JP3652842B2 - 異種ゴム複合防振装置の製法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この出願はエンジンマウントやサスペンションブッシュ等に使用される異種ゴム複合防振装置の製法に関する。
【0002】
【従来の技術】
エンジンマウント等に使用される防振装置の一般的な構造として、内側金具と、この外側に間隔をもって配設される外側金具と、これら両金具間を連結するゴム製のアーム部と、このアーム部と外側金具との間に形成される閉空間内へ防振すべき主たる振動の入力方向に沿って外側金具側から突出するゴム製の主ストッパ部とを備えたものがある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、アーム部はある程度弾性に富むことが要求され、主ストッパ部は逆に弾性変形しにくいことが望まれている。しかし、このような防振ゴムは、アーム部と主ストッパ部が均一なゴムを共通の金型内へ射出等で注入することにより製造されている。したがって、一段工程だけで異硬度のアーム部と主ストッパ部を有するゴム部を形成できない。
【0004】
したがって、硬度の異るゴムを注入成形するとすれば、共通の金型を使用できず、複数の金型を用いて多段工程で製造しなければならず、金型が複雑になるため金型コストが高くなる。また、途中で金型交換を行うため、製造工数が多くなる。そのうえ、インサート成形の場合には金型交換時の破損等により品質管理が困難になる。
【0005】
そこで、本願の目的は、アーム部と主ストッパ部のゴムを硬度などの物性等が異なる異種ゴムの組合せとした防振装置を一段工程で製造できる方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため本願は、内側金具と、この外側に間隔をもって配設される外側金具と、これら両金具間を連結するゴム製のアーム部と、このアーム部と外側金具との間に形成される閉空間内へ防振すべき主たる振動の入力方向に沿って外側金具側から突出するゴム製の主ストッパ部とを備えるとともに、アーム部を構成するゴムと主ストッパ部を構成するゴムの組成又は物性を異ならせた異種ゴムの組合せとした防振装置の製法において、
アーム部側ランナと主ストッパ部ランナからなる2系統のランナを設けた金型を設け、
この金型内のアーム部と外側金具との接続部に仕切部材を配置し、
アーム部側ランナから硬度の低いゴムを注入して内側金具と一体にアーム部を形成すると同時に、
外側金具と一体に主ストッパ部を形成するとともに、
仕切部材によってアーム部側と主ストッパ部側の各ゴムの混入を防止したことを特徴とする。
【0007】
このとき、異種ゴムを異硬度ゴムの組合せとし、アーム部を構成するゴムの硬度を主ストッパ部より低くし、かつ主ストッパ部を構成するゴムの硬度をアーム部より高くするようにもできる。
【0008】
【発明の効果】
金型内で外側金具近傍に仕切部材を配置し、内側金具側と外側金具側へそれぞれ異種ゴムを注入すると、双方のゴムはそれぞれアーム部及び主ストッパ部を形成するとともに仕切部材を挟んでアーム部側及び主ストッパ部側のゴムが接続し、かつ双方が混入しない。このため、異種ゴムの組合せからなる防振装置を一段工程で製造でき、しかもアーム部と主ストッパ部の各設計特性を正確に実現できる。
【0009】
このとき、異種ゴムを異硬度ゴムの組合せとし、アーム部を構成するゴムの硬度を主ストッパ部より低くし、かつ主ストッパ部を構成するゴムの硬度をアーム部より高くすれば、異硬度ゴムの複合防振装置を容易に製造でき、しかも、アーム部の硬度を比較的低くできるので、チューニングが容易となる。
【発明の実施の形態】
図1乃至図3に基づいて防振ゴムの一種であるエンジンマウントとして構成された第一実施例を説明する。図1はその正面図、図2は図1の1−2線断面図、図3は同1−3線断面図である。
【0010】
図1及び図2に示すように、このエンジンマウントは、筒状の内側金具2と、この周囲を間隔をもって略5角形をなして囲む外側金具4と、この内側金具2と外側金具4の間を連結するアーム部6と、アーム部6の外側金具4近傍位置に設けられた仕切部材7、アーム部6と外側金具4で囲まれた閉空間8へ外側金具4から突出する主ストッパ部10とを備える。
【0011】
アーム部6は内側金具2を中心にして左右へ略ハ字状に延びており、アーム部の仕切部材7との接続部12はアール形状をなし、中央部は上方へ突出するアーム部ストッパ14を有する。主ストッパ部10及びアーム部ストッパ14は、主たる振動の入力方向Xに沿って図の上方へ突出している。
【0012】
アーム部6を構成する材料は、主ストッパ部10より硬度の低いゴム材料、例えば硬度45〜65Hs程度のNR系ゴムで構成されている。
【0013】
アーム部6の上方と外側金具4の間にも閉空間16が形成され、この閉空間16内のアーム部ストッパ14の両側へ、外側金具4の周囲に形成されている縁部ゴム20から一体に補助ストッパ18が突出形成されている。
【0014】
この縁部ゴム20は主ストッパ部10と連続しており、これら全体で周囲ゴム22を形成し、アーム部6よりも硬度の高いゴム材料、例えば異硬度50〜75Hs程度のNR系ゴムの材料で構成され、アーム部6との間は仕切部材7で区画されている。
【0015】
図2に明らかなように、仕切部材7は外側金具4の近傍に位置し、アーム部6の端部及び縁部ゴム20と接着している。
【0016】
図中の符号24、26はアーム部の注入ゲートを示し、28、30、32は周囲ゴム22側の注入ゲートを示す。28は主ストッパ部10の中央部に位置し、30、32は左右の補助ストッパ18に位置する。
【0017】
本実施例の防振ゴムを製造するには、図2に明らかなように、上型34、中型36、下型38の間に形成された成形空間内へ内側金具2と外側金具4を入れ、かつ内側金具2と接続する外側金具4の近傍に若干間隔をもって仕切部材7を配置する。
【0018】
続いて、注入ゲート24、26と連続する一系統のランナから、主ストッパ部10より硬度の低いゴム材料を注入し、注入ゲート28乃至32には、アーム部6よりも硬度の高いゴム材料を注入する。
【0019】
これにより、低硬度のアーム部6と、高硬度で主ストッパ部10及び縁部ゴム20が連続する周囲ゴム22とを同時に形成するとともに、低硬度部分と高硬度部分のゴムが仕切部材7を介して一体化する。
【0020】
ただし、アーム部6及び周囲ゴム22側の各ゴムは仕切部材7を挟んで分離され、互いに混入することはない。
【0021】
このように、本実施例によれば、仕切部材7を設けることにより、アーム部6及び周囲ゴム22側の双方のゴムの混入を防止できるので、仕切部材7によって正確に硬度の異なる2種類のゴムの接続部を決定でき、各部の硬度を正確に得ることができる。
【0022】
ゆえに、共通の金型を用いて一段工程で異硬度複合成形が可能になり、金型コスト並びに製造工数が増加せずに成形でき、かつ金型交換に伴う品質管理の困難も招かないで済む。
【0023】
また、アーム部6と周囲ゴム22を異る硬度とする複合構造が得られるため、、アーム部6と主ストッパ部10の硬度を任意に変化させることができ、中高周波数でのアーム部6の共振周波数のチューニングが可能になる。また、上下、前後、左右の各方向におけるバネ比チューニングが可能となる。
【0024】
図4に基づいて第2実施例のエンジンマウントを説明する。このエンジンマウントは、略V字状の内側金具2と、この周囲を間隔をもって略半円状に囲む外側金具4と、この内側金具2と外側金具4の間を連結するアーム部6と、アーム部6と外側金具4で囲まれた閉空間8へ外側金具4から突出する主ストッパ部10とを備え、アーム部6は内側金具2を中心にして左右へ略ハ字状に上向きで延びている。
【0025】
主ストッパ部10は外側金具4に沿って形成される外側ゴム40の一部として連続一体に形成されており、アーム部6の硬度は主ストッパ部10より硬度が低く、逆に、主ストッパ部10を含む外側ゴム40はアーム部6よりも硬度が高くなっており、これら硬度の異なるゴムの間は仕切部材7で区画されている。
【0026】
仕切部材7は斜め上方へ広がって延びるアーム部6の長さ方向に対して略直交する方向に配設されているので、前実施例の効果に加えて、アーム部6へ加わる剪断応力を緩和し、耐久性を向上できる。
【0027】
なお、本願発明は前記各実施例に限定されず種々に応用可能である。例えば、使用するゴムはNR系に限らずCR系等適宜に選択可能である。また、同一系材料又は異種材料相互を適宜組合せることもできる。この場合、アーム部を低硬度、主ストッパ部ー部を高硬度の組合又はこの逆のアーム部を高硬度、主ストッパ部ー部を低硬度の組合が可能である。そのうえ、使用材料は、同一材料のみならず同一系列の異種物性(例えば、ダンピング特性)材料の組合にすることもできる。 さらには、ダンピング特性等が異る同一硬度の組合せも可能である。
【0028】
さらに、注入方法は射出によらず常圧下における一般の注入方法や真空プレス等も採用できる。また、内側金具及び外側金具の形状は筒型など種々に変形できる。
【0029】
そのうえ、エンジンマウントに限らずサスペンションブッシュなどにも適用でき、図5はブッシュタイプの防振装置であるブッシュ型防振ゴムに適用した第3実施例であり、図5のブッシュ型防振ゴムはその横断面を示している。この例でも、内側金具に相当する内筒102と、外側金具に相当する外筒104を同心状に配設し、アーム部106と主ストッパ部110を備えている。
【0030】
アーム部106は内筒102を挟んで半径方向左右へ延び、外筒104の対向位置と連結し、主ストッパ部110はこのアーム部106を挟んで外筒104側に一対で設けられ、アーム部106と各主ストッパ部110の間に閉空間108が形成され、かつこの閉空間108内へアーム部106の近傍部分から各主ストッパ部110側に向かってアーム部ストッパ114が突出形成されている。
【0031】
これらアーム部106と主ストッパ部110はそれぞれ異硬度材料で構成され、これらの異硬度材料はアーム部106の外筒104近傍部分に設けられた同心円弧状の仕切部材107で仕切られている。なお、仕切部材107と外筒104の内周面との間には縁部ゴム120が形成され、この縁部ゴム120は主ストッパ部110と同一材料で構成されている。
【0032】
このブッシュ型防振ゴムは、前記実施例と同様にして成形でき、その結果、本実施例のようなブッシュ型でも同様な効果を奏することができ。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施例の正面図
【図2】図1の1−2線断面図
【図3】図1の1−3線断面図
【図4】第2実施例の正面図
【図5】第3実施例の横断面図
【符号の説明】
2:内側金具、4:外側金具、6:アーム部、7:仕切部材、8:閉空間、10:主ストッパ部、22:周囲ゴム
Claims (2)
- 内側金具と、この外側に間隔をもって配設される外側金具と、これら両金具間を連結するゴム製のアーム部と、このアーム部と外側金具との間に形成される閉空間内へ防振すべき主たる振動の入力方向に沿って外側金具側から突出するゴム製の主ストッパ部とを備えるとともに、アーム部を構成するゴムと主ストッパ部を構成するゴムの組成又は物性を異ならせた異種ゴムの組合せとした防振装置の製法において、
アーム部側ランナと主ストッパ部ランナからなる2系統のランナを設けた金型を設け、
この金型内のアーム部と外側金具との接続部に仕切部材を配置し、
アーム部側ランナから硬度の低いゴムを注入して内側金具と一体にアーム部を形成すると同時に、
外側金具と一体に主ストッパ部を形成するとともに、
仕切部材によってアーム部側と主ストッパ部側の各ゴムの混入を防止したことを特徴とする異種ゴム複合防振装置の製法。 - 上記異種ゴムは異硬度ゴムの組合せからなり、アーム部を構成するゴムの硬度を主ストッパ部より低くし、かつ主ストッパ部を構成するゴムの硬度をアーム部より高くしたことを特徴とする請求項1に記載した異種ゴム複合防振装置の製法。
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