JP3684192B2 - 脱気装置 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、火力発電プラントや原子力発電プラント等において、ボイラ給水中に含まれる溶存酸素等を脱気するのに好適する脱気装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
火力発電プラントや原子力発電プラント等において、給水中に溶存酸素が多く含まれていると、プラント構成機器が電気化学的反応などにより腐食される。したがって、給水中の溶存酸素濃度はできるだけ低い値に管理する必要があり、そのため脱気装置が使用されている。この脱気装置としては、給水中の溶存酸素を、加熱用の低酸素濃度の蒸気と直接接触させることにより、溶解度非平衡反応で脱気する方式のものが多用されている。
【0003】
上記脱気方式において、溶解度非平衡反応を効率よく行わせるためには、給水の熱力学的状態を飽和状態にできるだけ近づけることが必要である。しかしながら、この状態はあまり安定な状態ではなく、圧力が下がっても、貯水の温度はすぐには下がらないため、過熱水状態になりやすい。この過熱水状態はさらに不安定な状態で、何らかの外乱によりエネルギーを放出(沸騰・蒸発)して安定な状態に戻ろうとする。
【0004】
発電プラント等では、負荷の低下時に脱気装置部分での圧力低下が生じるが、この圧力低下が急激で著しいと、給水のエネルギー放出が間に合わず、貯水は過熱水の状態となる。この貯水が過熱水のまま給水ポンプに持ち込まれると、給水ポンプでキャビテーションを発生する。こうなると発電プラントの運転に支障が生じるので、このような事態を防止するための手段が種々考えられている。
【0005】
例えば、特開昭55−41349号の発明においては、脱気装置の貯水タンク内に冷却管を内蔵させて貯水の温度を飽和温度以下に下げるようにしている。また、特開昭56−68703号の発明においては、冷却器をプラント系統内の別の位置に設置し、負荷低下時に給水の一部をこの冷却器に分岐させて冷却し、これを貯水タンクに戻すことにより貯水の温度を下げるようにしている。またさらに、特開昭61−49906号の発明においては、負荷低下時に復水器からの復水を貯水タンク内に導入し、貯水タンク水の温度を下げるようにしている。
【0006】
最近の大容量の発電プラントにおいては、ボイラ給水中の溶存酸素濃度の許容値は、通常、7ppb以下に設定されているが、このような厳しい溶存酸素濃度の管理基準を達成するため、発電プラントの脱気装置に関して、多くの研究開発が行われてきた。従来の脱気装置において、給水中から溶存酸素を脱気する基本原理は、濃度非平衡によって誘起される物質拡散である。この場合、非平衡度が大きいほど物質移動速度が速く、また拡散による移動距離が短いほど物質移動速度は速くなる。そこで従来の脱気装置では、スプレーにより給水を微粒化するか、トレイなどを用いて給水を流下・分断・攪拌することにより給水の表面積を拡大する方法や、加熱蒸気を貯水タンク水中に吹き込み、溶存酸素の給水中での拡散および脱気を促進する方法が採用されている。
【0007】
一例として、従来のスプレー・バブリング型脱気装置の概略構成を図2に示す。この脱気装置では、貯水タンク1のシェル内に、水面上に開口するように給水スプレー2を設け、その周囲にじゃま板3を設けると共に、水面下に位置するように蒸気分配管4と、そこから分岐する多数の吹込み管5を設けてある。
【0008】
給水Wは給水配管6を通って貯水タンク1のシェル内に入り、給水スプレー2から噴射される。噴射された給水は、じゃま板3に接触して攪拌・微粒化され、多数の水滴となって貯水タンク水面に落下し、貯水タンク水となる。この貯水タンク水は、最終的には給水出口7を通して貯水タンク外へ導かれ、再び給水ポンプ(図示せず)で加圧されて、ボイラや熱交換器等(図示せず)に導かれる。
【0009】
一方、加熱蒸気管8に導入された蒸気Sは、吹込み管5から貯水タンク水中に噴射され、気泡となって給水中を上昇しながら給水と直接接触し、給水中の溶存酸素を脱気していく。貯水表面に達した加熱蒸気は、貯水タンクの蒸気部分を流過するが、給水スプレー2の近傍を通過する際、そこから噴射された給水と接触し、大部分が給水中に凝縮して給水を加熱すると共に、溶存酸素を一部脱気する。その結果残ったごく一部の蒸気は、脱気された酸素と共に、加熱蒸気ベント口9から大気中または復水器(図示せず)へ排出される。なお、図2中の実線矢印は給水の流れ方向を示し、破線矢印は加熱蒸気の流れ方向を示している。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した従来の脱気装置には、次に示すような不都合な点があった。すなわち、給水を脱気せずに貯水部に導入すると溶存酸素濃度の著しい上昇を招き、プラント機器の腐食が促進される。冷却管や冷却器を介して給水を冷却すると流動抵抗が増え、しかも余分な機器や材料が必要となる。温度の低い給水を導入すると、貯水タンク構成部材に局所的な温度分布が生じて熱応力が発生し、疲労破壊の原因となる。
【0011】
また、図2に示す脱気装置では、加熱のための水蒸気が不十分な場合、水蒸気が貯水に凝縮して体積を減じてしまい、脱気が不完全になり易く、また貯水タンク内の貯水が飽和温度にあるため、発電プラントの負荷低下時の圧力低下で、フラッシユ蒸発による貯水タンクの水位変動や、給水ポンプにおけるキャビテーションなどが発生しやすく運転安定性に欠けるという欠点がある。
【0012】
そこで本発明は、脱気により給水の溶存酸素濃度を効率よく低減させプラント機器の腐食を防止し、貯水タンク内でのフラッシュ蒸発及び供給ポンプにおけるキャビテーションの発生を抑制し、貯水タンク構成部材において局所的な温度分布によって生じる熱応力を防止することができ、脱気性能に優れ、負荷低下時にも運転安定性に優れ、プラント機器の安全性が高い脱気装置を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明の脱気装置は、給水を加圧して送給する給水ポンプと、給水を加熱する給水加熱器とを有する系統中に設置され、給水中の溶存酸素等を脱気する脱気装置において、給水加熱器の下流側に設けられ、その下流側の給水圧力を低下させる調節弁と、調節弁の下流側に設けられ、溶存酸素を脱気する脱気セクションと、脱気セクションの下流側に設けられ、その下流側の給水圧力を上昇させるポンプと、ポンプの下流側に設けられた貯水タンクと、を有することを特徴とする。
【0014】
【作用】
上記の発明において、給水の圧力を低下させる調節弁は、その下流側における給水の温度と圧力の関係から決まる熱力学的状態を飽和状態または過熱水の状態とする。溶存酸素濃度の計測値は、給水圧力の低下を調整するための観測値とされ、溶存酸素濃度に応じて減圧の程度を変化させるように、制御装置では調節弁に制御信号を出力する。脱気セクションにおいて給水中の溶存酸素を脱気させた蒸気は下流側の給水加熱器に導かれてここで凝縮し、給水を加熱するのに用いられる。給水の貯水タンクヘの流入位置を水面下とし、水蒸気の貯水タンクへの流入位置を水面上とすることは、給水と水蒸気との接触界面を最小限とする。この最小限の接触界面で水蒸気が給水側に凝縮して、水面付近のみを飽和状態とする。貯水タンクの水面下に存在する大部分の給水は既に溶存酸素を脱気されており、しかも、圧縮水の状態を保ったまま給水出口から給水ポンプへと排出される。
【0015】
【実施例】
以下、本発明の実施例を図1を参照して説明する。なお、図2に示した従来例と共通の部分には同一の符号を付してある。
【0016】
図1は、本発明の脱気装置における系統構成の一例を示している。
【0017】
同図において、単一または複数の給水加熱器12によって給水の温度が飽和温度の近くまで上昇した系統中の位置に、給水圧力の減圧調節のため調節弁30を設置する。この調節弁30は、復水器31出口の給水系統中に設置された溶存酸素濃度計32からの信号を観測値として、自動的または手動に開度を制御される。なお、溶存酸素濃度計32の設置位置は、調節弁30の上流側であればどこでもよいが、給水温度の低い位置であれば冷却の必要がないので、この例では復水器31の出口としてある。調節弁30の下流側には、溶存酸素を脱気する脱気セクション33が設けられている。この脱気セクション33には、脱気のための蒸気を受け入れるためのノズル(図示せず)と、脱気後の蒸気を排出するためのノズル(図示せず)が設けられている。脱気セクション33には、残った水蒸気を給水加熱器12にて凝縮させるためのライン34が連結されている。また、脱気セクション33を出た給水は、ポンプ35により再び加圧され、貯水タンク1に送給される。
【0018】
貯水タンク1は、脱気セクション33からの給水を貯水タンク内の水面よりも下の位置で受入れるように設定されたノズル36と、熱交換器あるいは蒸気タービン(図示せず)からの蒸気を貯水タンク内の水面よりも上の位置で受入れるように設定されたノズル37を有している。給水加熱器12と貯水タンク1の間には、サブクール状態の給水を脱気セクション33をバイパスさせて貯水タンク1に流入させるライン38と、貯水タンク1内の余剰な蒸気を給水加熱器12に送るライン39が設けられている。40は蒸気出口を示す。また、貯水タンク1内の貯水は給水出口7から排出され、給水ポンプ(図示せず)によって再び加圧され、ボイラあるいは熱交換器(図示せず)に供給される。
【0019】
なお、脱気セクション33としては、スプレー、トレイ、気泡塔、充填層など、給水と水蒸気を混合して表面積を拡大できる構造物と、給水から水蒸気を分離する容積型セパレータ、サイクロンセパレータなどを組み合わせて使用することができる。
【0020】
上述のように構成した図1の脱気装置において、調節弁30は、給水の圧力を低下させ、給水の状態を飽和状態または過熱水の状態とする作用を有する。調節弁30により給水をこのような状態にした上で、給水を脱気セクション33に送って蒸気と混合すると、蒸気は給水に凝縮して体積を減ずることなく、給水と混合・接触し、最大の気液界面面積を保って脱気を効果的に行うことができる。
【0021】
調節弁30における給水圧力低下の程度は、給水中の溶存酸素の濃度に応じて調節される。すなわち、溶存酸素濃度が規定値を大幅に越える状態のときには、減圧の程度を大きくして給水を過熱水の状態とし、減圧部分における自己蒸発を促し、発生する気泡への溶存酸素の脱気をも併用して脱気セクション33における脱気効果を向上させる。反対に、溶存酸素濃度が脱気セクション33の上流側で既に規定値以下となっているときには、給水を全く減圧せずにそのまま通過させる。通常運転中で、給水中の溶存酸素濃度が規定値を少し越える程度の場合には、減圧の程度を中間状態で制御する。このように、調節弁30は給水の減圧程度を調節することによって脱気性能を変化させる作用を有する。
【0022】
脱気セクション33において給水中の溶存酸素を脱気させた蒸気は、ライン34を経て給水加熱器12に導かれ、ここで凝縮して、給水を加熱するのに用いられる。一方、脱気セクションで溶存酸素を脱気された給水は、ポンプ35で再度加圧され、圧縮水の状態で貯水タンク1内に流入する。この場合、給水はノズル36を通して貯水の水面下に流入し、表面を乱さないように、かつ圧縮水の状態を保ったまま給水出口7へと出ていく。一方、貯水タンク1の蒸気空間側にはノズル37を通して水蒸気が導入され、貯水の表面に凝縮して、水面付近のみを飽和状態とし、圧力を維持する。貯水タンクの蒸気側に導入された水蒸気の残りは、蒸気出口40からライン39を通り、給水加熱器12へ導かれる。
【0023】
このように、本発明においては、給水の溶存酸素濃度に応じて脱気性能を変化させることができるので、必要以上に給水の圧力を低下させる無駄がない。また、熱容量の大きい貯水タンクの水が圧縮水の状態を保っているので、発電プラントの負荷が低下して給水圧力が低下しても、貯水が減圧沸騰することがない。さらに、脱気セクションに送られた水蒸気は、脱気セクションでは凝縮せず、下流側の給水加熱器に送られて熱回収されるので、エネルギーの無駄がない。
【0024】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明では、溶存酸素濃度が高い場合だけ給水圧力を減圧して減圧沸騰による脱気効果を相乗させることにより、高い脱気性能を得ることができる。一方、溶存酸素濃度が既に十分低いときには給水圧力を減圧しないので動力の無駄が低減する。また、減圧した給水を再度加圧して貯水タンクに導入し、貯水タンクにおける圧縮水の状態を保つことができるので、発電プラントの負荷低下に伴なう給水圧力低下時の貯水の減圧沸騰がなく、しかも給水ポンプにキャビテーションが生じにくく、安定な運転が確保できる。また、低温の給水や冷却水を急激に導入することがないので、貯水タンクの構成部材に局所的な温度分布による熱応力を発生させることはなく、貯水タンクの構造健全性が維持でき、安全性が向上する。
【0025】
したがって、本発明の脱気装置では、脱気性能に優れ、負荷低下時にも運転安定性に優れ、プラント機器の安全性が高いという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施例を示す系統構成図。
【図2】 従来のスプレー・バブリング型脱気装置の概略構成を示す説明図。
【符号の説明】
1…貯水タンク
2…給水スプレー
3…じゃま板
4…蒸気分配管
5…吹込み管
6…給水配管
7…給水出口
8…加熱蒸気
9…加熱蒸気ベント口
12…給水加熱器
30…調節弁
31…復水器
32…溶存酸素濃度計
33…脱気セクション
34、38、39…ライン
35…ポンプ
36、37…ノズル
40…蒸気出口
Claims (2)
- 給水を加圧して送給する給水ポンプと、前記給水を加熱する給水加熱器とを有する系統中に設置され、前記給水中の溶存酸素等を脱気する脱気装置において、前記給水加熱器の下流側に設けられ、その下流側の給水圧力を低下させる調節弁と、前記調節弁の下流側に設けられ、溶存酸素を脱気する脱気セクションと、前記脱気セクションの下流側に設けられ、その下流側の給水圧力を上昇させるポンプと、前記ポンプの下流側に設けられた貯水タンクと、を有することを特徴とする脱気装置。
- 前記ポンプからの給水を前記貯水タンクの水面よりも下の位置に流入させ、かつ、加熱蒸気を前記貯水タンクの水面よりも上の位置に流入させるように構成したことを特徴とする請求項1記載の脱気装置。
Priority Applications (1)
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JP2001363740A JP3684192B2 (ja) | 2001-11-29 | 2001-11-29 | 脱気装置 |
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JP5645538B2 (ja) * | 2010-08-10 | 2014-12-24 | 三菱重工業株式会社 | 脱気器 |
-
2001
- 2001-11-29 JP JP2001363740A patent/JP3684192B2/ja not_active Expired - Lifetime
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