JP3647313B2 - 電解質 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電池、センサデバイス等エレクトロニクス分野に用いる新規な電解質に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
1973年にWrightらによって、ポリエチレンオキシド(PEO)とアルカリ金属塩の錯体のイオン伝導特性が報告され、1979年にArmandらにより電池に用いる電解質の可能性が示されたことにより、固体電解質の研究が世界的に広まった。固体電解質は形状が液体ではないので、部外への漏れがなく、耐熱性、信頼性、安全性、デバイスの小型化に対して液状電解質に比べ有利である。また、有機物は無機物に比べ柔軟である為、加工し易いという利点がある。
【0003】
一般に電解質のイオン伝導率はキャリア密度と電荷、イオン移動度の積で表わされる為にイオンを解離する為の高い極性と解離したイオンを移動させる為の低い粘性が必要とされる。その観点ではPEOは固体電解質として十分な特性を備えているとは言えない。そもそもPEOのイオン輸送機構はドナー性極性基部分ヘの配位により解離されたイオンが熱によるセグメント運動により次々に手渡される配位子交換によるものである。その為に温度依存性を受けやすい。また、キャリア密度を増加させる為に金属イオンを多く溶解させると結晶化が起こり、逆にイオン移動度が低下してしまう。この結晶化を防ぐ為にウレタン架橋によるPEO(M.Watanabe et al,“Solid State Ionics”,28〜30,911,1988),更には低温でのイオン移動度を向上させる為に架橋部分に側鎖を導入したPEO(“第40回高分子討論会予稿集”,3766,1991)も開発されている。また最近ではPEOの末端に塩を導入した溶融塩型のPEO(K.Ito et al.,“Solid State Ionics”,86〜88,325,1996、K.Ito et al.,“Electorochim.Acta”,42,1561,1997)も開発されている。しかしながら現状ではまだイオン伝導率が十分に得られない為に高誘電率有機溶媒と低粘度溶媒を混合した電解液あるいは電解液を有機高分子で固定化したゲル電解質が主流となっている。また、固体電界質を電池デバイスとして利用する場合、イオン輸送効率だけではなく電極との接触面において電気化学反応の効率性が問題となっている。
【0004】
一方、ディスコティック液晶相は、1977年にS.Chandrasekharらにより発見された(“Pramana”9,471(1977))液晶相である。例えば、同著者らによって、“Discotic Liquid Crystals”と題して“Rep.Prog.Phys.”53(1990)57に、あるいは竹中俊介によって“ディスコチック液晶分子のデザインと合成”と題して日本化学会編“季刊化学総説”22巻60頁に解説されているように、ディスク(円盤)状のコアに比較的長い側鎖が複数個結合した化合物にみられる。
【0005】
その化合物の種類は主にコアの構造によって類別することができ、6置換ベンゼンおよび3置換ベンゼンの誘導体、フタロシアニンおよびポルフィリンの誘導体、トリフェニレン、トルクセン、ピリリウムの各誘導体、トリベンゾシクロノネン誘導体、アザクラウン誘導体、シクロヘキサン誘導体等があげられる。
【0006】
ディスコティック液晶の構造的な特徴から、過去、デバイスヘの応用を示唆するいくつかの報告がなされている。フタロシアニンやトリフェニレンのような共役パイ電子を有する系においては電子(またはホール)チャネルの応用(Piechocki et al.:“J.Am.Chem.Soc.”1982,104,pp5245)、コアがアザクラウンのような環状の場合には、中心の空隙部を選択的に分子が通過する分子チャネルの応用(“J.Chem.Soc.,Chem.Commun.”,1985,1794、“J.Chem.Soc.,Chem.Commun.”,1995,117,9957)等である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、この様な従来技術に鑑みてなされたものであり、少なくとも1種のディスコチック性メソーゲン基と、該ディスコチック性メソーゲン基と結合している2個以上のエーテル結合を含む側鎖を有する化合物と金属塩を含有する電解質であって、イオン伝導性に異方性がある電解質を提供する事を目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明は、ディスコチック性メソーゲン基及び該ディスコチック性メソーゲン基と結合した下記の式(a)〜(c)のいずれかの構造から選ばれた2個以上の側鎖を有する化合物に金属塩を含有してなる電解質であって、前記電解質は前記ディスコチック性メソーゲン基がカラムナー構造をとるディスコチック液晶相を有し、該ディスコチック液晶相においてイオン伝導性が前記カラムナー構造に平行な方向の異方性を示すことを特徴とする電解質である。
(a) O(CH 2 CH 2 O) m R 11
(b) O(CH 2 CH 2 CH 2 O) m R 11
(c) O(CHCH 3 CH 2 O) m R 11
(式中、mは1〜20の整数、R 11 は炭素原子数が1〜20である直鎖状または分岐状のアルキル基を示す。但し、該アルキル基中の水素原子はフッ素原子に置き換わっていてもよく、また1つ以上のメチレン基は、O、CO、−CH=CH−、−C≡C−またはエポキシ基に置き換わっていてもよい。)
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の電解質は、少なくとも1種のディスコチック性メソーゲン基と、該ディスコチック性メソーゲン基と結合している2個以上のエーテル結合を含む側鎖を有する化合物と金属塩を含有し、イオン伝導性に異方性があることを特徴とする。
【0010】
前記エーテル結合を含む側鎖においては極性、化学的安定性の観点から2個以上のエーテル結合を含む側鎖が好ましいが、更には2つ以上のOCH2CH2セグメントあるいはOCH2CH2CH2セグメントから構成され、末端部分に炭素原子数1〜20の分岐状または直鎖状のアルキル基(但し、該アルキル基中の水素原子はフッ素原子に置き換わっていてもよく、また1つ以上のメチレン基は、O、CO、−CH=CH−、−C≡C−またはエポキシ基に置き換わっていてもよい。)がついた側鎖が好ましい。
【0011】
また、該2個以上のエーテル結合を含む側鎖の具体的な構造は、下記の一般式(a)〜(c)で示されるものが好ましい。
【0012】
(a) O(CH2CH2O)mR11
(b) O(CH2CH2CH2O)mR11
(c) O(CHCH3CH2O)mR11
式中、mは1〜20の整数、R11は炭素原子数が1〜20である直鎖状または分岐状のアルキル基を示す。但し、該アルキル基中の水素原子はフッ素原子に置き換わっていてもよく、また1つ以上のメチレン基は、O、CO、−CH=CH−、−C≡C−またはエポキシ基に置き換わっていてもよい。
【0013】
前記ディスコチック性メソーゲン基としては、液晶性、平面性、化学的安定性の観点から、3または6置換ベンゼン環、トリフェニレン環、トルクセン環、フタロシアニン環、ポルフィリン環、トリベンゾシクロノネン環、テトラベンゾシクロドデシレン環から選ばれる基が好ましい。
【0014】
前記金属塩はアルカリ金属塩が好ましく、例えばMClO4 ,MBF4 ,MPF6 ,MCF3 SO2 (MはLi,Na,Kを示す。)といったアルカリ金属塩の他、CuSO4 ,Ni(NO3 )2 ,Ni(BF4 )2 等の金属塩を含有していることが好ましい。特に好ましくは、LiClO4 ,LiBF4 ,LiPF6 ,LiCF3 SO2 等のリチウム金属塩である。
【0015】
また、本発明の電解質に含有される金属塩の含有量は、通常0.01〜50重量%、好ましくは0.1〜30重量%が望ましい。
【0016】
また、本発明の電解質は有機溶剤を含有してもよい。好ましくは極性有機溶剤であるが、例えばエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチルエチルケトン、メチルプロピオネート、ジメトキシエタン、グリコール類である。
【0017】
本発明の電解質は液晶相を有していることが好ましいが、特にディスコチックカラムナー液晶相が好ましい。
【0018】
また、本発明の電解質は重合化して固定化することが好ましい。この場合少なくとも1種のディスコチック性メソーゲン基と2個以上のエーテル結合を含む側鎖からなる化合物の1個乃至8個の側鎖の末端にアクリル基、メタクリル基、エポキシ基、ビニル基等の重合性基をつけたものを重合する方法と他の重合性化合物と共重合する方法が好ましい。他の重合性化合物は、特に制限はないが、アクリル酸誘導体、メタクリル酸誘導体、ビニル誘導体、スチレン誘導体、ウレタン誘導体、エポキシ誘導体等が挙げられる。
【0019】
また、本発明の電解質に含有される化合物は、好ましくは下記一般式(I)で示される化合物である。
【0020】
【化1】
【0021】
一般式(I)において、R1,R2,R3,R4,R5,R6はそれぞれ独立に2つ以上のOCH2CH2セグメントあるいはOCH2CH2CH2セグメントから構成され、末端部分に炭素原子数1〜20の分岐状または直鎖状のアルキル基がついた側鎖を示す。但し、該アルキル基中の水素原子はフッ素原子に置き換わっていてもよく、また1つ以上のメチレン基はO、CO、−CH=CH−、−C≡C−またはエポキシ基に置き換わっていてもよい。
【0022】
前記一般式(I)において、好ましくはR1,R2,R3,R4,R5,R6がそれぞれ独立に(OCH2CH2)nOR7または(OCH2CH2CH2)nOR7である。式中nは1〜20の整数であり、R7は炭素原子数4〜20の分岐状または直鎖状のアルキル基を示す。該アルキル基中の水素原子はフッ素原子に置き換わっていてもよく、また1つ以上のメチレンはO、CO、−CH=CH−、−C≡C−またはエポキシ基に置き換わっていてもよい。
【0023】
以下、本発明の電解質に用いられる化合物の具体的な構造式を表1〜9に示す。但し、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0024】
【表1】
【0025】
【表2】
【0026】
【表3】
【0027】
【表4】
【0028】
【表5】
【0029】
【表6】
【0030】
【表7】
【0031】
【表8】
【0032】
【表9】
【0033】
次に本発明の電解質のイオン輸送のメカニズムを説明する。
図1はポリエチレンオキシド(PEO)のイオン輸送機構を示す模式図である。これまでのイオン輸送機構は、図1に示すように、ポリエチレンオキシド(PEO)のエチレンオキシドセグメントが絡み合った状態の中を、イオンは伝播される為に直線的に移動できる訳ではなくかなり遠回りをしながら移動すると思われる。また、高分子鎖のセグメント運動により伝播される為に、低温においてその運動性が損なわれると極端に移動度が低下してしまう。
【0034】
本発明の電解質によるイオン輸送機構は、図2に示す様に、ディスコチック液晶の自己集積性を利用することでイオンと相互作用する2個以上のエーテル結合を含む側鎖の秩序度を増大させ、イオンの移動するチャネルを形成させるものである。PEOの様に絡み合ったエチレンオキシドセグメントではなく、液晶状態により直線的に延びたエチレンオキシドセグメントの中を、イオンはほぼ直線的に移動すると思われる。
【0035】
また、本発明の電解質において、別なイオン輸送機構として、図3に示すように、擬似的なクラウンエーテル環を形成することで、側鎖のセグメント運動だけではなく自由体積空間をホッピングして伝播する機構も存在すると思われ、その中でイオンは何の障害も受けずに直線的に移動することができる。セグメント運動に寄らないことは温度依存性の小さいイオン輸送機構の可能性も示唆される。更に、本発明のイオン輸送機構はイオン移動に異方性を持つ。即ち、図3に示した様に、カラムナー構造に平行な方向(Y方向)と垂直な方向(X方向)のイオン移動は異なり、チャネルが形成されているY方向の移動度が高くなる。
【0036】
これまでクラウンエーテル環をイオン輸送のチャネルとして利用することは前記した文献の他、特開平10−120730号公報において知られている。しかしながら、クラウンエーテル環はディスコチック性メソーゲン基として用いるには平面性及び剛直性に欠け、側鎖として用いるには柔軟性に欠ける。その為にクラウンエーテル環を含む化合物は液晶性を発現しにくい。実際に特開平10−120730号公報においても、その化合物は液晶性を示さず、磁場配向によりカラムナー構造を形成している。
【0037】
本発明の電解質に用いられる化合物は側鎖に環構造を持たない為に側鎖の柔軟性が損なわれず、液晶性に非常に有利である為に磁場配向等の処理を必要としない。また、そもそもクラウンエーテルはイオンを包接するものとして開発されたものであり、イオンの包接能力にはクラウンエーテル環のサイズが大きく関与している。従って適切なサイズの環を選ぶことで容易にイオンをトラップすることができるが、反対にイオンを放す場合には大きなエネルギーが必要となり、イオン移動の障害になる可能性が高い。それに対し、2個以上のエーテル結合を含む側鎖は閉環されていない擬似的なクラウンエーテル環である為に環のサイズを容易に変化しうる。その為にトラップしたイオンの放出も容易であると思われる。
【0038】
以上説明した様に本発明の電解質はイオンをスムーズに移動させる為にディスコチック性メソーゲン基に2個以上のエーテル結合を含む側鎖を結合させることで閉環されていない擬似的なクラウンエーテル環を形成し、またイオン伝導性に異方性を持たせる為にディスコチック液晶性を利用してイオンチャネルを形成したものである。
【0039】
次に、本発明の電解質の応用例として、二次電池について説明する。
図4は二次電池の模式的な構成例である。41、42はそれぞれ負、正の電極である。43が電解質層であって、この層を通路として特定極性のイオンが負電極から正電極へ、あるいは正電極から負電極へ伝達される。上記負および正の電極はイオンの放出と吸収の機能、外部デバイスとの連携機能(例えば電子伝導性機能)、機械的な支持機能等、多義に渉る機能が要求されることから通常機能分離された複数の部材からなる複合体となる場合が多い。
【0040】
負電極41は外部回路との電子的接続機能を兼ねた銅、アルミニウム、金、白金などの電子伝導性支持体411に負極活物質412をコーティングしたものが用いられる。或いは支持体としての機能をかねた負極活物質を用いることもできる。負極活物質材料としてはLiイオン、Naイオン、Kイオン等のアルカリイオン、アルカリ土類イオン、水素イオン等のカチオンを放出する能力を有する材料として、金属材料のなかからリチウム金属箔、リチウム−アルミニウム合金等が、高分子材料のなかから好ましくはn型にドープされたポリアセチレン、ポリチオフェン、ポリp−フェニレン、ポリアセン等およびその誘導体が、また炭素系材料のなかからグラファイト(黒鉛)、ピッチ、コークス、有機高分子の焼結体、あるいはこれらの材料と有機高分子の複合体が適宜選択的に用いられる。
【0041】
正電極42は、外部回路との電子的接続機能を兼ねた銅、アルミニウム、金、白金などの電子伝導性支持体421に正極活物質422をコーティングしたものが用いられる。或いは支持体としての機能をかねた正極活物質を用いることもできる。正極活物質材料としては無機材料のなかからコバルト、バナジウム、チタン、モリブデン、鉄、マンガンなど遷移金属のカルコゲン化合物及び酸化物、さらにこれらとリチウムの複合体が、炭素系材料のなかからグラファイト、弗化カーボンなど一連の層状化合物、あるいはこれらの材料と有機高分子の複合体が、高分子材料のなかから好ましくはp型またはn型にドープされたポリアセチレン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリp−フェニレン、ポリアセン、ポリフタロシアニン、ポリピリジン等、およびこれらの誘導体が適宜選択的に用いられる。
【0042】
【実施例】
以下、実施例により本発明について更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0043】
実施例1
2,3,6,7,10,11−ヘキサ(2−ヘキシルオキシエチルオキシ)トリフェニレン(例示化合物T−6)の製造
(1)p−トルエンスルホン酸2−ヘキシルオキシエチルの製造
反応容器に2−ヘキシルオキシエタノール3.29g(22.5mmol)とピリジン5.33g(67.5mmol)を入れ、それに氷浴中、p−トルエンスルホン酸クロリド4.72g(24.7mmol)を加え、1時間撹拌した後、室温で更に3時間撹拌した。反応終了後、3N−HClを加え酸性とした後、トルエンで2回抽出した。抽出液を水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムを加え乾燥した。溶媒を留去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離溶媒:トルエン/酢酸エチル=10/1)により精製し、p−トルエンスルホン酸2−ヘキシルオキシエチル6.45g(21.5mmol)を得た。収率95%
【0044】
(2) 2,3,6,7,10,11−ヘキサ(2−ヘキシルオキシエチルオキシ)トリフェニレンの製造
反応容器に乾燥N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)15mlと水素化ナトリウム(60% in oil(鉱油))0.77g(19.3mmol)を入れ、それに水浴中、2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレン0.92g(2.84mmol)を加え1時間撹拌した。その後、p−トルエンスルホン酸2−ヘキシルオキシエチル6.3g(21.0mmol)と乾燥DMF5mlの混合液を滴下し、80℃で5時間撹拌した。反応終了後、水を加えトルエンで2回抽出した。抽出液を水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムを加え乾燥した。溶媒を留去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離溶媒:トルエン/酢酸エチル=5/1)を2回行い精製し、2,3,6,7,10,11−ヘキサ(2−ヘキシルオキシエチルオキシ)トリフェニレン1.15g(1.0mmol)を得た。収率35%
【0045】
得られた化合物のDSCによる相転移温度を以下に示す。
昇温過程
Cry(−24℃)Xl(17℃)X2(29℃)Dh(84℃)Iso
冷却過程
Iso(81℃)Dh(16℃)X2(5℃)Xl(<−50℃)Cry
Cry:結晶相、X1,X2:未同定の相、Dh:ディスコチックカラムナー相、Iso:等方相
【0046】
次に合成した2,3,6,7,10,11−ヘキサ(2−ヘキシルオキシエチルオキシ)トリフェニレン65.6mg(0.06mmol)に乾燥ジクロロメタンlmlを加え、撹拌し完全に溶解させた。それに過塩素酸リチウム0.64mg(0.006mmol)と乾燥エタノールlmlを加え2時間撹拌した。完全に溶解していることを確認した後、溶媒を留去し、減圧乾燥してリチウム塩10mol%を含有する電解質Aを得た。
【0047】
得られた電解質Aの相転移温度を示す。
昇温過程
Cry(−3℃)X1(19℃)X2(27℃)Dh(86℃)Iso
冷却過程
Iso(84℃)Dh(7℃)X2(−18℃)X1 (<−50℃)Cry
Cry:結晶相、X1,X2:未同定の相、Dh:ディスコチックカラムナー相、Iso:等方相
【0048】
実施例2
実施例1で合成した2,3,6,7,10,11−ヘキサ(2−ヘキシルオキシエチルオキシ)トリフェニレン65.6mg(0.06mmol)に乾燥ジクロロメタンlmlを加え、撹拌し完全に溶解させた。それに過塩素酸リチウム3.19mg(0.03mmol)と乾燥エタノールlmlを加え2時間撹拌した。完全に溶解していることを確認した後、溶媒を留去し、減圧乾燥してリチウム塩50mol%を含有する電解質Bを得た。
【0049】
得られた電解質Bの相転移温度を示す。
昇温過程
Cry(−2℃)X1(19℃)X2(27℃)Dh(87℃)Iso
冷却過程
Iso(85℃)Dh(7℃)X2(−16℃)X1(<−50℃)Cry
Cry:結晶相、X1,X2:未同定の相、Dh:ディスコチックカラムナー相、Iso:等方相
【0050】
実施例3
2,3,6,7,10,11−ヘキサ(1,4,7−トリオキサトリデシル)トリフェニレン(例示化合物T−16)の製造
(1)p−トルエンスルホン酸1,4,7−トリオキサトリデシルの製造
反応容器に2−(2−ヘキシルオキシエチルオキシ)エタノール8.55g(45.0mmol)とピリジン10.7g(135mmol)を入れ、それに氷浴中、p−トルエンスルホン酸クロリド9.43g(49.5mmol)を加え、1時間撹拌した後、室温で更に2時間撹拌した。反応終了後、3N−HClを加え酸性とした後、トルエンで2回抽出した。抽出液を水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムを加え乾燥した。溶媒を留去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離溶媒:トルエン/酢酸エチル=15/1)により精製し、p−トルエンスルホン酸1,4,7−トリオキサトリデシル13.24g(38.5mmol)を得た。収率86%
【0051】
(2)2,3,6,7,10,11−ヘキサ(1,4,7−トリオキサトリデシル)トリフェニレンの製造
反応容器に乾燥DMFl5mlと水素化ナトリウム(60% in oil(鉱油))0.77g(19.3mmol)を入れ、それに水浴中、2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレン0.92g(2.84mmol)を加え1時間撹拌した。その後、p−トルエンスルホン酸1,4,7−トリオキサトリデシル7.3g(20.9mmol)と乾燥DMF 5mlの混合液を滴下し、80℃で6時間撹拌した。反応終了後、水を加えトルエンで2回抽出した。抽出液を水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムを加え乾燥した。溶媒を留去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離溶媒:クロロホルム)を3回行い精製し、2,3,6,7,10,11−ヘキサ(1,4,7−トリオキサトリデシル)トリフェニレン0.95g(0.70mmol)を得た。収率25%
【0052】
得られた化合物の相転移温度を以下に示す。
昇温過程
Cry(16℃)Dh(35℃)Iso
冷却過程
Iso(30℃)Dh(16℃)Cry
Cry:結晶相、Dh:ディスコチックカラムナー相、Iso:等方相
【0053】
次に合成した2,3,6,7,10,11−ヘキサ(1,4,7−トリオキサトリデシル)トリフェニレン81.5mg(0.06mmol)に乾燥ジクロロメタンlmlを加え、撹件し完全に溶解させた。それに過塩素酸リチウム0.64mg(0.006mmol)と乾燥エタノールlmlを加え2時間撹拌した。完全に溶解していることを確認した後、溶媒を留去し、減圧乾燥してリチウム塩10mol%を含有する電解質Cを得た。
【0054】
得られた電解質Cの相転移温度を示す。
昇温過程
Cry(8℃)Dh(38℃)Iso
冷却過程
Iso(28℃)Dh(3℃)Cry
Cry:結晶相、Dh:ディスコチックカラムナー相、Iso:等方相
【0055】
実施例4
透明電極として厚さ700ÅのITO膜を形成した厚さ1.1mmの一対のガラス基板を用意した。該ガラス基板の透明電極上に、一方の基板上にスペーサーとして、平均粒径2.4μmのシリカビーズを散布し、均一なセルギャップのセルを作製した。このセルに実施例1で調製した電解質Aを等方性液体状態で注入し、等方相から20℃/hでディスコチックカラムナー相を示す温度まで冷却した。このセルを偏光顕微鏡でクロスニコル下、テクスチャーを観察した所、暗視野が得られ、ディスコチックカラムナー相がホメオトロピック配向をしていることがわかった。
【0056】
次に0.001〜100kHz、10mVの交流電圧を印加した時の電流を測定して複素インピーダンスを測定し、イオン伝導率を算出した。その結果を以下に示す。
測定温度 イオン伝導率
30℃ 3.3×10-10 S/cm
50℃ 1.6×10-9 S/cm
70℃ 4.9×10-9 S/cm
【0057】
次に、平均粒径2.4μmのシリカビーズの代わりに、平均粒径20μmのシリカビーズを用いる以外は同様の手法によリセルを作成し、電解質Aを注入して、偏光顕微鏡でテクスチャーを観察した所、マルチドメイン配向が観察され、ディスコチックカラムナー相がランダム配向していることがわかった。
【0058】
また、同様の手法で複素インピーダンスを測定し、イオン伝導率を算出した。その結果を以下に示す。
測定温度 イオン伝導率
30℃ 6.0×10-12 S/cm
50℃ 5.6×10-11 S/cm
70℃ 4.3×10-10 S/cm
【0059】
実施例5
電解質Aの代わりに電解質Bを用いる以外は実施例4と同様の手法により2種類のセルを作製、注入し、偏光顕微鏡でテクスチャーを観察した所、平均粒径2.4μmのシリカビーズで作成したセルは暗視野が得られ、ディスコチックカラムナー相がホメオトロピック配向をしていることがわかった。平均粒径20μmのシリカビーズで作成したセルはマルチドメイン配向であり、ディスコチックカラムナー相がランダム配向していることがわかった。
【0060】
実施例4と同様の手法で複素インピーダンスを測定し、イオン伝導率を算出した。その結果を以下に示す。
▲1▼平均粒径2.4μmシリカビーズセル
測定温度 イオン伝導率
30℃ 4.9×10-10 S/cm
50℃ 2.4×10-9 S/cm
70℃ 8.3×10-9 S/cm
【0061】
▲2▼平均粒径20μmシリカビーズセル
測定温度 イオン伝導率
30℃ 9.0×l0-12 S/cm
50℃ 1.8×10-10 S/cm
70℃ 9.9×l0-10 S/cm
【0062】
実施例6
電解質Aの代わりに電解質Cを用いる以外は実施例4と同様の手法により2種類のセルを作製、注入し、偏光顕微鏡でテクスチャーを観察した所、平均粒径2.4μmのシリカビーズで作成したセルは暗視野が得られ、ディスコチックカラムナー相がホメオトロピック配向をしていることがわかった。平均粒径20μmのシリカビーズで作成したセルはマルチドメイン配向であり、ディスコチックカラムナー相がランダム配向していることがわかった。
【0063】
実施例4と同様の手法で複素インピーダンスを測定し、イオン伝導率を算出した。その結果を以下に示す。
▲1▼平均粒径2.4μmシリカビーズセル
測定温度 イオン伝導率
10℃ 2.0×10-9 S/cm
30℃ 1.4×10-8 S/cm
50℃ 4.6×10-8 S/cm
【0064】
▲2▼平均粒径20μmシリカビーズセル
測定温度 イオン伝導率
10℃ 3.3×10-11 S/cm
30℃ 7.6×10-10 S/cm
50℃ 8.9×10-9 S/cm
【0065】
実施例4〜6から本発明の電解質はイオン伝導率に異方性がある事がわかる。また、ディスコチックカラムナー相がホメオトロピック配向し、イオンのチャネルが形成されている方がイン伝導率が高く、また温度特性も良いことがわかる。
【0066】
【発明の効果】
以上説明した様に、本発明によれば、電池、センサデバイス等エレクトロニクス分野に用いる電解質においてイオン伝導性に異方性がある電解質を提供する事が出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】PEOのイオン輸送機構を示す模式図である。
【図2】本発明のイオン輸送機構を示す模式図である。
【図3】本発明のイオン輸送機構を示す模式図である。
【図4】二次電池の模式的な構成図である。
【符号の説明】
41 負電極
42 正電極
43 電解質層
411、421 電子伝導性支持体
412 負極活物質
422 正極活物質
Claims (4)
- ディスコチック性メソーゲン基及び該ディスコチック性メソーゲン基と結合した下記の式(a)〜(c)のいずれかの構造から選ばれた2個以上の側鎖を有する化合物に金属塩を含有してなる電解質であって、前記電解質は前記ディスコチック性メソーゲン基がカラムナー構造をとるディスコチック液晶相を有し、該ディスコチック液晶相においてイオン伝導性が前記カラムナー構造に平行な方向の異方性を示すことを特徴とする電解質。
(a) O(CH 2 CH 2 O) m R 11
(b) O(CH 2 CH 2 CH 2 O) m R 11
(c) O(CHCH 3 CH 2 O) m R 11
(式中、mは1〜20の整数、R 11 は炭素原子数が1〜20である直鎖状または分岐状のアルキル基を示す。但し、該アルキル基中の水素原子はフッ素原子に置き換わっていてもよく、また1つ以上のメチレン基は、O、CO、−CH=CH−、−C≡C−またはエポキシ基に置き換わっていてもよい。) - 前記ディスコチック性メソーゲン基が3または6置換ベンゼン環、トリフェニレン環、トルクセン環、フタロシアニン環、ポルフィリン環、トリベンゾシクロノネン環、テトラベンゾシクロドデシレン環から選ばれる請求項1に記載の電解質。
- 前記金属塩がアルカリ金属塩である請求項1または2に記載の電解質。
- 有機溶剤を含む請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電解質。
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