JP3684489B2 - 溶接用ワイヤ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、メッキが施されていない溶接用ワイヤに関し、特にガスシールドアーク溶接用のフラックス入りワイヤ及びソリッドワイヤ並びにサブマージアーク溶接用のソリッドワイヤ等として好適の溶接用ワイヤに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、溶接用ワイヤの表面に送給潤滑剤を塗布して、摩擦力を可及的に抑制することによって、溶接用ワイヤの送給性を確保することが実施されている。このような溶接用ワイヤは、スプールに巻き取られているか、又はパック内に整然と収納されており、溶接時にスプール又はパックから引き出されて使用される。
【0003】
図6は、スプールを示す断面図である。図6に示すように、スプールは、スプール支持台51とスプール本体52とから構成されている。スプール支持台51の下部には底板53が配置されており、この底板53に立板54が立設されている。立板54の中央部には、軸55が水平に接続している。一方、スプール本体52は軸受部60と軸受部60の両端に設けられた側板59とから構成され、軸受部60には貫通孔58が設けられている。側板59内側の軸受部60外周には溶接用ワイヤ56が巻かれている。貫通孔58に前述の軸55が嵌入されており、軸55を支軸としてスプール本体52は回転可能となっている。なお、図中のハッチング部57は、スプール本体52に巻かれた溶接用ワイヤを示す。
【0004】
このようなスプールにおいて、溶接用トーチ(図示せず)に送給するために溶接用ワイヤ56を引張ると、ワイヤ56の進行方向にスプール本体52が回転する。これにより、溶接用トーチに溶接用ワイヤ56が供給される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述の従来技術には、以下に示す問題点がある。即ち、軸55の表面状態に問題があったり、又は軸55と貫通孔58との間のクリアランス(隙間)が不十分である場合は、スプール本体52の回転がスムーズではなくなり、アークスタート時にくい込みが発生するという問題点がある。
【0006】
図7は、図6に示すスプールを拡大して示す断面図であり、くい込みが発生する様子を示す図である。図7において、図6と同一物には同一符号を付してその詳細な説明は省略する。図7(a)に示すように、溶接用ワイヤ56はスプール本体52に整然と巻かれている。例えば、溶接ワイヤの一部56e乃至56iはスプール本体52の軸受部60に沿って並んでおり、溶接ワイヤの一部56e乃至56iの外側には、溶接ワイヤの一部56a乃至56dが軸受部60に沿って並んでいる。このため、スプール本体52が回転して、溶接用ワイヤが送給されると、溶接用ワイヤの一部56a乃至56iは、符号のアルファベットが若い順に順次スプール本体52から解かれる。この場合に、内側の溶接ワイヤ同士の間に、外側の溶接ワイヤが位置するように配置されており、例えば、溶接ワイヤの一部56gと56hとの間に溶接ワイヤの一部56aが配置されている。
【0007】
このように構成されたスプールにおいて、溶接用ワイヤを軸受部60に垂直の方向に引張って送給し、溶接を開始する。そうすると、スプール本体52の回転がスムーズな場合は特に問題は生じないものの、この回転がスムーズではない場合に、図7(b)に示すように、溶接ワイヤの一部56aをスプール本体52の半径方向に沈み込ませようとする力が作用して、ワイヤの一部56aはワイヤの一部56g,56hの間にくい込んでしまう。
【0008】
また、図8(a)に示すように、溶接ワイヤの一部56k乃至56pが軸受部60に沿って並んでいると共に、これらのワイヤの一部の外側にワイヤの一部56jが配置されており、このワイヤの一部56jがワイヤの一部56k及び側板59に接している場合がある。この場合は、特にくい込みが生じやすく、ワイヤの一部56jをスプール本体52から解こうとすると、ワイヤの一部56jが沈み込んで、図8(b)に示すように、ワイヤの一部56kと側板59との間にくい込んでしまう。
【0009】
このように、ワイヤの一部56a又は56jが下方のワイヤの一部の間に入り込むと、溶接ワイヤを送給することが困難となり、アークが停止してしまう。特に図8(b)に示すくい込みは、頻繁に発生して問題となっていた。
【0010】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、コンジットチューブ等に対するワイヤ送給性が良好であると共に、スプール等に対するワイヤのくい込みが防止された溶接用ワイヤを提供することを目的とする。
【0011】
本発明に係る溶接用ワイヤは、メッキが施されていない溶接用ワイヤにおいて、そのワイヤ表面には凹凸が形成されていると共に酸化皮膜が形成されており、ワイヤ表面における500μm×600μmの測定対象領域を200×256個の区間に分割したメッシュの各交点におけるワイヤ実表面の高さを3次元粗さ解析装置により求め隣接する3個のメッシュを結ぶ微小平面の面積の総和としてワイヤ実表面積Sa(μm 2 )を求めたときに、前記測定対象領域における見かけ上の面積Sm(300000μm 2 )に対する比として数式((Sa/Sm)−1)によって表されるワイヤ比表面積が0.0001乃至0.05であり、ワイヤ表面を脱脂した後、温度が30℃の0.1モル/リットル塩化ナトリウム溶液中に300秒浸漬した後の自然電位が、飽和甘コウ電極を基準として−600乃至−400mVであることを特徴とする。
【0012】
この場合に、溶接用ワイヤの表面にMoS2が0.002乃至0.60g/m2付着又は塗布されていることが好ましい。
【0013】
また、その表面に電気抵抗が10-4乃至10+4Ω・cmである潤滑剤が0.002乃至0.60g/m2付着又は塗布されていてもよい。
【0014】
【発明の実施の形態】
本願発明者等は、上記目的を達成するために、種々実験研究を繰り返した結果、適切な厚さの酸化皮膜をワイヤ表面に形成することにより、ワイヤの摩擦力が高まり、ワイヤのくい込みが防止される(断続溶接時の送給性が良好となる)ことを見出した。但し、コンジットチューブ内をワイヤが通過する場合に、コンジットチューブとワイヤとの間の摩擦力がワイヤの部位により異なるため、連続溶接時の送給性が劣化する場合があった。これを解決するために、種々検討した結果、ワイヤ表面に適切な粗さの凹凸形状を形成することにより、ワイヤの摩擦力が一定となり、ワイヤがコンジットチューブ内を円滑に通過することを見出した。これにより、連続溶接時の送給性を良好に保ちつつ、くい込みが防止される(断続溶接時の送給性が良好な)溶接用ワイヤが得られる。
【0015】
以下に、本発明について更に詳述する。従来技術では溶接用ワイヤ表面に潤滑剤を塗布し、ワイヤ表面の摩擦力を抑制することによって、送給性を向上させることが試みられてきたが、この手法では、ワイヤの送給不良を払拭することは困難であり、くい込みが顕著となる場合がある。そこで、本願発明者等が鋭意検討した結果、ワイヤ表面の摩擦力を抑制するのではなく、摩擦力を増大させると共に、ワイヤ表面の各部位における摩擦力のバラツキを抑制することによって、くい込みが防止できることを究明した。即ち、図7において溶接ワイヤの一部56aとワイヤの一部56g,56hとの間の摩擦力が、ワイヤの一部56aが半径方向に沈み込もうとする力に比して大きければ、ワイヤのくい込みが防止できると考えるに至った。ワイヤ表面の摩擦力を増大させるためには、ワイヤ表面に凹凸形状を形成すればよい。このような凹凸形状は、例えばワイヤ表面を研磨することによって形成することができる。また、ワイヤを酸性溶液にて洗浄する場合に、洗浄条件を適切なものとしたり、この洗浄後にワイヤに適切な減面率で減面加工を施すことによっても、前述の凹凸形状を形成することができる。
【0016】
但し、溶接用ワイヤの摩擦力を大きくすることによって、ワイヤのくい込みを防止するためには、以下に示す2つの問題点を解消する必要がある。
【0017】
先ず、ワイヤ表面の摩擦力が大きくなると、コンジットチューブとこのチューブ内ワイヤの表面との間の摩擦力が大きくなり、ワイヤ送給性が劣化してしまう。このため、この劣化を防止する必要がある。数多くの試行錯誤の結果、物理的及び化学的にワイヤの表面を制御することを見出した。即ち、ワイヤ表面の凹凸形状を一定の範囲内に制御すること(物理的制御)に加え、ワイヤ表面に酸化鉄を主成分とする極めて薄い酸化皮膜を形成させること(化学的制御)により、アークスタート時及び連続溶接時のいずれについてもワイヤ送給性が良好となることを究明した。
【0018】
ワイヤ表面の凹凸とワイヤ表面に形成された薄膜の酸化鉄皮膜の作用について更に説明する。当初、ワイヤ表面に酸化皮膜を形成することは実施せず、ワイヤ表面の凹凸形状を大きく(粗く)するように制御して、スプール等内でワイヤ同士の表面摩擦力を増大させることを試みた。しかし、この方法では、摩擦力のバラツキが大きくなってしまい、連続溶接時に安定してワイヤを送給することが困難であった。そこで、摩擦力を大きくしつつ、ワイヤ送給抵抗のバラツキを抑制するために、種々実験研究した。その結果、ワイヤ表面に酸化鉄を主成分とする極めて薄い皮膜を形成させることにより、ワイヤの送給抵抗のバラツキを抑制することができることを見出した。
【0019】
酸化皮膜がワイヤの送給抵抗のバラツキを抑制する機構の詳細は不明であるものの、以下のように考えることができる。即ち、送給抵抗を測定した場合に、ワイヤの各部位における送給抵抗値にバラツキが生じる原因は、ワイヤ表面の凸形状に起因すると考えられる。この凸形状が、ワイヤ送給系、特にコンジットチューブ等の内面と接触することによって、送給抵抗値にバラツキが生じるものと考えられる。ワイヤ表面の凸形状部分に酸化皮膜が形成されると、凸形状に替わって酸化皮膜がコンジットチューブ等の内面に接触するため、ワイヤ表面とコンジットチューブ内面等との間の摩擦力が低減されるものと推測される。
【0020】
なお、本発明の溶接用ワイヤに比して、ワイヤ表面の凹凸形状が小さいワイヤの場合は、前述のように表面摩擦力が小さいため、アークスタート時にくい込み現象が頻発する。このような平滑なワイヤに酸化鉄を主成分とする酸化皮膜を形成した場合は、ワイヤ送給抵抗値の平均値は増大するものの、この抵抗値にバラツキは生じないため、アークスタート時のくい込み現象は皆無となった。但し、このようなワイヤはワイヤ製造時の伸線性が不良であった。
【0021】
次の問題点は、溶接用ワイヤの表面に形成された薄膜の酸化皮膜の膜厚評価方法に関するものである。即ち、膜厚評価方法は溶接用ワイヤのワイヤ送給性に直接関係するものではないものの、膜厚を正確に評価できなければ、適切な膜厚の酸化皮膜が形成されたか否かを確認することができないため、所定の膜厚を有する溶接用ワイヤを得ることが困難となってしまう。
【0022】
当初、本願発明者等は、オージェ電子分光法(Auger Electron Spectroscopy)、X線光電子分光法(X-ray Photoelectron Spectroscopy、Electron Spectroscopy for Chemical Analysis;ESCA)及び蛍光X線分析法(Fluorescent X-ray Analysis)により、酸化皮膜の化学成分と溶接用ワイヤの化学成分との相異を検出して、酸化皮膜の膜厚を測定することを試みたが、いずれの方法においても、酸化皮膜の膜厚を広い範囲に亘って定量的に測定することが困難であった。
【0023】
そこで、ワイヤ表面を有機溶媒により洗浄して、付着物を取り除くと共に脱脂した後、得られたワイヤを塩化ナトリウム溶液中に浸漬し、ワイヤの自然電位を測定して、この自然電位から酸化皮膜の厚さを評価する評価方法を見出した。この方法では、例えば、温度が30℃の0.1mol/リットル塩化ナトリウム溶液を用意し、この塩化ナトリウム溶液の液面を大気に解放し、Arガスを吹き込み溶存酸素を除きつつ、溶液中に洗浄後のワイヤを浸漬する。300秒経過した後、飽和甘コウ電極を基準としてワイヤの自然電位を測定する。この場合は、通常、ワイヤを数10mm塩化ナトリウム溶液中に浸漬することができるため、ワイヤの長手方向及び円周方法の平均的な酸化皮膜の厚さを評価することが可能である。
【0024】
本発明は、上述の2つの問題点を解消することによって得られたものであるが、過酷なワイヤ送給系等にて溶接用ワイヤを使用する場合には、安定したワイヤ送給性を更に一層確保するために、溶接用ワイヤの表面にMoS2等の固体潤滑剤を塗布することが好ましい。これにより、ワイヤ送給抵抗の平均値を更に一層低下させることができる。MoS2以外の固体潤滑剤には、炭素系の潤滑剤並びにW、Ta、Ti、Zr、Nb及び/又はMo等の高融点金属元素とO、S、Se及び/又はTe等酸素族元素とからなる化合物潤滑剤等がある。いずれの潤滑剤においても、その固有電気抵抗値はMoS2と同等程度以下であることがより好ましく、具体的には、10-4乃至10+4Ω・cm程度であることがより好ましい。
【0025】
また、より一層安定したワイヤ送給性を得るために、ワイヤ表面の防錆を目的として、従来から使用されている油系の潤滑剤を溶接用ワイヤに塗布してもよい。
【0026】
なお、本発明においては、3次元的に測定したワイヤ表面の実表面積をSaとし、ワイヤ表面の見かけ上の面積をSmとして、ワイヤ比表面積を((Sa/Sm)−1)として表し、この比表面積により、ワイヤの長手方向及び円周方向の表面粗さを同時に評価する。比表面積は以下の方法により算出することができる。
【0027】
図1はワイヤ表面の微小領域における実表面を3次元直交座標系により示す模式図であり、図2はワイヤ表面の比表面積の測定領域を示す模式図である。図1に示すように、ワイヤ表面の実表面2は凹凸を有しており、この実表面2の面積Saは、実表面2をX−Y面に投影した見かけ上の表面3の面積Smよりも大きい。そこで、図2に示すように、ワイヤ1の表面に、ワイヤの長手方向(横方向)の長さが600μmであり、周方向(縦方向)の長さが500μmである測定領域(測定視野)をとり、これを平面に展開した。
【0028】
図3は実表面積を算出するために測定領域を分割するメッシュを示す模式図である。図3に示すように、展開した平面を横方向に256分割、縦方向に200分割して256×200個の有限の区間に分割する。次に、各メッシュの交点における実表面の位置、即ち、実表面の高さを測定する。図1の3次元直交座標系において、X−Y面が測定視野となり、この実表面の高さはZ軸の値に対応する。
【0029】
図4はメッシュの各交点における実表面の高さ位置を3次元直交座標系により示し、実表面を連結された三角形で近似する模式図であり、図5は図4の三角形の面積を算出する方法を示す模式図である。図4に示すように、実表面の高さH11、H12及びH21等の位置を3点毎に連結し、得られる多数の三角形の連続により実表面を近似する。次に、図5に示すように、これらの各三角形の面積S11及びS12等を算出して、全ての三角形の面積を合計することにより、実表面Saを算出する。
【0030】
この測定視野中のメッシュ交点における実表面の高さH11及びH12等は、電子線3次元粗さ解析装置により測定することができる。この3次元粗さ解析装置はSEM(走査型電子顕微鏡)の1種であり、試料面に対して略垂直方向に電子線を照射し、二次電子を電子線照射点から4等配の方向について4本の検出器で検出するものである。そして、得られた結果をマイクロコンピュータで演算処理することによって、3次元(X,Y,Z)の位置情報を得ることができる。
【0031】
また、見かけ上の表面積Smは、測定領域(測定視野)の面積、即ち、Sm=500(μm)×600(μm)=300000(μm2)となる。このようにして見かけ上の表面積Smと、実表面の凹凸を考慮した実表面積Saとから、ワイヤ比表面積((Sa/Sm)−1)を算出することができる。なお、ワイヤ比表面積を算出するためのサンプルは以下のように採取する。
【0032】
先ず、可及的に疵を付けないようにして、溶接用ワイヤの長手方向に沿って約20mmの部分を任意の3カ所から採取し、サンプルとする。次に、得られたサンプルを、金属表面を腐食させない石油エーテル、アセトン、四塩化炭素又はフロン等の有機溶媒中で超音波洗浄して、ワイヤ表面(サンプル)に付着している汚れ及び油脂分等の不純物を除外する。なお、前述の有機溶媒に替えて、溶接用ワイヤの加工工程で使用される潤滑油の種類に応じて、この潤滑油を除外するのに最も適当と思われる油又はその他の脱脂液等の液体を用意し、この液体中で超音波洗浄を実施してもよい。いずれにしても、超音波洗浄はサンプルが互いに擦れ合って疵が発生することがないように、1本づつ実施する。
【0033】
この場合に、ワイヤの製造においては、伸線によってダイスから受ける疵、設備各所及び線同士の接触によって生じる疵並びに擦り疵は可能な限り発生させないように留意されているものとする。従って、実際に実表面積を算出する場合には、可及的に試料の表面に疵がない部分を選び出し、この部分を測定領域とすることが好ましい。また、この比表面積は1サンプルの任意の1断面を120度ずらした3箇所で測定し、3サンプルの合計9箇所の測定値の単純平均とし、測定時の電子線3次元粗さ解析装置の倍率は150倍とする。
【0034】
なお、図5に示すメッシュの分割をより細かくすることにより、実表面の測定値をより真値に近づけることができる。但し、メッシュの分割数を増加させると、コンピュータによる解析に時間がかかる等の不都合が生じる割には、ワイヤ評価精度の向上は極僅かである。このため、500μm×600μmの測定領域を200×256個の区間に分割することによって、比表面積を算出すればよく、得られた比表面積は、ワイヤの評価粗さを評価するのに十分な精度を有する。
【0035】
以下、本発明における溶接用ワイヤの数値限定理由について説明する。
【0036】
比表面積:0.0001乃至0.05
溶接用ワイヤの比表面積が0.0001未満では、ワイヤ表面に酸化皮膜が形成されているため、アークスタート時のくい込みは発生しないものの、その表面が極めて平滑であるため、ワイヤ伸線加工時に、伸線潤滑剤のノリが劣化して、伸線加工が困難となる。このため、ダイスライフが極めて短くなってしまう。一方、ワイヤの比表面積が0.05を超えると、ワイヤ表面に酸化皮膜を形成させた場合であっても、送給抵抗のバラツキを抑制することが困難となり、ワイヤの送給が一定しないためアーク長が変動し、それを作業者が常に調整する必要が生じ、その結果、作業者の疲労が増大する。従って、酸化皮膜形成後に測定される溶接用ワイヤの比表面積は0.0001乃至0.05とする。
【0037】
なお、ワイヤ製造時の加工性(ダイスライフの延長)、ワイヤ送給性及び溶接時のアーク安定性を更に一層向上させるためには、ワイヤの比表面積は0.001乃至0.035とすることが好ましい。
【0038】
自然電位(酸化皮膜の厚さ):−600乃至−400mV
溶接用ワイヤの自然電位が−600mV未満では、酸化皮膜の厚さが薄いため、送給抵抗のばらつきを抑制する効果が不十分である。一方、自然電位が−400mVを超えると、アークスタート時にくい込みが発生しやすくなり、ワイヤの送給性が低下する。また、従来技術によるベーキング処理したワイヤは自然電位が−400mVを超えており、給電チップからワイヤへの通電が不安定となりやすく、更に、ワイヤ送給性が低下すると共に、くい込みが発生しやすくなる。従って、自然電位は−600乃至−400mVとする。
【0039】
上述の自然電位は、ワイヤ表面を有機溶媒により洗浄及び脱脂し、次に温度が30℃の0.1モル/リットル塩化ナトリウム溶液を用意し、この塩化ナトリウム溶液の液面を大気に解放し、Arを吹き込みながら、洗浄後のワイヤを溶液中に浸漬し、300秒経過した後に、飽和甘コウ電極を基準として測定するものとする。
【0040】
なお、従来技術によるブライトフィニッシュの溶接用ワイヤの表面自然電位は、ワイヤの化学組成に依存するものの、約−700mVである。
【0041】
MoS 2 の付着又は塗布量:好ましくは、0.002乃至0.60g/m 2
上述のように本発明における溶接用ワイヤの表面には、酸化皮膜が形成されており、ワイヤ表面の金属が酸化物に変化していること(化学的変化)に加え、この酸化皮膜に起因する微細なワイヤ表面の凹凸形状(物理的変化)が存在する。このため、本発明における溶接用ワイヤでは、通常の溶接用ワイヤに比して、MoS2等の固体潤滑剤がより一層ワイヤ表面に密着しやすい。即ち、MoS2等の固体潤滑剤をワイヤ表面に付着又は塗布させることにより、送給抵抗が更に一層低くなると共に、ワイヤの部位の相異による送給抵抗のバラツキが抑制され、過酷な送給系において断続溶接される場合であっても、送給性を良好に維持することが可能となる。
【0042】
MoS2の付着又は塗布量が0.002g/m2未満では、前述の効果が不十分である。一方、MoS2の付着又は塗布量が0.60g/m2を超えると、長尺のコンジットチューブを折り曲げて使用する場合等、ワイヤ送給系が過酷な場合に、断続溶接等を実施すると、ワイヤ表面からMoS2が脱落しやすくなり、脱落したMoS2がコンジットチューブ内に堆積して、ワイヤ送給性が劣化する。従って、MoS2をワイヤ表面に付着又は塗布する場合は、その付着又は塗布量を0.002乃至0.60g/m2とすることが好ましい。
【0043】
MoS2以外の潤滑剤をワイヤ表面に付着又は塗布する場合は、その電気抵抗がMoS2のものと同程度であることが好ましい。
【0044】
潤滑剤の電気抵抗:好ましくは、10 -4 乃至10 +4 Ω・cm
MoS2と同様に、他の潤滑剤をワイヤ表面に付着又は塗布することにより、送給抵抗を更に一層低くすると共に、ワイヤの部位の相異による送給抵抗のバラツキを抑制することができる。但し、詳細不明であるが、潤滑剤の電気抵抗が10+4Ω・cmを超える場合、又は電気抵抗が10-4Ω・cm未満の場合には、送給性の向上がみられないばかりでなく、送給性が劣化する場合もある。従って、MoS2以外の潤滑剤をワイヤ表面に付着又は塗布する場合は、その電気抵抗が10-4乃至10+4Ω・cmであることが好ましい。また、この場合の付着又は塗布量は、MoS2と同様に0.002乃至0.60g/m2とすることが好ましい。
【0045】
なお、本発明における溶接用ワイヤは、スプール巻ワイヤに加え、他の梱包形態のワイヤ、例えばパック入りワイヤとして使用することができる。この場合においても、ワイヤ送給性は良好なものとなる。パック入りワイヤとは、パック内に溶接用ワイヤが整然と配置されたものであり、パック上部から見た場合に、ワイヤの配列が花模様状となっているものである。このように規則的にワイヤを配置することにより、パック内から容易にワイヤが引き出されるようになっている。但し、従来のパック入りワイヤは、パック内のワイヤ同士の摩擦力が小さいために、輸送中の振動により、ワイヤの配置が乱れて花模様が壊れてしまい、ワイヤの引き出しが困難となり、ワイヤ送給不良となる場合があった。本発明における溶接用ワイヤは上述のようにワイヤ表面の摩擦力が大きいため、輸送時の振動でワイヤの配置が乱れる虞れがない。このため、本発明における溶接用ワイヤはパック入りワイヤとして使用することができる。
【0046】
また、本発明における溶接用ワイヤは、仕上伸線加工後のワイヤ巻替における生産性を向上させる効果を有する。特に溶接用ワイヤをスプールに整列巻替する場合に、通常のワイヤに比して、巻乱れが生じにくく、巻替速度を約10%増速することが可能である。
【0047】
更に、本発明の溶接用ワイヤは、フラックス入りワイヤ(FCW)及びソリッドワイヤ(SAW)等のいずれであってもよい。
【0048】
【実施例】
以下、本発明の実施例について、その特許請求の範囲から外れる比較例と比較して説明する。先ず、ソリッドワイヤの製造工程について説明する。下記表1に示す化学組成の原線(直径5.5mm)を用意し、この原線を、デスケール→1次伸線加工→焼鈍処理→酸洗(酸性溶液による洗浄)→仕上伸線加工→表面制御→巻替を順次施して、製品径が0.8、1.2又は1.6mmのCuメッキ無しソリッドワイヤとした。各Cuメッキ無しソリッドワイヤの巻形態はスプール巻ワイヤ又はパック入りワイヤとした。
【0049】
表面制御時に、各ワイヤの表面を研磨することによって、各ワイヤの表面に凹凸形状を形成した後、電解(陽極酸化処理)又は誘導加熱による短時間大気中高温酸化処理により酸化皮膜を形成した。そして、酸化皮膜形成後、送給潤滑剤を塗布した。各ワイヤにおける潤滑剤の塗布量は、ワイヤ10kg当たり0.1乃至1.0gである。
【0050】
【表1】
【0051】
次に、フラックス入りワイヤの製造工程について説明する。下記表2に示す化学組成の軟鋼フープ(厚さ0.9mm、幅13mm)を用意し、このフープ内に下記表3に示すフラックスをフラックス率が15乃至17重量%となるように充填した後、成形、伸線、表面制御及び巻替して、製品径が1.2、1.4又は1.6mmのCuメッキ無しフラックス入りワイヤを得た。各Cuメッキ無しフラックス入りワイヤの巻形態はスプール巻ワイヤとした。
【0052】
表面制御時に、各ワイヤの表面を研磨することによって凹凸形状を形成した後、誘導加熱による高温酸化処理により酸化皮膜を形成した。酸化皮膜形成後、各ワイヤに送給潤滑剤を、ワイヤ10kg当たり0.05乃至0.5g塗布した。
【0053】
【表2】
【0054】
【表3】
【0055】
なお、上記表3において、メタル成分はFe、Si、Ni、Cr、Mo及びMn並びに金属間化合物であり、スラグ形成剤はTi、Si、Mn、Al、Zr、Ca、Mg及びBa等の酸化物である。
【0056】
また、MoS2を伸線潤滑剤中に添加して伸線加工すると共に、最終製品のワイヤにMoS2分散液を塗布することにより、ソリッドワイヤ(上記表1のA,B及びC)及びフラックス入りワイヤ(上記表2及び表3のF)にMoS2を塗布した。
【0057】
次に、各溶接用ワイヤについて比表面積、自然電位及びMoS2付着量の各種ワイヤ表面性状を測定すると共に、2種類の送給系について断続溶接及び連続溶接における送給性を調査し、更にワイヤの伸線性を調査した。各項目の測定方法及び調査方法を以下に示す。先ず、ワイヤ表面性状の測定方法について説明する。
【0058】
比表面積測定方法
上述のように、3次元的に測定したワイヤ表面の実表面積をSaとし、ワイヤ表面の見かけ上の面積をSmとして、ワイヤ比表面積((Sa/Sm)−1)を算出した。
【0059】
自然電位測定方法
ワイヤ表面を有機溶媒により洗浄及び脱脂し、次に温度が30℃の0.1モル/リットル塩化ナトリウム溶液を用意し、この塩化ナトリウム溶液の液面を大気に解放し、Arを吹き込みながら、洗浄後のワイヤの先端(数10mm)を溶液中に浸漬し、300秒経過した後、飽和甘コウ電極を基準として測定した。
【0060】
MoS 2 付着量定量方法
溶接用ワイヤからワイヤの一部(10乃至50g)を採取する。次に36%−HCl水溶液をこのHCl水溶液と同容量の蒸留水で希釈し、得られた希釈塩酸に前述のワイヤの一部を浸漬し、ワイヤ表面からMoS2を剥離させた後、ワイヤの一部を希釈塩酸から取り出した。MoS2は塩酸に溶けないため、希釈塩酸中に浮遊又は沈殿しており、この希釈塩酸を濾過することにより、MoS2を分離した。得られたMoS2にH2SO4及びHNO3を加えた後、加熱して溶解させた。得られた溶液を冷却した後、原子吸光装置によりMo濃度を測定し、得られた値からMoS2含有量を算出した。
【0061】
次に、ワイヤ送給性の調査方法及び伸線性の評価方法について説明する。
【0062】
送給系
図9は本実施例において使用した送給系aを示す側面図であり、図10は本実施例において使用した送給系bを示す側面図である。図9に示すように、送給系aはコンジットチューブ21が直線であり、通常の送給系を示している。また、図10に示すように、送給系bは過酷な送給系を示し、6mのコンジットチューブ21の中央部に直径300mmのループ21a(3回り)を形成すると共に、先端近傍に曲率0.01(R=100mm)の3つのカーブを形成し、先端にカーブドトーチ23を取り付け、ワイヤスプール24に巻回した各供試ワイヤWを送給ロール25によってコンジットチューブ21内に送り込み、溶接を実施した。
【0063】
なお、パックワイヤの場合は、パック入りワイヤをトラックに積載し、神奈川→大阪(他のトラックに積み替え)→広島(他のトラックに積み替え)→京都(他のトラックに積み替え)→神奈川の順に輸送した後、送給性を調査した。スプール巻ワイヤの場合は、特に輸送することはしなかった。
【0064】
断続溶接条件及び評価方法
母材として、引張強さが490N/mm2級、厚さが12乃至20mmの高張力鋼を用意した。チップと母材との間の距離を25mmとし、シールドガスとしてCO2を25リットル/分の速度で流出させつつ、溶接を実施した。溶接時の電流は270乃至350(DC)A、電圧は28乃至32V、溶接速度は30乃至35cpmである。また、溶接を1分した後に、30秒間溶接を停止し、この溶接及び停止を1サイクルとして、100サイクル断続溶接した。くい込みが発生しなかったものを○(良好)、くい込みの発生が3回未満であったものを△(普通)、くい込みが3回以上発生したものを×(不良)と評価した。
【0065】
連続溶接条件及び評価方法
断続溶接の場合と同一の母材に同一条件で、1時間の連続溶接を2回実施した。連続溶接中にワイヤの送給が途絶えることがなかったものを○(良好)、ワイヤの送給が1回以上停止したものを×(不良)と評価した。
【0066】
伸線性の評価方法
ダイスライフが従来例の平均値(15トン/ダイス)より30%を超えて長いものを◎(優良)、平均値±30%以内のものを○(良好)、平均値の70%未満のものを×(不良)と評価した。
【0067】
上述の評価項目の全てについて普通以上のものを○(良好)と判定し、1つでも×(不良)が存在する場合は、×(不良)と判定した。得られた結果を実施例1〜8については下記表4に示し、比較例1〜32については下記表5に示す。
【0068】
【表4】
【0069】
【表5】
下記表6に実施例及び比較例と比表面積及び自然電位との関係を示す。
【0070】
【表6】
【0071】
上記表4及び表6に示すように、実施例1〜8においては、自然電位が−412、−596、−452、−452、−519、−540、−441及び−426mVと本発明にて規定した範囲内であり、酸化皮膜の厚さが適切であった。また比表面積が、夫々、0.00015、0.0030、0.0054、0.0054、0.041、0.048、0.048及び0.0022と本発明にて規定した範囲内であり、適切な凹凸形状がワイヤ表面に形成された。このため、断続溶接性、連続溶接性及び伸線性のいずれについても、不良なものがなく、良好と判定された。特に、実施例2〜4,8では、比表面積が0.001乃至0.035であったため、伸線性が極めて良好であった。また、実施例2,5,6,7では、MoS2の塗布量が適切であるため、過酷な条件下で断続溶接した場合でも、送給性が良好である。
【0072】
一方、比較例1〜32は、上記表5及び表6に示すように、いずれも不良と判定された。比較例1〜8,18の溶接用ワイヤは、ブライトフィニッシュワイヤ(酸化皮膜が形成されていないワイヤ、又は自然に発生する極めて薄い酸化皮膜を有するワイヤ)である。このため、比較例1〜8,18においては、自然電位が、夫々、−726、−631、−610、−634、−634、−659、−706、−726、−665mVと本発明にて規定した範囲より低くなった。これにより、ワイヤの形状、サイズ及び巻形態に依らず、送給抵抗にバラツキが生じて、くい込みが発生し、断続溶接時の送給性が劣化した。
【0073】
また、比較例1では、ワイヤの比表面積が0.00007と本発明にて規定した範囲より小さいため、ワイヤ表面が過度に平滑となり、断続溶接時の送給性に加え、伸線性が劣化した。比較例18では、比表面積が0.055と本発明にて規定した範囲より大きいため、送給抵抗にバラツキが生じて、断続溶接時に加え、連続溶接時においても送給性が劣化した。
【0074】
なお、比較例2〜8では、ワイヤの比表面積が本発明にて規定した範囲内であるため、伸線性が良好であった。特に比較例4〜8では、比表面積が0.001乃至0.035であったため、伸線性が極めて良好であった。
【0075】
比較例9〜17においては、ベーキングワイヤ(酸化皮膜が厚いと共に、その皮膜が黒色であるワイヤ)である。このため、比較例9〜17においては、自然電位が、夫々、−389、−389、−211、−390、−362、−390、−390、−377、−320mVと本発明にて規定した範囲より高くなった。これにより、ワイヤの形状、サイズ及び巻形態に依らず、送給抵抗にバラツキが生じて、くい込みが発生し、断続溶接時の送給性が劣化した。
【0076】
また、比較例12では、ワイヤの比表面積が0.00005と本発明にて規定した範囲より小さいため、ワイヤ表面が過度に平滑となり、断続溶接時の送給性に加え、伸線性が劣化した。比較例17では、比表面積が0.053と本発明にて規定した範囲より大きいため、送給抵抗にバラツキが生じて、断続溶接時に加え、連続溶接時においても送給性が劣化した。
【0077】
なお、比較例9〜11,13〜16では、ワイヤの比表面積が本発明にて規定した範囲内であるため、伸線性が良好であった。特に比較例9〜10,14〜16では、比表面積が0.001乃至0.035であったため、伸線性が極めて良好であった。
【0078】
比較例19〜26においては、比表面積が、夫々、0.00007、0.00004、0.00005、0.00006、0.00006、0.00008、0.00008、0.00009と本発明にて規定した範囲より小さい。このため、ワイヤ表面が平滑になり過ぎて、伸線性が劣化した。但し、自然電位は本発明にて規定した範囲内であるため、断続溶接及び連続溶接における送給性は良好であった。
【0079】
比較例27〜32においては、比表面積が、夫々、0.051、0.052、0.051、0.056、0.059、0.059と本発明にて規定した範囲より大きい。このため、送給抵抗にワイヤの長手方向に沿ってバラツキが生じて、連続溶接時の送給性が劣化した。但し、自然電位は本発明にて規定した範囲内であるため、断続溶接における送給性は良好であった。
【0080】
以上の結果を上記表6に基づいて説明する。自然電位が−400mVを超える欄及び自然電位が−600mV未満の欄に記載の比較例(比較例1〜18)では、断続溶接時の送給性が不良であった。また、比表面積が0.0001未満の欄に記載の比較例(比較例1,12,19〜26)では、伸線性が不良であった。比表面積が0.05を超える欄に記載の比較例(比較例17,18,27〜32)では、連続溶接時の送給性が不良であった。
【0081】
次に、上述の実施例2に示す溶接用ワイヤに種々の電気抵抗を有するMoS2以外の潤滑剤を塗布し、送給性を調査した結果について説明する。
【0082】
先ず、MoS2に比して電気抵抗が極めて高い(CF)n(弗化黒鉛)、BN(窒化ホウ素)及び(−CF2−CF2−)n(PTFE:ポリテトラフルオロエチレン)を潤滑剤として用意し、各潤滑剤を溶接用ワイヤに0.002乃至0.60g/m2塗布して、上述の実施例と同様に送給性を調査した。その結果、送給性の向上は認められず、送給性が劣化したものも存在した。
【0083】
次に、電気抵抗がMoS2と略等しいTiS2、ZrS2、MoTe2及びTiSe2を潤滑剤として用意し、各潤滑剤を溶接用ワイヤに0.002乃至0.60g/m2塗布して、上述の実施例と同様に送給性を調査した。その結果、MoS2と同様に、過酷な送給系における送給性が改善された。
【0084】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る溶接用ワイヤによれば、比表面積が所定の範囲内となるようにワイヤ表面に凹凸形状が形成されており、また自然電位が所定の値となるようにワイヤ表面に酸化皮膜が形成されているので、ワイヤ送給性が良好であると共に、ワイヤのくい込みを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ワイヤ表面の微小領域における実表面を3次元直交座標系により示す模式図である。
【図2】ワイヤ表面の比表面積の測定領域を示す模式図である。
【図3】実表面積を算出するために測定領域を分割するメッシュを示す模式図である。
【図4】メッシュの各交点における実表面の高さ位置を3次元直交座標系により示し、実表面を連結された三角形で近似する模式図である。
【図5】図4の三角形の面積を算出する方法を示す模式図である。
【図6】スプールを示す断面図である。
【図7】図6に示すスプールを拡大して示す断面図であり、くい込みが発生する様子を示す図である。
【図8】図6に示すスプールを拡大して示す断面図であり、くい込みが発生する様子を示す図である。
【図9】本実施例において使用した通常の送給系を示す側面図である。
【図10】本実施例において使用した過酷な送給系を示す側面図である。
【符号の説明】
1;ワイヤ
2;実表面
3;見かけ上の表面
21;コンジットチューブ
21a;ループ
23;カーブドトーチ
24;ワイヤスプール
25;送給ロール
51;スプール支持台
52;スプール本体
53;底板
54;立板
55;軸
56;溶接用ワイヤ
56a,56b,56c,56d,56e,56f,56g,56h,56i,56j,56k,56l,56m,56n,56p;ワイヤの一部
57;ハッチング部
58;貫通孔
59;側板
60;軸受部
Claims (3)
- メッキが施されていない溶接用ワイヤにおいて、そのワイヤ表面には凹凸が形成されていると共に酸化皮膜が形成されており、ワイヤ表面における500μm×600μmの測定対象領域を200×256個の区間に分割したメッシュの各交点におけるワイヤ実表面の高さを3次元粗さ解析装置により求め隣接する3個のメッシュを結ぶ微小平面の面積の総和としてワイヤ実表面積Sa(μm 2 )を求めたときに、前記測定対象領域における見かけ上の面積Sm(300000μm 2 )に対する比として数式((Sa/Sm)−1)によって表されるワイヤ比表面積が0.0001乃至0.05であり、ワイヤ表面を脱脂した後、温度が30℃の0.1モル/リットル塩化ナトリウム溶液中に300秒浸漬した後の自然電位が、飽和甘コウ電極を基準として−600乃至−400mVであることを特徴とする溶接用ワイヤ。
- その表面にMoS2が0.002乃至0.60g/m2付着又は塗布されていることを特徴とする請求項1に記載の溶接用ワイヤ。
- その表面に電気抵抗が10-4乃至10+4Ω・cmである潤滑剤が0.002乃至0.60g/m2付着又は塗布されていることを特徴とする請求項1に記載の溶接用ワイヤ。
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