JP3632493B2 - 内燃機関の吸入空気量計測方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関の吸入空気量計測装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
内燃機関の運転空燃比を正確に制御するためには機関の燃料噴射量を機関吸入空気量に正確に対応した値に制御する必要がある。このため、内燃機関の吸入空気量を正確に計測するための方法が種々提案されている。
例えば、従来から一般的に用いられる吸入空気量の計測方法としては、機関吸気通路のスロットル弁下流側圧力(吸気通路圧力)と機関回転数とに基づいて吸入空気量を決定する方法が知られている。
【0003】
この方法では、予め実測により吸気通路圧力と機関回転数とを変化させたときの吸入空気量を求めておき、吸入空気量と吸気通路圧力、機関回転数との相関を数値テーブル等の形で記憶する。機関運転中には、吸気通路圧力と機関回転数とを計測し、これらの計測値を用いてこの数値テーブルを参照することにより機関吸入空気量が求められる。
【0004】
また、別の吸入空気量計測方法としては、実際の吸気通路圧力を計測せずに、スロットル弁開度と機関回転数とに基づいて吸気通路圧力を算出し、算出した吸気通路圧力と機関回転数とに基づいて機関吸入空気量を求める方法も知られている。回転数やスロットル弁開度の変化がない定常状態で機関が運転されている場合には、吸気通路圧力は機関回転数とスロットル弁開度とから定まる値になる。このため、予め各スロットル弁開度と機関回転数とに対応する定常状態での吸気通路圧力を実測してこれらの相関を数値テーブル等の形に記憶しておき、機関運転中のスロットル弁開度と回転数とを用いてこの数値テーブルを参照することにより定常状態における吸気通路圧力を求めることができる。また、スロットル弁開度または回転数が変化する過渡状態においては、実際の吸気通路圧力はスロットル弁開度と回転数とから上記数値テーブルを用いて決定される吸気通路圧力とは一致せず、上記数値テーブルを用いて決定される吸気通路圧力の変化に対して一時応答遅れで近似される変化をする。上記方法では、この一時応答遅れのモデルを使用することにより、定常状態のみならず過渡状態においても実際の吸気通路圧力を計測することなく、スロットル弁開度と機関回転数とに基づいて吸気通路圧力を算出している。
【0005】
上記方法を用いた内燃機関の吸入空気量計測装置としては、例えば特開平8−121233号公報に記載されたものがある。同公報の装置は、機関各気筒に接続される個別の吸気通路にそれぞれスロットル弁を備えた独立スロットル機関を対象としたものであり、機関回転数とスロットル弁開度が比較的小さい機関運転領域では、実際に計測した吸気通路圧力と機関回転数とに基づいて吸入空気量を算出するとともに、機関回転数とスロットル弁開度とが比較的大きい領域では実際に計測した吸気通路圧力を用いずにスロットル弁開度と回転数とに基づいて算出された吸気通路圧力を用いて吸入空気量を算出するようにしたものである。
【0006】
独立スロットル機関や、スロットル弁下流側の吸気通路容積が小さい機関では各気筒の吸気ポート圧力変動が相互に影響しあうため、スロットル弁開度が大きく機関回転数が高い機関運転領域では実際の吸気通路圧力が必ずしも吸入空気量に対応しなくなる場合がある。このため、吸気通路圧力と機関回転数とに基づいて吸入空気量を算出していると上記運転領域では算出した吸入空気量に誤差が生じる場合がある。
【0007】
上記公報の装置は、上述した吸気通路圧力が正確に吸入空気量に対応しなくなる領域では実際の吸気通路圧力を使用せず、スロットル弁開度と機関回転数とから算出した吸気通路圧力を使用することにより、算出した吸入空気量に誤差が生じることを防止している。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上記特開平8−121233号公報の装置は独立スロットル機関において高回転領域でスロットル弁開度が大きいときに実際の吸気通路圧力が機関吸入空気量と対応しなくなる問題を上記の方法で解決している。一般に、各気筒が接続される共通の吸気通路にスロットル弁を備えた形式の通常の機関ではこのような問題は生じず実際の吸気通路圧力は機関吸入空気量に正確に対応している。しかし、吸気通路圧力のみに基づいて機関吸入空気量を算出していると、大気圧が変化したような場合にはスロットル弁開度が大きい領域では吸入空気量の算出に誤差を生じる場合がある。
【0009】
図2は回転数一定の状態でスロットル弁開度を変化させたときの吸気通路圧力と吸入空気量(重量流量)との一般的な変化を示す図である。図において実線は標準状態(大気圧が1気圧の状態)での変化を、点線は例えば高地走行状態等で大気圧が低い状態での変化を示している。
図2実線に示すように、スロットル弁開度を全閉状態から徐々に開いていくと吸気通路圧力(横軸)が上昇し、スロットル弁開度が比較的小さい領域(図2、区間I)では吸入空気量(縦軸)は吸気通路圧力の上昇に応じてほぼ一様に増大する。しかし、スロットル弁開度がある程度大きくなると(図2、区間II)、低スロットル弁開度領域(区間I)における吸気通路圧力と吸入空気量との相関は成立しなくなり、吸気通路圧力の上昇に対する吸入空気量の増大は低スロットル弁開度領域におけるものより大きくなる(図2、実線A)。
【0010】
このように、低スロットル弁開度領域(区間I)と高スロットル弁開度領域(区間II)とでは、吸入空気量と吸気通路圧力との間に異なる相関が成立するものの、それぞれの領域では吸気通路圧力と実際の吸入空気量とは1対1に対応しており、回転数一定の条件下では実際の吸気通路圧力が同一であれば常に実際の吸入空気量も同一となる。すなわち、機関を実際に運転して図2の吸入空気量と吸気通路圧力との関係を各回転数毎に求めておけば、機関運転中に吸気通路圧力(及び機関回転数)を計測することにより図2の関係から正確に機関の吸入空気量を算出することができる。
【0011】
ところが、図2の関係を用いて吸気通路圧力(及び回転数)のみに基づいて機関吸入空気量を求めていると、大気圧が標準状態から変化したような場合には機関吸入空気量が正確に算出できなくなる場合が生じることがある。
大気圧が低下すると吸気通路入口での吸気圧力が低下するため同一の吸入空気量を得るためにはスロットル弁開度を増大する必要がある。この場合も吸入空気量に吸気脈動の影響が生じない低スロットル弁開度領域(図2、区間I)では大気圧の変化にかかわらず吸気通路圧力が同一であれば実際の吸入空気量も同一となる。従って、大気圧が変化してもスロットル弁開度が低スロットル弁開度領域にある限りは吸気通路圧力から図2の関係を用いて正確に吸入空気量を算出することができる。しかし、大気圧が変化(低下)すると前述したように同一の吸気通路圧力を得るためには標準大気圧の場合に較べてスロットル弁を大きく開く必要がある。このため、図2に点線Bで示したように、吸気脈動の影響が生じるスロットル弁開度領域も吸気通路圧力が低い側に移動することになる。この場合、例えば吸気通路圧力が図2のa点である場合には、大気圧が低下した状態でも低スロットル弁開度領域にあるため大気圧の変化にかかわらず図2区間Iの関係を用いて吸気通路圧力から吸入空気量を正確に算出できるものの、吸気通路圧力が図2のb点である場合には、点線Bで示すように図2区間Iの関係は成立しなくなっているため図2区間Iの関係を用いて吸気通路圧力から吸入空気量を算出すると実際の吸入空気量と算出した吸入空気量との間に図2にΔGで示す量の誤差が生じてしまう。
【0012】
この問題は機関を異なる大気圧条件で運転し、各大気圧毎に図2の関係を求めておき、運転中に大気圧を計測してそのときの大気圧に応じた図2の関係を用いて吸気通路圧力から吸入空気量を算出するようにすれば一応解決することができる。しかし、このためには正確に大気圧を計測する必要があり大気圧を計測するために専用の大気圧センサが必要となり、装置のコストが増大する問題がある。
【0013】
一方、前述の特開平8−121233号公報の装置のように、低スロットル弁開度領域でのみ吸気通路圧力に基づいて図2の関係から吸入空気量を算出し、高スロットル弁開度側ではスロットル弁開度と回転数とから算出した吸気通路圧力を用いて図2の関係から吸入空気量を算出するようにすることも可能である。しかし、この場合には、低スロットル弁開度領域と高スロットル弁開度領域とで吸入空気量の算出方法が異なるため、算出方法が切り換わるときに算出された吸入空気量が不連続になる場合が生じる問題がある。また、スロットル弁開度と回転数とから吸気通路圧力を算出する際には、算出された吸気通路圧力を大気圧に応じて補正する操作が必要になる。このため、この場合にも正確に吸入空気量を算出するためには正確に大気圧を計測可能な大気圧センサを設ける必要が生じるため、装置コストの増大が生じる。
【0014】
本発明は上記問題に鑑み、吸気通路圧力と機関回転数とに基づいて機関の吸入空気量を算出する際に、実際の大気圧を計測することなく正確に吸入空気量を算出可能な方法を提供することを目的としている。
【0015】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明によれば、スロットル弁開度センサで検出したスロットル弁開度と、機関回転数と、吸気圧センサで検出したスロットル弁下流側の吸気通路圧力とに基づいて機関の吸入空気量を求める内燃機関の吸入空気量計測方法であって、前記検出した機関回転数と吸気通路圧力とを用いて、予め記憶した基本空気量相関に基づいて基本空気量を求め、前記検出した機関回転数とスロットル弁開度とを用いて、予め記憶した補正係数相関に基づいてスロットル弁開度補正係数を求め、前記基本空気量と前記スロットル弁開度補正係数との積として機関の吸入空気量を算出し、前記基本空気量相関は、予め機関を所定の大気圧条件下で運転し、各機関回転数毎にスロットル弁開度を変化させたときの実際の吸入空気量と前記吸気通路圧力と前記スロットル弁開度とを計測し、該計測した実際の吸入空気量と前記吸気通路圧力との相関を求め、各機関回転数毎にスロットル弁開度領域を、実際の吸入空気量と吸気通路圧力との間に実際の吸入空気量が吸気通路圧力の変化に対して一様に増減する第1の相関が成立する第1のスロットル弁開度領域と、実際の吸入空気量と吸気通路圧力との間に、吸気通路圧力変化増大に対する吸入空気量の増大が前記第1の相関におけるものよりも大きくなる第2の相関が成立する第2のスロットル弁開度領域、との2つの領域に分割し、前記第1のスロットル弁開度領域における前記第1の相関を前記第2のスロットル弁開度領域に外挿し全スロットル弁開度領域に拡大することにより求められた各機関回転数毎の吸入空気量と吸気通路圧力との関係として与えられ、前記補正係数相関は、各機関回転数と各スロットル弁開度とにおける、前記実際の吸入空気量と、前記吸気通路圧力を用いて前記基本空気量相関に基づいて定まる基本空気量との比として与えられる、内燃機関の吸入空気量計測方法が提供される。
【0016】
すなわち、請求項1の発明では、第1のスロットル弁開度領域で成立する第1の相関を全スロットル弁開度領域にわたって外挿(図2にCで示す)することにより求めた基本空気量相関を使用して、まず機関回転数と吸気通路圧力とから基本空気量を算出する。第1の相関は、吸気脈動の影響が生じないスロットル弁開度領域(低スロットル弁開度領域)での吸入空気量と吸気通路圧力との相関であり、大気圧の変化の有無に係わらず吸入空気量と吸気通路圧力とが1対1に対応する。
【0017】
しかし、実際には第1の相関(基本空気量相関)は第2のスロットル弁開度領域(高スロットル弁開度領域)では成立しないため、第2のスロットル弁開度領域で吸気通路圧力から基本空気量相関に基づいて吸入空気量を算出した場合にはスロットル弁開度に応じた補正を行う必要がある。そこで、本発明では予め各回転数とスロットル弁開度との組合せ毎に実際の吸入空気量と、吸気通路圧力から基本空気量相関に基づいて算出した吸入空気量との比を求めて各回転数とスロットル弁開度毎にスロットル弁開度補正係数として記憶しておく。このスロットル弁開度補正係数は、第1のスロットル弁開度領域(図2の区間I)に対応するスロットル弁開度ではほぼ1になり、第2のスロットル弁開度領域(図2の区間II)に対応するスロットル弁開度では1より大きな値になる。
【0018】
従って、吸気通路圧力と機関回転数とから基本空気相関に基づいて算出した基本空気量にスロットル弁開度補正係数を乗じることにより第2のスロットル弁開度領域における吸入空気量がスロットル弁開度と機関回転数とに応じて補正され大気圧の変化にかかわらず正確に吸入空気量が算出されるようになる。
請求項2に記載の発明によれば、前記第1のスロットル弁開度領域は、実際の吸入空気量と吸気通路圧力との比のスロットル弁開度に対する変化率が予め定めた値より小さくなる領域である請求項1に記載の内燃機関の吸入空気量計測方法。
【0019】
すなわち、請求項2の発明では、第1の相関が成立しているか否かが、実際の吸入空気量と吸気通路圧力との比のスロットル弁開度に対する変化率が予め定めた値より小さくなっているか否かに基づいて判定され、第1の相関が成立している領域が第1のスロットル弁開度領域となる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を用いて本発明の実施形態について説明する。
図1は自動車用内燃機関に本発明の吸入空気量計測方法を適用するための装置の全体構成を示す概略図である。図1において、1は内燃機関本体、2は機関1の吸気通路、11は各気筒の排気ポートを集合排気管14に接続する排気マニホルドである。
【0021】
また、図1に7で示すのは機関1の各吸気ポートに加圧燃料を噴射する燃料噴射弁、8で示すのは吸気通路2に設けられたサージタンクである。吸気通路2のサージタンク8上流側には、運転者のアクセルペダル21操作量に応じた開度をとるスロットル弁16が設けられている。
図1に17で示すのは、スロットル弁16の開度を検出するスロットル弁開度センサである。本実施例ではスロットル弁開度センサ17は、スロットル弁17弁体の弁軸まわりの回転角に比例したアナログ電圧を出力するポテンショメータ式のものが使用され、スロットル弁開度センサ17の出力は後述する電子制御ユニット(ECU)10のマルチプレクサ内蔵AD変換器101に入力されている。
【0022】
また、吸気通路2のサージタンク8にはサージタンク内の吸入空気圧力(絶対圧力)に対応したアナログ電圧を出力する吸気圧センサ9が設けられている。本実施例では、後述するように吸気圧センサ9は機関1の吸入空気量を算出するために使用される。吸気圧センサ9の出力信号もECU10のAD変換器101に入力されている。
【0023】
図1に5、6で示すのは、機関1のクランク軸近傍に配置されたクランク角センサである。クランク角センサ5は例えばクランク角720°毎に基準位置検出用パルス信号を発生し、クランク角センサ6は、同じくクランク角30°毎にクランク角検出用パルス信号を発生する。これらクランク角センサ5、6のパルス信号はECU10の入出力インターフェイス102に供給され、このうちクランク角センサ6の出力はCPU103の割込み端子に供給される。
【0024】
電子制御ユニット(ECU)10は、たとえばマイクロコンピュータとして構成され、A/D変換器101、入出力インターフェイス102、CPU103の他に、ROM104、RAM105、バックアップRAM106、クロック発生回路107等が設けられている。
本実施例では、ECU10は、後述する方法で機関1の吸入空気量を算出するとともに、算出した吸入空気量に基づいて機関1の燃料噴射量制御、点火時期制御等の機関の基本制御を行う。
【0025】
ECU10の入出力インターフェイス102は駆動回路108を介して燃料噴射弁7に接続されており、上記により燃料噴射量TAUが一定クランク回転角毎(例えば360°毎)に計算されると、駆動回路108は所定のタイミングで、それぞれTAUに相当する時間だけ各気筒の燃料噴射弁7を開弁駆動し、各気筒の吸気ポートに燃料を噴射する。
【0026】
機関回転数NEは、所定のクランク回転角毎(例えば30°毎)に実行される図示しない割り込みルーチンにより、クランク角センサ6の出力パルス間隔から演算され、RAM105の所定領域に格納される。
また、スロットル弁開度センサ17の出力信号は、図示しないAD変換ルーチンにより一定時間毎に取り込まれ、AD変換された値TAがRAM105の所定の領域に格納される。
【0027】
更に、吸気圧センサ9の出力信号は同様に一定時間毎に取り込まれ、AD変換された値PMがRAM105の所定領域に格納される。つまり、RAM105には一定時間毎に更新された最新の機関回転数NE、スロットル弁開度TA、吸気圧PM等のデータが格納されている。
本実施例では、機関1の燃料噴射量(燃料噴射弁の開弁時間)TAUは、
TAU=GN×KINJ×α+βとして算出される。
【0028】
ここで、GNは機関の吸入空気量、KINJは吸入空気量を燃料噴射量に換算する換算係数であり、GN×JINJは機関の吸入空気量GNに対して機関空燃比を理論空燃比にする燃料量を与えるように定数KINJが設定されている。また、α、βは機関の暖機状態や加速、減速等の運転状態により決定される係数である。
【0029】
次に機関吸入空気量GNの算出方法について説明する。
本実施形態では、吸気圧センサ9で検出した機関吸気圧PMと機関回転数NEとを用いて予め定めた関係(基本空気量相関)に基づいて基本空気量GN0 を算出する。そして、スロットル弁開度センサ17で検出したスロットル弁開度TAと機関回転数NEとから予め定めた関係(補正係数相関)に基づいてスロットル弁開度補正係数KTAを算出し、GN=GN0 ×KTAとして吸入空気量GNを算出する。
【0030】
以下、図2を用いて基本空気量GN0 とスロットル弁開度補正係数KTAの算出方法について説明する。
前述したように、大気圧と回転数とが一定の条件下で機関を運転し、スロットル弁開度TAを増大していくと、吸気の脈動の影響が現れないスロットル弁開度領域(図2、区間I)ではスロットル弁開度に応じて吸気圧PMはほぼ一様に上昇し、吸入空気量GNも吸気圧PMに応じてほぼ一様に上昇する。この領域では吸入空気量GNと吸気圧PMとの関係は直線に近い関係となる。ところが、スロットル弁開度が全開に近くなると、スロットル弁上流側での吸気の脈動の影響が生じるため吸気圧PMに対する吸入空気量GNの変化量(増大量)が大きくなる。このため、スロットル弁開度の大きい領域では、吸入空気量GNと吸気圧PMとの関係は区間Iにおけるほぼ直線上の関係から外れ、図2にAで示すようにスロットル弁開度の増大とともに比較的急激に増大するようになる。
【0031】
図2に点線Cで示すのは、仮にスロットル弁上流側で全く吸気脈動が生じていないとした場合の区間IIにおける吸入空気量GNと吸気圧PMとの関係である。この場合には、区間IIにおける吸入空気量GNと吸気圧PMとの関係も区間Iのものに連続した直線的な形となる。
すなわち、図2の区間IIでは、実際のGN曲線(曲線A部分)と区間IにおけるGN曲線を外挿(延長)した曲線(図2の曲線C部分)との差は吸気脈動による吸入空気量の増大分となる。
【0032】
図3は、図2の区間II部分を拡大した図である。上述したように、区間IIにおける実際の吸入空気量GNは、区間IのGNとPMとの関係を区間IIに外挿して得られた関係(図3、曲線C、すなわち基本空気量相関)から求まる基本空気量GN0 、すなわち吸気脈動が生じなかった場合の吸入空気量に吸気脈動の影響による吸入空気量増大分(図3にΔGNで示す量)を加えたものとなる。
【0033】
本実施形態では、例えば標準状態(大気圧が1気圧の状態)で回転数を変えて機関を運転し、機関の各回転数毎にスロットル弁全閉から全開まで変化させたときの吸入空気量GN(重量流量)と吸気圧PMとの関係(図2実線)を測定し、まず吸気脈動の影響がないスロットル弁開度領域(図2、区間I)と吸気脈動の影響が生じているスロットル弁開度領域(図2、区間II)とを判別する。区間Iと区間IIとの判別は、例えば以下の方法で行う。
【0034】
図2に示すように、区間Iではスロットル弁開度を変化させても吸入空気量GNと吸気圧PMとの比(図2の実線の傾き)はあまり変化しない。すなわち、スロットル弁開度の単位変化量当たりのGNとPMとの比(GN/PM)の変化量(スロットル弁開度に対する(GN/PM)の変化率)は区間Iでは小さな値になっている。これに対して吸入空気量脈動の影響が生じるスロットル弁開度領域(区間II)では、スロットル弁開度に対する(GN/PM)の変化率は区間Iより大きな値になっている。そこで、本実施形態では、各機関回転数毎に上記GNとPMとの実測値から各スロットル弁開度におけるGNとPMとの比を求め、スロットル弁開度に対するGN/PMの変化率を算出する。そして、この変化率が所定値K以下になるスロットル弁開度領域を区間I(第1のスロットル弁開度領域)、所定値K以上になるスロットル弁開度領域を区間II(第2のスロットル弁開度領域)として設定する。所定値Kの値は機関型式や吸気系の構成により変化するため、機関型式に応じて実験等により決定することが好ましい。
【0035】
上記により、各回転数毎にスロットル弁開度領域を区間Iと区間IIに分割後、次いで区間IにおけるGNとPMとの関係を適宜な関数で近似しGNとPMとの相関(第1の相関)を求める。図2の例では、GNとPMとの相関を一次関数(直線)で近似しているがGNとPMとの相関を他の関数(例えば2次以上の高次関数)で近似するようにしても良い。
【0036】
本実施形態では、機関を標準状態で運転し、各回転数毎にスロットル弁開度TA、実際の吸入空気量GN、吸気圧PMとを測定し上記方法により求めた基本空気量相関を用いて基本空気量GN0 を算出し、GN0 の値を機関回転数NEと吸気圧PMとを用いた図4に示す形式の数値テーブルの形で求めておく。すなわち、この数値テーブルが基本空気量相関に相当するものとなる。
【0037】
上記により求めた第1の相関は吸気脈動の影響が生じない区間I(第1のスロットル弁開度領域)のみで成立するものであるが、本実施形態ではこの第1の相関をそのまま区間IIに適用(外挿)して(図2、曲線C部)、区間Iと区間IIとの範囲をカバーする関数(基本空気量相関)を算出する。すなわち、基本空気量相関は、吸気脈動が生じなかった場合の全スロットル弁開度領域における吸入空気量GNと吸気圧PMとの関係を表すことになる。
【0038】
しかし実際には、吸気脈動の影響が吸入空気量に現れるため区間IIのスロットル弁開度領域では実際の吸入空気量GNは基本空気量相関により算出される基本空気量GN0 より大きくなる。区間IIにおける吸気脈動による吸入空気量の増大量は、回転数が一定であればスロットル弁開度と基本空気量GN0 とのみによって定まる。そこで、本実施形態では実測した吸入空気量GNと基本空気量GN0 との比(GN/GN0 )をスロットル弁開度補正係数KTAとして定義し、各回転数、スロットル弁開度毎に実測値GNと基本空気量相関から算出した基本空気量GN0 とを用いてスロットル弁開度補正係数KTAを、KTA=GN/GN0 として算出する。
【0039】
本実施形態では、機関を標準状態で運転したときの、各回転数毎のスロットル弁開度TA、実際の吸入空気量GN、吸気圧PMとの実測結果と、上記基本空気量相関(数値テーブル)を用いて機関回転数NEと吸気圧PMとから算出される基本空気量GN0 とに基づいて、各回転数毎とスロットル弁開度毎にスロットル弁開度補正係数KTAの値を算出し、算出したKTAの値を機関回転数NEとスロットル弁開度TAとを用いた図5に示す形式の数値テーブルの形で求めておく。すなわち、この数値テーブルが補正係数相関に相当するものとなる。なお、図2、区間Iに相当するスロットル弁開度領域ではKTAの値は、基本空気量相関による実際のGNとPMとの関係の近似の精度に応じて定まるほぼ1に近い値となる。
【0040】
上述のように、基本空気量GN0 は吸気脈動がない状態での実際の吸気圧PMに基づいて算出された吸入空気量であり、大気圧やスロットル弁上流側での吸入空気量抵抗が変化したような場合でも機関回転数NEと吸気圧PMとが同じであればGN0 も常に同一になる。このため、GN0 については大気圧変化に対する補正は不要となる。
【0041】
また、区間IIにおける吸気脈動による吸入空気量の増加はスロットル弁開度TAと吸気脈動がない場合の吸入空気量(基本空気量)GN0 とのみによって定まる。このため、スロットル弁開度補正係数KTAの値はスロットル弁開度TAと機関回転数NEとのみの関数(補正係数相関)になり大気圧変化の影響は受けない。つまり、本実施形態ではスロットル弁開度補正係数KTAに対する大気圧変化の補正も不要となる。
【0042】
従って、機関回転数NEと実際の吸気圧PMとから基本空気量相関(図4)を用いて基本空気量GN0 を算出し、このGN0 に機関回転数NEとスロットル弁開度TAとから補正係数相関(図5)を用いて算出したスロットル弁開度補正係数KTAを乗じることにより、大気圧補正を行うことなく正確に機関吸入空気量GNが算出される。すなわち、本実施形態の吸入空気量計測方法によれば大気圧補正を行う必要がないため大気圧を計測するための専用の大気圧センサを設ける必要がなく、大気圧センサによる装置コストの増大を防止することが可能となる。
【0043】
図6は上述の吸入空気量計測方法を用いた機関燃料噴射量TAUの算出操作を説明するフローチャートである。この操作はECU10により一定クランク回転角(例えば360度)毎に実行されるルーチンにより行われる。
前述したように、機関燃料噴射量TAUは、
TAU=GN×KINJ×α+β
として算出される。本実施形態では、予め、図4の基本空気量GN0 の数値テーブルを用いて、TAU0 =GN0 ×KINJの値を計算し(KINJは定数)、TAU0 の値を機関回転数NEと吸気圧PMとをパラメータとして用いた数値テーブル(図7)の形でECU10のROM104に格納してある。そして、実際の運転では機関回転数NEと実際の吸気圧PMとを用いて図7の数値テーブルからTAU0 (=GN0 ×KINJ)の値を算出し、燃料噴射量TAUを、
TAU=TAU0 ×KTA×α+β
として算出するようにしている。
【0044】
すなわち、図6において操作がスタートすると、ステップ601では吸気圧センサ9で検出した吸気圧力PMとスロットル弁開度センサ17で検出したスロットル弁開度TA、及び機関回転数NEが読み込まれる。
そして、ステップ603では読み込んだ吸気圧PMと機関回転数NEとを用いてROM104に格納した図7の数値テーブルから基本燃料噴射量TAU0 の値が算出される。また、ステップ605では、吸気圧PMと機関回転数NEとを用いてROM104に格納した図5の数値テーブルからスロットル弁開度補正係数KTAの値が算出される。
【0045】
また、ステップ607では運転状態に応じて係数α、βの値が決定されるとともに、ステップ609では、実際の燃料噴射量TAUがTAU0 とKTA、α、βの値を用いて、TAU=TAU0 ×KTA×α+βとして算出される。
【0046】
【発明の効果】
各請求項に記載の発明によれば、機関の吸気通路圧力と回転数とに基づいて吸入空気量を算出する際に大気圧を検出することなく正確に吸入空気量を算出することが可能となるため、大気圧検出のための専用の大気圧センサを設けることが不要となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】自動車用内燃機関に本発明の吸入空気量計測方法を適用した実施形態のの全体構成を示す概略図である。
【図2】本発明の吸入空気量計測方法の原理を説明する図である。
【図3】本発明の吸入空気量計測方法の原理を説明する図である。
【図4】基本空気量相関を表す数値テーブルの形式を示す図である。
【図5】補正係数相関を表す数値テーブルの形式を示す図である。
【図6】本発明の吸入空気量計測方法を用いた燃料噴射量算出操作の一例を説明するフローチャートである。
【図7】図6の操作に使用する数値テーブルの形式を示す図である。
【符号の説明】
1…内燃機関
2…吸気通路
5、6…クランク角センサ
9…吸気圧センサ
10…電子制御ユニット(ECU)
16…スロットル弁
17…スロットル弁開度センサ
Claims (2)
- スロットル弁開度センサで検出したスロットル弁開度と、機関回転数と、吸気圧センサで検出したスロットル弁下流側の吸気通路圧力とに基づいて機関の吸入空気量を求める内燃機関の吸入空気量計測方法であって、
前記検出した機関回転数と吸気通路圧力とを用いて、予め記憶した基本空気量相関に基づいて基本空気量を求め、
前記検出した機関回転数とスロットル弁開度とを用いて、予め記憶した補正係数相関に基づいてスロットル弁開度補正係数を求め、
前記基本空気量と前記スロットル弁開度補正係数との積として機関の吸入空気量を算出し、
前記基本空気量相関は、
予め機関を所定の大気圧条件下で運転し、各機関回転数毎にスロットル弁開度を変化させたときの実際の吸入空気量と前記吸気通路圧力と前記スロットル弁開度とを計測し、該計測した実際の吸入空気量と前記吸気通路圧力との相関を求め、
各機関回転数毎にスロットル弁開度領域を、
実際の吸入空気量と吸気通路圧力との間に実際の吸入空気量が吸気通路圧力の変化に対して一様に増減する第1の相関が成立する第1のスロットル弁開度領域と、
実際の吸入空気量と吸気通路圧力との間に、吸気通路圧力変化増大に対する吸入空気量の増大が前記第1の相関におけるものよりも大きくなる第2の相関が成立する第2のスロットル弁開度領域、との2つの領域に分割し、
前記第1のスロットル弁開度領域における前記第1の相関を前記第2のスロットル弁開度領域に外挿し全スロットル弁開度領域に拡大することにより求められた各機関回転数毎の吸入空気量と吸気通路圧力との関係として与えられ、
前記補正係数相関は、
各機関回転数と各スロットル弁開度とにおける、前記実際の吸入空気量と、前記吸気通路圧力を用いて前記基本空気量相関に基づいて定まる基本空気量との比として与えられる、内燃機関の吸入空気量計測方法。 - 前記第1のスロットル弁開度領域は、実際の吸入空気量と吸気通路圧力との比のスロットル弁開度に対する変化率が予め定めた値より小さくなる領域である請求項1に記載の内燃機関の吸入空気量計測方法。
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