ましい。3重量%以下では内部可塑剤としてポリイミド樹脂骨格中に組み込むことで成形加工温度を下げることができず、20重量部以上ではアミド酸合成段階で系の粘度が高くなりすぎて反応が不均一となる。さらにアニリン樹脂に求められる特性として軟化点が60〜120℃であることがより好ましい。軟化点が120℃以上では成形加工温度を下げることができず、60℃以下では加工温度を下げることはできても成形物の耐熱性が著しく低下する場合が生じ好ましくない。
有機溶剤への溶解性を増しまた加工温度を下げるには一般式(3)で表されるシロキサン化合物を併用することが好ましい。
【0008】
【化3】
(式中、R1〜R2:二価の、炭素数1〜4の脂肪族基および/または芳香族基
R3〜R6:一価の脂肪族基及び/または芳香族基
k:1〜20の整数)
【0009】
シロキサン化合物の量比は5〜40重量%であることが重要で、全アミン成分の5重量%より少ないと有機溶剤への溶解性が著しく低下し、また低吸湿性の特徴が現れず、40重量%を越えるとガラス転移温度が著しく低下し耐熱性に問題が生じる。さらに、一般式(3)で表されるシロキサン化合物として具体的には、下記一般式(4)で表されるα,ω−ビス(3−アミノプロピル)ポリジメチルシロキサンが好ましく、特にkの値が4〜10の範囲が、ガラス転移温度、接着性、耐熱性の点から好ましい。これらのシロキサン化合物は単独で用いることは勿論、2種類以上を併用することもできる。特にk=0と上記k=4〜10のものをブレンドして用いることは接着性を重視する用途では好ましい。
【0010】
【化4】
【0011】
残りのアミン成分として、例えば、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2-ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン(BAPPF)、2,2-ビス(4-アミノフェノキシ)ヘキサフルオロプロパン(BAPF)、ビス-4-(4-アミノフェノキシ)フェニルスルフォン、ビス-4-(3-アミノフェノキシ)フェニルスルフォンなどを特性を損わない範囲で添加することができる。
一般式(2)で表される酸成分としては、4,4’−オキシジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物からなる群より選ばれた少なくとも1種であることが好ましい。
ポリイミド樹脂の分子末端をエンドキャップし分子量をコントロールすることにより、接着性を重視する用途では被着材との接着に適した溶融粘度を得ることでき、濡れ性を向上させ、接着力を高めることができる。
【0012】
テトラカルボン酸二無水物とアミノ化合物との反応は、非プロトン性極性溶媒中で公知の方法で行われる。非プロトン性極性溶媒は、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAC)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、テトラヒドロフラン(THF)、ジグライム、シクロヘキサノン、1,4-ジオキサンなどである。非プロトン性極性溶媒は、一種類のみ用いてもよいし、二種類以上を混合して用いてもよい。この時、上記非プロトン性極性溶媒と相溶性がある非極性溶媒を混合して使用しても良い。トルエン、キシレン、ソルベントナフサなどの芳香族炭化水素が良く使用される。混合溶媒における非極性溶媒の割合は、30重量%以下であることが好ましい。これは非極性溶媒が30重量%以上では溶媒の溶解力が低下しポリアミック酸が析出する恐れがあるためである。テトラカルボン酸二無水物とアミノ化合物との反応は、脱水精製した前述反応溶媒に溶解し、これに閉環率98%、より好ましくは99%以上の良く乾燥したテトラカルボン酸二無水物を添加して反応を進める。
【0013】
このようにして得たポリアミック酸溶液を続いて有機溶剤中で加熱脱水環化してイミド化しポリイミドにする。イミド化反応によって生じた水は閉環反応を妨害するため、水と相溶しない有機溶剤を系中に加えて共沸させてディーン・スターク(Dean-Stark)管などの装置を使用して系外に排出する。水と相溶しない有機溶剤としてはジクロルベンゼンが知られているが、エレクトロニクス用としては塩素成分が混入する恐れがあるので、好ましくは前記芳香族炭化水素を使用する。また、イミド化反応の触媒として無水酢酸、β-ピコリン、ピリジンなどの化合物を使用することは妨げない。
【0014】
本発明において、イミド閉環は程度が高いほど良く、イミド化率が低いと使用時の熱でイミド化が起こり水が発生して好ましくないため、95%以上、より好ましくは98%以上のイミド化率が達成されていることが望ましい。
【0015】
本発明では得られたポリイミド溶液は塗布用ワニスとしてそのまま使用することができる。また、該ポリイミド溶液を貧溶媒中に投入してポリイミド樹脂を再沈析出させて未反応モノマを取り除いて精製し、乾燥して固形のポリイミド樹脂として使用することもできる。高温工程を嫌う用途や特に不純物や異物が問題になる用途では、再び有機溶剤に溶解して濾過精製ワニスとすることが好ましい。この時使用する溶剤は加工作業性を考え、沸点の低い溶剤を選択することが可能である。
【0016】
本発明のポリイミド樹脂では、ケトン系溶剤として、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンを、エーテル系溶剤として、1,4-ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジグライムを沸点200℃以下の低沸点溶剤として使用することができる。これらの溶剤は単独で使用しても良いし、2種以上を混合して用いることもできる。
【0017】
本発明のポリイミド樹脂の使用方法は特に限定されるものではないが、有機溶剤に溶解して樹脂ワニスとしコーティングやディッピングに、流延成形によってフィルムに、固体状態で押出成形用に、耐熱性と加工性の両立した絶縁材料、接着フィルム等として使用することができる。
【0018】
本発明のポリイミド樹脂は、完全にイミド化した後も有機溶剤に可溶である特定構造のポリイミド樹脂であり成形加工性、接着性、耐熱性に優れており、化学反応を伴う熱硬化性樹脂に比べると短時間に成形加工が可能である。以下実施例により本発明を詳細に説明するが、これらの実施例に限定されるものではない。
【0019】
【実施例】
(実施例1)
乾燥窒素ガス導入管、冷却器、温度計、撹拌機を備えた四口フラスコに、脱水精製したNMP1010.08gを入れ、窒素ガスを流しながら10分間激しくかき混ぜる。次にアニリン樹脂PR−AF−S(軟化点78℃、アミノ基含有量10.2重量%、住友デュレズ(株)製)31.15g(17.3重量部)、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン(BAPP)73.89g(41.2重量部)、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン(APB)36.83g(20.5重量部)、α,ω-ビス(3−アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン(APPS)37.67g(21.0重量部、平均分子量837.00)、を系を60℃に加熱し均一になるまでかき混ぜる。均一に溶解後、系を氷水浴で5℃に冷却し、4,4'-オキシジフタル酸二無水物(ODPA)136.11gを粉末状のまま15分間かけて添加し、その後3時間撹拌を続けた。この間フラスコは5℃に保った。
【0020】
その後、窒素ガス導入管と冷却器を外し、キシレンを満たしたディーン・スターク管をフラスコに装着し、系にトルエン252.52gを添加した。油浴に代えて系を175℃に加熱し発生する水を系外に除いた。4時間加熱したところ、系からの水の発生は認められなくなった。冷却後この反応溶液を大量のメタノール中に投入しポリイミド樹脂を析出させた。固形分を濾過後、80℃で12時間減圧乾燥し溶剤を除き、290.40g(収率92.0%)の固形樹脂を得た。KBr錠剤法で赤外吸収スペクトルを測定したところ、環状イミド結合に由来する5.6μmの吸収を認めたが、アミド結合に由来する6.06μmの吸収を認めることはできず、この樹脂はほぼ100%イミド化していることが確かめられた。
このようにして得たポリイミド樹脂は、シクロヘキサノン/トルエン(90/10 w/w%)に良く溶解することが確かめられた。
【0021】
(実施例2、3)
実施例1と同様にして、第1表に示した配合でで反応させてポリイミド樹脂を得た。これらのポリイミド樹脂について得られた評価結果を第1表に示す。
【0022】
【表1】
【0023】
なお、第1表でPRはアニリン樹脂(商品名PR−AF−S、住友デュレズ(株)製)、BAPPは2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、APBは1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、APPSはα,ω-ビス(3−アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン、ODPAは4,4'-オキシジフタル酸二無水物、BPDAは3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、BTDAは3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物を表す。配合の数値はそれぞれの成分中の配合重量比であり、ガラス転移温度はDSC測定により求めた。吸水率は85℃85%RHの環境下で168時間放置(HH-168処理)後の飽和吸水率を示し、溶解性の欄のSは該当する溶媒に溶解することを示す。
【0024】
(比較例1)
実施例1と同様にして第1表に示した配合でポリイミド樹脂を得た。しかしこの樹脂をシクロヘキサノンに溶解しようとしたが膨潤ゲル状態となり、完全に溶解することができなかった。また、ジメチルホルムアミド(DMF)、テトラヒドロフラン(THF)に対しても同様の状態となり樹脂ワニスを調製することができなかった。
【0025】
(比較例2)
実施例1と同様に、第1表に示した配合で反応させようとしたが、加熱イミド化の際に反応系がゲル化し目的とするポリイミド樹脂を得ることができなかった。
以上の実施例から本発明により、完全にイミド化した後も有機溶剤に可溶であり、成形加工性、耐熱性、接着性に優れた特定構造のポリイミド樹脂を得られることが示される。
【0026】
【発明の効果】
本発明によれば、耐熱性と成形加工性に優れたポリイミド樹脂を提供することが可能である。有機溶剤に可溶であるため残留溶媒をほぼ完璧になくすことが可能で、また既にイミド化されているため高温過程が不要で水分の発生も無い。このため高信頼性と耐熱性を要求するエレクトロニクス用材料として工業的に極めて利用価値が高い。
Claims (2)
- 一般式(1)で表される多官能性アミノ化合物をアミン成分総量の3〜20重量%、一般式(3)で表されるシロキサン化合物をアミン成分総量の5〜40重量%を含有し、式(2)で表される酸二無水物を酸成分として有機溶媒中で反応させ、脱水閉環させてなる有機溶剤に可溶なポリイミド樹脂。
- 式(2)で表される酸二無水物が4,4’−オキシジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物からなる群より選ばれた少なくとも1種である請求項1記載の有機溶剤に可溶なポリイミド樹脂。
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