JP3659764B2 - プロピレン単独重合体を製造する方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、プロピレン単独重合体に関するものである。さらに詳しくは、キシレン溶解成分が少なく、しかもキシレン不溶成分が極めて高いアイソブロック含有率を有するプロピレン単独重合体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
チタンハロゲン化合物、マグネシウム化合物及び電子供与性化合物を必須成分とする固体触媒成分、有機アルミニウム化合物及びケイ素化合物等の第三成分とで形成される触媒を用いて、オレフィン類を重合させる方法に関しては、数多くの提案がなされており周知である。またこのような触媒を用いて、高立体規則性の結晶性ポリオレフィンを高収率で得る方法も鋭意研究されている。
【0003】
例えば、特開昭63−3010号公報、特開平1−221405号公報、特開平1−315406号公報、特開平3−227309号公報、特開平3−70711号公報、特開平4−8709号公報等には、ジアルコキシマグネシウム及び四塩化チタンを主要な出発原料として調製される固体触媒成分、有機アルミニウム化合物及びケイ素化合物等の第三成分とで形成されるオレフィン類重合用触媒を用いて高立体規則性重合体を高収率で得る方法が開示されている。
【0004】
また、ハロゲン化アルミニウム化合物、マグネシウム化合物及びハロゲン化チタン化合物とを必須構成成分とする固体触媒成分、有機アルミニウム化合物及び有機酸エステルやケイ素化合物等の第三成分とからなるオレフィン類重合用触媒についても種々提案されており、例えば特開昭55−161807号公報においては、塩化マグネシウム、ハロゲン化チタン、有機酸エステル、ハロゲン化炭化水素化合物及びハロゲン化アルミニウム化合物及び有機酸エステルとで形成される触媒が提案され、特開昭61−31402号公報においては、ハロゲン化アルミニウム化合物とケイ素化合物との反応生成物をマグネシウム化合物と反応させ、次いでハロゲン化チタン化合物及びフタル酸エステルと反応させて得られる固体触媒成分、有機アルミニウム化合物及びケイ素化合物から得られる触媒を用いて高立体規則性重合体を高収率で得る方法がそれぞれ開示されている。
【0005】
上記の各従来技術は、プロピレンの重合用触媒として用いる際、生成重合体に残存する塩素やチタン等の触媒残渣を除去する、所謂、脱灰行程を省略し得る程に高活性な触媒成分の開発に端を発し、併せて立体規則性重合体の収率の向上や、重合時の重合活性の持続性を高めることに力を注いだものであり、その目的に関してはそれぞれ優れた成果を挙げている。
【0006】
一方、プロピレン重合体に関しては、例えば、特開平7−25946号公報に、沸騰n−ヘプタン不溶成分の結晶化度が高く、かつ高立体規則性を有し、しかも極めて長いメソ連鎖を有するプロピレン重合体が開示されている。
【0007】
上記の従来技術によるプロピレン重合体は、高い熱変形温度、融点、結晶化温度を有しており、剛性、耐熱性の面でそれなりの効果を挙げており、シート、フィルム等の押出し成形、ブロー成形、射出成形等幅広い用途に利用されている。しかしながら、ポリプロピレンの成形において未だ解決されていない課題が残されており、特にシート、フィルム等の押出し成形においては、上記のような剛性の高い重合体を使用すると高速成形時に破断したり、得られる成形品の透明性が損なわれるなどのトラブルが発生するという問題点があった。
【0008】
この問題を解決する手段として、プロピレン重合体の立体規則性を低下させ、加工エネルギーを低下させる方法が一般に知られているが、プロピレン重合体中に多量のアタクティックプロピレン重合体が含まれているため、逆に得られる製品の品質を損なうという問題があった。また、別の解決手段として少量のエチレンをコモノマーとして共存させるなどの方法が試みられているが、それによって生成重合体の結晶性あるいは密度をある程度コントロールすることは可能であるが、製造プロセスが繁雑になり、製品コストが上昇し、また同様に、立体規則性の極端に低いアタックチックポリプロピレンの発生率が高くなるというこのましからざる現象を誘発する。
さらに、プロピレン重合体の透明性を改良するため、特開平2−265905号公報、特開平2−29444号公報等において、生成したプロピレン重合体に種々の造刻剤を添加する方法が試みられている。しかしながら、造刻剤を添加することによって加工時に発生する臭気の問題や、また、造刻剤の分散性が不良なため透明性の改良はまだ不充分であった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
このように従来の技術ではかかる課題を解決するには十分ではなく、高立体規則性を有し、かつシート、フィルム成形時の加工性及び成形品の品質の優れたプロピレン単独重合体の開発が強く望まれていた。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、高い立体規則性を有していても高いアイソブロック含有率を有することにより加工性に優れた、特にシート、フィルムの成形性に優れ、これらの製造に有用なプロピレン単独重合体を見い出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
【0012】
【0013】
すなわち、本発明は、下記の成分(A)、(B)および(C)からなる触媒の存在下にプロピレンを重合するにあたり、事前に不活性炭化水素溶媒中にプロピレンを溶解して固体触媒成分(A)1g当たり、1〜20gの範囲の重合体が生成するように予備重合を行い、メルトフローレート(MFR) が0.1〜20g/10分の範囲にあり、キシレン溶解成分が6重量%以下であり、キシレン不溶成分中の13C−NMRスペクトルにおけるアイソブロック連鎖に起因する吸収強度であるPmmmr 、Pmmrr およびPmrrm から下記式(1)により求められるアイソブロック含有率[IB]が3モル%以上のプロピレン単独重合体を製造する方法である。
[IB]=[Pmmmr] +[Pmmrr] +[Pmrrm] …(1)
(式中、[Pmmmr] 、[Pmmrr] および[Pmrrm] は、各々、アイソブロック連鎖に起因する吸収強度であるPmmmr、Pmmrr およびPmrrm の相対強度比率(モル%)である。)
(A)下記(a) 〜(d) 成分を用いて調製されることを特徴とする固体触媒成分
(a) 一般式 Mg(OR1)2(式中、R1 は炭素数1から4のアルキル基またはアリール基を示す。)で表わされるマグネシウム化合物
(b) 下記一般式で表わされるアルミニウム化合物群の中から選択される少なくとも1種のアルミニウム化合物、
Al(OR2)mX1 3−m
(式中、R2は炭素数1から4のアルキル基またはアリール基、X1はハロゲン元素を示し、mは0≦m≦3である。)
R3 nAlX2 3−n
(式中、R3は炭素数1から4のアルキル基、X2は水素原子またはハロゲン元素を示し、nは0<n≦3である。)
(c) 一般式 Ti(OR4)pX3 4−P
(式中、R4は炭素数1から4のアルキル基、X3はハロゲン元素を示し、pは0または1から3の整数である。)で表わされるチタン化合物、および
(d) 芳香族ジカルボン酸ジエステル
(B)一般式 R5 qAlY3−q
(式中、R5は炭素数1から4のアルキル基、Yは水素、塩素、臭素、ヨウ素のいずれかであり、qは0<q≦3の実数である。)で表わされる有機アルミニウム化合物及び
(C)一般式 R6 rSi(OR7)4−r
( 式中、R6は炭素数1から12のアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、ビニル基、アリル基、アラルキル基のいずれかで、同一でも異なってもよい。R7は炭素数1から4のアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、ビニル基、アリル基、アラルキル基のいずれかで、同一でも異なってもよい。rは0または1〜3の整数である。)で表わされる有機ケイ素化合物。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0015】
本発明のポリプロピレン単独重合体とは、モノマーとしてプロピレンのみを重合させて得られた重合体であり、エチレン等のコモノマーと組み合わせて重合させて得られる共重合体とは区別されるものである。
【0016】
本発明のポリプロピレン単独重合体のメルトフローレートは0.1〜20g/10min.であり、好ましくは0.3〜15g/10min.、さらに好ましくは0.5〜10g/10min.である。なおメルトフローレート(MFR) は、JIS K6758 に準拠し230℃、2.16kg荷重の条件下に測定されるものである。
【0017】
また本発明のポリプロピレン単独重合体のキシレン溶解成分は6.0重量%以下であり、好ましくは2.0〜5.0重量%であり、さらに好ましくは、3.0〜5.0重量%である。
【0018】
さらに本発明のポリプロピレン単独重合体は、上記したように比較的高い立体規則性を有するにもかかわらず、キシレン不溶成分中のアイソブロック含有率[IB]が3モル%以上であり、好ましくは3.5モル%から20モル%であり、さらに好ましくは3.5モル%から10モル%である。ここで、「アイソブロック」なる語は、例えば下記式に示すように重合したプロピレンモノマー中のメチル基(モノマー単位欠陥)が、他の重合したプロピレンモノマー中のメチル基と異なった平面にあるようにポリマー鎖に単一の重合したモノマー単位欠陥を有するポリマーの結晶構造を意味する。(下記式中Meはメチル基(-CH3)を表わす。)このアイソブロックは他に、ステレオブロックあるいはアタブロック等の用語で定義されている(J.E.Ewen, Jarnal of American Chemical Society 106, 6355(1984)/ V.Busico, Macromolecules 27, 4521(1994)/V.Busico, Macromolecules 28, 1887(1995)/T.Keii, Y.Doi, Macromol. Chem., Rapid Commun. 2, 293(1981) )。
【0019】
【化1】
【0020】
上記(化1)式のなかでのm(meso) およびr(racemi) を示すと以下のようになり、また13C−NMRスペクトルにおける吸収強度であるPmmmr 、Pmmrr およびPmrrm に起因する構造単位はそれぞれ下記式(化2)に示す(i) 、(ii)および(iii) である。
【0021】
【化2】
【0022】
従って、上記のような結晶構造を有するアイソブロックの含有率[IB]は、13C−NMRスペクトルにおける吸収強度Pmmmr 、Pmmrr およびPmrrm から下記式(1)により求めることができる。
【0023】
[IB]=[Pmmmr] +[Pmmrr] +[Pmrrm] …(1)
(式中、[Pmmmr] 、[Pmmrr] および[Pmrrm] は、各々、13C−NMRスペクトルにおいて、アイソブロック連鎖に起因する吸収強度であるPmmmr 、Pmmrr およびPmrrm の全てのペンタドの吸収強度(Pmmmm,Pmmmr,Prmmr,Pmmrr,Prmrr,Pmmrm,Prmrm,Prrr,Pmrrr及びPmrrm )の合計に対する相対強度比率(モル%)である。)
【0024】
また、本発明のプロピレン単独重合体のダイナミック・ストレス・レオメータ(DSR )で測定した多分散性指数(PI)は、3.0〜8.0であり、好ましくは3.5〜8.0である。この多分散性指数(PI)はポリマーの分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)と相関関係にあるパラメータであり値が大きいほど加工性に優れていることを表す。
【0025】
さらに、本発明のプロピレン単独重合体の立体規則性の指標である沸騰n−ヘプタン抽出による不溶分は、90.0〜99.0wt%であり、好ましくは94.0〜98.0wt%、特に好ましくは94.5〜97.4wt%である。
【0026】
このような本発明のプロピレン単独重合体は、特に制限されるものではないが、例えばマグネシウム、チタン、ハロゲンおよび電子供与体を必須成分とする固体触媒成分(A) 、有機アルミニウム化合物(B) および有機ケイ素化合物(C) から形成されるオレフィン重合用触媒の存在下に、プロピレンを重合させることにより製造することができる。以下に本発明のプロピレン単独重合体の製造に使用されるオレフィン重合用触媒を形成する各成分について具体的に説明する。
【0027】
固体触媒成分(A) は、マグネシウム化合物、チタン化合物および電子供与体を接触させることにより調製することができ、より具体的には下記(a) 〜(d) 成分を用いて調製される。
(a) 一般式 Mg(OR1 )2 (式中、R1 は炭素数1から4のアルキル基またはアリール基を示す。)で表わされるマグネシウム化合物、
(b) 下記一般式で表わされるアルミニウム化合物群の中から選択される少なくとも1種のアルミニウム化合物、
Al(OR2 )m X1 3-m
(式中、R2 は炭素数1から4のアルキル基またはアリール基、X1 はハロゲン元素を示し、mは0≦m≦3である。)
R3 n AlX2 3-n
(式中、R3 は炭素数1から4のアルキル基、X2 は水素原子またはハロゲン元素を示し、nは0<n≦3である。)
(c) 一般式 Ti(OR4 )p X3 4-p
(式中、R4 は炭素数1から4のアルキル基、X3 はハロゲン元素を示し、pは0または1から3の整数である。)で表わされるチタン化合物、および
(d) 芳香族ジカルボン酸ジエステル
【0028】
上記固体触媒成分(A) (以下「(A) 成分」ということがある。)を構成する成分(a) 一般式 Mg(OR1 )2 (式中、R1 は炭素数1から4のアルキル基またはアリール基を示す。)で表わされるマグネシウム化合物(以下「成分(a) 」ということがある。)としては、ジアルコキシマグネシウムまたはジアリールオキシマグネシウムであり、具体的にはジメトキシマグネシウム、ジエトキシマグネシウム、ジ-n- プロポキシマグネシウム、ジ-iso- プロポキシマグネシウム、ジ-n- ブトキシマグネシウム、ジ-iso- ブトキシマグネシウム、ジフェノキシマグネシウム、エトキシメトキシマグネシウム、エトキシ-n- プロポキシマグネシウム、n-ブトキシエトキシマグネシウム、iso-ブトキシエトキシマグネシウム、ジフェノキシマグネシウム等の1種または2種以上を挙げることができるが、中でも、ジエトキシマグネシウムあるいはジ-n- プロポキシマグネシウムが好ましく用いられる。
【0029】
さらに、本発明において、固体触媒成分(A)の調製に用いられるジアルコキシマグネシウムは、顆粒状または粉末状であって、その形状は不定型あるいは球状のものが使用しうる。球状のジアルコキシマグネシウムを使用した場合、より良好な粒子形状でかつ狭い粒度分布を有する重合体粉末が得られ、重合操作時の生成重合体粉末の取扱操作性が向上し、生成重合体粉末に含まれる微粉が原因して起きる装置の閉塞等のトラブルが解消される。
【0030】
上記の球状のジアルコキシマグネシウムは、必ずしも真球である必要はなく、楕円あるいはじゃがいも状の形状のものが用いられる。具体的なその粒子の球形の度合は、長軸径lと短軸径wの比、l/wで表わすと、3以下であり、好ましくは1〜2であり、さらに好ましくは1〜1.5である。
また、上記ジアルコキシマグネシウムの平均粒径は、1ミクロン〜200ミクロンのものが使用しうるが、好ましくは5ミクロン〜150ミクロンである。
【0031】
上記球状のジアルコキシマグネシウムの場合、その平均粒径は1ミクロン〜100ミクロン、好ましくは5ミクロン〜50ミクロンであり、さらに好ましくは10ミクロン〜40ミクロンである。また、その粒度については、微粉または粗粉の少ない、粒度分布のシャープなものを使用することが望ましい。具体的には、5ミクロン以下の粒子が20%以下であり、好ましくは10%以下である。100ミクロン以上の粒子が10%以下であり、好ましくは5%以下である。さらにその粒度分布をln(D90/D10)(ここでD90は積算粒度で90%のところの粒径、D10は積算粒度で10%のところの粒径を表わす)で表わすと、3以下であり、好ましくは2以下である。
【0032】
上記マグネシウム化合物は、固体触媒成分(A)の調製に、必ずしも出発物質として使用する必要はなく、例えば固体触媒成分(A)の調製時に、金属マグネシウムと炭素数1から4の脂肪族1価アルコールを、沃素等の触媒の存在下に反応させて得られたものを使用してもよい。
【0033】
本発明の固体触媒成分(A) を調製する際に用いる成分(b) のアルミニウム化合物(以下、成分(b) ということがある。)は下記一般式I及びIIで表わされるアルミニウム化合物群の中から選択される少なくとも1種である。
Al(OR2 )m X1 3-m (一般式I)
(式中、R2 は炭素数1から4のアルキル基またはフェニル基などのアリール基好ましくは炭素数1から3のアルキル基を1から2個置換されたアラルキル基であり、mが2以上の場合R2 は同一又は異なり、X1 は塩素、臭素等のハロゲン元素を元素を示し、mは0≦m≦3の実数である。)
R3 n AlX2 3-n (一般式II)
(式中、R3 は炭素数1から4のアルキル基、X2 は水素原子またはハロゲン元素を示し、nは0<n≦3の実数である。nが2以上の場合、R3 は同じでも異なっていてもよい。)
【0034】
一般式Iで表わされるアルミニウム化合物としては、アルミニウムトリハライド、アルコキシアルミニウムジハライド、ジアルコキシアルミニウムハライド、トリアルコキシアルミニウムであり、これらの具体例としては、アルミニウムトリクロライド、アルミニウムトリブロマイド、アルミニウムトリアイオダイド、ジエトキシアルミニウムクロライド、ジ-iso- プロポキシアルミニウムクロライド、ジブトキシアルミニウムクロライド、エトキシアルミニウムジクロライド、iso-プロポキシアルミニウムジクロライド、ブトキシアルミニウムジクロライド、トリメトキシアルミニウム、トリエトキシアルミニウム、トリプロポキシアルミニウム、トリ-iso- プロポキシアルミニウム、トリブトキシアルミニウム、トリ-iso- ブトキシアルミニウムなどが挙げられ、中でも好ましい物質は、アルミニウムトリクロライド、ジ-iso- プロポキシアルミニウムクロライド、iso-プロポキシアルミニウムジクロライド、トリエトキシアルミニウム、トリ-iso- プロポキシアルミニウムである。
【0035】
一般式IIで表わされるアルミニウム化合物としては、トリアルキルアルミニウム、ジアルキルハイドライド、ジアルキルアルミニウムハライド及びアルキルアルミニウムジハライドであり、これらの具体例としては、トリエチルアルミニウム、トリ-iso- ブチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムハイドライド、ジ-iso- ブチルハイドライド、ジエチルアルミニウムクロライド、ジ-iso- ブチルアルミニウムクロライド、エチルアルミニウムジクロライド、プロピルアルミニウムジクロライド、エチルアルミニウムセスキクロライド、ブチルアルミニウムセスキクロライド等が挙げられるが、この中でも好ましくは、トリエチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロライド、エチルアルミニウムジクロライド、エチルアルミニウムセスキクロライドである。
【0036】
上記の成分(b) として、上記一般式I及び一般式IIの化合物群から選択される1種もしくは2種以上を用いることができる。該成分(b) は、直接他の成分と接触させるか、あるいはトルエンまたはキシレンのような芳香族炭化水素あるいはヘキサンまたはヘプタンのような脂肪族炭化水素等の有機溶媒に溶解し希釈して使用してもよい。
【0037】
次に、固体触媒成分(A) を調製する際に用いる成分(c) は、一般式、
Ti(OR4 )p X3 4-p
(式中、R4 は炭素数1から4のアルキル基、X3 は塩素、臭素等のハロゲン元素を示し、pは0または1から3の整数である。pが2以上の場合、R4 は同じでも異なっていてもよい。)で表わされるチタン化合物(以下「成分(c) 」ということがある。)であり、チタンハライドもしくはアルコキシチタンハライドである。具体的には、チタンテトラハライドとして、TiCl4 、TiBr4 、TiI4 、アルコキシチタンハライドとして、Ti(OCH3 )Cl3 、Ti(OC2 H5 )Cl3 、Ti(OC3 H7 )Cl3 、Ti(On−C4 H9 )Cl3 、Ti(OCH3 )2 Cl2 、Ti(OC2 H5 )2 Cl2 、Ti(OC3 H7 )2 Cl2 、Ti(On−C4 H9 )2 Cl2 、Ti(OCH3 )3 Cl、Ti(OC2 H5 )3 Cl、Ti(OC3 H7 )3 Cl、Ti(On−C4 H9 )3 Cl等が例示される。これらの中でも、チタンテトラハライドが好ましく、特に好ましくはTiCl4 である。これら上記のチタン化合物は1種もしくは2種以上使用してもよい。さらにまたこれらの成分(c) は、トルエンやキシレンのような芳香族炭化水素あるいはヘキサンやヘプタンのような脂肪族炭化水素等の有機溶媒に溶解し希釈して使用してもよい。
【0038】
固体触媒成分(A) を調製する際に用いる成分(d) の芳香族カルボン酸ジエステル(以下「成分(d) 」ということがある。)としては、特にフタル酸の炭素数1から12の直鎖状又は分岐鎖状のアルキルのジエステルが好適である。該ジエステルの具体例としては、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジ−n−プロピルフタレート、ジ−iso−プロピルフタレ−ト、ジ−n−ブチルフタレート、ジ−iso−ブチルフタレ−ト、エチルメチルフタレート、ブチルエチルフタレート、メチル(iso−プロピル)フタレート、エチル−n−プロピルフタレート、エチル−n−ブチルフタレ−ト、ジ−n−ペンチルフタレート、ジ−iso−ペンチルフタレート、ジ−n−ヘキシルフタレート、ジ−iso−ヘキシルフタレート、ジ−n−ヘプチルフタレート、ジ−iso−ヘプチルフタレート、ジ−n−オクチルフタレート、ビス(2−メチルヘキシル)フタレ−ト、ビス(2−エチルヘキシル)フタレ−ト、ジ−n−ノニルフタレート、ジ−isoデシルフタレート、ビス(2、2−ジメチルヘプチル)フタレ−ト、n−ブチル(iso−ヘキシル)フタレ−ト、エチル(iso−オクチル)フタレ−ト、n−ブチル(iso−オクチル)フタレ−ト、n−ペンチルヘキシルフタレート、n−ペンチル(iso−ヘキシル)フタレート、iso−ペンチル(ヘプチル)フタレート、n−ペンチル(iso−オクチル)フタレート、n−ペンチル(iso−ノニル)フタレート、iso−ペンチル(n−デシル)フタレート、n−ペンチル(ウンデシル)フタレート、iso−ペンチル(iso−ヘキシル)フタレート、n−ヘキシル(iso−オクチル)フタレート、n−ヘキシル(iso−ノニル)フタレート、n−ヘキシル(n−デシル)フタレート、n−ヘプチル(iso−オクチル)フタレート、n−ヘプチル(iso−ノニル)フタレート、n−ヘプチル(neo−デシル)フタレート、iso−オクチル(iso−ノニル)フタレートが例示され、これらの1種もしくは2種以上が使用される。これらのうち、ジエチルフタレート、ジ−n−ブチルフタレート、ジ−iso−ブチルフタレ−トあるいはビス(2−エチルヘキシル)フタレ−トが好ましく用いられる。
【0039】
また上記成分(d) を2種または3種以上用いる場合、その組み合わせに特に制限はないが、フタル酸ジエステルを用いる場合、1つのフタル酸ジエステルのアルキル基2個の合計炭素数と他の1つのフタル酸ジエステルのアルキル基2個の合計炭素数の差が4以上になるように選択して組み合わせることが好ましい。その組み合わせの具体例を示すと以下のようになる。
(1) ジエチルフタレートとジ−n−ブチルフタレート
(2) ジエチルフタレートとジ−iso−ブチルフタレ−ト
(3) ジエチルフタレートとジ−n−オクチルフタレート
(4) ジエチルフタレートとビス(2−エチルヘキシル)フタレ−ト
(5) ジ−n−ブチルフタレートとジ−n−オクチルフタレート
(6) ジ−n−ブチルフタレートとビス(2−エチルヘキシル)フタレ−ト
(7) ジエチルフタレートとジ−n−ブチルフタレートとビス(2−エチルヘキシル)フタレ−ト
(8) ジエチルフタレートとジ−iso−ブチルフタレートとビス(2−エチルヘキシル)フタレ−ト
【0040】
また、上記成分の他に固体触媒成分(A) を調製する際にポリシロキサン(以下「成分(e) 」ということがある。)を用いることもできる。該ポリシロキサンとしては、下記の一般式(化3)で表わされるポリシロキサン(以下成分(e) ということがある。)の1種又は2種以上である。
【0041】
【化3】
【0042】
一般式(化3)中、xは平均重合度を表わし、2から30,000であり、R8 からR15の主体はメチル基であり、ときにはR8 からR15の一部分はフェニル基、水素、高級脂肪酸残基、エポキシ含有基、ポリオキシアルキレン基で置換されたものであり、また上記一般式の化合物はR11及びR12がメチル基の環状ポリシロキサンを形成しているものを含む。)で表わされるポリシロキサン(以下成分(e) ということがある。)の1種又は2種以上である。
【0043】
該ポリシロキサンは、シリコーンオイルとも総称され、25℃粘度が2〜10,000センチストークス、好ましくは2〜1,000センチストークス、より好ましくは3〜500センチストークスを有する常温で液状あるいは粘稠状の鎖状、部分水素化、環状あるいは変性ポリシロキサンである。
【0044】
鎖状ポリシロキサンとしては、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサンが、部分水素化ポリシロキサンとして、水素化率10〜80%のメチルハイドロジェンポリシロキサンが、環状ポリシロキサンとして、ヘキサメチルシクロトリシリキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、2、4、6−トリメチルシクロトリシロキサン、2、4、6、8−テトラメチルシクロテトラシロキサンが、また変性ポリシロキサンとしては、例えば炭素数6〜30の高級脂肪酸基置換ジメチルシロキサン、エポキシ基置換ジメチルシロキサン、ポリオキシアルキレン基置換ジメチルシロキサンが例示される。
【0045】
各ポリシロキサンの具体例としては、商品名TSF 400、TSF 401、TSF 404、TSF 405、TSF 4045、TSF 410、TSF 411、TSF 433、TSF 437、TSF 4420、TSF 451−5A 、TSF 451−10A 、TSF 451−50A 、TSF 451−100、TSF 483、TSF 484(以上いずれも東芝シリコーン(株)製)、KF96、KF96L 、KF96H 、KF69、KF92、KF961、KF965、KF56、KF99、KF94、KF995、KF105、KF351、HIVAC-F 4、HIVAC-F 5(以上いずれも信越化学工業(株)製)が相当する。
【0046】
またこれらのポリシロキサンは、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタンのような有機溶媒に溶解して使用することもできる。
【0047】
固体触媒成分(A) は、成分(a) 、成分(b) 、成分(c) 、成分(d) または成分(e) を接触させることによって調製される。この接触は、不活性有機溶媒の不存在下で処理することも可能であるが、操作の容易性を考慮すると該溶媒の存在下で処理することが好ましい。用いられる不活性有機溶媒としては、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の飽和炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素、オルトジクロルベンゼン、塩化メチレン、四塩化炭素、ジクロルエタン等のハロゲン化炭化水素などが挙げられるが、中でも沸点が90〜150℃程度の芳香族炭化水素類、具体的にはトルエン、キシレン、エチルベンゼンが好ましく用いられる。
【0048】
各成分の使用量比は、成分(a) 1g に対し、成分(b) は0.01〜10g 、好ましくは0.05〜2.0g であり、成分(c) は0.01〜200ml、好ましくは0.5〜100mlであり、成分(d) は0.01〜1.0g 、好ましくは0.1〜0.5g であり、任意成分(e) は0.01〜5.0g 、好ましくは0.05〜1.0g である。また、不活性有機溶媒の使用量については特に制限はないが、操作上の問題を加味すると、成分(c) に対する容量比で0.1〜10の範囲が好ましい。なお、これらの成分は接触時に分割して添加したり、1種または2種以上を選択して用いることも可能である。
【0049】
各成分の接触は、不活性ガス雰囲気下、水分等を除去した状況下で、攪拌機を備えた容器中で攪拌しながら行われる。接触温度は、単に接触させて攪拌混合する場合や分散あるいは懸濁させて変成処理する場合には室温付近の比較的低温域であっても差し支えないが、接触後に反応させて生成物を得る場合には40〜130℃の温度域が好ましい。反応時の温度が40℃未満の場合は、十分な反応が進行せず、結果として調製された固体触媒成分の性能が不十分となり、130℃を超えると使用した溶媒の蒸発が顕著になるなどして、反応のコントロールが不安定となる。なお、反応時間は1分以上、好ましくは10分以上、より好ましくは30分以上である。
【0050】
固体触媒成分(A) を調製する際、成分(a) 、成分(b) 、成分(c) 、成分(d) または成分(e) を接触させるが、その接触順序に特に制限はなく任意であるが、各成分の接触順序を例示すると、以下の通りである。
1. 成分(a) 、(b) 、(c) 及び(d) を同時に接触させる。
2. 成分(a) 、(b) 、(c) 及び(d) を接触させて得られた固体生成物に、繰り返し成分(c) を接触させる。
3. 成分(a) 、(b) 及び(c) を予め接触させて得られた固体生成物に、成分(d) を接触させる。
4. 成分(a) 、(b) 及び(c) を予め接触させて得られた固体生成物に、成分(d) を接触させ、次いで繰り返し成分(c) を接触させる。
5. 成分(a) 、(c) 及び(d) を予め接触させて得られた固体生成物に、成分(b) を接触させる。
6. 成分(a) 、(c) 及び(d) を予め接触させて得られた固体生成物に、成分(b) を接触させ、次いで繰り返し成分(c) を接触させる。
7. 成分(a) 、(c) 及び(d) を予め接触させて得られた固体生成物に、成分(b) を接触させ、次いで繰り返し成分(b) 及び(c) を接触させる。
8. 成分(a) 、(b) 、(c) 及び(d) を予め接触させて得られた固体生成物に、繰り返し成分(b) 及び(c) を接触させる。
9. 成分(a) 、(b) 、(c) 、(d) 及び(e) を同時に接触させる。
10. 成分(a) 、(b) 、(c) 、(d) 及び(e) を接触させて得られた固体生成物に、繰り返し成分(c) を接触させる。
11. 成分(a) 、(b) 及び(c) を予め接触させて得られた固体生成物に、成分(d) 及び(e) を接触させる。
12. 成分(a) 、(b) 及び(c) を予め接触させて得られた固体生成物に、成分(d) 及び(e) を接触させ、次いで繰り返し成分(c) を接触させる。
13. 成分(a) 、(c) 、(d) 及び(e) を予め接触させて得られた固体生成物に、成分(b) を接触させる。
14. 成分(a) 、(c) 、(d) 及び(e) を予め接触させて得られた固体生成物に、成分(b) を接触させ、次いで繰り返し成分(c) を接触させる。
15. 成分(a) 、(c) 、(d) 及び(e) を予め接触させて得られた固体生成物に、成分(b) を接触させ、次いで繰り返し成分(b) 及び(c) を接触させる。
16. 成分(a) 、(b) 、(c) 、(d) 及び(e) を予め接触させて得られた固体生成物に、繰り返し成分(b) 及び(c) を接触させる。
【0051】
上記各成分の接触の順序で、成分(e) の接触順序は任意であるが、成分(a) 、(c) 、(d) を予め接触させて得られた固体生成物に接触させることが、高活性で、かつ高立体規則性と所定のアイソブロック含有率を維持しつつ重合体の微粉含有量を少なくするために好ましい。また上記接触の際、得られた固体生成物に、繰り返し成分(b) 及び/または成分(c) を接触させる場合の接触条件は、40〜130℃の温度域で1分以上、好ましくは10分以上、より好ましくは30分以上保持する。この際、成分(b) 及び成分(c) をそのまま添加する方法、あるいは前記の不活性有機溶媒で適宜に希釈して添加する方法があるが、後者の方法を用いることが好適である。前段の接触・反応によって得られた固体生成物を、前記の不活性有機溶媒で洗浄した後、繰り返し成分(b) 及び/または成分(c) と接触処理することも好ましい態様の一つである。
【0052】
固体触媒成分(A) の調製方法の具体例を以下に示す。
1.トルエンの如き芳香族炭化水素溶媒に成分(a) としてジエトキシマグネシウム及び成分(b) としてアルミニウムトリクロライドを温度域−10〜30℃で懸濁させ、該懸濁液中に成分(c) として四塩化チタンを添加する。この際四塩化チタンの量は成分(a) を懸濁させた溶媒に対して容量比で1/2以下であることが好ましい。該懸濁液を昇温し、40〜100℃の温度域で成分(d) としてジブチルフタレートを該懸濁液に添加し、さらにジエチルフタレートを温度域60〜80℃で添加し、ついで成分(e) としてジメチルポリシロキサンを添加する。さらに昇温し、温度域100〜120℃で30分から3時間保持し、反応させ固体生成物を得る。該固体生成物をトルエンに希釈した四塩化チタンで洗浄し、さらにトルエンで洗浄する。このときの温度は40〜130℃の温度域で1分以上である。さらにトルエン及び四塩化チタンを該固体生成物に添加・接触し、昇温し、温度域100〜120℃で30分から3時間保持し反応させる。このとき再度成分(b) としてアルミニウムトリクロライドを添加させることもできる。最後にヘプタンで該固体生成物を洗浄し、固体触媒成分(A) を得る。
2.トルエンの如き芳香族炭化水素溶媒に成分(a) としてジエトキシマグネシウムを温度域−10〜30℃で懸濁させ、成分(c) として四塩化チタンを添加する。この際四塩化チタンの量は成分(a) を懸濁させた溶媒に対して容量比で1/2以下であることが好ましい。次いで成分(d) としてジ−iso−オクチルフタレートを温度域30〜60℃で該懸濁液に添加し、さらにジエチルフタレートを温度域60〜80℃で添加する。さらに該懸濁液を昇温し、成分(e) としてジメチルポリシロキサンを温度域80〜100℃で添加し、さらに昇温し、温度域100〜120℃で30分から3時間保持し、反応させ固体生成物を得る。該固体生成物をトルエンに希釈した四塩化チタンで洗浄し、さらにトルエンで洗浄する。このときの温度は40〜130℃の温度域で1分以上である。次に該固体生成物に成分(b) としてアルミニウムトリクロライドを添加し接触させるが、このとき該成分(b) を均一に接触させるためにトルエン等の有機溶媒に溶解させて添加・接触させることが好ましい。さらに四塩化チタンを添加し、その後昇温し、温度域100〜120℃で30分から3時間保持し反応させ、ヘプタンで該固体生成物を洗浄し、固体触媒成分(A) を得る。
【0053】
以上の如くして調製された本発明の固体触媒成分(A) は、ヘプタン等の不活性有機溶媒で洗浄することが未反応物質を除去する上で好ましく、洗浄後乾燥するか、もしくはまた洗浄後そのままで、後記(B) 成分及び(C) 成分と組み合わせて本発明のオレフィン類重合用触媒を形成する。
【0054】
次に、オレフィン重合用触媒を構成する有機アルミニウム化合物(B)としては、一般式
R5 q AlY3-q
(式中、R5 は炭素数1から4のアルキル基、Yは水素、塩素、臭素、ヨウ素のいずれかであり、qは0<q≦3の実数である。qが2以上の場合、R5 は同じでも異なっていてもよい。)で表される有機アルミニウム化合物が用いられる。
【0055】
このような有機アルミニウム化合物(B)としては、トリエチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロライド、トリ−iso−ブチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムブロマイド、エチルアルミニウムヒドリド等が挙げられ、1種あるいは2種以上使用できる。好ましくはトリエチルアルミニウム、トリ−iso−ブチルアルミニウムである。
【0056】
さらに、オレフィン重合用触媒を構成する有機ケイ素化合物(C)としては、一般式
R6 r Si( OR7 )4-r
(式中、R6 は炭素数1から12のアルキル基、シクロアルキル基(好ましくは 炭素数3〜6のシクロアルキル基)、フェニル基、ビニル基、アリル基、アラルキル基のいずれかで、同一でも異なってもよい。R7 は炭素数1から4のアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、ビニル基、アリル基、アラルキル基のいずれかで、同一でも異なってもよい。rは0または1〜3の整数である。)で表わされる有機ケイ素化合物が用いられる。
【0057】
このような有機ケイ素化合物(C) としては、フェニルアルコキシシラン、アルキルアルコキシシラン、フェニルアルキルアルコキシシラン、シクロアルキルアルコキシシラン、シクロアルキルアルキルアルコキシシラン、アルコキシシランなどを挙げることができる。
【0058】
上記有機ケイ素化合物(C) を具体的に例示すると、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリ−n−プロピルメトキシシラン、トリ−n−プロピルエトキシシラン、トリ−n−ブチルメトキシシラン、トリ−iso−ブチルメトキシシラン、トリ−t−ブチルメトキシシラン、トリ−n−ブチルエトキシシラン、トリシクロヘキシルメトキシシラン、トリシクロヘキシルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジ−n−プロピルジメトキシシラン、ジ−iso−プロピルジメトキシシラン、ジ−n−プロピルジエトキシシラン、ジ−iso−プロピルジエトキシシラン、ジ−n−ブチルジメトキシシラン、ジ−iso−ブチルジメトキシシラン、ジ−t−ブチルジメトキシシラン、t−ブチルメチルジメトキシシラン、t−ブチルエチルジメトキシシラン、ジ−n−ブチルジエトキシシラン、n−ブチルメチルジメトキシシラン、ビス(2−エチルヘキシル)ジメトキシシラン、ビス(2−エチルヘキシル)ジエトキシシラン、ジシクロヘキシルジメトキシシラン、ジシクロヘキシルジエトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジエトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジエトキシシラン、シクロヘキシルエチルジメトキシシラン、シクロヘキシル(iso−プロピル)ジメトキシシラン、シクロヘキシルエチルジエトキシシラン、シクロペンチルメチルジメトキシシラン、シクロペンチルメチルジエトキシシラン、シクロペンチルエチルジエトキシシラン、シクロペンチル(iso−プロピル)ジメトキシシラン、シクロヘキシル(n−ペンチル)ジメトキシシラン、シクロヘキシル(n−ペンチル)ジエトキシシラン、シクロペンチル(iso−ブチル)ジメトキシシラン、シクロヘキシル(n−プロピル)ジメトキシシラン、シクロヘキシル(n−プロピル)ジエトキシシラン、シクロヘキシル(iso−プロピル)ジエトキシシラン、シクロヘキシル(n−ブチル)ジメトキシシラン、シクロヘキシル(n−ブチル)ジエトキシシラン、シクロヘキシル(iso−ブチル)ジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン、フェニルエチルジメトキシシラン、フェニルエチルジエトキシシラン、シクロヘキシルジメチルメトキシシラン、シクロヘキシルジメチルエトキシシラン、シクロヘキシルジエチルメトキシシラン、シクロヘキシルジエチルエトキシシラン、2−エチルヘキシルトリメトキシシラン、2−エチルヘキシルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、iso−プロピルトリメトキシシラン、iso−プロピルトリエトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、iso−ブチルトリメトキシシラン、t−ブチルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、シクロペンチルトリメトキシシラン、シクロペンチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2−エチルヘキシルトリメトキシシラン、2−エチルヘキシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、シクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシラン、シクロヘキシルシクロペンチルジエトキシシラン、シクロヘキシルシクロペンチルジプロポキシシラン、3−メチルシクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシラン、4−メチルシクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシラン、3、5−ジメチルシクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシラン、3−メチルシクロヘキシルシクロヘキシルジメトキシシラン、ビス(3−メチルシクロヘキシル)ジメトキシシラン、4−メチルシクロヘキシルシクロヘキシルジメトキシシラン、ビス(4−メチルシクロヘキシル)ジメトキシシラン、3、5−ジメトキシシクロヘキシルシクロヘキシルジメトキシシラン、ビス(3、5−ジメチルシクロヘキシル)ジメトキシシラン等である。
【0059】
上記の中でも、ジ−n−プロピルジメトキシシラン、ジ−iso−プロピルジメトキシシラン、ジ−n−ブチルジメトキシシラン、ジ−iso−ブチルジメトキシシラン、ジ−t−ブチルジメトキシシラン、ジ−n−ブチルジエトキシシラン、t−ブチルトリメトキシシラン、ジシクロヘキシルジメトキシシラン、ジシクロヘキシルジエトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジエトキシシラン、シクロヘキシルエチルジメトキシシラン、シクロヘキシルエチルジエトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジエトキシシラン、シクロペンチルメチルジメトキシシラン、シクロペンチルメチルジエトキシシラン、シクロペンチルエチルジエトキシシラン、シクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシラン、シクロヘキシルシクロペンチルジエトキシシラン、3−メチルシクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシラン、4−メチルシクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシラン、3、5−ジメチルシクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシランが好ましく用いられ、該有機ケイ素化合物(C)は、1種あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0060】
本発明のプロピレン単独重合体の製造において、前記した固体触媒成分(A)、有機アルミニウム化合物(B)および有機ケイ素化合物(C)よりなる触媒存在下に、プロピレンの重合を行うが、各成分の使用量比は、本発明の効果に影響を及ぼすことのない限り任意であり、特に限定されるものではないが、通常有機アルミニウム化合物(B)は固体触媒成分(A)中のチタン原子のモル当たり、モル比で1〜1,000、好ましくは50〜500、有機ケイ素化合物(C)は、(B)成分のモル当たり、モル比で0.001〜2、好ましくは0.01〜0.5の範囲で用いられる。
【0061】
上記オレフィン類重合用触媒では上記に示した固体触媒成分(A)、有機アルミニウム化合物(B)および有機ケイ素化合物(C)とで構成されるが、重合時の電子供与体(外部電子供与体)として、上記の有機ケイ素化合物(C)と併せて酸素あるいは窒素を含有する有機化合物が使用しうる。その具体例としては、例えばアルコール類、フェノール類、エーテル類、エステル類、ケトン類、酸ハライド類、アルデヒド類、アミン類、アミド類、ニトリル類、イソシアネート類、などが挙げられる。
【0062】
より具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、オクタノール、2−エチルヘキサノール、ドデカノール等のアルコール類、フェノール、クレゾール等のフェノール類、メチルエーテル、エチルエーテル、プロピルエーテル、ブチルエーテル、アミルエーテル、ジフェニルエーテル等のエーテル類、ギ酸メチル、酢酸エチル、酢酸ビニル、酢酸プロピル、酢酸オクチル、酢酸シクロヘキシル、プロピオン酸エチル、酪酸エチル、メチルベンゾエート、エチルベンゾエート、プロピルベンゾエート、ブチルベンゾエート、オクチルベンゾエート、シクロヘキシルベンゾエート、フェニルベンゾエート、p-トルイル酸メチル、p-トルイル酸エチル、p-メトキシエチルベンゾエート、p-エトキシエチルベンゾエート、アニス酸メチル、アニス酸エチル等のモノカルボン酸エステル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル、アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジプロピル、アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジ−iso−デシル、アジピン酸ジオクチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジプロピル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジペンチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジノニル、フタル酸ジデシル等のジカルボン酸エステル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、アセトフェノン、ベンゾフェノン等のケトン類、フタル酸ジクロライド、テレフタル酸ジクロライド等の酸ハライド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、オクチルアルデヒド、ベンズアルデヒド等のアルデヒド類、メチルアミン、エチルアミン、トリブチルアミン、ピペリジン、アニリン、ピリジン等のアミン類、アセトニトリル、ベンゾニトリル、トルニトリル等のニトリル類などを例示することができる。
【0063】
さらに、上記固体触媒成分(A)、有機アルミニウム化合物(B)および有機ケイ素化合物(C)よりなる触媒を用いて行うプロピレンの重合(本重合とも言う)にあたり、触媒活性、立体規則性および生成する重合体の粒子性状等を一層改善させるためには、重合に先立ち、プロピレンによる予備重合を行うのが好ましい。
【0064】
予備重合においては、前記固体触媒成分(A)を前記有機アルミニウム化合物(B)の一部を組合せて用いる。またこの際、前記有機ケイ素化合物(C)の全部または一部をこれらの成分と組合わせて用いることもできる。予備重合を行う際の各成分の接触順序については任意であるが、好ましくは予備重合系内に先ず有機アルミニウム化合物(B)を装入し、次に固体成分触媒(A)を接触させた後、プロピレンを接触させる。有機ケイ素化合物(C)を組合せて行う場合においては、予備重合系内に先ず有機アルミニウム化合物(B)を装入し、次に有機ケイ素化合物(C)を接触させ、さらに固体触媒成分(A)を接触された後、プロピレンを接触させることが好ましい。
上記のような組合せ触媒を用いプロピレンの予備重合を行うが、その際、不活性炭化水素溶媒の存在下に行う。不活性炭化水素溶媒としては、プロパン、ブタン、ヘプタン、ヘキサン、オクタン、デカン、ドデカン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、あるいはミネラルオイル等が用いられ、このなかでも、ヘキサン、ヘプタンのような脂肪族炭化水素が好ましく用いられる。
【0065】
上記の予備重合は窒素あるいはアルゴン等の不活性ガス、あるいはプロピレンの雰囲気中で行う。上記のような不活性炭化水素溶媒の存在下で予備重合を行う場合、事前にその溶媒中にプロピレンを少量溶解しておく。具体的には、プロピレンを固体触媒成分(A)1g 当たり0.01〜1.0g 、好ましくは0.03〜0.5g 、さらに好ましくは0.05〜0.3g 不活性炭化水素溶媒に溶解する。このとき、溶媒に溶解するプロピレンの量は、予備重合で最終的に生成させる重合体量の1〜50%、好ましくは3〜30%、さらに好ましくは5〜15%である。このように最初に溶媒中にプロピレンを溶解させ、このなかに有機アルミニウム化合物(B)、場合により次に有機ケイ素化合物(C)、次に固体触媒成分(A)を装入し接触させた後、所定量のプロピレンを接触させ予備重合を行う。
上記のように予備重合する際、有機アルミニウム化合物(B)は、固体触媒成分(A)中のチタン原子当たり0.5〜50モル、好ましくは1〜25モル、さらに好ましくは2〜10モルと本重合で使用する有機アルミニウム化合物(B)の量より少ない量で使用することが望ましい。又有機ケイ素化合物(C)を予備重合に用いる場合、その使用量は固体触媒成分(A)中のチタン原子当たり0〜10モル、好ましくは0〜5モル、さらに好ましくは0〜1モルの範囲である。
【0066】
予備重合における固体触媒成分(A)の濃度は、上述した不活性炭化水素溶媒1リットル当たり、0.01〜50g 、好ましくは0.05〜30g 、さらに好ましくは0.1〜15g の範囲とすることが望ましい。予備重合を行う際の温度については、0〜40℃、好ましくは5〜35℃、さらに好ましくは10〜30℃である。また予備重合の際の反応時間については、所定量の重合体が生成しうる程度の時間がとりうるが、通常0.1〜10時間、好ましくは0.5〜2時間である。さらに予備重合は、固体触媒成分(A)1g 当たり、1〜20g 、好ましくは1.5〜15g 、さらに好ましくは2〜10g の範囲の重合体が生成するように行うことが望ましい。
【0067】
上記のようにして予備重合を行った後、この予備重合触媒、有機アルミニウム化合物(B)および有機ケイ素化合物(C)から形成される重合触媒の存在下にプロピレンの本重合を行う。
【0068】
重合は、スラリー重合、液化重合または気相重合で行われ、重合時に分子量調節剤として水素を用いることも可能である。重合温度は200℃以下、好ましくは100℃以下であり、重合圧力は10MPa以下、好ましくは5MPa以下、より好ましくは3MPa以下である。
【0069】
上記のようにして得られた本発明のプロピレン単独重合体には、必要に応じて通常のプロピレン重合体に使用される各種添加剤、例えば酸化防止剤、帯電防止剤、滑剤、紫外線吸収剤、光安定剤、難燃剤、アンチブロッキング剤、充填剤等を添加することができる。
さらに本発明のプロピレン単独重合体は射出成形、押し出し成形、ブロー成形、延伸等による射出成形品、無延伸フィルム、延伸フィルム、延伸シート等の成形品の原料として供される。特に本発明のプロピレン単独重合体はシートおよびフィルムの成形に好適であり、シート成形についてはT−ダイ・ロール成形、インフレーション成形等で成形され、またフィルム成形については空冷インフレーション、空冷二段冷却インフレーション成形、T−ダイフィルム成形、水冷インフレーション成形等で加工される。このように本願プロピレン単独重合体を用いて加工することにより、透明性、アンチブロッキング性等に優れたシートまたはフィルムを得ることができる。
【0070】
なお、キシレン溶解成分(XS)、キシレン不溶成分中のアイソブロック含有率(IB)および多分散性指数(PI)は以下の方法で測定した。
【0071】
(1)キシレン溶解成分の測定方法
4.0g のポリマーを200mlのパラキシレンに装入し、沸点下(138℃)で2時間かけてポリマーを溶解した。その後23℃まで冷却し、溶解成分と不溶解成分とをろ過分別した。その溶解成分を加熱乾燥し、得られたポリマーをキシレン溶解成分(XS)とした(重量%)。
【0072】
(2)キシレン不溶成分中の13C−NMRスペクトルによるアイソブロック含有率の測定方法
上記(1)の不溶解成分を乾燥し、得られたポリマーのアイソブロック含有率を測定した。測定は日本電子(株)製のJNM-GSX270を用いて行い、キシレン不溶成分中の13C−NMRスペクトルにおけるアイソブロック連鎖に起因する吸収強度であるPmmmr 、Pmmrr およびPmrrm のそれぞれのシグナルは、A.ZambelliらのMacromolecules, 13, 267, (1980) で帰属した。測定条件を以下に示す。
測定モード :プロトンデカップリング法(SGBCM)
パルス角度 :45°(8.25 μs)
パルス繰り返し時間 :7秒
積算回数 :10000回
溶媒 :1,2,4-トリクロロベンゼンと重ベンゼンの混合液(70/30 容量%)
内部標準 :ヘキサメチルジシロキサン
測定濃度 :200mg/3.0ml溶媒
測定温度 :120℃
【0073】
(3)多分散性指数(PI)のDSR での測定方法
RHEOMETRICS 社製のダイナミック・ストレス・レオメータ(DSR) SR-500を用い、以下の条件で測定した。なお、試料には熱による劣化防止のため、配合剤を添加した。
以上を全て混合しスラリー状にしたものをポリマーに配合する。
配合比 :ポリマー5g に対し、配合剤(スラリー)5ml添加
【0074】
【実施例】
以下、本発明を実施例並びに比較例により、更に具体的に説明する。
【0075】
比較例1
<固体触媒成分の調製>
窒素ガスで十分に置換され、撹拌機を具備した容量500mlの丸底フラスコにジエトキシマグネシウム10g 、三塩化アルミニウム1.5g 及びトルエン90mlを挿入し、懸濁状態とした。この中に室温の四塩化チタン22mlを装入し、撹拌しながら80℃まで昇温して反応させた。次いでジ-n- ブチルフタレート3.3ml及び室温での粘度が50cst のジメチルポリシロキサン3.0mlを添加後、さらに系内の温度を110℃に昇温して2時間反応させた。反応終了後、上澄み液を除去し、トルエン88mlを用いて75℃で3回洗浄した。その後トルエン89ml及び四塩化チタン22mlを新たに加え、100℃で1.5時間撹拌しながら処理し、その後40℃のn−ヘプタン83mlで8回洗浄して固体触媒成分を得た。この固体触媒成分中のTi含有量を測定したところ、3.3wt% であった。また、Al含有量は0.5wt% であった。
【0076】
<重合用触媒の形成及び重合>
窒素ガスで十分に乾燥し、次いでプロピレンガスで置換された内容積1800mlの攪拌装置付きステンレス製オートクレーブに、n−ヘプタン700mlを装入し、プロピレンガス雰囲気下に保ちつつ、トリエチルアルミニウム2.10mmol、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン0.21mmol及び前記固体触媒成分をTiとして0.0053mmol装入し、重合用触媒を形成した。次いで、0.2MPa のプロピレン圧をかけ、攪拌を保ちながら20℃で30分間予備的な重合を行った。その後、80mlの水素を装入し、系内のプロピレン圧を0.7MPa として70℃で2時間重合を継続した。なお、重合が進行するにつれて低下する圧力は、プロピレンのみを連続的に供給することにより補い、重合中一定の圧力に保持した。上記重合方法に従い、プロピレンの重合を行い、生成された重合体をろ別し、減圧乾燥して固体重合体を得た。
一方、ろ液を凝縮して重合溶媒に溶存する重合体を得、その量を(A) とし、固体重合体の量を(B) とする。また、得られた固体重合体を沸騰n−ヘプタンで6時間抽出し、n−ヘプタンに不溶解の重合体を得、この量を(C) とする。
固体触媒成分当たりの重合活性(Y) を下記式で表す。
(Y)=[(A)+(B)](g)/固体触媒成分量(g)
また、沸騰n−ヘプタン不溶成分率(HI)を下記式で表わす。
(HI)=(C)(g)/(B)(g)
さらに、生成固体重合体(B)のメルトフローレート(MFR) 、嵩比重(BD)、キシレン溶解成分(XS)、キシレン不溶成分中のアイソブロック含有率(IB)および多分散性指数(PI)を測定したところ、表1に示すような結果が得られた。
【0077】
比較例2
<固体触媒成分の調製>
窒素ガスで十分に置換され、撹拌機を具備した容量500mlの丸底フラスコにジエトキシマグネシウム10g 、三塩化アルミニウム1.0g 及びトルエン90mlを挿入し、懸濁状態とした。この中に室温の四塩化チタン20mlを装入し、撹拌しながら50℃まで昇温して反応させた。次いでジ-iso- オクチルフタレート4.5mlを添加後、さらに系内の温度を110℃に昇温して室温での粘度が50cst のジメチルポリシロキサン4.0mlを添加後、2時間反応させた。反応終了後、上澄み液を除去し、トルエン88mlを用いて75℃で3回洗浄した。その後トルエン80ml、三塩化アルミニウム1.0g 及び四塩化チタン30mlを新たに加え、105℃で2時間撹拌しながら反応させた。その後、40℃のn−ヘプタン80mlで8回洗浄して固体触媒成分を得た。この固体触媒成分中のTi含有量を測定したところ、2.9wt% であった。また、Al含有量は0.8wt% であった。
【0078】
<重合用触媒の形成及び重合>
シクロヘキシルメチルジメトキシシランの代わりに、ジフェニルジメトキシシランを使用すること以外は比較例1と同様にプロピレンの重合を行い、評価したところ、表1に示すような結果が得られた。
【0079】
比較例3
<固体触媒成分の調製>
窒素ガスで十分に置換され、撹拌機を具備した容量500mlの丸底フラスコにジエトキシマグネシウム10g 、三塩化アルミニウム0.8g 及びトルエン90mlを挿入し、懸濁状態とした。この中に室温の四塩化チタン22mlを装入し、撹拌しながら80℃まで昇温して反応させた。次いでジ-iso- オクチルフタレート4.8mlを添加後、さらに系内の温度を110℃に昇温して室温での粘度が100cst のジメチルポリシロキサン6.0mlを添加後、2時間反応させた。反応終了後、上澄み液を除去し、トルエン88mlを用いて75℃で3回洗浄した。その後トルエン89ml、三塩化アルミニウム0.8g 及び四塩化チタン22mlを新たに加え、100℃で1.5時間撹拌しながら反応させた。その後、40℃のn−ヘプタン83mlで8回洗浄して固体触媒成分を得た。この固体触媒成分中のTi含有量を測定したところ、2.5wt% であった。また、Al含有量は0.8wt% であった。
【0080】
<重合用触媒の形成及び重合>
シクロヘキシルメチルジメトキシシランの代わりに、シクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシランを使用すること以外は比較例1と同様にプロピレンの重合を行い、評価したところ、表1に示すような結果が得られた。
【0081】
比較例4
<固体触媒成分の調製>
窒素ガスで十分に置換され、撹拌機を具備した容量500mlの丸底フラスコにジエトキシマグネシウム10g 及びトルエン80mlを挿入し、懸濁状態とした。この中に室温の四塩化チタン20mlを装入し、撹拌しながら50℃まで昇温して反応させた。次いでジ-iso- オクチルフタレート5.2mlを添加後、さらに昇温し、70℃でジエチルフタレート0.2mlを添加し、ついで室温での粘度が100cst のジメチルポリシロキサン4.0mlを添加後、さらに系内の温度を112℃に昇温して2時間反応させた。反応終了後、上澄み液を除去し、トルエン80ml及び四塩化チタン20mlを用いて100℃で15分処理し、さらにトルエン100mlを用いて3回洗浄した。その後トリ−iso−プロポキシアルミニウム0.8g 、トルエン80ml及び四塩化チタン20mlを新たに加え、100℃で2時間撹拌しながら反応させた。その後、40℃のn−ヘプタン100mlで8回洗浄して固体触媒成分を得た。この固体触媒成分中のTi含有量を測定したところ、4.2wt% であった。また、Al含有量は1.1wt% であった。
【0082】
<重合用触媒の形成及び重合>
上記のようにして得られた固体触媒成分を用いた以外は比較例1と同様に重合用触媒を形成し、プロピレンの重合を行い、評価したところ、表1に示すような結果が得られた。
【0083】
比較例5
<固体触媒成分の調製>
窒素ガスで十分に置換され、撹拌機を具備した容量500mlの丸底フラスコにジエトキシマグネシウム10g 及びトルエン80mlを挿入し、懸濁状態とした。この中に室温の四塩化チタン20mlを装入し、撹拌しながら50℃まで昇温して反応させた。次いでジ-iso- オクチルフタレート5.2mlを添加後、さらに昇温し、70℃でジエチルフタレート0.2mlを添加し、ついで室温での粘度が100cst のジメチルポリシロキサン4.0mlを添加後、さらに系内の温度を112℃に昇温して2時間反応させた。反応終了後、上澄み液を除去し、トルエン80ml、四塩化チタン20ml及びジエチルアルミニウムクロライド0.5g を装入し、110℃で30分処理した。上澄み液を除去した後、さらにトルエン100mlを用いて3回洗浄した。その後トルエン80ml及び四塩化チタン20mlを新たに加え、100℃で2時間撹拌しながら反応させた。その後、40℃のn−ヘプタン100mlで8回洗浄して固体触媒成分を得た。この固体触媒成分中のTi含有量を測定したところ、5.9wt% であった。また、Al含有量は1.8wt% であった。
【0084】
<重合用触媒の形成及び重合>
上記のようにして得られた固体触媒成分を用いた以外は比較例1と同様に重合用触媒を形成し、プロピレンの重合を行い、評価したところ、表1に示すような結果が得られた。
【0085】
比較例6
トリ−iso−プロポキシアルミニウムの代わりにトリエトキシアルミニウム1.0g を用いたこと以外は比較例4と同様にして固体触媒成分の調製を実施し、重合を行い、評価したところ、表1に示すような結果が得られた。
【0086】
比較例7
トリ−iso−プロポキシアルミニウムの代わりに三塩化アルミニウム0.5g 及びトリ−iso−プロポキシアルミニウム0.5g の混合物を用いたこと以外は比較例4と同様にして固体触媒成分の調製を実施し、重合を行い、評価したところ、表1に示すような結果が得られた。
【0087】
比較例8
ジメチルポリシロキサンを使用しなかったこと以外は、比較例2と同様にして固体触媒成分の調製及び重合を実施した。得られた結果を表1に併載した。
【0088】
比較例9
三塩化アルミニウム及びジメチルポリシロキサンを使用していないこと以外は比較例1と同様にして、固体触媒成分の調製及び重合を実施した。得られた結果を表1に併載した。
【0089】
【表1】
【0090】
実施例1
比較例1で調整した固体触媒成分を用い以下のように予備重合および本重合を行い、プロピレン単独重合体を得た。
<予備重合>
窒素ガスで十分に乾燥し、次いでプロピレンガスで置換された内容積1500mlの攪拌装置付きステンレス製オートクレーブに、n−ヘプタン300mlを装入し、プロピレンガスを50ml導入しプロピレンをn−ヘプタンに溶解させた。次に、トリエチルアルミニウム0.80mmolを装入し、30分攪拌した。その後前記固体触媒成分をTiとして0.12mmol装入し、次いで、プロピレンを連続的に導入し、攪拌を保ちながら30℃で60分重合を行った。生成重合体量は固体触媒成分1g 当たり4.8gであった。
【0091】
<本重合>
窒素ガスで十分に乾燥し、次いでプロピレンガスで置換された内容積1800mlの撹拌装置付きステンレス製オートクレーブに、n−ヘプタン700mlを装入し、プロピレンガス雰囲気下に保ちつつ、トリエチルアルミニウム2.10mmol、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン0.21mmol及び前記予備重合触媒をTiとして0.0053mmol装入し、重合用触媒を形成した。その後、150mlの水素を装入し、系内のプロピレン圧を1.1MPa として70°C で4時間重合を継続した。なお、重合が進行するにつれて低下する圧力は、プロピレンのみを連続的に供給することにより補い、重合中一定の圧力に保持した。上記重合方法に従い、プロピレンの重合を行い、生成された重合体をろ別し、減圧乾燥して固体重合体を得、評価したところ表2の示すような結果が得られた。
【0092】
実施例2
比較例2で調整した固体触媒成分を用い、予備重合時におけるトリエチルアルミニウムの使用量を0.20mmolとし、予備重合を行った以外は実施例1と同様にしてプロピレン重合を行い、評価したところ、表2に示すような結果が得られた。
【0093】
実施例3
比較例3で調整した固体触媒成分を用い、予備重合時におけるトリエチルアルミニウムの使用量を3.3mmol、固体触媒成分の使用量をTiとして0.83mmolとし、予備重合を行った以外は実施例1と同様にしてプロピレン重合を行い、評価したところ、表2に示すような結果が得られた。
【0094】
実施例4
比較例4で調整した固体触媒成分を用い、予備重合時におけるトリエチルアルミニウムの添加後にシクロヘキシルメチルジメトキシランを0.048mmol添加し予備重合を行った以外は実施例1と同様にしてプロピレン重合を行い、評価したところ、表2に示すような結果が得られた。
【0095】
比較例10
比較例9で用いた固体触媒成分を用いた以外は、実施例1と同様にして、予備重合及び本重合を実施した。得られた結果を表2に併載した。
【0096】
【表2】
【0097】
【発明の効果】
以上から明らかなように、本発明によって得られたプロピレン単独重合体は、メルトフローレート(MFR) が0.1〜20g/10分の範囲にあり、キシレン不溶成分が少なく、かつキシレン不溶成分中のアイソブロック含有率(IB)が極めて高い値を示す。従って、エチレンのコモノマーを共存させる等の解決手段を要せずに、シートやフイルム等の加工に好適なプロピレン単独重合体を提供し得る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の構成を模式的に例示するフローチャートである。
Claims (3)
- 下記の成分(A)、(B)および(C)からなる触媒の存在下にプロピレンを重合するにあたり、事前に不活性炭化水素溶媒中にプロピレンを溶解して固体触媒成分(A)1g当たり、1〜20gの範囲の重合体が生成するように予備重合を行い、メルトフローレート(MFR) が0.1〜20g/10分の範囲にあり、キシレン溶解成分が6重量%以下であり、キシレン不溶成分中の13C−NMRスペクトルにおけるアイソブロック連鎖に起因する吸収強度であるPmmmr 、Pmmrr およびPmrrm から下記式(1)により求められるアイソブロック含有率[IB]が3モル%以上のプロピレン単独重合体を製造する方法。
[IB]=[Pmmmr] +[Pmmrr] +[Pmrrm] …(1)
(式中、[Pmmmr] 、[Pmmrr] および[Pmrrm] は、各々、アイソブロック連鎖に起因する吸収強度であるPmmmr、Pmmrr およびPmrrm の相対強度比率(モル%)である。)
(A)下記(a) 〜(d) 成分を用いて調製されることを特徴とする固体触媒成分
(a) 一般式 Mg(OR1)2(式中、R1 は炭素数1から4のアルキル基またはアリール基を示す。)で表わされるマグネシウム化合物
(b) 下記一般式で表わされるアルミニウム化合物群の中から選択される少なくとも1種のアルミニウム化合物、
Al(OR2)mX1 3−m
(式中、R2は炭素数1から4のアルキル基またはアリール基、X1はハロゲン元素を示し、mは0≦m≦3である。)
R3 nAlX2 3−n
(式中、R3は炭素数1から4のアルキル基、X2は水素原子またはハロゲン元素を示し、nは0<n≦3である。)
(c) 一般式 Ti(OR4)pX3 4−P
(式中、R4は炭素数1から4のアルキル基、X3はハロゲン元素を示し、pは0または1から3の整数である。)で表わされるチタン化合物、および
(d) 芳香族ジカルボン酸ジエステル
(B)一般式 R5 qAlY3−q
(式中、R5は炭素数1から4のアルキル基、Yは水素、塩素、臭素、ヨウ素のいずれかであり、qは0<q≦3の実数である。)で表わされる有機アルミニウム化合物及び
(C)一般式 R6 rSi(OR7)4−r
( 式中、R6は炭素数1から12のアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、ビニル基、アリル基、アラルキル基のいずれかで、同一でも異なってもよい。R7は炭素数1から4のアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、ビニル基、アリル基、アラルキル基のいずれかで、同一でも異なってもよい。rは0または1〜3の整数である。)で表わされる有機ケイ素化合物。 - 前記不活性炭化水素溶媒が、脂肪族炭化水素溶媒であることを特徴とする請求項1記載のプロピレン単独重合体を製造する方法。
- 前記脂肪族炭化水素溶媒が、ヘキサン又はヘプタンであることを特徴とする請求項2記載のプロピレン単独重合体を製造する方法。
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