JP3679982B2 - ホウ素含有ステンレス鋼 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、中性子吸収性能を具えたホウ素含有ステンレス鋼に関し、特に、高耐食性と良好な熱間加工性を併せもつホウ素含有ステンレス鋼に関する。
【0002】
【従来の技術】
中性子吸収性能を具えたホウ素含有ステンレス鋼は、たとえば、原子力の使用済み燃料を貯蔵するプール内のラックの構成材料に使用されている。
【0003】
従来、ホウ素含有ステンレス鋼として、重量%で、C(炭素)を0.01%以下、Si(ケイ素)を1.0%以下、Mn(マンガン)を5.0%以下、P(リン)を0.015%以下、S(イオウ)を0.007%以下、Ni(ニッケル)を8.0〜25.0%、Cr(クロム)を22.0〜30.0%、B(ホウ素)を0.5〜2.5%、N(窒素)を0.05〜0.50%含有するもの、また、これに0.3〜3.0%のMo(モリブデン)および0.3〜2.0%のCu(銅)を加えたものが知られている(特公平5−7455号公報に記載されている)。残部は、実質的にFe(鉄)である。
【0004】
このステンレス鋼では、Cr量の割合が通常のオーステナイト系ステレンス鋼よりも大きくなっている。これは、成分中のBが(Cr,Fe)2 Bで表されるボライドとして析出することによって母材中の有効なCr量が減り、それが原因で耐食性が劣化してしまうのを防ぐためである。また、Cr量の割合が増加したのに伴って、オーステナイト組織を維持するためにNi量の割合も大きくなっている。
【0005】
また、重量%で、Cを0.02%以下、Siを0.5%以下、Mnを2%以下、Niを10〜22%、Crを18〜26%、Bを3.0%以下、Gd(ガドリニウム)を0.05〜1.0%、Mg(マグネシウム)を0.1%以下、sol.Al(アルミニウム)を0.5%以下含有するもの、また、これにMoやW(タングステン)やV(バナジウム)を単独または合計で0.1〜5%含有するものが知られている(たとえば、特開平6−192792号公報に記載されている)。
【0006】
このステンレス鋼では、中性子吸収性能を高めるため、Bの他に中性子吸収力の高いGd(ガドリニウム)が添加されている。一般に、B量の割合を高くすると中性子吸収性能が高まるが、その反面、延性が低下し、熱間圧延時に耳割れが発生するという不都合が生じる。これを避けるため、B量を3.0%以下に抑えるとともに、Gdが用いられている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した第1番目のステンレス鋼では、Crの含有量が最大30%、Niの含有量が最大25.0%と高いため、コストが増大するという問題点がある。また、第2番目のステンレス鋼では、Gdが極めて高価(1kg当たり360、000円である)であるため、やはりコストが増大するという問題点がある。
【0008】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたもので、耐食性および熱間加工性を損なうことなく、より安価に製造することができるホウ素含有ステンレス鋼を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明者らは、種々化学成分の異なるホウ素含有ステンレス鋼を試作し、耐食性および熱間加工性の評価を行った。
【0010】
耐食性を評価するにあたっては、各ホウ素含有ステンレス鋼の隙間腐食再不働態化電位を測定し、それに基づいて隙間腐食感受性を評価するという従来と異なる評価方法を用いた(本評価方法については後述する)。これは、従来の苛酷環境下の加速試験は、その内容が苛酷過ぎるため、安全側に偏った評価になり過ぎるからである。すなわち、従来の加速試験では、Cr、NiおよびMoを必要十分な量よりも多く添加することになり、それが原因で熱間加工性の低下を招いていたと考えられるからである。また、従来、耐食性の評価方法として隙間腐食試験片による長期浸漬試験が行われているが、試験終了までに長時間を要するという欠点がある。
【0011】
本発明者らは、耐食性の評価方法として隙間腐食再不働態化電位を測定することの有効性を検証した。そして、この評価方法を採用することによって、従来と同等またはそれ以上の耐食性と熱間加工性を兼ね具えたホウ素含有ステンレス鋼の組成を究明するに至った。
【0012】
すなわち、本発明にかかるホウ素含有ステンレス鋼は、Feと、それ以外の主要な成分として、重量%で、Bを0.6%以上でかつ2%以下、Crを17.5%以上でかつ21.5%以下、Moを0.4%以上でかつ0.75%以下、Niを8%以上でかつ10.5%未満の割合で含有するものである。その他、不可避不純物も含まれる。
【0013】
このような組成のホウ素含有ステンレス鋼によれば、B、Cr、NiおよびMoの含有量が必要かつ十分な量であるため、十分な中性吸収性能を具えるとともに、従来と同等またはそれ以上の耐食性と熱間加工性を具えたホウ素含有ステンレス鋼を安価に得ることができる。
【0014】
また、本発明にかかるホウ素含有ステンレス鋼は、式:Cr+3Mo−2.5Bで表される有効Cr当量の値が16重量%以上になっているものである。このような組成のホウ素含有ステンレス鋼では、ボライドが生成しても十分な耐食性が得られる。
【0015】
さらに、本発明にかかるホウ素含有ステンレス鋼は、上記成分に加えて、重量%で、Cを0.08%以下、Siを1%以下、Mnを2%以下、Pを0.04%以下、Sを0.01%以下の割合で含有していてもよい。このような組成のホウ素含有ステンレス鋼によれば、耐食性、溶接性および熱間加工性などに有効である、という利点がある。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明にかかるホウ素含有ステンレス鋼の実施の形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0017】
本発明にかかるホウ素含有ステレンス鋼は、主要な成分として、Bを0.6重量%以上でかつ2重量%以下、Crを17.5重量%以上でかつ21.5重量%以下、Moを0.4重量%以上でかつ0.75重量%以下、Niを8重量%以上でかつ10.5重量%未満の割合で含有する。その他、ホウ素含有ステレンス鋼は、Cを0.08重量%以下、Siを1重量%以下、Mnを2重量%以下、Pを0.04重量%以下、Sを0.01重量%以下の割合で含有する。残部はFeと不可避不純物である。さらに、CrとMoとBの含有量の間には、式:Cr+3Mo−2.5Bで表される有効Cr当量の値が16重量%以上になるという関係がある。
【0018】
Bの含有量について説明する。Bは中性子吸収能に優れているため、本発明の構成には不可欠な元素である。Bの含有量が上述した下限値に満たないと、十分な中性子吸収能を確保することが困難となる。一方、Bの含有量が上述した上限値を超えると、熱間延性が低下してしまう。また、ボライドの共晶温度の低下により熱間加工が困難になってしまう。したがって、Bの含有量は0.6重量%以上2重量%以下であるのが適当である。
【0019】
好ましくは、Bの含有量は、1.6〜1.9%であるのがよい。その理由は、十分な中性子吸収能が確保でき、熱間加工が安定してできるからである。より好ましくは、Bの含有量は1.7〜1.8%であるのがよい。その理由は、優れた中性子吸収能を有するからである。
【0020】
Crの含有量について説明する。Crはオーステナイト系ステンレス鋼の耐食性を確保するために不可欠な元素である。Crの含有量が増えると耐食性が向上するが、その反面、熱間延性が低下して加工性が劣化してしまう。コストも増大する。Crの含有量が上述した上限値を超えると、熱間加工性の劣化およびコスト増を招く。また、CrはBと結合してボライドとなる。それによってマトリックス中の有効Cr濃度が低下し耐食性が劣化する。Crの含有量が上述した下限値に満たないと、十分な有効Cr濃度を確保することが困難となる。したがって、Crの含有量は17.5重量%以上21.5重量%以下であるのが適当である。
【0021】
好ましくは、Crの含有量は18〜20%であるのがよい。その理由は、より耐食性が確保でき、コストも安価に抑えられるからである。より好ましくは、Crの含有量は19重量%であるのがよい。その理由は、優れた耐食性を確保できるからである。
【0022】
Moの含有量について説明する。Moはオーステナイト系ステンレス鋼の不働態皮膜を強化し、孔食や隙間腐食に対する耐食性を向上させる。Moの含有量が上述した下限値に満たないと、十分な耐食性の効果が得られない。しかし、Moの含有量が上述した上限値を超えると、熱間加工性の劣化およびコスト増を招く。したがって、Moの含有量は0.4重量%以上0.75重量%以下であるのが適当である。
【0023】
好ましくは、Moの含有量は0.5〜0.7%であるのがよい。その理由は、より耐食性が確保でき、熱間加工性も良好であるからである。より好ましくは、Moの含有量は0.6重量%であるのがよい。その理由は、優れた耐食性を確保できるからである。
【0024】
Niの含有量について説明する。Niはオーステナイト組織を安定化させる。Niの含有量が上述した下限値に満たないと、十分な安定化の効果が得られない。しかし、Niの含有量が上述した上限値以上になると、加工性が悪くなるとともに、コスト増を招く。したがって、Niの含有量は8重量%以上10.5重量%未満であるのが適当である。
【0025】
好ましくは、Niの含有量は8〜9%であるのがよい。その理由は、より加工性が良好で安価であるからである。より好ましくは、Niの含有量は8.5重量%であるのがよい。その理由は、安定した組織が確保できるからである。
【0026】
Cの含有量について説明する。Cの含有量が上述した上限値を超えると、溶接時の熱影響部では鋭敏化し炭化物が析出し、耐食性が劣化する。下限値は特に限定されない。より好ましくは、耐食性を確保するために、Cの含有量は0.03重量%以下であるのが適当である。
【0027】
Siの含有量について説明する。Siは脱酸剤として有効であるが、Siの含有量が上述した上限値を超えると、オーステナイト組織は不安定となり、熱間加工性に有害となる。下限値は特に限定されない。したがって、Siの含有量は1重量%以下であるのが適当である。
【0028】
Mnの含有量について説明する。Mnは脱酸剤として有効であるが、Mnの含有量が上述した上限値を超えると、材料清浄度が悪くなり、MnSを生成し、孔食性が低下する。下限値は特に限定されない。したがって、Mnの含有量は2重量%以下であるのが適当である。
【0029】
Pの含有量について説明する。Pの含有量が上述した値からずれると、溶接割れ感受性が高くなり、溶接性が劣化する。したがって、Pの含有量は0.04重量%以下であるのが適当である。
【0030】
Sの含有量について説明する。Sの含有量が上述した上限値を超えると、溶接割れ感受性が高くなり、溶接性が劣化する。下限値は特に限定されない。したがって、Sの含有量は0.01重量%以下であるのが適当である。
【0031】
また、有効Cr当量(式:Cr+3Mo−2.5B)の値が16重量%以上である理由は、本発明者らが、耐食性の評価として隙間腐食再不働態化電位の測定を行った結果(図3参照)に基づいている。すなわち、隙間腐食再不働態化電位の測定結果に基づいて隙間腐食感受性を判定した結果、その感受性が「無し」となる有効Cr当量のしきい値が16重量%である。
【0032】
ここで、隙間腐食再不働態化電位の測定による隙間腐食感受性の判定方法について説明する。まず、ホウ素含有ステンレス鋼により所定の形状および寸法の2枚の試験片を用意する。たとえば、図1に示すように、第1の試験片1および第2の試験片2を用意する。
【0033】
第1の試験片1は、50mm×30mmで厚さが3mmの長方形状をした板片である。第1の試験片1には、その長手方向を15:35(すなわち、3:7)の比で分け、かつ短手方向を1:1で分ける点を中心として直径5.5mmの孔11が貫通して設けられている。第2の試験片2は、一辺の長さが20mmで厚さが3mmの正方形状をした板片である。第2の試験片2の中心には直径5.5mmの孔21が貫通して設けられている。
【0034】
用意した2枚の試験片1,2に対して不働態化処理(JIS G0577)を行う。そして、試験直前に、それら試験片1,2の隙間形成面に対してのみ♯600番まで湿式研磨を行う。研磨後、それら試験片1,2を重ね、貫通孔11,21を介して図示しないボルト(ポリカーボネート製)およびワッシャー(チタン製)により固定する。締付けトルクは2kgf・cmである。さらに、試験片1,2の上端部にリードとして図示しないステンレス棒を取り付ける。これを隙間腐食再不働態化電位の測定用供試体とする。
【0035】
この測定用供試体の上端から20mmの位置までの部分を試験溶液中に浸漬させ、80℃、N2 脱気、使用済燃料ピット水模擬環境条件において、電位を掃引して30ppm Cl- (塩素イオン)環境における隙間腐食再不働態化電位ER,CREVと、大気飽和環境下における自然電位Espを測定する。供試体隙間腐食再不働態化電位ER,CREVは、電流が0μA以下で、電流の増加傾向のなくなった最も貴な電位の値とする。
【0036】
隙間腐食再不働態化電位ER,CREVが自然電位Espよりも「貴」であれば、測定用供試体の隙間内の表面には再び不働態皮膜が形成されている。すなわち、自然状態では腐食等が起こらない。換言すれば、耐食性が高い。よって、試験溶液条件における隙間腐食感受性を「無し」と判定する。なお、ER,CREVがEspよりも「貴」とは、式:ER,CREV−Espの値が正になることである。この式の値が負になると隙間腐食感受性の判定は「有り」となる。したがって、この式の値を隙間腐食感受性評価電位とする。
【0037】
つぎに、本発明者らが、上述した隙間腐食感受性の判定方法を検証した過程について説明する。本発明にかかるホウ素含有ステンレス鋼の適用対象は、たとえば原子力の使用済燃料ピット内のラックである。そこで、本発明者らは、そのラックをモデルとし、そのラックの想定使用条件にて検証を行った。
【0038】
まず、本発明者らは、隙間腐食発生過程をモデル化して作成した隙間内pH計算プログラムを用いて、モデルの隙間内のpH(水素イオン濃度)の定常値を計算により求めた。その際、たとえば、隙間厚みをl00μm、隙間深さを105mm(線対称)とした。また、バルク液条件をCl- 0.15ppm で、かつO2 3.4ppm (80℃大気飽和条件)とした。温度を80℃とした。
【0039】
その計算の結果、以下のような結果が得られた。すなわち、初期においては酸素還元反応に伴いpHが上昇した。続いて、隙間内へのCl- イオンの濃縮に伴いpHが低下した。最終的に、740時間後にpHの値は2.7となった。なお、隙間内pH計算プログラムの妥当性については、本発明者らにより検証済みである。その検証内容の詳細については後述する。
【0040】
上述したように、隙間内のpHは2.7で一定となる。したがって、本発明にかかるホウ素含有ステンレス鋼の不働態皮膜がpH値2.7の溶液中で安定していれば、その適用対象であるラックの材料として十分な耐食性を具えていることになる。一方、2.7よりも大きいpH値の溶液中で不働態皮膜にピット等が生じ、脱不働態化してしまうと、ラックとして十分な耐食性を具えていないことになる。
【0041】
そこで、本発明者らは、種々の組成のホウ素含有ステンレス鋼について脱不働態化pHの評価を行った。まず、種々の組成のホウ素含有ステンレス鋼よりなる板片を用意した。図2に板片3の寸法を示す。一辺の長さは15mmであり、厚さは3mmである。その板片3の上部おおよそ5mmをフロンマスク31により被覆した。これを脱不働態化pH測定用の供試体とした。
【0042】
そして、80℃、大気飽和の3%NaCl+HCl溶液に供試体の下端部からおおよそ7mmまでの部分を浸漬させ、腐食電位を測定した。なお、溶液のpH値は、1.5、2.0、2.5および3.0の4種類とした。脱不働態化に伴い測定電位が低下するので、その電位が低下する時のpH値をその供試体の脱不働態化pHとした。脱不働態化pH値が、上述した隙間内pH計算プログラムにより導出された隙間内のpHの定常値2.7よりも小さくなる、すなわち2.5または2.0となるのは、有効Cr当量が16重量%以上のものであった(表2参照)。
【0043】
この脱不働態化pHの測定の結果、有効Cr当量のしきい値は16重量%であることがわかった。これは、上述した隙間腐食再不働態化電位の測定による隙間腐食感受性の判定結果と一致している。すなわち、ホウ素含有ステンレス鋼の耐食性評価方法として、隙間腐食再不働態化電位を測定することが妥当であることが検証された。
【0044】
つぎに、本発明者らが行った、隙間内pH計算プログラムの妥当性の検証内容について説明する。本発明者らは、上述した隙間腐食再不働態化電位の測定用供試体と同様に、試験片を2枚重ねにした供試体を用意した。そして、その供試体の真ん中にマイクロpH電極をセットした。それを、Cl- 0.15ppm の想定使用濃度条件の試験液内に浸漬し、隙間内pHの経時変化を実測した。その結果、300時間経過以降、隙間内pH計算プログラムの計算値よりも若干pHが高いが、pHの下降傾向から一定に至る経時変化は良く一致していた。これによって、隙間内pH計算プログラムが妥当であることが確認された。
【0045】
(実施例)
以下に、実施例および比較例を挙げて本発明の特徴とするところを明らかにする。本発明鋼として8種類(表1の合金No.1〜8)、比較鋼として12種類(表1の合金No.9〜20の)の主要化学組成を有するホウ素含有ステンレス鋼を真空溶解し、20kgまたは2tonの鋼塊を作製した。表1に、各合金の成分割合および有効Cr当量の値を示す。なお、表1の合金No.18は、ホウ素を含まない一般的なSUS304鋼である。また、表1の合金No.19およびNo.20は、特公平5−7455号公報に記載された合金に相当するものである。
【0046】
【表1】
Figure 0003679982
【0047】
得られた各鋼塊を1150℃〜950℃で繰り返し熱間鍛造・圧延して5mm厚の板材とした。それら板材を1050℃で固溶化熱処理して供試材とした。各供試材に対して、熱間加工性と耐食性を調べた。
【0048】
熱間加工性については、各鋼塊を5mm厚の板材に圧延した時に耳割れが生じているか否かを調べた。その結果を表2に示す。
【0049】
【表2】
Figure 0003679982
【0050】
表2において、熱間加工性の欄で「○」は耳割れが生じなかったもの、すなわち熱間加工性が良好な合金である。同欄で「×」は耳割れが生じたものであり、熱間加工性がよくない合金である。表1および表2より、Bの含有量が2重量%を超えると(合金No.9とNo.10)、耳割れが発生し、熱間加工性が悪くなることがわかる。
【0051】
耐食性については、隙間腐食再不働態化電位の測定と脱不働態化pHの測定を行った。各測定における条件等は実施の形態の項で説明した通りである。結果を表2に示す。また、有効Cr当量と隙間腐食感受性評価電位(隙間腐食再不働態化電位ER,CREV−自然電位Esp)との関係を図3のグラフに示す。
【0052】
表1および表2並びに図3より、有効Cr当量の値が16重量%以上であれば、隙間腐食感受性評価電位が0mV以上となることがわかる。すなわち、隙間腐食再不働態化電位ER,CREVが自然電位Espよりも「貴」であるため、自然状態では隙間腐食が発生しない。したがって、耐食性に優れる。
【0053】
また、有効Cr当量の値が16重量%以上であれば、脱不働態化pHは、隙間内pH計算プログラムにより導出された隙間内のpH定常値2.7よりも小さくなることがわかる。すなわち、有効Cr当量の値が16重量%以上のホウ素含有ステレンス鋼を、原子力の使用済燃料ピットの溶液内に長期間浸漬させても、不働態皮膜が安定しているため、腐食は起こらない。
【0054】
以上の熱間加工性および耐隙間腐食性の比較結果から、本発明鋼は、特公平5−7455号公報または特開平6−192792号公報に記載されているホウ素含有ステンレス鋼と同等またはそれ以上の熱間加工性および耐隙間腐食性を有することが確認された。
【0055】
つぎに、本発明にかかるホウ素含有ステンレス鋼と特公平5−7455号公報または特開平6−192792号公報に記載されているホウ素含有ステンレス鋼とのコストについて、それぞれの中心組織にて比較した比較結果を表3に示す。表3より、本発明にかかるホウ素含有ステンレス鋼の方が安価であることがわかる。
【0056】
【表3】
Figure 0003679982
【0057】
【発明の効果】
以上、説明したとおり、本発明によれば、耐食性および熱間加工性を損なうことなく、より安価に製造可能な中性子吸収能を有するホウ素含有ステンレス鋼を得ることができる。このホウ素含有ステンレス鋼は、核燃料輸送用容器や使用済燃料ラック等の材料として好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】隙間腐食再不働態化電位の測定用供試体を示す図である。
【図2】脱不働態化pHの測定用供試体を示す図である。
【図3】有効Cr当量と隙間腐食感受性評価電位との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1,2 隙間腐食再不働態化電位の測定用供試体を構成する試験片
3 脱不働態化pHの測定用供試体を構成する板片

Claims (1)

  1. 重量%で、Bを0.6%以上でかつ2%以下、Crを17.5%以上でかつ21.5%以下、Moを0.4%以上でかつ0.75%以下、Niを8%以上でかつ10.5%未満、Cを0.08%以下、Siを1%以下、Mnを2%以下、Pを0.04%以下、Sを0.01%以下の割合で含有し、残部がFeと不可避不純物とからなり、式:Cr+3Mo−2.5Bで表される有効Cr当量の値が16重量%以上であることを特徴とするホウ素含有ステンレス鋼。
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