JP3651183B2 - 産業車両用直流電動機の回生制御装置 - Google Patents
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Description
【技術分野】
本発明は,産業車両を駆動する直流電動機の制御装置に関するものである。
【0002】
【従来技術】
バッテリを電源として直流電動機によって駆動される産業車両は,力行時には電力効率を良好に維持しつつアクセルの操作量に対応する目標速度となるよう電動機を制御する。また,制動時には,電動機のエネルギーをできるだけバッテリに回生し,電力消費量ができるだけ少なくなるよう制御される。
【0003】
即ち,図11に示すように,力行時には,回転センサー91により電動機90の回転数を検出し,電機子回路駆動トランジスタ921及び界磁回路駆動トランジスタ931〜934(931,933の組又は932,934の組)を所定の電流方向にチョッパー制御し(回生トランジスタ922はオフ),電機子電流Iaおよび界磁電流Ifを調整してアクセル操作量aに対応する目標回転数となるよう制御する。
【0004】
同図において,符号991はバッテリ,符号992はアクセルの操作量を検出するアクセルセンサー,符号901は界磁コイル,符号94はチョッパー制御装置,符号925,935はトランジスタのドライブ回路,符号912,913は電機子電流および界磁電流の電流センサーである。
【0005】
また,ブレーキの操作時,ディレクションスイッチの切り換え時(スイッチバック時),アクセルペダルの開放時,アクセルの戻し操作時(所謂アクセル連動回生の条件成立時)には,電機子回路駆動トランジスタ921をオフすると共に回生トランジスタ922をチョッパー制御して電動機90の発電電流をバッテリ991に回生する。
【0006】
そして,特に上記アクセル連動回生時には,回転センサー91により電動機90の回転数を検出し,一定の制動トルクで制動しつつ回転数が新しいアクセルの操作量に対応する負荷トルク零時の値になったことを検知して,再び力行駆動制御に制御モードを切り換える。
なお,負荷トルクと回転数との関係を示す曲線(関数)は,アクセルの操作量により一義的に定められており(図4(a)参照),上記負荷トルクの値は電機子電流と界磁電流の値から算定することができる。
【0007】
図13は上記アクセル連動回生制御の制御の流れを示すフローチャートである。 即ち,始めにステップ981において,アクセルの戻し操作があったことを,前記アクセルセンサー992を介して検知し,ステップ982において,アクセル連動回生制御モードを起動する。
そして,ステップ983において,制動トルクTbを予め設定した一定値に固定して回生制御を開始する。
【0008】
そして,ステップ985で一定時間の間,回生制動を実施し,速度が目標値voに減速したか否かを判定する。結果が否ならば,ステップ983に戻り,同様の制御を実施する。そして,ステップ985において,目標速度voに減速したことを確認した場合には,ステップ986において,アクセル連動回生を終了する。
【0009】
【解決しようとする課題】
しかしながら,上記制御装置には次のような問題点がある。
第一点は,アクセルの操作量が相対的に大きい操作量a1から少ない操作量a2に戻し操作され,回生制動を行う場合において,新たな速度に落ち着くまでの制動時間が長くかかり過ぎたり,逆に制動力が強すぎて搭乗者に不快感を与えたりすることである。
【0010】
即ち,制動トルクTbを常に一定にしているために,図12(a)の実線のカーブ81に示すように,元のアクセル操作量a1と新たなアクセル操作量a2との差Δaが比較的大きい場合に,スムースな速度の変化カーブを描くようにすると,同図(b)の実線の曲線82に示すように,元のアクセル操作量a1と新たなアクセル操作量a2との差Δaが比較的小さい場合の速度変化が急激になり,搭乗者に対して衝撃等の不快感を与えることになる。
【0011】
一方,同図(b)の破線の曲線84に示すように,元のアクセル操作量a1と新たなアクセル操作量a2との差Δaが比較的小さい場合にスムースな速度の変化カーブを描くようにすると,元のアクセル操作量a1と新たなアクセル操作量a2との差Δaが大きい場合には,図12(a)破線のカーブ83に示すように,新たな速度に落ち着くまでの制動時間が長くかかり過ぎる。
【0012】
第2の問題点は,上記のようにアクセルの操作に連動した回生を行うためには,電動機90の回転数が所定値になったことを検知するための回転センサー91が必要であり,また回転センサー91の入力回路としてバッファー回路や積算器等が制御装置94に必要であり,構成が複雑となりコスト高となることである。本発明は,かかる従来の問題点に鑑みてなされたものであり,アクセルの戻し操作量Δaの大きさに関わらず適正な制動動作を実現することができ,かつ簡素なシステム構成を実現することのできる制御装置を提供しようとするものである。
【0013】
【課題の解決手段】
本発明は,車両を駆動する直流電動機の回転速度を検知又は算出する速度判定手段と,上記直流電動機の電機子電流及び界磁電流を検知する電流検出手段と,アクセルの操作量を検知するアクセルセンサーと,電機子電流の方向が切り換え可能であると共に電機子の電圧,電流の大きさを調整することができる電機子調整手段と,界磁電流の方向及び大きさを調整することのできる界磁電流調整手段と,アクセルの操作量が相対的に大きい操作量a1から少ない操作量a2に戻し操作された場合に上記直流電動機の電力を電源側に回生しつつ上記アクセルセンサーの出力信号に対応する電動機の目標回転速度となるよう制御する制御手段とを有しており,
上記制御手段は,上記回生制御時では略一定の制動トルクTbにより制動し,操作後の上記アクセルセンサーの出力信号a2に対応する電動機の目標回転速度voと回生制動開始時の回転速度vsとの差Δvsが大きいほど上記制動トルクTbを大きく設定して回生制動を行うよう構成されており,
かつ上記制御手段は,上記回生制動時においては,新しいアクセル操作量a2に対応した力行時の負荷トルクと回転数との関係において負荷トルク零時の回転数Nd2に対する電機子電圧の値Vdと,上記一定の制動トルクTbで制動して上記回転数Nd2となった場合における電機子電圧Vbの値とが,ほぼ等しい値となるように予め界磁電流の値Ifsを設定し,
界磁電流の値を上記Ifsの一定に保ちつつ,上記制動トルクTbとなるように電機子電流を制御し,電機子電圧が上記Vbとなった時点で,上記アクセル操作量a2に対応する力行制御に再び移行するよう電動機を制御することを特徴とする産業車両用直流分巻電動機の回生制御装置にある。
【0014】
本発明において特に注目すべきことは,電動機の目標回転速度voと回生制動開始時の回転速度vsとの差Δvsが大きいほど制動トルクTbを大きく設定し,略一定の制動トルクTbにより回生制動を行うことである。
その結果,現在の速度(回転数)vsと目標回転速度voとの差Δvsが大きいほど制動による減速の加速度が大きくなり,逆に現在の速度(回転数)vsと目標回転速度voとの差Δvsが小さいほど減速の加速度が小さくなる。
【0015】
それ故,速度差Δvsが大きい場合にも,前記図12(a)の破線83に示すように目標速度に達する時間がかかり過ぎるということがなくなる。そして,速度差Δvsが小さい場合にも,図12(b)の実線82に示すように急激に減速して搭乗者に不快感を与えることを無くすることができる。それ故,アクセルの操作量Δaの大小に関わらず,適切な応答時間で速度を制御し,乗り心地を良好にすることができる。
【0016】
なお,速度判定手段は,電動機の回転を直接検知する回転センサーを用いることができる。
また,請求項2記載のように,速度判定手段は,電動機の電機子電圧と界磁電流の値から回転速度を算出する検出手段と演算手段とによって実現することができる。
【0017】
そして,請求項1に記載のように,制御手段は,回生制動時においては,新しいアクセル操作量a2に対応した力行時の負荷トルクと回転数との関係において負荷トルク零時の回転数Nd2に対する電機子電圧の値Vdと,上記一定の制動トルクTbで制動して上記回転数Nd2となった場合における電機子電圧Vbの値とが,ほぼ等しい値となるように予め界磁電流の値Ifsを設定し,界磁電流の値を上記Ifsの一定に保ちつつ,上記制動トルクTbとなるように電機子電流を制御し,電機子電圧が上記Vbとなった時点で,上記アクセル操作量a2に対応する力行制御に再び移行するよう電動機を制御する。
【0018】
請求項1の発明において特に注目すべきことは,所謂アクセル連動回生において,回生制御から力行制御への移行を次のように制御することである。即ち,新しいアクセル操作量a2に対応した前記力行制御特性の負荷トルクが零となる時の回転数Nd2に対する電機子電圧の値Vdと,前記回生制御特性における上記回転数Nd2における電機子電圧Vbの値とがほぼ等しい値となるように予め界磁電流の値Ifsを設定し,界磁電流の値を上記Ifsの一定に保ちつつ,上記制動トルクTbとなるように電機子電流を制御していき,電機子電圧が上記Vbとなった時点で,力行制御に再び移行する。
【0019】
その結果,速度センサーを用いて速度を検知しないにもかかわらず,スムースに回生制御から力行制御へ移行することができる。即ち,上記のように界磁電流Ifsを設定することにより,回生制御から力行制御に移行した場合に,回生制御に基づく切換直前の電機子電圧Vbと力行制御移行時の制御目標値Vdとの差を小さくすることができるから,両制御モード間の移行が極めてスムースとなる。それは,力行時の主たる操作量である電機子電圧の移行の瞬間における制御偏差が極めて小さいからである。その結果,上記制御モードの切換時における速度のオーバーシュートや遅れなど,遠回りで無駄な過渡的な制御が発生しなくなる。
【0020】
一方,請求項3の発明は,産業車両を駆動する直流分巻電動機の電機子電圧を検知する電圧検出手段と,上記直流電動機の電機子電流及び界磁電流を検知する電流検出手段と,アクセルの操作量またはディレクションスイッチのニュートラル状態を検知するアクセルセンサーと,電機子電流の方向が切り換え可能であると共に電機子の電圧,電流の大きさを調整することができる電機子調整手段と,界磁電流調整手段と,電機子電流の値と電機子電圧の値とから現在の負荷トルクを算定し上記アクセルセンサーの検知信号と上記負荷トルクとに対応した所定の回転数となるよう上記電機子調整手段及び界磁電流調整手段を操作する制御手段とを有しており,
上記制御手段は,アクセルが踏み込まれている力行時においては,上記負荷トルクとアクセル操作量a1とに対応する所定の回転数となるように,上記電機子電流を所定値以下に制限しつつ界磁電流と電機子電圧とを調整し,
一方,アクセルの操作量が相対的に大きい上記操作量a1から少ない操作量a2に戻し操作された場合には,新しいアクセル操作量a2に対応した負荷トルクと回転数の関係に移行するよう上記直流電動機の電力を電源側に回生しつつ所定の一定の制動トルクTbで制動し,かつ上記制動トルクTbの大きさは,操作後の上記アクセルセンサーの出力信号a2に対応する電動機の目標回転速度voと回生制動開始時の回転速度vsとの差Δvsが大きいほど大きく設定されており,
かつ前記制御手段は,前記回生制動から力行制御に再び移行する移行期においては,新しいアクセル操作量a2に対応した力行時の負荷トルクと回転数との関係において負荷トルク零時の回転数Nd2に対する電機子電圧の値Vdと,上記一定の制動トルクTbで制動して上記回転数Nd2となった場合における電機子電圧Vbの値とが,ほぼ等しい値となるように予め界磁電流の値Ifsを設定し,
界磁電流の値を上記Ifsの一定に保ちつつ,上記制動トルクTbとなるよう電機子電流を制御し,電機子電圧が上記Vbとなった時点で,上記アクセル操作量a2に対応する力行制御に移行するよう制御することを特徴とする産業車両用直流分巻電動機の制御装置にある。
【0021】
本発明において特に注目すべきことの第一点は,電機子電流の値と電機子電圧の値とから現在の負荷トルクを算定すると共に界磁電流を一定に制御することにより電機子電圧から電動機の回転数を算定し,上記負荷トルクとアクセル操作量とに対応した所定の回転数に電機子電圧(電動機)を制御することである。即ち,速度センサーを用いることなくアクセルセンサーに対応した状態(負荷に対応する回転数)に電動機を制御することができる。
【0022】
即ち,力行時においては,界磁電流と電機子電圧とを調整し,負荷トルクとアクセル操作量a1とに対応する所定の回転数となるように制御する。即ち,現在のアクセル操作量に対応する負荷トルクと回転数との関係式に基づいて,現在の負荷トルクから目標となる回転数を設定する。そして,界磁電流を一定に設定した場合には,図4(b)に示すように回転数と電機子電圧との関係は一義的に定まるから,電圧検出手段を介して電機子電圧を検知することにより回転数を知ることができ,上記の目標回転数に対応した電機子電圧となるよう前記電機子調整手段を操作する。
【0023】
同様に,回生制御時においては,制動トルクを制御し,界磁電流を一定に設定した場合には,図5に示すように回転数と電機子電圧との関係は界磁電流に対応して一義的に定まり,同様に電機子電圧を検知して回転数を知ることができる。そして,新たなアクセル操作量a2に対応した目標回転数の電機子電圧となるよう電機子調整手段を操作する。
その結果,本発明では,回転センサーが不要となり,代わって必要となる電圧検出手段は回転センサーよりも安価かつ簡素に構成することができるから,装置は簡素で安価となる。
【0024】
本発明において特に注目すべきことの第二点は,回生制御において,次のように制御することである。即ち,所定の一定の制動トルクTbで制動し,かつ上記制動トルクTbの大きさは,上記アクセルセンサーの出力信号a2に対応する電動機の目標回転速度voと回生制動開始時の回転速度vsとの差Δvsが大きいほど大きく設定する。
【0025】
その結果,現在の速度(回転数)vsと目標回転速度voとの差Δvsが大きいほど制動による減速の加速度が大きくなり,逆に現在の速度(回転数)vsと目標回転速度voとの差Δvsが小さいほど減速の加速度が小さくなる。
それ故,速度差Δvsが大きい場合にも,図12(a)の破線83に示すように目標速度に達する時間がかかり過ぎるということがなくなる。そして,速度差Δvsが小さい場合にも,図12(b)の実線82に示すように急激に減速して搭乗者に不快感を与えることを無くすることができる。それ故,アクセルの操作量の大小に関わらず,適切な応答時間で速度を制御することができる。
【0026】
なお,請求項3に記載のように,上記発明において,前記回生制動から力行制御に再び移行する移行期においては,新しいアクセル操作量a2に対応した力行時の負荷トルクと回転数との関係において負荷トルク零時の回転数Nd2に対する電機子電圧の値Vdと,上記一定の制動トルクTbで制動して上記回転数Nd2となった場合における電機子電圧Vbの値とが,ほぼ等しい値となるように予め界磁電流の値Ifsを設定し,界磁電流の値を上記Ifsの一定に保ちつつ,回生制御時において上記制動トルクTbとなるように電機子電流を制御し,電機子電圧が上記Vbとなった時点で,上記アクセル操作量a2に対応する力行制御に移行するよう制御することが好ましい。
【0027】
これによって,速度センサーを用いて速度を検知しないにもかかわらず,次に述べるようにスムースに回生制御から力行制御へ移行することができるからである。即ち,回生制御から力行制御に移行した場合に,回生制御に基づく切換直前の電機子電圧Vbと力行制御移行した瞬時の電機子電圧の制御目標値Vdとの差が小さくなるから,両制御モード間の移行が極めてスムースとなる。何故ならば,力行時の主たる操作量である電機子電圧の移行の瞬間における制御偏差が極めて小さいな値となるからである。そして,上記切換時における速度のオーバーシュート(速度が目標値をオーバーした後戻し制御すること)や制御の遅れなど,遠回りで無駄な過渡的な制御が発生しなくなる。
【0028】
なお,上記各発明における電機子調整手段及びその制御は,請求項4に記載のように,直流電動機の電機子と並列に接続され回生時に作動する第2スイッチング素子と,上記電機子及び上記第2スイッチング素子と直列に接続され力行時に作動する第1スイッチング素子と,上記第1,第2スイッチング素子と並列に逆極性に配置された整流素子とを備えるように構成し,制御手段は,力行制御時においては,上記第2スイッチング素子をオフ状態とすると共に第1スイッチング素子をチョッパー制御し,回生制御時においては,上記第1スイッチング素子をオフ状態とすると共に第2スイッチング素子をチョッパー制御することにより実現することができる(図2,図3参照)。
【0029】
即ち,図2に示すように,第2スイッチング素子をオフ状態とすると共に第1スイッチング素子をチョッパー制御することにより,電源側から電力を電動機に供給し力行駆動することができる。そして,第1スイッチング素子のチョッパー制御量に対応して電動機は作動する。
一方,図3に示すように,第1スイッチング素子をオフ状態とすると共に第2スイッチング素子をチョッパー制御し,第1スイッチング素子に並列に挿入したダイオードのルートを介して,電動機のエネルギーを電源側に回生することができる。そして,上記回生量電力は,第2スイッチング素子のチョッパー制御量を調整することにより制御することができる。
【0030】
また,前記界磁電流調整手段及びその制御は,請求項5に記載のように,対向するブリッジ端子の橋絡部に直流電動機の界磁コイルを接続してなるスイッチング素子のブリッジ接続回路を備え,前記制御手段は,上記ブリッジ回路において互いに対向する辺の一対のスイッチング素子の二つの組のいずれか一方の組を回転方向に対応してチョッパー制御すると共に他方の組をオフ状態とすることにより界磁電流の大きさ及び方向を制御することにより実現することができる(図2,図3参照)。即ち,チョッパー制御するスイッチング素子の対を選択することにより,界磁電流の極性(方向)が決まり,チョッパー制御量により電流の大きさを変化させることができる。
【0031】
【発明の実施の形態】
実施形態例
本例は,図1に示すように,産業車両を駆動する直流分巻電動機81の電機子電圧Vaを検知する電圧検出手段11と,直流電動機81の電機子電流Ia及び界磁電流Ifを検知する電流検出手段12,13と,アクセルの操作量及びディレクションスイッチのニュートラル状態を検知するアクセルセンサー14と,電機子電流Iaの方向が切り換え可能であると共に電機子の電圧,電流の大きさを調整することができる電機子調整手段と,界磁電流調整手段30と,電機子電流Ifの値と電機子電圧Vaの値とから現在の負荷トルクTを算定しアクセルセンサー14の検知信号と上記負荷トルクTとに対応した所定の回転数となるよう上記電機子調整手段及び界磁電流調整手段30を操作する制御手段40とを有している。
【0032】
そして,制御手段40は,アクセルが踏み込まれている力行時においては,上記負荷トルクTとアクセル操作量a1とに対応する所定の回転数となるように,電機子電流を所定値以下に制限しつつ界磁電流と電機子電圧とを調整し,一方,アクセルの操作量が相対的に大きい上記操作量a1から少ない操作量a2に戻し操作された場合には,新しいアクセル操作量a2に対応した負荷トルクと回転数の関係に移行するよう直流電動機81の電力を電源85側に回生しつつ所定の一定の制動トルクTbで制動する。
そして,上記制動トルクTbの大きさは,図8,図9に示すように,操作後のアクセルセンサー14の出力信号a2に対応する電動機の目標回転速度voと回生制動開始時の回転速度vsとの差Δvsが大きいほど大きく設定されている。
【0033】
また,制御手段40は,前記回生制動から力行制御に再び移行する移行期においては,新しいアクセル操作量a2に対応した力行時の負荷トルクと回転数との関係において負荷トルク零時の回転数Nd2に対する電機子電圧の値Vdと,上記一定の制動トルクTbで制動して上記回転数Nd2となった場合における電機子電圧Vbの値とが,ほぼ等しい値となるように予め界磁電流の値Ifsを設定し,界磁電流の値を上記Ifsの一定に保ちつつ,回生制御時において上記制動トルクTbとなるように電機子電流を制御し,電機子電圧が上記Vbとなった時点で,上記アクセル操作量a2に対応する力行制御に移行するように制御する。
【0034】
そして,前記電機子調整手段は,図1に示すように,直流電動機81の電機子82と並列に接続され回生時に作動する第2スイッチング素子22と,電機子82及び第2スイッチング素子22と直列に接続され力行時に作動する第1スイッチング素子21と,第1,第2スイッチング素子21,22と並列に逆極性に配置された整流素子23,24とを備えている。
【0035】
そして,制御手段40は,力行制御時においては,第2スイッチング素子22をオフ状態とすると共に第1スイッチング素子21をチョッパー制御し,回生制御時においては,第1スイッチング素子21をオフ状態とすると共に第2スイッチング素子22をチョッパー制御する。
【0036】
また,界磁電流調整手段30は,対向するブリッジ端子301,302の橋絡部に直流電動機81の界磁コイル83を接続してなるスイッチング素子311〜314のブリッジ接続回路を備えている。そして,制御手段40は,上記ブリッジ回路において互いに対向する辺の一対のスイッチング素子311〜314の二つの組(311,313)又は(312,314)のいずれか一方の組を回転方向に対応してチョッパー制御すると共に他方の組(312,314)又は(311,313)をオフ状態とすることにより界磁電流Ifの大きさ及び方向を制御する
同図において,符号25は制御手段40の指令に基づいて第1,第2スイッチング素子21,22を駆動するドライバー回路,符号33は制御手段40の指令に基づいて界磁用スイッチング素子311〜314を駆動するドライバー回路,符号321〜324は界磁用スイッチング素子の保護ダイオードである。
【0037】
以下,それぞれについて説明を補足する。
始めにアクセルの操作量aiに対応して制御されるべき負荷トルクと回転数(車両速度)との関係は,図4(a)に示すような関係にある。即ち,例えば同図(a)の符号611〜613の曲線に示すように,低速時のトルク(従って電機子電流)の大きさを制限しつつ負荷トルクに反比例的に回転数(速度)の値を制御する。
【0038】
そして,通常の力行制御時には,基本的に界磁電流と電機子電圧を操作することにより,上記曲線611〜613に従うように制御する。そして,アクセル操作量が減少して新たな関係に移行する過渡期(例えば曲線613から曲線611に移行する過渡期),所謂アクセル連動回生を行う時にはアクセルの戻し操作量Δa(例えば,=a3−a1)に対応した大きさの制動トルクTb一定の減速制御を行い,再び回生制御から力行制御へ移行する制御は,詳細を後述するようにアンダーシュートが生じず且つ制御遅れが生じないように,制御の不連続性を最小とする適正な制御を実現させる。
【0039】
なお,アクセルの戻し操作量Δa(例えば,=a3−a1)に対応した大きさの制動トルクTbとは,電動機の目標回転速度voと回生制動開始時の回転速度vsとの差Δvsに対して,乗り心地を良好にする関数の関係を有する制動トルクTbである。
【0040】
始めに,力行運転時の制御方法について述べる。
この場合には,電機子電流を一定値以下に電流制限をかけながら,界磁電流と電機子電圧を制御するが,始めに現在の電機子電流Iaの値と界磁電流Ifの値から,現在の負荷トルクTを算定する。そして,上記負荷トルクの値Tに基づいて,始めに適正な界磁電流の指令値Ifoを,例えば上記(T−Ifo)の関係を決めるテーブル又は演算器等に基づいて決定する。
【0041】
一方,前記のようにアクセル操作量aiに対応するトルク速度曲線(図4(a)の曲線611〜613)から,上記負荷トルクTに対する電動機の回転数Nは決定される。例えば,アクセル操作量がa3で負荷トルクがT1である場合には,図4(a)曲線613とT1との交点から速度N1が求められる。
そして,このときの界磁電流一定の場合の電機子電圧Vaと回転数Nの関係は,界磁電流の値If1〜If3に対応して同図(b)の曲線621〜623のような関係となり,上記界磁電流の指令値Ifoに対応する電機子電圧−速度カーブ(同図では曲線622)と速度N1とから電機子電圧の指令値Vdが決定される。
【0042】
そして,上記指令値Ifo,Vdに基づいて,界磁電流と電機子電圧が上記値となるように,図2に示すように,第1スイッチング素子21および界磁スイッチング素子(312と314)又は(311と313)をチョッパー制御する(界磁スイッチング素子(312と314)又は(311と313)の選定は正逆の回転方向によって決める)。なお,このとき,電機子電流の大きさは一定値以下となるように制限する。
【0043】
次に,アクセル連動回生時の制御方法について述べる。
この場合は,図4に示すように,アクセル操作量aが例えばa3からa1に減少し,トルク−速度曲線が同図の曲線613から611に変化するような場合である。そして,力行への移行前の回生制御時においては,図6に示すように制動トルクが一定値Tbとなるようにトルク一定制御を行いながら,図3に示すように電機子電流Iaの方向を反転させ電動機81のエネルギーを電源85に回生する。
【0044】
そして,現在の負荷に対応する曲線613上の点Aから曲線611上の点Bに移行させる制御を実施する。このとき,同図の曲線611のB’点からB点に制御上逆戻りする所謂アンダーシュート現象が生じず,且つ回生から力行への切換が早すぎることによる制御遅れが生じないように,曲線611のトルク零のx点で回生から力行への制御モードの切換を行うこと,かつアクセルの戻し操作量Δaの大きさにかかわらず減速の応答時間が適正な長さとなることを制御の目標とする。
【0045】
図10は,上記アクセル連動回生制御の流れを示すフローチャートである。始めに,ステップ651において,アクセルの戻し操作があったことを,アクセルセンサー14を介して検知し,ステップ652において,アクセル連動回生制御モードを起動する。
そして,ステップ653において,現在の速度(回転数)vsと目標回転速度voとの差Δvsを算出する。そして,ステップ654で,上記Δvsの値に基づいて,制動トルクTbを設定する。
【0046】
そして,ステップ655で一定時間の間,回生制動を実施し,速度が目標値voに減速したか否かを判定する。結果が否ならば,ステップ653に戻り,同様の制御を実施する。そして,ステップ655において,目標速度voに減速したことを確認してから,ステップ656の結果が是,即ちアクセル連動回生を終了する。
【0047】
上記回生制御時において,制動するトルクTbは,図8,図9に示すように,電動機の目標回転速度voと回生制動開始時の回転速度vsとの差Δvsが大きいほど制動トルクTbを大きく設定し,略一定の制動トルクTbにより回生制動を行うから,現在の速度(回転数)vsと目標回転速度voとの差Δvsが大きいほど制動による減速の加速度が大きくなり,逆に現在の速度(回転数)vsと目標回転速度voとの差Δvsが小さいほど減速の加速度が小さくなる。
【0048】
それ故,本例では,速度差Δvsが大きい場合にも,図12(a)の破線83に示すように目標速度に達する時間がかかり過ぎるということがなくなる。そして,速度差Δvsが小さい場合にも,図12(b)の実線82に示すように急激に減速して搭乗者に不快感を与えることを無くすることができる。それ故,アクセルの操作量の大小に関わらず,適切な応答時間で速度を制御することができる。
【0049】
なお,上記のようなトルク一定の回生制御時においては,界磁電流を一定とした場合の速度(回転数N)と電機子電圧Vaの関係は,前記界磁電流の値If1〜If3に対応して図5の曲線631〜633に示すように,ほぼ直線関係となる。そして,図7(b)は界磁電流の値If1〜If3に対応する力行時の電機子電圧−回転数曲線621〜623と,界磁電流の値If1〜If3に対応する回生時の電機子電圧−回転数曲線631〜633とを同一図上に表示した図である。
【0050】
その結果,同図から分かるように,同一速度に対応する力行時の電機子電圧(例えば図4(b)のVd)と回生時の電機子電圧(例えば図5のVb)との間には,界磁電流の値If1〜If3によって変化するギャップΔVaが存在する。
しかしながら,本例では,図6に示す回生−力行切換時の回転数Nxにおける上記電機子電圧のギャップΔVaがミニマムとなるように界磁電流の指令値を設定する(図7では上記ΔVa=ΔVa1の時すなわち界磁電流がIf1の曲線631の時)。
【0051】
その結果,上記回転数Nxで図6のs点に示す回生制御からx点で示す力行制御に移行した場合には,界磁電流を一定にした状態のまま電機子電圧に対する指令値の変化ΔVaが極めて少なくなり,アンダーシュートが生じず且つ制御遅れ及び回生効率低下が生じず回生から力行制御に移行することができる。
【0052】
上記のように,本例によれば,回転センサーを用いないで電機子電圧を検知することにより速度制御が可能であると共に,回生から力行へのスムースな移行が可能であり,かつアクセルの戻し操作量の大小に関わらず適切な応答時間で速度を制御することができる産業車両用直流分巻電動機の制御装置を得ることができる。
【0053】
【発明の効果】
上記のように,本発明によれば,アクセルの戻し操作量Δaの大きさに関わらず適正な制動動作を実現することができ,かつ簡素なシステム構成を実現することのできる産業車両用直流分巻電動機の制御装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態例の電動機制御装置の接続図。
【図2】図1において力行制御時の電機子電流及び界磁電流の流れとスイッチング素子の動作状態を示す接続図。
【図3】図1において回生制御時の電機子電流及び界磁電流の流れとスイッチング素子の動作状態を示す接続図。
【図4】力行制御時においてアクセルの操作量を一定とした時の回転数とトルクの関係を示す図(a)と界磁電流を一定とした時の回転数と電機子電圧の関係を示す図(b)。
【図5】トルク一定制御により回生制御を行いかつ界磁電流を一定とした時の回転数と電機子電圧の関係を示す図。
【図6】実施形態例の制御装置において,アクセル連動回生時の回生−力行移行時の回転数とトルクの変化の推移を示す図。
【図7】実施形態例の制御装置において,力行制御時においてアクセルの操作量を一定とした時の回転数とトルクの関係を示す図(a)とアクセル連動回生時の回生制御から力行制御へ移行する時点の電機子電圧の指令値の変化ΔVaを示す説明図(b)。
【図8】実施形態例の制御装置において,アクセルの戻し操作量が小さい場合における速度推移(a)と制動トルクTbの大きさを示す図(b)。
【図9】実施形態例の制御装置において,アクセルの戻し操作量が大きい場合における速度推移(a)と制動トルクTbの大きさを示す図(b)。
【図10】実施形態例の電動機制御装置のアクセル連動回生制御時の制御の流れを示すフローチャート。
【図11】従来の電動機制御装置の接続図。
【図12】従来の電動機制御装置において,アクセルの戻し操作量が大きい場合(a)と,アクセルの戻し操作量が小さい場合(b)において,制動トルクの大きさを変えた場合の速度推移の態様を示す図。
【図13】従来の電動機制御装置のアクセル連動回生制御時の制御の流れを示すフローチャート。
【符号の説明】
11...速度判定手段を構成する電圧検出手段,
12,13...電流検出手段,
14...アクセルセンサー,
30...界磁電流調整手段,
40...制御手段,
Claims (5)
- 車両を駆動する直流電動機の回転速度を検知又は算出する速度判定手段と,上記直流電動機の電機子電流及び界磁電流を検知する電流検出手段と,アクセルの操作量を検知するアクセルセンサーと,電機子電流の方向が切り換え可能であると共に電機子の電圧,電流の大きさを調整することができる電機子調整手段と,界磁電流の方向及び大きさを調整することのできる界磁電流調整手段と,アクセルの操作量が相対的に大きい操作量a1から少ない操作量a2に戻し操作された場合に上記直流電動機の電力を電源側に回生しつつ上記アクセルセンサーの出力信号に対応する電動機の目標回転速度となるよう制御する制御手段とを有しており,
上記制御手段は,上記回生制御時では略一定の制動トルクTbにより制動し,操作後の上記アクセルセンサーの出力信号a2に対応する電動機の目標回転速度voと回生制動開始時の回転速度vsとの差Δvsが大きいほど上記制動トルクTbを大きく設定して回生制動を行うよう構成されており,
かつ上記制御手段は,上記回生制動時においては,新しいアクセル操作量a2に対応した力行時の負荷トルクと回転数との関係において負荷トルク零時の回転数Nd2に対する電機子電圧の値Vdと,上記一定の制動トルクTbで制動して上記回転数Nd2となった場合における電機子電圧Vbの値とが,ほぼ等しい値となるように予め界磁電流の値Ifsを設定し,
界磁電流の値を上記Ifsの一定に保ちつつ,上記制動トルクTbとなるように電機子電流を制御し,電機子電圧が上記Vbとなった時点で,上記アクセル操作量a2に対応する力行制御に再び移行するよう電動機を制御することを特徴とする産業車両用直流分巻電動機の回生制御装置。 - 請求項1において前記速度判定手段は,電動機の電機子電圧と界磁電流の値から回転速度を算出する演算手段であることを特徴とする産業車両用直流分巻電動機の回生制御装置。
- 産業車両を駆動する直流分巻電動機の電機子電圧を検知する電圧検出手段と,上記直流電動機の電機子電流及び界磁電流を検知する電流検出手段と,アクセルの操作量またはディレクションスイッチのニュートラル状態を検知するアクセルセンサーと,電機子電流の方向が切り換え可能であると共に電機子の電圧,電流の大きさを調整することができる電機子調整手段と,界磁電流調整手段と,電機子電流の値と電機子電圧の値とから現在の負荷トルクを算定し上記アクセルセンサーの検知信号と上記負荷トルクとに対応した所定の回転数となるよう上記電機子調整手段及び界磁電流調整手段を操作する制御手段とを有しており,
上記制御手段は,アクセルが踏み込まれている力行時においては,上記負荷トルクとアクセル操作量a1とに対応する所定の回転数となるように,上記電機子電流を所定値以下に制限しつつ界磁電流と電機子電圧とを調整し,
一方,アクセルの操作量が相対的に大きい上記操作量a1から少ない操作量a2に戻し操作された場合には,新しいアクセル操作量a2に対応した負荷トルクと回転数の関係に移行するよう上記直流電動機の電力を電源側に回生しつつ所定の一定の制動トルクTbで制動し,かつ上記制動トルクTbの大きさは,操作後の上記アクセルセンサーの出力信号a2に対応する電動機の目標回転速度voと回生制動開始時の回転速度vsとの差Δvsが大きいほど大きく設定されており,
かつ前記制御手段は,前記回生制動から力行制御に再び移行する移行期においては,新しいアクセル操作量a2に対応した力行時の負荷トルクと回転数との関係において負荷トルク零時の回転数Nd2に対する電機子電圧の値Vdと,上記一定の制動トルクTbで制動して上記回転数Nd2となった場合における電機子電圧Vbの値とが,ほぼ等しい値となるように予め界磁電流の値Ifsを設定し,
界磁電流の値を上記Ifsの一定に保ちつつ,上記制動トルクTbとなるよう電機子電流を制御し,電機子電圧が上記Vbとなった時点で,上記アクセル操作量a2に対応する力行制御に移行するよう制御することを特徴とする産業車両用直流分巻電動機の制御装置。 - 請求項1から請求項3のいずれか1項において,前記電機子調整手段は,直流電動機の電機子と並列に接続され回生時に作動する第2スイッチング素子と,上記電機子及び上記第2スイッチング素子と直列に接続され力行時に作動する第1スイッチング素子と,上記第1,第2スイッチング素子と並列に逆極性に配置された整流素子とを備えており,
前記制御手段は,力行制御時においては,上記第2スイッチング素子をオフ状態とすると共に第1スイッチング素子をチョッパー制御し,回生制御時においては,上記第1スイッチング素子をオフ状態とすると共に第2スイッチング素子をチョッパー制御することを特徴とする産業車両用直流分巻電動機の制御装置。 - 請求項1から請求項4のいずれか1項において,前記界磁電流調整手段は,対向するブリッジ端子の橋絡部に直流電動機の界磁コイルを接続してなるスイッチング素子のブリッジ接続回路を備えており,前記制御手段は,上記ブリッジ回路において互いに対向する辺の一対のスイッチング素子の二つの組のいずれか一方の組を回転方向に対応してチョッパー制御すると共に他方の組をオフ状態とすることにより界磁電流の大きさ及び方向を制御することを特徴とする産業車両用直流分巻電動機の制御装置。
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