JP3631898B2 - ガスタービンにおける分割環の冷却構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ガスタービンにおいて動翼の半径方向外周側に配置された分割環の冷却構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ガスタービンの全体的な構成は、図7に概略的に示すように、圧縮機1で空気を圧縮し、燃焼器2に燃料を投入して燃焼ガスを生成し、同燃焼ガスを主流ガスとしてタービン3に導入し、発電機4を回転させるようになっている。
【0003】
この中タービン3は図8に一般的構成を示すように、交互に配列されたそれぞれ複数列の静翼5と動翼6とから成り立っており、動翼6の半径方向外周側は、高温ガスを動翼6と適正な隙間をもって下流側に送るために周方向に複数の分割数をもった分割環(リングセグメント又はチィプシールセグメント)10で囲われた構造となっている。
【0004】
そしてこの分割環10は、燃焼器2から出る高温の主流ガス15に耐え得る様な冷却構造となっているが、従来のガスタービンにおけるこの冷却構造を有した分割環10の一例を図3及び図4により説明する。
【0005】
圧縮機1から抽気した冷却媒体9、もしくは外部に設けた適宜の供給源から供給された冷却媒体9をインピンジメント冷却口11を形成したインピンジメント冷却板12を経てキャビティ16に供給し、分割環10に当接させて強制冷却した後、同分割環10内に設けられた冷却通路13を通して再度分割環10を冷却し、分割環後部14より主流ガス15中に放出する様になっている。
【0006】
なおここで冷却通路13は、断面が円形、矩形、又は波状等の形状を選択してよく、同冷却通路13は軸方向に伸びた複数の孔を周方向略平行に配列して構成されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら前記した従来のものにあっては、冷却媒体9は高温の主流ガス15の逆流を防ぐため、キャビティ16を主流ガス15の圧力よりも高く保持する必要があり、そのために分割環外周側のキャビティ16を軸方向上流側の主流ガス15より相対的に高い圧力にして冷却媒体9を供給している。
【0008】
他方、主流ガス15は軸方向下流側では、前記軸方向上流側に比べて圧力が低下しているので、前記のように軸方向上流側の主流ガス15との関連で圧力調整されたキャビティ16内の冷却媒体9では過大な漏れを消費してしまい、タービン効率の低下を招くことになる。
【0009】
さらには、冷却通路13内の冷却媒体9は、冷却による熱交換により軸方向下流側に進むにつれ自身が昇温されてゆき、分割環下流側では相当な温度上昇をするため、冷却性能が低下する。
【0010】
本発明は従来のものにおける前記した不具合点を解消し、ガスタービンの分割環における冷却効率の向上を図るようにした冷却構造を提供することを課題とするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は前記した課題を解決すべくなされたもので、分割環とその外周に配置したインピンジメント冷却板との間を周方向に延びる圧力隔板により軸方向で区画し、それぞれ異なる圧力に調整した上流側キャビティと下流側キャビティを設け、前記上流側キャビティの内部は冷却通路を経て動翼先端部の上流側半分の範囲に開口し、下流側キャビティの内部は他の冷却通路を経て軸方向と平行状に延びて動翼の後流に開口したガスタービンにおける分割環の冷却構造を提供するものである。
【0012】
即ち本発明によれば、圧力隔板により軸方向で区画した上流側キャビティと下流側キャビティは、それぞれ異なる圧力に調整されるので、軸方向上流と下流で圧力の異なる主流ガスに対して個々に、かつ適切に対応し、上流側では主流ガスの逆流防止を行い、また下流側では隙間からのもれ空気を最小として効率の向上を図る様にしたものである。
【0014】
しかも前記上流側キャビティの内部は冷却通路を経て動翼先端部の上流側半分の範囲に開口し、下流側キャビティの内部は他の冷却通路を経て軸方向と平行状に延びて動翼の後流に開口することにより軸方向に異なる位置で動翼先端側に開放しているので、各キャビティを出てから動翼先端側に向けて開放されるまでの分割環冷却孔の距離は短縮され、特に前記上流側キャビティからの冷却通路では冷却媒体が温まらないうちに動翼先端に開放されるので、動翼の冷却効果を高め、また、下流側キャビティからの他の冷却通路では軸方向に平行状に延びて冷却媒体を案内することにより分割環の冷却効果を高めるものである。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の一形態について図1、図2に基づいて説明する。
なお前記した従来のものと同一の部分については図面中に同一の符号を付して示し、重複する説明は出来るだけ省略して本実施の形態に固有の点について重点的に説明する。
【0016】
10は分割環で、動翼先端との隙間をシールするように動翼先端に近接して配置されており、図1および図2では周方向で複数に分割されたものの中一つを代表として抜き出して示している。
【0017】
12はインピンジメント冷却板で、分割環10に対して適当な間隔を離して分割環10の外周側に同心状に配列される様に遮熱環19で支持されており、板面に多数設けられたインピンジメント冷却口11を経て前記分割環10との間冷却媒体を受け入れるキャビティを形成している。
【0018】
18は前記分割環10の表面に周方向に延びて設けられた溝で、同溝18には頂面をインピンジメント冷却板12と当接した圧力隔板17が嵌められ、前記分割環10とインピンジメント冷却板12との間に形成されるキャビティを上流側キャビティ16aと下流側キャビティ16bとに区画している。
【0019】
なお、圧力隔板17は前記分割環10及びインピンジメント冷却板12と同様に、円周方向で複数に分割して構成されてもよく、その場合には周方向の接合部は微小の隙間を残して端面を接合し、微小の漏れが有ってもよいが、図4に示す様に端部接合面を互いに断面方向に切り込んで重ね接合し、密封度を向上することもできる。
【0020】
また、圧力隔板17の内周側は前記したように溝18と嵌合し、これに対向する外周側は図3に示すように逆L字型としているが、同圧力隔板17はこの形状に限定されるものではなく、T字型等その他の形状を選択してもよいことは勿論である。
【0021】
前記上流側キャビティ16aの内部は、冷却通路13aを経て動翼6先端部の上流側半分の範囲に開口し、また、下流側キャビティ16bの内部は冷却通路13bを経て軸方向とほぼ平行に延びて動翼6の後流に開口しているので、冷却通路13a及び13bそれぞれの距離は分割環10及び動翼6先端の軸方向長さに対して十分に短いものとなる。
【0023】
また、上流側キャビティ16aと下流側キャビティ16bそれぞれのインピンジメント冷却板12には、多数のインピンジメント冷却口11が設けられているが、前記上流側キャビティ16aに開口するインピンジメント冷却口11と下流側キャビティ16bに開口するインピンジメント冷却口11とは、その開口径の大きさ、形状、開口数を互いに相違しており、上流側キャビティ16a内は下流側キャビティ16bより高い圧力であり、かつ同上流側キャビティ16a内圧力は上流側主流ガス15aを上回り、また下流側キャビティ16b内圧力は下流側主流ガス15bを上回るように調整されている。
【0024】
本実施の形態は前記の様に構成されているので、冷却媒体9はインピンジメント冷却板12のインピンジメント穴11を通過し、上流側キャビティ16a及び下流側キャビティ16bを形成する分割環10をインピンジメント冷却したのち軸方向に延びた複数列の分割環冷却通路13a及び13bを通過することにより、分割環10を再度冷却し、最終的に主流ガス15中に放出される。
【0025】
そしてこの分割環冷却構造を構成した上流側キャビティ16a及び下流側キャビティ16b内に供給される冷却媒体9の圧力が、インピンジメント冷却口11の開口径の大きさ、形状、開口数等を調整することにより、前記した様に上流側キャビティ16aでは上流側燃焼ガス15aの圧力より相対的に若干高くし、また下流側キャビティ16bでは、圧力の低下した下流側燃焼ガス15b圧力よりわずかに高く維持した状態で設定することが可能となったことにより、分割環10の上流側キャビティ16aでは主流燃焼ガス15aの逆流の懸念がなく、また、下流側キャビティ16bでは各部隙間からのもれ空気を最小限にとどめることができる。
【0026】
なお、上流側キャビティ16a及び下流側キャビティ16b内から、分割環10の板厚を貫通して設けられた冷却通路13a及び13bを通して冷却媒体9を案内することにより、分割環10を冷却し、かつ、この冷却媒体9をタービン動翼6先端に向けて吹き出すことによってタービン動翼6の冷却効果も望めるものである。
【0027】
以上、本発明を図示の実施の形態について説明したが、本発明はかかる実施の形態に限定されず、本発明の範囲内でその具体的構造に種々の変更を加えてよいことはいうまでもない。
【0028】
たとえば、前記実施の形態においては、インピンジメント冷却板12と分割環10との間には、単数の隔壁17を配設し、上流側キャビティ16aと下流側キャビティ16bに区画したものを示したが、複数の隔壁17で区画して多数のキャビティを形成してよいことは勿論である。
【0029】
【発明の効果】
以上本発明によれば、分割環とその外周に配置したインピンジメント冷却板との間を周方向に延びる圧力隔板により軸方向で区画し、それぞれ異なる圧力に調整した上流側キャビティと下流側キャビティを設けてガスタービンにおける分割環の冷却構造を構成しているので、圧力隔板により軸方向上流と下流で区画された各キャビティは、それぞれ異なる圧力に調整されて圧力の異なる主流ガスに対して個々に、かつ適切に対応可能となり、上流側では主流ガスの逆流防止を行い、また下流側では隙間からのもれ空気を最小としてガスタービンの効率を一段と向上することができたものである。
【0030】
しかも本発明によれば、前記上流側キャビティの内部は冷却通路を経て動翼先端部の上流側半分の範囲に開口し、下流側キャビティの内部は他の冷却通路を経て軸方向と平行状に延びて動翼の後流に開口することにより軸方向に異なる位置で動翼先端側に開放してガスタービンにおける分割環の冷却構造を構成しているので、上流側及び下流側の各キャビティから軸方向に異なる位置で動翼先端側に開放する分割環冷却孔は、各キャビティを出てから動翼先端側に向けて開放されるまでの分割環冷却孔の距離は短縮され、特に前記上流側キャビティからの冷却通路では冷却媒体が温まらないうちに動翼先端側に開放されるので、動翼先端部をフィルム冷却し、また、下流側キャビティからの他の冷却通路では軸方向に平行状に延びて冷却媒体を案内することにより分割環を十分に冷却して、併せてガスタービン冷却効率を一段と向上することができたものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の一形態に係るガスタービンにおける分割環の冷却構造を一部破断して示す斜視図である。
【図2】本実施形態の分割環の冷却構造の側面断面図である。
【図3】本実施形態の分割環の冷却構造の要部である圧力隔板によるキャビティ分割を示す説明図である。
【図4】図3に示す圧力隔板の分割部の接合状態を示す説明図である。
【図5】従来のガスタービンにおける分割環の冷却構造を一部破断して示す斜視図である。
【図6】従来の分割環の冷却構造の側面断面図である。
【図7】ガスタービンの全体的な構成を概略的に示す説明図である。
【図8】タービン部の一般的構成を概略的に示す説明図である。
【符号の説明】
1 圧縮機
2 燃焼器
3 タービン
4 発電機
5 静翼
6 動翼
9 冷却媒体
10 分割環
11 インピンジメント冷却口
12 インピンジメント冷却板
13 冷却通路
14 分割環後部
13a 冷却通路
13b 冷却通路
15 主流ガス
15a 上流側主流ガス
15b 下流側主流ガス
16 キャビティ
16a 上流側キャビティ
16b 下流側キャビティ
17 圧力隔板
18 溝
19 遮熱環
Claims (1)
- 分割環とその外周に配置したインピンジメント冷却板との間を周方向に延びる圧力隔板により軸方向で区画し、それぞれ異なる圧力に調整した上流側キャビティと下流側キャビティを設け、前記上流側キャビティの内部は冷却通路を経て動翼先端部の上流側半分の範囲に開口し、下流側キャビティの内部は他の冷却通路を経て軸方向と平行状に延びて動翼の後流に開口したことを特徴とするガスタービンにおける分割環の冷却構造。
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