JP3659405B2 - Sh2ドメイン含有ペプチド - Google Patents

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Description

【0001】
(発明の分野)
本発明は、一般的に新規なDNAの同定及び単離、及び新規なSH2-含有タンパク質(Nsp’s)の存在を特徴とする新規なポリペプチドの組換え生産に関する。
【0002】
(発明の背景)
リガンドと同族細胞表面レセプターとの間の相互作用は、細胞及び生物体の恒常性の維持、発生及び腫瘍形成を含む種々の生物学的プロセスにとって重要である。これらのリガンドの多くは複数の独立した経路を活性化することができ、異なる経路を活性化する強さは他のレセプターからのシグナルの有無によって改変することができる。Hotamisligil等, Proc Natl. Acad. Sci. USA 91: 4854-58 (1994); Kanety等, J. Biol. Chem. 270: 23780-84 (1995); Luttrell等, J. Biol. Chem. 272: 4637-44 (1997)。アダプター分子は、複数のシグナル伝達カスケードの一体化及び細胞外刺激に対する細胞型特異的反応の決定において重要である。これらのアダプタータンパク質は明らかな触媒活性を有していない。むしろそれらは、タンパク質−タンパク質又はタンパク質−脂質相互作用を媒介する一又は複数のドメインを含んでいる。これらのアダプター分子で最も共通に保存される相互作用ドメインは、Src相同(SH2)、SH3、ホスホチロシン結合部位(PTB)及びプレクストリン相同ドメインである[Pawson及びScott, Science 278: 2075-80 (1997)で概説されている]。
【0003】
表皮成長因子(EGF)又はインシュリン成長因子-1(IGF-1)などの成長因子のレセプターチロシンキナーゼ(RTK)を介する成長により、あるいはインテグリンレセプターを介して作用する細胞外マトリクス成分により生成されるシグナルが細胞骨格の変化を誘発できる、Leventhal等, J. Biol. Chem. 272: 5214-18 (1997); Ojaniemi及びVuori, J. Biol. Chem. 272: 2443-47 (1996)。また、RTKsがインテグリンシグナルを変調させることができる、又はその逆の徴候もある、Doerr及びJones, J. Biol. Chem. 271: 2443-47 (1996); Jones等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93: 2482-87 (1996); Knight等, J. Biol. Chem. 270: 10199-203 (1995); Matsumoto等, Cancer Mates. Rev. 14: 205-17 (1995)。しかしながら、RTKsがどのようにして細胞骨格成分にシグナル伝達するかの詳細は未だ十分に解明されていない。さらに、幾つかのアダプタータンパク質は制限された発現パターンを有し[Liu及びRoth, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92: 10287-91 (1995); Nakamura等, Oncogene 13: 1111-21 (1996)]、多くは一様に発現される[Araki等, Diabetes 42: 1041-54 (1993); Frantz等, J. Biol. Chem. 272: 2659-67 (1997)]。よって、細胞が分化したときに生物学的に関連する出力がどのように変調されるかは不明である。
【0004】
癌は、正常な組織から誘導されて腫瘍実体を形成する異常な、又は腫瘍形成性の細胞数の増加、これらの腫瘍形成性腫瘍細胞による隣接組織の侵襲、及び最終的に血液やリンパ系を介して局所のリンパ節及び離間部位に拡散(転移)する悪性細胞の生成を特徴とする。癌性状態においては、正常細胞が成長しない条件下で細胞が増殖する。癌自体は、異なる侵襲及び攻撃性の程度で特徴付けられる広範な種々の形態で顕現する。
遺伝子発現の交互変化は制御不能な細胞成長及び脱分化に強く関連しており、全ての癌に共通する特徴である。或る種の良く研究されたゲノムが、通常は腫瘍抑制遺伝子と呼ばれ、正常には悪性細胞成長又は或る種の優性遺伝子、例えば悪性成長を促進する用に作用するオンコジーンの過剰発現を防止するように作用する劣性遺伝子発現の現象を示すことが見出された。これらの遺伝子変化は、凝集して十分な腫瘍形成性フェノタイプを示す形質の幾つかが移入される原因であることが明らかとなった(Hunter, Cell 64: 1129 [1991]; Bishop, Cell 64: 235-248 [1991])。
【0005】
癌細胞における良く知られた遺伝子(例えばオンコジーン)過剰発現のメカニズムは遺伝子増幅である。これは、祖先細胞の染色体において特定遺伝子の多重コピーが生成されるプロセスである。このプロセスは、遺伝子を含む染色体の領域の計画性のない複製、次いで複製されたセグメントが染色体へ戻る再組換えを含む(Alitalo等, Adv. Cancer Res. 47: 235-281 [1986])。遺伝子増幅に平行する遺伝子の過剰発現は、即ち作成されるコピーの数に比例すると考えられている。
成長因子及び成長因子レセプターをコードするプロトオンコジーンは、乳癌を含む、様々なヒトの悪性腫瘍の原因に重要な役割を担っていることが確認されている。例えば、表皮成長因子レセプター(EGFR)に関連した185-kdの膜貫通糖タンパク質レセプター(p185HER2、HER2)をコードするヒトErbB2遺伝子(erbB2、her2としても知られている、又はc-erbB-2)は、ヒトの乳癌の約25%〜30%で過剰発現されていることが見出されている(Slamon等, Science 235:177-182[1987];Slamon等, Science 244:707-712[1989])。
【0006】
プロトオンコジーンの遺伝子増幅は、典型的には癌のより悪性の形態に含まれる事象であり、臨床的結果の予言者として作用しうることが報告されている(Schwab等, Genes Chromosome Cancer 1, 181-193 [1990]; Alitalo等, 上掲)。即ち、erbB2の過剰発現は、特に腋窩のリンパ節を含む一次疾患を持つ患者において、不完全な予後の前兆と共通して見なされており(slamon等, [1987]および[1989], 上掲; Ravdin及びChamness, Gene 159: 19-27 [1995]; 及びHynes及びStern, Biochem Biophys Acta 1198: 165-184 [1994])、ホルモン療法及びCMF(シクロホスファミド、メトトレキセート、及びフルオロウラシル)を含む化学治療薬に対する感受性又は耐性と関連付けられていた(Baselga等, Oncology 11 (3 Suppl 1): 43-48 [1997])。しかしながら、erbB2過剰発現と不完全な予後との関連にも関わらず、HER2-ポジティブな患者のタキサンでの処理に臨床的に反応する可能性は、HER2-ネガティブ患者の3倍も大きかった。組換えヒト化抗-ErbB2(抗-HER2)モノクローナル抗体(マウス抗-ErbB2抗体4D5のヒト化型、rhuMAb HER2又はHerceptin(登録商標)と呼ばれる)は、広範な従来の抗癌治療を受けたErbB2を過剰発現する転移性乳癌を持つ患者で臨床的に活性である。(Baselga等, J. Clin. Oncol. 14: 737-744[1996])。
【0007】
(発明の概要)
本出願人らは、本発明で各々「Nsp1、Nsp2及びNsp3」(配列番号:1、3及び6)と命名される新規なポリペプチドをコードするcDNAクローン(DNA30676、DNA40575及びDNA61601)(各々、配列番号:2、4及び6)を同定した。
一実施態様では、本発明は、(a)Fig1(配列番号:1)のアミノ酸1〜576、Fig2(配列番号:3)のアミノ酸1〜501、又はFig3(配列番号:5)のアミノ酸1〜703の配列を含むポリペプチドをコードするDNA分子、又は(b)(a)のDNA分子の相補配列に対して少なくとも約80%の配列同一性を有する単離された核酸を提供する。配列同一性は、好ましくは約85%、より好ましくは約90%、最も好ましくは約95%である。一態様において、単離された核酸は、Fig1(配列番号:1)の1〜576、Fig2(配列番号:3)の1〜501、及びFig3(配列番号:5)の1〜703のアミノ酸残基を有するポリペプチドに対して少なくとも約80%、好ましくは少なくとも約85%、より好ましくは少なくとも約90%、最も好ましくは少なくとも約95%の配列同一性を有する。好ましくは、最も高い配列同一性は、セリン/プロリン富化ドメイン(即ち、配列番号:1のアミノ酸残基145〜299、配列番号:3のアミノ酸残基28〜210、配列番号:5のアミノ酸残基181〜415)内で生じる。あるいは、最も大きな程度の同一性はSH2ドメインで生じる(即ち、配列番号:1のアミノ酸残基1−118及び配列番号:5のアミン酸残基50−166)。さらなる態様において、単離された核酸分子は、アミノ酸残基:(a)Fig1(配列番号:1)の1〜576、(b)Fig2(配列番号:3)の1〜501、又は(c)Fig3(配列番号:5)の1〜703を持つPRO201、PRO308又はPRO309ポリペプチドをコードするDNAを含む;あるいは、そのようなコード化核酸配列に相補的であり、少なくとも中程度、場合によっては高度の緊縮性条件下でそれに安定して結合したままである。好ましくは、前記核酸分子は、アミノ酸残基:(a)Fig1(配列番号:1)の32〜576又は(b)Fig3(配列番号:5)の1〜424又は506〜703によって決定される領域内の断片をコードするDNAにハイブリッド形成する。他の態様では、本発明は、各々ATCC寄託番号ATCC209567、ATCC209565及びATCC209713の下で寄託されたクローンDNA30676−1223(配列番号:2)、DNA40575−1223(配列番号:4)及びDNA61601−1223(配列番号:6)の全長タンパク質の核酸、あるいは、各々寄託番号ATCC209567、ATCC209565及びATCC209713の下で寄託されたクローンDNA30676−1223(配列番号:2)、DNA40575−1223(配列番号:4)及びDNA61601−1223(配列番号:6)のコード化配列を提供する。
【0008】
さらに他の実施態様では、本発明は、PRO201、PRO308又はPRO309ポリペプチドをコードするDNAを含むベクターを提供する。そのようなベクターを含む宿主細胞も提供される。例えば、宿主細胞はCHO細胞、大腸菌又は酵母細胞であってよい。さらに、宿主細胞を、PRO201、PRO308又はPRO309の発現に適した条件下で培養し、細胞培地からそれを回収することを含んでなるPRO201、PRO308又はPRO309ポリペプチドの製造方法も提供される。
さらに他の実施態様では、本発明は単離されたPRO201、PRO308又はPRO309ポリペプチドを提供する。特に、本発明は単離された天然配列PRO201、PRO308又はPRO309ポリペプチドを提供し、それは一実施態様においてFig1の残基1〜576(配列番号:1)、Fig2の残基1〜501(配列番号:3)又はFig3の残基1〜703(配列番号:5)を含んでなるアミノ酸配列を含む。メチオニンから開始されてもされなくてもよい天然PRO201、PRO308又はPRO309ポリペプチドが特に含まれる。また、本発明は各々登録番号ATCC209567、ATCC209565及びATCC209713の下で寄託された核酸にコードされるPRO201、PRO308又はPRO309ポリペプチドを提供する。
さらに他の実施態様では、本発明は、異種ポリペプチド又はアミノ酸配列に融合したPRO201、PRO308又はPRO309ポリペプチドを含んでなるキメラ分子を提供する。そのようなキメラ分子の例は、エピトープタグ配列又は免疫グロブリンのFc領域の融合したPRO201、PRO308又はPRO309ポリペプチドを含むキメラ分子である。
さらに他の実施態様では、本発明は、PRO201、PRO308又はPRO309媒介細胞シグナル伝達に抗するアンタゴニスト及び促進するアゴニストを生じさせる化合物及び方法を提供する。特に、生物有機化学的小分子及びアンチセンスヌクレオチドを含む、細胞シグナル伝達においてPRO201(例えば、Nsp1、配列番号:1)、PRO308(例えば、Nsp2、配列番号:3)又はPRO309(例えば、Nsp3、配列番号:5)の正常な機能発現を阻止、防止、阻害、又は、中和するPRO201、PRO308又はPRO309のアンタゴニストである。
さらに他の実施態様において、本発明は、PRO201、PRO308又はPRO309の選択的スプライシングされた変異体(例えば、DNA40556)を提供する。
【0009】
さらに本発明は、ヒトを含む哺乳動物における腫瘍形成細胞の成長及び増殖の診断及び治療のための組成物及び方法に関する。本発明は、腫瘍細胞のゲノムで増幅される遺伝子の同定に基づいている。そのような遺伝子増幅は、遺伝子産物の過剰発現を伴い腫瘍形成に寄与すると予測される。従って、増幅された遺伝子にコードされるタンパク質は、ある種の癌の診断及び治療(予防も含む)のための有用な標的であり、又は腫瘍治療の予後の予言者として振る舞うと思われる。 一実施態様では、本発明は、PRO201(例えば、Nsp1、配列番号:1)、PRO308(例えば、Nsp2、配列番号:3)又はPRO309(例えば、Nsp3、配列番号:5)と命名されるポリペプチドに結合する単離された抗体に関する。一態様では、この抗体はPRO201、PRO308又はPRO309ポリペプチドを過剰発現する細胞の死亡を誘発する。他の態様では、この抗体はモノクローナル抗体であり、それは好ましくは非ヒト相補性決定領域(CDR)残基及びヒトフレームワーク領域(FR)を有する。抗体は、標識されていてもよく、固体支持体に固定化されていてもよい。さらなる態様では、抗体は抗体断片、一本鎖抗体、又は抗-イディオタイプ抗体である。
他の実施態様では、本発明はPRO201、PRO308又はPRO309ポリペプチドに結合する抗体と、製薬に許容される担体とを混合して含有する組成物に関する。一態様では、この組成物はさらなる活性成分を含有し、それらは例えば、さらなる抗体又は細胞毒性又は化学治療薬であってよい。好ましくは組成物は無菌である。
さらなる実施態様では、本発明は抗-PRO201、抗-PRO308又は抗-PRO309抗体をコードする核酸、そのような核酸を含むベクター及び宿主細胞に関する。
さらなる実施態様では、本発明は、抗体をコードする核酸で、抗体が発現される条件下で宿主細胞を形質移入し、細胞培地から抗体を回収することによる抗-PRO201、抗-PRO308又は抗-PRO309抗体の製造方法に関する。
【0010】
さらに本発明はPRO201、PRO308又はPRO309ポリペプチドの一又は複数の機能又は活性を阻害するPRO201、PRO308又はPRO309ポリペプチドのアンタゴニスト及びアゴニストに関する。
さらなる実施態様では、本発明はPRO201、PRO308又はPRO309ポリペプチドをコードする核酸分子の相補配列にハイブリッド形成する単離された核酸分子に関する。この核酸は好ましくはDNAであり、ハイブリッド形成は好ましくは緊縮条件下で起こる。好ましくは前記核酸分子は、(a)Fig1(配列番号:2)の約245〜2413又は(b)Fig3(配列番号:6)の1〜約1312又は約1555〜約2150のヌクレオチド残基からの領域にハイブリッド形成する。このような核酸分子は、ここに同定される増幅遺伝子のアンチセンス分子として作用でき、翻って、対応する増幅遺伝子の変調において、又は増幅反応のアンチセンスプライマーとしての用途が見いだされる。さらに、このような配列はリボザイム又はトリプルヘリックス配列の一部として燃使用でき、翻って、増幅遺伝子の調節で使用することもできる。
他の実施態様では、本発明は、PRO201、PRO308又はPRO309ポリペプチドの存在を検出する方法にも関し、それは、PRO201、PRO308又はPRO309ポリペプチドを含有すると疑われる細胞を抗-PRO201、抗-PRO308又は抗-PRO309抗体に暴露し、抗体の細胞への結合を測定することを含む。
さらに他の実施態様では、本発明は哺乳動物における腫瘍の診断方法に関し、それは、(a)哺乳動物から得た組織細胞の試験試料における、及び(b)同じ細胞型の既知の正常組織細胞の対照試料におけるPRO201、PRO308又はPRO309ポリペプチドをコードする遺伝子の発現レベルを検出することを含み、試験試料における高レベルが試験組織細胞を得た哺乳動物における腫瘍の存在を示す。
他の実施態様では、本発明は哺乳動物における腫瘍の診断方法に関し、それは(a)抗-PRO201、抗-PRO308又は抗-PRO309抗体を哺乳動物から得た組織細胞の試験試料に接触させ、(b)対象とする試験試料中での抗-PRO201、抗-PRO308又は抗-PRO309抗体及びPRO201、PRO308又はPRO309の複合体形成を検出することを含む。検出は、定性的でも定量的でもよく、同じ細胞型の既知の正常組織細胞の対照試料における複合体形成の監視との比較において実施される。試験試料における多量の複合体形成は、試験組織細胞を得た哺乳動物における腫瘍の存在を示す。抗体は、好ましくは検出可能な標識を有する。複合体形成は、例えば、光学顕微鏡、フローサイトメトリー、蛍光測定、又は他のこの分野で知られた技術により監視する。
【0011】
試験試料は通常は腫瘍形成性細胞成長又は増殖(例えば癌性細胞)が疑われる個体から得る。
他の実施態様では、本発明は、適当な包装中に抗-PRO201、抗-PRO308又は抗-PRO309抗体及び担体(例えばバッファー)を含んでなる診断キットに関する。このキットは、好ましくはPRO201、PRO308又はPRO309ポリペプチドに対する抗体の使用に関する指示書を具備している。
さらに他の実施態様では、PRO201、PRO308又はPRO309ポリペプチドを過剰発現する細胞を、PRO201、PRO308又はPRO309ポリペプチドの発現又は活性を阻害する薬剤の有効量に暴露することを含んでなる腫瘍細胞成長を阻害するための方法に関する。この薬剤は、好ましくは抗-PRO201、抗-PRO308又は抗-PRO309抗体、小有機及び無機分子、ペプチド、ホスホペプチド、アンチセンス又はリボザイム分子、又はトリプルヘリックス分子である。特別は態様では、薬剤、例えば抗-PRO201、抗-PRO308又は抗-PRO309抗体は、細胞死を誘発する。さらなる態様では、腫瘍細胞はさらに放射線治療又は細胞毒性又は化学治療薬に暴露される。
さらなる実施態様では、本発明は:
容器;
容器上のラベル;及び
容器内に収容された活性薬を含む組成物;を含んでなる製造品に関し、この組成物は腫瘍細胞の成長阻害に有効であり、容器上のラベルは組成物がPRO201、PRO308又はPRO309ポリペプチドの過剰発現を特徴とする状態の治療に使用できることを表示し、組成物中の活性薬はPRO201、PRO308又はPRO309ポリペプチドの発現又は活性を阻害する薬剤である。好ましい態様では、活性薬は抗-PRO201、抗-PRO308又は抗-PRO309抗体である。
PRO201、PRO308又はPRO309ポリペプチドの発現又は活性を阻害することのできる化合物を同定する方法は、候補化合物をPRO201、PRO308又はPRO309ポリペプチドに、条件下かつこれら2つの成分が相互作用するのに十分な時間接触させることを含む。特別難態様では、候補化合物又はPRO201、PRO308又はPRO309ポリペプチドのいずれかが固体支持体上に固定化される。
【0012】
(好適な実施態様の詳細な説明)
I.定義
ここで使用される際の「PRO201、PRO308又はPRO309」及び「PRO201、PRO308又はPRO309ポリペプチド」という用語は、各々天然配列PRO201、PRO308又はPRO309、及びPRO201、PRO308又はPRO309の変異体(ここで更に詳細に定義する)を含む。これらは、ヒト組織型又は他の供給源といった種々の供給源から単離してもよく、あるいは組換え又は合成方法によって調製してもよい。
「天然配列PRO201、PRO308又はPRO309」は、天然由来のPRO201、PRO308又はPRO309ポリペプチドと同一のアミノ酸配列を有するポリペプチドを含んでいる。このような天然配列PRO201、PRO308又はPRO309は、自然から単離することもできるし、組換え又は合成手段により生産することもできる。「天然配列PRO201、PRO308又はPRO309」という用語には、特に、PRO201、PRO308又はPRO309の自然に生じる切断又は分泌形態(例えば、細胞外ドメイン配列)、自然に生じる変異形態(例えば、選択的にスプライシングされた形態)及びPRO201、PRO308又はPRO309の自然に生じる対立遺伝子変異体が含まれる。この明細書を通じて、「PRO」及び「Nsp」という表示は共に対応するタンパク質を示すのに使用され、「Nsp」はFig1,2及び3の特定の天然ヒト配列又は各々ATCC209567、209565及び209713の下に寄託されたcDNA配列を示す。「Nsp」は特定の列挙された種を示すが、「PRO」は天然配列(Nspsを含む)及びその変異体を示す。
本発明の一実施態様において、天然配列PRO201、PRO308又はPRO309は、
(a)Fig1(配列番号:1)のアミノ酸1〜576、(b)Fig2(配列番号:3)のアミノ酸1〜501、及び(c)Fig3(配列番号:5)のアミノ酸1〜703を含む成熟又は全長天然配列PRO201、PRO308又はPRO309であり、N-末端シグナル配列を持っても持たなくてもよく、位置1に開始メチオニンを有しても有さなくてもよい。
【0013】
「PRO201、PRO308又はPRO309変異体」とは、各々、以下に定義されるように、(a)天然シグナル配列有無のPRO201、PRO308又はPRO309ポリペプチドをコードするDNA分子、又は(b)(a)のDNA分子の相補配列と少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性を有する生物学的に活性なPRO201、PRO308又はPRO309を意味する。特別な実施態様において、PRO201、PRO308又はPRO309変異体は、全長天然配列PRO201、PRO308又はPRO309についてFig1(配列番号:1)、Fig2(配列番号:3)、Fig3(配列番号:5)に示した推定アミノ酸配列を有するPRO201、PRO308又はPRO309と少なくとも約80%のアミノ酸配列相同性を有する。このようなPRO201、PRO308又はPRO309変異体は、これらに限られないが、例えばFig1(配列番号:1)、Fig2(配列番号:3)、Fig3(配列番号:5)の配列のN-又はC-末端において一又は複数のアミノ酸残基が付加、もしくは欠失されたPRO201、PRO308又はPRO309ポリペプチドを含む。好ましくは、核酸又はアミノ酸配列同一性は、少なくとも約85%、より好ましくは少なくとも約90%、さらにより好ましくは少なくとも約95%である。
【0014】
PRO201、PRO308又はPRO309配列に対してここで同定されている「パーセント(%)アミノ酸配列同一性」は、配列を整列させ、最大のパーセント配列同一性を得るために必要ならば間隙を導入し、如何なる保存的置換も配列同一性の一部と考えないとした、PRO201、PRO308又はPRO309配列のアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基のパーセントとして定義される。パーセントアミノ酸配列同一性を決定する目的のためのアラインメントは、当業者の技量の範囲にある種々の方法、例えば、初期値に設定されたBLAST-2ソフトウエアのような公に入手可能なコンピュータソフトウエアを使用することにより達成可能である。当業者であれば、比較される配列の全長に対して最大のアラインメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、アラインメントを測定するための適切なパラメータを決定することができる。あるいは、ここで用いられるパーセント同一性値は、プログラム「Align-2」によって算出してもよく、これはパラメータの設定が無く、Genentechが権限を持ち、1991年12月10日に使用説明書とともに米国著作権局、ワシントン,D.C.20559に出願された。Align-2は、米国著作権登録番号TXU-510087の下で登録された。
ここで同定されるPRO201、PRO308又はPRO309配列に対する「パーセント(%)核酸配列同一性」は、配列を整列させ、最大のパーセント配列同一性を得るために必要ならば間隙を導入し、PRO201、PRO308又はPRO309配列のヌクレオチドと同一である候補配列中のヌクレオチドのパーセントとして定義される。パーセント核酸配列同一性を決定する目的のためのアラインメントは、当業者の知る範囲にある種々の方法、例えば、初期パラメータに設定されたBLAST-2ソフトウエアのような公に入手可能なコンピュータソフトウエアを使用することにより達成可能である。当業者であれば、比較される配列の全長に対して最大のアラインメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、アラインメントを測定するための適切なパラメータを決定することができる。あるいは、ここで用いられるパーセント同一性値は、プログラム「Align-2」によって算出してもよく、これはパラメータの設定が無く、Genentechが権限を持ち、1991年12月10日に使用説明書とともに米国著作権局、ワシントン,D.C.20559に出願された。Align-2は、米国著作権登録番号TXU-510087の下で登録された。
【0015】
「単離された」とは、ここで開示された種々のポリペプチドを記述するために使用するときは、その自然環境の成分から同定され分離され又は回収されたポリペプチドを意味する。その自然環境の汚染成分とは、そのポリペプチドの診断又は治療への使用を典型的には妨害する物質であり、酵素、ホルモン、及び他のタンパク質様又は非タンパク質様溶質が含まれる。好ましい実施態様において、ポリペプチドは、(1)スピニングカップシークエネーターを使用することにより、少なくとも15残基のN末端あるいは内部アミノ酸配列を得るのに充分なほど、あるいは、(2)クーマシーブルーあるいは好ましくは銀染色を用いた非還元あるいは還元条件下でのSDS-PAGEによる均一性まで精製される。単離されたポリペプチドには、PRO201、PRO308又はPRO309の自然環境の少なくとも1つの成分が存在しないため、組換え細胞内のインサイツのタンパク質が含まれる。しかしながら、通常は、単離されたポリペプチドは少なくとも1つの精製工程により調製される。
「単離された」DNA30676(配列番号:2)、DNA40575(配列番号:4)又はDNA61601(配列番号:6)核酸分子は、同定され、DNA30676、DNA40575又はDNA61601核酸(各々、配列番号:2、4又は6)の天然源に通常付随している少なくとも1つの汚染核酸分子から分離された核酸分子である。単離されたDNA30676、DNA40575又はDNA61601核酸分子(各々、配列番号:2、4又は6)は、天然に見出される形態あるいは設定以外のものである。ゆえに、単離されたDNA30676、DNA40575又はDNA61601核酸分子(各々、配列番号:2、4又は6)は、天然の細胞中に存在するDNA30676、DNA40575又はDNA61601核酸分子(各々、配列番号:2、4又は6)から区別される。しかしながら、単離されたDNA30676、DNA40575又はDNA61601核酸分子(各々、配列番号:2、4又は6)は、例えば核酸分子が天然細胞とは異なる染色***置にある通常はDNA30676、DNA40575又はDNA61601核酸分子(各々、配列番号:2、4又は6)を発現する細胞に含まれるDNA30676、DNA40575又はDNA61601核酸分子(各々、配列番号:2、4又は6)を含む。
【0016】
ハイブリッド形成反応の「緊縮性」は、当業者によって容易に決定され、一般的にプローブ長、洗浄温度、及び塩濃度に依存する経験的な計算である。一般に、プローブが長くなると適切なアニーリングのための温度が高くなり、プローブが短くなると温度は低くなる。ハイブリッド形成は、一般的に、相補的鎖がその融点(Tm)に近いがそれより低い環境に存在する場合における変性DNAの再アニールする能力に依存する。プローブとハイブリッド形成可能な配列との間の所望の相同性の程度が高くなると、使用できる相対温度が高くなる。その結果、より高い相対温度は、反応条件をより緊縮性にするが、低い温度は緊縮性を低下させる。さらに、緊縮性は塩濃度に逆比例する。ハイブリッド形成反応の緊縮性の更なる詳細及び説明は、Ausubel等, Current Protocols in Molecular Biology, Wiley Interscience Publishers, (1995)を参照のこと。
ここで定義される「緊縮性条件」は、(1)洗浄のために低イオン強度及び高温度、例えば、50℃において0.015Mの塩化ナトリウム/0.0015Mのクエン酸ナトリウム/0.1%のドデシル硫酸ナトリウムを用いるもの;(2)ハイブリッド形成中にホルムアミド等の変性剤、例えば、42℃において50%(vol/vol)ホルムアミドと0.1%ウシ血清アルブミン/0.1%フィコール/0.1%のポリビニルピロリドン/50mMのpH6.5のリン酸ナトリウムバッファー、及び750mMの塩化ナトリウム、75mMクエン酸ナトリウムを用いるもの;(3)42℃における50%ホルムアミド、5xSSC(0.75MのNaCl、0.075Mのクエン酸ナトリウム)、50mMのリン酸ナトリウム(pH6.8)、0.1%のピロリン酸ナトリウム、5xデンハード液、超音波処理サケ***DNA(50μg/ml)、0.1%SDS、及び10%のデキストラン硫酸と、42℃における0.2xSSC(塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム)中の洗浄及び55℃でのホルムアミド、次いで55℃におけるEDTAを含む0.1xSSCからなる高緊縮性洗浄を用いるものによって同定される。
「中程度の緊縮性条件」は、Sambrook等, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, New York: Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989に記載されているように同定され、上記の緊縮性より低い洗浄溶液及びハイブリッド形成条件(例えば、温度、イオン強度及び%SDS)の使用を含む。中程度の緊縮性条件の例は、20%ホルムアミド、5xSSC(150mMのNaCl、15mMのクエン酸三ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH7.6)、5xデンハード液、10%デキストラン硫酸、及び20mg/mLの変性剪断サケ***DNAを含む溶液中の37℃での終夜インキュベーション、次いで1xSSC中37−50℃でのいフィルターの洗浄といった条件である。当業者であれば、プローブ長などの因子に適合させる必要に応じて、どのようにして温度、イオン強度等を調節するかを認識するであろう。「エピトープタグ」なる用語は、ここで用いられるときは、「タグポリペプチド」に融合したDNA30676、DNA40575又はDNA61601ポリペプチドヌクレオチド(各々、配列番号:1、3又は5)を含んでなるキメラポリペプチドを意味する。タグポリペプチドは、その抗体が産生され得るエピトープを提供するに十分な残基を有しているが、それが融合するポリペプチドの活性を阻害しないよう充分に短い。また、タグポリペプチドは、好ましくは、抗体が他のエピトープと実質的に交差反応をしないようにかなり独特である。適切なタグポリペプチドは、一般に、少なくとも6のアミノ酸残基、通常は約8〜約50のアミノ酸残基(好ましくは約10〜約20の残基)を有する。
【0017】
「コントロール配列」という用語は、特定の宿主生物において作用可能に結合したコード配列を発現するために必要なDNA配列を指す。例えば原核生物に好適なコントロール配列は、プロモーター、場合によってはオペレータ配列、及びリボソーム結合部位を含む。真核生物の細胞は、プロモーター、ポリアデニル化シグナル及びエンハンサーを利用することが知られている。
核酸は、他の核酸配列と機能的な関係にあるときに「作用可能に結合し」ている。例えば、プレ配列あるいは分泌リーダーのDNAは、ポリペプチドの分泌に参画するプレタンパク質として発現されているなら、そのポリペプチドのDNAに作用可能に結合している;プロモーター又はエンハンサーは、配列の転写に影響を及ぼすならば、コード配列に作用可能に結合している;又はリボソーム結合部位は、もしそれが翻訳を容易にするような位置にあるなら、コード配列と作用可能に結合している。一般的に、「作用可能に結合している」とは、結合したDNA配列が近接しており、分泌リーダーの場合には近接していて読みフェーズにあることを意味する。しかし、エンハンサーは必ずしも近接している必要はない。結合は簡便な制限部位でのライゲーションにより達成される。そのような部位が存在しない場合は、従来の手法に従って、合成オリゴヌクレオチドアダプターあるいはリンカーが使用される。
「抗体」という用語は最も広い意味において使用され、特に単一の抗-PRO201、抗-PRO308又は抗-PRO309モノクローナル抗体(アゴニスト、アンタゴニスト及び中和抗体を含む)、及び多エピトープ特異性を持つ抗-PRO201、抗-PRO308又は抗-PRO309抗体組成物を包含している。ここで使用される「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均一な抗体の集団、すなわち、構成する個々の抗体が、少量存在しうる自然に生じる可能性のある突然変異を除いて同一である集団から得られる抗体を指す。
【0018】
PRO201、PRO308又はPRO309ポリペプチド(又はそのコード化配列)に基づいて同定される分子の内容における「活性な」及び「活性」とは、天然又は天然発生PRO201、PRO308又はPRO309の生物学的又は免疫学的活性を保持するポリペプチド(例えば抗体)又は有機又は無機小分子、ペプチド等を意味する。
「生物学的」活性とは、天然又は天然発生PRO201、PRO308又はPRO309が有する抗原性エピトープに対する抗体生産を含む能力以外の、天然又は天然発生PRO201、PRO308又はPRO309によって生ずる生物学的機能(阻害性又は刺激性)を意味する。「免疫学的活性」とは、天然又は天然発生PRO201、PRO308又はPRO309が有する抗原性エピトープに対する抗体生産を含む能力を意味する。
好ましい生物学的活性は、例えば、ここで同定されるスクリーニングアッセイによって同定される生物学的活性、例えば、標的腫瘍細胞の成長阻害を含む。他の好ましい生物学的活性は、標的腫瘍細胞の死亡をもたらす細胞毒性活性である。さらなる好ましい活性は、例えばインテグリンレセプターリガンド及び表皮成長因子(EGF)による、及び他のレセプターチロシン(RTK)リガンドを通した刺激に対する調節又は腫瘍形成及び応答を含む。より好ましくは、生物学的活性はグアニル酸交換、特にc-junキナーゼ(JNK)の活性化の測定によって決定できる。
「変調」という用語は、シグナル伝達経路のレベルへの影響(例えばアップレギュレート、ダウンレギュレート又は他の制御)を意味する。シグナル伝達の制御下での細胞プロセスは、これらに限られないが、特定遺伝子の転写;代謝、増殖、分化、接着、アポトーシス及び生存などの正常な細胞機能、並びに、形質転換、分化及び転移の阻止といった異常なプロセスを含みうる。
【0019】
ここで用いられる「アンタゴニスト」なる用語は、最も広い意味において、PRO201、PRO308又はPRO309の任意のタンパク質ドメインと種々の標的タンパク質との相互作用を妨害する本発明のPRO201、PRO308又はPRO309分子によるプロセスを阻止、防止、阻害、中和する任意の分子を含む。このような相互作用は、一般的に、PRO201、PRO308又はPRO309のC末端で、あるいは特にホスホチロシル残基を持つSH2又はプロリン/セリン(P/S)富化領域及び標的結合部位を持つポリペプチドプロリンモチーフで生じうる。同様に、ここで用いられる「アゴニスト」なる用語は、種々の標的タンパク質上に各々ホスホチロシル残基及びポリペプチドプロリンモチーフを持つSH2又はプロリン/セリン(P/S)富化領域を含むPRO201、PRO308又はPRO309のタンパク質ドメイン(例えば、各々Nsp1、Nsp2及びNsp3)の相互作用を促進、向上又は刺激する任意の分子を含む。PRO201、PRO308又はPRO309及び各々ホスホチロシル残基及びポリペプチドプロリンモチーフ、又は標的タンパク質の相互作用に影響する好ましい分子は、後者の断片又は小さな生物有機小分子、例えばペプチド類似物を含み、それらは場合に応じて相互作用の防止又は促進するであろう。非限定的な例は、タンパク質、ペプチド、糖タンパク質、グリコペプチド、糖脂質、多糖類、オリゴ糖、核酸、生物有機分子、ペプチド類似物、製薬製剤又はその代謝物、転写及び翻訳制御配列などを含む。アンタゴニストの他の好ましい形態は、PRO201、PRO308又はPRO309変調シグナル伝達を阻害するアンチセンスヌクレオチドを含む。好ましい形態は、PRO201、PRO308又はPRO309、又はPRO201、PRO308又はPRO309が相互作用する標的の特定領域に結合する。
「小分子」は、ここで、約500ダルトン未満の分子量を有すると定義される。「抗体」(Abs)及び「免疫グロブリン」(Igs)は同じ構造的特徴を持つ糖蛋白質である。抗体は特定の抗原に対する特異性を示すが、免疫グロブリンは抗体及び抗原特異性を持たない他の抗体様分子の両方を含む。後者の種類のポリペプチドは、例えば、リンパ系によって低レベルで、ミエローマによって向上したレベルで生産される。「抗体」という用語は最も広い意味で使用され、限定されることなく、無傷のモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、少なくとも2つの無傷の抗体から形成される多重特異的抗体(例えば二重特異的抗体)、及びそれらが所望の生物学的活性を有している限り抗体断片を包含する。
【0020】
「遺伝子増幅」及び「遺伝子複製」という用語は、交換可能に使用され、遺伝子又は遺伝子断片の多数のコピーが特定の細胞又は細胞系で形成されるプロセスを意味する。複製領域(増幅DNAの鎖)は、しばしば「単位複製配列」と呼ばれる。通常は、生成されるメッセンジャーRNA(mRNA)の量、即ち遺伝子発現のレベルも、特定の遺伝子発現で作成されるコピー数に比例して増加する。 ここで用いられる際の「腫瘍」は、全ての腫瘍形成性細胞の成長及び増殖を意味し、良性又は悪性のいずれかであり、全ての前癌性及び癌性細胞及び組織である。
「癌」及び「癌性」という用語は、典型的には調節されない細胞成長を特徴とする、哺乳動物における生理学的状態を指すか記述する。癌の例には、これらに限定されるものではないが、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、及び白血病が含まれる。このような癌のより特定の例には、乳癌、前立腺癌、直腸癌、扁平上皮細胞癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、胃腸癌、膵臓癌、芽細胞腫、頸部癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、肝細胞腫、結腸直腸癌、子宮内膜癌、唾液腺癌、腎臓癌、肝臓癌、産卵口癌、甲状腺癌、肝癌(hepatic carcinoma)及び様々な種類の頭部及び頸部の癌が含まれる。
【0021】
「治療」は、疾患の病理の進行及び変化を防止することを意図する処置である。従って「治療」は治療的処理及び予防的又は防御的手段の両方を意味する。治療を必要とするものは、既に疾患に罹ったもの、並びに疾患を防御すべきものを含む。腫瘍(例えば癌)治療において、治療薬は腫瘍細胞の病理を直接低下させるか、腫瘍細胞を他の治療剤、例えば放射線又は化学治療に対して感受性にする。
癌の「病理」とは、患者の健康を危うくする全ての現象を含む。これは、限定されないが、異常かつ制御不能の細胞成長、転移、隣接細胞の正常な機能の妨害、サイトカイン又は他の分泌物の異常レベルでの放出、炎症又は免疫反応の抑制又は悪化などを含む。
治療の目的のための「哺乳動物」は、哺乳類に分類される任意の動物を意味し、ヒト、家畜用及び農業用動物、及び動物園、スポーツ、又はペット動物、例えばイヌ、ウマ、ネコ、ハムスター、ウサギ、マウス、ウシ、ブタ、ヤギ、ヒツジ等を含む。好ましくは、哺乳動物はヒトである。
【0022】
ここで用いられる「担体」は製薬的に許容される担体、賦形剤、又は安定化剤を含み、それらは、用いられる用量及び濃度でそれに暴露される細胞又は哺乳動物に対して非毒性である。製薬的に許容される担体は、pH緩衝水溶液であることが多い。製薬的に許容される担体の例は、リン酸、クエン酸、及び他の有機酸バッファー;アスコルビン酸を含む酸化防止剤;低分子量(約10残基未満)のポリペプチド;タンパク質、例えば血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリン;ポリビニルピロリドン等の親水性ポリマー、グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン又はリジン等のアミノ酸;グルコース、マンノース又はデキストラン等の単糖類、二糖類及び他の炭水化物;EDTA等のキレート化剤;マンニトール又はソルビトール等の糖アルコール;ナトリウム等の自己形成対イオン;又はTWEEN(商品名)、ポリエチレングリコール(PEG)、及びPLURONICS(商品名)等の非イオン性界面活性剤を含む。
一又はそれ以上のさらなる治療薬「と組み合わせて」又は「と混合して」の投与は、同時(一時)及び任意の順序での連続投与を含む。
ここで用いられる「細胞毒性薬」なる用語は、細胞の機能を阻害又は抑制する又は細胞破壊を生ずる物質を意味する。この用語は、放射性同位体(例えば、I131、I125、Y90及びRe186)、化学治療薬、及び細菌、真菌、植物又は動物由来の酵素的活性毒素といった毒素、またはその断片を含むとされる。
【0023】
「化学治療薬」は、癌の治療に有用な化合物である。化学治療薬の例は、アドリアマイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、5-フルオロウラシル、シトシンアラビノシド(「Ara−C」)、シクロホスファミド、チオテパ、ブスルファン、サイトキシン、タキソイド、例えばパクリタキセル(Taxol(商品名), Bristol-Myers Squibb Oncology, Princeton, NJ)及びドキセタキセル(Taxotere(商品名), Rhone-Poulenc Rorer, Antony, France)、トキソテール、メトトレキセート、シスプラチン、メルファラン、ビンブラスチン、ブレオマイシン、エトポシド、イフォスファミド、マイトマイシンC、マイトキサントロン、ビンクリスチン、ビノレルビン、カルボプラチン、テニポシド、ダウノマイシン、カルミノマイシン、アミノプテリン、ダクチノマイシン、マイトマイシン、エスペラマイシン(米国特許第4,675,187号)、5-FU、6-チオグアニン、6-メルカプトプリン、アクチノマイシンD、VP-16、クロランブシル、メルファラン、及び他の関連するナイトロジェンマスタードを含む。また、この定義に含まれるのは、タモキシフェン及びオナプリストンなどの腫瘍へのホルモン作用を調節又は阻害するように作用するホルモン様薬剤である。
ここで用いられる際の「成長阻害剤」は、細胞、特にここで同定される任意の遺伝子を過剰発現する癌細胞の成長を、インビトロ又はインビボで阻害する化合物又は組成物を意味する。即ち、成長阻害剤は、S相でそのような遺伝子を過剰発現する細胞の割合を有意に減少させるものである。成長阻害剤の例は、細胞周期を(S相以外の位置で)阻害する薬剤、例えばG1停止又はM相停止を誘発する薬剤を含む。古典的なM相ブロッカーは、ビンカス(ビンクリスチン及びビンブラスチン)、タキソール、及びトポII、例えばドキソルビシン、エピルビシン、ダウノルビシン、エトポシド、及びブレオマイシンを含む。G1停止させるこれらの薬剤は、S相停止にも溢流し、例えば、DNAアルキル化剤、例えば、タモキシフェン、プレドニゾン、ダカルバジン、メクロレタミン、シスプラチン、メトトレキセート、5-フルオロウラシル、及びara-Cである。さらなる情報は、The Molecular Basis of Cancer, Mendelsohn及びIsrael, 編, Chapter 1, 表題「Cell cycle reguration, oncogene, and antineoplastic drugs」, Murakami等, (WB Saunders: Philadelphia, 1995)、特にp13に見いだすことができる。
「ドキソルビシン」はアントラサイクリン抗生物質である。ドキソルビシンの完全な化学名は、(8S-シス)-10-[(3-アミノ-2,3,6-トリデオキシ-α-L-リキソヘキサピラノシル)オキシ]-7,8,9,10-テトラヒドロ-6,8,11-トリヒドロキシ-8-(ヒドロキシアセチル)-1-メトキシ-5,12-ナフタセンジオンである。
【0024】
「サイトカイン」なる用語は、1つの細胞集団から放出され、他の細胞に細胞間メディエータとして作用するタンパク質の一般用語である。このようなサイトカインの例は、リンホカイン、モノカイン、及び伝統的なポリペプチドホルモンである。サイトカインに含まれるのは、成長ホルモン、例えばヒト成長ホルモン、N-メチオニルヒト成長ホルモン、及びウシ成長ホルモン;副甲状腺ホルモン;チロキシン;インシュリン;プロインシュリン;レラキシン;プロレラキシン;糖タンパク質、例えば濾胞刺激ホルモン(FSH)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、及び黄体化ホルモン(LH);肝臓成長因子;線維芽成長因子;プロラクチン;胎盤ラクトゲン;腫瘍壊死因子-α及び-β;ミューラー阻害因子;マウス生殖腺刺激ホルモン関連ペプチド;インヒビン;アクチビン;血管内皮成長因子;インテグリン;トロンボポエチン(TPO);NGF-β等の神経成長因子;血小板成長因子;TGF-α及びTGF-β等のトランスフォーミング成長因子;インシュリン様成長因子-I及びII;エリスロポエチン(EPO);骨誘発因子;インターフェロン-α、-β、及び-γ等のインターフェロン;コロニー刺激因子(CSFs)、例えばマクロファージ-CSF(M-CSF);顆粒球-マクロファージ-CSF(GM-CSF);及び顆粒球-CSF(G-CSF);インターロイキン(ILs)、例えばIL-1、IL-1α、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-11、IL-12;腫瘍壊死因子、例えばTGF-α及びTGF-β;及びLIF及びキットリガンド(KL)を含む他のポリペプチド因子である。ここで用いられる際、用語サイトカインは、天然供給源から、又は組換え細胞培養からのタンパク質を含み、天然配列サイトカインの生物学的な活性等価物である。
この出願で用いられる用語「プロドラッグ」は、親薬剤に比較して腫瘍細胞に対する細胞毒性が低く、酵素的に活性化又はより活性な親形態に変換される製薬的活性物質の前駆体又は誘導体形態を意味する。例えば、Wilman, 「Prodrugs in Cancer Chemotherapy」, Biochemical Society Transactions, 14, pp. 375-382, 615th Meeting, Belfast (1986),及びStella 等, 「Prodrugs: A Chemical Approach to Targeted Drug Delivery」、Directed Drug delivery, Borchardt等(編), pp.147--267, Human Press (1985)参照。本発明のプロドラッグは、これらに限られないが、ホスファート含有プロドラッグ、チオホスファート含有プロドラッグ、スルファート含有プロドラッグ、ペプチド含有プロドラッグ、D-アミノ酸変性プロドラッグ、グリコシル化プロドラッグ、βラクタム含有プロドラッグ、任意に置換されたフェノキシアセトアミド含有プロドラッグ又は任意に置換されたフェニルアセトアミド含有プロドラッグ、より活性のある細胞毒のない薬剤に転換可能な5-フルオロシトシン及び他の5-フルオロウリジンプロドラッグを含む。限定するものではないが、本発明で使用されるプロドラッグ形態に誘導体化可能な細胞障害剤の例には、前掲の化学療法剤が含まれる。
【0025】
「天然抗体」及び「天然免疫グロブリン」は、通常、2つの同一の軽(L)鎖及び2つの同一の重(H)鎖からなる、約150000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。各軽鎖は一つの共有ジスルフィド結合により重鎖に結合しており、ジスルフィド結合の数は、異なった免疫グロブリンアイソタイプの重鎖の中で変化する。また各重鎖と軽鎖は、規則的に離間した鎖間ジスルフィド結合を有している。各重鎖は、多くの定常ドメインが続く可変ドメイン(VH)を一端に有する。各軽鎖は、一端に可変ドメイン(VL)を、他端に定常ドメインを有し;軽鎖の定常ドメインは重鎖の第一定常ドメインと整列し、軽鎖の可変ドメインは重鎖の可変ドメインと整列している。特定のアミノ酸残基が、軽鎖及び重鎖可変ドメイン間の界面を形成すると考えられている。
「可変」という用語は、可変ドメインのある部位が、抗体の中で配列が広範囲に異なっており、その特定の抗原に対する各特定の抗体の結合性及び特異性に使用されているという事実を意味する。しかしながら、可変性は抗体の可変ドメインにわたって一様には分布していない。軽鎖及び重鎖の可変ドメインの両方の高頻度可変領域又は相補性決定領域(CDS)と呼ばれる3つ又は4つののセグメントに濃縮される。可変ドメインのより高度に保持された部分はフレームワーク領域(FR)と呼ばれる。天然の重鎖及び軽鎖の可変ドメインは、βシート構造を結合し、ある場合にはその一部を形成するループ結合を形成する、CDRにより連結されたβシート配置を主にとる4つ又5つのFR領域をそれぞれ含んでいる。各鎖のCDRは、FRにより近接して結合せしめられ、他の鎖のCDRと共に、抗体の抗原結合部位の形成に寄与している(Kabatら, NIH Publ. No.91-3242, Vol.I, 647-669頁[1991]を参照のこと)。定常ドメインは、抗体の抗原への結合に直接関連しているものではないが、種々のエフェクター機能、例えば抗体依存性細胞障害活性への抗体の関与を示す。
「高頻度可変領域」
ここで使用される場合、「高頻度可変領域」なる用語は、抗原結合性を生じる抗体のアミノ酸残基を意味する。高頻度可変領域は「相補性決定領域」又は「CDR」からのアミノ酸残基(すなわち、軽鎖可変ドメインの残基24−34(L1)、50−56(L2)及び89-97(L3)及び重鎖可変ドメインの31−35(H1)、50−65(H2)及び95−102(H3);Kabatら, Sequences of Proteins of Immunological Interest,5版, Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD.(1991))又は「高頻度可変ループ」からの残基(すなわち、軽鎖可変ドメインの残基26−32(L1)、50−52(L2)及び91−96(L3)及び重鎖可変ドメインの残基26−32(H1)、53−55(L2)及び96−101(L3);Chothia及びLesk J.Mol.Biol. 196:901-917 (1987))を含んでなる。「フレームワーク」又は「FR」残基はここに定義した高頻度可変領域残基以外の可変ドメイン残基である。
【0026】
「抗体断片」は、未変性の抗体の一部、好ましくは未変性の抗体の抗原結合又は可変領域を含む。抗体断片の例は、Fab、Fab’、F(ab')2、及びFv断片;ダイアボディ(diabody);直鎖状抗体(Zapata等, Protein Eng. 8(10): 1057-1062 [1995]);一本鎖抗体分子;及び抗体断片から形成される多重特異的抗体を含む。
抗体のパパイン消化は、「Fab」断片と呼ばれ、各々単一の抗原結合部位を持つ2つの同一な抗原結合断片、及び残りの「Fc」断片、その名称は容易に結晶化する能力を反映している、を生成する。ペプシン処理により、2つの抗原結合部位を有するが、交差結合抗原であり得るF(ab')2断片が生成される。
「Fv」は、完全な抗原認識及び結合部位を含む最小抗体断片である。この領域は、緊密に非共有的に結合した1つの重鎖と1つの軽鎖の二量体からなる。この配置では、V−V二量体の表面における抗原結合部位を決定するために各可変領域の3つのCDRが相互作用する。正確には、6つのCDRが抗体に抗原結合特異性を与える。しかし、単一の可変ドメイン(又は抗原特異的な3つのCDRしか含まないFvの半分)でさえも抗原を認識し結合する能力を持つが、結合部位全体よりは親和性が低い。
【0027】
また、Fab断片は軽鎖の定常ドメイン及び重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)も含む。Fab断片は、抗体ヒンジ領域からの1つ又は複数のシステインを含む重鎖CH1ドメインのカルボキシル末端における数個の残基の付加によりFab断片と相違する。Fab'-SHは、ここにおいて、定常ドメインのシステイン残基が遊離のチオール基を持つFab'の記号である。F(ab')2抗体断片は、元々、それらの間にヒンジシステインを持つFab'断片の対として生成された。抗体断片の他の化学的結合も知られている。
任意の種からの抗体(免疫グロブリン)の「軽鎖」は、それらの定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)及びラムダ(λ)と呼ばれる1つ又は2つの明らかに異なる型に分類できる。
それら重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、免疫グロブリンは異なるクラスに分けられる。免疫グロブリンの5つの主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMがあり、これらの幾つかは、更にサブクラス(アイソタイプ)、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA及びIgA2に分けられる。異なるクラスの免疫グロブリンに対応する重鎖定常ドメインは、各々α、δ、ε、γ、及びμと呼ばれる。異なるクラスの免疫グロブリンのサブユニット構造及び三次元配置は良く知られている。
【0028】
ここで用いられる「モノクローナル抗体」なる用語は、実質的に均一な抗体の集団、即ち、集団を構成する個々の抗体が少量で存在する自然に起こりうる突然変異以外は同一である集団から得られる抗体を意味する。モノクローナル抗体は高度に特異的であり、単一の抗原部位に向けられている。さらに、典型的に異なる決定基(エピトープ)に対して向けられた異なる抗体を含む従来の(ポリクローナル)抗体とは異なり、各モノクローナル抗体は抗原上の単一の決定基に対して向けられている。それらの特異性に加えて、モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ培養によって合成され、他の免疫グロブリンに汚染されない点において有利である。「モノクローナル」という修飾語は、実質的に均一な抗体集団から得られ、任意の特定の方法による抗体の生産を必要とするとは解釈されない抗体の特徴を示す。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、Kohler等, Nature, 256: 495 [1975]によって最初に記載されたハイブリドーマ法により作成してもよいし、組換えDNA法(例えば、米国特許第4,816,567号参照)により作成してもよい。また、「モノクローナル抗体」は、ファージ抗体ライブラリから、例えば、Clackson等, Nature, 352: 624-628 [1991]及び Marks等, J. Mol. Biol., 222: 581-597 (1991)に記載された技術を用いて単離してもよい。
ここで、モノクローナル抗体は特に、「キメラ」抗体(免疫グロブリン)を含み、それは、重鎖又は軽鎖の一部が特定の種から誘導された又は特定の抗体クラス又はサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一又は相同であるが、鎖の残りの部分は他の種から誘導された又は特定の抗体クラス又はサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一又は相同である抗体、並びにそれらが所望のお生物学的活性を示す限りにおいてそれらの抗体の断片である(米国特許第4,816,567号;Morrison等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81: 6851-6855 [1984])。
【0029】
非ヒト(例えばマウス)抗体の「ヒト化」型は、非ヒト免疫グロブリンから誘導された最小配列を含有する特定のキメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖又はそれらの断片(例えば、Fv、Fab、Fab'、F(ab')あるいは抗体の他の抗原結合性配列)である。大部分において、ヒト化抗体はヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)であって、そのレシピエントの相補性決定領域(CDR)が、マウス、ラット、ヤギなどのヒト以外の種のCDR(ドナー抗体)に由来する所望の特異性、親和性及び容量を持つ残基で置換されている。ある場合は、ヒト免疫グロブリンのFvFR枠残基が対応する非ヒト残基で置換される。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも、輸入されるCDR又は枠配列にも見られない残基を含んでもよい。これらの修飾は、抗体の性能をさらに精密かつ最適化するために施される。一般にヒト化抗体は、CDR領域の全て又は実質上全てが非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、FR領域の全て又は実質上全てがヒト免疫グロブリン共通配列のものである少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全部を含有するであろう。また、最適なヒト化抗体は、免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒト免疫グロブリンのものの少なくとも一部も含有するであろう。さらなる詳細については、Jones等, Nature 321: 522 -525 (1986);Reichmann等, Nature 332: 323-329 (1988);Presta, Curr. Op. struct. Biol. 2: 593 -596 (1992)を参照のこと。ヒト化抗体は、抗体の抗原結合領域が、関心のある抗原でマカクザルを免疫化することにより生産された抗体から由来するプリマタイズしたPRIMATIZED(商品名)抗体を含む。
「一本鎖Fv」又は「sFv」抗体断片は、抗体のV及びVドメインを含む抗体断片を含み、これらのドメインは単一のポリペプチド鎖に存在する。好ましくは、FvポリペプチドはV及びVドメイン間にポリペプチドリンカーを更に含み、それはsFVが抗原結合に望まれる構造を形成するのを可能にする。sFvの概説については、The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, vol. 113, Rosenburg及びMoore編, Springer-Verlag, New York, pp. 269-315 (1994)のPluckthunを参照のこと。
【0030】
「ダイアボディ」なる用語は、二つの抗原結合部位を持つ小さい抗体断片を指し、その断片は同一のポリペプチド鎖(V−V)内で軽鎖可変ドメイン(V)に重鎖可変ドメイン(V)が結合している。非常に短いために同一鎖上で二つのドメインの対形成を可能にするリンカーを使用して、ドメインを他の鎖の相補ドメインと強制的に対形成させ、二つの抗原結合部位を創製する。ダイアボディーは、例えば、EP404097;WO93/11161;及びHollingerら, Proc.Natl.Acad.Sci. USA 90:6444-6448 (1993)に更に詳細に記載されている。
「単離された」抗体とは、その自然環境の成分から同定され分離され又は回収されたものを意味する。その自然環境の汚染成分とは、抗体の診断又は治療への使用を妨害する物質であり、酵素、ホルモン、及び他の非タンパク質様溶質が含まれる。好ましい実施態様において、抗体は、(1)ローリー(Lowry)法によって決定した場合95重量%以上の、最も好ましくは99重量%の抗体まで、(2)スピニングカップシークエネーターを使用することにより、少なくとも15のN末端あるいは内部アミノ酸配列の残基を得るのに充分な程度まで、あるいは(3)クーマシーブルーあるいは好ましくは銀染色を用いた還元又は非還元条件下でのSDS-PAGEによる均一性まで精製される。単離された抗体には、組換え細胞内のインサイツの抗体が含まれるが、これは抗体の自然環境の少なくとも1つの成分が存在しないからである。しかしながら、通常は、単離された抗体は少なくとも1つの精製工程により調製される。
「標識」という語は、ここで用いられる場合、抗体に直接的又は間接的に結合して「標識化」抗体を生成する検出可能な化合物又は組成物を意味する。標識はそれ自身によって検出可能でもよく(例えば、放射性同位体標識又は蛍光標識)、あるいは、酵素標識の場合には、検出可能な基質化合物又は組成物の化学的変換を触媒してもよい。検出可能な標識を提供しうる放射性ヌクレオチドは、例えば、I-131、I-123、I-125、Y-90、Re-188、Re-186、At-211、Cu-67、Bi-212、及びPd-109を含む。
「固相」とは、本発明の抗体が接着できる非水性マトリクスを意味する。ここに包含される固相の例は、部分的又は全体的にガラス(例えば、孔の制御されたガラス)、ポリサッカリド(例えばアガロース)、ポリアクリルアミド、ポリスチレン、ポリビニルアルコール及びシリコーンで形成されたものを含む。或る実施態様では、前後関係に応じて、固相はアッセイ用プレートのウェル;その他では精製用カラム(例えばアフィニティクロマトグラフィカラム)を含むことができる。また、この用語は、米国特許第4,275,149号に記載されたような別々の粒子の不連続な固体相も含む。
【0031】
II. 本発明の組成物と方法
A.全長PRO201、PRO308又はPRO309
本発明は、本出願においてヒト及びPRO201、PRO308又はPRO309と称されるポリペプチドをコードする、新規に同定され単離された核酸配列を提供する。特に本出願人は、以下の実施例で更に詳細に開示するような、PRO201、PRO308又はPRO309ポリペプチドをコードするcDNAを同定し単離した。初期パラメータに設定されたBLAST-2配列アラインメントコンピュータプログラムを用いて、本出願人は、全長天然配列Nsp1、Nsp2及びNsp3(Fig6A及び6B及び配列番号:1及び3に各々示す)がSH2相同領域を有するが、Nsp1、Nsp2及びNsp3(配列番号:1、3及び5)がプロリン/セリン富化(P/S)領域相同性を有することを見出した。SH2ドメインは特異的にホスホチロシル残基に結合するが、P/S領域は潜在的SH3相互作用ドメインである。従って、現在では、本出願で開示されるヒトPRO201、PRO308又はPRO309がアダプタータンパク質の新たに同定されたメンバーであり、細胞内シグナル伝達経路を変調しうると考えられている。
【0032】
B.PRO201、PRO308又はPRO309変異体
ここに記載した全長天然配列PRO201、PRO308又はPRO309に加えて、PRO201、PRO308又はPRO309変異体も調製できると考えられる。PRO201、PRO308又はPRO309変異体は、公知のPRO201、PRO308又はPRO309DNAに適当なヌクレオチド変化を導入することにより、あるいは所望のPRO201、PRO308又はPRO309ポリペプチドを合成することにより調製できる。当業者は、適切なアミノ酸変化がPRO201、PRO308又はPRO309ポリペプチドの翻訳後プロセスを変えうることを理解するであろう。天然全長配列PRO201、PRO308又はPRO309又はここに記載したPRO201、PRO308又はPRO309の種々のドメインにおける変異は、例えば、米国特許第5,364,934号に記載されている保存的及び非保存的変異についての任意の技術及び指針を用いてなすことができる。変異は、結果として天然配列PRO201、PRO308又はPRO309と比較してPRO201、PRO308又はPRO309のアミノ酸配列が変化するPRO201、PRO308又はPRO309をコードする一又は複数のコドンの置換、欠失又は挿入であってよい。場合によっては、変異は少なくとも1つのアミノ酸のPRO201、PRO308又はPRO309一又は複数のドメインの任意の他のアミノ酸による置換である。いずれのアミノ酸残基が所望の活性に悪影響を与えることなく挿入、置換又は欠失されるかの指針は、PRO201、PRO308又はPRO309の配列を相同性の知られたタンパク質分子の配列と比較し、相同性の高い領域内でなされるアミノ酸配列変化を最小にすることによって見出される。アミノ酸置換は、一のアミノ酸を類似した構造又は化学特性を持つ他のアミノ酸で置換した結果、例えばロイシンのセリンでの置換、即ち保存的アミノ酸置換とすることができる。挿入及び欠失は、場合によっては1から5のアミノ酸の範囲内とすることができる。許容される変異は、配列においてアミノ酸の挿入、欠失又は置換を系統的に作成し、得られた変異体を下記の実施例に記載するインビトロアッセイの任意のもので活性について試験することにより決定される。
【0033】
変異は、オリゴヌクレオチド媒介(部位特異的)突然変異誘発、アラニンスキャンニング、及びPCR突然変異誘発等のこの分野で周知の技術を用いてなすことができる。部位特異的突然変異誘発[Carter等, Nucl. Acids Res., 13: 4331 (1986); Zoller等, Nucl. Acids Res., 10: 6487 (1987)]、カセット突然変異誘発[Wells等, Gene, 34: 315 (1985)]、制限的選択突然変異誘発[Wells等, Philos. Trans. R. Soc. London SerA, 317: 415 (1986)]又は他のこの分野で知られた技術をクローニングしたDNAに実施して、PRO201、PRO308又はPRO309変異体DNAを作成することもできる。
また、隣接配列に沿って一又は複数のアミノ酸を同定するのにスキャンニングアミノ酸分析を用いることができる。中でも好ましいスキャンニングアミノ酸は、比較的小さく、中性のアミノ酸である。そのようなアミノ酸は、アラニン、グリシン、セリン、及びシステインを含む。アラニンは、ベータ炭素を越える側鎖を排除し変異体の主鎖構造を変化させにくいので、この群の中で典型的に好ましいスキャンニングアミノ酸である。また、アラニンは最もありふれたアミノ酸であるため典型的には好ましい。さらに、それは埋もれた及び露出した位置の両方に見られることが多い[Creighton, The Proteins, (W.H. Freeman & Co., N.Y.); Chothia, J. Mol. Biol., 150: 1 (1976)]。アラニン置換が十分な量の変異体を生じない場合は、アイソテリック(isoteric)アミノ酸を用いることができる。
【0034】
C.PRO201、PRO308又はPRO309の修飾
PRO201、PRO308又はPRO309の共有結合的修飾は本発明の範囲内に含まれる。共有結合的修飾の一型は、PRO201、PRO308又はPRO309の標的とするアミノ酸残基を、PRO201、PRO308又はPRO309の選択された側鎖又はN又はC末端残基と反応できる有機誘導体化試薬と反応させることである。二官能性試薬での誘導体化が、例えばPRO201、PRO308又はPRO309を水不溶性支持体マトリクスあるいは抗-PRO201、PRO308又はPRO309抗体の精製方法又はその逆で用いるための表面に架橋させるのに有用である。通常用いられる架橋剤は、例えば、1,1-ビス(ジアゾアセチル)-2-フェニルエタン、グルタルアルデヒド、N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、例えば4-アジドサリチル酸、3,3’-ジチオビス(スクシンイミジルプロピオネート)等のジスクシンイミジルエステルを含むホモ二官能性イミドエステル、ビス-N-マレイミド-1,8-オクタン等の二官能性マレイミド、及びメチル-3-[(p-アジドフェニル)-ジチオ]プロピオイミダート等の試薬を含む。
他の修飾は、グルタミニル及びアスパラギニル残基の各々対応するグルタミル及びアスパルチルへの脱アミノ化、プロリン及びリシンのヒドロキシル化、セリル又はトレオニル残基のヒドロキシル基のリン酸化、リシン、アルギニン、及びヒスチジン側鎖のα-アミノ基のメチル化[T.E. Creighton, Proteins: Structure and Molecular Properties, W.H. Freeman & Co., San Francisco, pp.79-86 (1983)]、N末端アミンのアセチル化、及び任意のC末端カルボキシル基のアミド化を含む。
【0035】
本発明の範囲内に含まれるPRO201、PRO308又はPRO309ポリペプチドの共有結合的修飾の他の型は、ポリペプチドの天然グリコシル化パターンを変更することを含む。「天然グリコシル化パターンの変更」とは、天然配列PRO201、PRO308又はPRO309に見出される1つ又は複数の炭水化物部分の欠失、又は天然配列PRO201、PRO308又はPRO309に存在しない1つ又は複数のグリコシル化部位を付加すること、及び/又はグリコシル化部位に結合する糖残基の比率及び/又は組成の変更を意味することをここでは意図している。
PRO201、PRO308又はPRO309ポリペプチドへのグリコシル化部位の付加は、アミノ酸配列の変更によって達成されうる。この変更は、例えば、天然配列PRO201、PRO308又はPRO309への一又は複数のセリン又はスレオニン残基の付加、又はこれによる置換によってもなされる(O結合グリコシル化部位の場合)。場合によっては、PRO201、PRO308又はPRO309アミノ酸はDNAレベルでの変化によって、特に、所望のアミノ酸に翻訳するコドンが産生されるように予め選んだ塩基でPRO201、PRO308又はPRO309ポリペプチドをコードしているDNAを突然変異することによって変更される。
PRO201、PRO308又はPRO309ポリペプチド上の炭水化物部分の数を増加させる他の手段は、ポリペプチドへのグリコシドの化学的又は酵素的結合による。これらの方法は1987年9月11日公開の国際特許出願第WO87/05330号及びAplin及びWriston, CRC Crit. Rev. Biochem., pp259-306 (1981)に記載されている。
PRO201、PRO308又はPRO309ポリペプチド上に存在する炭水化物部分の除去は、化学的又は酵素的あるいはグリコシル化の標的となるアミノ酸残基をコードするコドンの突然変異的置換によりなされる。例えば、化学的脱グリコシル化技術は、この分野で知られており、例えば、Hakimuddinほか, Arch. Biochem Biophys., 259:52 (1987)及びEdgeほか, Anal. Biochem., 118:131 (1981)により記載されている。ポリペプチド上の炭水化物部分の酵素的開裂は、Thotakuraほか, Meth. Enzymol., 138:350 (1987)に記載されているように、種々のエンド及びエキソグリコシダーゼを使用して達成することができる。
PRO201、PRO308又はPRO309の共有結合的修飾の他の型は、PRO201、PRO308又はPRO309ポリぺプチドの、種々の非タンパク質様ポリマー、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、又はポリオキシアルキレンの一つへの、米国特許第4,640,835号;第4,496,689号;第4,301,144号;第4,670,417号;第4,791,192号又は第4,179,337号に記載された方法での結合を含む。
【0036】
また、本発明のPRO201、PRO308又はPRO309は、他の異種ポリペプチド又はアミノ酸配列に融合したPRO201、PRO308又はPRO309を含むキメラ分子を形成する方法で修飾してもよい。一実施態様では、このようなキメラ分子は、抗タグ抗体が選択的に結合できるエピトープを提供するタグポリペプチドとPRO201、PRO308又はPRO309との融合を含む。エピトープタグは、一般的にはPRO201、PRO308又はPRO309のアミノ又はカルボキシル末端に位置する。このようなPRO201、PRO308又はPRO309のエピトープタグ形態の存在は、タグポリペプチドに対する抗体を用いて検出することができる。また、エピトープタグの提供は、抗タグ抗体又はエピトープタグに結合する他の型の親和性マトリクスを用いたアフィニティ精製によってPRO201、PRO308又はPRO309を容易に精製できるようにする。もう一つの実施態様において、キメラ分子はPRO201、PRO308又はPRO309の免疫グロブリン又は免疫グロブリンの特定領域との融合体を含む。キメラ分子の二価形態では、このような融合はIgG分子のFc領域であり得る。
種々のタグポリペプチド及びそれら各々の抗体はこの分野で良く知られている。例としては、ポリ−ヒスチジン(poly-his)又はポリ−ヒスチジン−グリシン(poly-his-gly)タグ;flu HAタグポリペプチド及びその抗体12CA5[Field等, Mol. Cell. Biol., 8:2159-2165 (1988)];c-mycタグ及びそれに対する8F9、3C7、6E10、G4、B7及び9E10抗体[Evan等, Molecular and Cellular Biology, 5:3610-3616 (1985)];及び単純ヘルペスウイルス糖タンパク質D(gD)タグ及びその抗体[Paborsky等, Protein Engineering, 3(6):547-553 (1990)]を含む。他のタグポリペプチドは、フラッグペプチド[Hopp等, BioTechnology, 6:1204-1210 (1988)];KT3エピトープペプチド[Martin等, Science, 255:192-194 (1992)];α-チューブリンエピトープペプチド[Skinner等, J. Biol. Chem., 266:15163-15166 (1991)];及びT7遺伝子10タンパク質ペプチドタグ[Lutz-Freyermuth等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 87:6393-6397 (1990)]を含む。
【0037】
D.PRO201、PRO308又はPRO309の調製
以下の説明は、主として、PRO201、PRO308又はPRO309核酸を含むベクターで形質転換又は形質移入された細胞を培養することにより特定のPRO201、PRO308又はPRO309を生産する方法に関する。もちろん、当該分野においてよく知られている他の方法を用いてPRO201、PRO308又はPRO309を調製することはできると考えられる。例えば、PRO201、PRO308又はPRO309配列、又はその一部は、固相技術を用いた直接ペプチド合成によって生産してもよい[例えば、Stewart等, Solid-Phase Peptide Synthesis, W.H. Freeman Co., San Francisco, CA (1969);Merrifield, J. Am. Chem. Soc., 85:2149-2154 (1963)参照]。手動技術又は自動によるインビトロタンパク質合成を行ってもよい。自動合成は、例えば、アプライド・バイオシステムズ・ペプチド合成機(Foster City, CA)を用いて、製造者の指示により実施してもよい。PRO201、PRO308又はPRO309の種々の部分を、別々に化学的に合成し、化学的又は酵素的方法を用いて結合させて全長PRO201、PRO308又はPRO309を生産してもよい。
【0038】
1.PRO201、PRO308又はPRO309をコードするDNAの単離 PRO201、PRO308又はPRO309をコードするDNAは、PRO201、PRO308又はPRO309mRNAを保有していてそれを検出可能なレベルで発現すると考えられる組織から調製されたcDNAライブラリから得ることができる。従って、ヒトPRO201、PRO308又はPRO309DNAは、実施例に記載されるように、ヒトの組織から調製されたcDNAライブラリから簡便に得ることができる。またPRO201、PRO308又はPRO309コード化遺伝子は、ゲノムライブラリから又はオリゴヌクレオチド合成により得ることもできる。
ライブラリは、対象となる遺伝子あるいはその遺伝子によりコードされるタンパク質を同定するために設計された(PRO201、PRO308又はPRO309に対する抗体又は少なくとも約20−80塩基のオリゴヌクレオチド等の)プローブによってスクリーニングできる。選択されたプローブによるcDNA又はゲノムライブラリのスクリーニングは、例えばSambrook等, Molecular Cloning: A Laboratory Manual(New York: Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989)に記載されている標準的な手順を使用して実施することができる。PRO201、PRO308又はPRO309をコードする遺伝子を単離する他の方法はPCR法を使用するものである[Sambrook等,上掲;Dieffenbach等, PCR Primer:A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1995)]。
【0039】
下記の実施例は、cDNAライブラリのスクリーニング技術を記載している。プローブとして選択されたオリゴヌクレオチド配列は、充分な長さで、疑陽性が最小化されるよう充分に明瞭でなければならない。オリゴヌクレオチドは、スクリーニングされるライブラリ内のDNAとのハイブリッド形成時に検出可能であるように標識されていることが好ましい。標識化の方法は当該分野において良く知られており、32P標識されたATPのような放射線標識、ビオチン化あるいは酵素標識の使用が含まれる。中程度の緊縮性及び高度の緊縮性を含むハイブリッド形成条件は、上掲のSambrook等に与えられている。
このようなライブラリースクリーニング法において同定された配列は、Genbank等の公共データベース又は個人の配列データベースに寄託され公衆に利用可能とされている周知の配列と比較及びアラインメントすることができる。分子の一定の領域内又は全長に渡っての(アミノ酸又は核酸レベルのいずれかでの)配列同一性は、相同性測定のための種々のアルゴリズムを用いるBLAST、BLAST-2、ALIGN、DNAstar、及びINHERIT等のコンピュータソフトウェアプログラムを用いた配列アラインメントを通して決定することができる。
タンパク質コード化配列を有する核酸は、初めてここで開示された推定アミノ酸配列を使用し、また必要ならば、cDNAに逆転写されなかったmRNAの生成中間体及び先駆物質を検出する上掲のSambrook等に記述されているような従来のプライマー伸展法を使用することにより選択したcDNA又はゲノムライブラリのスクリーニングにより得られる。
【0040】
2.宿主細胞の選択及び形質転換
宿主細胞を、ここに記載したPRO201、PRO308又はPRO309生成のための発現又はクローニングベクターで形質移入又は形質転換し、プロモーターを誘導し、形質転換体を選択し、又は所望の配列をコードする遺伝子を増幅するために適当に変性された常套的栄養培地で培養する。培養条件、例えば培地、温度、pH等々は、過度の実験をすることなく当業者が選ぶことができる。一般に、細胞培養の生産性を最大にするための原理、プロトコール、及び実用技術は、Mammalian Cell Biotechnology: a Practical Approach, M.Butler編 (IRL Press, 1991)及びSambrook等, 上掲に見出すことができる。
形質移入の方法、例えば、CaPO及びエレクトロポレーションは当業者に知られている。用いられる宿主細胞に応じて、その細胞に対して適した標準的な方法を用いて形質転換はなされる。前掲のSambrook等に記載された塩化カルシウムを用いるカルシウム処理又はエレクトロポレーションが、原核生物又は実質的な細胞壁障壁を含む他の細胞に対して用いられる。アグロバクテリウム・トゥメファシエンスによる感染が、Shaw等, Gene, 23:315 (1983)及び1989年6月29日公開のWO 89/05859に記載されているように、或る種の植物細胞の形質転換に用いられる。このような細胞壁のない哺乳動物の細胞に対しては、Graham及びvan der Eb, Virology, 52:456-457 (1978)のリン酸カルシウム沈降法が好ましい。哺乳動物細胞の宿主系形質転換の一般的な態様は米国特許第4,399,216号に記載されている。酵母菌中への形質転換は、典型的には、Van solingen等, J. Bact., 130:946 (1977)及びHsiao等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 76:3829 (1979)の方法に従って実施される。しかしながら、DNAを細胞中に導入する他の方法、例えば、核マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、無傷の細胞、又はポリカチオン、例えばポリブレン、ポリオルニチン等を用いる細菌プロトプラスト融合もまた用いることもできる。哺乳動物細胞を形質転換するための種々の技術については、Keown等, Methods in Enzymology, 185:527-537 (1990)及び Mansour等, Nature, 336:348-352 (1988)を参照のこと。
【0041】
ここに記載のベクターにおいてDNAをクローン化あるいは発現するために適切な宿主細胞は、原核生物、酵母菌、又は高等真核生物細胞である。適切な原核生物は、限定するものではないが、真正細菌、例えばグラム陰性又はグラム陽性生物体、例えば大腸菌のような腸内細菌科を含む。種々の大腸菌株が公衆に利用可能であり、例えば、大腸菌K12株MM294(ATCC31,446);大腸菌X1776(ATCC31,537);大腸菌株W3110(ATCC27,325)及びK5772(ATCC53,635)である。
原核生物に加えて、糸状菌又は酵母菌のような真核微生物は、PRO201、PRO308又はPRO309をコードするベクターのための適切なクローン化又は発現宿主である。サッカロミセス・セレヴィシアは、通常用いられる下等真核生物宿主微生物である。
PRO201、PRO308又はPRO309の発現に適切な宿主細胞は、多細胞生物から誘導される。無細胞の例としては、ショウジョウバエS2及びスポドスペラSf9等の昆虫細胞並びに植物細胞が含まれる。有用な哺乳動物宿主株化細胞の例は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)及びCOS細胞を含む。より詳細な例は、SV40によって形質転換されたサル腎臓CV1株 (COS-7, ATCC CRL 1651);ヒト胚腎臓株(293又は懸濁培養での増殖のためにサブクローン化された293細胞、Graham等, J. Gen Virol., 36:59 (1977));チャイニーズハムスター卵巣細胞/-DHFR(CHO, Urlaub及びChasin, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77:4216 (1980));マウスのセルトリ細胞(TM4, Mather, Biol. Reprod., 23:243-251 (1980));ヒト肺細胞 (W138, ATCC CCL 75);ヒト肝細胞 (Hep G2, HB 8065);及びマウス***腫瘍細胞 (MMT 060562, ATTC CCL51)を含む。適切な宿主細胞の選択は、この分野の技術常識内にある。
【0042】
3.複製可能なベクターの選択及び使用
PRO201、PRO308又はPRO309をコードする核酸(例えば、cDNA又はゲノムDNA)は、クローニング(DNAの増幅)又は発現のために複製可能なベクター内に挿入される。様々なベクターが公的に入手可能である。ベクターは、例えば、プラスミド、コスミド、ウイルス粒子、又はファージの形態とすることができる。適切な核酸配列が、種々の手法によってベクターに挿入される。一般に、DNAはこの分野で周知の技術を用いて適当な制限エンドヌクレアーゼ部位に挿入される。ベクター成分としては、一般に、これらに制限されるものではないが、一又は複数のシグナル配列、複製開始点、一又は複数のマーカー遺伝子、エンハンサーエレメント、プロモーター、及び転写終結配列を含む。これらの成分の一又は複数を含む適当なベクターの作成には、当業者に知られた標準的なライゲーション技術を用いる。
PRO201、PRO308又はPRO309は直接組換え的に生産されるだけではなく、シグナル配列あるいは成熟タンパク質あるいはポリペプチドのN末端に特異的切断部位を有する他のポリペプチドである異種性ポリペプチドとの融合ペプチドとしても生産される。一般に、シグナル配列はベクターの成分であるか、ベクターに挿入されるPRO201、PRO308又はPRO309DNAの一部である。シグナル配列は、例えばアルカリホスファターゼ、ペニシリナーゼ、lppあるいは熱安定なエンテロトキシンIIリーダーの群から選択される原核生物シグナル配列であってよい。酵母の分泌に関しては、シグナル配列は、例えば酵母インベルターゼリーダー、アルファ因子リーダー(酵母菌属(Saccharomyces)及びクルイベロマイシス(Kluyveromyces)α因子リーダーを含み、後者は米国特許第5010182号に記載されている)、又は酸ホスフォターゼリーダー、白体(C.albicans)グルコアミラーゼリーダー(1990年4月4日発行のEP362179)、又は1990年11月15日に公開された国際特許出願第WO90/13646号に記載されているシグナルであり得る。哺乳動物細胞の発現においては、同一あるいは関連する種の分泌ポリペプチド由来のシグナル配列、ウイルス分泌リーダーのような他の哺乳動物のシグナル配列をタンパク質の直接分泌に使用してもよい。
発現及びクローニングベクターは共に一又は複数の選択された宿主細胞においてベクターの複製を可能にする核酸配列を含む。そのような配列は多くの細菌、酵母菌及びウイルスに対してよく知られている。プラスミドpBR322に由来する複製開始点は大部分のグラム陰性細菌に好適であり、2uプラスミド開始点は酵母菌に適しており、様々なウイルス開始点(SV40、ポリオーマ、アデノウイルス、VSV又はBPV)は哺乳動物細胞におけるクローニングベクターに有用である。好ましい複製可能なベクターは、プラスミドpRK5である。Holmes等, Science, 253: 1278-1280 (1991)。
【0043】
発現及びクローニングベクターは、典型的には、選べるマーカーとも称される選択遺伝子を含む。典型的な選択遺伝子は、(a)アンピシリン、ネオマイシン、メトトレキセートあるいはテトラサイクリンのような抗生物質あるいは他の毒素に耐性を与え、(b)栄養要求性欠陥を補い、又は(c)例えばバシリに対する遺伝子コードD-アラニンラセマーゼのような、複合培地から得られない重要な栄養素を供給するタンパク質をコードする。
哺乳動物細胞に適切な選べるマーカーの他の例は、DHFRあるいはチミジンキナーゼのように、PRO201、PRO308又はPRO309核酸を取り込むことのできる細胞成分を同定することのできるものである。野生型DHFRを用いた場合の好適な宿主細胞は、Urlaub 等により, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77:4216 (1980)に記載されているようにして調製され増殖されたDHFR活性に欠陥のあるCHO株化細胞である。酵母菌中での使用に好適な選択遺伝子は酵母菌プラスミドYRp7に存在するtrp1遺伝子である[Stinchcomb等, Nature, 282:39(1979);Kingman等, Gene, 7:141(1979);Tschemper等, Gene, 10:157(1980)]。trp1遺伝子は、例えば、ATCC第44076号あるいはPEP4-1のようなトリプトファン内で成長する能力を欠く酵母菌の突然変異株に対する選択マーカーを提供する[Jones, Genetics, 85:12 (1977)]。
【0044】
発現及びクローニングベクターは、通常、PRO201、PRO308又はPRO309核酸配列に作用可能に結合し、mRNA合成を制御するプロモーターを含む。種々の可能な宿主細胞により認識される好適なプロモーターが知られている。原核生物宿主での使用に好適なプロモーターはβ-ラクタマーゼ及びラクトースプロモーター系[Cahng等, Nature, 275:615 (1978); Goeddel等, Nature, 281:544 (1979)]、アルカリホスファターゼ、トリプトファン(trp)プロモーター系[Goeddel, Nucleic Acids Res., 8:4057 (1980); EP 36,776]、及びハイブリッドプロモーター、例えばtacプロモーター[deBoer 等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 80:21-25 (1983)]を含む。細菌系で使用するプロモータもまたPRO201、PRO308又はPRO309をコードするDNAと作用可能に結合したシャイン・ダルガーノ(S.D.)配列を有する。
酵母菌宿主と共に用いて好適なプロモーター配列の例としては、3-ホスホグリセラートキナーゼ[Hitzeman 等, J. Biol. Chem., 255:2073 (1980)]又は他の糖分解酵素[Hess 等, J. Adv. Enzyme Reg., 7:149 (1968);Holland, Biochemistry, 17:4900(1978)]、例えばエノラーゼ、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ、ヘキソキナーゼ、ピルビン酸デカルボキシラーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、グルコース-6-リン酸イソメラーゼ、3-ホスホグリセレートムターゼ、ピルビン酸キナーゼ、トリオセリン酸イソメラーゼ、ホスホグルコースイソメラーゼ、及びグルコキナーゼが含まれる。
【0045】
他の酵母菌プロモーターとしては、成長条件によって転写が制御される付加的効果を有する誘発的プロモーターであり、アルコールデヒドロゲナーゼ2、イソチトクロムC、酸ホスファターゼ、窒素代謝と関連する分解性酵素、メタロチオネイン、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ、及びマルトース及びガラクトースの利用を支配する酵素のプロモーター領域がある。酵母菌での発現に好適に用いられるベクターとプロモータはEP 73,657に更に記載されている。
哺乳動物の宿主細胞におけるベクターからのPRO201、PRO308又はPRO309転写は、例えば、ポリオーマウィルス、伝染性上皮腫ウィルス(1989年7月5日公開のUK 2,211,504)、アデノウィルス(例えばアデノウィルス2)、ウシ乳頭腫ウィルス、トリ肉腫ウィルス、サイトメガロウィルス、レトロウィルス、B型肝炎ウィルス及びサルウィルス40(SV40)のようなウィルスのゲノムから得られるプロモーター、異種性哺乳動物から得られるプロモーター、例えばアクチンプロモーター又は免疫グロブリンプロモーター、及び熱衝撃プロモーターから得られるプロモーターによって、このようなプロモーターが宿主細胞系に適合し得る限り制御される。
【0046】
より高等の真核生物によるPRO201、PRO308又はPRO309をコードしているDNAの転写は、ベクター中にエンハンサー配列を挿入することによって増強され得る。エンハンサーは、通常は約10から300塩基対で、プロモーターに作用してその転写を増強するDNAのシス作動要素である。哺乳動物遺伝子由来の多くのエンハンサー配列が現在知られている(グロビン、エラスターゼ、アルブミン、α-フェトプロテイン及びインスリン)。しかしながら、典型的には、真核細胞ウィルス由来のエンハンサーが用いられるであろう。例としては、複製起点の後期側のSV40エンハンサー(100−270塩基対)、サイトメガロウィルス初期プロモーターエンハンサー、複製起点の後期側のポリオーマエンハンサー及びアデノウィルスエンハンサーが含まれる。エンハンサーは、PRO201、PRO308又はPRO309コード化配列の5’又は3’位でベクター中にスプライシングされ得るが、好ましくはプロモーターから5’位に位置している。
また真核生物宿主細胞(酵母菌、真菌、昆虫、植物、動物、ヒト、又は他の多細胞生物由来の有核細胞)に用いられる発現ベクターは、転写の終結及びmRNAの安定化に必要な配列も含む。このような配列は、真核生物又はウィルスのDNA又はcDNAの通常は5’、時には3’の非翻訳領域から取得できる。これらの領域は、PRO201、PRO308又はPRO309をコードしているmRNAの非翻訳部分にポリアデニル化断片として転写されるヌクレオチドセグメントを含む。
組換え細胞培養でのPRO201、PRO308又はPRO309の合成に適応化するのに適切なさらに他の方法、ベクター及び宿主細胞は、Gething等, Nature, 293:620-625 (1981); Mantei等, Nature, 281:40-46 (1979); EP 117,060; 及びEP 117,058に記載されている。
【0047】
4.遺伝子増幅/発現の検出
遺伝子の増幅又は発現は、ここで提供された配列に基づき、適切に標識されたプローブを用い、例えば、従来よりのサザンブロット法、mRNAの転写を定量化するノーザンブロット法[Thomas, Proc. Natl. Acad. Sci. USA,77:5201-5205 (1980)]、ドットブロット法(DNA分析)、又はインサイツハイブリッド形成法によって、直接的に試料中で測定することができる。あるいは、DNA二本鎖、RNA二本鎖及びDNA−RNAハイブリッド二本鎖又はDNA-タンパク二本鎖を含む、特異的二本鎖を認識することができる抗体を用いることもできる。次いで、抗体を標識し、アッセイを実施することができ、ここで二本鎖は表面に結合しており、その結果二本鎖の表面での形成の時点でその二本鎖に結合した抗体の存在を検出することができる。
あるいは、遺伝子の発現は、遺伝子産物の発現を直接的に定量する免疫学的な方法、例えば細胞又は組織切片の免疫組織化学的染色及び細胞培養又は体液のアッセイによって、測定することもできる。試料液の免疫組織化学的染色又はアッセイに有用な抗体は、モノクローナルでもポリクローナルでもよく、任意の哺乳動物で調製することができる。簡便には、抗体は、天然配列PRO201、PRO308又はPRO309ポリペプチドに対して、又はここで提供されるDNA配列をベースとした合成ペプチドに対して、又はPRO201、PRO308又はPRO309DNAに融合し特異的抗体エピトープをコードする外因性配列に対して調製され得る。
【0048】
5.ポリペプチドの精製
PRO201、PRO308又はPRO309の形態は、培地又は宿主細胞の溶解液から回収することができる。膜結合性であるならば、適切な洗浄液(例えばトリトン-X100)又は酵素的切断を用いて膜から引き離すことができる。PRO201、PRO308又はPRO309の発現に用いられる細胞は、凍結融解サイクル、超音波処理、機械的破壊、又は細胞溶解剤などの種々の化学的又は物理的手段によって破壊することができる。
PRO201、PRO308又はPRO309を、組換え細胞タンパク又はポリペプチドから精製することが望ましい。適切な精製手順の例である次の手順により精製される:すなわち、イオン交換カラムでの分画;エタノール沈殿;逆相HPLC;シリカ又はカチオン交換樹脂、例えばDEAEによるクロマトグラフィー;クロマトフォーカシング;SDS-PAGE;硫酸アンモニウム沈殿;例えばセファデックスG-75を用いるゲル濾過;IgGのような汚染物を除くプロテインAセファロースカラム;及びPRO201、PRO308又はPRO309のエピトープタグ形態を結合させる金属キレート化カラムである。この分野で知られ、例えば、Deutcher, Methodes in Enzymology, 182 (1990);Scopes, Protein Purification: Principles and Practice, Springer-Verlag, New York (1982)に記載された多くのタンパク質精製方法を用いることができる。選ばれる精製過程は、例えば、用いられる生産方法及び特に生産されるPRO201、PRO308又はPRO309の性質に依存する。
【0049】
E.PRO201、PRO308又はPRO309の用途
PRO201、PRO308又はPRO309をコードする核酸配列(又はそれらの相補配列)は、ハイブリッド形成プローブとしての使用を含む分子生物学の分野において、染色体及び遺伝子マッピングにおいて、及びアンチセンスRNA及びDNAの生成において種々の用途を有している。また、PRO201、PRO308又はPRO309核酸は、ここに記載される組み換え技術によるPRO201、PRO308又はPRO309ポリペプチドの調製にも有用であろう。
全長天然配列PRO201、PRO308又はPRO309(配列番号:1、3及び5)遺伝子、又はその一部は、全長遺伝子の単離又はFig1−3(配列番号:1、3及び5)に開示されたPRO201、PRO308又はPRO309配列に対して所望の配列同一性を持つ更に他の遺伝子(例えば、PRO201、PRO308又はPRO309の天然発生変異体又は他の種からのPRO201、PRO308又はPRO309をコードするもの)の単離のためのcDNAライブラリ用のハイブリッド形成プローブとして使用できる。場合によっては、プローブの長さは約20〜約50塩基である。ハイブリッド形成プローブは、配列番号:1、3又は5の核酸配列から、又は天然配列PRO201、PRO308又はPRO309のプロモーター、エンハンサー成分及びイントロンを含むゲノム配列から誘導され得る。例えば、スクリーニング法は、PRO201、PRO308又はPRO309遺伝子のコード化領域を周知のDNA配列を用いて単離して約40塩基の選択されたプローブを合成することを含む。ハイブリッド形成プローブは、32P又は35S等の放射性ヌクレオチド、又はアビジン/ビオチン結合系を介してプローブに結合したアルカリホスファターゼ等の酵素標識を含む種々の標識で標識されうる。本発明のPRO201、PRO308又はPRO309遺伝子に相補的な配列を有する標識されたプローブは、ヒトcDNA、ゲノムDNA又はmRNAのライブラリーをスクリーニングし、それらのライブラリーの何れのメンバーがプローブにハイブッド形成するかを決定するのに使用できる。ハイブリッド形成技術は、以下の実施例において更に詳細に記載する。
また、プローブは、PCR技術に用いて、密接に関連したPRO201、PRO308又はPRO309配列の同定のための配列のプールを作成することができる。
【0050】
また、PRO201、PRO308又はPRO309をコードする核酸配列は、そのPRO201、PRO308又はPRO309をコードする遺伝子のマッピングのため、及び遺伝子疾患を持つ個体の遺伝子分析のためのハイブリッド形成プローブの作成にも用いることができる。ここに提供される核酸配列は、インサイツハイブリッド形成、既知の染色体マーカーに対する結合分析、及びライブラリーでのハイブリッド形成スクリーニング等の周知の技術を用いて、染色体及び染色体の特定領域にマッピングすることができる。
PRO201、PRO308又はPRO309のコード化配列が他のタンパク質と結合するタンパク質をコードするとき(例えば、PRO201、PRO308又はPRO309がレセプターである場合)、PRO201、PRO308又はPRO309は結合性相互作用に含まれる他のタンパク質又は分子を同定するアッセイに用いることができる。
このような方法によって、レセプター/リガンド結合性相互作用の阻害剤を同定することができる。このような結合性相互作用に含まれるタンパク質も、ペプチド又は小分子阻害剤又は結合性相互作用のアゴニストのスクリーニングに用いることができる。また、PRO201、PRO308又はPRO309は、関連するリガンドの単離に使用することもできる。スクリーニングアッセイは、天然PRO201、PRO308又はPRO309の生物学的活性に似たリード化合物の発見のために、又はPRO201、PRO308又はPRO309に対してレセプターとして作用するものの発見のために設計される。このようなスクリーニングアッセイは、化学的ライブラリーの高スループットスクリーニングにも用いられ、小分子候補薬剤の同定に特に適したものとする。考慮される小分子は、合成有機又は無機化合物を含む。アッセイは、この分野で良く知られ特徴付けられているタンパク質−タンパク質結合アッセイ、生化学的スクリーニングアッセイ、免疫検定及び細胞ベースのアッセイを含む種々の型式で実施される。
【0051】
DNA30676(配列番号:2)は単一の長いオープンリーディングフレームを含み、それは、ここでNsp1(新規なSH2含有タンパク質)(Fig1)と命名される576アミノ酸タンパク質をコードする。表示したN-末端相同性で決定した場合、Nsp1(配列番号:1)はSck及びShc(Fig8、配列番号:16及び17)に関連する。Nsp1(配列番号:1)は、タンパク質の中程にプロリン−セリン富化ドメイン(P/S)を有し、それはSH3相互作用ドメインとして機能しうる。タンパク質のC末端は既知の哺乳動物タンパク質と明らかに関連する相同性を持たない。Nsp1(配列番号:1)、Nsp2(配列番号:3)及びNsp3(配列番号:5)は、33から47%の全体相同性を占める。Nsp3(配列番号:5)はSH2ドメイン及び潜在的SH3相互作用ドメインを有し、Nsp2(配列番号:3)はSH2ドメインを欠くが潜在的SH3ドメインは有する。Nsp2(配列番号:3)にSH2ドメインが無いことは、このタンパク質が他の2つのNspのネガティブレギュレータとして作用しうることを示唆している。見かけのキナーゼ又はホスファターゼドメインを欠くことは、これらがアダプタータンパク質の新規なファミリーに対応することを示唆している。
アダプタータンパク質は多重シグナル伝達カスケードの統合及び細胞外刺激に対する特定反応の決定において重要な役割を果たすと考えられている。レセプターチロシンキナーゼを介してEGF又はIGF-1等の成長因子により、又はインテグリンレセプターを介して作用する細胞外マトリクス成分により生成されるシグナルは細胞骨格の変化を誘発しうる。出願人はEGFレセプターがNsp1と同時免疫沈降し、EGFシグナル伝達に対してリン酸化されることを示した。即ち、Nsp1のアンタゴニストはEGFやIGF-1等の成長因子による刺激による細胞性応答(例えば、腫瘍形成能)を阻害するのに有用であると予測される。
【0052】
幾つかの特徴は、Nsp1が外部刺激に対する応答を変調させるのに重要な役割を果たすことを示唆する。Nsp1(配列番号:1)はEGF刺激に対してリン酸化されてEGFレセプター、PI3キナーゼ及びCasを含む複合体を形成する。Nsp1/Cas複合体はフィブロネクチンレセプターをカイするシグナル伝達にも応答する。しかしながら、相互作用の化学量論及び成分のリン酸化状態は2つの刺激で相違する。これらの細胞外シグナルに対する生物学的結果がNsp1有無で全く相違することが暗示される。例えば、FAKは、FAKP(715)SRP−マウス命名法のC-末端でのPXXP領域を介してCasのSH3領域と関連する(Harte等, j. bIOL. cHEM. 271: 13649-55 (1996))。Nsp1(配列番号:1)には6つのPXXPがある。これは、Nsp1がCas上のSH3と競合し、Casに結合したFakの量を減少させてFak依存性事象を変える可能性を生ずる。このデータは、EGFがNsp1(配列番号:1)に関連するCasのリン酸化の程度のける減少を媒介することに合致する。この複合体は次いでCasのリン酸化チロシンに関連するタンパク質の数を減少させ、下流側の事象での変化を導く。Nsp1(配列番号:1)の発現は胎児組織で最も高いので、このタンパク質は潜在的に細胞外シグナルの発生的読み出しの媒介において重要な役割を果たしうる。
【0053】
F.PRO201、PRO308又はPRO309ポリペプチドをコードする遺伝子の主要素式及び細胞系での増幅
この発明は部分的にある種の癌細胞で増幅される遺伝子の同定及び特徴付けに基づいている。
原核生物及び真核生物ゲノムに2つの見掛け上は矛盾する要件を課した。一方は、遺伝情報としてのDNAのその最初の形態での保存及び繁殖であり、複数の世代を通して安定な遺伝を確保する。他方では、細胞又は生物が最近の環境変化を採用しなければならない。適応メカニズムは遺伝子物質の質的又は量的改変を含みうる。質的改変は、コード化配列が変化して構造的又は機能的に異なるタンパク質を生ずるDNA変異を含む。遺伝子増幅は量的改変であり、それにより実際の完全なコード化配列、即ち遺伝子の数が増加し、転写に利用できるテンプレート数の増加、翻訳可能な転写物の数の増加、及び最終的には増幅された遺伝子にコードされるタンパク質の量の増加をもたらす。
遺伝子増幅の現象及びそこにあるメカニズムは、幾つかの原核及び真核生物細胞培養系でインビトロ実験されている。遺伝子増幅の最も特徴づけられた例は、種々の濃度の細胞毒性薬メトトレキセート(MTX)を含有する培地での真核生物細胞の培養を含む。MTXは葉酸類似物であり酵素デヒドロフォレートレダクターゼ(DHFR)のブロックによりDNA合成を妨害する。低濃度のMTXに最初に暴露すると殆どの細胞(>99.9%)が死亡する。少量の細胞は生き残り、多量のDHFR-RNA及びタンパク質を生産することによりMTX濃度を増加させても成長できる。この過剰生産の基礎は単一のDHFR遺伝子の増幅である。遺伝子のさらなるコピーは、小さく過剰な染色体(二重微小)の形態で染色体外コピーとして、又は一体化染色体コピーとして見られる。
【0054】
遺伝子増幅は、細胞毒性薬(最近に対する抗生物質及び真核生物に対する化学治療薬)への耐性の進行及び腫瘍形成性形質転換において最も普通に起こる。自発的事象としての又はウイルス又は化学/環境侵襲による真核生物の形質転換は典型的にその細胞の遺伝物質における変化を伴う。ヒト悪性収容で観察される最も通常の遺伝的変化はp53タンパク質の突然変異である。p53は、定常(G1)から複製(S)相への細胞の転移を制御し、DNA損傷の存在下でこの転移を防止する。言い換えれば、p53変異不全の主な結果の一つは、DNA損傷の蓄積及び成長、即ち遺伝的変化である。腫瘍形成細胞における遺伝的変化の通常の型は、点変異に加えて、増幅及び全体、構造的改変、例えば転位置である。
DNA配列の増幅は、DHFR実験系で例示したように特定の機能的要件を示す。従って、悪性におけるある種のオンコジーンの増幅は悪性形質転換及び形質転換フェノタイプの維持のプロセスにおけるこれらの遺伝子の原因となる役割を示す。この仮説が最近の研究で支持されている。例えば、bcl-2タンパク質はある型の非ホジキンリンパ腫において増幅されることが見いだされた。このタンパク質はアポトーシスを阻害して腫瘍形成細胞の蓄積を進行させる。成長因子レセプターの遺伝子ファミリのメンバーが種々の型の癌で増幅されることが見いだされ、これらのレセプターの過剰発現が、腫瘍細胞の制限された量の利用可能な成長因子に対する感受性を低下させる。例としては、アンドロゲン欠乏治療の間の再発前立腺癌におけるアンドロゲンレセプターの増幅、及び乳癌における成長因子レセプター相同体ERB2の増幅を含む。最近、細胞間シグナル伝達及び細胞周期進行に含まれる遺伝子が悪性形質転換の間に増幅を受けうる。これは、種々の上皮及びリンパ腫瘍形成におけるbcl-I及びras遺伝子の増幅によって例示される。
【0055】
これらの初期の研究は、これらの方法が悪性形質転換に重要な遺伝子の同定が可能であるため、腫瘍形成において増幅されたDNA配列の同定の可能性を例示する。ERB2の場合も、形質転換タンパク質が腫瘍治療のための新規で特異的な標的を示すので、治療的立場からの可能性を示す。
増幅されたゲノム配列を示すのに幾つかの異なる技術を使用できる。癌細胞から調製した染色体展開の古典的な細胞発生分析は、転位置、欠失及び変換といった全体構造変化を同定するには十分である。増幅ゲノム領域は、それらが高いコピー数を含むか染色体外物質として存在する場合にのみ可視化される。細胞発生は特定の腫瘍形成を持つ特定の染色体変化の一貫した関係を示すための第1の技術だが、管理可能なDNA配列の同定及び単離には不十分である。より最近に開発された技術の競合ゲノムハイブリッド形成(CGH)は腫瘍形成におけるゲノム増幅の広範な現象を例示する。腫瘍及び正常DNAは正常細胞の***中期に同時にハイブリッド形成し、腫瘍に高頻度で存在するDNA配列についての画像分析で全ゲノムをスクリーニングする(WO 93/18,186; Gray等, Radiation Res. 137: 275-289 [1994])。スクリーニング法として、このタイプの分析は、種々のヒト腫瘍における再発アンプリコン(増幅DNAの伸展)の多数を明らかにした。CGHは古典的細胞発生分析よりDNAの増幅伸展の同定において感度が高いが、それは標準的な遺伝子技術によりアンプリコン内のコード化配列の迅速な同定及び単離ができない。
【0056】
遺伝子増幅の検出に最も感度の良い方法はポリメラーゼ連鎖反応(PCR)ベースのアッセイである。これらのアッセイは極めて少量の腫瘍DNAを出発材料として用い、精巧で感度が良く、配列決定などの更なる分析に利用できるDNAを提供し、高容量スループット分析に適している。
上記のアッセイは相互に排他的ではなく、腫瘍形成における増幅の同定にしばしば組み合わせて使用される。細胞発生分析及びCGHは増幅領域の全ゲノムの概観のためのスクリーニング法を代表し、PCRベースのアッセイはコード化配列、即ち増幅領域の遺伝子を最終的に同定するのに最も適している。
本発明により、このような遺伝子は定量的PCR(S. Gelmini等, Clin, Chem. 43: 752 [1997])により、乳、肺、結腸、前立腺、脳、肝臓、腎臓、膵臓、脾臓、精巣、卵巣、子宮など、腫瘍、又は腫瘍細胞系を含む種々の一次腫瘍からのDNAを健常ドナーからのプールしたDNAと比較することにより同定される。定量的PCRは、Taqman装置(ABI)を用いて実施された。遺伝子特異的プライマー及び蛍光発生プローブは、DNAのコード化配列に基づいて設計される。
【0057】
ヒト肺癌細胞系は、A549(SRC768)、Calu-1(SRC769)、Calu-6(SRC770)、H157(SRC771)、H441(SRC772)、H460(SRC773)、H522(SRC832)、H810(SRC833)、SKMES-1(SRC774)及びSW900(SRC775)を含み、全てATCCからである。一次ヒト肺腫瘍細胞は通常は腺癌、扁平上皮細胞癌、大細胞癌、非-小細胞癌、小細胞癌、及び気管支肺胞癌から誘導され、例えば、SRC724(「SqCCa」と略記される扁平上皮細胞癌)(LT1)、SRC725(「NSCCa」と略記される非-小細胞癌)(LT1a)、SRC726(「AdenoCa」と略記される腺癌)(LT2)、SRC 727(腺癌)(LT3)、SRC728(扁平上皮細胞癌)(LT4)、SRC729(腺癌)(LT6)、SRC730(腺/扁平上皮細胞癌)(LT7)、SRC731(腺癌)(LT9)、SRC732(扁平上皮細胞癌)(LT10)、SRC733(LT11)、SRC734(腺癌)(LT12)、SRC735(気管支肺胞癌、「BACと略記」)(LT13)、SRC736(扁平上皮細胞癌)(LT15)、SRC737(扁平上皮細胞癌)(LT16)、SRC738(扁平上皮細胞癌)(LT17)、SRC739(扁平上皮細胞癌)(LT18)、SRC740(扁平上皮細胞癌)(LT19)、SRC741(肺細胞癌、「LCCa」と略記)(LT21)、SRC811(腺癌)(LT22)を含む。
結腸癌細胞系は、例えば、ATCC細胞系SW480(腺癌、SRCC776)、SW620(結腸腺癌のリンパ節転移、SRC777)、Colo320(癌、SRCC778)、Colo205(癌、SRC828)、HCC2998(癌、SRC830)、HT29(癌、SRC779)、HM7(癌、SRC780)、KM12(癌、SRC831)、CaWiDr(腺癌、SRC781)、HCT15(癌、SRC829)、HCT116(癌、SRC782)、SKCO1(腺癌、SRC783)、SW403(腺癌、SRC784)、LS174T(癌、SRC785)、及びHM7(ATCC結腸腺癌細胞系LS174Tの高ムシン産生変異体、Robert Warren博士, UCSFから得た)を含む。一次結腸腫瘍は、CT1(SRC751)、CT2(SRC742)、CT3(SRC743)、CT4(SRC752)、CT5(SRC753)、CT6(SRC754)、CT7(SRC755)、CT8(SRC744)、CT9(SRC756)、CT10(SRC745)、CT11(SRC757)、CT12(SRC746)、CT14(SRC747)、CT15(SRC748)、CT16(SRC749)、CT17(SRC750)、CT18(SRC758)と命名された結腸腺癌を含む。
ヒト乳癌細胞系は、例えば、HBL100(SRCC759)、MB435s(SRCC760)、T47D(SRCC761)、MB468(SRCC762)、MB175(SRCC763)、MB361(SRCC764)、BT20(SRCC765)、MCF7(SRCC766)、SKBR3(SRCC767)を含む。
【0058】
G.組織分布
ここでの遺伝子増幅アッセイの結果は、種々のヒト組織でのmRNA発現の測定などのさらなる実験により確認できる。
上記したように、種々の組織における遺伝子増幅又は遺伝子発現は、mRNAの転写の定量化のための従来のサザンブロット、ノーザンブロット(Thomas, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77: 5201-5205 [1980])、ドットブロット(DNA分析)、又はインサイツハイブリッド形成により、ここに提供する配列にもとづいて適切な標識プローブを用いて測定できる。あるいは、DNA二重鎖、RNA二重鎖、及びDNA-RNAハイブリッド二重鎖又はDNA-タンパク質二重鎖を含む特定の二重鎖を認識する抗体を用いてもよい。
あるいは、種々の組織における遺伝子発現は、遺伝子産物を直接定量化するための、組織断片及び細胞培地又は体液の免疫組織学的染色などの免疫的方法によっても測定できる。免疫組織学的染色又は試料液のアッセイに有用な抗体は、モノクローナルでもポリクローナルでもよく、任意の動物から調製される。便利には、抗体は天然配列PRO201、PRO308又はPRO309ポリペプチドに対して、又はここに提供するDNA配列に基づく合成ペプチドに対して、又はPRO201、PRO308又はPRO309DNA配列に融合し特異的抗体エピトープをコードする細胞外配列に対して調製される。抗体を生成する一般的技術、及びノーザンブロット及びインサイツハイブリッド形成のプロトコールは以下に提供する。
【0059】
H.染色体マッピング
与えられた遺伝子の増幅が機能的に関連する場合は、その遺伝子は、腫瘍生存に重要でない隣接ゲノム領域より多く増幅すべきである。これを試験するために、例えば放射性ハイブリッド分析により、遺伝子を特定染色体にマッピングできる。次いで、増幅レベルを特定した位置及び隣接ゲノム領域において測定する。遺伝子がマッピングされたゲノム領域での選択的又は優先的増幅は、観察された遺伝子増幅が腫瘍成長又は生存を促進する可能性と一致する。染色体マッピングはフレームワーク及びエピセンターマッピングの両方を含む。さらなる詳細は、例えば、Stewart等, Genome Research 7, 422-433 (1997)を参照。
【0060】
I.抗体結合実験
遺伝子増幅実験の結果は、腫瘍(癌)細胞上でのPRO201、PRO308又はPRO309ポリペプチドの発現を阻害する抗-PRO201、抗-PRO308又は抗-PRO309の能力が試験される抗体結合実験によって更に確認できる。例示的な抗体は、ポリクローナル、モノクローナル、ヒト化、二重特異性、及びへテロ抱合体抗体を含み、その調製は如何に記載する。
抗体結合実験は、競合的結合アッセイ、直接及び間接サンドウィッチアッセイ、及び免疫沈降アッセイなどの既知のアッセイ法で実施してよい。Zola, Monoclonal Antibodies: A Manual of Techniques, pp.147-158 (CRC Press, Inc., 1987)。
競合的結合アッセイは、標識標準物の、限られた量の抗体との結合について試験分析物と競合する能力による。試験試料中の(腫瘍細胞で増幅された遺伝子にコードされる)標的タンパク質の量は、抗体に結合し始める標準物の量に逆比例する。結合し始める標準物の量の測定を促進するために、抗体は好ましくは競合の前又は後に固定化し、抗体に結合した標準品及び分析物が未結合で残っている標準物及び分析物から容易に分離できるようにする。
サンドウィッチアッセイは2つの抗体の使用を含み、各々が検出すべきタンパク質の異なる免疫原部分、又はエピトープに結合できる。サンドウィッチアッセイにおいて試験試料分析物は固体支持体上に固定化された第1の抗体に結合し、その後第2の抗体が分析物に結合し、よって不溶性の3成分複合体が形成される。例えば米国特許第4,376,110号参照。第2の抗体は検出可能部分で標識され(直接サンドウィッチアッセイ)、あるいは検出可能部分で標識された抗-免疫グロブリン抗体を用いて測定してもよい(間接サンドウィッチアッセイ)。例えば、サンドウィッチアッセイの一形態はELISAアッセイであり、この場合の検出可能部分は酵素である。
免疫組織学のために、腫瘍試料は新鮮でも凍結したものでもよく、パラフィンに包埋して、例えばホルマリン等の保存剤で固定してもよい。
【0061】
J.細胞ベースの腫瘍アッセイ
細胞ベースアッセイ及び腫瘍(例えば、癌)の動物モデルを用いて、遺伝子増幅アッセイに発見を確認し、ここでの遺伝子増幅と腫瘍形成細胞成長の進行及び病理との関係をさらに理解することができる。ここで同定する遺伝子産物の腫瘍又は癌の進行及び病理における役割は、ここで遺伝子を増幅すると同定された一次腫瘍細胞又は細胞系を用いて試験することができる。このような細胞は、例えば、上記した乳、結腸及び肺癌細胞及び細胞系を含む。
異なる方法では、特定の腫瘍に含まれることが知られた細胞型の細胞をここのcDNAで形質移入し、これらのcDNAの過剰成長誘発能力を分析する。適当な細胞は、例えば、B104-1-1(neuプロトオンコジーンで形質移入された安定なNIH-3T3細胞液)及びras-形質移入NIH-3T3細胞等の安定な腫瘍細胞系を含み、これらは所望の遺伝子で形質移入し、そして腫瘍形成的成長を監視できる。このような形質移入細胞系は、次いで、形質転換細胞の成長に対する細胞***停止又は細胞毒性活性の発揮により、又は抗体依存性細胞性細胞毒性(ADCC)の媒介により、ポリ−又はモノクローナル抗体又は抗体組成物の腫瘍形成細胞成長を阻害する能力を試験するのに使用できる。ここに同定した遺伝子のコード化配列で形質移入した細胞は、さらに、癌治療用の候補薬の同定に使用できる。
さらに、トランスジェニック動物(下記)の腫瘍から誘導された一次培地は、ここでの細胞ベースアッセイに使用できるが、安定な細胞系が好ましい。トランスジェニック動物から連続細胞系を誘導する技術はこの分野で良く知られている(Small等, Mol. Cell. Biol. 5, 642-648 [1985]参照)。
【0062】
K.抗-腫瘍活性のための動物モデル
腫瘍の進行及び原因におけるここに同定される遺伝子の役割を更に理解するために、そして抗体、及び小分子アゴニストを含む天然ポリペプチドの他のアゴニストを含む候補治療薬の有効性を試験するために、種々の良く知られた動物モデルが使用できる。これらのモデルのインビボ性質により、特にヒト患者における反応を予測できる。腫瘍及び癌(例えば、乳癌、結腸癌、前立腺癌、肺癌など)の動物モデルは、非組換え及び組換え(トランスジェニック)動物の両方を含む。非組換え動物モデルは、例えば、齧歯類、例えばマウスモデルを含む。このようなモデルは、標準的な技術、例えば、皮下注射、尾部静脈注射、脾臓移植、腹膜内移植、腎被膜下移植、又はオルトピン(orthopin)移植、例えば結腸組織に移植された結腸癌細胞により、腫瘍細胞を同系マウスに導入することにより作成される。(1997年9月18日に発行されたPCT公報WO 97/33551参照。)
癌遺伝子の研究におそらく最もしばしば用いられる動物種は、免疫不全マウス、特にヌードマウスである。ハイポ/形成不全を持つヌードマウスがヒト腫瘍異種移植の宿主として行動するという観察は、この目的のための広い用途を導いた。常染色体劣性nu遺伝子が、例えば、ASW、A/He、AKR、BALB/c、B10.LP、C17、C3H、C57BL、C57、CBA、DBA、DDD、I/st、NC、NFR、NFS、NFS/N、NZB、NZC、NZW、P、RIII及びSJLを含むヌードマウスの極めて多数の異なる共通遺伝子系統に導入された。さらに、遺伝的な免疫不全を持つヌードマウス以外の広範な他の動物が生育され、腫瘍異種移植のレシピエントとして用いられた。さらなる詳細については、The Nude Mouse in Oncology Research, E. Boven 及び B. Winograd 編, CRC Press, Inc., 1991を参照。
【0063】
これらの動物に導入される細胞は、周知の腫瘍/癌細胞系、例えば上記列挙した腫瘍細胞系、及び、例えばB104-1-1細胞系(neuプロトオンコジーンで形質移入された安定NIH-3T3細胞系);ras-形質移入NIH-3T3細胞:Caco-2(ATCC HTB-37)、中程度に良く分化したグレードIIヒト結腸腺癌細胞系、HT-29(ATCC HTB-38)から、あるいは腫瘍及び癌から誘導することができる。腫瘍又は癌細胞の試料は、手術を受けている患者から、液体窒素中での凍結及び保存を含む標準的な条件を用いて得ることができる(Karmali等, Br. J. Cancer 48, 689-696 [1983])。
腫瘍細胞は、ヌードマウスなどの動物に、種々の手法によって導入できる。マウスの皮下(s.c.)空間は、腫瘍移植に非常に好ましい。腫瘍は、固体ブロックとして、トロチャー(trochar)を用いてニードル生検として、細胞懸濁物としてs.c.移植できる。固体ブロック又はトロチャー移植のために、適切な大きさの腫瘍組織断片がs.c.空間に導入される。細胞懸濁物は、原発腫瘍又は安定な腫瘍細胞系から新たに調製され、皮下注射される。また腫瘍細胞は、皮下植え込みとして注射することもできる。この位置において、種菌が皮膚結合組織の下層とs.c.組織との間に析出される。Boven及びWinograd (1991), 上掲。 乳癌の動物モデルは、例えば、神経芽腫細胞(それからneu癌遺伝子が最初に単離される)、又はneu形質移入NIH-3T3細胞をヌードマウスに移植することにより、基本的にはDrebin等, PNAS USA 83, 9129-9133 (1986)に記載されているように生成される。
【0064】
同様に、結腸癌の動物モデルは、結腸癌細胞を動物、例えばヌードマウスに継代し、これらの動物における腫瘍の発現を導くことにより生成される。ヌードマウスにおけるヒト結腸癌の同所性移植モデルは、例えば、Wang等, Cancer Research 54, 4726-4728 (1994)及びToo等, Cancer Research 55, 681-684 (1995)に記載されている。このモデルは、いわゆるAntiCancer, Inc. (SanDiego, California)から市販の「METAMOUSE」に基づく。
動物に生じた腫瘍は、取り出してインビトロで培養することができる。インビトロ培地からの細胞は、次いで動物に継代することができる。これらの腫瘍は、さらなる試験及び薬物スクリーニングの標的として提供され得る。あるいは、継代から得られる腫瘍は単離でき、継代前細胞及び1又はそれ以上の継代後に単離した細胞のRNAを、対象とする遺伝子の識別可能な発現について分析する。このような継代技術は、周知の腫瘍又は癌細胞系で実施することができる。
例えば、Meth A、CMS4、CMS5、CMS21、及びWEHI-164がBALB/c雌マウスの線維肉腫に導入され(DeLeo等, J. Exp. Med. 146, 720 [1977])、それは、種々の抗原の抗-腫瘍活性の研究のための高度に制御可能なモデル系を提供する(Palladino等, J. Immunol. 138, 4023-4032 [1987])。簡便には、腫瘍細胞は細胞培地中でインビトロで成長させる。動物に注射する前に、細胞系は洗浄してバッファー中に約10x10から10x10細胞/mlの細胞密度で懸濁する。次いで動物を10から100μlの細胞懸濁物で皮下感染し、腫瘍が現れるまで1から3週間放置する。
【0065】
さらに、最も完全に研究された実験的腫瘍の一つであるマウスのルイス肺(3LL)癌腫は、研究用腫瘍モデルとして用いることができる。この腫瘍モデルにおける有効性は、肺の小細胞癌腫(SCCL)と診断されたヒト患者の治療における有利な効果と相関していた。この腫瘍は、影響を受けたマウスからの腫瘍断片又は培地に残った細胞の注射に際して正常マウスに導入でき(Zupi等, Br. J. Cancer 41, suppl. 4, 309 [1980])、証拠は、腫瘍がたった一つの細胞の注射から開始され、感染した腫瘍細胞の極めて高い集団が生存することを示している。この腫瘍モデルに関する更なる情報については、Zacharski, Haemostasis 16, 300-320 [1986]を参照のこと。
移植された腫瘍の動物モデルにおける試験化合物の有効性を評価する一つの方法は、治療前後での腫瘍の大きさを測定することである。伝統的に、移植した腫瘍の大きさは、二又は三次元のスライドキャリパーで測定される。二次元に制限された測定は、腫瘍の大きさを正確に反映せず、従って、通常は数式を用いて対応する容積に換算される。しかしながら、腫瘍の大きさの測定は極めて不正確である。候補薬の治療効果は、治療-誘発性の成長遅延及び特異的な成長遅延としてより良く記述できる。腫瘍成長の記述における他の重要な変数は、腫瘍容積倍加時間である。Rygaard及びSpang-Thomsen, Proc. 6th Int. Workshop on Immune-Deficient Animals, Wu及びSheng編, Basel, 1989, 301によって報告されたプログラムなどの、腫瘍成長の計算及び記述のためのコンピュータプログラムも利用可能である。しかし、腫瘍に続く壊死及び炎症反応が実際には少なくとも初期に腫瘍の大きさを増大させ得ることを注記しておく。従って、これらの変化は、形態学的方法及びフローサイトメトリー分析を組み合わせて、注意深く監視する必要がある。
【0066】
組換え(トランスジェニック)動物モデルは、ここに同定された遺伝子のコード部分を、トランスジェニック動物作成のための標準的技術を用いて、対象とする動物のゲノムに導入することにより加工できる。トランスジェニック動物は、「導入遺伝子」又は動物自体又は動物の祖先に出生前段階(例えば胚段階)でゲノムに導入された遺伝物質を有するものである。トランスジェニック操作の標的として提供できる動物は、限定されないが、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、ヒツジ、ヤギ、ブタ、及び非-ヒト霊長類、例えばヒヒ、チンパンジー及びサルを含む。これらの動物に導入遺伝子を導入するのにこの分野で知られた技術は、全核マイクロインジェクション(Hoppe及びWanger, 米国特許第4,873,191号);胚系列へのレトロウイルス媒介遺伝子転移(例えば、Van der Putten等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82, 6148-615 [1985]);胚性肝細胞での遺伝子標的化(Thompson等, Cell 56, 313-321 [1989]);胚のエレクトロポレーション(Lo, Mol. Cel. Biol. 3, 1803-1814 [1983]);***媒介遺伝子転移(Lavitrano等, Cell 57, 717-73 [1989])を含む。概説のためには、例えば、米国特許第4,736,866号を参照のこと。
【0067】
典型的には、特定の細胞は、組織特異的エンハンサーでのPRO201、PRO308又はPRO309導入遺伝子挿入物を標的とする。胚段階において動物の生殖系に導入されたPRO201、PRO308又はPRO309をコードする導入遺伝子のコピーを含むトランスジェニック動物は、PRO201、PRO308又はPRO309をコードするDNAの発現の増加の効果を試験するのに使用できる。このような動物は、例えば、その過剰発現を伴う病理学的状態からの保護を与えると考えられる試薬についてのテスター動物として使用できる。本発明のこの形態によると、動物は試薬で処理され、未処理の導入遺伝子を持つ動物に比較して病理学的状態の徴候が緩和されれば、その病理学的状態の潜在的治療処置を示す。
本発明の目的のために、トランスジェニック動物は、その一部にのみ導入遺伝子を有するもの(「モザイク動物」)を含む。導入遺伝子は、単一の導入遺伝子として、又はコンカテマー、例えば頭部と頭部又は頭部と尾部の直列型として組み込まれる。特定の細胞型への導入遺伝子の選択的導入も、例えば、Lasko等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89, 6232-636 (1992)の技術に従って可能である。
トランスジェニック動物における導入遺伝子の発現は、標準的技術によって監視できる。例えば、導入遺伝子の組み込みの確認にサザンブロット分析又はPCR増幅が用いられる。次いで、mRNA発現のレベルは、インサイツハイブリッド形成、ノーザンブロット分析、PCR、又は免疫組織化学などの技術を用いて分析できる。動物は、腫瘍又は癌発生の徴候についてさらに試験される。
【0068】
あるいは、PRO201、PRO308又はPRO309の非ヒト相同体は、動物の胚性細胞に導入されたPRO201、PRO308又はPRO309をコードする変更ゲノムDNAと、PRO201、PRO308又はPRO309をコードする内在性遺伝子との間の相同的組換えによって、PRO201、PRO308又はPRO309をコードする欠陥又は変更遺伝子を有するPRO201、PRO308又はPRO309「ノックアウト」動物を作成するために使用できる。例えば、PRO201、PRO308又はPRO309をコードするcDNAは、確立された技術に従い、PRO201、PRO308又はPRO309をコードするゲノムDNAのクローニングに使用できる。PRO201、PRO308又はPRO309をコードするゲノムDNAの一部を欠失したり、組み込みを監視するために使用する選択可能なマーカーをコードする遺伝子等の他の遺伝子で置換することができる。典型的には、ベクターは無変化のフランキングDNA(5'と3'末端の両方)を数キロベース含む[例えば、相同的組換えベクターについてはThomas and Capecchi, Cell, 51 :503 (1987)を参照のこと]。ベクターは胚性幹細胞に(例えば電気穿孔法等によって)導入し、導入されたDNAが内在性DNAと相同的に組換えられた細胞を選択する[例えば、Li等, Cell, 69 :915 (1992)参照]。選択された細胞は次に動物(例えばマウス又はラット)の胚盤胞内に注入され、集合キメラを形成する[例えば、Bradley, Teratocarcinomas and Embryonic Stem Cells: A Practical Approach, E. J. Robertson, ed. (IRL, Oxford, 1987), pp. 113-152参照]。その後、キメラ性胚を適切な偽妊娠の雌性乳母に移植し、「ノックアウト」動物を作ると言われる。胚細胞に相同的に組換えられたDNAを有する子孫は標準的な技術により同定され、それらを利用して動物の全細胞が相同的に組換えられたDNAを含む動物を繁殖させることができる。ノックアウト動物は、PRO201、PRO308又はPRO309ポリペプチドが不在であることによるある種の病理的状態及び病理的状態の進行に対して防御する能力によって特徴付けられる。
【0069】
自然発生した動物腫瘍の治療におけるここに同定されるポリペプチドに特異的に結合する抗体、及び他の候補薬の有効性も試験できる。このような研究のための適切な標的は、ネコ口腔扁平上皮癌(SCC)である。ネコ口腔SCCは高度に侵襲的な悪性腫瘍で、ネコに最も通常の口腔悪性腫瘍であり、この種に報告される口腔腫瘍の60%以上を占める。それは、離れた部位には殆ど転移しないが、この転移の低い発生率は単にこの腫瘍を持つネコの短い生存期間を反映しているにすぎない。これらの腫瘍は通常手術できないが、主にネコの口腔の解剖学的形状による。現在では、この腫瘍の有効な治療法は存在しない。研究に入る前に、各々のネコに完全な臨床検査、生体組織検査を施し、コンピュータ断層撮影(CT)によりスキャンした。舌下口腔扁平上皮細胞腫瘍を持つと診断されたネコは研究から排除した。舌はこの腫瘍のために麻痺し始め、治療がこの腫瘍を殺した後でも、動物は自分で餌を取ることができないであろう。各々のネコを長期に渡って繰り返し治療する。腫瘍の写真を治療期間中の毎日及び引き続く再チェックの時点で撮影した。治療の後、各ねこに再度CTスキャンを施した。CTスキャン及びラジオグラフは、その後8週間ごとに評価した。データは、対照群と比較した生存数、反応性及び毒性における相違について評価した。陽性反応は、腫瘍の縮小、好ましくは生存の質の向上又は生存期間の延長を必要とする。
さらに、他の自発的動物腫瘍、例えばイヌ、ネコ、及びヒヒの線維肉腫、腺癌、リンパ腫、クロンドローマ(chrondroma)、平滑筋肉腫も試験できる。これらのイヌ及びネコでの乳腺癌は、その発現及び挙動がヒトのものに極めて類似しているので、好ましいモデルである。しかし、このモデルの使用は動物におけるこの型の腫瘍の発生比率によって制限される。
【0070】
L.候補薬についてのスクリーニングアッセイ
候補薬のスクリーニングアッセイは、ここで同定される遺伝子にコードされるポリペプチドと結合又は抱合する化合物、あるいはコード化ポリペプチドと他の細胞性タンパク質との相互作用を阻害する化合物を同定するために設計される。このようなスクリーニングアッセイは、特に小分子候補薬の同定に適したものにする、化学的ライブラリの高スループットスクリーニングに従うアッセイを含む。小分子とは、抗体合成有機又は無機化合物を含むと考え、それらは、ペプチド、好ましくは可溶性ペプチド、(ポリ)ペプチド-免疫グロブリン融合体、特に、限定されないが、ポリ-及びモノクローナル抗体及び抗体断片、一本鎖抗体、抗-イディオタイプ抗体、及びそれらの抗体又は断片のキメラ又はヒト化形、並びにヒト抗体及び抗体断片を含む抗体を含んでいる。アッセイは、種々の形式で実施でき、この分野で良く特徴付けられたタンパク質-タンパク質結合アッセイ、生化学的スクリーニングアッセイ、イムノアッセイ及び細胞ベースのアッセイを含む。
全てのアッセイは、それらが候補薬をここで同定される核酸にコードされるポリペプチドと、それら2成分が相互作用するのに十分な時間接触させることで共通している。
【0071】
結合アッセイにおいて、相互作用は結合であり、形成された複合体は単離されるか、又は反応混合物中で検出される。特別な実施態様では、ここに同定された遺伝子にコードされるポリペプチドのレセプター即ち候補薬が、共有又は非共有結合により固相、例えばマイクロタイタープレートに固定化される。非共有結合は、一般的に固体表面をポリペプチドの溶液で被覆し乾燥させることにより達成される。あるいは、固定化すべきペプチドに特異的な固定化抗体、例えばモノクローナル抗体を、そのペプチドを固体表面に固着させるために用いることができる。アッセイは、固定化成分、例えば固着成分を含む被覆表面に、検出可能な標識で標識されていてもよい非固定化成分を添加することにより実施される。反応が完了したとき、未反応成分を例えば洗浄により除去し、固体表面に固着した複合体を検出する。最初の非固定化成分が検出可能な標識を有している場合、表面に固定化された標識の検出は複合体形成が起こったことを示す。最初の非固定化成分が標識を持たない場合は、複合体形成は、例えば、固定化された複合体に特異的に結合する標識抗体によって検出できる。
【0072】
候補化合物がここで同定される遺伝子にコードされる特定のPRO201,PRO308又はPRO309ポリペプチドと相互作用するが結合しない場合、その相互作用は、タンパク質−タンパク質相互作用を検出するために良く知られた方法によってアッセイすることができる。そのようなアッセイは、架橋、同時免疫沈降、及び勾配又はクロマトグラフィカラムを通す同時精製などの伝統的な手法を含む。さらに、タンパク質−タンパク質相互作用は、Fields及び共同研究者等[Fiels及びSong, Nature(London) 340, 245-246 (1989); Chien等, Proc.Natl. Acad. Sci. USA 88, 9578-9582 (1991)]に記載された酵母菌ベースの遺伝子系を用いることにより、Chevray及びNathans[Proc.Natl. Acad. Sci. USA 89, 5789-5793 (1991)]に開示されているように監視することができる。酵母菌GAL4などの多くの転写活性化剤は、2つの物理的に別個のモジュラードメインからなり、一方はDNA結合ドメインとして作用し、他方は転写活性化ドメインとして機能する。以前の文献に記載された酵母菌発現系(一般に「2-ハイブリッド系」と呼ばれる)は、この特性の長所を利用して、2つのハイブリッドタンパク質を用い、一方では標的タンパク質がGAL4のDNA結合ドメインに融合し、他方では、候補となる活性化タンパク質が活性化ドメインに融合している。GAL1-lacZリポーター遺伝子のGAL4活性化プロモーターの制御下での発現は、タンパク質-タンパク質相互作用を介したGAL4活性の再構成に依存する。相互作用するポリペプチドを含むコロニーは、β-ガラクトシダーゼに対する色素生産性物質で検出される。2-ハイブリッド技術を用いた2つの特定なタンパク質間のタンパク質-タンパク質相互作用を同定するための完全なキット(MATCHMAKER(商品名))は、Clontechから商業的に入手可能である。この系は、特定のタンパク質相互作用に含まれるタンパク質ドメインのマッピング、並びにこの相互作用にとって重要なアミノ酸残基の特定にも拡張することができる。
【0073】
ここで同定されるPRO201、PRO308又はPRO309のコード化配列と他の細胞外成分との相互作用を阻害する化合物は、次のように試験することができる:通常は、増幅された遺伝子の生成物及び細胞内又は外成分を含む反応混合物を、条件下で2つの生成物が相互作用及び結合する時間に渡って調製する。試験化合物が結合を阻害する能力を試験するために、反応は試験化合物有り又は無しで実施する。さらに、第3の反応混合物にプラシーボを添加してポジティブ対照としてもよい。混合物中に存在する試験化合物と細胞内又は外成分との結合(複合体形成)は上記のように監視する。対照反応において複合体が形成され、試験化合物を含む反応混合物ではしないことは、試験化合物が試験化合物とその反応パートナーとの相互作用を妨害する事を示す。
【0074】
M.腫瘍治療のための組成物及び方法
ここで同定した遺伝子の増幅を伴う腫瘍の治療に有用な組成物は、限定されないが、抗体、小有機及び無機分子、ペプチド、ホスホペプチド、アンチセンス及びリボザイム分子、トリプルヘリックス分子などを含み、標的遺伝子産物の発現又は活性を阻害する。
例えば、アンチセンスRNA及びRNA分子は、標的mRNAにハイブリッド形成してタンパク質翻訳を防止することによりmRNAの翻訳を直接阻止する。アンチセンスDNAが用いられる場合、翻訳開始部位、例えば標的遺伝子ヌクレオチド配列の−10から+10位置の間から誘導されるオリゴデオキシリボヌクレオチドが好ましい。
リボザイムは、RNAの特異的切断を触媒できる酵素的RNA分子である。リボザイムは、相補的標的RNAへの配列特異的ハイブリッド形成、次いでヌクレオチド鎖切断的切断により作用する。潜在的RNA標的内の特異的リボザイム切断部位は、既知の技術で同定できる。更なる詳細は、例えば、Rossi, Current Biology 4: 469-471 (1994)及びPCT公報、番号WO 97/33551(1997年9月18日発行)を参照。
転写阻害に用いられるトリプルヘリックス形成における核酸分子は一本鎖でデオキシヌクレオチドからなる。これらのオリゴヌクレオチドの基本組成は、フーグスチン塩基対則を介するトリプルヘリックス形成を促進するように設計され、それは一般に二重鎖の一方の鎖上のプリン又はピリミジンのサイズ変更可能な伸展を必要とする。さらなる詳細は、例えば、PCT公報、番号WO 97/33551, 上掲を参照。
これらの分子は上記のスクリーニングアッセイの任意のもの又は任意の組み合わせにより、又は当業者に知られた他のスクリーニング技術により同定できる。
【0075】
N.抗-PRO201、PRO308又はPRO309抗体
本発明は、さらに抗-PRO201、PRO308又はPRO309抗体を提供するものである。抗体の例としては、ポリクローナル、モノクローナル、ヒト化、二重特異性及びヘテロ抱合体抗体が含まれる。本発明のより促進的な候補薬の幾つかは、抗体及び抗体断片であり、それらはここに同定される遺伝子の遺伝子生産又は産物を阻害し及び/又は遺伝子産物の活性を低下させる。
1.ポリクローナル抗体
本発明の抗-PRO201、PRO308又はPRO309抗体はポリクローナル抗体を含む。ポリクローナル抗体の調製方法は当業者に知られている。哺乳動物においてポリクローナル抗体は、例えば免疫化剤、及び所望するのであればアジュバントを、一又は複数回注射することで発生させることができる。典型的には、免疫化剤又はアジュバントを複数回皮下又は腹腔内注射により、哺乳動物に注射する。免疫化剤は、PRO201、PRO308又はPRO309ポリペプチド又はその融合タンパク質を含みうる。免疫化剤を免疫化された哺乳動物において免疫原性が知られているタンパク質に抱合させるのが有用である。このような免疫原タンパク質の例は、これらに限られないが、キーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシサイログロブリン及び大豆トリプシンインヒビターが含まれる。使用され得るアジュバントの例には、フロイント完全アジュバント及びMPL-TDMアジュバント(モノホスホリル脂質A、合成トレハロースジコリノミコラート)が含まれる。免疫化プロトコールは、過度の実験なく当業者により選択されるであろう。
【0076】
2.モノクローナル抗体
あるいは、抗-PRO201、PRO308又はPRO309抗体はモノクローナル抗体であってもよい。モノクローナル抗体は、Kohler及びMilstein, Nature, 256:495 (1975)に記載されているようなハイブリドーマ法を使用することで調製することができる。ハイブリドーマ法では、マウス、ハムスター又は他の適切な宿主動物を典型的には免疫化剤により免疫化することで、免疫化剤に特異的に結合する抗体を生成するかあるいは生成可能なリンパ球を誘発する。また、リンパ球をインビトロで免疫化することもできる。
免疫化剤は、典型的にはPRO201、PRO308又はPRO309ポリペプチド又はその融合タンパク質を含む。一般にヒト由来の細胞が望まれる場合には末梢血リンパ球(「PBL」)が使用され、あるいは非ヒト哺乳動物源が望まれている場合は、脾臓細胞又はリンパ節細胞が使用される。次いで、ポリエチレングリコール等の適当な融合剤を用いてリンパ球を不死化株化細胞と融合させ、ハイブリドーマ細胞を形成する[Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, Academic Press, (1986) pp. 59-103]。不死化株化細胞は、通常は、形質転換した哺乳動物細胞、特に齧歯動物、ウシ、及びヒト由来の骨髄腫細胞である。通常、ラット又はマウスの骨髄腫株化細胞が使用される。ハイブリドーマ細胞は、好ましくは、未融合の不死化細胞の生存又は成長を阻害する一又は複数の物質を含有する適切な培地で培養される。例えば、親細胞が、酵素のヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT又はHPRT)を欠いていると、ハイブリドーマの培地は、典型的には、ヒポキサチン、アミノプチリン及びチミジンを含み(「HAT培地」)、この物質がHGPRT欠乏性細胞の増殖を阻止する。
【0077】
好ましい不死化株化細胞は、効率的に融合し、選択された抗体生成細胞による安定した高レベルの抗体発現を支援し、HAT培地のような培地に対して感受性のものである。より好ましい不死化株化細胞はマウス骨髄腫株であり、これは例えばカリフォルニア州サンディエゴのSalk Institute Cell Distribution Centerやメリーランド州ロックビルのアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションより入手可能である。ヒトモノクローナル抗体を生成するためのヒト骨髄腫及びマウス-ヒト異種骨髄腫株化細胞も開示されている[Kozbor, J. Immunol., 133:3001 (1984)、Brodeur等, Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, Marcel Dekker, Inc., New York, (1987) pp. 51-63]。
次いでハイブリドーマ細胞が培養される培養培地を、PRO201、PRO308又はPRO309に対するモノクローナル抗体の存在について検定する。好ましくは、ハイブリドーマ細胞によって生成されたモノクローナル抗体の結合特異性は免疫沈降又はラジオイムノアッセイ(RIA)や酵素結合免疫測定法(ELISA)等のインビトロ結合検定法によって測定する。このような技術及びアッセイは、当該分野において公知である。モノクローナル抗体の結合親和性は、例えばMunson及びPollard, Anal. Biochem., 107:220 (1980)によるスキャッチャード分析法によって測定することができる。
【0078】
所望のハイブリドーマ細胞が同定された後、クローンを制限希釈工程によりサブクローニングし、標準的な方法で成長させることができる[Goding, 上掲]。この目的のための適当な培地には、例えば、ダルベッコの改変イーグル培地及びRPMI-1640倍地が含まれる。あるいは、ハイブリドーマ細胞は哺乳動物においてインビボで腹水として成長させることもできる。
サブクローンによって分泌されたモノクローナル抗体は、例えばプロテインA−セファロース法、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー法、ゲル電気泳動法、透析法又はアフィニティークロマトグラフィー等の従来の免疫グロブリン精製方法によって培養培地又は腹水液から単離又は精製される。
【0079】
また、モノクローナル抗体は、組換えDNA法、例えば米国特許第4,816,567号に記載された方法により作成することができる。本発明のモノクローナル抗体をコードするDNAは、常套的な方法を用いて(例えば、マウス抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合可能なオリゴヌクレオチドプローブを使用して)、容易に単離し配列決定することができる。本発明のハイブリドーマ細胞はそのようなDNAの好ましい供給源となる。ひとたび単離されたら、DNAは発現ベクター内に配することができ、これが宿主細胞、例えばサルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、あるいは免疫グロブリンタンパク質を生成などしない骨髄腫細胞内に形質移入され、組換え宿主細胞内でモノクローナル抗体の合成をすることができる。また、DNAは、例えば相同マウス配列に換えてヒト重鎖及び軽鎖定常ドメインのコード配列を置換することにより[US. Patent No.4,816,567;Morrison等, 上掲]、又は免疫グロブリンコード配列に非免疫グロブリンポリペプチドのコード配列の一部又は全部を共有結合することにより修飾することができる。このような非免疫グロブリンポリペプチドは、本発明の抗体の定常ドメインの代わりに置換するか、本発明の抗体の一つの抗原結合部位の可変ドメインの代わりに置換し、キメラ性二価抗体を産生することができる。このような非免疫グロブリンポリペプチドは、本発明の抗体の定常ドメインに置換でき、あるいは本発明の抗体の1つの抗原結合部位の可変ドメインに置換でき、キメラ性二価抗体を生成する。
抗体は一価抗体であってもよい。一価抗体の調製方法は当該分野においてよく知られてる。例えば、一つの方法は免疫グロブリン軽鎖と修飾重鎖の組換え発現を含む。重鎖は一般的に、重鎖の架橋を防止するようにFc領域の任意のポイントで切断される。あるいは、関連するシステイン残基を他のアミノ酸残基で置換するか欠失させて架橋を防止する。
一価抗体の調製にはインビトロ法がまた適している。抗体の消化による、その断片、特にFab断片の生成は、当該分野において知られている慣用的技術を使用して達成できる。
【0080】
3.ヒト化抗体
本発明の抗-PRO201、PRO308又はPRO309抗体は、さらにヒト化抗体又はヒト抗体を含む。非ヒト(例えばマウス)抗体のヒト化形とは、キメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖あるいはその断片(例えばFv、Fab、Fab'、F(ab')2あるいは抗体の他の抗原結合サブ配列)であって、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含むものである。ヒト化抗体はレシピエントの相補性決定領域(CDR)の残基が、マウス、ラット又はウサギのような所望の特異性、親和性及び能力を有する非ヒト種(ドナー抗体)のCDRの残基によって置換されたヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)を含む。幾つかの例では、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基は、対応する非ヒト残基によって置換されている。また、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも、移入されたCDRもしくはフレームワーク配列にも見出されない残基を含んでいてもよい。一般に、ヒト化抗体は、全てあるいはほとんど全てのCDR領域が非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、全てあるいはほとんど全てのFR領域がヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のものである、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含む。ヒト化抗体は、最適には免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒトの免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部を含んでなる[Jones等, Nature, 321:522-525 (1986); Riechmann等, Nature, 332:323-329 (1988); 及びPresta, Curr. Op Struct. Biol., 2:593-596 (1992)]。
【0081】
非ヒト抗体をヒト化する方法はこの分野でよく知られている。一般的に、ヒト化抗体には非ヒト由来の一又は複数のアミノ酸残基が導入される。これら非ヒトアミノ酸残基は、しばしば、典型的には「移入」可変ドメインから得られる「移入」残基と称される。ヒト化は基本的に齧歯動物のCDR又はCDR配列でヒト抗体の該当する配列を置換することによりウィンター(winter)及び共同研究者[Jones等, Nature, 321:522-525 (1986);Riechmann等, Nature, 332:323-327 (1988);Verhoeyen等, Science, 239:1534-1536 (1988)]の方法に従って、齧歯類CDR又はCDR配列をヒト抗体の対応する配列に置換することにより実施される。よって、このような「ヒト化」抗体は、無傷のヒト可変ドメインより実質的に少ない分が非ヒト種由来の対応する配列で置換されたキメラ抗体(米国特許第4,816,567号)である。実際には、ヒト化抗体は典型的には幾つかのCDR残基及び場合によっては幾つかのFR残基が齧歯類抗体の類似する部位からの残基によって置換されたヒト抗体である。
また、ヒト抗体は、ファージ表示ライブラリ[Hoogenboom及びWinter, J. Mol. Biol., 227:381 (1992);Marks等, J. Mol. Biol., 222:581 (1991)]を含むこの分野で知られた種々の方法を用いて作成することもできる。また、Cole等及びBoerner等の技術も、ヒトモノクローナル抗体の調製に利用することができる[Cole等, Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss. p.77(1985)及びBoerner等, J. Immunol., 147(1):86-95(1991) ]。
【0082】
4.抗体依存性酵素媒介性プロドラッグ治療法(ADEPT)
また、本発明の抗体は、プロドラッグ(例えばペプチジル化学療法剤、国際公開81/01145号を参照)を活性な抗癌剤に転化させるプロドラッグ活性化酵素に抗体をコンジュゲートさせることにより、ADEPTにおいて使用することができる。例えば国際公開88/07378及び米国特許第4975278号を参照されたい。
ADEPTに有用な免疫コンジュゲートの酵素成分には、より活性な細胞毒形態に転化するように、プロドラッグに作用し得る任意の酵素が含まれる。
限定するものではないが、この発明の方法に有用な酵素には、グリコシダーゼ、グルコース置きシダーゼ、ヒトリソザイム、ヒトグルコロニダーゼ、ホスファート含有プロドラッグを遊離の薬剤に転化するのに有用なアルカリ性ホスファターゼ;スルファート含有プロドラッグを遊離の薬剤に転化するのに有用なアリールスルファターゼ;非毒性5-フルオロシトシンを抗癌剤5-フルオロウラシルに転化するのに有用なシトシンデアミナーゼ;プロテアーゼ、例えばセラチアプロテアーゼ、サーモリシン、サブチリシン、カルボキシペプチダーゼ(例えば、カルボキシペプチダーゼG2及びカルボキシペプチダーゼA)及びカテプシン(例えば、カテプシンB及びL)で、ペプチド含有プロドラッグを遊離の薬剤に転化するのに有用なもの;D-アミノ酸置換基を含有するプロドラッグの転化に有用なD-アラニルカルボキシペプチダーゼ;炭水化物切断酵素、例えばグリコシル化プロドラッグを遊離の薬剤に転化するのに有用なノイラミニダーゼ及びβガラクトシダーゼ;βラクタムで誘導体化された薬剤を遊離の薬剤に転化させるのに有用なβラクタマーゼ;及びペニシリンアミダーゼ、例えばそれぞれフェノキシアセチル又はフェニルアセチル基で、それらのアミン性窒素において誘導体化された薬剤を遊離の薬剤に転化するのに有用なペニシリンVアミダーゼ又はペニシリンGアミダーゼが含まれる。あるいは、「アブザイム」としてもまた公知の酵素活性を有する抗体を、遊離の活性薬剤に本発明のプロドラッグを転化させるために使用することもできる(例えば、Massey, Nature 328:457-458[1987]を参照)。抗体-アブザイムコンジュゲートは、ここで記載されているようにして、腫瘍細胞個体群にアブザイムを送達するために調製することができる。
この発明の酵素は、当該分野においてよく知られている技術、例えば上で検討したヘテロ二官能性架橋試薬を使用することにより、抗-PRO201、抗-PRO308又は抗-PRO309抗体に共有的に結合させることができる。あるいは、本発明の抗体の少なくとも結合領域を本発明の酵素の少なくとも機能的に活性な部位に結合せしめてなる融合タンパク質を、当該技術においてよく知られている組換えDNA技術を使用して作成することができる(Neubergerら, Nature 312:604-608[1984])。
【0083】
5.二重特異性抗体
二重特異性抗体は、少なくとも2つの異なる抗原に対して結合特異性を有するモノクローナル抗体、好ましくはヒトもしくはヒト化抗体である。本発明の場合において、結合特異性の一方はPRO201、PRO308又はPRO309に対してであり、他方は任意の他の抗原、好ましくは細胞表面タンパク質又はレセプター又はレセプターサブユニットに対してである。
二重特異性抗体を作成する方法は当該技術分野において周知である。伝統的には、二重特異性抗体の組換え生産は、二つの重鎖が異なる特異性を持つ二つの免疫グロブリン重鎖/軽鎖対の同時発現に基づく[Milstein及びCuello, Nature, 305:537-539 (1983)]。免疫グロブリンの重鎖と軽鎖を無作為に取り揃えるため、これらハイブリドーマ(クアドローマ)は10種の異なる抗体分子の潜在的混合物を生成し、その内一種のみが正しい二重特異性構造を有する。正しい分子の精製は、アフィニティークロマトグラフィー工程によって通常達成される。同様の手順が1993年5月13日公開のWO 93/08829、及びTraunecker等, EMBO J.,10:3655-3656 (1991)に開示されている。
所望の結合特異性(抗体-抗原結合部位)を有する抗体可変ドメインを免疫グロブリン定常ドメイン配列に融合できる。融合は、好ましくは少なくともヒンジ部、CH2及びCH3領域の一部を含む免疫グロブリン重鎖定常ドメインとのものである。少なくとも一つの融合には軽鎖結合に必要な部位を含む第一の重鎖定常領域(CH1)が存在することが望ましい。免疫グロブリン重鎖融合をコードするDNA、及び望むのであれば免疫グロブリン軽鎖を、別々の発現ベクターに挿入し、適当な宿主生物に同時形質移入する。二重特異性抗体を作成するための更なる詳細については、例えばSuresh等, Methods in Enzymology, 121:210(1986)を参照されたい。
【0084】
国際公開WO 96/27011号に記載された他のアプローチ法によれば、一対の抗体分子間の界面を操作して組換え細胞培養から回収されるヘテロ二量体のパーセントを最大にすることができる。好適な界面は抗体定常ドメインのCH3ドメインの少なくとも一部を含む。この方法では、第1抗体分子の界面からの一又は複数の小さいアミノ酸側鎖がより大きな側鎖(例えばチロシン又はトリプトファン)と置換される。大きな側鎖と同じ又はより小さいサイズの相補的「キャビティ」を、大きなアミノ酸側鎖を小さいもの(アラニン又はスレオニン)と置き換えることにより第2の抗体分子の界面に作り出す。これにより、ホモ二量体のような不要の他の最終産物に対してヘテロダイマーの収量を増大させるメカニズムが提供される。
二重特異性抗体は、全長抗体又は抗体断片(例えば、F(ab')二重特異性抗体)として調製できる。抗体断片から二重特異性抗体を産生する技術もまた文献に記載されている。例えば、化学結合を使用して二重特異性抗体を調製することができる。Brennanら, Science, 229:81 (1985) は無傷の抗体をタンパク分解性に切断してF(ab')断片を産生する手順を記述している。これらの断片は、ジチオール錯体形成剤亜砒酸ナトリウムの存在下で還元して近接ジチオールを安定化させ、分子間ジスルフィド形成を防止する。産生されたFab'断片はついでチオニトロベンゾアート(TNB)誘導体に転換される。Fab'-TNB誘導体の一つをついでメルカプトエチルアミンでの還元によりFab'-チオールに再転換し、他のFab'-TNB誘導体の等モル量と混合して二重特異性抗体を形成する。作られた二重特異性抗体は酵素の選択的固定化用の薬剤として使用することができる。
大腸菌からFab'フラグメントを直接回収でき、これは化学的に結合して二重特異性抗体を形成することができる。Shalabyら,J.Exp.Med., 175:217-225 (1992)は完全にヒト化された二重特異性抗体F(ab')分子の製造を記述している。各Fab'フラグメントは大腸菌から別個に分泌され、インビトロで定方向化学共役を受けて二重特異性抗体を形成する。このようにして形成された二重特異性抗体は、正常なヒトT細胞及びErbB2レセプターを過剰発現する細胞に結合可能で、ヒト***腫瘍標的に対するヒト細胞障害性リンパ球の細胞溶解活性の誘因となる。
【0085】
組換え細胞培養から直接的に二重特異性抗体フラグメントを作成し分離する様々な方法もまた記述されている。例えば、二重特異性抗体はロイシンジッパーを使用して生産されている。Kostelnyら, J.Immunol. 148(5):1547-1553 (1992)。Fos及びJunタンパク質からのロイシンジッパーペプチドを遺伝子融合により二つの異なった抗体のFab'部分に結合させる。抗体ホモダイマーをヒンジ領域で還元してモノマーを形成し、ついで再酸化して抗体ヘテロダイマーを形成する。この方法はまた抗体ホモダイマーの生産に対して使用することができる。Hollingerら, Proc.Natl.Acad.Sci. USA, 90:6444-6448 (1993)により記述された「ダイアボディ」技術は二重特異性抗体フラグメントを作成する別のメカニズムを提供した。フラグメントは、同一鎖上の2つのドメイン間の対形成を可能にするには十分に短いリンカーにより軽鎖可変ドメイン(VL)に重鎖可変ドメイン(VH)を結合してなる。従って、一つのフラグメントのVH及びVLドメインは他のフラグメントの相補的VL及びVHドメインと強制的に対形成させられ、2つの抗原結合部位を形成する。単鎖Fv(sFv)ダイマーの使用により二重特異性抗体フラグメントを製造する他の方策もまた報告されている。Gruberら, J.Immunol. 152:5368 (1994)を参照されたい。
二価より多い抗体も考えられる。例えば、三重特異性抗体を調製することができる。Tuttら J.Immunol. 147:60(1991)。
例示的二重特異性抗体は、ここで与えられる「プロ」タンパク質上の2つの異なるエピトープに結合しうる。あるいは、抗-「プロ」タンパク質アームは、T細胞レセプター分子(例えばCD2、CD3、CD28又はB7)等の白血球上のトリガー分子、又はFcγRI(CD64)、FcγRII(CD32)及びFcγRIII(CD16)等のIgGのFcレセプター(FcγR)に結合するアームに結合し、細胞防御メカニズムを特定の「プロ」タンパク質発現細胞に集中するようにしてもよい。二重特異性抗体は、特定の「プロ」ポリペプチドを発現する細胞に対する局所的細胞毒性薬として使用してもよい。これらの抗体は、「プロ」結合アーム及び細胞毒性薬又はキレート剤、例えばEOTUBE、DPTA、DOTA、又はTETAに結合するアームを有する。他の対象とする二重特異性抗体は、「プロ」ポリペプチドに結合し、さらに組織因子(TF)に結合する。
【0086】
6.ヘテロ抱合体抗体
ヘテロ抱合抗体もまた本発明の範囲に入る。ヘテロ抱合抗体は、2つの共有結合した抗体からなる。このような抗体は、例えば、免疫系細胞を不要な細胞に対してターゲティングさせるため[米国特許第4,676,980号]及びHIV感染の治療のために[WO 91/00360; WO 92/200373; EP 03089]提案されている。この抗体は、架橋剤に関連したものを含む合成タンパク化学における既知の方法を使用して、インビトロで調製することができると考えられる。例えば、ジスルフィド交換反応を使用するか又はチオエーテル結合を形成することにより、免疫毒素を作成することができる。この目的に対して好適な試薬の例には、イミノチオレート及びメチル-4-メルカプトブチリミデート、及び例えば米国特許第4,6767,980号に開示されているものが含まれる。
【0087】
7.エフェクター機能の設計
本発明の抗体をエフェクター機能について改変し、例えばガンの治療における抗体の効能を増強することが望ましい。例えば、システイン残基をFc領域に導入して、この領域における鎖間ジスルイド結合の形成を許容する。このようにして産生されたホモダイマー抗体は改善されたインターナリゼーション能力又は増加した補体媒介細胞死滅及び抗体依存性細胞障害活性(ADCC)を有しうる。Caronら, J.Exp.Med. 176:1191-1195 (1992)及びShopes,B. J.Immunol. 148:2918-2922 (1992)を参照されたい。抗腫瘍活性が高められたホモダイマー抗体は、Wolffら, Cancer Research 53:2560-2565(1993)に記載されているようなヘテロ二官能性架橋剤を使用して調製することもできる。別法として、二重Fc領域を有し、よって増強された補体溶解及びADCC能を有しうる抗体を設計することができる。Stevensonら, Anti-cancer Drug Design 3:219-230 (1989)を参照。
【0088】
8.免疫複合体
本発明はまた、化学治療薬、毒素(例えば、細菌、真菌、植物又は動物由来の酵素活性毒素、又はその断片)などの細胞毒性薬、あるいは放射性同位体(即ち、放射性抱合)に抱合された抗体を含む免疫複合体にも関する。
このような免疫複合体の生成に有用な化学治療薬は上記した。用いることのできる酵素活性毒素及びその断片は、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性断片、コレラ毒素、ボツリヌス毒素、(緑膿菌からの)外毒素A鎖、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデクシン(modeccin)A鎖、アルファ-サルシン、アレウリテス・フォーディ(Aleurites fordii)タンパク質、ジアンチン(dianthin)タンパク質、フィトラカ・アメリカーナ(Phytolaca americana)タンパク質(PAPI、PAPII、及びPAP-S)、モモルディカ・チャランチア(momordica charantia)インヒビター、クルシン(curcin)、クロチン(crotin)、サパオナリア・オフィシナリス(sapaonaria oficinalis)インヒビター、ゲロニン(gelonin)、ミトゲリン(mitogellin)、レストリクトシン(restrictocin)、フェノマイシン(phenomycin)、エノマイシン(enomycin)及びトリコテセン(tricothecene)を含む。様々な放射性ヌクレオチドが放射性抱合抗体の生成に利用可能である。例として、212Bi、131I、131In、90Y及び186Reを含む。
【0089】
抗体及び細胞毒性薬の複合体は、種々の二官能性タンパク質カップリング剤、例えば、N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオール)プロピオネート(SPDP)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二官能性誘導体(ジメチルアジピミデートHCL等)、活性エステル(ジスクシンイミジルスベレート等)、アルデヒド(グルタルアルデヒド等)、ビス-アジド化合物(ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン等)、ビス-ジアゾニウム誘導体(ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)-エチレンジアミン等)、ジイソシアネート(トリエン2,6-ジイソシアネート等)、及びビス-活性フッ素化合物(1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン等)を用いて作成できる。例えば、リシン免疫毒素は、Vitetta等, Science 238: 1098 (1987)に記載されたように調製することができる。カーボン-14-標識1--イソチオシアナトベンジル-3-メチルジエチレントリアミン五酢酸(MX-DTPA)は、放射性ヌクレオチドの抗体への抱合のためのキレート剤の例である。WO 94/11026参照。
他の実施態様では、腫瘍の予備標的化で使用するために、抗体は「レセプター」(ストレプトアビジン等)に抱合されてもよく、抗体-レセプター複合体は患者に投与され、次いで清澄化剤を用いて未結合複合体を循環から除去し、次に細胞毒性薬(例えば、放射性ヌクレオチド等)に抱合された「リガンド」(アビジン等)を投与する。
【0090】
9.免疫リポソーム
また、ここに開示する抗体は、免疫リポソームとして調製してもよい。抗体を含むリポソームは、Epstein等, Proc. Natl. acad. Sci. USA, 82: 3688 (1985); Hwang等, Proc. natl. Acad. Sci. USA, 77: 4030 (1980); 及び米国特許第4,485,045号及び第4,544,545号に記載されたような、この分野で知られた方法で調製される。向上した循環時間を持つリポソームは、米国特許第5,013,556号に開示されている。
特に有用なリポソームは、ホスファチジルコリン、コレステロール及びPEG-誘導ホスファチジルエタノールアミン(PEG-PE)を含む脂質組成物での逆相蒸発法によって生成される。リポソームは、所定サイズのフィルターを通して押し出され、所望の径を有するリポソームが生成される。本発明の抗体のFab’断片は、Martin等, J. Biol. Chem. 257: 286-288 (1982)に記載されているように、ジスルフィド交換反応を介してリポソームに抱合され得る。化学治療薬(ヂキソルビシン等)は、場合によってはリポソーム内に包含される。Gabizon等, J. National Cancer Inst. 81(19) 1484 (1989)参照。
【0091】
O.抗-PRO201、PRO308又はPRO309抗体の用途
本発明の抗-PRO201、PRO308又はPRO309抗体は様々な有用性を有している。例えば、抗-PRO201、PRO308又はPRO309抗体は、PRO201、PRO308又はPRO309の診断アッセイ、例えばその特定細胞、組織、又は血清での発現の検出に用いられる。競合的結合アッセイ、直接又は間接サンドウィッチアッセイ及び不均一又は均一相で行われる免疫沈降アッセイ[Zola, Monoclonal Antibodies: A Manual of Techniques, CRC Press, Inc. (1987) pp. 147-158]等のこの分野で知られた種々の診断アッセイ技術が使用される。診断アッセイで用いられる抗体は、検出可能な部位で標識される。検出可能な部位は、直接又は間接に検出可能なシグナルを発生しなければならない。例えば、検出可能な部位は、3H、14C、32P、35S又は125I等の放射性同位体、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン又はルシフェリン等の蛍光又は化学発光化合物、あるいはアルカリホスファターゼ、ベータ-ガラクトシダーゼ又はセイヨウワサビペルオキシダーゼ等の酵素であってよい。Hunter等 Nature, 144:945 (1962);David等, Biochemistry, 13: 1014 (1974);Pain等, J. Immunol. Meth., 40:219 (1981) ;及びNygren, J. Histochem. and Cytochem., 30:407 (1982)に記載された方法を含む、抗体を検出可能な部位に抱合するためにこの分野で知られた任意の方法が用いられる。
また、抗-PRO201、PRO308又はPRO309抗体は、組換え細胞培養又は天然供給源からのPRO201、PRO308又はPRO309のアフィニティー精製にも有用である。この方法においては、PRO201、PRO308又はPRO309に対する抗体を、当該分野でよく知られている方法を使用して、セファデックス樹脂や濾過紙のような適当な支持体に固定化する。次に、固定化された抗体を、精製するPRO201、PRO308又はPRO309を含む試料と接触させた後、固定された抗体に結合したPRO201、PRO308又はPRO309以外の試料中の物質を実質的に全て除去する適当な溶媒で支持体を洗浄する。最後に、PRO201、PRO308又はPRO309を抗体から離脱させる他の適当な溶媒で支持体を洗浄する。
【0092】
P.融合アンタゴニスト
本発明の融合アンタゴニスト及びアゴニスト化合物を生成させるのに幾つかの方法を好適に用いることができる。アンタゴニスト分子が細胞内部に標的化でき、野生型PRO201、PRO308又はPRO309を正常な作用から阻害又は防止する任意の方法が好ましい。膜貫通輸送に適した電荷、サイズ及び疎水性等の、そのようなアンタゴニスト又はアゴニスト分子のさらなる特性は、当業者によって容易に決定される。
PRO201、PRO308又はPRO309の模倣物又は他の相同体が同定され評価される場合、細胞を試験化合物に暴露し、ヒトPRO201、PRO308又はPRO309のみに暴露したポジティブ対照、化合物にも天然リガンドにも暴露していないネガティブ対照と比較する。PRO201、PRO308又はPRO309シグナル変調のアンタゴニスト又はアゴニストを同定死評価する場合は、細胞を天然リガンドの存在下で本発明の化合物に暴露し、試験化合物に暴露していない対照と比較する。
【0093】
本発明のアンタゴニスト/アゴニスト化合物のホスファターゼ阻害/促進活性の一次スクリーニングとして検出アッセイが用いられる。このアッセイは、試験範囲の濃度、例えば100mMから1pMの範囲で試験し、リン酸化又はシグナル伝達が対照に比較して50%減少又は増加する量(IC50)の濃度を計算することにより、化合物の相対的能力を評価するのみ使用することもできる。
アッセイは、PRO201、PRO308又はPRO309基質のリン酸化に影響する化合物の同定のために実施してもよい。特に、アッセイはPRO201、PRO308又はPRO309のリン酸化活性を増大させる化合物の同定のために実施でき、アッセイは、PRO201、PRO308又はPRO309基質のリン酸化を低下させる化合物を同定するために実施できる。アッセイは、タンパク質−タンパク質結合アッセイ、生化学的スクリーニングアッセイ、免疫アッセイ、細胞ベースのアッセイ等を含むが種々の様式で実施できる。このようなアッセイの様式は、この分野で公知である。
本発明のスクリーニングアッセイは、化学的ライブラリの高スループットスクリーニングに適用でき、特に、小分子薬剤候補の同定に適している。
【0094】
(1)アンタゴニスト及びアゴニスト分子
PRO201、PRO308又はPRO309シグナル伝達のアンタゴニスト又はアゴニストをスクリーニングするために、アッセイ混合物を、候補となる製薬剤の存在下であるが、PRO201、PRO308又はPRO309が参照活性でシグナル伝達を誘発する条件下でインキュベートした(例えば、Nsp1(配列番号:1)とEGFレセプターの結合)。混合物成分は、必要な活性を与えるために任意の順序で添加できる。インキュベーションは、最適な結合を促進する任意の温度、典型的には4℃から40℃、より通常は15℃から40℃で実施する。インキュベーション時間も同様に最適結合のために選択されるが、迅速で高スループットのスクリーニングを促進するために最小化され、典型的には約0.1から10時間、好ましくは5時間未満、より好ましくは2時間未満である。インキュベーションの後、候補製薬剤のPRO201、PRO308又はPRO309シグナル伝達に対する効果を任意の便利な方法で決定する。細胞無しの結合型アッセイでは、結合及び非結合成分を分離するための分離工程がしばしば用いられる。分離は、例えば、沈殿(例えばTCA沈殿、免疫沈降など)、固定化(例えば、固体基体上)によってなされ、次いで洗浄される。結合したタンパク質は、それに結合した検出可能な標識により、例えば放射活性放出、光学又は電子密度を測定することにより、あるいは、例えば抗体抱合を用いて間接的な検出により検出される。
【0095】
PRO201、PRO308又はPRO309のタンパク質−タンパク質相互作用に影響する好適な分子及びその結合タンパク質は、後者の断片又は相互作用及び正しい複合体形成を阻害する小分子、例えばペプチド模倣物を含む。そのような小分子は、通常10K分子量未満であり、細胞に等価しやすいので治療薬として好適であり、種々の細胞機構による分解を受けにくく、タンパク質のように免疫を生じやすくない。小分子は、これらに限られないが、合成有機又は無機化合物を含む。多くの製薬会社が、そのような分子のライブラリを有しており、それは本発明のアッセイを用いて便利にスクリーニングできる。非限定的な例は、タンパク質、ペプチド、糖タンパク質、グリコペプチド、糖脂質、多糖類、オリゴ糖、核酸、生物有機分子、ペプチド模倣物、薬理学的試薬、及びそれらの代謝物、転写及び翻訳制御配列等を含む。
PRO201、PRO308又はPRO309に結合する分子の同定に好ましい技術は、アッセイ用プレートのウェルなどの固相に結合したキメラ基質(例えば、エピトープタグ融合又は融合イムノアドヘシン)を利用する。場合によっては標識された(例えば放射性標識された)候補分子の、固定化レセプターへの結合が測定できる。あるいは、Nsp1の結合性タンパク質との相互作用についての競合を検定できる。さらに、分子はヌードマウスのNIH3T3細胞におけるPRO201、PRO308又はPRO309の腫瘍形成能に影響するスクリーニングをしてもよい。アンタゴニスト及び/又はアゴニストのスクリーニングにおいて、PRO201、PRO308又はPRO309はPRO201,PRO308又はPRO309基質に暴露され、次いで推定アンタゴニスト又はアゴニスト、又はPRO201、PRO308又はPRO309結合タンパク質及びアンタゴニスト又はアゴニストが同時に添加され、アンタゴニスト又はアゴニストのPRO201、PRO308又はPRO309活性化を阻止する能力が評価される。
【0096】
(2)検出アッセイ
PRO201、PRO308又はPRO309ポリペプチドは、PRO201、PRO308又はPRO309シグナル伝達を変調させる治療的活性薬のためのリード化合物を同定するアッセイにおいて有用である。特に、PRO201、PRO308又はPRO309シグナル伝達複合体の形成を防止する、あるいはPRO201、PRO308又はPRO309変調を防止又は減弱するリード化合物は、便利に同定できる。
【0097】
(a)生化学的検出技術
生化学的分析技術は種々の技術によって評価できる。本発明で使用できる1つの典型的なアッセイ混合物は、PRO201、PRO308又はPRO309及び通常はPRO201、PRO308又はPRO309に付随するタンパク質(例えばCas)を、通常は単離された、部分的に純粋又は純粋な形態で含有する。これらの成分の一方又は両方は、例えばアッセイ条件下でタンパク質−タンパク質結合を提供又は促進し、安定性を向上させる他のペプチド又はポリペプチドに融合してよい。さらに、成分の一方は、通常検出可能な標識を含むかそれに結合している。標識は、放射活性、蛍光、光学又は電子密度等の測定による直接検出、あるいはエピトープタグ、酵素等の間接的検出を提供する。アッセイ混合物は候補製薬剤をさらに含み、場合によっては、結合を促進し、安定性を向上させ、非特異的又はバックグラウンド相互作用を減少させ、又はアッセイの効率又は感度を向上させる種々の他の成分、例えば塩、バッファー、担体タンパク質、例えばアルブミン、洗浄剤、プロテアーゼ阻害剤、ヌクレアーゼ阻害剤、抗微生物剤等を含む。
以下の検出方法は、シグナル伝達基質分子及びPRO201、PRO308又はPRO309を含む細胞溶解物が本発明の化合物と混合された細胞無しの系で使用できる。
【0098】
(i)全細胞検出
共通の技術は、細胞をPRO201、PRO308又はPRO309及び放射性標識リン酸塩とともにインキュベートし、溶解物からSDS-ポリアクリルアミドゲル(SDS-PAGE)技術を用いて、一次又は二次元のいすれかで細胞性タンパク質成分を分離し、X-線フィルムに暴露してリン酸化タンパク質の存在を検出することを含む。検出は、放射性標識を用いることなくなすこともできる。そのような技術において、タンパク質成分(例えば、分離されたSDS-PAGE)はニトロセルロース膜に移され、そこでリン酸化セリン/トレオニンの存在が抗ホスホチロシン抗体(抗-pTyr)を用いて検出される。
あるいは、抗-pTyrは、セイヨウワサビペルオキシダーゼ等の酵素に抱合させ、次いで酵素用の比色基質を添加することにより検出される。さらなる代替法は、抗-pTyrを認識する二次抗体と反応させることによる抗-pTyrの検出を含み、この二次抗体は、既に述べたように放射活性又は酵素で標識されている。これらの例及び類似の技術は、Hansen等, Electrophoresis 14: 112-126 (1993); Campbell等, J. Biol. Chem. 268: 7427-7434 (1993); Donato等, Cell Growth Diff. 3: 258-268 (1992); Katagiri等, J. Immunol. 150: 585-593 (1993)に記載されている。さらに、抗-pTyrは、それを放射活性物質で標識し、次いで標識ニトロセルロースをスキャンニングして放射活性又は検出するか、X-線フィルムに暴露することにより検出できる。
【0099】
(b)生物学的検出技術
本発明のアンタゴニスト/アゴニスト化合物の、それ自身が細胞間シグナル伝達を変調するPRO201、PRO308又はPRO309の活性を変調させる能力は、リガンド結合に伴う形態又は機能変化についての評点化によって測定される。この分野で知られている定性的及び定量的技術は、PRO201、PRO308又はPRO309の制御下で起こる細胞プロセスの観察及び測定のために適用できる。例えば、NIH3T3細胞におけるNsp1(配列番号:1)の発現は細胞の形態的形質転換の形成を起こす。これらの病巣の存在又は数は、Nsp1シグナル伝達のアンタゴニスト又はアゴニストの生物学的有効性の指標として使用できる。
これらの細胞培養アッセイ及び動物実験で得られたデータは、ヒトで使用するための用量範囲の処方に用いられる。本発明の化合物の用量は、毒性を殆ど又は全く持たない循環濃度の範囲内にある。用量は、採用する投与形態及び投与経路に応じてこの範囲内で変化する。
【0100】
(2)アンチセンスヌクレオチド
アンタゴニストの他の好ましい部類は遺伝子治療技術の使用を含み、アンチセンスヌクレオチドの投与を含む。適用可能な遺伝子治療技術は、治療的に有効なDNA又はmRNAの一回又は複数回投与を含む。アンチセンスRNA及びDNAは、インビボでの或る種の遺伝子の発現を阻止するための治療薬として使用できる。短いアンチセンスオリゴヌクレオチドを細胞に移入でき、それらは、細胞膜による制限された取り込みによって生ずる低い細胞内濃度にも関わらず阻害剤として作用する、Zamecnik等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 83: 4143-4146 (1986)。オリゴヌクレオチドは、例えば負に荷電したホスホジエステル基を不荷電基で置換することにより、それらの取り込みを促進させるように修飾することができる。
【0101】
生存細胞に核酸を導入するために知られた種々の技術がある。これらの技術は、インビボ、インビトロで培養された細胞に、又はインビボで対照とする宿主の細胞に移行されるかによって変化する。インビトロで哺乳動物細胞に核酸を移行するのに適した技術は、リポソーム、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、細胞融合、DEAE-デキストラン、リン酸カルシウム沈殿法などの使用を含む。現在好ましいインビボ遺伝子移行技術は、ウイルス(典型的にはレトロウイルス)ベクターでの形質移入及びウイルスコートタンパク質−リポソーム媒介形質移入を含む、Dzau等, Trends Biotech. 11: 205-210 (1993)。幾つかの状況では、核酸供給源を標的細胞をターゲティングする試薬と共に提供するのが好ましく、例えば、エンドサイトーシスを伴う細胞表面膜タンパク質に特異的な抗体をターゲティング又は取り込みの促進のために用いてもよく、例えば、特定の細胞型向性のカプシドタンパク質又はその断片、サイクリングで内部移行を受けるタンパク質の抗体、及び細胞内局在化をターゲティングし細胞内半減期を向上させるタンパク質である。レセプター媒介エンドサイトーシスの技術は、例えば、Wu等, J. Biol. Chem. 262: 4429-2232 (1987); Wagner等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87: 3410-3414 (1990)に記載されている。周知の遺伝子作成及び遺伝子治療プロトコールの概説については、Anderson等, Science 256: 808-813 (1992)を参照のこと。
【0102】
一実施態様では、PRO201、PRO308又はPRO309アンタゴニスト又はアゴニスト分子は細胞の内因性リガンドに結合するのに用いられ、それにより、特に細胞内のPRO201、PRO308又はPRO309のレベルが正常な生理的レベルを越える場合、細胞をPRO201、PRO308又はPRO309野生型に非応答性とする。また、内因性PRO201、PRO308又はPRO309基質、又は望ましくない細胞反応(腫瘍細胞の増殖など)を活性化する複合体形成剤に結合するのが有利であろう。
本発明のさらなる実施態様では、PRO201、PRO308又はPRO309発現は、PRO201、PRO308又はPRO309タンパク質の発現を低下させるのに有効な量のPRO201、PRO308又はPRO309アンチセンスRNA又はDNAとともにPRO201、PRO308又はPRO309発現細胞を提供することにより低下させうる。
本発明のさらなる実施態様では、PRO201,PRO308又はPRO309の結合パートナーの発現が、PRO201,PRO308又はPRO309の結合パートナーの低下した発現に行こうなアンチセンスRNA又はDNAの所定量と共にPRO201,PRO308又はPRO309発現細胞を提供することにより低減される。
【0103】
Q.診断的用途
ここに記載した本発明の化合物(例えば、PRO201、PRO308又はPRO309、PRO201、PRO308又はPRO309変異体及び抗-PRO201、PRO308又はPRO309抗体)の他の用途は、PRO201、PRO308又はPRO309変調シグナル伝達により疾患が幾分進行したか否かの診断を助けることである。
PRO201、PRO308又はPRO309シグナル伝達によって特定の疾患が導かれるか否かを決定する診断アッセイは以下の工程を用いて実施される:(1)細胞又は組織の培養;(2)Nsp1、Nsp2又はNsp3変調シグナル伝達を阻害できる化合物の投与;及び(3)細胞溶解物中のPRO201、PRO308又はPRO309基質上のリン酸化の程度、又は試験細胞におけるPRO201、PRO308又はPRO309媒介フェノタイプ効果の測定。工程は、この開示に照らして標準的な技術を用いて実施できる。例えば、細胞又は組織の単離及び培養又はインビボに標準的な技術を使用できる。
【0104】
選択性の程度が変化した化合物類は、PRO201、PRO308又はPRO309の役割を診断するのに有用である。例えば、他の形態のアダプター分子に加えてPRO201、PRO308又はPRO309を阻害する化合物は、幾つかのアダプター分子が疾患を導くか否かを決定する最初の試験化合物として使用できる。試験化合物は、次いで、疾患の誘導における他の細胞内シグナル伝達活性をさらに評価するのに使用できる。試験化合物は、細胞毒性効果の発揮よりも、細胞内シグナル伝達活性の阻害において有力であるべきである(例えば、IC50/ID50が1より大きい)。IC50及びID50は、MTTアッセイ等の標準的技術、又はLDH放出量の測定により測定できる。化合物のIC50/ID50の程度は、診断アッセイの評価を考慮すべきである。一般的に、比率が大きくなると情報がより相対的になる。適切な対照は、化合物の起こりうる毒性効果を考慮し、例えば、増殖疾患を伴わない細胞(例えば対照細胞)の試験化合物での処理は、診断アッセイの一部として用いることができる。本発明の診断方法は、ヘッジホッグシグナル伝達に対する効果を変調させる試薬についてのスクリーニングを含む。例示的な検出技術は、放射性標識及び免疫沈降を含む(米国特許第5,385,915号)。
【0105】
ある種の腫瘍で過剰発現される成長因子レセプターなどの表面タンパク質は、薬剤候補又は腫瘍(例えば、癌)治療の優れた標的であるが、同じタンパク質並びに腫瘍細胞で増幅された遺伝子にコードされる分泌タンパク質は、腫瘍の診断及び予防にさらなる用途が見いだされた。例えば、腫瘍細胞で増幅された遺伝子のタンパク質産物に対する抗体は、腫瘍診断又は予防に使用できる。
例えば、抗体断片を含む抗体は、増幅された遺伝子にコードされるタンパク質(「マーカー遺伝子産物」)の発現の定性的又は定量的検出に用いることができる。抗体は、好ましくは検出可能な例えば蛍光標識を備え、結合は光学顕微鏡、フローサイトメトリー、フルオロメトリー、又はこの分野で知られた他の技術によって監視できる。この技術は、増幅された遺伝子が細胞表面タンパク質、例えば成長因子をコードする場合に特に好ましい。このような結合アッセイは、実質的に上記項目5に記載したように実施される。
マーカー遺伝子産物に結合する抗体のインサイツ検出は、例えば、免疫蛍光又は免疫電子顕微鏡によって実施できる。この目的のために、組織学的試料を患者から取り出し、好ましくは生物学的試料に抗体を被せることにより、標識抗体をそれに適用する。この手法はまた、試験される組織におけるマーカー遺伝子産物の分布も決定できるようにする。当業者には、インサイツ検出のために広範な組織学的方法が容易に利用できることは明らかであろう。
【0106】
R.製薬組成物
ここで同定される増幅遺伝子の産物に特異的に結合するアゴニスト抗体、並びに上記に開示したスクリーニングアッセイで同定された他の分子は、癌を含む腫瘍、ウイルス性疾患などの上記で議論した種々の病理学的状態の治療のために、免疫調節剤として、製薬組成物の形態で投与することができる。
増幅された遺伝子にコードされるタンパク質が細胞内であり、全抗体が阻害剤として用いられる場合、内在化抗体が好ましい。しかし、リポフェクション又はリポソームも抗体、又は抗体断片を細胞に導入するのに使用できる。 抗体断片が用いられる場合、標的タンパク質の結合ドメインに特異的に結合する最小阻害断片が通常は好ましい。例えば、抗体の可変領域配列に基づいて、標的タンパク質配列に結合する能力を保持したペプチド分子が設計できる。このようなペプチドは、化学的に合成でき、又は組換えDNA技術によって生成できる(例えば、Marasco等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90, 7889-7893 [1993])。
【0107】
抗体の治療用製剤は、所望される程度の純度を持つ抗体を、親油性製剤又は水性溶液の形態で、任意の製薬上許容される担体、賦形剤又は安定化剤と混合することにより調製され保存される(Remington's Pharmaceutical Science 16th edition, Osol, A. Ed. [1980])。許容される担体、賦形剤、又は安定化剤は、用いられる用量及び濃度で受容者に非毒性であり、リン酸、クエン酸、及び他の有機酸などのバッファー;アスコルビン酸及びメチオニンを含む酸化防止剤;防腐剤(オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド;ヘキサメトニウムクロライド;ベンズアルコニウムクロライド;ベンズエトニウムクロライド;フェノール;ブチル又はベンジルアルコール;メチル又はプロピルパラベン等のアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及びm-クレゾールなど);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、又は免疫グロブリン等のタンパク質;ポリビニルピロリドン等の親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、又はリシン等のアミノ酸;グルコース、マンノース、又はデキストリンを含む単糖類、二糖類、及び他の炭水化物EDTA等のキレート剤、スクロース、マンニトール、トレハロース又はソルビトールなどの糖;ナトリウムなどの塩形成対イオン;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体)又はトゥイーン(TWEEN)(商品名)、プルロニクス(PLURONICS)(商品名)、及びポリエチレングリコール(PEG)等の非イオン性界面活性剤を含む。
【0108】
本発明のスクリーニングアッセイで同定された非-抗体化合物は、同様の方式で、この分野で知られた標準技術を用いて製剤される。
ここでの製剤は、治療すべき特定の徴候に必要な場合に1以上の活性化合物、好ましくは互いに悪影響を及ぼさない相補的仮性を持つものも含んでよい。あるいは、又はそれに加えて、組成物は、細胞毒性薬、サイトカイン又は成長阻害剤を含んでもよい。これらの分子は、適切には、意図する目的に有効な量の組み合わせで存在する。
また、活性成分は、例えばコアセルベーション技術により又は界面重合により調製されたマイクロカプセル、例えば、各々ヒドロキシメチルセルロース又はゼラチン-マイクロカプセル及びポリ(メタクリル酸メチル)マイクロカプセル中、コロイド状薬物送達系<BR(例えば、リポソーム、アルブミン小球、マイクロエマルション、ナノ粒子及びナノカプセル)中、又はマイクロエマルション中に包括されていてもよい。これらの技術は、Remington's Pharmaceutical Science 16th edition, Osol, A. Ed. [1980]に開示されている。
インビボ投与に使用される製剤は無菌でなけらばならない。これは、滅菌濾過膜を通した濾過により容易に達成される。
【0109】
徐放性製剤を調製してもよい。徐放性製剤の好適な例は、抗体を含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリクスを含み、このマトリクスは成形された物品、例えばフィルム、又はマイクロカプセルの形状である。除放性マトリクスの例は、ポリエステルヒドロゲル(例えば、ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリレート)又はポリ(ビニルアルコール))、ポリアクチド(米国特許第3,773,919号)、L-グルタミン酸及びγ-エチル-L-グルタメート、非分解性エチレン-酢酸ビニル、LUPRON DEPOT(商品名)(乳酸-グリコール酸コポリマーと酢酸リュープロリドの注射可能な小球)などの分解性乳酸-グリコール酸コポリマー、ポリ-(D)-3-ヒドロキシブチル酸を含む。エチレン-酢酸ビニル及び乳酸-グリコール酸などのポリマーは分子を100日に渡って放出することができるが、ある種のヒドロゲルはより短時間でタンパク質を放出してしまう。カプセル化された抗体が身体内に長時間残ると、それらは37℃の水分に露出されることにより変性又は凝集し、その結果、生物学的活性の低下及び起こりうる免疫原性の変化をもたらす。合理的な方法は、含まれる機構に依存する安定化について工夫することができる。例えば、凝集機構がチオ−ジスルフィド交換を通した分子間S−S結合形成であると発見された場合、安定化はスルフヒドリル残基の修飾、酸性溶液からの凍結乾燥、水分含有量の制御、適切な添加剤の付加、及び特異的ポリマーマトリクス組成物の開発によって達成されうる。
【0110】
S.治療方法
本発明の抗体及び他の抗腫瘍化合物は、種々の腫瘍、例えば癌、ウイルス感染、及び一般的に免疫調節、例えば免疫系のアップレギュレートが望まれる状態の治療に用いてもよい。
治療される状態又は疾患の例としては、良性又は悪性腫瘍(例えば、腎臓(renal)、肝臓、腎臓(kidney)、膀胱、***、胃、卵巣、結腸直腸、前立腺、膵臓、肺、外陰部、胸腺、肝癌(hepatic carcinoma)、肉腫;膠芽細胞腫;及び種々の頭部及び頸部の腫瘍);白血病及びリンパ悪性疾患;ニューロン、グリア、星状、視床下部及び腺、マクロファージ、上皮、間質及び胞胚腔の疾患;及び炎症、脈管形成及び免疫学的疾患が含まれる。
本発明の抗腫瘍剤(例えば抗体)は、哺乳動物、好ましくはヒトに、周知の方法、例えば、ボーラスとして又は所定時間に渡る連続注入による静脈内投与、筋肉内、腹膜内、脳脊髄内、皮下、関節間、滑膜内、鞘内、経口、局所、又は吸入経路などにより投与される。静脈内投与が好ましい。
【0111】
他の治療的養生法を本発明の抗癌剤の投与に組み合わせてもよい。例えば、このような抗癌剤で治療される患者は放射線治療を受けてもよい。あるいは、又はそれに加えて、患者に化学治療薬を投与してもよい。このような化学治療薬の調製法及び用量スケジュールは、製造者の指示に従って使用されるか、熟練した実務者により経験的に決定される。そのような化学治療に対する調製法及び用量スケジュールはまたChemotherapy Service M.C. Perry編, Williams & Wilkins, Baltimore, MD (1992)にも記載されている。化学治療薬は、本発明の抗腫瘍剤の投与に先立って、又は続いて投与してもよく、あるいはそれらと同時に投与してもよい。本発明の抗体は、タモキシフェンなどの抗エストロゲン化合物又はオナプリストンなどの抗プロゲステロン(EP 616812参照)の、これらの分子について知られた用量と組み合わせてもよい。
また、腫瘍関連抗原に対する抗体、例えばErB2、EGFR、ErB3、ErB4、又は血管内皮因子(VEGF)に結合する抗体を投与することも好ましい。ときどきは、患者にサイトカインを投与することも有利である。好ましい実施態様では、ここの抗癌剤は、成長阻害剤と同時投与される。例えば、まず成長阻害剤を投与し、続いて本発明の抗癌剤を投与する。しかしながら、同時投与、又は本発明の抗癌剤を最初に投与することも考えられる。成長阻害剤についての適切な用量は現在用いられている量であるが、成長阻害剤とこの抗体との組み合わせ(相乗)効果により減少させ得る。
【0112】
疾患の防止又は治療のための、ここでの抗腫瘍剤の適切な用量は、上記で定義したような治療される疾患の型、疾患の重篤さ及び経過、防止又は治療目的で薬剤が投与されるか否か、従前の治療、患者の臨床履歴及び薬剤に対する反応、及び主治医の裁量に依存する。薬剤は、患者に、一回又は一連の治療に渡って適切に投与される。
例えば、疾患の型及び重篤さに応じて、約1μg/kgから15mg/kg(例えば、0.1−20mg/kg)の抗腫瘍剤が、例えば、1又はそれ以上の別々の投与あるいは連続注入により患者に投与するための最初の候補用量である。典型的な1日の用量は、上記の要因に応じて、約1μg/kgから100mg/kg以上であろう。数日以上に渡る繰り返し投与のためには、状態に応じて、疾患の徴候に所望の抑制が現れるまで治療が続けられる。しかしながら、他の用量計画が有用であることもある。この治療の進行は、従来の技術及びアッセイによって容易に監視される。
【0113】
T.製造品
本発明の他の実施態様では、上記の疾患の診断又は治療に有用な物質を含む製造品が提供される。この製造品は容器とラベルとを含んでなる。好適な容器は、例えば、ビン、バイアル、シリンジ、及び試験管を含む。容器は、ガラス又はプラスチックなどの材料から形成されてよい。容器は、状態を診断し治療するのに有効な組成物を収容し、無菌のアクセスポートを有し得る(例えば、容器は皮下注射針で貫通可能なストッパーを有する静脈内溶液バッグ又はバイアルであってよい)。組成物中の活性剤は本発明のIFN-ε、又はそのアゴニスト又はアンタゴニストである。容器上又は添付されるラベルは、組成物が選択した状態の診断又は治療のために使用されることを示す。製造品はさらに、リン酸緩衝塩水、リンガー液及びデキストロース溶液などの製薬的に許容されるバッファーを含む第2の容器を具備してもよい。さらに、他のバッファー、希釈剤、フィルター、針、シリンジ、及び使用上の指示を付けたパッケージ挿入物を含む商業的及び使用者の見地から望ましい他の材料を含んでもよい。
【0114】
以下の実施例は例示するためにのみ提供されるものであって、本発明の範囲を決して限定することを意図するものではない。
本明細書で引用した全ての特許及び文献の全体を、出典明示によりここに取り込む。
(実施例)
実施例で言及されている全ての他の市販試薬は、特に示さない限りは製造者の使用説明に従い使用した。ATCC登録番号により以下の実施例及び明細書全体を通して特定されている細胞の供給源はアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション、ロックビル、メリーランドである。
【0115】
実施例1
ヒトPRO201、PRO308又はPRO309cDNAクローンの単離
発現配列タグ(EST)データベース(LIFESEQ(商品名)、Incyte Pharmaceuticals、Palo Alto, CA)を検索し、アダプタータンパク質Shcと有意な同一性を持つ胎児膵臓ライブラリにおけるESTを同定した(1328938、DNA28710、Fig4A)(配列番号:13)。単離したESTに対応する全長cDNAを、ヒト胎児腎臓ライブラリから、pRK5におけるインビボクローニング技術を用いてクローニングした(DNA30676、Nsp1)(配列番号:1)。単一の長いオープンリーディングフレームが存在し、それは576アミノ酸タンパク質をコードする。またNsp1(配列番号:1)は、Nsp1(配列番号:1)のN-末端に現れるSH2領域に出現するSck及びShc(Fig8)(各々配列番号:17及び16)にも関連する。Nsp1(配列番号:1)はまた、タンパク質の中程にプロリン−セリン富化ドメイン(PS)を有し、それはSH3相互作用ドメインとして作用しうる。Nsp1のC-末端は既知の哺乳動物タンパク質と有意な同一性を持たない。このC-末端を、次いでESTデータベースの再スクリーニングに用い、2つの付加的断片(104191)(DNA38653)(Fig4B)(配列番号:14)及び(1651811)(DNA38654)(Fig4C)(配列番号:15)を見いだした。これらからクローニング及び富化プライマーを作成し、Nsp2(配列番号:3)及びNsp3(配列番号:5)各々についての全長配列を、インビボクローニング技術を用いてpRK5においてヒト胎盤ライブラリから単離した。全長配列のクローニングに使用したプローブは以下の通り:
Nsp1(配列番号:1):
クローニング: ACTGAGGCCTGTTGAAAGTGCAGAGCTCAG(配列番号:7)
富化プライマー: GCTGAAGAAGAGCTTCAG(配列番号:8)
Nsp2(配列番号:3):
クローニング: CAATGCCGATGGCCATTGTGTTGTGTCTTTCAATTATGTCCAGGCGCA(配列番号:9)
富化プライマー: ATCCCAGAATGTCCACTG(配列番号:10)
Nsp(配列番号:5):
クローニング: GGCCAGCATGATGGACATGGTGTGGAACCTTTCCAGCAGGTCTAGGCGTA(配列番号:11)
富化プライマー: GGTGCAGCCCAGGATGTC(配列番号:12)
【0116】
3つのタンパク質(Nsp1、Nsp2、Nsp3)(配列番号:1、3及び5)は全体で33%から47%の同一性を有する(Fig6B)。Nsp3はSH2ドメイン及び潜在的SH3相互作用ドメイン(PS領域)を有し、Nsp2はSH2ドメインを欠くが潜在的SH3相互作用ドメインは有する。Nsp2にSH2ドメインが無いことにより、おそらくこのタンパク質は他の2つのNspsのドミナントネガティブレギュレータとして作用するであろう。3つ全てのタンパク質は見かけのキナーゼ又はホスファターゼドメインを欠く。
cDNAクローンNsp1、Nsp2及びNsp3(配列番号:2、4及び6)は、それら全体を配列決定した。DNA30676、DNA40575及びDNA61601の全核酸配列を各々Fig1(配列番号:2)、Fig2(配列番号:4)及びFig3(配列番号:6)に示す。クローンDNA30676−1223、DNA40575−1223及びDNA61601−1223はATCCに寄託され、ATCC寄託番号209567、209565及び209713が付与された。さらに、関連するクローンDNA40556−1223及びDNA40554−1223もATCCに寄託され、ATCC寄託番号209566及び2096564が付与された。
【0117】
実施例2
ノーザンブロット分析
ヒト組織におけるPRO201、PRO308及びPRO309mRNAの発現をノーザンブロット分析で試験した。ヒトRNAブロットを、アミノ酸:(a)DNA30676の90−102;(b)DNA40575の270−284又は(c)DNA61601の475−491をコードするヌクレオチドに相補的な32P標識したDNAプローブにハイブリッド形成した。エンドクリン及びfetalII(clontech)を、ExpressHyb(登録商標)ハイブリッド形成溶液(Clontech)中で、製造者の指示に従ってハイブリッド形成した。ブロットをプローブと共にハイブリッド形成バッファー(5xSSPE:2xデンハード液;100mg/ml変性剪断サケ***DNA;50%ホルムアミド;2%SDS)中で42℃において16時間インキュベートした。ブロットを、2xSSC;0.05%SDSで室温において1時間洗浄し、ついで0.1xSSC;0.1%SDS中、50℃で30分間洗浄した。ブロットをホスホイメージャー分析(Fuji)により、終夜露出した後に展開した。
Fig9Aに示すように、Nsp1の有意な発現はヒト胎児肝臓ライブラリのみで検出され、他の胎児組織(例えば胎児腎臓)でも発現されうる。この発現パターンは、胎児発達に重要なシグナル伝達経路の同調におけるNsp1の役割を示唆している。それに対して、Nsp2(配列番号:4)及びNsp3(配列番号:6)は、多数の組織でより広く発現された。造血組織では、2つのNsp2転写物(3.8kb及び3.2kb)が検出された(Fig9B)。
【0118】
実施例3
EGF、インシュリン及びフィブロネクチン誘発性リン酸化及びp130Casとの複合体形成
Nsp1は3つの潜在的なリン酸化可能なチロシンを有するので、Nsp1が種々の細胞外刺激の存在下でリン酸化されうるか否かの実験を行った。EGFでの処理は即座にNsp1(配列番号:1)のチロシンリン酸化を誘発し、それは2分以内に起こった(Fig10A)。Nsp1(配列番号:1)は、インシュリン、IGF-1、及びヘレグリン(図示せず)にも応答してリン酸化された。これに対して、フィブロネクチン(FN)は弱いNsp1リン酸化を刺激したのみであった(Fig10C)。
Nsp1(配列番号:1)に刺激された経路を辿るために、本出願人は、インビボでNsp1(配列番号:1)に付随するタンパク質を同時免疫沈降実験で同定した。EGFでの処理は、Nsp1と、約170kDの分子量を持つチロシンリン酸化タンパク質との間の結合を導く。このタンパク質は、EGFに対して即座にチロシンリン酸化し、EGFレセプターに対するmABで検出できる。さらに、Nsp1(配列番号:1)はEGFレセプターの免疫沈降に続くウェスタンブロットによって検出できる(Fig10B)。EGF処理の前に残りのNsp1/EGFレセプター相互作用があるが、相互作用の程度はEGFへの暴露に続いて有意に増大する。
また、免疫沈降実験はNsp1が130kDのタンパク質(p130)と相互作用することも明かにした。血清飢餓細胞の中でp130は中程度までリン酸化されるが(Fig10A)、細胞接着の喪失は完全なp130脱リン酸化を導く(Fig10C)。ウェスタンブロット分析により、このp130はアダプタータンパク質p130Casであることがわかった。Fig10Aにおいて、抗-(P)Tyr抗体が約130kDに2つのバンドを検出したが、抗-Cas抗体は底側バンドのみを認識した。我々は、上側バンドを未だ同定していない。Casは最初ウイルスCrk(V-Crk)の誘発された発現に続く過剰リン酸化タンパク質として見いだされ[Sakai等, EMBO J. 13:
3748-56 (1994)]、細胞外マトリクス並びに多数の他の刺激とのインテグリン相互作用に応答してリン酸化される。Chen等, J. Biol. Chem. 272: 27401-10 (1997); Casamassima及びRozengurt, J. Biol. Chem. 272: 9363-70 (1997); Nojima等, J. Biol. Chem. 270: 15398-402 (1995)。Casは限局的接着キナーゼ(FAK)と直接的に相互作用し[Polte及びHanks, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92: 10678-82 (1995)]、それによって細胞外事象が細胞運動形態及び生存に影響する重要な要素であることがわかった。Daniel及びReynolds, Mol. & Cell. Biol. 15: 4819-24 (1995); Mo & Reynolds, Cancer Res. 56: 2633-40 (1996); Nakamoto等, Mol. Cell. Biol. 17: 3884-97 (1997)。
【0119】
Nsp1(配列番号:1)及びCasのリン酸化状態、Nsp1(配列番号:1)に付随するCasの相対量はEGF又はインテグリンレセプターを介するシグナル伝達に依存する。EGFはNsp1リン酸化を増大させるが、全体(データは示さず)及びNsp1(配列番号:1)両方の脱リン酸化がCasに関連している(Fig10A)。EGF処理の後のNsp1に付随するCasの量も増加する(Fig10A)。これに対して、フィブロネクチンはNsp1(配列番号:1)リン酸化に小さな影響しか持たないが、Nsp1に付随するCasを増加させると同時にNsp1に付随するCas量の一時的な減少をもたらす(Fig10C)。インテグリンに応答したCasリン酸化における増加は既に報告されている。Nojima等, J. Biol. Chem. 270: 15398--4029 (1995)。Nsp1/Cas複合体におけるこの減少は、約30分後に最小点に達し、次いで約4時間頃にベースライン条件に戻った。
Fig11において、インシュリン刺激Nsp1リン酸化は2時間でピークとなり、次いで14.5時間後に減少した。同じブロットを抗-FLAG抗体で再プローブして等しい負荷を示した。Fig11において、IGF-1もNsp1のリン酸化を刺激するが、IGF-1に対するリン酸化のレベルはインシュリンに対して見られたものより低いことが示されている。
IGF-1の結果:
インシュリン(Fig13)又はEGF(図示せず)の不存在下でNsp1はCasと関連している。Casのリン酸化はインシュリン処理後に減少することが観察された。このことはFig12及びFig13の両方に示されている。Fig13で試験された試料の膜を剥がして抗-p130Cas抗体で再プローブし、Nsp1に付随するCasの量がインシュリン処理に続いて減少することも示した。
【0120】
材料と方法
EGF/フィブロネクチン:
形質移入及び血清飢餓COS(A、B)を25ng/mlのEGFで表示した時間処理するか未処理のままとした。形質移入又は血清飢餓293細胞を(皿上の)プラスチックに接着させ、(皿の外で)懸濁させ、あるいは10mg/mlのFN-被覆皿上にFig10C(C)に表示した時間置いた。Fig10A及び10Cにおいて、抗-flag免疫沈降を、表示したように抗-flag、抗-(P)Tyr又は抗-Cas抗体でブロットした。Fig10Bにおいては、抗-EGFレセプター(CalBiochem)免疫沈降を抗-flag又は抗-(P)Tyr抗体で表示したようにブロットした。形質移入細胞は、新たに添加したプロテアーゼ阻害剤(1mMAEBSF、10mMロイペプチン、2mg/mlアプロチニン、1mMペプスタチン)を含む同時免疫沈降アッセイ(CoIPA)用バッファー(20mMトリス、pH7.5、100mMNaCl、1%Triton X-100、2mMEDTA、10mMピロリン酸ナトリウム、10mMフッ化ナトリウム、2mMオルトバナデート)中に溶解した。抗-flag(Kodak)、IBI免疫沈降及び関連タンパク質は、抗-(P)Tyr抗体PY20(Transduction Lab)で可視化した。同じブロットを剥がして抗-p130Cas(Transduction Lab)又は抗-flag抗体で再ブロットし、ECLシステム(Pierce)で検出した。Flapエピトープ(DYKDDDDK(配列番号:19))をインビトロ突然変異誘発を用いてNsp1cDNA作成物のN-末端にフレーム内に付加してpRK.Nsp1.FLAGを作成した。
【0121】
インシュリン:
FLAGエピトープ(DYKDDDDK(配列番号:19))を標準的なインビトロ突然変異誘発を用いてNsp1cDNA作成物のN-末端に挿入してpRK.Nsp.FLAGを作成した。インシュリンレセプターを過剰発現するCHO細胞(CHO-IR)を、10%血清、2mML-グルタミン、100単位/mlペニシリン、及び100μg/mlストレプトマイシンを含有するF12-DMEM中で培養した。DOSPER(Boehringer Mannheim)又はsuperfect(Qiagen)を用いたリポソーム媒介形質移入法を製造者の指示に従ってCHO細胞に実施した。CHO-IR細胞を空のpRK又はpRK.Nsp1.FLAGのいずれかで一過的に形質移入し、16時間血清飢餓にした。細胞を100nMのインシュリン有無で異なる時間処理し、次いで氷上で1時間、新たに添加したプロテアーゼ阻害剤(1μMAEBSF、10μMロイペプチン、2μg/mlアプロチニン、1μMペプスタチン)を含む1mlの免疫沈降アッセイ(IPA)バッファー(10mMトリス、pH7.5、150mMCaCl、0.1%SDS、1%Triton X-100、1%デオキシコレート、5mMEDTA、10mMピロリン酸ナトリウム、10mMフッ化ナトリウム、2mMオルトバナデート)中に溶解した。試料を抗-FLAG親和性ゲル(IBI, Kodak)で免疫沈降させた。SDS-ポリアクリロニトリルゲル電気泳動に続いて、タンパク質をニトロセルロース膜(Novex)に移し、抗-ホスホチロシン抗体PY-20(Transduction Lab)又は抗-FLAG抗体でウェスタンブロットし、ECLシステム(Pierce)で検出した。
IGF-1
CHO-IR又はCHO-IGFIR(IGF-1レセプター)細胞で形質移入したpRK又はpRK.Nsp1.FLAGを、血清飢餓にし、100nMインシュリン又は100ng/mlIGF-1で処理し、プロテアーゼ阻害剤を含む同時免疫沈降アッセイ(CoIPA)用バッファー(20mMトリス、pH7.5、100mMNaCl、1%Triton X-100、2mMEDTA、10mMピロリン酸ナトリウム、10mMフッ化ナトリウム、2mMオルトバナデート)に溶解した。試料を抗-FLAG又は抗-p130Casで免疫沈降し、抗-ホスホチロシン抗体PY-20又は抗-p130Cas(Santa Cruz Biotechnology)でウェスタンブロットした。
【0122】
実施例4
Nsp1におけるリン酸化チロシン残基のマッピング
Nsp1においてリン酸化残基をマッピングするために、出願人はNsp1(配列番号:1)の3つのチロシンの各々を独立にフェニルアラニンに変換した。次いで形質移入細胞をEGFで刺激してNsp1(配列番号:1)免疫沈降させた。3つ全ての場合で、非刺激細胞から免疫沈降させた非リン酸化Nsp1(配列番号:1)はCas及びEGFレセプターの両方を付随していなかった。これらの結果は、アミノ酸変化がタンパク質全体構造に全体として有害ではないことを示している。変異Nsp1Y61F(配列番号:21)はEGFに対して通常にリン酸化されたが、Nsp1Y95F(配列番号:22)のリン酸化は検出されず、Nsp1Y231F(配列番号:23)は弱くリン酸化された。このデータは、第1にY95のリン酸化があり、それに続いてY231のリン酸化があることを示唆している。Y16はリン酸化されてもされなくてもよいが、Y95又はY231のリン酸化に必要ではない。さらにNsp1(配列番号:1)と同時免疫沈降するEGFレセプターの量はレセプターリン酸化により増加するが大きくはNsp1(配列番号:1)のリン酸化に独立であるので、Casを伴うNsp1(配列番号:1)はNsp1(配列番号:1)及びCasリン酸化状態とは独立であり(Fig10)、この相互作用はCasのSH3ドメイン及びNsp1(配列番号:1)のSH3相互作用ドメインを通して媒介されることがわかった。
材料と方法:
Nsp1(配列番号:1)の3つ全てのチロシン残基は、標準的な突然変異誘発法を用いてフェニルアラニンに変換した。変異体(Y16F、Y95F及びY231F)(各々配列番号:21−23)及び野生型Nsp1(配列番号:1)DNAをCOS細胞に形質移入し、25ng/mlのEGFで10分間処理するか未処理のままとした。細胞溶解物は抗-flag抗体で免疫沈降させ、抗-P(Tyr)抗体、抗-p130Cas抗体又は抗-flag抗体でウェスタンブロットした。
【0123】
実施例5
ヌードマウスにおける形質転換及び腫瘍形成能
序文:
Casはc-src媒介事象[Sakai等, EMBO J. 13: 3748-56 (1994); Sakai等, Oncogene 14: 1419-26 (1997)]に含まれれていたので、出願人はNIH3T3形質転換アッセイにおけるNsp1(配列番号:1)の効果を試験した。
NIH3T3は、細胞が過剰集密の場合でさえ通常は単層で成長する細胞系である。これらは、候補がレトロウイルス媒介感染を通してベクターMSCVに形質移入される場合に候補遺伝子が潜在的な発癌性を持つか否かを決定するのに使用される。形質移入細胞は病巣に生成され、採取されて一千万細胞まで培養され、ヌードマウスに注入される。形質移入細胞が発癌性である場合、それはヌードマウスの欠陥免疫系に阻害されずに成長して腫瘍を形成する。Winograd等, In Vivo 1(1): 1-13 (1987)参照。
【0124】
議論と結果:
100を越える形態的に形質転換された病巣が、Nsp1発現レトロウイルスでの形質転換及びG418選択に続くNIH3T3細胞の100mmプレートに観察されたが、対象(ネオ)ベクターでは現れなかった。形質転換細胞(Fig14B)は、対照形質移入NIH3T3細胞の通常に伸長された線維芽形状(Fig14A)に比較して、より丸くなり密になった。形質転換したNsp1発現細胞も腫瘍形成性であるか否かを実験するために、3つの独立の病巣を採取して拡張し、NIH3T3-MSCV.Nsp1-.sub1、-.sub2及び-.sub3を生成させた。対照は、ネオのみを発現する細胞系(NIH3T3-neo)及び低レベルのNsp1(配列番号:2)を発現するが形質転換されていない形質移入細胞のプール(NIH3T3-Nsp1.non-trans)から構成された。Nsp1(配列番号:2)発現、非形質転換細胞は、NIH3T3細胞をNsp1(配列番号:2)発現レトロウイルスベクターで感染することにより誘導した。これらのバルク培地をネオマイシン耐性で選択したが、病巣形成について選択する集密後成長を通しては進行させなかった。
各細胞系を5のマウスに注入した。ネオ対照細胞又はNIH3T3-Nsp1.non-trans細胞を注入したマウスでは腫瘍の成長が観察されなかった。NIH3T3-MSCV.Nsp1-.sub1、-.sub2及び-.sub3を注入した各群の5匹のマウス全てで3週間以内に明らかな腫瘍成長があった。組織学的分析により、腫瘍は大きく、不均一な、中程度の未分化類上皮細胞であり、高い***指数を持つことが示された(Fig14C)。転移の明らかな証拠は無かった。
形成された腫瘍は良好に外接し、主に大きく不均一な中程度の未分化類上皮細胞からなる膨張性物質であり、高い***指数を有し、紡錘細胞増殖の小領域により末梢に分散されている(Fig14)。
【0125】
材料と方法:
pRK.Nsp1.FLAGプラスミドはEcoRI及びSalIで消化した。FLAGエピトープを含むNsp1cDNA断片を精製し、レトロウイルスベクターMSCVneoのEcoRI及びXhoI部位にサブクローニングしてMSCVneo.Nsp1.FLAGとした。マウス胚線維芽細胞(ATCC)及びレトロウイルス製造器BOSC23細胞を、10%ウシ胎児血清、2mML-グルタミン、100単位/mlペニシリン、及び100μg/mlストレプトマイシンを含むDMEMに維持した。
レトロウイルスベクターMSCVneo及びはMSCVneo.Nsp1.FLAGをリン酸カルシウム媒介形質移入を用いてBOSC23細胞に形質移入した。72時間上清を用いて6ウェルプレート上に蒔いたNIH3T3を感染させた。感染細胞を400μg/mlG418(Gobco)中で選択してプールし、NIH3T3-MSCV及び-MSCV.Nsp1細胞系を生成させた。NIH3T3-MSCV及び-MSCV.Nsp1細胞を4日間集密化まで成長させ、1回の培地変換、1対5の比率での分割をし、更に4日間成長させて集密化した。感染後に、100を越える形態的に形質転換された細胞がNIH3T3細胞の100mmプレートに観察されたが、対照(ネオ)ベクターでは無かった。病巣を極薄切片とし、次いでツルイジンブルー染色した、Fig14Aはいずれかの対照細胞(Fig14A)の極薄切片を示し、Fig14BはNsp1形質転換病巣を示す。
NIH3T3-MSCV.Nsp1の3つの形質転換病巣を採取して拡張し、サブラインNIH3T3-MSCV.Nsp1-.sc1、-.sc2及び-.scb3を生成させた。10ベクター形質移入対照細胞、非形質転換NIH3T3-MSCV.Nsp1及び3つのサブラインを各ヌードマウスの後足の足裏に皮下注射した。各細胞系について5匹のマウスに注射した。腫瘍の大きさを2週及び4週に測定した。結果的な腫瘍(注射後4週)を固定し、ブロックし、切片をヘマトキシリン及びエオシンで染色した(Fig14C)。対照細胞又は非形質転換NIH3T3-MSCV.Nsp1細胞で形質移入したベクターを注射したマウスでは腫瘍成長が観察されなかった。NIH3T3-MSCV.Nsp1-.sc1、-.sc2及び-.sc3を注射した各マウスでは腫瘍が成長した(Fig15)。
【0126】
実施例6
アポトーシス耐性
上記の実施例はNsp1(配列番号:2)発現がNIH3T3形質転換及び腫瘍形成を導くことを示したので、出願人はNsp1発現が成長因子の除去により誘発されるアポトーシスから細胞を保護するか否かを実験した。サブクローニングした細胞系は形態的に形質転換した細胞NIH3T3-MSCV.Nsp1-.sub1及び-.sub2から誘導した(Nsp1.-sub1.1及びNsp1.sub2.1と命名)。これらの形質転換細胞系、非形質転換細胞培養(NIH3T3-Nsp1.non-trans)及び対照細胞NIH3T3-neoをPI3-キナーゼ阻害剤LY294002の有無において48時間血清飢餓とし、アネキシンV(Clontech)アポトーシスアッセイを施した(Fig16)。NIH3T3-Nsp1.non-trans細胞は形態的に正常でヌードマウスにおいて腫瘍を形成しなかったが、それらは対照NIH3T3-neo細胞よりも、成長因子除去で誘発されるアポトーシスに対してより耐性であった。アポトーシス耐性におけるこの小さいが有意な増加は、PI3キナーゼ阻害剤LY294002によって減殺された。Nsp1(配列番号:2)を発現しないベクター対照細胞では、LY294002自体が更にアポトーシスを誘発した。Nsp1(配列番号:2)形質転換サブラインでは、血清飢餓誘発アポトーシスからのほぼ完全な保護があったが、この効果はPI3-キナーゼ阻害剤での処理に感受性ではなかった。Nsp1(配列番号:1)の低レベルでのPI3-キナーゼへのこの依存性は、Nsp1(配列番号:1)のPI3-キナーゼ下流側に位置するであろう。高いNsp1レベルでの成長因子独立性がLY294002によって阻害されないという観察に反して、Nsp1(配列番号:1)はPI3-キナーゼのに独立したさらなる経路を刺激することを示唆する。このPI3-キナーゼは成長因子媒介アポトーシス耐性に必要であり十分であることが既に報告されている。Kulik等, Mol. Cell Biol. 17: 1595-606 (1997); Parrizas等, J. Biol. Chem. 272: 154-61 (1997); Vemuri等, Development 122: 2529-37 (1996) .
材料と方法:
対照細胞(NIH3T3-neo)、非形質転換Nsp1(配列番号:2)発現細胞(NIH3T3-Nsp1.non-trans)及び形質転換サブライン(Nsp1.-sub1.1及びNsp1.-sub2.1)を10μg/mlLY294002の有無で48時間血清飢餓とした。アポトーシス細胞の存在はアネキシンV-FITC(Clontech)を用いてFACS上で製造者の指示に従って検定した。各細胞系を3回検定し、平均と標準偏差を示した。形質転換サブラインでは、Nsp1(配列番号:1)は血清飢餓誘発アポトーシスから細胞を保護した。
【0127】
実施例7
PI3-キナーゼ相互作用
Nsp1(配列番号:1)がPI3-キナーゼと相互作用するか否かを決定するために、PI3-キナーゼN-末端又はC-末端SH2ドメインを含むGST融合タンパク質を、Nsp1(配列番号:2)を一過的発現するEGF処理又は未処理COS細胞溶解物又は対照とともにインキュベートした(Fig20)。C-末端SH2ドメインGST融合タンパク質はNsp1(配列番号:1)と相互作用した。この相互作用は、少なくとも部分的にNsp1(配列番号:1)にリン酸化状態に依存し、EGF刺激に続いてPI3-キナーゼと相互作用するNsp1(配列番号:1)の量が増加することがわかった。PI3-キナーゼのN-末端SH2ドメインは、Nsp1(配列番号:1)と測定可能な相互作用をしなかった。
材料と方法:
pRK又はNsp1(配列番号:2)で形質移入したCOS細胞を25ng/mlのEGFで処理するか未処理のままとした。細胞をCoIPバッファー(上掲)に溶解し、PI3-キナーゼN-末端又はC-末端SH2ドメイン-GSTビーズ(UBI)とともにインキュベートした。沈殿したNsp1(配列番号:1)を抗-flag抗体で検出した。
【0128】
実施例8
PRO201、PRO308又はPRO309のハイブリッド形成プローブとしての使用
以下の方法は、PRO201、PRO308又はPRO309ポリペプチドをコードする核酸配列のハイブリッド形成プローブとしての使用を記述する。
全長又は成熟PRO201(例えばNsp1)、PRO308(例えばNsp2)又はPRO309(例えばNsp3)又はその断片のコード化配列を含むDNAは、同種DNA(ヒト組織cDNAライブラリ又はヒト組織ゲノムライブラリのPRO201、PRO308又はPRO309の天然発生変異体をコードするもの等)のスクリーニングのためのプローブとして用いられ得る。
ハイブリッド形成及びいずれかのライブラリDNAを含むフィルターの洗浄は、以下の高い緊縮性条件下で実施される。放射性標識PRO201(例えばNsp1)、PRO308(例えばNsp2)又はPRO309(例えばNsp3)誘導プローブのフィルターへのハイブリッド形成は、50%ホルムアミド、5xSSc、0.1%ピロリン酸ナトリウム、50mMリン酸ナトリウム、pH6.8、2xデンハード液、及び10%デキストラン硫酸の溶液中で42℃で20時間実施した。フィルターの洗浄は、0.1xSSC及び0.1%SDS水溶液中で、42℃で実施した。
全長天然配列PRO201、PRO308又はPRO309をコードするDNAと所望の同一性を持つDNAは、次いでこの分野で知られた標準的技術を用いて同定できる。
【0129】
実施例9:大腸菌におけるPRO201、PRO308又はPRO309の発現 この実施例は、大腸菌での組換え発現による非グリコシル化形態のPRO201、PRO308又はPRO309の調製を例示する。
PRO201、PRO308又はPRO309(配列番号:2、配列番号:4、配列番号:6)をコードするDNA配列を、選択したPCRプライマーを用いて最初に増幅した。プライマーは、選択された発現ベクターの制限酵素部位に対応する制限酵素部位を持たなければならない。種々の発現ベクターが用いられる。好適なベクターの例は、pBR322(大腸菌から誘導されたもの;Bolivar等, Gene, 2:95 (1977)参照)であり、アンピシリン及びテトラサイクリン耐性についての遺伝子を含む。ベクターは、制限酵素で消化され脱リン酸される。PCR増幅した配列は、次いでベクターに結合させる。ベクターは、好ましくは抗生物質耐性遺伝子、trpプロモーター、polyhisリーダー(最初の6つのSTIIコドン、polyhis配列、及びエンテロキナーゼ切断部位を含む)、PRO201、PRO308又はPRO309コード化領域、ラムダ転写終結区、及びargU遺伝子を含む。
ライゲーション混合物は、次いで、Sambrook等, 上掲に記載された方法を用いた選択した大腸菌の形質転換に使用される。形質転換体は、それらのLBプレートで成長する能力により同定され、次いで抗生物質耐性クローンが選択される。プラスミドDNAが単離され、制限分析及びDNA配列決定で確認される。
選択されたクローンは、抗生物質を添加したLBブロスなどの液体培地で終夜成長させることができる。終夜培地は、続いて大規模培地の播種に用いられる。次に細胞を最適密度で成長させ、その間に発現プロモーターが作動する。
更に数時間の培養の後、細胞を採集して遠心分離できる。遠心分離で得られた細胞ペレットは、この分野で知られた種々の試薬を用いて可溶化され、可溶化PRO201、PRO308又はPRO309タンパク質を金属キレート化カラムを用いてタンパク質を緊密に結合させる条件下で精製した。
【0130】
あるいは、大腸菌における発現は通常次の方法で実施しても良い。PRO201(例えば、Nsp1)、PRO308(例えば、Nsp2)又はPRO309(例えば、Nsp3)をコードするDNA配列は、最初に選択されたPCRプライマーを用いて増幅した。プライマーは、選択された発現ベクターの制限酵素部位に対応する制限酵素部位を持たなければならない。種々の発現ベクターが用いられる。好適なベクターの例は、pBR322(大腸菌から誘導されたもの;Bolivar等, Gene, 2:95 (1977))であり、アンピシリン及びテトラサイクリン耐性についての遺伝子を含む。ベクターは、制限酵素で設計され、脱リン酸される。PCR増幅した配列は、次いで、ベクターに結合させる。ベクターは、好ましくは抗生物質耐性遺伝子、trpプロモーター、polyhisリーダー(最初の6つのSTIIコドン、polyhis配列、及びエンテロキナーゼ切断部位を含む)、PRO201,PRO308又はPRO309コード化領域、ラムダ転写終結区、及びargU遺伝子を含む。
ライゲーション混合物は、次いで、選択した大腸菌のSambrook等, 上掲に記載された方法を用いた形質転換に使用される。形質転換体は、それらのLBプレートで成長する能力により同定され、次いで抗生物質耐性クローンが選択される。プラスミドDNAが単離され、制限分析及びDNA配列分析で確認される。
選択されたクローンは、抗生物質を添加したLBブロスなどの液体培地で終夜成長させることができる。終夜培地は、続いて大規模培地の播種に用いられる。次に細胞を最適密度で成長させ、その間に発現プロモーターが作動する。
更に数時間の培養の後、細胞を採集して遠心分離した。遠心分離で得られた細胞ペレットは、この分野で知られた種々の試薬を用いて可溶化され、可溶化PRO201,PRO308又はPRO309タンパク質を金属キレート化カラムを用いてタンパク質を緊密に結合させる条件下で精製した。
【0131】
実施例10
哺乳動物細胞におけるPRO201、PRO308又はPRO309の発現
この実施例は、哺乳動物細胞での組換え発現によるグリコシル化形態のPRO201、PRO308又はPRO309の調製を例示する。
発現ベクターとしてベクターpRK5(1989年3月15日発行のEP 307,247参照)を用いた。場合によっては、PRO201、PRO308又はPRO309DNAを選択した制限酵素でpRK5に結合させ、Sambrook等,上掲に記載されたような結合方法を用いてPRO201、PRO308又はPRO309DNAの挿入を行う。得られたベクターは、pRK5−PRO201、PRO308又はPRO309と呼ばれる。
一実施態様では、選択された宿主細胞は293細胞とすることができる。ヒト293細胞(ATCC CCL 1573)は、ウシ胎児血清及び場合によっては滋養成分又は抗生物質を添加したDMEMなどの媒質中で組織培養プレートにおいて成長させて集密化した。約10μgのpRK5−PRO201、PRO308又はPRO309DNAを約1μgのVA RNA遺伝子をコードするDNA[Thimmappaya等, Cell, 31:543 (1982))]と混合し、500μlの1mMトリス-HCl、0.1mMのEDTA、0.227MのCaCl2に溶解させた。この混合物に、滴状の、500μlの50mMのHEPES(pH7.35)、280mMのNaCl、1.5mMのNaPO4を添加し、25℃で10分間析出物を形成させた。析出物を懸濁し、293細胞に加えて37℃で約4時間定着させた。培養培地を吸引し、2mlのPBS中20%グリセロールを30秒間添加した。293細胞は、次いで無血清培地で洗浄し、新鮮な培地を添加し、細胞を約5日間インキュベートした。
【0132】
形質移入の約24時間後、培養培地を除去し、培養培地(のみ)又は200μCi/mlの35S−システイン及び200μCi/mlの35S−メチオニンを含む培養培地で置換した。12時間のインキュベーションの後、条件培地を回収し、スピンフィルターで濃縮し、15%SDSゲルに添加した。処理したゲルを乾燥させ、PRO201、PRO308又はPRO309ポリペプチドの存在を現す選択された時間にわたってフィルムに暴露した。形質転換した細胞を含む培地は、更なるインキュベーションを施し(無血清培地で)、培地を選択されたバイオアッセイで試験した。
これに換わる技術において、PRO201、PRO308又はPRO309は、Somparyac等, Proc. Natl. Acad. Sci., 12:7575 (1981)に記載されたデキストラン硫酸法を用いて293細胞に一過的に導入される。293細胞は、スピナーフラスコ内で最大密度まで成長させ、700μgのpRK5−PRO201、PRO308又はPRO309DNAを添加する。細胞は、まずスピナーフラスコから遠心分離によって濃縮し、PBSで洗浄した。DNA−デキストラン沈殿物を細胞ペレット上で4時間インキュベートした。細胞を20%グリセロールで90秒間処理し、組織培養培地で洗浄し、組織培養培地、5μg/mlウシインシュリン及び0.1μg/mlウシトランスフェリンを含むスピナーフラスコに再度導入した。約4日後に、条件培地を遠心分離して濾過し、細胞及び細胞片を除去した。次いで発現されたPRO201、PRO308又はPRO309を含む試料を濃縮し、透析又はカラムクロマトグラフィー等の選択した方法によって精製した。
【0133】
他の実施態様では、PRO201、PRO308又はPRO309をCHO細胞で発現させることができる。pRK5-PRO201、PRO308又はPRO309は、CaPO又はDEAE−デキストランなどの公知の試薬を用いてCHO細胞に形質移入することができる。上記したように、細胞培地をインキュベートし、培地を培養培地(のみ)又は35S-メチオニン等の放射性標識を含む培地に置換することができる。PRO201、PRO308又はPRO309ポリペプチドの存在を同定した後、培養培地を無血清培地に置換してもよい。好ましくは、培地を約6日間インキュベートし、次いで条件培地を収集する。次いで、発現されたPRO201、PRO308又はPRO309を含む培地を濃縮して、選択した方法にとって精製することができる。
また、エピトープタグPRO201、PRO308又はPRO309は、宿主CHO細胞において発現させてもよい。PRO201、PRO308又はPRO309はpRK5ベクターからサブクローニングした。サブクローン挿入物は、次いで、PCRを施してバキュロウイルス発現ベクター中のpoly-hisタグ等の選択されたエピトープタグを持つ枠に融合できる。poly-hisタグPRO201、PRO308又はPRO309挿入物は、次いで、安定なクローンの選択のためのDHFR等の選択マーカーを含むSV40誘導ベクターにサブクローニングできる。最後に、CHO細胞をSV40誘導ベクターで(上記のように)形質移入した。発現を確認するために、上記のように標識化を行ってもよい。発現されたpoly-hisタグPRO201、PRO308又はPRO309を含む培養培地は、次いで濃縮し、Ni2+−キレートアフィニティクロマトグラフィー等の選択された方法により精製できる。
【0134】
実施例11
酵母菌でのPRO201、PRO308又はPRO309の発現
以下の方法は、酵母菌中でのPRO201、PRO308又はPRO309の組換え発現を記載する。
第1に、ADH2/GAPDHプロモーターからのPRO201、PRO308又はPRO309の細胞内生産又は分泌のための酵母菌発現ベクターを作成する。PRO201、PRO308又はPRO309をコードするDNA、選択されたシグナルペプチド及びプロモーターを選択したプラスミドの適当な制限酵素部位に挿入してPRO201、PRO308又はPRO309の細胞内発現を指示する。分泌のために、PRO201、PRO308又はPRO309をコードするDNAを選択したプラスミドに、ADH2/GAPDHプロモーターをコードするDNA、酵母菌アルファ因子分泌シグナル/リーダー配列、及び(必要ならば)PRO201、PRO308又はPRO309の発現のためのリンカー配列とともにクローニングすることができる。
酵母菌株AB110等の酵母菌は、次いで上記の発現プラスミドで形質転換し、選択された発酵培地中で培養できる。形質転換した酵母菌上清は、10%トリクロロ酢酸での沈降及びSDS−PAGEによる分離で分析し、次いでクマシーブルー染色でゲルの染色をすることができる。
続いて組換えPRO201、PRO308又はPRO309は、発酵培地から遠心分離により酵母菌細胞を除去し、次いで選択されたカートリッジフィルターを用いて培地を濃縮することによって単離及び精製できる。PRO201、PRO308又はPRO309を含む濃縮物は、選択されたカラムクロマトグラフィー樹脂を用いてさらに精製してもよい。
【0135】
実施例12
バキュロウイルス感染昆虫細胞でのPRO201、PRO308又はPRO309の発現
以下の方法は、バキュロウイルス感染昆虫細胞中におけるPRO201、PRO308又はPRO309の組換え発現を記載する。
PRO201、PRO308又はPRO309は、バキュロウイルス発現ベクターに含まれるエピトープタグの上流に融合させた。このようなエピトープタグは、poly-hisタグ及び免疫グロブリンタグ(IgGのFc領域など)を含む。pVL1393(Navogen)などの市販されているプラスミドから誘導されるプラスミドを含む種々のプラスミドを用いることができる。簡単には、PRO201、PRO308又はPRO309又はPRO201、PRO308又はPRO309の所定部分(膜貫通タンパク質の細胞外ドメインをコードする配列など)が、5’及び3’領域に相補的なプライマーでのPCRにより増幅される。5’プライマーは、隣接する(選択された)制限酵素部位を包含していてもよい。生成物は、次いで、選択された制限酵素で消化され、発現ベクターにサブクローニングされる。
組換えバキュロウイルスは、上記のプラスミド及びBaculoGoldTMウイルスDNA(Pharmingen)を、Spodoptera frugiperda(「Sf9」)細胞(ATCC CRL 1711)中にリポフェクチン(GIBCO-BRLから市販)を用いて同時形質移入することにより作成される。28℃で4−5日インキュベートした後、放出されたウイルスを回収し、更なる増幅に用いた。ウイルス感染及びタンパク質発現は、O'Reilley等, Baculovirus expression vectors: A laboratory Manual, Oxford: Oxford University Press (1994)に記載されているように実施した。
【0136】
PCR増幅に続いて、対応するコード化配列をバキュロウイルス発現ベクター(IgG融合物に対するpb.PH.IgG及びポリHisタグタンパク質に対するPH.His.c)にサブクローニングし、そのベクター及びBaculogold(登録商標)バキュロウイルスDNA(Pharmingen)を105スポドプテラグルヒペルダ(Spodoptera frugiperda)(「Sf9」)細胞(ATCC CRL 1711)にリポフェクチン(Gibco BRL)を用いて同時形質移入した。pb.PH.IgG及びpb.PH.Hisは、市販のバキュロウイルス発現ベクターpV1393(Pharmingen)の修飾物であり、His又はFcタグ配列を含むように修飾されたポリリンカー領域を持つ。細胞を、10%のFBS(Hyclone)を添加したHinkのTNM-FM培地で成長させた。細胞は、28℃で5日間インキュベートした。上清を回収し、続いて10%FBSを添加したHinkのTNM-FH培地におけるSf9細胞感染による約10の感染効率(MOI)での最初のウイルス増幅に用いた。細胞を28℃で3日間インキュベートした。上清を回収し、バキュロウイルス発現ベクターにおける作成物の発現を、1mlの上清の25mLのヒスチジンタグタンパク質用のNi-NTAビーズ(QIAGEN)又はIgGタグタンパク質用のプロテインAセファロースCL-4Bビーズ(Pharmacia)へのバッチ結合、次いでクマシーブルー染色により周知の濃度のタンパク質標準と比較するSDS−PAGE分析により測定した。
第1の増幅ウイルス上清をESF-92培地(Expression System LLC)で成長させたSf9細胞のスピナー培地(500ml)の約0.1のMOIでの感染に使用した。細胞は28℃で3日間インキュベートした。上清を回収して濾過した。バッチ結合及びSDS−PAGEを、スピナー培地の発現が確認されるまで、必要に応じて繰り返した。
【0137】
次いで、発現されたpoly-hisタグPRO201、PRO308又はPRO309は、例えば、Ni2+−キレートアフィニティクロマトグラフィーにより以下のように精製される。抽出物は、Rupert等, Nature, 362:175-179 (1993)に記載されているように、ウイルス感染した組み換えSf9細胞から調製した。簡単には、Sf9細胞を洗浄し、超音波処理用バッファー(25mLのHepes、pH7.9;12.5mMのMgCl;0.1mMのEDTA;10%のグリセロール;0.1%のNP-40;0.4MのKCl)中に再懸濁し、氷上で2回20秒間超音波処理した。超音波処理物を遠心分離で透明化し、上清を負荷バッファー(50mMのリン酸塩、300mMのNaCl、10%のグリセロール、pH7.8)で50倍希釈し、0.45Fmフィルターで濾過した。Ni2+-NTAアガロースカラム(Qiagenから市販)を5mLの総容積で調製し、25mLの水で洗浄し、25mLの負荷バッファーで平衡させた。濾過した細胞抽出物は、毎分0.5mLでカラムに負荷した。カラムを、分画回収が始まる点であるA280のベースラインまで負荷バッファーで洗浄した。次に、カラムを、結合タンパク質を非特異的に溶離する二次洗浄バッファー(50mMのリン酸塩;300mMのNaCl、10%のグリセロール、pH6.0)で洗浄した。A280のベースラインに再度到達した後、カラムを二次洗浄バッファー中で0から500mMのイミダゾール勾配で展開した。1mLの分画を回収し、SDS−PAGE及び銀染色又はアルカリホスファターゼ(Qiagen)に複合したNi2+-NTAでのウェスタンブロットで分析した。溶離したHis10−タグPRO201、PRO308又はPRO309を含む分画をプールし、負荷バッファーで透析した。
あるいは、IgGタグ(又はFcタグ)PRO201、PRO308又はPRO309の精製は、例えば、プロテインA又はプロテインGカラムクロマトグラフィーを含む公知のクロマトグラフィー技術を用いて実施できる。
【0138】
あるいは、修飾バキュロウイルス法をHigh5細胞取り込みに使用してもよい。この方法では、所望の配列をコードするDNAは、Pfu(Stratagene)等の適当な系で増幅されても、又はバキュロウイルス発現ベクターの含まれるエピトープタグの上流(5'-)に融合させてもよい。このようなエピトープタグは、ポリ-Hisタグ及び免疫グロブリンタグ(IgGのFc領域等)を含む。種々のプラスミドを用いることができ、pIE-1(Novagen)等の市販のプラスミドから誘導されたプラスミドを含む。pIE-1及びpIE-2ベクターは、安定に形質転換された昆虫細胞(1)におけるバキュロウイルスie1プロモーターからの組換えタンパク質の構成的発現のために設計される。このプラスミドは複数のクローニング部位の方向においてのみ相違し、未感染昆虫細胞におけるie媒介遺伝子発現に重要であることが知られた全てのプロモーター配列並びにhr5エンハンサー成分を含む。pIE-1及びpIE-2はie翻訳開始部位を含み、融合タンパク質の製造に使用できる。簡単には、所望の配列又は配列の所望の部分(膜貫通タンパク質の細胞外ドメインをコードする配列など)を、5’及び3’領域に相補的なプライマーでのPCRにより増幅する。5’プライマーは隣接する(選択された)制限酵素部位を導入してもよい。生成物は、次いで、選択された制限酵素で消化して発現ベクターにサブクローニングされる。例えば、pIE1 - の誘導体はヒトIgG(pb.PH.IgG)のFc領域又は所望の配列の8ヒスチジン(pb.PH.His)タグ下流(3'-)を含むことができる。
【0139】
Hi5細胞は、27℃、CO2無し、ヘ゜ン/ストレプト無しの条件下で50%の集密度まで成長させた。150mmプレート各々について、30μgの配列を含むpIEベースベクターを1mlのEx-細胞培地(媒質:Ex-細胞401+1/100のL-Glu JRH Biosciences #14401-78P(注:この媒質は軽感受性))と混合し、別の管において、100μlのセルフェクチン(CellFECTIN(Gibco BRL #10362-010)(ボルテックスで混合))を1mlのEx-細胞培地と混合した。2つの溶液を混合し、室温で15分間インキュベーションした。8mlのEx-細胞培地を2mlのDNA/セルフェクチン混合物に添加し、Ex-細胞培地で1回洗浄したHi5細胞上に層形成させた。次いでプレートを暗中室温でインキュベートした。次いでDNA/セルフェクチン混合物を吸引し、細胞をEx-細胞で1回洗浄して過剰のセルフェクチンを除去した。30mlの新鮮なEx-細胞培地を添加し、細胞を28℃で3日間インキュベートした。上清を回収して、バキュロウイルス発現ベクターでの配列の発現を、1mlの上清の25mLのヒスチジンタグタンパク質用のNi-NTAビーズ(QIAGEN)又はIgGタグタンパク質用のプロテインAセファロースCL-4Bビーズ(Pharmacia)へのバッチ結合、次いでクマシーブルー染色により周知の濃度のタンパク質標準と比較するSDS−PAGE分析により測定した。
形質移入細胞からの条件培地(0.5〜3L)を、遠心分離により細胞を除去し0.22ミクロンフィルターを通して濾過することにより回収した。ポリ-Hisタグ作成物については、配列を含むタンパク質をNi-NTAカラム(Qiagen)を用いて精製した。精製前に、イミダゾールを条件培地に5mMの濃度まで添加した。条件培地を、0.3MのNaCl及び5mMイミダゾールを含む20mMのHepes, pH7.4バッファーで平衡化した6mlのNi-NTAカラムに4-5ml/分の流速で48℃においてポンプ供給した。負荷後、カラムをさらに平衡バッファーで洗浄し、タンパク質を0.25Mイミダゾールを含む平衡バッファーで溶離した。高度に精製されたタンパク質は、続いて10mMのHepes、0.14MのNaCl及び4%のマンニトールを含む貯蔵バッファー, pH6.8中で25mlのG25 Superfine(Pharmacia)を用いて脱塩し、−80℃で貯蔵した。
タンパク質のイムノアドヘシン(Fc含有)作成物を以下のようにして条件培地から精製した。条件培地を、20mMのリン酸ナトリウムバッファー, pH6.8で平衡化した5mlのプロテインAカラム(Pharmacia)に負荷した。負荷後、カラムを平衡バッファーで強く洗浄した後、100mMのクエン酸, pH3.5で溶離した。溶離したタンパク質は、1mlの画分を275mLの1Mトリスバッファー, pH9を含む管に回収することにより即座に中性化した。高度に精製されたタンパク質は、続いてポリ-Hisタグタンパク質について上記した貯蔵バッファー中で脱塩した。配列の均一性はSDSポリアクリルアミドゲル及びエドマン(Edman)分解によるN-末端アミノ酸配列決定及び所望又は必要に応じて他の分析手法により評価できる。
【0140】
実施例13
PRO201、PRO308又はPRO309に結合する抗体の調製
この実施例は、PRO201、PRO308又はPRO309に特異的に結合できるモノクローナル抗体の調製を例示する。
モノクローナル抗体の生産のための技術は、この分野で知られており、例えば、Goding,上掲に記載されている。用いられ得る免疫原は、精製PRO201、PRO308又はPRO309を含む融合タンパク質、細胞表面に組換えPRO201、PRO308又はPRO309を発現する細胞を含む。免疫原の選択は、当業者が過度の実験をすることなくなすことができる。
Balb/c等のマウスを、完全フロイントアジュバントに乳化して皮下又は腹腔内に1−100マイクログラムで注入したPRO201、PRO308又はPRO309免疫原で免疫化する。あるいは、免疫原をMPL−TDMアジュバント(Ribi Immunochemical Researh, Hamilton, MT)に乳化し、動物の後足蹠に注入してもよい。免疫化したマウスは、次いで10から12日後に、選択したアジュバント中に乳化した付加的免疫源で追加免疫する。その後、数週間、マウスをさらなる免疫化注射で追加免疫する。PRO201、PRO308又はPRO309抗体の検出のためのELISAアッセイで試験するために、レトロオービタル出血からの血清試料をマウスから周期的に採取してもよい。
【0141】
適当な抗体力価が検出された後、抗体に「陽性」な動物に、PRO201、PRO308又はPRO309静脈内注射の最後の注入をすることができる。3から4日後、マウスを屠殺し、脾臓を取り出した。次いで脾臓細胞を(35%ポリエチレングリコールを用いて)、ACTTから番号CRL1597で入手可能なP3X63AgU.1等の選択されたマウス骨髄腫株化細胞に融合させた。融合によりハイブリドーマ細胞が生成され、次いで、HAT(ヒポキサンチン、アミノプテリン、及びチミジン)培地を含む96ウェル組織培養プレートに蒔き、非融合細胞、骨髄腫ハイブリッド、及び脾臓細胞ハイブリッドの増殖を阻害した。 ハイブリドーマ細胞は、PRO201、PRO308又はPRO309に対する反応性についてのELISAでスクリーニングされる。所望のPRO201、PRO308又はPRO309に対するモノクローナル抗体を分泌する「陽性」ハイブリドーマ細胞の決定は、技術常識の範囲内である。
陽性ハイブリドーマ細胞を同系のBalb/cマウスに腹腔内注入し、抗-PRO201、抗-PRO308又は抗-PRO309モノクローナル抗体を含む腹水を生成させる。あるいは、ハイブリドーマ細胞を、組織培養フラスコ又はローラーボトルで成長させることもできる。腹水中に生成されたモノクローナル抗体の精製は、硫酸アンモニウム沈降、それに続くゲル排除クロマトグラフィ−を用いて行うことができる。あるいは、抗体のプロテインA又はプロテインGへの親和性に基づくアフィニティクロマトグラフィーを用いることもできる。
【0142】
実施例14
遺伝子増幅
この実施例は、PRO201,PRO308又はPRO309コード化遺伝子が或る種のヒト肺、結腸又は乳癌又は細胞系のゲノムで増幅されることを示す。増幅は遺伝子産物の過剰発現を伴い、少なくとも2つの異なる抗原に対する結合特異性を示す。この場合、結合特異性の一方はPRO201,PRO308又はPRO309タンパク質に対してであり、結腸、肺、乳及び他の癌等の或る種の癌において治療的処置の有用な標的であることを示している。治療薬は、少なくとも2つの異なる抗原に対する結合特異性のアンタゴニストの形態をとりうる。この場合、結合特異性の一方はPRO201,PRO308又はPRO309コード化遺伝子に対して、例えば少なくとも2つの異なる抗原に対する結合特異性に対するマウス−ヒトキメラ、ヒト化又はヒト抗体である。この場合、結合特異性の一方はPRO201,PRO308又はPRO309ポリペプチドに対してである。
スクリーニングの出発物質は種々の癌から単離したゲノムDNAである。DNAは、定量的、例えば蛍光的に正確である。ネガティブ対照として、DNAを10の正常健常個体からDNAを単離し、それをプールして健常個体における遺伝子コピーのアッセイ対照として使用した(示さず)。5’ヌクレアーゼアッセイ(例えばTaqManTM)及び実時間定量的PCR(例えば、ABI Prizm 7700 Sequence Detection System(商品名)(Perkin Elmer, applied Biosystems Division, Foster City, CA))を、或る種の癌で潜在的に増幅される遺伝子の発見に使用した。結果は、DNAが少なくとも2つの抗原に対する結合特異性をコードするか否かの決定に用いた。この場合、結合特異性の一方はPRO201,PRO308又はPRO309に対してであり、スクリーニングした一次肺又は結腸癌又は癌細胞系又は乳癌細胞系で過剰表現される。一次肺癌は、表1に示した型及び段階の腫瘍を持つ個体から得た。表1に列挙した一次腫瘍及びこの実施例を通して参照される一次腫瘍及び細胞系の表示に使用した略語の説明は上記に与えた。
【0143】
Taqman(商品名)の結果はデルタ(Δ)CT単位で報告した。1単位は1PCRサイクル又は正常に対して約2倍の増幅に相当し、2単位は4倍、3単位は8倍増幅等々に相当する。定量化はプライマー及び少なくとも2つの異なる抗原に対する結合特異性から誘導したTaqMan(商品名)蛍光プローブを用いて得た。この場合、結合特異性の一方はPRO201,PRO308又はPRO309コード化遺伝子にたいするものである。結合特異性の領域は少なくとも2つの異なる抗原に対する。この場合、結合特異性の一方はPRO201,PRO308又はPRO309に対してであり、それは最も独特の核酸配列を含むと思われ、最もスプライシングされたイントロンを持たないと思われ、プライマー及びプローブ誘導、例えば3-非翻訳領域のために好ましいPRO201,PRO308又はPRO309遺伝子増幅に使用されるプライマー及びプローブ(正、逆及びプローブ)は次の通り:
PRO201(DNA30676)
30676.tm.f
5'-CGCAGACACCCTTCTTCACA-3' (配列番号:24)
30676.tm.r
5'- CGACTCCTTTGGTCTCTTCTGG-3' (配列番号:25)
30676.tm.p
5'-CCGGGACCCCCAGGTTTTTGC-3' (配列番号:26)
DNA40556:
40556.tm.f
5'-AGGGTCCTGCGTGGACTCT-3' (配列番号:27)
40556.tm.r
5'-TCCTGTTCTTCCTCAATGGAGAC-3' (配列番号:28)
40556.tm.p
5'-CCATCCCACCTGCTACATGCTCACC-3' (配列番号:29)
【0144】
5’ヌクレアーゼアッセイ反応は蛍光PCRベースの技術であり、実時間での増幅監視のためのTaqDNAポリメラーゼ酵素の5’エキソヌクレアーゼ活性を使用する。PCR反応に典型的な単位複製配列の生成に2つのオリゴヌクレオチドプライマーを使用した。第3のオリゴヌクレオチド、又はプローブは、2つのPCRプライマーの間に位置する核酸配列を検出するために設計された。プローブはTaqDNAポリメラーゼ酵素により非伸展性であり、レポーター蛍光染料及び消光剤蛍光染料で標識される。2つの染料がプローブ上に接近して位置する場合、レポーター染料からのレーザー誘導発光は消光染料によって消光される。増幅反応の間、プローブはTAQ DNAポリメラーゼ酵素によりテンプレート依存的方式で切断される。得られたプローブ断片は溶液中に解離し、放出されたレポーター染料からのシグナルは第2のフルオロホアからの消光効果を受けない。レポーター染料の一分子は、新たに合成された各分子について標識され、非消光レポーター染料の検出がデータの定量的解釈の基礎を提供する。
5’ヌクレアーゼ法は、ABI Prism 7700TM配列検出などの実時間定量的PCR装置で実施される。系は温度サイクル器、レーザー、電荷結合装置(CCD)カメラ及びコンピュータからなる。系は温度サイクル器上で96-ウェルでの試料を増幅させる。増幅中に、レーザー誘導蛍光シグナルは光ファイバーケーブルで96ウェルに集められ、CCDで検出される。系は装置の実行及びデータの分析のためのソフトウェアを含む。
5’ヌクレアーゼアッセイデータは、最初はCt又は境界サイクルで表現される。これは、レポーターシグナルが蛍光のバックグラウンドを越えて蓄積されるサイクルとして定義される。Ct値は、癌DNA結果を正常なDNA結果と比較するときの核酸試料における特定の標的配列の種発コピー相対数の定量的尺度として使用した。
表1は、本発明のPRO201,PRO308又はPRO309化合物のスクリーニングに用いた種々の一次腫瘍の段階(stage)、T段階及びN段階を記載する。
【0145】
Figure 0003659405
Figure 0003659405
【0146】
DNA調製:
DNAは培養した細胞系、一次腫瘍、正常ヒト血液から調製した。単離は、全てQuiagenからの、精製キット、バッファーセット及びプロテアーゼを用い、製造者の指示と下記に従って実施した。
細胞培養溶解:
細胞を洗浄し、チップ当たり7.5x10の濃度でトリプシン化し、4℃で5分間1000rpmで遠心分離してペレット化し、次いで1/2容量のPBS再遠心で洗浄した。ペレットを3回洗浄し、懸濁細胞を回収して2xPBSで洗浄した。次いで細胞を10mLのPBSに懸濁させた。バッファーC1を4℃で平衡化させた。Quiagenプロテアーゼ#19155を6.25mlの冷ddH2Oで最終濃度20mg/mlまで希釈して4℃で平衡化させた。10mLのG2バッファーを、QuiagenRNAseAストック(100mg/ml)を200μg/mlの最終濃度まで希釈して調製した。
バッファーC1(10mL、4℃)及びddH2O(40mL、4℃)を、次いで10mLの細胞懸濁物に添加し、反転させて混合し、氷上で10分間インキュベートした。細胞核をBeckmanスイングバケットロータで4℃において2500rpmで15分間遠心分離することによりペレット化した。上清を捨て、核をボルテックスしながら2mLのバッファーC1(4℃)及び6mLのddHOに懸濁し、1秒後に4℃において2500rpmで15分間遠心分離した。次いで核を残りのバッファー中にチップ当たり200μlを用いて再懸濁した。G2バッファー(10ml)を懸濁した核に添加しながら緩いボルテックスを適用した。バッファー添加が完了したら、強いボルテックスを30秒間適用した。Quiagenプロテアーゼ(200μl上記のように調製)を添加し、50℃で60分間インキュベートした。インキュベーション及び遠心分離を、溶解物が透明になるまで繰り返した(例えば、さらに30-60分間インキュベートし、4℃で10分間3000xgでペレット化する)。
【0147】
固体ヒト腫瘍試料の調製及び溶解:
腫瘍試料を秤量し50mlのコニカル管に配して氷上に保持した。加工は調製当たり250mgの組織未満に制限した(1チップ/調製)。プロテアーゼ溶液を6.25mlの冷ddHO中に最終濃度20mg/mlまで希釈することにより新たに調製して4℃で貯蔵した。DNAseAを最終濃度200mg/mlまで希釈することによりG2バッファー(20ml)を調製した(100mg/mlのストックから)。エアロゾルの吸入を避けるために層流TCフード内でポリトロンの大きなチップを用いて、腫瘍組織を19mlのG2バッファー中で60秒間均一化し、室温に保持した。試料間で、各々2LのddHOで2x30秒間、次いでG2バッファー(50ml)でスピンさせることによりポリトロンを透明化した。組織がジェネレータチップ上に存在する場合は、装置を分解して清浄化した。
Quiagenプロテアーゼ(上記の用に調製、1.0ml)を添加し、次いでボルテックスして50℃で3時間インキュベートした。インキュベーション及び遠心分離を、溶解物が透明になるまで繰り返した(例えば、さらに30-60分間インキュベートし、4℃で10分間3000xgでペレット化する)。
【0148】
ヒト血液調製及び溶解:
健常なボランティアから標準的な感染薬プロトコールを用いて血液を採りだし、チップ当たり10mlの試料にクエン酸化した。Quiagenプロテアーゼを6.25mlの冷ddHO中に最終濃度20mg/mlまで希釈することにより新たに調製して4℃で貯蔵した。DNAseAを100mg/mlのストックから最終濃度200μ g/mlまで希釈することによりG2バッファーを調製した。血液(10ml)を50mlのコニカル管に配し、10mlのC1バッファー及び30mlのddHO(ともに4℃で平衡化したもの)を添加し、反転させて混合して氷上に10分間保持した。Beckmanスイングバケットローターで、4℃において2500rpmで15分間核をペレット化し、上清を捨てた。ボルテックスしながら、核を2mlのC1バッファー(4℃)及び6mlのddH2O(4℃)中に懸濁させた。ボルテックスはペレットが白くなるまで繰り返した。次いで核を残りのバッファー中に200μlチップを用いて懸濁させた。G2バッファー(10ml)を懸濁核に添加しながら緩くボルテックスし、次いで30秒間強くボルテックスした。Quiagenプロテアーゼを添加(200μl)し、50℃で60分間インキュベートした。インキュベーション及び遠心分離を、溶解物が透明になるまで繰り返した(例えば、さらに30-60分間インキュベートし、4℃で10分間3000xgでペレット化する)。
【0149】
透明化溶解物の精製:
(1)ゲノムDNAの単離:
ゲノムDNAを10mlのQBTバッファーで平衡化した(最大チップ調製当たり1試料)。QF溶離バッファーを50℃で平衡化した。試料を30秒間ボルテックスし、次いで平衡化チップに負荷して重力により排液した。チップを2x15mlのQCバッファーで洗浄した。DNAを、30mlのシラン化したオートクレーブ30mlCortex管に15mlのQFバッファー(50℃)で溶離した。イソプロパノール(10.5ml)を各試料に添加し、管をパラフィンで被覆し、DNAが沈殿するまで繰り返し反転させて混合した。試料を、SS-34ロータで4℃において15,000rpmで10分間遠心分離してペレット化した。ペレット位置をマークして上清を捨て、10mlの70%エタノール(4℃)を添加した。試料を、SS-34ロータで4℃において10,000rpmで10分間遠心分離して再度ペレット化した。ペレット位置をマークして上清を捨てた。次いで管を乾燥棚の各面に置き、37℃で10分間乾燥させたが、使用の過剰乾燥には注意した。
乾燥後、ペレットを1.0mlのTE(pH8.5)に溶解し、50℃に1−2時間置いた。試料を4℃に終夜保持して溶解を続けた。次いでDNA溶液を、ツベルクリンシリンジ上に26ゲージの針を具備する1.5ml管に移した。DNAを剪断するために移行を5x繰り返した。次いで試料を50℃に1−2時間置いた。
【0150】
(2)ゲノムDNAの定量及び遺伝子増幅アッセイのための調製:
各管のDNAレベルを1:20希釈(5μlDNA+95μlddHO)での標準的なA260、A280スペクトルにより、Beckman DU640分光光度計の0.1ml石英キュベットを用いて定量した。A260/A280比率は1.8−1.9の範囲であった。次いで各DNA試料をTE(pH8.5)中に約200ng/mlまで希釈した。最初の材料が高濃度(約700ng/μl)である場合、材料を50℃に再懸濁するまで数時間置いた。
次いで、希釈した材料(20-600ng/ml)に対して、製造者の指示を以下のように改変して蛍光DNA定量を実施した。これは、Hoeffer DyNA Quant 200蛍光計を約15分間暖めて実施した。Hoechst染料作業溶液(#H33258、10μl、使用の12時間以内に調製)を100mlの1xTNEバッファーに希釈した。2mlキュベットを蛍光計溶液で満たし、機械に配し、機械をゼロ調節した。pGEM3Zf(+)(2μl、ロット#360851026)を2mlの蛍光計溶液に添加して200単位で校正した。次いで、さらに2μlのpGEM3Zf(+)DNAを試験し、400+/-10単位で読みを確認した。次いで各試料を少なくとも3回読んだ。3試料が互いに10%以内であることが見られたとき、それらの平均をとり、この値を定量化値として用いた。
次いで、蛍光測定で決定した濃度を、各試料をddHO中に10ng/μlμまで希釈するのに用いた。これは、1回のTaqManプレートアッセイについて全てのテンプレート試料について同時に行い、500-1000アッセイを実施するのに十分な材料で行った。試料は、Taqman(商品名)プライマー及びプローブで3回試験し、B-アクチン及びGAPDHともに正常なヒトDNAを持ちテンプレート対照を持たない単一のプレート上にある。希釈した試料を用いたが、試験DNAから減算した正常ヒトDNAのCT値は+/-1CTであった。希釈した、ロット定性化したゲノムDNAを、1.0mlアリコートで−80℃において保存した。続いて遺伝し増幅アッセイに使用するアリコートは、4℃で保存した。各1mlのアリコートは、8−9プレート又は64試験に十分である。
【0151】
遺伝子増幅アッセイ:
本発明のPRO201,PRO308又はPRO309化合物を以下の一次腫瘍でスクリーニングし、得られたΔCt値を表2に報告する。
Figure 0003659405
Figure 0003659405
【0152】
DNA30676(配列番号:2)を、フレームワークマッピングでの上記の最初のスクリニングから選択した腫瘍について再試験した。Fig18及び表3は、この実施例で使用したフレームワークマーカーの染色体マッピングを示す。フレームワークマーカーは約20メガベース毎に位置し、対照異数性に使用した。
DNA30676(配列番号:2)をエピセンターマッピングで再試験した。表4に示したマーカーは、DNA30676(配列番号:2)の(ゲノムにおける)直ぐ隣に位置し、対応する分子が局在する染色体19の直近における相対的増幅の評価に使用する。個々のマーカー間の距離はセンチレイ(cR)で測定し、これは放射線分解単位であり、2つのマーカー間の分解の1%チャンスとほぼ等しい。1cRは極めて粗くは20キロベースと等しい。マーカーSHGC-35441はDNA30676がマッピングされる染色体19の位置の最も近くに見られるマーカーである。
【0153】
Figure 0003659405
Figure 0003659405
PRO201に対する染色体19に沿った上記のフレームワークマーカーのΔCt値は、表5に選択された腫瘍について示した。
【0154】
Figure 0003659405
【0155】
表6はDNA30676(配列番号:2)に対するエピセンターマッピングの結果についてのΔCt値を示し、染色体19に沿ったDNA30676(配列番号:2)の実際の位置により近い領域での相対的増幅を示す。
Figure 0003659405
Figure 0003659405
【0156】
議論と結論:
種々の及び結腸腫瘍におけるDNA30676(配列番号:2)及びDNA40556(配列番号:20)についてのΔCt値を表2に報告する。ΔCt>1は典型的に増幅評点化の閾値として用い、これは2倍の遺伝子コピーを表す。表2は:一次肺腫瘍LT1a、LT3、LT11、LT13、LT15、LT17、LT19;一次結腸腫瘍CT2、CT3、CT8、CT10、CT12、CT14、CT15、CT16、CT17、CT1、CT4、CT5、CT6、CT7、CT9、CT11、CT18;肺腫瘍細胞系Calu-1、Calu-6、H157、H441、SKMES1、H522及びH810;及び結腸腫瘍細胞系Colo-320及びCoo-205で生じたDNA30676の有意な増幅を示す。表2は更に:一次肺腫瘍LT1a、LT8、LT11、LT15、LT17、LT19;一次結腸腫瘍CT14、CT5、CT11及び肺腫瘍細胞系A549におけるDNA40556の有意な発現を示す。
DNA30676(配列番号:2)のΔCt及び平均ΔCt値は、一次肺腫瘍に該当するのは:1.10、2.05、1.52、2.13。2.58。1.63、3.43;一次結腸腫瘍に該当するのは:3.81、2.3、1.97、3.01、2.76、3.34、2.58、2.46、2.64、1.57、3.39、2.95、2.81、2.77、2.63、3.0、2.23;肺腫瘍細胞系に該当するのは:2.37、2.61、2.39、2.07,3.01、2.91及び2.07;結腸腫瘍細胞系:1.95及び1.26であった。DNA40556のΔCt及び平均ΔCt値は、一次肺に該当するのは1.03、1.14、1.33、1.18、1.00及び1.42;結腸腫瘍に該当するのは:1.12、1.00及び1.135;肺腫瘍細胞系1.26であった。
上記の段落で列挙したDNA30676(配列番号:2)のΔCt及び平均ΔCt値は、
一次肺腫瘍に対する2.14、4.14、2.87、4.38、5.98、3.09、10.70:一次結腸腫瘍に対する14.03、4.92、3.92、8.06、6.77、10.13、5.98、5.50、6.23、2.97、10.48、7.73、7.01、6.82、6.19、8.0、4.69;肺腫瘍細胞系に対する5.17、6.10、5.24、4.20。8.06、7.51、4.20;結腸腫瘍細胞系に対する3.86、2.40という正常組織に対する遺伝子コピーの増加を表している。DNA40556については、これらの値は、肺腫瘍に対する2.04、2.20、2.51、2.27、2.0、2.68、結腸腫瘍に対する2.17、2.0、2.20;2.39という正常組織に対する遺伝子コピーの増加を表す。
【0157】
増幅は、一次肺腫瘍LT3、LT15,LT16、LT17、LT18;及び一次結腸腫瘍CT2、CT3、CT8、CT9、CT10、CT12、CT14、CT15、CT16、CT17におけるDNA30676(配列番号:2)のフレームワークマッピングにより確認された。一次肺腫瘍について報告されたΔCt値は、1.04、1.43、1.35、1.51及び1.22であり、一次結腸腫瘍については、2.81、2.03、1.39、2.21、1.93、2.37、1.27、1.76及び1.65が報告された。正常組織に対して、これはおよそ肺腫瘍については2.062.692.55、2.85及び2.32倍の増加、結腸腫瘍については7.01、4.08、2.624.63、3.81、5.17、2.41、3.39、3.14倍の増加を表す。DNA3066のエピセンターマッピングは、一次肺腫瘍LT3、LT13、LT15、LT16、LT18;及び結腸腫瘍CT1、CT2、CT3、CT4、CT5、CT6、CT7、CT8、CT9、Ct10、CT11、CT12、CT14、CT15、CT16、CT17及びCT18における有意な増幅を確認した。一次肺腫瘍について報告されたΔCt値は、1.87、1.44、1.99、1.72及び1.09であり、一次結腸腫瘍は2.56、3.51、2.19、3.22、2.83、2.93、2.43、1.95、2.72、3.12、3.26、2.77、2.88、2.60、2.61、2.24及び2.48のΔCt及び平均ΔCt値を示した。正常組織に対して、これらは、肺腫瘍について3.66、2.71、3.97、3.29、2.13倍の遺伝子コピーの増加、及び結腸腫瘍について5.90、11.39、4.56、9.32、7.11、7.62、5.39、3.86、6.59、8.69、9.58、6.82、7.36、6.06、6.11、4.72、5.58倍の遺伝子コピーの増加を表す。
これに対して、最も近いフレームワークマーカー(1つ、即ちS50を除く)(表5)又はエピセンターマーカー(表6)の増幅は、DNA30676(配列番号:2)より大きな程度では起こらなかった。このことは、DNA30676(配列番号:2)が染色体19上の特定領域の増幅の原因となる遺伝子であることを強く示唆している。DNA30676(配列番号:2)の増幅は種々の肺及び結腸腫瘍及び細胞系(特に結腸)で起こるので、それは腫瘍形成又は成長において有意な役割を果たす可能性が高い。結果として、DNA30676(配列番号:2)(即ち、Nsp1、配列番号:1)DNA40575(配列番号:4)及びDNA61601(配列番号:6)に対するアンタゴニスト(例えば抗体)は、癌治療における有用性を持つと予測される。
【0158】
実施例15
インサイツハイブリッド形成
インサイツハイブリッド形成は、細胞又は組織調製物内での核酸配列の検出及び局在化のための強力で多用途の技術である。それは、例えば、遺伝子発現部位の同定、転写物の組織分布の分析、ウイルス感染の同定及び局在化、特定mRNA合成及び染色体マッピングにおける追跡に有用である。
インサイツハイブリッド形成は、Lu及びGillett, Cell Vision 1: 169-176 (1994)のプロトコールの最適な変形に従って、PCR生成33P-標識リボプローブを用いて実施される。簡単には、ホルマリン固定、パラフィン包埋ヒト組織を切片化し、脱パラフィンし、プロテイナーゼK(20g/ml)で15分間37℃で脱タンパクし、さらに上掲のLu及びGillettに記載されたようにインサイツハイブリッド形成する。[33-P]UTP-標識アンチセンスリボプローブをPCR産物から生成し、55℃で終夜ハイブリッド形成する。スライドをKodak NTB2核トラックエマルションに浸漬して4週間露出する。
33P-リボプローブ合成
6.0μl(125mCi)の33P-UTP(Amersham BF 1002, SA<2000 Ci/mmol)をスピード真空乾燥させた。乾燥33P-UTPを含む管に以下の成分を添加した:
2.0μlの5x転写バッファー
1.0μlのDTT(100mM)
2.0μlのNTP混合物(2.5mM: 10μ l; 10mMのGTP, CTP及びATP+10μlのH2O)
1.0μlのUTP(50μM)
1.0μlのRnasin
1.0μlのDNAテンプレート(1μg)
1.0μlのH
1.0μlのRNAポメラーゼ(PCR産物についてT3=AS, T7=S,通常)
【0159】
管を37℃で1時間インキュベートし、1.0μlのRQ1 DNaseを添加し、次いで37℃で15分間インキュベートした。90μlのTE(10mMトリスpH7.6/1mMのEDTApH8.0)を添加し、混合物をDE81紙にピペットした。残りの溶液をMicrocon-50限外濾過ユニットに負荷し、プログラム10を用いてスピンさせた(6分間)。濾過ユニットを第2の管に変換し、プログラム2を用いてスピンさせた(3分間)。最終回収スピンの後、100μlのTEを添加した。1μlの最終生成物をDE81紙にピペットし6mlのBiofluor IIで数えた。
プローブをTBE/尿素ゲル上で走らせた。1-3μlのプローブ又は5μlのRNA MrkIIIを3μlの負荷バッファーに添加した。加熱ブロック上で95℃に3分間加熱した後、ゲルを即座に氷上に置いた。ゲルのウェルをフラッシングし、試料を負荷し、180-250ボルトで45分間走らせた。ゲルをサランラップでラップし、−70℃冷凍機内で補強スクリーンを持つXARフィルムに1時間から終夜露出した。
【0160】
33P-ハイブリッド形成
凍結切片の前処理
スライドを冷凍機から取り出し、アルミニウムトレイに配置して室温で5分間解凍した。トレイを55℃のインキュベータに5分間配置して凝結を減らした。スライドを蒸気フード内において4%パラホルムアルデヒド中で5分間固定し、0.5xSSCで5分間室温で洗浄した(25ml 20xSSC + 975ml SQ H2O)。0.5μg/mlのプロテイナーゼ中、37℃で10分間の脱タンパクの後(250mlの予備加熱RNase無しRNaseバッファー中の10mg/mlストック12.5μl)、切片を0.5xSSCで10分間室温で洗浄した。切片を、70%、95%、100%エタノール中、各2分間脱水した。
パラフィン包埋切片の前処理
スライドを脱パラフィンし、SQ HO中に配置し、2xSSCで室温において各々5分間2回リンスした。切片を20μg/mlのプロテイナーゼK(250mlのRNase無しRNaseバッファー中10mg/mlを500μl;37℃、15分間)−ヒト胚又は8xプロテイナーゼK(250mlのRNaseバッファー中100μl、37℃、30分間)−ホルマリン組織で脱タンパクした。続く0.5xSSCでのリンス及び脱水は上記のように実施した。
プレハイブリッド化
スライドをBoxバッファー(4xSSC、50%ホルムアミド)−飽和濾紙で列を作ったプラスチックボックスに並べた。組織を50μlのハイブリッド形成バッファー(3.75gデキストラン硫酸+6mlSQ H2O)で被覆し、ボルテックスし、キャップを外して2分間マイクロ波で加熱した。氷上で冷却した後、18.75mlのホルムアミド、3.75mlの20xSSC及び9mlのSQ H2Oを添加し、組織を良くボルテックスし、42℃で1-4時間インキュベートした。
ハイブリッド形成
スライド当たり1.0x10cpmのプローブ及び1.0μlのtRNA(50mg/mlストック)を95℃で3分間加熱した。スライドを氷上で冷却し、スライド当たり48μlのハイブリッド形成バッファーを添加した。ボルテックスの後、50μlの33P混合物をスライド上のプレハイブリッド50μlに添加した。スライドを55℃で終夜インキュベートした。
洗浄
洗浄は、2x10分間、2xSSC、EDTAで室温で実施し(400mlの20xSSC+16mlの0.25M EDTA、Vf=4L)、次いでRNaseA処理を37℃で30分間行った(250mlRNaseバッファー中10mg/mlを500μl=20μg/ml)。スライドを2x10分間、2x SSC、EDTAで室温において洗浄した。緊縮性洗浄条件は次の通り:55℃で2時間、0.1xSSC、EDTA(20mlの20xSSC+16mlのEDTA、Vf=4L)。
【0161】
ヒト組織IIIにおけるDNA30676panc.shc(nsp-1)の発現 多くの組織でセンス及びアンチセンスプローブで匹敵するバックグラウンドが観察された。発現が特異的であることがわかった部位は、胎児胸腺髄質、胎児脾臓、胎児小腸の上皮及び新たな骨形成の骨細胞領域のみであった。胎児及び正常成人前立腺では特異的なシグナルが観察されなかった。胎児組織は妊娠約12−16週であった。使用したオリゴはB-191D及びB-191Eであった。
【0162】
結腸腫瘍、胎児肝臓、及び形質移入細胞でのDNA30676(SHChlog/nsp1)の発現
この実験の目的は、結腸腺癌におけるDNA30676の発現を測定することである。このDNAは、結腸癌における増幅が示されている。発現は対照細胞ペレット及び10の結腸癌において分析した。対照細胞ペレットは、SHC形質移入293細胞及びSW480細胞を含み、これらはSHCを発現する(細胞はH98−717として提出されている)。
細胞ペレットの試験は、SHC形質移入細胞がセンス及びアンチセンスの両方のプローブにポジティブであり、この実験を問題にしている。SW480細胞は両方のプローブにネガティブであった。結腸癌についてはASプローブのみを実施した。多数の結腸癌が僅かな発現を示し、これは検体9727/98において最も強かった。しかしながら、細胞ペレットのデータから見ると、このシグナルは全部を解釈するのが困難であり、シグナルはポジティブと呼ぶには不十分と感じられる。
【0163】
下記のオリゴヌクレオチドを、この実施例に記載したインサイツハイブリッド形成で使用した。
B166A-GGATTCTAATACGACTCACTATAGGGCGCGGAGGCTGCTCTGGGGTAG (配列番号:30)
B166B-CTATGAAATTAACCCTCACTAAAGGGATGTTGCCCTGGCTGGTCTTGA (配列番号:31)
B166D-GGATTCTAATACGACTCACTATAGGGCATCTGCCTTGCCCCGAACGAG (配列番号:32)
B166E-CTATGAAATTAACCCTCACTAAAGGGATCATCCAGAGCCCGCATCAGC (配列番号:33)
A-322I-GGATTCTAATACGACTCACTATAGGGCAGATGTGGAAGACTGAGGCCT (配列番号:34)
A-323J-CTATGAAATTAACCCTCACTAAAGGGAATATGTGCCAAATCTGCAGGCT (配列番号:35)
【0164】
材料の寄託
次の細胞系をアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション, 12301 パークローンドライブ、ロックビル、メリーランド、米国(12301 Parklawn Drive, Rockville, MD, USA)(ATCC)に寄託した:
材料 ATCC寄託番号 寄託日
DNA30676-1223 209567 1997年12月23日
DNA40575-1223 209565 1997年12月23日
DNA40556-1223 209566 1997年12月23日
DNA40554-1223 209564 1997年12月23日
DNA61601-1223 209713 1998年 3月31日
【0165】
この寄託は、特許手続き上の微生物の寄託の国際的承認に関するブダペスト条約及びその規則(ブダペスト条約)の規定に従って行われた。これは、寄託の日付から30年間、寄託の生存可能な培養が維持されることを保証するものである。寄託物はブダペスト条約の条項に従い、またジェネンテク社とATCCとの間の合意に従い、ATCCから入手することができ、これは、どれが最初であろうとも、関連した米国特許の発行時又は任意の米国又は外国特許出願の公開時に、寄託培養物の後代を永久かつ非制限的に入手可能とすることを保証し、米国特許法第122条及びそれに従う特許庁長官規則(特に参照番号886OG638の37CFR第1.14条を含む)に従って権利を有すると米国特許庁長官が決定した者に子孫を入手可能とすることを保証するものである。
本出願の譲受人は、寄託した培養物が、適切な条件下で培養されていた場合に死亡もしくは損失又は破壊されたならば、材料は通知時に同一の他のものと即座に取り替えることに同意する。寄託物質の入手可能性は、特許法に従いあらゆる政府の権限下で認められた権利に違反して、本発明を実施するライセンスであるとみなされるものではない。
上記の文書による明細書は、当業者に本発明を実施できるようにするために十分であると考えられる。寄託した態様は、本発明のある側面の一つの説明として意図されており、機能的に等価なあらゆる作成物がこの発明の範囲内にあるため、寄託された作成物により、本発明の範囲が限定されるものではない。ここでの物質の寄託は、ここに含まれる文書による説明が、そのベストモードを含む、本発明の任意の側面の実施を可能にするために不十分であることを認めるものではないし、それが表す特定の例証に対して請求の範囲を制限するものと解釈されるものでもない。実際、ここに示し記載したものに加えて、本発明を様々に改変することは、前記の記載から当業者にとっては明らかなものであり、添付の請求の範囲内に入るものである。
【図面の簡単な説明】
【Fig1】 DNA30676(配列番号:2)の核酸配列並びに天然配列PRO201(Nsp1)ポリペプチド(配列番号:1)のコード化アミノ酸配列を示す図である。
【Fig2】 DNA40575(配列番号:4)の核酸配列並びに天然配列PRO308(Nsp2)ポリペプチド(配列番号:3)のコード化アミノ酸配列を示す図である。
【Fig3】 DNA61601(配列番号:6)の核酸配列並びに天然配列PRO309(Nsp3)ポリペプチド(配列番号:5)のコード化アミノ酸配列を示す図である。
【Fig4A−C】 本発明の全長DNA30676(配列番号:2)、DNA40575(配列番号:4)及びDNA61601(配列番号:6)核酸配列の単離に使用した(LIFESEQ(登録商標)データベース、Incyte Pharmaceuticals, Palo Alto, Ca)の、1328938(配列番号:13)、104191(配列番号:14)及び165811(配列番号:15)各々の配列を示す図である。
【Fig5A】 DNA30676(配列番号:2)の単離に使用したオリゴヌクレオチド配列(配列番号:7、配列番号:8)を示す図である。
【Fig5B】 DNA40575(配列番号:4)の単離に使用したオリゴヌクレオチド配列(配列番号:9、配列番号:10)を示す図である。
【Fig5C】 DNA61601(配列番号:6)の単離に使用したオリゴヌクレオチド配列(配列番号:11、配列番号:12)を示す図である。
【Fig6A】 Nsp1(配列番号:1)、Nsp2(配列番号:3)及びNsp3(配列番号:5)の間の種々のドメインの比較を例示する図である。
【Fig6B】 前記3つの配列の間の同一性の程度を最大にするために必要ならばギャップを挿入してそれらの実際の配列自体を示す図である。
【Fig7】 Nsp1(配列番号:1)の配列を示す図であり、SH2領域は太字で、P/S領域のプロリン及びセリンは各々一本及び二本の下線で示した。
【Fig8】 Nsp1(配列番号:1)と、ヒトShc(配列番号:16)、Sck(配列番号:17)及びFes(配列番号:18)との比較を示す図である。
【Fig9A】 Nsp1(配列番号:2)はヒト胎児肝臓で有意に発現されるがNsp2(配列番号:4)及びNsp3(配列番号:6)はより広く発現されることを示すノーザンブロットの図である。
【Fig9B】 造血組織における2つのNsp3転写物の発現を示す図である。
【Fig10A−10C】 10A及び10Cはウェスタンブロットであり、抗-flag免疫沈降が抗-flag、抗-(P)Tyr又は抗-Cas抗体で表示したようにブロットされた。10Bでは、抗-EGFレセプター(CalBiochem)免疫沈降が抗-flag又は抗-(P)Tyr抗体で表示したようにブロットされた。
【Fig11】 抗-Flag又は抗-p130Casでの免疫沈降を示すウェスタンブロット、及び抗-(P)TyrAbPY-20又は抗-p130Casでのブロットを示す図である。
【Fig12A】 インシュリン処理時のNsp1(配列番号:1)の減少したリン酸化を示すウェスタンブロットを示す図である。
【Fig12B】 Fig12Aのブロットの剥離により精製されたウェスタンブロットを示す図であり、抗-p130Casで再プローブして130kDタンパク質が実際にp130Casであることを確認した。
【Fig13】 種々のNsp1変異体のウェスタンブロットを示す図であり、それらはCOS細胞に形質移入され、EGFで処理され、及び抗-FlagAbで免疫沈降された細胞溶解物が抗-(P)Tyr、抗-p130Cas又は抗-flagAbでウェスタンブロットされた。
【Fig14】 14Aはレトロウイルス感染ベクターMSCVNIH3T3細胞の極薄切片の顕微鏡写真であり、14BはNsp1(配列番号:2)形質移入されたNI3T3細胞である。14Cは固定され、ブロックされ、ヘマトキシリン及びエオシンで断面染色された4つの弱い腫瘍の極薄切片の顕微鏡写真である。
【Fig15】 ベクター制御形質移入及びNsp1.sc1、.sc2及び.sc3細胞の腫瘍サイズを比較する棒グラフである。
【Fig16】 形質転換サブクローンNsp.sub1.1、Nsp.sub2.1非形質転換細胞培養(NIH3T3-Nsp1.non-trans)及び対照細胞NIH3T3-neoの成長因子飢餓NIH3T3のアポトーシス耐性を示す棒グラフである。
【Fig17】 pRK又はNsp1で形質移入され、EGFで処理された又は未処理のCOS細胞のウェスタンブロットを示す図であり、それはCoIPバッファーに溶解され、pI3-キナーゼN-末端又はC-末端SH2ドメイン-GSTビーズ(UBI)とともにインキュベートした。沈殿したNsp1は抗-flag抗体で検出した。
【Fig18】 ヒトゲノムにおけるDNA30676(配列番号:2)の粗いおよそのマッピングを示す染色体19の図的表示である。
【Fig19】 種々の及び結腸腫瘍において増幅が見られるDNA30676(配列番号:2)のスプライシング変異体であるDNA40556(配列番号:20)を示す図である。
【Fig20】 Nsp1(配列番号:2)、Nsp2(配列番号:4)及びDNA40556(配列番号:20)にコードされるタンパク質配列の比較を示す図である。
【配列表】
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Claims (30)

  1. (a)配列番号:1のアミノ酸1〜576の配列を含むポリペプチドをコードするDNA、又は(b)(a)のDNAの塩基配列において1個から数個の置換、欠失、付加又は挿入を含み、細胞のアポトーシスを抑制するポリペプチドをコードするDNAを含んでなる単離された核酸。
  2. 配列番号:1のアミノ酸残基1〜576を含むポリペプチドをコードするDNAを含んでなる請求項1に記載の単離された核酸。
  3. (a)ATCC寄託番号209567のcDNA(記号:DNA30676−1223)にコードされるのと同じ成熟ポリペプチドをコードするDNA、又は(b)(a)のDNAの塩基配列において1個から数個の置換、欠失、付加又は挿入を含み、細胞のアポトーシスを抑制するポリペプチドをコードするDNAを含んでなる単離された核酸。
  4. 請求項1に記載の核酸を含むベクター。
  5. 当該ベクターで形質転換される宿主細胞に認識されるコントロール配列に作用可能に結合した請求項4に記載のベクター。
  6. 請求項5に記載のベクターを含んでなる宿主細胞。
  7. 前記細胞が哺乳動物である請求項6に記載の宿主細胞。
  8. 前記細胞がCHO細胞である請求項7に記載の宿主細胞。
  9. 前記細胞が原核生物である請求項6に記載の宿主細胞。
  10. 前記細胞が大腸菌細胞である請求項9に記載の宿主細胞。
  11. 前記細胞が酵母菌細胞である請求項6に記載の宿主細胞。
  12. 前記細胞がサッカロミセスセレヴィシアエである請求項11に記載の宿主細胞。
  13. 配列番号:1のアミノ酸残基1〜576を含んでなる単離された天然配列ポリペプチド
  14. ATCC登録番号209567の下で寄託されたヌクレオチドにコードされる単離された天然配列ポリペプチド
  15. 請求項6に記載の宿主細胞を、ポリペプチドの発現に適した条件下で培養し、細胞培地からポリペプチドを回収することを含んでなる請求項13又は14に記載のポリペプチドの製造方法。
  16. 請求項13又は14に記載のポリペプチドに特異的に結合する抗体。
  17. 前記抗体がモノクローナル抗体である請求項16に記載の抗体。
  18. 請求項13又は14に記載のポリペプチドを過剰発現する細胞の死亡を誘発する請求項17に記載の抗体。
  19. 前記細胞が腫瘍細胞である請求項18に記載の抗体。
  20. 標識されている請求項17に記載の抗体。
  21. 固体支持体上に固体化された請求項20に記載の抗体。
  22. 活性断片、一本鎖抗体又は抗-イディオタイプ抗体である請求項20に記載の抗体。
  23. 製薬的に許容される担体とともに請求項16に記載の抗体を含んでなる組成物。
  24. 前記抗体の成長阻害量を含む請求項23に記載の組成物。
  25. 第2の抗体又は細胞毒性又は化学治療薬をさらに含む請求項24に記載の組成物。
  26. 請求項13又は14に記載のポリペプチドの測定方法において、請求項13又は14に記載のポリペプチドを含む、又は請求項13又は14に記載のポリペプチドをコードするDNAを発現すると疑われる細胞を請求項16に記載の抗体に暴露し、前記抗体の前記細胞への結合を測定することを含んでなる方法。
  27. 哺乳動物における腫瘍をインビトロで検査する方法において、
    (a)哺乳動物から得た組織細胞の試験試料において、及び(b)同じ細胞型の公知の組織細胞の対照試料において請求項13又は14に記載のポリペプチドをコードする遺伝子の発現レベルを検出し、試験試料の発現レベルが高いことが、試験組織細胞を得た哺乳動物における腫瘍の存在を示す方法。
  28. 哺乳動物における腫瘍をインビトロで検査する方法において、
    (a)請求項16に記載の抗体を哺乳動物から得た組織細胞の試験試料に暴露し、(b)試験試料中での請求項13又は14に記載のポリペプチドと抗体との間の複合体形成を検出することを含んでなる方法。
  29. 前記試験試料が、腫瘍性細胞成長又は増殖を有すると疑われる哺乳動物から得られる請求項28に記載の方法。
  30. 請求項16に記載の抗体及び包装に適した担体を含んでなる癌診断用キット。
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