JP3674502B2 - 焼付け硬化型冷延鋼板およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、主として自動車用外板などに用いられる引張強度が340MPa以上の高強度冷延鋼板(亜鉛鍍金などの表面処理を施した表面処理鋼板も含む)で、焼付け硬化性を有する焼付け硬化型冷延鋼板およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
焼付け硬化型冷延鋼板(以下BH鋼板)は、自動車などの製造工程における塗装焼付け硬化処理(170℃×20分程度の加熱工程)を利用し、固溶C、N原子による歪み時効現象により強度が上昇する鋼板である。BH鋼板は、一般的に極低炭素鋼板をベースとして、炭化物生成元素あるいは窒化物生成元素を添加して、固溶C、N量が調整される。
【0003】
炭窒化物生成元素を添加する技術としては、例えば、特公昭60-17004号公報にはNb添加が、特公昭61-45689号公報、特開平3-257124号公報、特開平5-230598号公報、特開平5-263184号公報にはNb-Ti添加が、特公昭60-17004号公報にはNb-Ti-B添加が、特公昭61-47328号公報にはNb-B添加がそれぞれ提案されている。
【0004】
これらの従来技術は、主にNbを炭化物生成元素として添加している。すなわち、Nb添加により固溶Cを部分的に炭化物として析出させ、固溶C量を調整してBH性を得るという材料設計に基づく技術である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の従来技術には次のような2つの問題がある。
【0006】
第1の問題は、加工用材料としての延性が低いということである。従来技術によるBH鋼板は、概してIF鋼をベースとした高強度鋼板と比べて、延性が非常に劣っていた。これについては、固溶C量を調整するために析出させた炭化物によるとの考えから、C,Nbを共に低下させて炭化物を減らすことも試みられていた。しかしながら、このような試みにもかかわらず、BH鋼板の延性を向上させることは困難であった。
【0007】
第2の問題は、BH量(予歪み付与後の170℃×20分加熱によるフローストレスの上昇量)のバラツキである。工業的な製造工程において、固溶Cを炭化物生成元素により部分的に析出させて調整しようとすることは、製鋼工程における鋼中C量のバラツキに、炭化物生成元素の添加量のバラツキが重畳するため、実際には困難であった。そのため、製品における固溶Cのバラツキも大きく、BH量のバラツキが大きくなるという問題があった。
【0008】
さらに、BH量のバラツキが高い方で大きくなると、BH量は確保できても今度は常温時効が発生しやすくなる。常温時効は、自動車用外板などの用途に対しては、ストレッチャストレイン等の重大な外観上の欠陥をもたらし、ひいてはプレス成形時の成形不良の原因ともなるため、特に避けなければならない。
【0009】
また、特開平5-230598号公報にはTi添加の技術も提案されている。しかし、Tiは炭化物を形成するより前にN,Sとも析出物を形成するため、N量,S量双方のバラツキにより、その後の炭化物生成に有効なTi量が左右される。それに伴い析出する炭化物の量が大幅に変化し、固溶C量を調整することがさらに困難であった。
【0010】
本発明はこのような問題を解決するためになされたもので、自動車外板用途へ適用可能な高延性焼付け硬化型冷延鋼板およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記課題は、次の発明により解決される。その発明は、焼付け硬化性を有する焼付け硬化型冷延鋼板において、化学成分が、mass%で、C:0.0005〜0.002%、N:0.002%以下、Ti:(48/14)N〜(48/14)N+(48/32)S、 Nb:0.001%以下、B:0.0003%以下、残部が鉄及び不可避不純物からなり、フェライト粒が粒度 No.で9.0以下、かつ、粒径20μm以下の微細析出物が体積率で0.1%以下であることを特徴とする焼付け硬化型冷延鋼板である。または、その発明は、焼付け硬化性を有する焼付け硬化型冷延鋼板において、化学成分が、mass%で、C:0.0005〜0.002%、Si:0.05%以下、Mn:0.1〜1%、P:0.01〜0.1%、S: 0.003〜0.02%、sol.Al:0.01〜0.1%、N:0.002%以下、Ti:(48/14)N〜(48/14)N+(48/32)S、 Nb:0.001%以下、B:0.0003%以下、残部が鉄及び不可避不純物からなり、フェライト粒が粒度No.で9.0以下、かつ、粒径20nm以下の微細析出物が体積率で0.1%以下であることを特徴とする高延性焼付け硬化型冷延鋼板である。
【0012】
この発明は、BH鋼板の延性について鋭意研究を重ねた結果、得られた微細析出物の影響に関する知見に基づくものである。それによると、鋼中の粒径20nm以下の微細析出物の量が延性に大きく影響しており、この量を体積率で0.1%以下とすることにより、BH鋼板の特性を損なうことなく、延性の向上が可能である。それとともに、フェライト粒を粒度No.で9.0以下(粒径は大きくなる)とすることにより、BH鋼板としては、従来にない高延性を実現している。
【0013】
このように、この発明は、鋼板のミクロ組織を規定することにより、高延性と焼付け硬化性を両立させたBH鋼板を提供することを可能としている。
【0016】
これらの発明では、化学成分を規定しているので、鋼板のミクロ組織の調整に有利である。以下化学成分の限定理由について説明する。
【0017】
C:0.0005〜0.002%
Cは、本発明においてはBH性を発現する重要な元素であり、ほぼ全量を固溶状態としてBH性に寄与させる。C量が0.0005%未満ではその効果が不十分となる。一方、C量が0.002%を超えるとBH量が高くなりすぎ、そのため常温遅時効性が劣化する。また、微細炭化物の析出を少なくして延性の向上を図ることが困難となる。従って、C量を0.0005〜0.002%の範囲内とする。
【0018】
N:0.002%以下
Nは、本発明においてはTiNとして、粒径が20nmをはるかに超える比較的粗大な析出物として固定する。N量が0.002%を超えると、Tiの添加量が増えるばかりか、実製造上、製鋼におけるチャージ間のN量の変動も大きくなり、制御困難となる。従って、N量を0.002%以下とする。
【0019】
Ti:(48/14)N〜(48/14)N+(48/32)S
Tiは、鋼中の固溶NをTiNとして析出させて無害化するために添加する。そのためには、Nの化学等量以上、即ち(48/14)N以上添加する必要がある。ここで、Nの化学等量を超えて添加されたTiは、TiSとなり固定される。一方、過剰にTiを添加すると固溶Tiが残るため、微細なTiCが析出して延性が劣化し、固溶Cが減少するためBH量が確保できなくなる。従って、Ti量をTiCが析出しない範囲、即ちNとSを合わせた化学等量である(48/14)N+(48/32)S以下とする必要がある。
【0020】
S:0.003〜0.02%
Sは、不純物元素であり、熱間加工性を低下させるので、通常は低減する必要がある。S量が0.02 %を超えると、延性劣化への影響が顕著となる。一方、S量を0.003%未満に低減し材質向上の効果が得られないばかりか、脱硫等の製造コストが大幅に上昇する。さらにS量が小さくなりすぎると本発明に必要なTi量の最適範囲が狭くなり、安定製造が困難となる。従って、S量を0.003〜0.02%の範囲内とする。
【0021】
Nb:0.001%以下
Nbは微細なNbCを析出させて延性を劣化させるので、本発明ではNbを添加してはならない。また、固溶Nbも結晶粒成長性を阻害し、やはり延性を劣化させる。Nbの不純物レベルとしては0.001%以下であり、このレベルを超えると上記の悪影響が顕著となる。従って、不純物としてのNb量を0.001%以下とする。
【0022】
B:0.0003%以下
Bは、結晶粒界に偏析し、延性を劣化させるばかりか、r値を良好とさせる{111}方位集合組織の生成を妨げるので、本発明ではNbを添加してはならない。Bの不純物レベルとしては0.0003%以下であり、このレベルを超えると上記の悪影響が顕著となる。従って、不純物としてのB量を0.0003%以下とする。
【0023】
Si:0.05%以下
Siは、通常は固溶強化元素として添加され、強度調整のため適宜添加してよい。しかし、0.05%を超えて添加すると鋼板表面性状が劣化する。従って、Si量を0.05%以下とする。
【0024】
Mn:0.1〜1%
Mnは、MnSを形成して不純物Sによる表面欠陥発生を抑制する。そのためには、Mnを0.1 %以上添加する必要がある。Mnは、強度調整のため適宜添加してよいが、1%を超えると強度が高くなりすぎ、成形用鋼板としては延性が不十分となる。従って、Mn量を0.1〜1%の範囲内とする。
【0025】
P:0.01〜0.1%
Pは、r値向上および固溶強化を目的として添加される。Pが0.01%未満では、これらの効果が得られず、r値が低下する。一方、Pが0.1%を超えると鋼板表面性状が劣化する。従って、P量を0.01〜0.1%の範囲内とする。
【0026】
Al:0.01〜0.1%
Alは、製鋼工程で脱酸剤として添加される。この効果は、Alが0.01 %未満では不十分である。一方、0.1 %を超えると、添加の効果が飽和するばかりか、鋼板表面性状が劣化する。従って、Al量を0.01〜0.1%の範囲内とする。
【0027】
以上の高延性を有する焼付け硬化型冷延鋼板の製造方法の発明は、焼付け硬化性を有する焼付け硬化型冷延鋼板の製造方法において、上述する化学成分を有するスラブを1240℃以下の温度で加熱後、仕上温度 Ar 3 以上 920 ℃未満で熱間圧延し、 700 ℃まで平均冷却速度 20 ℃ /sec 以上で冷却し、巻取温度 580 ℃以下で巻取ることにより、熱延後のAIを 10Mpa以上とし、次いで、冷間圧延率 65 〜 83% で冷間圧延し、再結晶焼鈍を保持温度 750 〜 850 ℃で行うことにより、フェライト粒を粒度No.で9.0以下、かつ、粒径20nm以下の微細析出物を体積率で0.1%以下とし、さらに調質圧延を行うことを特徴とする焼付け硬化型冷延鋼板の製造方法である。
【0029】
以下、これらの発明の製造方法について説明する。
【0030】
スラブ加熱温度:1240℃以下
スラブの再加熱温度は、TiN の再固溶を抑制し、延性を向上させるためには、1240℃以下で行わなければならない。
【0031】
熱延後のAI:10Mpa以上
この発明では、熱間圧延して巻取った後の熱延後のAIに着目した。その結果、熱延後のAIが10Mpa未満では、冷延・焼鈍後のBH量を30 Mpa以上とすることが困難となることを見出した。従って、熱延後のAIを10Mpa以上とする。
【0032】
その後、冷間圧延および再結晶焼鈍を行うことにより、フェライト粒を粒度No.で9.0以下、かつ、粒径20nm以下の微細析出物を体積率で0.1%以下に調整する。次いで、調質圧延を行い焼付け硬化型冷延鋼板を製造する。
【0033】
なお、これらの発明の効果は、冷延鋼板の表面に表面処理を施すかどうかに拘わらず、得ることができる。すなわち、亜鉛めっきを施した亜鉛めっき鋼板としてもよい。
【0035】
【発明の実施の形態】
発明の実施に当たっては、前述のように化学成分を調整して冷延鋼板を製造し、必要に応じてその表面に亜鉛めっきを施して亜鉛めっき鋼板とすることができる。
【0036】
この発明では、微細析出物およびフェライト粒度等のミクロ組織を規定している。そこで、これらミクロ組織の特性値の結果測定方法について説明する。
【0037】
フェライト粒度:
フェライト粒度については、圧延方向に平行な断面について測定する。すなわち、研磨後エッチングしてフェライト粒界を現出させ、光学顕微鏡を用いて通常の方法と同様に測定すればよい。
【0038】
微細析出物の体積率:
析出物の体積率は、任意断面での面積率と等価であるので、透過型電子顕微鏡によるレプリカサンプルの観察により、析出物の面積率を測定することにより得ることができる。例えば、測定する鋼板を研磨、エッチングして、2段レプリカ法によりサンプルを作成する。研磨面は、鋼板表面付近の非定常部を避けるため、例えば、表裏板厚1/4より内部とすることが望ましい。
【0039】
20nm以下の微細析出物を正確に定量測定するためには、電子顕微鏡の倍率45000倍以上で観察することが望ましい。析出物の量を統計的に精度よく測定するためには、観察視野として15μm2以上とすることが望ましい。定量には画像処理装置を用いることができるが、装置の精度としては10nmの微細析出物を分離認識できる必要がある。粒径は、球形の析出物については直径とし、その他の形状あるいは不定形の析出物については長辺の長さとする。
【0040】
一部の化学成分については、さらに次のようにすることにより、それぞれ特性を向上させることができる。
【0041】
C:好ましくは0.0015%以下
Cについては、従来技術では工業的にBH鋼板を製造すると、C量をある範囲内に収める必要がありバラツキが大きかったが、この発明ではC量を0.002%以下とすることにより、製鋼工程での変動範囲が小さくなり、C量が安定する。さらに、本発明では炭化物析出を抑制するので、固溶C量はC量に近い値となり、炭化物析出によるバラツキも回避できる。その結果、BH量のバラツキも小さくなる。特に、BH量のバラツキについては、C量が0.0015%以下でさらにバラツキ抑制の効果が顕著となるので、
好ましくはC量を0.0015%以下とする。
【0042】
N:好ましくは0.0015%以下
Nについては、TiNとして固定されるが、やはりバラツキ抑制等の製造性の観点から低い方がよく、望ましくは N量を0.0015%以下とする。
【0043】
スラブ加熱温度:好ましくは1200℃以下
スラブの再加熱温度は、表面性状を向上させるためには1200℃以下とすることが望ましい。
【0044】
仕上温度: Ar 3 以上920℃未満熱間圧延の仕上温度は、Ar3未満では、鋼板表層に粗大粒が発生し、冷延鋼板のr値を劣化させる。一方、仕上温度が920℃以上では冷却中に結晶粒が成長しすぎ、やはり冷延鋼板のr値を劣化させる。従って、仕上温度はAr3以上920℃未満とする。
【0045】
熱間圧延後の冷却条件: 700 ℃まで平均冷却速度20℃/sec以上熱間圧延後の冷却条件は、冷却中のフェライト粒の粒成長を抑制する目的で、 急冷とする。平均冷却速度が20℃/sec未満では、その効果が小さい。また、700℃以下まで急冷しないと、粒成長の抑制が不十分となる。従って、熱間 圧延後は700℃まで平均冷却速度20℃/sec以上で冷却する。
【0046】
巻取温度: 580 ℃以下巻取温度が580℃を超えると、TiCが析出し固溶C量が減少するため、熱延後のAIが低下する。そのため、冷延鋼板のBH量が不十分となる場合がある。従って、巻取温度は580℃以下とする。
【0047】
このようにして製造された熱延鋼板は、酸洗により脱スケールの後冷間圧延および焼鈍を行う。冷間圧延以降の好ましい製造条件について説明する。
【0048】
冷間圧延率:65〜83%冷間圧延率は、65%未満では平均r値が低く、83%を超えると面内異方性Δrが高くなる。従って、冷間圧延率は65〜83%の範囲内とする。
【0049】
焼鈍における昇温速度:20℃/sec以上
焼鈍は連続焼鈍により、高い昇温速度で行う。昇温速度が20℃/sec未満では、良好な集合組織が発達せずr値が低くなる。従って、昇温速度は20℃/sec以上とすることが望ましい。
【0050】
焼鈍の保持温度:750〜850℃焼鈍の保持温度(焼鈍温度)は、750℃未満では延性およびr値が不十分となる可能性がある。一方、保持温度が850℃ を超えると、結晶粒径が大きくなりすぎ、プレス成形時に肌荒れ欠陥が発生する。また、固溶Cも多くなりすぎ、耐常温時効性が劣化する。従って、焼鈍の保持温度は、750〜850℃とする。さらに、BH量を化学成分の変動によらず安定させるには、保持温度を800℃以下とすることが望ましい。
【0051】
調質圧延条件:100℃以下の温度で圧延率1.0〜2.0%
調質圧延においては、温度が100℃を超えると、動的歪み時効および巻取り後の時効により、延性が劣化する。圧延率が1.0%未満では、調質圧延の効果が十分ではなく耐常温時効性が劣化する。圧延率が2.0%を超えると、調質圧延の効果が飽和するばかりか、加工硬化により成形性が劣化する。従って、調質圧延は、100℃以下の温度で圧延率1.0〜2.0%の範囲内で行うことが望ましい。
【0052】
【実施例】
(実施例1)
表1に示す化学成分の鋼を連続鋳造により鋳造し、得られたスラブを再加熱して、板厚3.6mmの熱延鋼板を製造した。熱延開始温度は1190℃、熱延仕上温度は900〜920℃であった。熱延後、平均冷却速度25℃/secで冷却し、580℃で巻取った。得られた熱延鋼板を、酸洗後板厚0.8mmに冷間圧延し、連続焼鈍を行った。
【0053】
連続焼鈍は、昇温速度は約25℃/secで昇温し、保持温度825℃で約60sec保持し、保持温度から600℃まで平均冷却速度9〜15℃/secで冷却を行った。引続き、溶融亜鉛めっきラインを用いて、合金化亜鉛めっきを行った。めっき付着量は片面45g/m2、合金化処理は、誘導加熱方式の合金化炉を用い、500〜550℃の温度でめっき中のFe濃度を約10%に調整して行った。
【0054】
調質圧延は、圧延率1.4%で行った。調質圧延時の板温度は約80℃であった。
【0055】
【表1】
【0056】
得られた供試鋼板について、ミクロ組織および機械特性を評価を行った。
【0057】
微細析出物量の測定は、供試鋼板の板厚中央部より析出物レプリカを作製し、透過型電子顕微鏡で写真撮影した。透過型電子顕微鏡の倍率は50000倍で行い、約20μm2以上の面積を撮影した。その後、画像処理により析出物の面積率を定量測定した。
【0058】
フェライト粒の平均結晶粒径は、供試鋼板の圧延方向に平行な断面を研磨し、エッチングしてフェライト粒界を現出させ、光学顕微鏡を用いてJIS G0552に規定されている切断法により測定した。
【0059】
こうして得られた供試材の微細析出物量、フェライト粒の平均結晶粒径(粒度No.)を表2に示す。本発明例の鋼番号1〜6の鋼板は、いずれも本発明の析出物量とフェライト粒度を満足しているが、比較例の鋼番号7〜9の鋼板は、本発明の範囲から外れている。
【0060】
【表2】
【0061】
機械特性は、JIS5号型引張試験片を圧延方向に対して直角のの方向に採取して測定した。引張特性はいずれも塩酸によりめっき剥離後測定した。BH量はJIS G3135附属書に準じて測定した。平均r値は、圧延方向に対して0,45,90゜の3方向の測定結果から求めた(JIS Z2254に準拠)。得られた供試鋼板の特性評価結果を上記表2に併せて示す。
【0062】
表2より明らかなように、本発明鋼1〜6は、BH量が30Mpa以上、加工硬化量WHが40Mpa以上、伸びElが48%以上で、極めて良好な特性を示している。これに対し、本発明範囲から外れる比較鋼は、いずれも伸びElおよび加工硬化量WHが低い。
【0063】
(実施例2)
上記表1に示した鋼番号3のスラブを、表3に示す条件で熱間圧延、焼鈍を行い、溶融亜鉛めっき鋼板を製造した。その他の条件は、実施例1に準じて行った。得られた供試鋼板の特性評価結果を表4に示す。
【0064】
【表3】
【0065】
【表4】
【0066】
表より明らかなように、記号A,B,D,Fで示される本発明鋼板は、BH量が30Mpa以上、加工硬化量WHが40Mpa以上、伸びElが48%以上で、極めて良好な特性を示している。これに対し、熱延再加熱温度が本発明範囲から外れる記号Cで示される比較鋼は、微細析出物量が多く、平均結晶粒径が細かいため、伸びおよび加工硬化量が低い。また比較鋼の記号Eは、熱延板AIが5Mpaと低いためBH量が不足した。
【0067】
【発明の効果】
この発明は、鋼板のフェライト粒度および微細析出物量を規定することにより、高延性と焼付け硬化性を両立させたBH鋼板の製造を可能としている。さらに化学成分あるいは製造条件を規定することにより、鋼板の上記ミクロ組織の調整に有利となる。
【0068】
その結果、従来にない高延性の焼付け硬化型冷延鋼板を提供することができるとともに、BH量のバラツキおよびそれに起因する常温時効性の劣化の問題が解決でき、自動車外板用途に使用される材料として最適である。さらに、海外で使用する場合、鋼板の製造から成形までの時間が長く、またその間の気温が国内より高い場合が多いので、より高い耐常温時効性が求められるが、本発明によれば、そのような場合でも世の中のニーズに合致する優れた焼付け硬化型冷延鋼板を提供することが可能となる。
Claims (4)
- 焼付け硬化性を有する焼付け硬化型冷延鋼板において、化学成分が、mass%で、C:0.0005〜0.002%、N:0.002%以下、Ti:(48/14)N〜(48/14)N+(48/32)S、 Nb:0.001%以下、B:0.0003%以下、残部が鉄及び不可避不純物からなり、フェライト粒が粒度No.で9.0以下、かつ、粒径20nm以下の微細析出物が体積率で0.1%以下であることを特徴とする焼付け硬化型冷延鋼板。
- 焼付け硬化性を有する焼付け硬化型冷延鋼板において、化学成分が、mass%で、C:0.0005〜0.002%、Si:0.05%以下、Mn:0.1〜1%、P:0.01〜0.1%、S: 0.003〜0.02%、sol.Al:0.01〜0.1%、N:0.002%以下、Ti:(48/14)N〜(48/14)N+(48/32)S、 Nb:0.001%以下、B:0.0003%以下、残部が鉄及び不可避不純物からなり、フェライト粒が粒度No.で9.0以下、かつ、粒径20nm以下の微細析出物が体積率で0.1%以下であることを特徴とする高延性焼付け硬化型冷延鋼板。
- 焼付け硬化性を有する焼付け硬化型冷延鋼板の製造方法において、化学成分が、mass%で、C:0.0005〜0.002%、N:0.002%以下、Ti:(48/14)N〜(48/14)N+(48/32)S、 Nb:0.001%以下、B:0.0003%以下、残部が鉄及び不可避不純物からなるスラブを1240℃以下の温度で加熱後、仕上温度Ar3以上920℃未満で熱間圧延し、700℃まで平均冷却速度20℃/sec以上で冷却し、巻取温度580℃以下で巻取ることにより、熱延後のAIを 10Mpa以上とし、次いで、冷間圧延率65〜83%で冷間圧延し、再結晶焼鈍を保持温度750〜850℃で行うことにより、フェライト粒を粒度No.で9.0以下、かつ、粒径20nm以下の微細析出物を体積率で0.1%以下とし、さらに調質圧延を行うことを特徴とする焼付け硬化型冷延鋼板の製造方法。
- 焼付け硬化性を有する焼付け硬化型冷延鋼板の製造方法において、化学成分が、mass%で、C:0.0005〜0.002%、Si:0.05%以下、Mn:0.1〜1%、P:0.01〜0.1%、S: 0.003〜0.02%、sol.Al:0.01〜0.1%、N:0.002%以下、Ti:(48/14)N〜(48/14)N+(48/32)S、 Nb:0.001%以下、B:0.0003%以下、残部が鉄及び不可避不純物からなるスラブを1240℃以下の温度で加熱後、仕上温度Ar3以上920℃未満で熱間圧延し、700℃まで平均冷却速度20℃/sec以上で冷却し、巻取温度580℃以下で巻取ることにより、熱延後のAIを 10Mpa以上とし、次いで、冷間圧延率65〜83%で冷間圧延し、再結晶焼鈍を保持温度750〜850℃で行うことにより、フェライト粒を粒度No.で9.0以下、かつ、粒径20nm以下の微細析出物を体積 率で0.1%以下とし、さらに調質圧延を行うことを特徴とする焼付け硬化型冷延鋼板の製造方法。
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