JP3668794B2 - アルミニウム合金製ドアビーム材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車、トラック等の車両のドア補強用部材として、ドアの前後方向に配置され、側面からの衝突時の衝撃を吸収し乗員の安全性を確保するために使用されるアルミニウム合金製ドアビーム材に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、世界的規模で地球環境の問題が重要視されてきている。例えば、その一環として、地球温暖化抑制のために、自動車の排出する排気ガス、炭酸ガス等を削減することを目的とした法規制も各国で強化されつつあり、その結果、自動車の軽量化が急激に進展しつつある。
自動車のドアビームはインパクトビーム、インパクトバー、ガードバー、ドアサイドビームと呼ばれることもあるが、ドアの内部に前後方向に取り付けられ、衝突時の衝撃を吸収するものであり、これまでは鋼材(例えば150kgf/mm2クラスのハイテン鋼)が使用されてきたが、近年は軽量化の観点からアルミニウム製の押出形材の適用が検討されるようになってきた。
【0003】
アルミニウム合金製ドアビーム材の両端部を支持した状態で、中央部に荷重を付加していくと、ドアビーム材の中央部は押し込まれて曲げ変形を起こす。荷重を負荷する側のフランジを圧縮側フランジ、それに対向する側を引張側フランジというが、このとき引張側フランジに引張歪みが発生する。さらに変位量が増大し、この引張歪みが材料の破断限界値を超えると引張側フランジに破断が生じる。
この破断変位を増大させるため、特開平5−246242号公報では、曲げの中立軸の位置を引張側フランジ側に必要量だけ偏らせることが開示されており、また特開平6−171362号公報では、中立軸を偏らせるのに加え、最大曲げ強度を達成した後に圧縮側に局部座屈を誘発し、引張側フランジにかかる応力を急激に下げることが開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
乗員の安全を確保するために、ドアビームの適用車種は小型車へも広がる傾向にあり、その場合、ビーム長が短くなってくる。例えばドアビームを小型4ドア車のリアドアへ適用する場合は、ビーム長が800mm以下となることもあり(上記特開平6−171362号公報の実施例ではスパン950mmを用いている)、従来のビーム長の長いドアビームに比べ小さい変位量で破断が生じてしまう。一方、破断変位を大きくするには、ドアビームを構成するアルミニウム合金の強度を下げることが考えられるが、そうすると、一定の重量のもとで必要な最大荷重及びエネルギー吸収量を得ることができなくなるという問題がでてくる。
【0005】
一方、特開平5−330450号公報には、一対のフランジと一対のウエブからなるドアビーム材において、ウエブの強度を衝撃荷重に対してビーム断面形状が変化するように設定し、引張側フランジの破断を防止することが記載されている。具体的には、例えば一方のウエブの厚さを他方より薄くする、圧縮側フランジと両ウエブの接続部の片側に隅肉部又は切欠き部を設ける等の手段により、ビーム断面形状が菱形状に変形する(両ウエブが横倒れする)ようにしたものである。また、特開平5−319092号公報にも同様に、ウエブに高さ方向の座屈を生じさせて断面全体を潰れ変形させ、破断を防止することが記載されている。これらの公報によれば引張側フランジの破断を防止できるとされているが、やはりドアビーム長が短くなった場合、断面形状の変形が安定せず、破断が起こり得るという問題があった。
このドアビームの破断は乗員を傷つける可能性があり、絶対に避けなければならないことである。
【0006】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたもので、短いビーム長でも破断が発生せず安定して断面形状を変形させることができ、同時に重量を増やすことなく必要な最大荷重及びエネルギー吸収量を稼ぐことのできるドアビームを得ることを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るアルミニウム合金製ドアビーム材は、長さ方向に垂直な断面において、圧縮側フランジと引張側フランジを一対のウエブにより連結した断面形状を有するアルミニウム合金押出形材からなり、両フランジは互いに平行でかつ両ウエブと直交し、前記断面での主軸が引張側フランジの外表面に垂直な方向に対して5゜〜25゜の傾きを持っていることを特徴とする。ここで、主軸とは断面の重心を通る互いに直交する2つの軸のことであり、直交する2つの主軸のうち一方の軸に関する断面2次モーメントが極大となり、もう一方の軸に関する断面2次モーメントが極小となる。本発明でいう主軸は、この2つの主軸のうち引張側フランジの外表面に垂直な方向とのなす角度が小さい方の主軸を意味する。なお、本発明に係るドアビーム材において、一般に引張側フランジの外表面(最も引張側の表面を意味する)が想定される荷重の負荷方向に対し略垂直に向くように設置される。
上記のドアビーム材は、典型的には、各フランジとウエブがそれぞれ本質的に均等な厚さを持つ。
【0008】
【発明の実施の形態】
図1に示すドアビーム材は、本発明に係るドアビーム材の1つの典型的な形態であり、互いに平行な圧縮側フランジ1と引張側フランジ2をそれらに直交する一対のウエブ3、4により連結した断面形状を有し、両フランジ及び両ウエブが本質的に均等な厚さ(連結部のコーナーRを除いて均等な厚さという意味)を有する。さらに詳しくは、このドアビーム材は圧縮側フランジ1の中心線a(圧縮側フランジ1の幅の中心を通り該フランジに垂直に引いた直線(=荷重Pの負荷方向に引いた直線))と引張側フランジ2の中心線bがずれている。あるいは、このドアビーム材は圧縮側フランジ1の両張り出し部(左右のウエブから張り出した部分)の長さc1、c2、引張側フランジ2の両張り出し部長さd1、d2がそれぞれ異なり、かつそれぞれの長い方の張り出し部c1、d2が一方の対角上にある(当然、短い方の張り出し部c2、d1が他方の対角上にある)。
【0009】
上記のドアビーム材は、その断面形状から、図2に示すように、断面2次モーメントが極小となる主軸eが引張側フランジの外表面に垂直な方向(=荷重Pの負荷方向)と角度θをなし、断面2次モーメントが極大となる主軸fが角度(90゜−θ)をなす。このうち引張側フランジの外表面に垂直な方向となす角度が小さい主軸eが本発明でいう主軸に相当する。なお、図2において、gはその断面における重心である。
【0010】
先に挙げた特開平5−246242号公報や特開平6−171362号公報等に記載された従来のアルミニウム合金製ドアビームは、図4に示すように、長さ方向に垂直な断面において互いに平行な圧縮側フランジ11と引張側フランジ12をそれらに直交する一対のウエブ13、14により連結した断面形状を有し、両フランジ及び両ウエブが本質的に均等な厚さを有し、かつ左右対称となっている。さらに詳しくは、圧縮側フランジ11の中心線aと引張側フランジ12の中心線bが一致し、あるいは、圧縮側フランジ11の両張り出し部の長さc1、c2、引張側フランジ12の両張り出し部長さd1、d2はそれぞれ等しくなっている(c1=c2、d1=d2)。
そして、断面2次モーメントが極小となる主軸eが引張側フランジ12の外表面に垂直な方向(=荷重Pの負荷方向)に対してなす角度は0゜である。
【0011】
従来のドアビーム材はこのような断面形状をもつため、図5に示すように両端を支持しその中央部を負荷治具で押圧する3点曲げ試験(一般に実験室レベルでは、ドアビームの性能はこの試験による曲げ性能で評価される)を行うと、主軸eが荷重Pの負荷方向と平行であるため、あるいは圧縮側フランジの中心線a(主軸eと一致する)が引張側フランジの中心線bと一致するため、破断直前まで断面形状が元の形状を保っており、引張側フランジ12に歪みが蓄積され、急激に破断が発生し歪みが開放される。また、この現象は荷重(P)−変位(δ)曲線にも現れ、急激な荷重低下を示す。
【0012】
これに対し、本発明に係るアルミニウム合金製ドアビーム材は、図2に示すように主軸eが荷重Pの負荷方向に対しある傾きをもっているため、あるいは図1に示すように圧縮側フランジの中心線aが引張側フランジの中心線bとずれているため、曲げ荷重Pを受けたとき、図3に例示するように、ビーム断面がひしゃげるように座屈変形(略菱型状に変形)を起こしやすく、破断が生じるほど引張側に歪みが蓄積される前に、引張側フランジ2側の負荷が緩和される。これにより引張側フランジに破断が発生し難くなり、圧縮側フランジにも破断が発生しにくくなる。
また、主軸eの傾きを制御することにより、ドアビームとしてのエネルギー吸収量や座屈変位、さらには座屈方向まで制御できる。特に座屈方向の制御は、ドア内にある他の部品(ウインドーレギュレータ関連部品(ブラケット類やモータ類含む))との干渉具合を考慮したうえで、衝撃が加わった際の最適なドアビームの座屈形態を得ることができるという利点につながる。
【0013】
さて、本発明に係るアルミニウム合金ドアビーム材において(図2参照)、主軸eは引張側フランジの外表面に垂直な方向(=荷重Pの負荷方向)に対し5〜25゜の傾きθを持っている。この角度θが5゜より小さいと、比較的変形量が大きくなっても、座屈変形は顕著に現れず(元の形状を保ちやすく)、従来のドアビーム材と同様に引張側フランジの引張歪みが増大し、破断が発生する(図6参照)。また、破断が比較的早い段階で発生すると吸収エネルギーも小さくなる。この角度θが25゜より大きいと、比較的変形量の小さい段階で座屈変形が顕著に現れ、荷重が大きく低下して破断は回避できるものの、十分な吸収エネルギーが得られない(図7参照)。一方、この角度θが5〜25゜の範囲内であれば、破断が発生する前の比較的変形量の大きな段階で安定して座屈変形を発生させることができる(図8参照)。
【0014】
なお、本発明においては、図1に示す断面形状以外に、ウエブのいずれか一方又は双方の厚みが均等でないもの(図9(a))、圧縮側フランジと引張側フランジのいずれか一方又は双方の厚みが均等でないもの(同(b))、引張側フランジに厚肉部(ここに例えばネジ穴が形成される)を設けたもの(同(c))、引張側フランジの外表面が平らでなく曲率をもっているものなど、種々の断面形状のものが考えられるが、主軸が荷重Pの負荷方向に対し5〜25゜の角度をなすのであれば、上記座屈変形を安定して発生させることができる。
【0015】
また、本発明に係るドアビーム材は、図2の例において、引張側フランジの両張り出し部の長さと圧縮側フランジの両張り出し部の長さが両方とも異なるものに限られず、引張側フランジか圧縮側フランジのいずれか一方の両張り出し部長さが異なり、他方の両張り出し部長さが同一であるものも含まれる。さらに、いずれか1又は2以上の張り出し部長さがゼロの場合も含まれる。
【0016】
さらに、本発明のドアビーム材においては、引張側フランジの断面積を圧縮側フランジの断面積よりも大きく形成し、曲げの中立軸を引張側フランジ側に変位させることが望ましい。引張側フランジの断面積を圧縮側フランジの断面積より大きく形成する(引張側フランジの幅を圧縮側フランジより長くする及び/又は厚さを厚くする)と、曲げの中立軸が引張側に偏位し、同じ変位であれば引張側フランジにかかる引張歪みが軽減され、割れが発生しにくくなる。
なお、ドアビームは自動車の比較的狭いドア内部に設置されるものであるからコンパクトであること、製造面からは押出性等を考慮して、図1のタイプのドアビーム材であれば、フランジ及びウエブは厚さ1.5〜5mm、全高さ(図1の上下方向)10〜45mm、全幅(図1の左右方向)10〜70mmの範囲内で断面形状を設計すればよい。
【0017】
本発明に係るドアビーム材には、例えば7N01、6061、6063、6N01等の各種アルミニウム合金がいずれも適用できるが、特に下記組成のAl−Zn−Mg系アルミニウム合金及びAl−Si−Mg系アルミニウム合金が望ましい。その組成について、以下説明する。なお、以下、%はwt%を示す。
【0018】
(Al−Zn−Mg系)
望ましいAl−Zn−Mg系アルミニウム合金は、Zn:4〜7%、Mg:0.8〜1.5%を含有する。そのほか、適宜他の成分を含み得るが、好ましい組成として、Zn:4〜7%、Mg:0.8〜1.5%、Ti:0.005〜0.3%と、Cu:0.05〜0.6%、Mn:0.2〜0.7%、Cr:0.05〜0.3%、Zr:0.05〜0.25%から選択された1種又は2種以上を含有し、残部がAl及び不純物を挙げることができる。各成分の添加理由は次の通りである。
【0019】
Zn、Mg
Zn、Mgはアルミニウム合金の強度を維持するために必要な元素である。Znが4重量%未満、Mgが0.8%未満では所望の強度が得られない。また、Znが7%、Mgが1.5%を超えるとアルミニウム合金の押出性が低下するとともに伸びも低下し、所要の特性値が得られなくなる。従って、Zn:4〜7%、Mg:0.8〜1.5%とする。
Ti
Tiは、鋳塊組織の微細化のために必須の元素である。Tiが0.005%より少ないと、微細化の効果が十分でなく、0.3%より多いと飽和して巨大化合物が発生してしまう。従って、Tiの含有量は0.005〜0.3%とする。
【0020】
Cu、Mn、Cr、Zr
これらの元素はアルミニウム合金の強度を高める。また、Cuはアルミニウム合金の耐応力腐食割れ性を改善し、Mn、Cr、Zrは押出材に繊維状組織を形成して合金を強化する作用があり、これらの中から1種又は2種以上が適宜添加される。好適な範囲は、Cu:0.05〜0.6%、Mn:0.2〜0.7%、Cr:0.05〜0.3%、Zr:0.05〜0.25%である。それぞれ下限未満では上記の作用が不十分であり、また、上限を超えると、押出性が悪くなり、Cuの場合は一般耐食性が悪くなる。
【0021】
不純物
不純物のうちFeはアルミニウム地金に最も多く含まれる不純物であり、0.35%を超えて合金中に存在すると鋳造時に粗大な金属間化合物を晶出し、合金の機械的性質を損なう。従って、Feの含有量は0.35%以下に規制する。
また、アルミニウム合金を鋳造する際には地金、添加元素の中間合金等様々な経路より不純物が混入する。混入する元素は様々であるが、Fe以外の不純物は単体で0.05%以下、総量で0.15%以下であれば合金の特性にほとんど影響を及ぼさない。従って、これらの不純物は単体で0.05%以下、総量で0.15%以下とする。
【0022】
(Al−Si−Mg系)
望ましいAl−Si−Mg系アルミニウム合金は、Si:0.5〜1.5%、Mg:0.5〜1.3%を含有する。そのほか、適宜他の成分を含み得るが、好ましい組成として、Si:0.5〜1.5%、Mg:0.5〜1.3%、Ti:0.005〜0.2%と、Cu:0.1〜0.7%、Mn:0.05〜0.6%、Cr:0.05〜0.2%、Zr:0.05〜0.2%から選択された1種又は2種以上を含有し、残部がAl及び不純物を挙げることができる。各成分の添加理由は次の通りである。
【0023】
Si、Mg
Si、Mgはアルミニウム合金の強度を維持するために必要な元素である。Siが0.5%未満、Mgが0.5重量%未満では所望の強度が得られない。一方、Siが1.5%、Mgが1.3%を超えるとアルミニウム合金の押出性が低下するとともに伸びも低下し、所要の特性値が得られなくなる。従って、Si:0.5〜1.5%、Mg:0.5〜1.3%とする。
一方、Ti、Cu、Mn、Cr、Zr、及び不純物については、Al−Zn−Mg系と同様の理由で、前記の範囲内に限定される。
【0024】
本発明のドアビーム材はアルミニウム合金の押出形材からなり、大きい最大荷重及びエネルギー吸収量を得るためには、結晶組織は繊維状組織をなすことが望ましい。繊維状組織とは、押出材にみられる熱間加工組織で、押し出し方向に長く伸ばされた結晶粒組織のことである。
また、Al−Zn−Mg系アルミニウム合金及びAl−Si−Mg系アルミニウム合金からなるドアビーム材が曲げを受けたときの変形形態と、当該合金の加工硬化指数(n値)及びシャルピー衝撃値には相関があり、Al−Zn−Mg系アルミニウム合金製ドアビーム材の場合、加工硬化指数が0.05〜0.17、かつシャルピー衝撃値が20〜45J/cm2の範囲内、Al−Si−Mg系アルミニウム合金製ドアビーム材の場合、加工硬化指数が0.07〜0.20、かつシャルピー衝撃値が25〜50J/cm2の範囲内にあることが望ましい。より望ましい範囲は、Al−Zn−Mg系が加工硬化指数0.05〜0.11、シャルピー衝撃値23〜34J/cm2、Al−Si−Mg系が加工硬化指数0.07〜0.15、シャルピー衝撃値31〜49J/cm2である。なお、これらはいずれも引張側フランジ部の特性である。
【0025】
【実施例】
図10に示す断面形状(基本的な断面形状は図1と同じ=本発明)及び図11に示す断面形状(基本的な断面形状は図4と同じ=比較例)をもち、Mg:1.4%、Zn:6.5%、Cu:0.2%、Zr:0.15%を含むAl−Mg−Zn系アルミニウム合金押出形材を、スパン750mmの3点曲げ試験にて負荷治具を変位量(δ)300mmまで押し込んだ。図10に示すドアビーム材では主軸の傾きθは8.5゜であり、図11に示すドアビーム材では0゜である。
そのときの荷重(P)−変位(δ)曲線を図12に示し、数値の比較を表1に示す。なお、表1において、破断変位とは、引張フランジが破断し荷重が急激に低下し、ほぼ0になるときの変位量、座屈変位とは、座屈変形(略菱形状に変形)が顕著に発生し、荷重が急激に低下するときの変位量を意味する。
【0026】
【表1】
【0027】
図12及び表1に示すように、比較例のドアビーム材は破断変位が129mmであったが、本発明のドアビーム材は図12におけるA点で座屈変形が始まり、破断は発生しなかった。最大荷重、吸収エネルギー(P−δ曲線で囲まれる面積)も大きくなっている。
【0028】
また、基本的な断面形状が図1と同じで、主軸と荷重の負荷方向のなす角度θがそれぞれ異なり、Mg:1.4%、Zn:6.5%、Cu:0.2%、Zr:0.15%を含むAl−Mg−Zn系アルミニウム合金押出形材を、スパン750mmの3点曲げ試験にて負荷治具を変位量(δ)300mmまで押し込んだ。なお、これらのドアビーム材の断面形状は、フランジ張り出し部長さ(c1、c2、d1、d2)を変えているが、ドアビーム高さ、ウエブ厚み、両フランジの面積は全ての試験材で同じとした。従って、断面変形(座屈)がないと仮定すれば、理論的には最大荷重は全て同一となる。
フランジ張り出し部長さ(c1、c2、d1、d2)、角度θ、並びに破断が発生する変位量又は座屈が発生する変位量を表2に示す。
【0029】
【表2】
【0030】
表2に示すように、角度θが本発明の規定を満たさないNo.1、No.2のドアビーム材は破断が発生し、No.8のドアビームは破断が発生しないが、座屈が早い段階で発生してしまう。一方、No.2〜7のドアビーム材は破断が発生せず、しかも座屈が比較的遅い段階で発生し、吸収エネルギーは大きくなる。
【0031】
【発明の効果】
本発明によれば、短いビーム長でも破断が発生せず、安定して断面形状を変形(座屈変形)させることができる。同時に重量を増やすことなく必要な最大荷重及びエネルギー吸収量を稼ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係るドアビーム材の断面形状を説明する図である。
【図2】 その断面形状をさらに説明する図である。
【図3】 その座屈変形の様子を説明する図である。
【図4】 従来のドアビーム材の断面形状である。
【図5】 ドアビーム材の3点曲げ試験方法を説明する図である。
【図6】 破断が発生する場合の荷重(P)−変位量(δ)の模式図である。
【図7】 座屈が比較的はやい段階で発生する場合の荷重(P)−変位量(δ)の模式図である。
【図8】 座屈が比較的遅い段階で発生する場合の荷重(P)−変位量(δ)の模式図である。
【図9】 本発明に係るドアビーム材の他の断面形状の例を説明する図である。
【図10】 実施例(本発明)に用いたドアビーム材の断面形状である。
【図11】 実施例(比較例)に用いたドアビーム材の断面形状である。
【図12】 実施例で得られた荷重(P)−変位曲線(δ)である。
【符号の説明】
1、11 圧縮側フランジ
2、12 引張側フランジ
3、4、13、14 ウエブ
a 圧縮側フランジの中心線
b 引張側フランジの中心線
c1、c2、d1、d2 フランジの張り出し部長さ
e 主軸
f 主軸
g 重心
Claims (3)
- 長さ方向に垂直な断面において、圧縮側フランジと引張側フランジを一対のウエブにより連結した断面形状を有するアルミニウム合金押出形材からなり、両フランジは互いに平行でかつ両ウエブと直交し、前記断面での主軸が引張側フランジの外表面に垂直な方向に対して5゜〜25゜の傾きを持っていることを特徴とするアルミニウム合金製ドアビーム材。
- 各フランジとウエブがそれぞれ本質的に均等な厚さを持つことを特徴とする請求項1に記載されたアルミニウム合金製ドアビーム材。
- 長手方向の長さが800mm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載されたアルミニウム合金製ドアビーム材。
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