JP3643816B2 - 消波堤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、消波堤に関する。
【0002】
【従来の技術】
沿岸海域の静穏化を図るものとして、例えば、図6や特開平9−242044号公報に示すような略中空六面体の消波ブロック40をマウンド50に複数列にわたって配置した人工リーフや消波堤(図7参照)等が提案されている。なお、人工リーフや消波堤は、略中空六面体の消波ブロック40に限らず、図8に示すように、略中空四面体の消波ブロック40を積み重ねることによっても構築することができる。いずれにしても、これらは、押し寄せる波を砕波することにより、波エネルギーを低減するものである。
また、波エネルギーの低減効果を高めるため、特開2001−336132号公報には、天端を開放し、その天端にスリット板を設けた海岸構造物が提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、海岸構造物の天端が平坦である場合には、たとえその天端に開口部が設けられていても、波が開口部の正面から入り込まない限り、波を海岸構造物内部へ導くことは困難であり、波エネルギーの低減効果が小さかった。
また、海岸構造物の天端が平坦であると、波が海岸構造物の天端に直接ぶつかるので衝撃は大きく、その衝撃に耐え得るために海岸構造物の構造を強化する必要があった。
さらに、海岸構造物の沖側に面する部分に波に直面する壁がない場合、長周期の波が押し寄せた場合には、波エネルギーの低減効果が小さかった。
【0004】
そこで、本発明の課題は、波エネルギーの低減効果が大きくて、構造を強化する必要がなく、長周期の波にも大きな低減効果を発揮する消波堤を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、請求項1記載の発明は、例えば、図1〜図5に示すように、底となる底部2と、この底部2に連続し、互いに平行で開口部3a,4aが形成された第1壁部3及び第2壁部4と、第1壁部3及び第2壁部4に連続する天井部1とを備える消波ブロック10を、第1壁部3を沖側、第2壁部4を岸側に向けて海中に複数連続して設置した消波堤100であって、前記天井部1を、前記第1壁部3側が高く、前記第2壁部4側が低い傾斜面に形成し、前記第1壁部3の開口部3aを、少なくとも一部が前記第2壁部4上端における天井部1よりも高くなるよう形成し、前記消波ブロック10を、前記第1壁部3が水面に対して略直角となるように設置したことを特徴とする。
【0006】
請求項1記載の発明によれば、第1壁部の上端を乗り越えた水流は、傾斜面とされた天井部に沿って流れるため、岸に向かう水流の向きを変えることができる。ここで、消波ブロックを連続して複数設置して消波堤を構築した際には、天井部が岸側に隣接する消波ブロックの第1壁部の開口部へスムーズに水流を導くことができるので、水流のエネルギーの低減効果を大きくできる。さらに、第1壁部を乗り越えた水流は天井部に直接ぶつかることがなくなり、その衝撃に耐え得るために消波ブロックの構造を強化する必要がなくなる。
【0007】
請求項2に記載の発明は、例えば、図1に示すように、請求項1に記載の消波堤100において、最も沖側に設置される消波ブロック11における第1壁部3の開口部3a上方の壁面を、他の消波ブロック10における開口部3a上方の壁面よりも広く形成したことを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の発明によれば、開口部の上部の壁面部の存在により、水流が第1壁部とぶつかる面が広くなるので、水流のエネルギーを大きく低減できる。ここで、消波堤を構築する際に、壁面部を有する消波ブロックを最も沖側に設置すれば、水流が消波堤に侵入する前に多くのエネルギー低減できる。さらに、壁面部の部分で波の周期を乱すことができるので、たとえ長周期の波が押し寄せても容易に砕波され、その波エネルギーを確実に低減できる。
【0009】
請求項3記載の発明は、例えば、図1〜図5に示すように、請求項1又は2に記載の消波堤100において、前記第2壁部4の下端部に、互いに離間する複数の脚部6を設け、前記第1壁部3の下端縁に、前記第2壁部4の下端縁と前記脚部6とによって囲まれる空間8に嵌め込み可能な凸部7を設けたことを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の発明によれば、消波堤を構築する際に、ある消波ブロックの凸部と他の消波ブロックの凹部とを嵌合させて接続することができる。よって、水中での消波堤の設置作業を容易にすることができる。さらに、消波堤の転倒やずれの原因となる鉛直上向きの揚圧力が消波堤に作用した場合、沖側に隣接する消波堤がその重量で揚圧力の作用した消波堤を抑え込むことができるので、消波堤の安定性を向上できる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明に係る実施の形態の一例について詳細に説明する。
最初に、海岸構造物の構成について説明する。
図1〜図5に示すように、海岸構造物としての消波ブロック10は、沖から押し寄せる波の波エネルギーを低減するものであり、例えば、六面体に形成され、図2に示すように、天井部としての上面部1、底部としての下面部2、第1壁部としての前面部3、第2壁部としての後面部4、側面部5、脚部6、凸部7、凹部8等を備えており、コンクリートで一体に形成されている。
【0014】
上面部1は、正面視長方形の壁状に形成されており、前面部3側が高く、後面部4側が低い傾斜面とされている。なお、この傾斜角は、沖からの波が上面部1に入射する角度とほぼ等しくされている。また、上面部1は、前面部3、後面部4、側面部5の上端縁と接続されるように形成され、下面部2の上方に位置している。
【0015】
下面部2は、海底に構築されたマウンド20に着底される部分であり、正面視長方形の壁状に形成されている。また、下面部2からは、沖側の側縁から前面部3が下面部2に対してほぼ直角に立ち上げられ、岸側の側縁から後面部4が下面部2に対してほぼ直角に立ち上げられ、残りの両側縁から側面部5が下面部2に対してほぼ直角に立ち上げられている。また、下面部2には、消波ブロック10内部への土砂の堆積防止と消波ブロック10内外の水の流れを確保するための開口部2aが形成されている。
【0016】
前面部3は、下面部2の沖側の側縁から立て起こされたものであり、沖側に面するように設置されている。また、前面部3のほぼ全域にわたって、波を消波ブロック10内部に導くための開口部3aが形成されている。
【0017】
後面部4は、下面部2の岸側の側縁から立て起こされたものであり、岸側に面するように設置されている。また、後面部4には、消波ブロック10内部に導かれた波の流通を確保するための開口部4aが形成されている。なお、後面部4は、前面部3より低く形成されており、この高さの差が上面部1の傾斜を生じさせる。
【0018】
側面部5は、上面部1、下面部2、前面部3、後面部4のそれぞれに連続するように形成されており、消波ブロック10内部への土砂の堆積防止と消波ブロック10内外の水の流れを確保するための開口部5aが形成されている。
脚部6は、下面部2の裏面の四隅に形成されており、消波ブロック10内部への土砂の堆積防止と消波ブロック10内外の水の流れを確保している。
【0019】
凸部7は、図4に示すように、前面部3の下端部に形成されており、前面部3より沖側の外部へ突出するように形成されている。
凹部8は、図5に示すように、後面部4の下端部に形成されており、後面部4の下端縁と岸側の脚部6とによって囲まれる空間を利用したものである。また、凹部8は、凸部7と対応する形状、すなわち、凸部7の嵌め込みが可能な形状とされている。
【0020】
また、図1に示すように、複数の消波ブロック10を海底に構築されたマウンド20に設置する際に、最も沖側に設置される消波ブロックとして、壁付き消波ブロック11が用いられる。
この壁付き消波ブロック11は、前面部3以外の構成は消波ブロック10と同様であるため、前面部3のみについて説明する。
図3に示すように、前面部3は、下部に開口部3aが形成され、上部に壁面部3bが設けられている。この壁面部3bを設けることにより、波の砕波を助長することができるようになっている。また、前面部3全面を壁面部3bとせず、下端寄りに開口部3aを形成することにより、消波ブロック10内部に波を導くことが可能となるほか、消波ブロック11内部への土砂の堆積防止と消波ブロック11内の波の流通を確保することができる。
【0021】
複数の消波ブロック10を海中に設置して消波堤100を構築するには、図1に示すように、まず、海底面に、クラッシャーランを敷きつめる。次いで、クラッシャーラン上に捨石を行い、マウンド20を構築する。次いで、消波ブロック10を岸側からマウンド20上に設置していく。この時、設置する消波ブロック10の凹部8を岸側に隣接する設置済みの凸部7上に嵌め込むように設置していく。ここで、最も沖側の列には、壁付き消波ブロック11を設置する。なお、波の進行方向に対して直交する方向、すなわち、図1における紙面の手前側から奥側に向けても消波ブロック10を設置していく。消波ブロック10の設置完了後、消波ブロック10の周囲およびマウンド20上に、マウンド20の洗掘や消波ブロック10のずれを防止する被覆石を敷きつめる。以上の手順により、沖側と岸側との間にわたり、複数の消波ブロック10が連続して設置され、消波堤100が構築される。
なお、消波ブロック10は、マウンド20上の岸側寄りに設置される。これは、消波ブロック10に波が到達する前にマウンド20で波エネルギーを低減させることをねらったものである。
【0022】
次に、消波ブロック10,11の作用について説明する。
沖から波が押し寄せると、まず、マウンド20で波エネルギーが低減される。続いて、波が壁付き消波ブロック11の壁面部3bに衝突し、波が砕波される。砕波された波は、その一部が壁付き消波ブロック11の前面部3を乗り越えて進み、岸側に隣接する消波ブロック10の開口部3aから消波ブロック10内部に導かれる。消波ブロック10内に入った波は、鉛直方向への擾乱によって大部分の波エネルギーを失い、消波される。一方、開口部3aを乗り越えた波は、さらに岸側の消波ブロック10によって、その一部が開口部3aから岸側に隣接する消波ブロック10の内部に導かれる。波は、岸側の消波ブロック10に進むにつれて波エネルギーが低減されていき、やがて消波される。
【0023】
本実施の形態の消波ブロック10によれば、前面部3の上端を乗り越えた波は、上面部1に沿って流れ、岸に向かう水流の向きを変えることができる。この消波ブロック10により消波堤100を構築すると、岸側に隣接する消波ブロック10の前面部3の開口部3aからその消波ブロック10の内部へスムーズに導かれる。この消波ブロック10の内部へ導かれた波は、後面部4の開口部4aから流出しようとするが、岸から沖に向かって戻る返り波や傾斜した上面部1の存在によって鉛直方向の擾乱が引き起こされ、エネルギーが大きく低減される。
【0024】
一方、前面部3の開口部3aから消波ブロック10の内部に導かれた波も同様に鉛直方向の擾乱によってエネルギーが低減される。よって、消波ブロック10に押し寄せた波は、前面部3を乗り越えるか否かにかかわらず、消波ブロック10の内部に導かれるので、鉛直方向の擾乱により、波エネルギーを大きく低減することができる。また、前面部3を乗り越えた波は上面部1に直接ぶつかることがなくなり、その衝撃に耐え得るために消波ブロック10の構造を強化する必要がなくなる。
【0025】
また、前面部3の壁面部3bの存在により、波が前面部3とぶつかる面が広くなるので、波エネルギーを大きく低減できる。ここで、例えば、消波堤100を構築する際に、壁面部3bを有する消波ブロック10を最も沖側に設置すれば、波が消波堤100に侵入する前に多くの波エネルギー低減できる。さらに、壁面部3bの部分で波の周期を乱すことができるので、たとえ長周期の波が押し寄せても容易に砕波され、その波エネルギーを確実に低減できる。
【0026】
さらには、消波堤100を構築する際に、消波ブロック10の凸部7と隣接する消波ブロック10の凹部8とを嵌合させて接続することができる。よって、水中での消波ブロック10の設置作業を容易にすることができる。また、消波ブロック10の転倒やずれの原因となる鉛直上向きの揚圧力が消波ブロック10に作用した場合、沖側に隣接する消波ブロック10がその重量で揚圧力の作用した海岸構造物を抑え込むことができるので、消波ブロック10の安定性を向上できる。
【0027】
また、消波ブロック10によって消波されることにより、岸側の水位の上昇量は小さくなるので、岸側から沖側へ戻る流れが小さく、マウンド20の侵食を防止できる。
【0028】
なお、本発明は、上述の実施の形態に限定されるものではない。例えば、消波ブロックは、六面体である必要はなく、八面体や十面体等でもよい。また、上面部が曲面に形成されていてもよい。さらに、消波ブロックの設置数も任意であって、海域の波浪条件に応じて変更可能である。その他、各構成要素は、発明の要旨を逸脱しない範囲内で設計変更が可能である。
【0029】
【発明の効果】
請求項1記載の発明によれば、水流のエネルギーを大きく低減することができる。また、消波ブロックの構造を強化する必要がなくなる。
【0030】
請求項2記載の発明によれば、水流のエネルギーの低減を助長することができる。さらに、長周期の波が押し寄せてもその波エネルギーを確実に低減できる。
【0031】
請求項3記載の発明によれば、水中での設置作業を容易にすることができる。また、海岸構造物の安定性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態における消波堤を説明するための側断面図である。
【図2】上記実施の形態における消波ブロックを説明するための図である。
【図3】上記実施の形態における壁付き消波ブロックを説明するための図である。
【図4】上記実施の形態における凸部を説明するための斜視図である。
【図5】上記実施の形態における凹部を説明するための斜視図である。
【図6】従来技術における消波ブロックを説明するための斜視図である。
【図7】上記従来技術における消波ブロックを用いた消波堤を説明するための側断面図である。
【図8】上記従来技術における消波ブロックを用いた消波堤を説明するための側断面図である。
【符号の説明】
1 上面部(天井部)
2 下面部(底部)
3 前面部(第1壁部)
3a 開口部
3b 壁面部
4 後面部(第2壁部)
4a 開口部
7 凸部
8 凹部
10 消波ブロック(海岸構造物)
11 壁付き消波ブロック(海岸構造物)
Claims (3)
- 底となる底部と、この底部に連続し、互いに平行で開口部が形成された第1壁部及び第2壁部と、第1壁部及び第2壁部に連続する天井部とを備える消波ブロックを、第1壁部を沖側、第2壁部を岸側に向けて海中に複数連続して設置した消波堤であって、
前記天井部を、前記第1壁部側が高く、前記第2壁部側が低い傾斜面に形成し、
前記第1壁部の開口部を、少なくとも一部が前記第2壁部上端における天井部よりも高くなるよう形成し、
前記消波ブロックを、前記第1壁部が水面に対して略直角となるように設置したことを特徴とする消波堤。 - 最も沖側に設置される消波ブロックにおける第1壁部の開口部上方の壁面部を、他の消波ブロックにおける開口部上方の壁面部よりも広く形成したことを特徴とする請求項1に記載の消波堤。
- 前記第2壁部の下端部に、互いに離間する複数の脚部を設け、
前記第1壁部の下端縁に、前記第2壁部の下端縁と前記脚部とによって囲まれる空間に嵌め込み可能な凸部を設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の消波堤。
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