JP3640777B2 - ポリエステル長繊維不織布 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はスパンボンド法で得られるポリエステル長繊維不織布に関するものであり、更に詳しくは、適度な伸縮性、ソフトな風合い、均一な目付を有する糸切れが極めて少なくワイピング周期の延長された、優れた紡糸安定性を有するポリエステル長繊維不織布に関する。
【0002】
【従来の技術】
テレフタル酸またはテレフタル酸ジメチルに代表されるテレフタル酸の低級アルコールエステルとトリメチレングリコール(1,3−プロパンジオール)とを重縮合させて得られるポリトリメチレンテレフタレートは、優れた弾性回復性、低弾性率、易染性といったポリアミドに類似した性質と、耐光性、熱セット性、寸法安定性、低吸水率といったポリエチレンテレフタレートに類似した性能を併せ持つ画期的なポリマーであり、その特徴を生かしてBCFカーペット、ブラシ、テニスガット等に応用されている(特開平9−3724号公報、特開平8−173244号公報、特開平5−262862号公報)。
【0003】
一方、既存のスパンボンド不織布において、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン等のポリマーからなる不織布が上市されており、例えば、使い捨てカイロ用包材、風呂敷、テーブルクロスといった用途に展開されている。しかしながら、既存の不織布からなる不織布は伸縮性に乏しく、例えば、使い捨てカイロに用いた場合、関節部、腰部等の伸縮を繰り返す部分に使用されると使用部位の伸縮に使い捨てカイロの伸縮が追いつかなくなり、フィット性が不十分となる。その結果、カイロの保温効果が十分に発揮できなくなる。また、公知の不織布では風合いが堅く、カイロの装着感が悪いという欠点があった。
【0004】
次に、ポリトリメチレンテレフタレートを用いたスパンボンド不織布の製造について考察してみる。ポリトリメチレンテレフタレートはその分子構造の類似性から、基本的にはポリエチレンテレフタレートと同様に紡糸することが可能であるが、公知のポリトリメチレンテレフタレートの重合技術で得られたポリマーを用いると、ポリマー中にオリゴマーや低分子不純物を多く含有しているために紡口周辺に白い粉状の物質が紡糸時間と共に析出してくる。これらの析出物は糸切れや毛羽の原因となるため、ワイピング(シリコン離形剤を紡口面に吹き付けながら、紡口面を金属のへら等を用いて掃除をすること)をかなりの頻度で行う必要がある。スパンボンド不織布の紡口数は通常300個以上、特に1000以上もよく用いられるために、通常の溶融紡糸(紡口数高々100個程度)に比べてワイピング操作が増えるということはコストの増大、生産性の低下につながり大きな問題点となる。また、これら不純物の存在が原因で、不織布の目付斑が問題となっている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、適度な伸縮性、ソフトな風合い、均一な目付を有し、糸切れが極めて少なくワイピング周期の延長された、優れた紡糸安定性を有するポリエステル長繊維不織布を得ることである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らはポリトリメチレンテレフタレート長繊維不織布の伸縮特性を引き出すこと、紡糸安定性の向上をポリマー重合法、紡糸条件、不織布の構造設計の観点から詳細に検討を行い、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、オリゴマーの含有量が3wt%以下であるポリトリメチレンテレフタレートからなる長繊維不織布であって、該不織布を構成する繊維の強度が0.7〜4g/d、弾性率が15〜40g/d、20%伸長時の弾性回復率が70〜100%であることを特徴とするポリエステル長繊維不織布である。
【0007】
本発明に用いるポリマーは、実質的にポリトリメチレンテレフタレートから構成され、オリゴマーの含有量が3wt%以下である必要がある。ここで実質的という意味は、ポリトリメチレンテレフタレートホモポリマーであっても、以下に示すポリトリメチレンテレフタレートコポリマーであってもよいことを示す。すなわち、ポリトリメチレンテレフタレートコポリマーを用いる場合は、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,6−ナフタレンカルボン酸、イソフタル酸、アジピン酸、コハク酸、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−スルホイソフタル酸テトラブチルホスホニウム塩等のポリトリメチレンテレフタレートと共重合可能なモノマーを共重合すればよい。
また、必要に応じて、各種の添加剤、例えば、艶消し剤、熱安定剤、消泡剤、整色剤、難燃剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、結晶核剤、蛍光増白剤などを共重合、または混合してもよい。
【0008】
本発明に用いるポリマーは、トリメチレンテレフタレートのオリゴマーの含有量が3wt%以下であることが必要であり、この範囲で紡糸安定性が確保でき、いわゆる細デニールの不織布の製造を可能とする。尚、トリメチレンテレフタレートオリゴマーとは、通常トリメチレンテレフタレート単位が2〜4繋がったオリゴマーであり、線状構造であっても、環状構造であってもよい。3wt%を越える場合には、例えば、紡糸する場合、オリゴマ−が紡口周りに析出し、糸切れ、毛羽が起るばかりか、オリゴマーが均質な紡糸をじゃまするために、得られた不織布の目付斑を起こす。尚、ここで長時間紡糸を行うためには、1.5wt%以下が好ましく、更に好ましくは1wt%以下である。更に、得られた繊維の毛羽、目付斑が少なくなるという点では、0.5wt%以下が好ましく、更に好ましくは0.3wt%以下であり、もちろん理想的には不含である。
【0009】
更に、本発明に用いるポリマー中には、分子量300以下の有機物の含有量が1wt%以下であることが好ましく、この範囲内で一層のワイピング周期の延長と着色しない、耐光性に優れるといった性能を確保できる。ここで言う分子量300以下の有機物とは、ポリマーに共重合されていない有機物である。本発明者らの検討によれば、分子量300以下の有機物としては、アリルアルコール、アクロレイン、2−ブタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、グリシジルメチルエーテル、オキシプロピルメチルエーテル等が存在し、これらの化合物の総量が成形性、製品耐久性、耐候性に大きな影響を与えることを見出した。分子量300以下の有機物の含有量が1wt%を越える場合には、例えば、紡糸する時に糸切れや毛羽が発生しやすくなったり、光で着色しやすいものになってしまう。好ましくは分子量300以下の有機物の含有量が5000ppm以下であり、特に好ましくは1000ppm以下である。もちろん、理想的には不含である。
【0010】
本発明に用いるポリマーの融点としては、227℃以上であることが好ましい。ここで融点とは、220〜250℃の範囲で融解と考えられるピークのピーク値と定義する。融解ピークが複数存在する場合(ショルダーピークも含む)は、低い温度のピークを融点とする。融点が227℃未満では耐候性の低下が起こりやすくなる。例えば、一度ポリトリメチレンテレフタレートを合成し、そのポリマーを200℃程度で固相重合すると、オリゴマーの含有量を大きく低下させることができる。しかしながら、固相重合を行うと、原料ポリマーの融点は、大きく低下し、225℃にも満たない状態となる。このようなポリマーの中には、トリメチレングリコールが2量化して生成するビス−3−ヒドロキシプロピルエーテルが大量に共重合されたり、末端カルボキシル基量が増えたりする結果、紡糸安定性や耐候性が低下しやすい。好ましいポリマーの融点としては230℃以上であり、更に好ましくは233℃以上である。
【0011】
本発明に用いるポリマーの極限粘度[η]は0.4〜2.0、好ましくは0.5〜1.5、更に好ましくは0.6〜1.2である。この範囲で、強度、紡糸性に優れた繊維を得ることができる。極限粘度が0.4未満の場合は、ポリマーの溶融粘度が低すぎるため紡糸が不安定となり、得られる繊維の強度も低く満足できるものではない。逆に極限粘度が2.0を越える場合は、溶融粘度が高すぎるために紡糸時にメルトフラクチャーや紡糸不良が生じる。
【0012】
本発明に用いるポリマーの製法として、好ましい一例を挙げるならば、テレフタル酸、またはテレフタル酸ジメチルを原料とし、これにトリメチレングリコールを酢酸カルシウム、酢酸マグネシウム、酢酸亜鉛、酢酸コバルト、酢酸マンガンといった金属酢酸塩1種あるいは2種以上を0.03〜0.1wt%加え、常圧下あるいは加圧下でエステル交換率90〜98%でビスヒドロキシプロピルテレフタレートを得る。このように本発明の目的を達成させるためには、遷移金属以外の金属酢酸塩を用いることが好ましい。次に、チタンテトライソプロピオキシド、チタンテトラブトキシド、三酸化アンチモンといった触媒の1種あるいは2種以上を0.03〜0.15wt%、好ましくは0.03〜0.1wt%添加し、250〜270℃で減圧下反応させる。重合の任意の段階で、好ましくは重縮合反応の前に安定剤を入れることが樹脂組成物の白度、ポリトリメチレンテレフタレートオリゴマーや分子量が300以下の有機物量を特定量に制御できる観点で好ましい。
【0013】
この場合の安定剤としては、5価または/および3価のリン化合物やヒンダードフェノール系化合物が好ましい。5価または/および3価のリン化合物としては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリメチルホスファイト、トリエチルホスファイト、トリブチルホスファイト、トリフェニルホスファイト等が挙げられ、特に、トリメチルホスファイトが好ましい。
ヒンダードフェノール系化合物とは、フェノール系水酸基の隣接位置に立体障害を有する置換基を持つフェノール系誘導体であり、分子内に1個以上のエステル結合を有する化合物である。
【0014】
具体的には、ペンタエリスリトール−テトラエキス[3(3,5−ジ−tertブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、3,9−ビス{2−[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、1,3,5−トリス(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンゼン)イソフタル酸、トリエチルグリコール−ビス[3(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2−チオ−ジエチレン−ビス[3(3,5−ジ−tertブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]を例示することができる。中でもペンタエリスリトール−テトラエキス[3(3,5−ジ−tertブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]が好ましい。
【0015】
上記の方法で得られたポリマーには、一般的に次に示す性質を持つ。共重合されたビス−3−ヒドロキシプロピルエーテルの含有量は0.1wt%以下である。また、色相をb値で示すと10以下、場合によっては3以下である。また、末端カルボキシル基量は10〜35mg当量/kgである。
本発明のポリエステル長繊維不織布は、スパンボンド法によって得ることができる。すなわち、実質的にポリトリメチレンテレフタレートから構成され、オリゴマーの含有量が3wt%以下であるポリマーを多数の紡口から溶融紡糸することによって得られた多数の連続フィラメントをエジェクター等の牽引作用を受けさせた後、移動する捕集装置上にウエブを形成させて得ることができる。
【0016】
ここで、エジェクターとは、溶融紡糸したフィラメントを送入した加圧空気を推進力として高速で引取り細化し、かつ高速空気流にフィラメントを随伴する機能を持ったものを言う。エジェクターから押し出されるフィラメントの速度、すなわち、紡糸速度は、一般に2000〜6000m/minに達するものである。この速度は単糸の細化の指標であり、高速になるほど細化が進み低繊度の繊維となる。この紡糸速度は主として吐出量とエジェクターの位置と、送入される空気の圧力などの条件選定に支配されるが、紡糸安定性の点から3000〜5000m/minの範囲が好ましい。
【0017】
溶融紡糸する際の紡糸温度は230〜320℃、好ましくは235〜300℃、更に好ましくは240〜280℃の範囲が適当である。紡糸温度が230℃未満では、温度が低過ぎて安定した溶融状態になり難く、得られた繊維の斑が大きくなり、また満足し得る強度を示さなくなる。一方、紡糸温度が320℃を越えると熱分解が激しくなり、得られた糸は着色し、また満足し得る強度、伸度を示さなくなる。
用いる紡口口金の形状については、円形、三角、多角形、扁平等特に制限はないが、通常は、直径が0.1〜0.5mm程度の円形である。紡口全体に開いている口金の数は、通常10〜3000個程度である。
【0018】
本発明のポリエステル長繊維不織布を構成するフィラメントの繊度は好ましくは0.5〜10dである。10dより大きくなる場合は冷却が不十分となるために、得られる不織布が堅いものとなってしまう。逆に、0.5dよりも小さい時は、エジェクターの張力にフィラメントが耐えることができず、フィラメントの一部が切れてしまう。好ましくは、1〜4dである。また、好ましい目付は10〜50g/m2 である。
このように、本発明のポリエステル長繊維不織布は、オリゴマーの含有量が3wt%以下に規制されていることから、このように細デニールで且つ目付斑のない極めて高品質の不織布である。
【0019】
本発明の不織布を構成するフィラメントの強度は0.7〜4g/d、弾性率は15〜40g/d、20%伸長時の弾性回復率が70〜100%であることが適度な伸縮性、ソフトな風合いを発現させるためには必要である。フィラメントの強度が0.7g/d未満ではエジェクターの張力にフィラメントが耐えることができず、フィラメントの一部が切れてしまう。一方、4g/d以上にすることは実質不可能である。弾性率が15g/d未満では非常にソフトな風合いになるが、加工性が低下するので好ましくない。40d/d以上では風合いが堅くなってしまう。20%伸長時の弾性回復率が70%以下では、例えば使い捨てカイロに応用した場合、不織布が身体の連続した伸縮動作に追随しにくくなり、タルミの原因となるために好ましくない。好ましい強度は1〜4g/d、好ましい弾性率は20〜40g/d、好ましい20%伸長時の弾性回復率は75〜100%である。こうしたフィラメント物性は上述の好ましい紡糸条件を適用することで達成できる。
【0020】
該エジェクター等の出口から空気流と共に噴出されるフィラメント群は、更に、その下方に設けられた移動式の多孔性受器、具体的には、金属製あるいは樹脂製の定速走行している網状物上等にウエブとして捕集されるが、この時、エジェクター等から噴出されるフィラメント群が、噴射単位で固まりやすく、かつ捕集されたウエブの広がりが狭く、シートとしての均一性および品位が欠けるような傾向にあるときには、特にフィラメントが相互に離れあった状態で噴出されて捕集されるような工夫をすることが有効である。
【0021】
このようにフィラメントが相互に離れあった状態で噴出されて捕集されるようにするためには、エジェクター等の下方に衝突部材を設け、該衝突部材にフィラメントを衝突させて該フィラメントに摩擦帯電を起こさせてから開繊させる方法、あるいはエジェクターに誘導する直前にコロナ放電により該フィラメントに強制帯電させて開繊させる方法等も用いることができる。尚、これらの繊維帯電、開繊手法によっても、捕集されたウエブが所望の広がりに達しない場合には、エジェクターあるいは衝突部材等の部材に機械的な揺動または回転をする機構等を持たせることも有効である。
【0022】
かかるウエブの捕集に際しては、フィラメントに随伴して該受器に当たる空気流のために、一旦沈積したウエブが吹き流されて乱れたものになる場合があり、この現象を防ぐためには、該受器の下方から空気を吸引する手段を採用することが好ましい。
上述のようにして得られる本発明のポリエステル長繊維不織布は、更に、例えば80〜240℃の加熱下でプレス処理に付されることが好ましく、該熱プレス処理により良好な繊維相互間の圧着と熱安定化処理を行うことができる。かかるプレス処理としては、加熱した一対の平板を用いて行うもの、あるいは、加熱ローラー等を用いて行うもの等のいずれであってもよい。特に、プレス処理の前後に張力を付与し、また、プレス処理の後に冷却等の補助操作を加えることが製品の品位保持の観点から有効であるので、加熱ローラーを用いた連続処理の方式が適している。
【0023】
該熱プレス処理の温度及び圧力は、供給されるウエブ状物の目付、速度等の条件選択によって適宜変更されるべきものであり、一概には定められない点もあるが、好ましくは温度は200〜240℃、また、圧力は加熱ローラーにより処理する場合には少なくとも線圧は10kg/cm以上であることが得られるポリエステル長繊維不織布の品質の安定化を図る上で好ましい。上述の加熱ローラーとは、その表面が平滑なものや模様が彫刻されたもの、あるいはこれらの同種どおしの組み合わせ、または異種の組み合わせからなる複数の回転ローラーの使用も可能である。熱圧着部は不織布全面積に対して熱圧着部全体面積で30%以下とするのが好ましく、より好ましくは10〜20%の範囲にするのが柔軟性、嵩高さを良好に発揮させる上で好ましい。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、言うまでもなく本発明は実施例などにより何ら限定されるものでない。尚、実施例中の主な測定値は以下の方法で測定した。
(1)極限粘度
この極限粘度[η]は次の定義式に基づいて求められる値である。
定義式のηrは純度98%以上のo−クロロフェノールで溶解したポリエステルポリマーの希釈溶液の35℃での粘度を、同一温度で測定した上記溶剤自体の粘度で割った値であり、相対粘度と定義されているものである。またCは、上記溶液100ml中のグラム単位による溶質重量値である。
【0025】
(2)PTTオリゴマーの定量
微細化したポリエステル樹脂組成物、ポリエステル繊維を、ソックスレー抽出器を用いて、クロロホルムで50時間抽出し、その中から2〜4量体のものをオリゴマーとして、用いた試料に対する重量%で示した。
(3)分子量300以下の有機物の構造決定と定量
(2)で得たクロロホルム液からポリエステル樹脂組成物、繊維に含まれる分子量300以下の有機物を求めた。キャピラリーカラムを備えたガスクロマトグラフィーを用いて分析を行った。用いたカラムはシリコン系とポリエチレングリコール系の2種を用いた。分離した各成分について、構造決定にはマススペクトル(GC−MS)を用い、その秤量は検量線を作成し、用いた試料に対する濃度をppmで求めた。
【0026】
(4)融点
セイコー電子社製DSCを用い、20℃/minの昇温速度で100ml/minの窒素気流下中で測定した。ここでは、融解のピークのピーク値を融点とした。
(5)剛軟度
JIS−1096(45度カンチレバー法)で評価した。数値が高いほど風合いが堅い。
【0027】
(6)20%伸長時の弾性回復率
弾性回復性は、下記の方法で得られる弾性回復率として求めた。
繊維をチャック間距離20cmで引っ張り試験機に取り付け、伸長率20%まで引っ張り速度20cm/minで伸長し1分間放置する。この後、再び同じ速度で元の長さ(a)までもどし、この時応力がかかっている状態でのチャックの移動距離(残留伸び:a’)を読みとり、以下の式に従って求めた。
弾性回復率=(a−a’)×100/a
【0028】
(7)伸縮時の剥離性
150mm×100mmの不織布にラミネートした複合構造物を用い不織布の中央部の10mm幅を残し、残りの全面に市販のガムテープ(布製)を貼り付け、このガムテープの両端部を繰り返し伸縮試験機(デマッチャー)に把持し、60回/minの伸縮を繰り返し、剥離するまでの回数を評価した。回数が多いほど剥がれにくいことを示す。
【0029】
(実施例1)
テレフタル酸ジメチルと1,3−プロパンジオールを1:2のモル比で仕込み、理論ポリマー量の0.1wt%に相当する酢酸カルシウムと酢酸コバルトの混合物(9:1)を加え、徐々に昇温し240℃でエステル交換反応を完結させた。得られたエステル交換物にチタンテトラブトキシドを理論ポリマー量の0.1wt%添加し、270℃で2時間反応させた。得られたポリマーの極限粘度は0.8であった。オリゴマーの含有量は0.1wt%であり、分子量300以下の有機物量は、350ppm、融点は234℃であった。
【0030】
得られたポリマーを270℃で溶融し、エジェクターで吸引しながら紡糸速度3000m/minで紡糸後、移動する多孔質帯状体に堆積させてウエブを作成した。このウエブを150℃に加熱した一対のフラットロールからなる熱圧着装置により全面的に熱圧着し、目付40g/m2 、引張強度7.0g/3cmの不織布を得た。この不織布を構成するフィラメントの強度は2.5g/d、伸度50%、弾性率25g/d、20%伸長時の弾性回復率は75%であり、適度な伸縮性、ソフトな風合いのものであった。更に、不織布面の裏から光を当てて目付斑を観察したところ、薄くなっている部分や玉状にフィラメントが固まっている部分は実質確認できなかった。
【0031】
また、紡糸を1週間しても紡口面はきれいであった。
得られた不織布に厚さ30μmの非通気性の軟質ポリエチレンフィルムをラミネートし熱ピン方式で全穿孔面積を6%としたものをラミネートした。この複合構造物は使い捨てカイロの袋として用いることができるが、剛軟度たて58mm、よこ52mmで非常にソフトな風合いであった。伸縮剥離性は15回まで剥離せず他素材との比較で見ると良好な結果であった。
【0032】
(比較例1)
エステル交換触媒としてチタンテトラブトキシド0.1wt%を用いた以外は実施例1を繰り返した。得られたポリマーのオリゴマー含有量は3.9wt%であり、分子量300以下の有機物量は、1600ppm、融点は233℃であった。このポリマーを用いて紡糸を行ったが、紡口面に白い有機物が析出し1日も保たずに糸切れが起こった。不織布面の裏から光を当てて目付斑を観察したところ、薄くなっている部分はなかったが、玉状にフィラメントが固まっている部分が確認できた。
【0033】
(比較例2)
不織布として通常のスパンボンド法で得られたポリエチレンテレフタレート繊維からなる不織布を用いて、実施例1と同様のラミネートを行った。目付40g/m2 、引張強度9.2kg/3cmの不織布を得た。この不織布を構成するフィラメントの強度は3.5g/d、伸度40%、弾性率100g/dであった。また、複合構造物の剛軟度たて106mm、よこ86mmで堅い風合いであった。伸縮剥離性は2回で剥離した。
【0034】
(比較例3)
不織布として通常のスパンボンド法で得られたポリプロピレン繊維からなる不織布を用いて、実施例1と同様のラミネートを行った。剛軟度たて104mm、よこ50mmで堅い風合いであった。伸縮剥離性は3回で剥離した。
(比較例4)
不織布として通常のスパンボンド法で得られたナイロン6繊維からなる不織布を用いて、実施例1と同様のラミネートを行った。剛軟度たて70mm、よこ62mmで堅い風合いであった。伸縮剥離性は7回で剥離した。
【0035】
【発明の効果】
本発明のポリエステル長繊維不織布は、適度な伸縮性、ソフトな風合い、均一な目付を有し、糸切れが極めて少なくワイピング周期の延長された優れた紡糸安定性を有するポリエステル長繊維不織布である。その伸縮性、風合いのソフトさ使い捨てカイロ用包材、風呂敷、テーブルクロス、敷物等に特に有用である。
Claims (2)
- オリゴマーの含有量が3wt%以下であり、かつ分子量300以下の有機物の含有量が1000ppm以下であるポリトリメチレンテレフタレートからなるスパンボンド法長繊維不織布であって、該不織布を構成する繊維の強度が0.7〜4g/d、弾性率が15〜40g/d、20%伸長時の弾性回復率が70〜100%であることを特徴とするポリエステル長繊維不織布。
- ポリエステル長繊維不織布の製造方法であって、オリゴマーの含有量が3wt%以下であり、固有粘度が0.5〜1.5dl/gであり、分子量300以下の有機物の含有量が1000ppm以下であるポリトリメチレンテレフタレートを240〜280℃の溶融温度で押し出し、連続フィラメントを形成させ、該フィラメントを紡糸速度が3000〜5000m/minになるようにエジェクターで引き取り細化した後、移動する捕集装置上にウェブを形成させることを特徴とするポリエステル長繊維不織布の製造方法。
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