JP3680790B2 - 触媒コンバータ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関の排気浄化用の触媒コンバータに関し、特に溶接スパッタ等の異物による触媒担体の損傷を防止する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
内燃機関の排気浄化用の触媒コンバータは、一般的に、触媒を担持させた触媒担体の外周に担体保持マットを巻付け、この担体保持マットを介して排気通路の一部を構成するケース内に収納している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来の触媒コンバータにあっては、製造段階で排気マニホールドをパイプ溶接などにより形成した場合の溶接スパッタ、鋳物の場合の残留鋳砂、加工の切り粉、更には内燃機関の運転過程において発生する金属酸化物等の異物が、触媒担体に達すると、触媒担体を通過できずに上流側端面にとどまり、この溶接スパッタ等の異物が動き回ることで、触媒担体の端面形状が変形してしまうという問題点があることがわかった。
【0004】
かかる問題点は、特にセラミックモノリス触媒担体において、近年、排気浄化性能向上のため、ハニカム構造の薄壁・高セル密度化がなされ、触媒担体の強度が低下したことに起因して、顕著となったものである。
そこで、本発明者らは、溶接スパッタ等の異物が触媒担体の端面上で動き回らないように、担体保持マットにてトラップすることを考えた。ここで、特開2000−240440号公報には、担体保持マットの巻付け方向の両端部の合わせ部での排気の抜け(バイパス)を防止するため、担体保持マットの巻付け前の自然長の平板状態で、巻付け方向の両端部付近に大きな溝を形成し、また巻付け方向の中央部付近に大きな切り込みを形成しておき、巻付ける際にマットを延ばして、前記溝の部分の鉤形部を嵌め合わせると同時に、復元力で密着させるようにしたものが開示されている。これにより、巻付け状態では、担体保持マットの上流側端面に大きな矩形の溝と、大きなV字状の溝とが形成されている。
【0005】
しかしながら、担体保持マットの上流側端面に凹溝を設けるだけであると、触媒担体の上流側端面に溶接スパッタ等の異物が乗っても、すぐさま担体保持マットの上流側端面に移動することはなく、そのまま触媒担体の端面上にとどまって、その上を転がることで、触媒担体の損傷を生じてしまう。
本発明は、このような実状に鑑み、溶接スパッタ等の異物が触媒担体の端面上にとどまってその上を動き回らないように、この異物を確実にトラップすることのできる触媒コンバータを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明では、内燃機関の排気通路の一部を構成するケース内に触媒担体をその外周に巻付けた担体保持マットを介して収納してなる排気浄化用の触媒コンバータにおいて、前記触媒担体の排気流れ方向上流側の端面が、鉛直方向に対し傾斜するように搭載し、前記担体保持マットの排気流れ方向上流側の端面に、前記触媒担体の排気流れ方向上流側の端面の傾斜方向で低くなる側に位置させて、異物トラップ用の凹溝を設けたことを特徴とする。
【0007】
この場合に、請求項2の発明では、前記触媒担体をケースと共に鉛直方向に対し斜めに配置したことを特徴とする。また、請求項3の発明では、前記触媒担体の排気流れ方向上流側の端面を排気流れ方向に対し傾斜させて形成したことを特徴とする。
【0008】
請求項4の発明では、前記凹溝の少なくとも一部を排気流れ方向と交差する方向に延在させたことを特徴とする。この場合に、請求項5の発明では、前記凹溝は、その延在方向の途中に屈曲部を有していることを特徴とする。
【0009】
更に、請求項6の発明では、前記担体保持マットの排気流れ方向上流側の端面を周方向に傾斜させ、前記凹溝は、前記担体保持マットの排気流れ方向上流側の端面で、鉛直方向に対し最下点となる部分の近傍に設けたことを特徴とする。
更にまた、請求項7の発明では、前記触媒担体の排気流れ方向上流側の端面より、前記担体保持マットの排気流れ方向上流側の端面を、排気流れ方向下流側に位置させたことを特徴とする。
【0010】
更にまた、請求項8の発明では、前記凹溝は、前記担体保持マットの巻付け方向の両端部の凹凸による嵌め合わせ部に形成されることを特徴とする。
更にまた、請求項9の発明では、前記凹溝は、少なくとも最深部が先すぼまりに形成されることを特徴とする。
【0011】
【発明の効果】
請求項1の発明によれば、溶接スパッタ等の異物が、触媒コンバータの触媒担体上に達すると、触媒担体の端面が鉛直方向に対し垂直な面ではないため、この面の傾斜に沿って、その周囲の担体保持マットの端面の上に落ち、ここに設けた凹溝に入ることで、速やかにトラップされる。従って、溶接スパッタ等の異物が触媒担体の端面上にとどまって動き回ることによる触媒担体の損傷を確実に防止できる。
また、異物トラップ用の凹溝を触媒担体の上流側端面の傾斜方向で低くなる側に設けてあるので、触媒担体の端面の傾斜に沿って担体保持マット上に移動した異物がすぐさま凹溝に入ってトラップされる。
【0012】
請求項2の発明によれば、触媒コンバータを斜めに傾けて配置するだけでよく、簡単に実施できる。
請求項3の発明によれば、車両レイアウト上、触媒コンバータを傾けて搭載できない場合に、触媒担体の上流側端面を傾斜させるという触媒担体の形状変更のみで対応できる。
【0013】
請求項4の発明によれば、担体保持マットの上流側端面に、異物トラップ用の凹溝を開口させ、この凹溝の少なくとも一部を排気流れ方向と交差する方向に延在させているので、溶接スパッタ等の異物が一旦凹溝の中に入れば、排気流れ方向の振動入力や排気脈動の影響を受けがたく、また物理的な障害となり、容易には飛び出すことができないので、確実にトラップできる。従って、溶接スパッタ等の異物が触媒担体の端面上で動き回ることによる触媒担体の損傷を確実に防止できる。
【0014】
請求項5の発明によれば、凹溝は、その延在方向の途中に屈曲部を有しているので、これが一旦凹溝内に入った溶接スパッタ等の異物の飛び出しに対し確実に物理的な障害となる。
請求項6の発明によれば、担体保持マットの上流側端面を周方向に傾斜させ、最も低い部分に凹溝を位置させているので、担体保持マットの端面上に落ちた溶接スパッタ等の異物がこの傾斜に沿って速やかに凹溝に移動することから、凹溝に入りやすくなり、確実にトラップされる。
【0015】
請求項7の発明によれば、触媒担体の上流側端面より、担体保持マットの上流側端面を、下流側に位置させることで、触媒担体の端面に対し、担体保持マットの端面が環状の溝をなすので、溶接スパッタ等の異物が担体保持マットの端面上に移動すれば、この部分が環状の溝となっているので、再び触媒担体の端面上に戻ることはなく、この環状の溝の中を動き回るうちに凹溝にトラップされる。
【0016】
請求項8の発明によれば、凹溝を担体保持マットの巻付け方向の両端部の凹凸による嵌め合わせ部に形成することで、凹溝の形成による担体保持マットの強度低下を防止することができる。
請求項9の発明によれば、凹溝の少なくとも最深部が先すぼまりに形成されており、奥に入るほど狭くなって、動きを封じ込めることができ、飛び出しを更に確実に防止できると共に、マットの損傷をも防止できる。
【0017】
尚、凹溝は、担体保持マットに直接形成することで、凹溝の大きさ、形状等を所望のものとすることが容易となるが、次のように形成してもよい。
担体保持マットに形成しようとする凹溝の形成予定位置と対面する位置の、ケースの内面に、予め凹部を形成し、この部分の担体保持マットの面圧を低下させ、エンジンの運転により、この部分をマット材を飛散させることで、風蝕によって担体保持マットに凹溝を形成する。従って、担体保持マットに凹溝を直接形成する場合は、凹溝付きの担体保持マットの組み付け時に、凹溝の位置が所望の位置となるように、組み付け時の位置管理が必要となるのに対し、位置管理が容易なケースに、位置決めして凹部を形成しておくことで、その位置に凹溝を形成することができ、凹溝の位置管理が容易となる。
【0018】
又は、担体保持マットに形成しようとする凹溝の形成予定位置と対面する位置の、触媒担体の外周壁に、予め凹部を形成し、この部分の担体保持マットの面圧を低下させ、エンジンの運転により、この部分のマット材を飛散させることで、風蝕によって担体保持マットに凹溝を形成する。従って、担体保持マットに凹溝を直接形成する場合は、凹溝付きの担体保持マットの組み付け時に、凹溝の位置が所望の位置となるように、組み付け時の位置管理が必要となるのに対し、位置管理が比較的容易な触媒担体に、位置決めして凹部を形成しておくことで、その位置に凹溝を形成することができ、凹溝の位置管理が比較的容易となる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
先ず本発明の第1実施形態について図1〜図4により説明する。
図1はエンジン排気系に装着された触媒コンバータの断面図であり、図2は触媒コンバータのケースを半割にして図1の左側から見た図である。
【0020】
エンジンのシリンダヘッド1に接続固定される排気マニホールド2の集合部の直下に鉛直方向に対して斜め置きに触媒コンバータ3が設けられ、触媒コンバータ3の出口側には排気管(フロントチューブ)4が接続固定される。
尚、図1の例はパイプ溶接により形成された排気マニホールド2と一体に触媒コンバータ3のケースを溶接により固着してあるが、排気マニホールド2と別体に触媒コンバータ3のケースを形成して、互いのフランジ部をボルト固定するようにしてもよい。
【0021】
触媒コンバータ3のケース(コンテナ)は、排気通路の一部を構成するもので、円筒状の主ケース10と、その入口側及び出口側にそれぞれ溶接により連結される略円錐状のディフューザ11,12とからなる。
そして、主ケース10内に、触媒担体13を、その外周に巻付けた担体保持マット14を介して、収納してある。15は係止用ワッシャ部材である。
【0022】
触媒担体13は、円柱状の外形を有するハニカム構造のセラミックモノリス触媒担体であり、特にハニカム状隔壁を薄壁、例えば壁厚0.1mm以下、好ましくは2ミル(=0.064mm)にして、高セル密度化を図ったものである。これは、従来一般的に用いられている壁厚8ミル(=0.220mm)あるいは4ミル(=0.110mm)の担体に比べて格段に薄壁である。担体表面には触媒がコーティングされている。
【0023】
担体保持マット14は、例えばセラミックファイバー、アルミナファイバーあるいはバーミュキュライトなどからなる非膨張性のインタラムマットであり、触媒担体13の外周に巻付けられる。また、図3に担体保持マット14の展開図を示すように、触媒担体13に巻回する際の外周長に対応する長さLと、触媒担体13の排気流れ方向長さに対応する幅Wとを有している。
【0024】
但し、触媒担体13の外周に担体保持マット14を巻付けた状態で、触媒担体13の上流側端面と担体保持マット14の上流側端面とが同一面になるのではなく、担体保持マット14の方が低くなり、触媒担体13の回りに環状の溝が形成されるようにする。
また、担体保持マット14の触媒担体13の外周長に対応する方向の両端部のうち、一方の端部には、排気流れ方向幅中央部に矩形の凸部16aが形成され、他方の端部には、前記凸部16aに対応する位置に矩形の凹部16bが形成されている。
【0025】
従って、触媒担体13の外周に担体保持マット14を巻付けた状態で、両端部の凸部16aと凹部16bとを互いに嵌め合わせることで、両端部の合わせ部から排気が抜けるのを防止している。
ここにおいて、担体保持マット14の排気流れ方向上流側の端面には、異物トラップ用の凹溝17を形成してある。
【0026】
尚、凹溝17は、図3の展開図に示すように、両端部の嵌め合わせ用の凹凸と別に形成する他、図3の点線部分K(矩形凹部16bの上流側部分の一部)を下流側部分に比較して切り欠いておいて、図4に示すように、両端部の嵌め合わせ用の凹凸の部分の排気流れ方向上流側に形成するようにしてもよい。
また、図3の展開図において、点線で示すように、担体保持マット14の排気流れ方向下流側の端面にも、凹溝17’を設けておけば、巻付けに際し上下逆にしてもよく、巻付け時の作業性が向上する。
【0027】
また、この凹溝17は、鉛直方向に対して斜め置きの触媒コンバータ3において、触媒担体13の上流側の端面の傾斜方向で低くなる側、すなわち、担体保持マット14の上流側の端面上で、鉛直方向に対し最下点となる位置の近傍に配置する。
以上の構成によれば、製造段階で排気マニホールド2をパイプ溶接により形成した場合などの溶接スパッタ、鋳物の場合の残留鋳砂、加工の切り粉、更には内燃機関の運転過程において発生する金属酸化物等の異物が、振動や熱疲労で落ちて、触媒コンバータ3の触媒担体13上に達すると、触媒担体13の端面が鉛直方向に対して傾斜しているため、この傾斜に沿って、その周囲の担体保持マット14の上流側の端面の上に落ちる。従って、溶接スパッタ等の異物が触媒担体13の端面上にとどまることがなく、この上を動き回って触媒担体13が損傷するのを防止できる。
【0028】
担体保持マット14の端面上に落ちた溶接スパッタ等の異物は、落ちる方向に凹溝17があるので、この凹溝17の中に入り、また、たとえ凹溝17から離れた部分に落ちたとしても、この部分は環状の溝をなすと共に傾斜しているので、この環状の溝の傾斜に沿って凹溝17に至り、その中に入る。従って、溶接スパッタ等の異物を凹溝17の中に確実にトラップすることができる。
【0029】
尚、この凹溝17を先すぼまり、すなわちV字状に形成しておけば、溶接スパッタ等の異物がより入りやすくなると共に、奥に入るほど狭くなって動きを規制することができるので、より確実にトラップでき、また凹溝17内で動き回ることによるマットの損傷をも防止できる。
次に本発明の第2実施形態について図5及び図6により説明する。尚、第2実施形態以降において第1実施形態と対応する要素には同一符号を付して説明を簡略化する。
【0030】
この第2実施形態は、触媒コンバータ3が縦置きに配置される場合であり、この場合に、触媒担体13の排気流れ方向上流側の端面を鉛直方向に対して傾斜するよう、つまり水平とならないように、排気流れ方向に対し傾斜させて形成してある。
そして、担体保持マット13の凹溝17は、触媒担体13の上流側の端面の傾斜方向で低くなる側に配置してある。
【0031】
このようにしても、溶接スパッタ等の異物が、振動や熱疲労で落ちて、触媒コンバータ3の触媒担体13上に達すると、触媒担体13の端面が傾斜しているため、この傾斜に沿って、その周囲の担体保持マット14の上流側の端面の上に落ち、凹溝17内に入って、トラップされる。
次に本発明の第3実施形態について図7及び図8により説明する。
【0032】
この第3実施形態は、第2実施形態の構成に加え、担体保持マット14の排気流れ方向上流側の端面を周方向に傾斜させ、その最も低い部分であり、また触媒担体13の端面の傾斜方向で低くなる側の部分に、凹溝17を形成してある。この場合の担体保持マット14の展開図を図8に示す。
このようにすれば、溶接スパッタ等の異物が、振動や熱疲労で落ちて、触媒コンバータ3の触媒担体13上に達すると、触媒担体13の端面が傾斜しているため、この傾斜に沿って、その周囲の担体保持マット14の上流側の端面の上に落ち、このとき、たとえ凹溝17から離れた部分に落ちたとしても、この部分は環状の溝をなすと共に傾斜しているので、この環状の溝の傾斜に沿って凹溝17に至り、その中に入る。従って、溶接スパッタ等の異物を凹溝17の中により確実にトラップすることができる。
【0033】
次に本発明の第4実施形態について図9及び図10により説明する。
この第4実施形態では、図1に示した鉛直方向に対して斜め置きの触媒コンバータにおいて、担体保持マット14の排気流れ方向上流側の端面に、異物トラップ用の凹溝17を形成してある。
【0034】
そして、この凹溝17は、少なくとも一部を排気流れ方向と交差する方向に延在させてあり、具体的には、延在方向の途中に屈曲部を有して、途中の部分が周方向に延びている。
このようにすれば、溶接スパッタ等の異物が凹溝17の中に入ると、凹溝17が屈曲しているので、これが物理的な障害となり、中に入った異物が飛び出すのを確実に防止することができる。
【0035】
この場合の担体保持マット14の展開図を図10に示す。また、両端部の嵌め合わせ用の凹凸の形状を一部階段状に変更して、図11に示すよう排気上流側端面に階段状に凹溝17を形成するようにしてもよい。
次に本発明の第5実施形態について図12により説明する。
この第5実施形態は、第4実施形態に対し、凹溝17の形状のみを変更したもので、凹溝17は、少なくとも一部を排気流れ方向と交差する方向に延在させてあり、具体的には、開口部から最初は斜め一方向に延び、途中で屈曲して斜め他方向(反対方向)に延びている。このような形状でも、第4実施形態と同様の効果が得られる。
【0036】
次に本発明の第6実施形態について図13により説明する。
この第6実施形態は、第4実施形態に対し、凹溝17の形状のみを変更したもので、凹溝17は、少なくとも一部を排気流れ方向と交差する方向に延在させてあり、具体的には、開口部から最初は真っ直ぐに延びた後、屈曲して、斜めに延び、最後は真っ直ぐに延びて最深部が先すぼまりのV字状をなしている。
【0037】
このような形状では、第4実施形態と同様の効果が得られる他、最深部が先すぼまりのV字状をなしているので、溶接スパッタ等の異物を最深部にて動きを封じ込めて、より確実にトラップできる。
【0038】
以上の実施形態では、担体保持マット14に異物トラップ用の凹溝17を直接形成しており、このようにアッセンブリ前の担体保持マット14に予め凹溝17を形成する場合は、その凹溝17の大きさ、形状等を所望のものとすることは容易であるが、触媒担体13に巻付けて主ケース10内に配置したアッセンブリ状態において、凹溝17の位置を最適な位置にすることが難しい場合がある。
【0039】
すなわち、例えば、触媒コンバータの搭載状態で、触媒担体13の上流側の端面が傾斜しているときに、異物を効率よくトラップできる傾斜の最下点の位置に凹溝17を設置したい場合などに、これが難しいことがある。
また、組み付け時に、担体保持マット14の凹溝17の位置や方向を確認、修正しながら組み付ける必要があり、組み付けにかかる時間が増大し、製造コストが上がることも考えられる。
【0040】
また、凹溝17を所望の位置に配置することが困難であることから、担体保持マット14に予め複数の凹溝17を設けることも考えられるが、このようにすると、製造コストが上がる他、担体保持マット14の保持面積減少のため保持力が低下してしまう。
このような問題点を解決するのが、次に述べる本発明の第7実施形態、第8実施形態である。
【0041】
本発明の第7実施形態について図14〜図18により説明する。
図14及び図16(a)に示すように、触媒担体13に担体保持マット14を巻付けて主ケース(以下単にケースという)10内に収納する触媒コンバータにおいて、ケース10の内面であって、担体保持マット14に形成しようとする異物トラップ用の凹溝の形成予定位置と対面する位置に、予め凹部21を形成する。すなわち、ケース10の内面に、担体保持マット14と重なる部分が、担体保持マット14に設けたい異物トラップ用の凹溝の形状となるような凹部21を設ける。ここで、凹部21の周囲にはテーパを付け、ケース10に担体保持マット14を巻付けた触媒担体13を圧入する際に、圧入を容易としてある。
【0042】
この状態でエンジンを運転すると、凹部21に面している担体保持マット14の部分は面圧が低下しているので、この部分のマット材が飛散し、風蝕により、図15及び図16(b)に示すように、担体保持マット14に異物トラップ用の凹溝17が形成される。
従って、担体保持マット14に凹溝17を直接形成する場合は、凹溝17付きの担体保持マット14を組み付けるときに、凹溝17の位置が所望の位置となるように、組み付け時の位置管理が必要となるのに対し、位置管理が容易なケース10に、位置決めして凹部21を形成しておくことで、その位置に凹溝17を形成することができ、凹溝17の位置管理が容易となる。
【0043】
すなわち、図17に示すように、触媒コンバータの搭載状態で、触媒担体13の上流側の端面が傾斜している場合、その傾斜の鉛直方向最下部に位置するところのケース10内面に凹部21を設けておくことで、担体保持マット13の周方向位置の管理をすることなく、エンジン運転後に、前記傾斜の鉛直方向最下部に異物トラップ用の凹溝17を形成することができる。
【0044】
ここで、ケース10の内面に設ける凹部21の寸法は、図18に示されるように、設けたい凹溝17をV字状として、開口部の幅をW(=8〜20mm)、長さをH(=10〜20mm)とすると、これとほぼ同じで、テーパ部の分大きいような寸法とするとよい。また、深さは1.5〜2mm程度とする。
次に本発明の第8実施形態について図19及び図20により説明する。
【0045】
本実施形態では、図19に示すように、触媒担体13に担体保持マット14を巻付けてケース10内に収納する触媒コンバータにおいて、触媒担体13の外周壁であって、担体保持マット14に形成しようとする異物トラップ用の凹溝の形成予定位置と対面する位置に、予め凹部22を形成する。すなわち、触媒担体13の外周壁に、担体保持マット14と重なる部分が、担体保持マット14に設けたい異物トラップ用の凹溝の形状となるような凹部22を設ける。
【0046】
この状態でエンジンを運転すると、凹部22に面している担体保持マット14の部分は面圧が低下しているので、この部分のマット材が飛散し、風蝕により、図19に示すように、担体保持マット14に異物トラップ用の凹溝17が形成される。
従って、担体保持マット14に凹溝17を直接形成する場合は、凹溝17付きの担体保持マット14を組み付けるときに、凹溝17の位置が所望の位置となるように、組み付け時の位置管理が必要となるのに対し、位置管理が比較的容易な触媒担体13に、位置決めして凹部22を形成しておくことで、その位置に凹溝17を形成することができ、凹溝17の位置管理が比較的容易となる。
【0047】
ここで、触媒担体13の外周壁に設ける凹部22の寸法は、図20に示されるように、設けたい凹溝17をV字状として、開口部の幅をW(=8〜20mm)、長さをH(=10〜20mm)とすると、これとほぼ同じで、触媒担体13の方が担体保持マット14より排気流れ方向上流側に突出している分、大きいような寸法とするとよい。また、深さは、外周壁の厚さが2.5mmの場合、1.5〜2mm程度とする。
【0048】
尚、第7実施形態及び第8実施形態では、最終的に形成する異物トラップ用の凹溝17をV字状の溝としているが、凹部21、22の形状設定により、少なくとも一部が排気流れ方向と交差する方向に延在する凹溝を形成することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1実施形態を示すエンジン排気系に装着された触媒コンバータの断面図
【図2】 図1の左側から見た触媒担体及び担体保持マットの図
【図3】 凹溝の形成例を示す担体保持マットの展開図
【図4】 凹溝の形成例を示す担体保持マットの斜視図
【図5】 本発明の第2実施形態を示すエンジン排気系に装着された触媒コンバータの断面図
【図6】 図5の左側から見た触媒担体及び担体保持マットの図
【図7】 本発明の第3実施形態を示す触媒担体及び担体保持マットの断面図及び側面図
【図8】 第3実施形態での担体保持マットの展開図
【図9】 本発明の第4実施形態を示す触媒担体及び担体保持マットの斜視図
【図10】 第4実施形態での凹溝の形成例を示す担体保持マットの展開図
【図11】 第4実施形態での凹溝の形成例を示す担体保持マットの斜視図
【図12】 本発明の第5実施形態を示す触媒担体及び担体保持マットの斜視図
【図13】 本発明の第6実施形態を示す触媒担体及び担体保持マットの斜視図
【図14】 本発明の第7実施形態を示すアッセンブリ直後の触媒コンバータの斜視図及びそのA−A断面図
【図15】 第7実施形態でのエンジン運転後の触媒コンバータの斜視図及びそのB−B断面図
【図16】 第7実施形態でのケース内面の詳細図
【図17】 第7実施形態での搭載状態の触媒コンバータの斜視図
【図18】 第7実施形態での凹部及び凹溝の詳細図
【図19】 本発明の第8実施形態を示す触媒担体外周壁の詳細図
【図20】 第8実施形態での凹部及び凹溝の詳細図
【符号の説明】
1 エンジンのシリンダヘッド
2 排気マニホールド
3 触媒コンバータ
4 排気管
10 主ケース
11,12 ディフューザ
13 触媒担体
14 担体保持マット
15 係止用ワッシャ部材
16a,16b 嵌め合わせ部の凸部及び凹部
17 凹溝
21,22 凹部
Claims (9)
- 内燃機関の排気通路の一部を構成するケース内に触媒担体をその外周に巻付けた担体保持マットを介して収納してなる排気浄化用の触媒コンバータにおいて、
前記触媒担体の排気流れ方向上流側の端面が、鉛直方向に対し傾斜するように搭載し、
前記担体保持マットの排気流れ方向上流側の端面に、前記触媒担体の排気流れ方向上流側の端面の傾斜方向で低くなる側に位置させて、凹溝を設けたことを特徴とする触媒コンバータ。 - 前記触媒担体をケースと共に鉛直方向に対し斜めに配置したことを特徴とする請求項1記載の触媒コンバータ。
- 前記触媒担体の排気流れ方向上流側の端面を排気流れ方向に対し傾斜させて形成したことを特徴とする請求項1記載の触媒コンバータ。
- 前記凹溝の少なくとも一部を排気流れ方向と交差する方向に延在させたことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載の触媒コンバータ。
- 前記凹溝は、その延在方向の途中に屈曲部を有していることを特徴とする請求項4記載の触媒コンバータ。
- 前記担体保持マットの排気流れ方向上流側の端面を周方向に傾斜させ、
前記凹溝は、前記担体保持マットの排気流れ方向上流側の端面で、鉛直方向に対し最下点となる部分の近傍に設けたことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1つに記載の触媒コンバータ。 - 前記触媒担体の排気流れ方向上流側の端面より、前記担体保持マットの排気流れ方向上流側の端面を、排気流れ方向下流側に位置させたことを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1つに記載の触媒コンバータ。
- 前記凹溝は、前記担体保持マットの巻付け方向の両端部の凹凸による嵌め合わせ部に形成されることを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか1つに記載の触媒コンバータ。
- 前記凹溝は、少なくとも最深部が先すぼまりに形成されることを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれか1つに記載の触媒コンバータ。
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