JP3647525B2 - 溶銑取鍋の内張り構造 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、不定形耐火物による溶銑取鍋の内張り構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
溶銑取鍋の内張りは、築炉作業の省力化などを目的として、他の溶融金属容器と同様、従来の煉瓦積みから不定形耐火物の適用が検討されている。そして、溶銑取鍋用の不定形耐火物として、特開平2−141445号あるいは特開平4−89362号にロー石−炭化珪素−炭素−アルミナ質の不定形耐火物が提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、不定形耐火物は従来の煉瓦積みに比べて耐用性に劣ることは否めない。また、近年、溶銑予備処理の定常化による操業条件の過酷化もあって、その寿命は十分なものではない。
【0004】
不定形耐火物による内張り寿命が十分でない原因に、スラグライン部がそれより下方のメタルライン部に比べて溶損速度が大きいことがある。使用時間の経過と共にメタルライン部とスラグライン部との溶損差は拡大し、スラグライン部の先行溶損が原因で内張り全体の寿命となる。
【0005】
そこで、不定形耐火物による継ぎ足し施工で内張りを補修することが行なわれている。しかし、スラグライン部に比べて溶損が少ないメタルライン部は自ずと補修厚みが薄くなり、使用時に剥離しやすい。しかも、メタルライン部の補修材がスラグライン部の補修材と一体的に施工されていることから、メタルライン部の補修材が剥離する際にスラグライン部の補修材をも牽引剥離させる。その結果、従来の継ぎ足し施工では、十分な補修効果が得られていない。
【0006】
本発明は、溶銑取鍋の不定形耐火物による内張り構造において、上記従来の問題を解決することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、化学成分値で耐火骨材全体のSiO2 成分を3〜60wt%としたAl2 O3 −SiO2 −SiC質不定形耐火物でスラグライン部以下を一体的に内張りした側壁において、前記の材質の範囲内で、側壁の高さ方向に対しスラグライン部より下層(以下、単に下層と称す)を、耐火骨材全体のSiO2 成分の割合をスラグライン部より3wt%以上多くし、さらに、前記のスラグライン部およびそれより下層ともに、耐火骨材100 wt%に対する外掛けで金属短繊維0. 5〜5wt%を含有することを特徴とした溶銑取鍋の内張り構造である。
【0008】
Al2 O3 −SiO2 −SiC質の不定形耐火物は、溶銑に対する耐食性および耐スポーリング性を兼ね備えた材質として知られている。耐火骨材のSiO2 は、耐スポーリング性付与の効果を持つが、反面、SiO2 量が多くなるに伴って耐食性が低下する。
【0009】
本発明者らはSiO2 成分が持つこの性質に注目し、側壁の高さ方向に対し、溶損速度が大きいスラグライン部に比べ、溶損速度が小さい下層のSiO2 成分の割合を多くし、側壁の内張り全体として溶損速度のバランスを取ることを考えた。その結果、内張り全体として溶損速度の差が少なくなり、継ぎ足し施工による補修において、剥離が生じ難い十分な施工厚みを備えた補修が可能となる。
【0010】
しかし、上下に異なる材質にしたことで、層間に熱膨張差などが原因と思われる亀裂が生じ、この亀裂への溶銑・スラグの侵入で層間部分の先行溶損を招く。そこで、本発明では、スラグライン部、下層ともに金属短繊維を添加し、層間亀裂の発生を防止してこの問題の解決を図った。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明に使用するAl2 O3 −SiO2 −SiC質の不定形耐火物は、基本的には従来材質と特に変わらない。
【0012】
耐火骨材としては、珪石・溶融シリカ・揮発シリカなどSiO2 質、ロ−石・シャモット・シリマナイト・アンダルサイト・ボ−キサイト・ばん土けつ岩などのSiO2 −Al2 O3 質またはAl2 O3 −SiO2 質、電融アルミナ・焼結アルミナなどのAl2 O3 質などから選ばれる耐火原料を使用し、Al2 O3 源およびSiO2 源とする。そして、SiO2 質、SiO2 −Al2 O3 質またはAl2 O3 −SiO2 質の耐火原料の材質あるいは配合割合の調整により、スラグライン部および下層のSiO2 成分量を調整する。
【0013】
SiO2 は耐スポーリング性付与の効果を持ち、スラグライン部、下層ともに耐火骨材中に3〜60wt%含むことが必要である。3wt%未満では耐スポーリング性に劣る。60wt%を超えると耐食性が低下する。
【0014】
スラグライン部に対して下層の耐火骨材全体のSiO2成分の割合を3wt%以上多くしたのは、3wt%未満では耐食性の差が顕著でなく、側壁の溶損速度のバランスがとれず、本発明の効果が得られないためである。
【0015】
SiC源としての炭化珪素は、耐スラグ性を付与する。耐火骨材に占める割合は、好ましくは5〜50wt%である。
【0016】
スラグライン部および/または下層の耐火骨材の一部に、さらに炭素を耐火骨材に対する内掛けで10wt%以下の範囲で含ませてもよい。炭素は、耐スポーリング性をさらに顕著なものとする。炭素の具体例は、りん状黒鉛、土状黒鉛、ピッチ、コークス、カーボンブラックなどから選ばれる1種以上である。
【0017】
金属短繊維は、スラグライン部と下層の層間亀裂の発生を防止する。また、仮に亀裂が発生してもその拡大を阻止することで、溶鋼・スラグが層間に侵入するのを防止する効果をもつ。その具体的な種類は、鋼またはステンレス鋼の短繊維が好ましい。また、耐酸化性の面から、Alを0.5〜5wt%含有したステンレス鋼短繊維がさらに好ましい。
【0018】
金属短繊維の形状は、例えばストレート型、波型、ねじれ型、ドックボーン型などが使用できる。断面形状は、例えば円、多角形、L字型、コの字型などである。また、寸法は例えば直径0.1〜2mm程度とし、長さは直径に合わせて3〜50mm程度が好ましい。
【0019】
金属短繊維の添加量は、0.5〜5wt%とする。0.5wt%未満では層間亀裂を防止する効果がなく、5wt%を超えると不定形耐火物の施工性が低下する。また、金属短繊維は、この添加量の範囲内であれば、スラグライン部と下層とで添加量を変えてもよい。
【0020】
結合剤、解こう剤などの添加については、従来の不定形耐火物と特に変わりない。結合剤は、例えば粘土、アルミナセメント、リン酸塩類、ケイ酸塩類、フェノ−ル樹脂などから選ばれる一種以上とし、耐火骨材に対する外掛けで結合剤の種類に合わせて0.5〜10wt%添加する。
【0021】
解こう剤は施工時の流動性を向上する効果を持つ。例えばヘキサメタリン酸ソ−ダ・トリポリリン酸ソ−ダ・ウルトラポリリン酸ソ−ダ・酸性ヘキサメタリン酸ソ−ダ・ホウ酸ソ−ダ・炭酸ソ−ダ・ピロリン酸ソ−ダなどの無機塩類、クエン酸ソ−ダ・酒石酸ソ−ダ・ポリアクリル酸ソ−ダ・スルホン酸ソ−ダなどの有機塩類から選ばれる一種以上が好ましい。その割合は、好ましくは耐火骨材に対する外掛けで0.01〜1wt%である。
【0022】
また、これ以外にも、本発明の効果を阻害しない範囲で有機短繊維、金属粉、酸化防止剤、発泡剤などを添加してもよい。
【0023】
以上よりなる不定形耐火物の施工は、施工水分を5〜10wt%程度添加し、混練後、中子を用いて流し込みによって行う。
【0024】
図1は、本発明による溶銑取鍋の内張り構造の断面を模式的に示したものである。側壁(1)の内張りを、スラグライン部(2)と下層(3)に区分けして施工する。敷部(4)の材質は、本発明においては何ら限定するものではなく、不定形耐火物、定形耐火物のいずれでもよい。
【0025】
スラグライン部(2)の容器の高さ方向に対する厚さは、貯銑量の違いによる湯面の推移のために、ある程度の幅をもって定める。一般的には側壁の高さ方向に対し、約3分の1から4分の1を占める。湯面の推移が小さい場合は、スラグライン部(2)の厚さを、さらに小さくしてもよい。スラグライン部の具体的寸法としては、例えば300t溶銑鍋では500〜1500mmが好ましい。
【0026】
図には示していないが、側壁(1)において、不定形耐火物によりなる内張りの背面に、定形耐火物などのパーマネント層を設けてもよい。また、スラグライン部(2)のうち、溶銑(5)・スラグ(6)に直接接触しない上端部は膨張吸収材などを設けてもよい。
【0027】
溶銑取鍋は転炉に溶銑を注入する前に、表面に浮遊するスラグを除去する作業が一般に行われている。その際、スラグを排出しやすくするために溶銑取鍋を傾けることから、スラグが下層(3)の上方に接触し、下層(3)のうちでも上方の溶損速度がそれ以下の部分より大きい。
【0028】
そこで、側壁の溶損速度のバランスをより均一化するため、下層(3)をさらに複数に区分し、下層(3)内においても、SiO2 成分の割合について、上部より下部を多くしてもよい。図2は、下層(3)を上部(31)と下部(32)に区分けした例を模式的に示したものである。
【0029】
本発明で使用する不定形耐火物は、炭化珪素あるいは炭素を配合している。このため、加熱乾燥あるいは昇温の際に炭化珪素あるいは炭素の酸化で耐火物組織がぜい弱化するという問題がある。
【0030】
本発明では、この酸化を防止するために、不定形耐火物を施工後、その表面に酸化防止剤を被覆することが好ましい。酸化防止剤の例としては、例えばヘキサメタリン酸ソ−ダなどのリン酸塩、珪酸ソ−ダ・珪酸カリウムなどの珪酸塩、硼珪酸ガラス・リン酸ガラスなどのガラス類、硼砂・B4 Cなどの硼化物含有物などから選ばれる1種以上に、必要に応じてアルミナ・ロー石・珪石などの耐火性無機質粉あるいは炭化珪素粉、炭素粉などを混合したものである。
【0031】
酸化防止剤の被覆は、例えば水で混練するなど被覆しやすい形態にした後、刷毛や鏝で塗り付けたり、吹付機を用いての吹付で行う。被覆厚さは、好ましくは1〜10mmである。加熱乾燥あるいは昇温時に酸化防止剤がガラス化し、内張りを大気と遮断することで酸化防止が図られる。
【0032】
【実施例】
以下に、本発明の実施例とその比較例を示す。表1は、各例で使用した耐火骨材の化学分析値である。表2および表3は、各例で使用した不定形耐火物の配合組成と試験結果である。
【0033】
【表1】
【0034】
【表2】
【0035】
【表3】
【0036】
表2に示した実施例1のスラグライン部(表にはSL部と表示)の材質について、ロー石と焼結アルミナの割合の変化によって、耐火骨材中のSiO2 成分の割合を変化させ、そのSiO2 成分と耐食性の関係を試験した結果が、図3のグラフである。SiO2 成分の割合増加に伴って耐食性が低下することが確認される。なお、ここで、耐食性の試験方法は、後述の試験法で行った。
【0037】
表2および表3における試験は、以下の方法で行った。
【0038】
耐食性;ドラム回転侵食試験法で行った。銑鉄と高炉スラグを重量比で1対1とした侵食剤を使用し、1500℃×3時間の侵食試験後、溶損寸法を測定し、実施例1の上層の寸法を1とした比で示す。
【0039】
実機試験;300t溶銑取鍋の側壁において、振動機を備えた中子を使用し、流し込み施工によって厚さ150mmの不定形耐火物の内張りを形成した。側壁の高さは5000mm、スラグライン部は、そのうち800mmとした。
【0040】
使用後、スラグライン部と下層の層間の先行溶損の有無と、各部の溶損速度を調査した。さらにこの溶銑取鍋を、内張りの最大損耗部の残寸が50mmとなるまで使用し、Al2 O3 −SiO2 −SiC質不定形耐火物を継ぎ足し施工による補修を実施した。補修後、再び使用し、補修材の剥離損傷の状況と補修後の耐用性を試験した。
【0041】
実施例1〜3はスラグライン部と下層の上下2層で内張りした例であり、実施例4は、さらに下層を高さ方向に上部と下部に2分割した例である。本発明実施例による内張り構造では、いずれも側壁の高さ方向に対して溶損速度がほぼ等しく、しかも層間の先行溶損も発生しなかった。その結果、補修材の剥離損傷がなく、補修後は従来構造に相当する比較例1に対し2倍以上の耐用性が得られた。これに対して、スラグライン部と下層の材質が同一の構造の比較例1は、下層の溶損速度がスラグライン部の1/2以下のため、下方の補修材の施工厚みが薄くなり、剥離損傷が発生し補修後の耐用性に劣る。比較例2はスラグライン部と下層不定形耐火物のSiO2 成分の差が本発明の限定量より小さく、耐食性に差が生じず不適である。比較例3は金属短繊維を添加していないため、使用中に層間の先行溶損が発生し好ましくない。比較例4は上層の不定形耐火物の金属短繊維添加量が本発明の限定範囲より多く、施工性に劣るために施工体組織が粗雑になり、耐食性に劣る。
【0042】
また、実施例3および実施例5の内張り構造において、リン酸ガラス50wt%および珪石粉50wt%よりなる酸化防止剤を水練りし、内張り表面に厚さ約3mmで被覆し乾燥・予熱後、不定形耐火物の表面状況を調べた。その結果、酸化が認められず、酸化防止剤の被覆効果が確認された。
【0043】
【発明の効果】
以上のように本発明の溶銑容器の内張り構造は、内張りの損傷速度の均一化を図ることにより、継ぎ足し施工による補修材の剥離損傷を防止し、することができる。その結果、補修による内張りの寿命延長が格段に向上し、補修工数の低減、溶銑鍋の稼動率向上などの効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の内張り構造を説明するための、溶銑取鍋の側壁断面を示す略図である。
【図2】本発明の内張り構造を説明するための、溶銑取鍋の側壁断面を示す略図である。
【図3】Al2 O3 −SiO2 −SiC質不定形材のSiO2 成分の量と耐食性の関係を示すグラフである。
【発明の属する技術分野】
本発明は、不定形耐火物による溶銑取鍋の内張り構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
溶銑取鍋の内張りは、築炉作業の省力化などを目的として、他の溶融金属容器と同様、従来の煉瓦積みから不定形耐火物の適用が検討されている。そして、溶銑取鍋用の不定形耐火物として、特開平2−141445号あるいは特開平4−89362号にロー石−炭化珪素−炭素−アルミナ質の不定形耐火物が提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、不定形耐火物は従来の煉瓦積みに比べて耐用性に劣ることは否めない。また、近年、溶銑予備処理の定常化による操業条件の過酷化もあって、その寿命は十分なものではない。
【0004】
不定形耐火物による内張り寿命が十分でない原因に、スラグライン部がそれより下方のメタルライン部に比べて溶損速度が大きいことがある。使用時間の経過と共にメタルライン部とスラグライン部との溶損差は拡大し、スラグライン部の先行溶損が原因で内張り全体の寿命となる。
【0005】
そこで、不定形耐火物による継ぎ足し施工で内張りを補修することが行なわれている。しかし、スラグライン部に比べて溶損が少ないメタルライン部は自ずと補修厚みが薄くなり、使用時に剥離しやすい。しかも、メタルライン部の補修材がスラグライン部の補修材と一体的に施工されていることから、メタルライン部の補修材が剥離する際にスラグライン部の補修材をも牽引剥離させる。その結果、従来の継ぎ足し施工では、十分な補修効果が得られていない。
【0006】
本発明は、溶銑取鍋の不定形耐火物による内張り構造において、上記従来の問題を解決することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、化学成分値で耐火骨材全体のSiO2 成分を3〜60wt%としたAl2 O3 −SiO2 −SiC質不定形耐火物でスラグライン部以下を一体的に内張りした側壁において、前記の材質の範囲内で、側壁の高さ方向に対しスラグライン部より下層(以下、単に下層と称す)を、耐火骨材全体のSiO2 成分の割合をスラグライン部より3wt%以上多くし、さらに、前記のスラグライン部およびそれより下層ともに、耐火骨材100 wt%に対する外掛けで金属短繊維0. 5〜5wt%を含有することを特徴とした溶銑取鍋の内張り構造である。
【0008】
Al2 O3 −SiO2 −SiC質の不定形耐火物は、溶銑に対する耐食性および耐スポーリング性を兼ね備えた材質として知られている。耐火骨材のSiO2 は、耐スポーリング性付与の効果を持つが、反面、SiO2 量が多くなるに伴って耐食性が低下する。
【0009】
本発明者らはSiO2 成分が持つこの性質に注目し、側壁の高さ方向に対し、溶損速度が大きいスラグライン部に比べ、溶損速度が小さい下層のSiO2 成分の割合を多くし、側壁の内張り全体として溶損速度のバランスを取ることを考えた。その結果、内張り全体として溶損速度の差が少なくなり、継ぎ足し施工による補修において、剥離が生じ難い十分な施工厚みを備えた補修が可能となる。
【0010】
しかし、上下に異なる材質にしたことで、層間に熱膨張差などが原因と思われる亀裂が生じ、この亀裂への溶銑・スラグの侵入で層間部分の先行溶損を招く。そこで、本発明では、スラグライン部、下層ともに金属短繊維を添加し、層間亀裂の発生を防止してこの問題の解決を図った。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明に使用するAl2 O3 −SiO2 −SiC質の不定形耐火物は、基本的には従来材質と特に変わらない。
【0012】
耐火骨材としては、珪石・溶融シリカ・揮発シリカなどSiO2 質、ロ−石・シャモット・シリマナイト・アンダルサイト・ボ−キサイト・ばん土けつ岩などのSiO2 −Al2 O3 質またはAl2 O3 −SiO2 質、電融アルミナ・焼結アルミナなどのAl2 O3 質などから選ばれる耐火原料を使用し、Al2 O3 源およびSiO2 源とする。そして、SiO2 質、SiO2 −Al2 O3 質またはAl2 O3 −SiO2 質の耐火原料の材質あるいは配合割合の調整により、スラグライン部および下層のSiO2 成分量を調整する。
【0013】
SiO2 は耐スポーリング性付与の効果を持ち、スラグライン部、下層ともに耐火骨材中に3〜60wt%含むことが必要である。3wt%未満では耐スポーリング性に劣る。60wt%を超えると耐食性が低下する。
【0014】
スラグライン部に対して下層の耐火骨材全体のSiO2成分の割合を3wt%以上多くしたのは、3wt%未満では耐食性の差が顕著でなく、側壁の溶損速度のバランスがとれず、本発明の効果が得られないためである。
【0015】
SiC源としての炭化珪素は、耐スラグ性を付与する。耐火骨材に占める割合は、好ましくは5〜50wt%である。
【0016】
スラグライン部および/または下層の耐火骨材の一部に、さらに炭素を耐火骨材に対する内掛けで10wt%以下の範囲で含ませてもよい。炭素は、耐スポーリング性をさらに顕著なものとする。炭素の具体例は、りん状黒鉛、土状黒鉛、ピッチ、コークス、カーボンブラックなどから選ばれる1種以上である。
【0017】
金属短繊維は、スラグライン部と下層の層間亀裂の発生を防止する。また、仮に亀裂が発生してもその拡大を阻止することで、溶鋼・スラグが層間に侵入するのを防止する効果をもつ。その具体的な種類は、鋼またはステンレス鋼の短繊維が好ましい。また、耐酸化性の面から、Alを0.5〜5wt%含有したステンレス鋼短繊維がさらに好ましい。
【0018】
金属短繊維の形状は、例えばストレート型、波型、ねじれ型、ドックボーン型などが使用できる。断面形状は、例えば円、多角形、L字型、コの字型などである。また、寸法は例えば直径0.1〜2mm程度とし、長さは直径に合わせて3〜50mm程度が好ましい。
【0019】
金属短繊維の添加量は、0.5〜5wt%とする。0.5wt%未満では層間亀裂を防止する効果がなく、5wt%を超えると不定形耐火物の施工性が低下する。また、金属短繊維は、この添加量の範囲内であれば、スラグライン部と下層とで添加量を変えてもよい。
【0020】
結合剤、解こう剤などの添加については、従来の不定形耐火物と特に変わりない。結合剤は、例えば粘土、アルミナセメント、リン酸塩類、ケイ酸塩類、フェノ−ル樹脂などから選ばれる一種以上とし、耐火骨材に対する外掛けで結合剤の種類に合わせて0.5〜10wt%添加する。
【0021】
解こう剤は施工時の流動性を向上する効果を持つ。例えばヘキサメタリン酸ソ−ダ・トリポリリン酸ソ−ダ・ウルトラポリリン酸ソ−ダ・酸性ヘキサメタリン酸ソ−ダ・ホウ酸ソ−ダ・炭酸ソ−ダ・ピロリン酸ソ−ダなどの無機塩類、クエン酸ソ−ダ・酒石酸ソ−ダ・ポリアクリル酸ソ−ダ・スルホン酸ソ−ダなどの有機塩類から選ばれる一種以上が好ましい。その割合は、好ましくは耐火骨材に対する外掛けで0.01〜1wt%である。
【0022】
また、これ以外にも、本発明の効果を阻害しない範囲で有機短繊維、金属粉、酸化防止剤、発泡剤などを添加してもよい。
【0023】
以上よりなる不定形耐火物の施工は、施工水分を5〜10wt%程度添加し、混練後、中子を用いて流し込みによって行う。
【0024】
図1は、本発明による溶銑取鍋の内張り構造の断面を模式的に示したものである。側壁(1)の内張りを、スラグライン部(2)と下層(3)に区分けして施工する。敷部(4)の材質は、本発明においては何ら限定するものではなく、不定形耐火物、定形耐火物のいずれでもよい。
【0025】
スラグライン部(2)の容器の高さ方向に対する厚さは、貯銑量の違いによる湯面の推移のために、ある程度の幅をもって定める。一般的には側壁の高さ方向に対し、約3分の1から4分の1を占める。湯面の推移が小さい場合は、スラグライン部(2)の厚さを、さらに小さくしてもよい。スラグライン部の具体的寸法としては、例えば300t溶銑鍋では500〜1500mmが好ましい。
【0026】
図には示していないが、側壁(1)において、不定形耐火物によりなる内張りの背面に、定形耐火物などのパーマネント層を設けてもよい。また、スラグライン部(2)のうち、溶銑(5)・スラグ(6)に直接接触しない上端部は膨張吸収材などを設けてもよい。
【0027】
溶銑取鍋は転炉に溶銑を注入する前に、表面に浮遊するスラグを除去する作業が一般に行われている。その際、スラグを排出しやすくするために溶銑取鍋を傾けることから、スラグが下層(3)の上方に接触し、下層(3)のうちでも上方の溶損速度がそれ以下の部分より大きい。
【0028】
そこで、側壁の溶損速度のバランスをより均一化するため、下層(3)をさらに複数に区分し、下層(3)内においても、SiO2 成分の割合について、上部より下部を多くしてもよい。図2は、下層(3)を上部(31)と下部(32)に区分けした例を模式的に示したものである。
【0029】
本発明で使用する不定形耐火物は、炭化珪素あるいは炭素を配合している。このため、加熱乾燥あるいは昇温の際に炭化珪素あるいは炭素の酸化で耐火物組織がぜい弱化するという問題がある。
【0030】
本発明では、この酸化を防止するために、不定形耐火物を施工後、その表面に酸化防止剤を被覆することが好ましい。酸化防止剤の例としては、例えばヘキサメタリン酸ソ−ダなどのリン酸塩、珪酸ソ−ダ・珪酸カリウムなどの珪酸塩、硼珪酸ガラス・リン酸ガラスなどのガラス類、硼砂・B4 Cなどの硼化物含有物などから選ばれる1種以上に、必要に応じてアルミナ・ロー石・珪石などの耐火性無機質粉あるいは炭化珪素粉、炭素粉などを混合したものである。
【0031】
酸化防止剤の被覆は、例えば水で混練するなど被覆しやすい形態にした後、刷毛や鏝で塗り付けたり、吹付機を用いての吹付で行う。被覆厚さは、好ましくは1〜10mmである。加熱乾燥あるいは昇温時に酸化防止剤がガラス化し、内張りを大気と遮断することで酸化防止が図られる。
【0032】
【実施例】
以下に、本発明の実施例とその比較例を示す。表1は、各例で使用した耐火骨材の化学分析値である。表2および表3は、各例で使用した不定形耐火物の配合組成と試験結果である。
【0033】
【表1】
【0034】
【表2】
【0035】
【表3】
【0036】
表2に示した実施例1のスラグライン部(表にはSL部と表示)の材質について、ロー石と焼結アルミナの割合の変化によって、耐火骨材中のSiO2 成分の割合を変化させ、そのSiO2 成分と耐食性の関係を試験した結果が、図3のグラフである。SiO2 成分の割合増加に伴って耐食性が低下することが確認される。なお、ここで、耐食性の試験方法は、後述の試験法で行った。
【0037】
表2および表3における試験は、以下の方法で行った。
【0038】
耐食性;ドラム回転侵食試験法で行った。銑鉄と高炉スラグを重量比で1対1とした侵食剤を使用し、1500℃×3時間の侵食試験後、溶損寸法を測定し、実施例1の上層の寸法を1とした比で示す。
【0039】
実機試験;300t溶銑取鍋の側壁において、振動機を備えた中子を使用し、流し込み施工によって厚さ150mmの不定形耐火物の内張りを形成した。側壁の高さは5000mm、スラグライン部は、そのうち800mmとした。
【0040】
使用後、スラグライン部と下層の層間の先行溶損の有無と、各部の溶損速度を調査した。さらにこの溶銑取鍋を、内張りの最大損耗部の残寸が50mmとなるまで使用し、Al2 O3 −SiO2 −SiC質不定形耐火物を継ぎ足し施工による補修を実施した。補修後、再び使用し、補修材の剥離損傷の状況と補修後の耐用性を試験した。
【0041】
実施例1〜3はスラグライン部と下層の上下2層で内張りした例であり、実施例4は、さらに下層を高さ方向に上部と下部に2分割した例である。本発明実施例による内張り構造では、いずれも側壁の高さ方向に対して溶損速度がほぼ等しく、しかも層間の先行溶損も発生しなかった。その結果、補修材の剥離損傷がなく、補修後は従来構造に相当する比較例1に対し2倍以上の耐用性が得られた。これに対して、スラグライン部と下層の材質が同一の構造の比較例1は、下層の溶損速度がスラグライン部の1/2以下のため、下方の補修材の施工厚みが薄くなり、剥離損傷が発生し補修後の耐用性に劣る。比較例2はスラグライン部と下層不定形耐火物のSiO2 成分の差が本発明の限定量より小さく、耐食性に差が生じず不適である。比較例3は金属短繊維を添加していないため、使用中に層間の先行溶損が発生し好ましくない。比較例4は上層の不定形耐火物の金属短繊維添加量が本発明の限定範囲より多く、施工性に劣るために施工体組織が粗雑になり、耐食性に劣る。
【0042】
また、実施例3および実施例5の内張り構造において、リン酸ガラス50wt%および珪石粉50wt%よりなる酸化防止剤を水練りし、内張り表面に厚さ約3mmで被覆し乾燥・予熱後、不定形耐火物の表面状況を調べた。その結果、酸化が認められず、酸化防止剤の被覆効果が確認された。
【0043】
【発明の効果】
以上のように本発明の溶銑容器の内張り構造は、内張りの損傷速度の均一化を図ることにより、継ぎ足し施工による補修材の剥離損傷を防止し、することができる。その結果、補修による内張りの寿命延長が格段に向上し、補修工数の低減、溶銑鍋の稼動率向上などの効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の内張り構造を説明するための、溶銑取鍋の側壁断面を示す略図である。
【図2】本発明の内張り構造を説明するための、溶銑取鍋の側壁断面を示す略図である。
【図3】Al2 O3 −SiO2 −SiC質不定形材のSiO2 成分の量と耐食性の関係を示すグラフである。
Claims (4)
- 化学成分値で耐火骨材全体のSiO2 成分を3〜60wt%としたAl2 O3 −SiO2 −SiC質不定形耐火物でスラグライン部以下を一体的に内張りした側壁において、前記の材質の範囲内で、側壁の高さ方向に対しスラグライン部より下層を、耐火骨材全体のSiO2 成分の割合をスラグライン部より3wt%以上多くし、さらに、前記のスラグライン部およびそれより下層ともに、耐火骨材100 wt%に対する外掛けで金属短繊維0. 5〜5wt%を含有することを特徴とした溶銑取鍋の内張り構造。
- 下層を上部と下部に区分けし、化学成分値で耐火骨材全体のSiO2 成分の割合を、上部より下部の方を多くした請求項1記載の溶銑取鍋の内張り構造。
- スラグライン部および/または下層の不定形耐火物の耐火骨材に、炭素質原料を内掛け10wt%以下含む請求項1または2記載の溶銑取鍋の内張り構造。
- 内張り表面に、酸化防止剤を被覆した請求項1、2または3記載の溶銑取鍋の内張り構造。
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