JP3632481B2 - 積層体の製造方法およびその積層体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、積層体の製造方法およびその積層体に関するものであり、さらに詳しくは、アンカーコート剤を用いることなく優れた接着力を有し、多湿下に保存しても接着力の低下がない積層体の製造方法およびそれにより得られた積層体に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ポリプロピレンフィルムは食品包装をはじめ、多くの分野で包装材料として利用されている。また包装用途に関しては、袋状包装材として使用される場合が多く、そのためヒートシール性を備えていることが必要であり、そのため食品等包装内容物に衛生性等で影響の少ないシーラントとしてのポリエチレン系樹脂を最内側に溶融押出してポリプロピレンフィルムと積層する積層体の製造方法が広く知られている。
【0003】
基材をポリプロピレンフィルムまたは、接合面に印刷を施したポリプロピレンフィルムまたは、前記フィルムを接合面に設けた積層体のいずれかからなる基材とし、ヒートシール性を有する溶融押出し樹脂をポリエチレン系樹脂とした場合、ポリエチレン系樹脂の溶融押出フィルムの表面の不活性性から、相互の熱融着性がなく、そのためポリエチレン系樹脂の溶融押出しにおいては、ポリエチレン系樹脂を300℃以上の高温で溶融押出し、その表面を活性化させ、アンカーコート処理した基材に圧着する方法が多く用いられている。
【0004】
しかしながら、上記のアンカーコート処理に用いるアンカーコート剤は、溶剤を使用しているために接着後に数日から一週間程度の高温下でのエージング期間を必要とする。そのための多大のエネルギー量の問題や納期遅れの問題などがあり、また、溶剤の揮発による作業環境の悪化や防災上の問題、さらには接着後の乾燥が不十分な場合、積層体フィルム中の残留溶剤による包装内容物への着臭の可能性が残るなど多くの問題があった。
【0005】
そこで、上記のような問題を解決するために、基材をポリプロピレンフィルムまたは、接合面に印刷を施したポリプロピレンフィルムまたは、前記フィルムを接合面に設けた積層体のいずれかからなる基材とし、溶融押出樹脂をポリエチレン系樹脂とした場合、基材には従来工業的に多く用いられているコロナ処理により表面を活性化させ、一方、ポリエチレン系樹脂の溶融押出しにおいては、ポリエチレン系樹脂を300℃前後の高温で押出して溶融押出フィルムとなし、前記溶融押出フィルムの少なくとも接合面にオゾンを含有する空気を吹き付け、次に前記コロナ処理した基材の表面に、前記オゾン処理した溶融押出フィルムを圧着する方法がある。
【0006】
しかしながら、この方法では、ポリプロピレンはもともと極性基を持っておらず、コロナ処理を行っても表面が活性化しにくいため、実用的な接着力を持つ積層体が得られないという問題に加え、多湿下での保存で基材と溶融押し出しフィルムとの接着強度が極端に低下するという問題があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、かかる従来技術の問題点を解決するものであり、その課題とするところは、アンカーコート剤を用いることなく優れた接着力を有し、多湿下に保存しても接着力の低下がない積層体の製造方法およびその積層体を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明において上記課題を達成するために、まず請求項1の発明では、ポリプロピレンフィルムまたは、接合面に印刷を施したポリプロピレンフィルムまたは、前記フィルムを接合面に設けた積層体のいずれかからなる基材に、ポリエチレン系樹脂を溶融押出した積層体の製造方法において、対向した電極間に前記基材を通し、前記基材をヘリウムガスを主成分とし少なくとも水素を含む混合ガスの雰囲気で満たし、前記電極間に電圧をかけて大気圧プラズマ放電領域を発生させて前記基材の表面を処理し、一方、ポリエチレン系樹脂を200〜340℃の温度で押出して溶融押出フィルムとし、表面処理した前記基材上に直接前記溶融押出フィルムを圧着して積層することを特徴とする積層体の製造方法としたものである。
【0009】
また、請求項2の発明では、前記大気圧プラズマ放電領域を発生させて処理する処理密度が、150W/m2/min以上であることを特徴とする請求項1記載の積層体の製造方法としたものである。
【0010】
また、請求項3の発明では、前記混合ガスの水素の混合濃度が、ヘリウムガスに対して3〜15体積%であることを特徴とする請求項1または2記載の積層体の製造方法としたものである。
【0011】
また、請求項4の発明では、前記請求項1、2または3記載の積層体の製造方法により得られた積層体であって、40℃、90%の多湿雰囲気下で2ヵ月後における前記積層体の基材と溶融押出フィルムとの接着強度が、100gf/15mm以上であることを特徴とする積層体としたものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下本発明の実施の形態を図面を用いながら詳細に説明する。
本発明の積層体の製造方法は、例えば、図1の概略側面図に示すように、ポリプロピレンフィルムまたは、接合面に印刷を施したポリプロピレンフィルムまたは、前記フィルムを接合面に設けた積層体のいずれかからなる基材(60)に、ポリエチレン系樹脂を溶融押出した積層体の製造方法において、大気圧プラズマ放電処理装置(70)内の対向した電極(71)間に前記基材(60)を通し、該基材(60)を不活性ガスを主成分とし少なくとも水素を含む混合ガスの雰囲気で満たし、電極(71)間に電圧をかけて大気圧プラズマ放電領域を発生させて前記基材(60)の表面を処理する。
【0013】
一方、ポリエチレン系樹脂を200〜340℃の温度でT−ダイ(30)より押出して溶融押出フィルム(20)とし、上記で表面処理した基材(60)上に前記溶融押出フィルム(20)をニップロール(50)と冷却ロール(10)間で圧着して積層するものである。
【0014】
上記の大気圧プラズマ放電処理方法は、低温プラズマ処理方法の中でも誘電体を備えた対向した電極(71)間を不活性ガスで満たし、その電極(71)間に電圧をかけることで発生する大気圧低温プラズマ放電領域を利用して被処理物の表面を処理するものである。
【0015】
本発明で用いる不活性ガスとしては、ヘリウムガスあるいはヘリウムガスを主成分とする混合ガスである必要があるが、安定したグロー放電を得るためにヘリウムガス単体であることが好ましい。
【0016】
本発明で用いる基材(60)を構成するポリプロピレンフィルムは、未静防グレードでも、静防グレードでも、表面に易接着性および易印刷性の機能を付与したグレードでも、前記フィルム表面に印刷を施したものでもよい。また、単層体でも他のフィルムとの多層体や積層体であってもよく、延伸物でも未延伸物であってもよい。
【0017】
フィルム状に溶融押出しするポリエチレン系樹脂は、特に限定されるものではなく、例えばラジカル重合法で製造される低密度ポリエチレンの他、イオン重合法で製造される高密度ポリエチレンや、エチレンとα−オレフィンとを共重合して得られるエチレン−α−オレフィン共重合体などが用いられる。押出しする溶融押出フィルム(20)の厚みとしては、5〜200μmが好ましく、10〜60μmがより好ましい。
【0018】
また、前記ポリエチレン系樹脂を溶融押出しする温度は、200〜340℃が好ましく、290〜320℃がより好ましい。
【0019】
さらに、前記溶融押出フィルム(20)のオゾン処理については行っても行わなくてもよいが、特に、加工速度を速くした時、前記溶融押出フィルム(20)の表面の酸化が不十分となるのでオゾン処理を行った方が好ましい。
【0020】
【実施例】
次に実施例により、本発明を具体的に説明する。
〈実施例1〉
図1に示すように、誘電体を備えた対向した電極(71)間をヘリウムガスで満たし、該電極(71)間に電圧をかけることで発生する大気圧低温プラズマ放電領域を利用して被処理物の表面を処理する大気圧プラズマ処理装置(70)を用いて、基材(60)として幅520mm、厚み20μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルム(M−1:東セロ(株))を用い20m/minの速度で通過させて表面処理を行った。
【0021】
一方、低密度ポリエチレン(ミラソン14P:三井化学(株))を厚み60μm、温度320℃でT−ダイ(30)より押出して溶融押出フィルム(20)とし、上記で表面処理した二軸延伸ポリプロピレンフィルム上に前記溶融押出フィルム(20)をニップロール(50)と冷却ロール(10)間で圧着して積層体(1)を作製した。
【0022】
上記で使用した大気圧プラズマ処理装置(70)の電圧の周波数は5kHz、放電出力は3kWとし、そのときの処理密度を230W/m2 /minとした。また、この処理装置(70)内部のガス組成はヘリウム95体積%、水素5体積%とし、内部を充満させるガスの供給量および排出量を30リットル/minとした。
【0023】
上記で得られた積層体(1)の基材(60)としての二軸延伸ポリプロピレンフィルムと溶融押出フィルム(20)としてのポリエチレン層との初期接着強度について測定した。また、前記積層体(1)を40℃−90%の多湿雰囲気に2カ月間保存した時の接着強度も測定した。その測定条件はT型剥離、剥離速度300mm/minとした。
【0024】
〈実施例2〉
基材(60)として二軸延伸ポリプロピレンフィルム(M−1:東セロ(株))の全面に印刷(白インキ:NEWMAX 東洋インキ(株))を施したものを用いた以外は、実施例1と同様な表面処理、圧着、および接着強度の測定を行った。
【0025】
〈実施例3〉
大気圧プラズマ放電処理に関してその処理密度を80、150、310W/m2/minとした以外は、実施例1と同様な表面処理、圧着、および接着強度の測定を行った。
【0026】
〈実施例4〉
大気圧プラズマ処理装置(70)内部のガス組成をHeガスに対する水素の混合濃度を1、2、3、10、15、20体積%とした以外は、実施例1と同様な表面処理、圧着を行い、その接着強度の測定を行った。
【0027】
〈比較例1〉
ガス組成に関してHe100%とした以外は、実施例1と同様な表面処理、圧着、およびその接着強度の測定を行った。
【0028】
〈比較例2〉
従来、工業的に多く用いられているコロナ処理装置を用いて、幅520mm、厚み20μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルム(M−1:東セロ(株))を20m/minの速度で通過させて表面処理を行った以外は、実施例1と同様な圧着、および接着強度の測定を行った。この時のコロナ処理装置の出力を3kWとした。
【0029】
こうして得られた実施例1〜4、比較例1〜2における基材(60)としての二軸延伸ポリプロピレンフィルムと溶融押出フィルム(20)としてのポリエチレン層との初期接着強度、および前記積層体を40℃、90%の高温多湿雰囲気に2カ月間保存した時の接着強度の測定結果と、その時の放電状態を表1に示した。
【0030】
【表1】
【0031】
上記表1より、二軸延伸ポリプロピレンフィルムをガス組成He100%で大気圧プラズマ処理をした時の初期接着強度は80gf/15mmと小さいが、水素を5%混合して大気圧プラズマ処理した時には、接着強度が大きくなり175g/15mmを示した。これは、従来、工業的に多く用いられているコロナ処理を行った時の接着強度よりも優れた結果となった。
【0032】
また、これら積層体を40℃、90%の多湿雰囲気に2カ月間保存した時の接着強度について、水素を5%混合して大気圧プラズマ処理した時には、初期の接着強度を保っていたのに対して、ガス組成He100%の大気圧プラズマ処理、および従来、工業的に多く用いられているコロナ処理を行った時の接着強度は、初期と比較して低下していた。
【0033】
基材(60)として、ポリエチレンとの接合面に印刷を施したポリプロピレンフィルムを用いた場合でもポリプロピレンフィルム単体の時と同様に、初期接着強度で170gf/15mmを示し、40℃、90%の高温多湿雰囲気下に2カ月間保存しても接着強度の低下は見られなかった。
【0034】
大気圧プラズマ放電処理の処理密度については、150W/m2/min以上で初期接着強度170gf/15mm以上を示した。また、水素の混合濃度については、2体積%では接着強度は小さく、20体積%では安定したグロープラズマ放電が得られなかった。
【0035】
このことから、水素の最適混合濃度は3〜15体積%であり、この範囲では初期接着強度で約170gf/15mmが得られ、40℃、90%の高温多湿雰囲気下に2カ月間保存しても接着強度の低下が見られず初期の接着強度を保っていた。
【0036】
【発明の効果】
本発明は以上の構成であるから、下記に示す如き効果がある。
即ち、ポリプロピレンフィルムまたは、接合面に印刷を施したポリプロピレンフィルムまたは、前記フィルムを接合面に設けた積層体のいずれかからなる基材に、ポリエチレン系樹脂を溶融押出した積層体において、対向した電極間に前記基材を通し、該基材をヘリウムガスを主成分とし少なくとも水素を含む混合ガスの雰囲気で満たし、前記電極間に電圧をかけて大気圧プラズマ放電領域を発生させて前記基材の表面を処理し、一方、ポリエチレン系樹脂を200〜340℃の温度で押出して溶融押出フィルムとし、前記表面処理した基材上に直接前記溶融押出フィルムを圧着して積層する積層体の製造方法であって、前記大気圧プラズマ放電領域を発生させて処理する処理密度が、150W/m2/min以上で、前記混合ガスの水素の混合濃度が、ヘリウムガスに対して3〜15体積%としたので、アンカーコート剤を用いることなく優れた接着力を有し、多湿下に保存しても接着力の低下がない積層体が得られる。
【0037】
また、基材にアンカーコート処理を行う必要がないため、作業工程の簡略化およびエージング期間の不要による納期短縮と省エネルギーが図れ、さらにはアンカーコート剤成分の溶出に伴い特に包装内容物である食品の味覚を損なうという問題点、および接着後の乾燥が不十分な場合の残留溶剤による包装内容物への着臭の可能性、溶剤の揮発による作業環境の悪化および防災上の問題など数多くの問題を解消することができる。
【0038】
従って本発明は、食品や液体洗剤等を包装する軟包装袋としての如き用途において、優れた実用上の効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の積層体の製造方法の一事例を説明する装置の側面概略図である。
【符号の説明】
1‥‥積層体
10‥‥冷却ロール
20‥‥溶融押出フィルム
30‥‥T−ダイ
50‥‥ニップロール
60‥‥基材
70‥‥大気圧プラズマ放電処理装置
71‥‥電極
Claims (4)
- ポリプロピレンフィルムまたは、接合面に印刷を施したポリプロピレンフィルムまたは、前記フィルムを接合面に設けた積層体のいずれかからなる基材に、ポリエチレン系樹脂を溶融押出した積層体の製造方法において、対向した電極間に前記基材を通し、前記基材をヘリウムガスを主成分とし少なくとも水素を含む混合ガスの雰囲気で満たし、前記電極間に電圧をかけて大気圧プラズマ放電領域を発生させて前記基材の表面を処理し、一方、ポリエチレン系樹脂を200〜340℃の温度で押出して溶融押出フィルムとし、表面処理した前記基材上に直接前記溶融押出フィルムを圧着して積層することを特徴とする積層体の製造方法。
- 前記大気圧プラズマ放電領域を発生させて処理する処理密度が、150W/m2/min以上であることを特徴とする請求項1記載の積層体の製造方法。
- 前記混合ガスの水素の混合濃度が、ヘリウムガスに対して3〜15体積%であることを特徴とする請求項1または2記載の積層体の製造方法。
- 前記請求項1、2または3記載の積層体の製造方法により得られた積層体であって、40℃、90%の多湿雰囲気下で2ヵ月後における前記積層体の基材と溶融押出フィルムとの接着強度が、100gf/15mm以上であることを特徴とする積層体。
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