JP3629343B2 - 熱収縮性ポリエステルフィルム及び熱収縮性フィルム用ポリエステル系樹脂組成物 - Google Patents
熱収縮性ポリエステルフィルム及び熱収縮性フィルム用ポリエステル系樹脂組成物 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規な熱収縮性ポリエステルフィルム及び熱収縮性フィルム用ポリエステル系樹脂組成物、さらに詳しくは、被装着体に装着する際に、収縮斑、しわ、波打ち、折れ曲がりなどが生じることのない熱収縮性ポリエステルフィルム、及びこれに用いられるポリエステル系樹脂組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
熱収縮性フィルムは、熱風、熱水、熱放射線などによって加熱すると収縮する性質があるため、包装材、ラベル、キャップシール、電気絶縁被覆材などとして広い分野で利用されている。
【0003】
この熱収縮性フィルムの素材としては、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリオレフィン、ポリエステルなどが用いられているが、ポリ塩化ビニル系フィルムは使用後焼却処理すると有毒ガスを発生し、環境汚染の原因となるため、次第にその使用が制限される傾向があり、ポリスチレン系フィルムは貯蔵中に自然収縮して使用時における収縮が不十分になるという欠点があり、またポリオレフィン系フィルムは低温収縮性が低いという欠点があるため、最近ポリエステル系フィルムが注目されるようになってきた。
【0004】
ところで、このポリエステル系フィルムの中で最も汎用されているポリエチレンテレフタレート系フィルムは、優れた透明性、耐溶剤性、耐候性を有し、抗張力が高く、しかも焼却時に有毒ガスの発生がないという長所があるが、収縮率の限界値が他のフィルムに比べて低い上に、収縮開始温度が高く、しかも収縮開始温度を超えると急激に収縮率の限界値に達し、コントロールする余地がないという欠点を有している。このため、収縮速度の大きい熱収縮性ポリエステルフィルムを収縮トンネル装置内で加熱すると、加熱処理初期において瞬時に収縮が完了し、それ以降の加熱では、ほとんど収縮しないため、収縮トンネル装置内に初めに入るフィルム部分と後から入るフィルム部分との間で収縮差を生じ、収縮斑、しわ、波打ちなどが発生することになる。このような熱収縮性ポリエステルフィルムの欠点を改善するために、素材として、ポリエチレンテレフタレートにネオペンチルグリコール単位又はイソフタル酸単位を導入し、非晶化及びガラス転移温度の低下を図ったものや(特開昭63−156833号公報、特開昭63−202429号公報、特公昭63−7573号公報)、ポリエチレンテレフタレートにイソフタル酸単位及び1,4‐ブタンジオール単位を導入したポリエステルが提案されている(特開昭63−114629号公報)。
【0005】
しかしながら、ネオペンチルグリコール単位やイソフタル酸単位を含むものは、収縮率の限界値の向上という点ではかなり改善されているが、まだその他の収縮特性については必ずしも満足しうるものではない。すなわち、ネオペンチルグリコール単位を含むポリエステルは、熱収縮性フィルムとしたときに、収縮開始温度が高く、かつ収縮速度も大きいために、収縮差による収縮斑、しわ、波打ちなどを完全に防止することができず、また、イソフタル酸単位を含むポリエステルは、収縮速度の低下や収縮率の限界値を高くするという点で十分な改善が行われていない。一方、イソフタル酸単位及び1,4‐ブタンジオール単位を含むポリエステルは、収縮率の限界値を高めるという点での改善が不十分である。このように、いずれのポリエステルによっても、前記したポリエチレンテレフタレートのもつ欠点を完全に克服することはできない。
【0006】
また、従来知られている熱収縮性ポリエステルフィルムは、必要な収縮率を発現させた場合、その温度における収縮応力が大きいために、プラスチック容器や瓶などの被装着体に、嵌装して加熱した場合、収縮過程の初期に収縮して被装着体に密着固定された部分間のひきつりによってしわや折れ曲がりが発生するという欠点がある。特に角型PETボトルやひっかかり部分のあるプラスチック容器などに装着する場合、あるいは熱風、遠赤外線などによる方向性の強い加熱方式を採用する場合にはこの傾向が著しく、実用上ほとんど使用することができない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような従来の熱収縮性ポリエステルフィルムのもつ欠点を克服し、収縮率の限界値が大きく、収縮開始温度が低い上、収縮速度が適切で、かつ収縮応力が小さく、角型PETボトルやひっかかり部分のある被装着体に装着したり、熱風、遠赤外線などによる方向性の強い加熱方式を採用する場合に、しわや折れ曲がりなどが発生することのない熱収縮性ポリエステルフィルム、及びこれに用いる樹脂組成物を提供することを目的としてなされたものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、熱収縮性ポリエステルフィルムの物性を改良するために鋭意研究を重ねた結果、2種の特定組成の共重合ポリエステルを所定の割合で含有する樹脂組成物により、その目的を達成しうることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、(A)(イ)テレフタル酸単位と(ロ)1,4‐シクロヘキサンジメタノール単位及びエチレングリコール単位とから構成される共重合ポリエステル、及び(B)(ハ)テレフタル酸単位及びイソフタル酸単位と(ニ)1,4‐ブタンジオール単位とから構成される共重合ポリエステルを、重量比60:40ないし90:10の割合で含有する樹脂組成物から成り、かつ100℃の熱水中に30秒間浸せきしたときの主収縮方向の収縮率が40%以上で、主収縮方向に対して直角の方向の収縮率が0〜15%であることを特徴とする熱収縮性ポリエステルフィルム、及びこれに用いる上記の熱収縮性フィルム用ポリエステル系樹脂組成物を提供するものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の樹脂組成物における(A)成分の共重合ポリエステルは、(イ)式
【化1】
で表わされるテレフタル酸単位と、(ロ)式
【化2】
で表わされる1,4‐シクロヘキサンジメタノール単位及び式
【化3】
で表わされるエチレングリコール単位とから構成される。
【0011】
前記(ロ)単位のジオール単位における1,4‐シクロヘキサンジメタノール単位とエチレングリコール単位との割合は、モル比で10:90ないし50:50の範囲にあるのが好ましい。この割合が上記範囲を逸脱すると結晶性が大きくなって、収縮率の限界値が小さくなり、かつ溶剤シール性がそこなわれる。収縮率の限界値及び溶剤シール性などの面から、この1,4‐シクロヘキサンジメタノール単位とエチレングリコール単位の特に好ましい割合は、モル比で20:80ないし40:60の範囲である。
【0012】
この(A)成分の共重合ポリエステルにおいては、前記した構造単位以外に、所望に応じ、ポリエステルの熱特性に影響を与えない量、すなわち通常5重量%以下の割合で他の構造単位が導入されていてもよい。この他の構造単位としては、例えばアジピン酸、アゼライン酸などの脂肪族ジカルボン酸やナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェニルケトンジカルボン酸、ナトリウムスルホイソフタル酸、ジブロモテレフタル酸などの芳香族ジカルボン酸や1,4‐シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸又はそれらのエステル形成性誘導体や1,3‐プロパンジオール、1,4‐ブタンジオール、1,5‐ペンタンジオール、1,6‐ヘキサンジオール、1,4‐ヘキサンジオール、1,7‐ヘプタンジオール、1,8‐オクタンジオール、1,9‐ノナンジオール、1,10‐デカンジオール、ネオペンチルグリコール、2‐メチル‐1,8‐オクタンジオールなどの脂肪族ジオールや1,3‐シクロヘキサンジオール、1,4‐シクロヘキサンジオール、1,3‐シクロヘキサンジメタノール、ノルボルネンジメタノール、トリシクロデカンジメタノールなどの脂環式ジオールや2,2‐ビス(4‐ヒドロキシフェニル)プロパンのエチレンオキシド付加物、4,4´‐スルホニルビスフェノールのエチレンオキシド付加物、1,4‐ジヒドロキシベンゼンのエチレンオキシド付加物などの芳香族ジオールや2‐ヒドロキシプロピオン酸、3‐ヒドロキシ酪酸、4‐ヒドロキシ吉草酸、5‐ヒドロキシカプロン酸、6‐ヒドロキシエナント酸、7‐ヒドロキシカプリル酸、8‐ヒドロキシペラルゴン酸、9‐ヒドロキシカプリン酸などの脂肪族ヒドロキシカルボン酸やヒドロキシ安息香酸、ヒドロキシトルイル酸、ヒドロキシナフトエ酸、3‐(ヒドロキシフェニル)プロピオン酸、ヒドロキシフェニル酢酸、3‐ヒドロキシ‐3‐フェニルプロピオン酸などの芳香族ヒドロキシカルボン酸やヒドロキシメチルシクロヘキサンカルボン酸、ヒドロキシメチルノルボルネンカルボン酸、ヒドロキシメチルトリシクロデカンカルボン酸などの脂環式ヒドロキシカルボン酸又はそれらのエステル形成性誘導体などの二官能性化合物から誘導される単位が挙げられる。
【0013】
また、ポリエステルの物性をそこなわない程度の量、すなわち通常0.5重量%以下の割合で、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、トリカルバリル酸などの三価以上の多価カルボン酸や、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどの三価以上の多価アルコールなどの多官能性化合物から誘導される構造単位が導入されていてもよい。
【0014】
この(A)成分の共重合ポリエステルとしては、ガラス転移温度ができるだけ低いもの、通常は100℃以下、好ましくは90℃以下のものが用いられる。このガラス転移温度が100℃を超えるものは、熱収縮性フィルムとした場合、収縮開始温度が高く、被装着体への装着が困難となる。また、フェノールとテトラクロロエタンとの等重量混合溶媒中、30℃で測定した極限粘度が0.4dl/g以上のものが好ましく、特に0.5〜1.5dl/gの範囲にあるものが好適である。
【0015】
該(A)成分の共重合ポリエステルは公知であり(米国特許第4,786,692号明細書参照)、例えばテレフタル酸及び1,4‐シクロヘキサンジメタノール又はそれらのエステル形成性誘導体を原料とし、公知のポリエステルの製造方法、すなわち、ジカルボン酸成分とジオール成分とを重縮合させる方法、あるいはジカルボン酸低級アルキルエステルとジオールとをエステル交換させる方法などによって製造することができる。
【0016】
(A)成分の共重合ポリエステルを製造するための具体的な実施態様を示すと、テレフタル酸に1,4‐シクロヘキサンジメタノール及びエチレングリコールから成るジオール混合物を、そのジオール混合物の合計量がテレフタル酸の量に対し、過剰量例えば1.1〜2.5倍モルとなるような割合で加え、常圧ないし加圧下に、230〜280℃程度の温度で生成する水を留出させながら反応させ、次いで必要に応じて重縮合触媒や着色防止剤などを添加したのち、5mmHg以下程度の圧力に減圧し、200〜280℃程度で、所望の極限粘度を有するポリエステルが得られるまで反応させる。この際に用いる重縮合触媒としては、例えば酸化アンチモンなどのアンチモン化合物や、酸化ゲルマニウムなどのゲルマニウム化合物やテトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラ‐n‐プロポキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラブトキシチタンなどのチタン化合物や、ジ‐n‐ブチルスズジラウレート、ジ‐n‐ブチルスズオキシド、ジ‐n‐ブチルスズジアセテートなどのスズ化合物などが挙げられ、これらの触媒の併用も可能である。この触媒は、生成するポリエステルに対して0.002〜0.8重量%の範囲内の量で用いるのが好ましい。また、前記着色防止剤としては、例えば亜リン酸、リン酸、トリメチルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリメチルホスフェート、トリデシルホスフェート、トリフェニルホスフェートなどのリン化合物を挙げることができ、生成するポリエステルに対し、通常0.001〜0.5重量%の範囲内の量で用いる。
【0017】
また、エステル交換反応の場合には、テレフタル酸アルキルエステルが用いられるが、このようなエステルの例としては、ジメチルテレフタレート、ジエチルテレフタレート、ジプロピルテレフタレートなどの低級アルキルエステルを挙げることができる。なお、テレフタル酸には通常イソフタル酸が不純物として含有されているが、この量が実質的に(A)成分の物性をそこなわない限りそのまま使用しても差しつかえない。このようなテレフタル酸を用いると、(A)成分の共重合ポリエステル中にイソフタル酸から誘導される単位が混在することになる。
【0018】
一方、樹脂組成物の(B)成分として用いられる共重合ポリエステルは、(ハ)前記式(I)で表わされるテレフタル酸単位及び式
【化4】
で表わされるイソフタル酸単位と、(ニ)式
【化5】
で表わされる1,4‐ブタンジオール単位とから構成される。
【0019】
前記(ハ)単位のジカルボン酸単位におけるテレフタル酸単位とイソフタル酸単位との割合は、モル比で50:50ないし95:5の範囲にあるのが好ましい。イソフタル酸単位を上記の割合で含有させると、熱収縮性フィルムとした場合に、所望の熱収縮率が維持されるとともに、収縮応力が小さくなり、より複雑な形状の被装着体に加熱装着する際の収縮むら、しわ、波打ちなどが低減される。熱収縮性フィルムの熱収縮率、収縮応力、被装着体への装着性などの点から、このテレフタル酸単位とイソフタル酸単位の特に好ましい割合は、モル比で65:35ないし90:10の範囲である。
【0020】
この(B)成分の共重合ポリエステルにおいては、前記した構造単位以外に、所望に応じ、ポリエステルの熱特性に影響を与えない量、すなわち通常5重量%以下の割合で、他の構造単位が導入されていてもよい。この他の構造単位としては、例えばアジピン酸、アゼライン酸などの脂肪族ジカルボン酸や、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェニルケトンジカルボン酸、ナトリウムスルホイソフタル酸、ジブロモテレフタル酸などの芳香族ジカルボン酸や、1,4‐シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸又はそれらのエステル形成性誘導体や、1,3‐プロパンジオール、1,5‐ペンタンジオール、1,6‐ヘキサンジオール、1,4‐ヘキサンジオール、1,7‐ヘプタンジオール、1,8‐オクタンジオール、1,9‐ノナンジオール、1,10‐デカンジオール、ネオペンチルグリコール、2‐メチル‐1,8‐オクタンジオールなどの脂肪族ジオールや、1,3‐シクロヘキサンジオール、1,4‐シクロヘキサンジオール、1,3‐シクロヘキサンジメタノール、1,4‐シクロヘキサンジメタノール、ノルボルネンジメタノール、トリシクロデカンジメタノールなどの脂環式ジオールや、2,2‐ビス(4‐ヒドロキシフェニル)プロパンのエチレンオキシド付加物、4,4´‐スルホニルビスフェノールのエチレンオキシド付加物、1,4‐ジヒドロキシベンゼンのエチレンオキシド付加物などの芳香族ジオールや、2‐ヒドロキシプロピオン酸、3‐ヒドロキシ酪酸、4‐ヒドロキシ吉草酸、5‐ヒドロキシカプロン酸、6‐ヒドロキシエナント酸、7‐ヒドロキシカプリル酸、8‐ヒドロキシペラルゴン酸、9‐ヒドロキシカプリン酸などの脂肪族ヒドロキシカルボン酸や、ヒドロキシ安息香酸、ヒドロキシトルイル酸、ヒドロキシナフトエ酸、3‐(ヒドロキシフェニル)プロピオン酸、ヒドロキシフェニル酢酸、3‐ヒドロキシ‐3‐フェニルプロピオン酸などの芳香族ヒドロキシカルボン酸や、ヒドロキシメチルシクロヘキサンカルボン酸、ヒドロキシメチルノルボルネンカルボン酸、ヒドロキシメチルトリシクロデカンカルボン酸などの脂環式ヒドロキシカルボン酸又はそれらのエステル形成性誘導体などの二官能性化合物から誘導される構造単位が挙げられる。
【0021】
また、ポリエステルの物性をそこなわない程度の量、すなわち通常0.5重量%以下の割合で、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、トリカルバリル酸などの三価以上の多価カルボン酸やトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどの三価以上の多価アルコールなどの多官能性化合物から誘導される構造単位が導入されていてもよい。
【0022】
この(B)成分の共重合ポリエステルとしては、フェノールとテトラクロロエタンとの等重量混合溶媒中、30℃で測定した極限粘度が0.4dl/g以上のものが好ましい。極限粘度が0.4dl/g未満では、熱収縮性フィルムとした場合に、強度や耐衝撃性などの機械的性能が不十分となる。熱収縮性フィルムへの成形性、熱収縮性フィルムとした場合の機械的性能などの点から、この極限粘度の特に好ましい範囲は、0.5〜1.5dl/gである。
【0023】
この(B)成分の共重合ポリエステルは、前記した(A)成分の共重合ポリエステルと同様に、ポリエステルを製造する常法に従って製造することができる。すなわち、(B)成分の共重合ポリエステルはジカルボン酸とジオールとをエステル化反応後重縮合させる直接法、あるいはジカルボン酸低級アルキルエステルとジオールとをエステル交換反応後重縮合反応させるエステル交換法により製造することができる。この重合は溶融重合によることができるが、高重合度のものが要求されるときには、溶融重合と固相重合との組合せ、例えば溶融重合で得られたポリエステルを減圧下又は不活性ガス気流下において融点又は軟化点以下の温度で熱処理して固相重合させることにより行うことができる。
【0024】
次にジメチルテレフタレート、ジメチルイソフタレート及び1,4‐ブタンジオールから誘導される構造単位を有するポリエステルのエステル交換法を用いた製造方法について説明する。
【0025】
すなわち、ジメチルテレフタレート及びジメチルイソフタレートから成るジメチルジカルボキシレート混合物と、1,4‐ブタンジオールから成るジオール成分を、そのジオール成分の合計量がジメチルジカルボキシレート混合物の量に対し、過剰量例えば1.1〜4.0倍モルとなるような割合で加え、さらにエステル交換反応触媒を加えたのち、常圧ないしは絶対圧3kg/cm2程度の加圧下に、160〜250℃程度の温度で、生成するアルコールを留出させながらエステル交換反応を行い、次いで必要に応じて重縮合触媒や着色防止剤などを添加したのち、5mmHg以下程度の圧力に減圧し、200〜280℃程度の温度で、所望の極限粘度を有するポリエステルが得られるまで反応させる。この際に用いるエステル交換触媒及び重縮合触媒としてはそれぞれ公知のものを用いることができ、このようなものの例としては、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラ‐n‐プロポキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラブトキシチタン、シュウ酸チタンカリウムなどのチタン化合物やジ‐n‐ブチルスズジラウレート、ジ‐n‐ブチルスズオキシド、ジ‐n‐ブチルスズジアセテートなどのスズ化合物やマグネシウム、カルシウム、亜鉛などの金属の酢酸塩と酸化アンチモン又は上記チタン化合物との混合物などを挙げることができる。これらの触媒は、生成するポリエステルに対して0.002〜0.8重量%の範囲になるような量で用いるのが好ましい。また、着色防止剤としては、(A)成分の共重合ポリエステルの製造例において挙げた公知のものを用いることができ、生成するポリエステルに対して0.001〜0.5重量%の範囲になるような量で用いるのが好ましい。
【0026】
エステル交換反応による場合には、テレフタル酸アルキルエステル及びイソフタル酸アルキルエステルが用いられ、このようなものの例としては、ジメチルテレフタレート及びジメチルイソフタレートのほかに、ジエチルテレフタレート、ジプロピルテレフタレート及びジエチルイソフタレート、ジプロピルイソフタレートのような低級アルキルエステルを挙げることができる。
【0027】
一方、直接法を用いて(B)成分の共重合ポリエステルを製造する場合には、(A)成分の共重合ポリエステルの製造において挙げた方法に準じて行えばよいが、テトラヒドロフランの生成が非常に起こりやすいため、エステル化反応時にテトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラ‐n‐プロポキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラブトキシチタン、シュウ酸チタンカリウムなどのチタン化合物やジ‐n‐ブチルスズジラウレート、ジ‐n‐ブチルスズオキシド、ジ‐n‐ブチルスズジアセテートのようなスズ化合物などのエステル化触媒を、生成するポリエステルに対して0.002〜0.8重量%の範囲になるような量で用いるのが好ましい。
【0028】
本発明フィルムの素材として用いられる樹脂組成物においては、前記(A)成分の共重合ポリエステルと(B)成分の共重合ポリエステルとを、重量比60:40ないし90:10の割合で含有することが必要である。(A)成分の割合が上記範囲より少ないと溶剤シール性に劣り、収縮率の限界値が小さくなる上、それ以上の収縮応力の低減効果が期待できない。一方(A)成分の割合が前記範囲より多いと収縮速度が速すぎ、かつ収縮応力が大きく、仕上がり外観が低下する。溶剤シール性、収縮速度、収縮応力などのバランスの面から、この(A)成分と(B)成分の特に好ましい割合は、重量比70:30ないし85:15の範囲である。
【0029】
この樹脂組成物には、一般のポリエステル系熱収縮性フィルムに用いる素材の場合と同様に、必要に応じ、他の熱可塑性樹脂、酸化防止剤、紫外線安定剤、帯電防止剤、難燃剤、難燃補助剤、着色剤、潤滑剤、可塑剤、充填剤などを含有させることができる。
【0030】
次に、本発明の熱収縮性ポリエステルフィルムは、前記した樹脂組成物を素材として用い、通常のポリエステル系一方向収縮フィルムの製造に慣用されている方法と同様の方法、例えばフィルム状に成形し、それと同時に又はその後で一方向に1.01〜1.2倍程度延伸し、その後それと直角方向に3〜7倍程度、好ましくは3.5〜5倍延伸し、さらに必要に応じて熱処理する方法によって製造することができる。この際のフィルム状に成形する方法としては、キャスト法、インフレーション法などの任意の方法を用いることができる。
【0031】
本発明のフィルムに用いる樹脂組成物のガラス転移温度としては、60〜77℃の範囲内が好ましく、63〜75℃の範囲内がより好ましい。ガラス転移温度が60℃未満の場合は、収縮開始温度が低すぎ、保存中に収縮を起こすことがある。また77℃を超える場合は、収縮開始温度が高いため通常の収縮条件では収縮不足を起こす。
【0032】
また、延伸処理は、樹脂組成物のガラス転移温度より高い温度で行うのが好ましく、特に好ましい延伸フィルムは、ガラス転移温度より5〜25℃高い温度領域で延伸処理することによって得られる。
【0033】
上記のようにして延伸処理されたフィルムは、そのまま熱収縮性フィルムとして使用することが可能であるが、さらに熱処理してもよい。該熱処理は通常50〜150℃の範囲内の温度、数秒間から数十秒間の範囲内の時間において、収縮性を喪失してしまわないような条件下で行う。この熱処理に際して、必要に応じて主延伸方向に弛緩処理することもさしつかえない。このような熱処理を行うことにより、熱収縮性フィルムの収縮率の調整、熱収縮性フィルム保存時の自然収縮の抑制、収縮後の収縮斑の減少など、寸法安定性を向上させることができる。
【0034】
このようにして得られる熱収縮性ポリエステルフィルムは、100℃の熱水中に30秒間浸せきしたとき、主収縮方向に40%以上、好ましくは50〜75%収縮するが、主収縮方向に対して直角の方向には0〜15%、好ましくは0〜10%しか収縮せず、主収縮方向に対して直角の方向には実質的に伸縮を示さない。
【0035】
また、主収縮方向の収縮応力は、フィルム厚さによって若干その数値に変動があるが、例えばフィルム厚さが30μmの場合、100℃においてその最大値が、通常700g/mm2以下、好ましくは600g/mm2以下である。収縮応力が700g/mm2を超えると、角型PETボトルやひっかかり部分のあるプラスチック容器に装着する場合や、熱風、遠赤外線などによる方向性の強い加熱方式を採用する場合に、しわや折れ曲がりが発生して好ましくない。
【0036】
また、この熱収縮性フィルムは、特定の性能を付与するために、所望に応じ通常行われている表面処理、例えば、紫外線、α線、β線、γ線、電子線などの照射、コロナ処理、プラズマ処理、火炎処理や、ポリ塩化ビニリデン、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリビニルアルコールなどによる樹脂被覆処理、金属蒸着処理などを施すことができる。
【0037】
上記熱収縮性ポリエステルフィルムの厚さは、用途に応じて適宜選択しうるが、通常1〜600μmの範囲内である。包装用途、特に、食品、飲料、医薬品などの包装用途においては、厚さが5〜380μmの範囲のものが好適である。また、ポリエステルボトル、ガラス瓶などのボトルやその他プラスチック容器などのラベルとして用いる場合には、厚さが15〜70μmの範囲内のものが好適である。
【0038】
【発明の効果】
本発明の熱収縮性ポリエステルフィルムは、主収縮方向において収縮率の限界値が大きく、低温収縮性に優れ、かつ収縮速度が緩和され、収縮応力が小さく、また主収縮方向に対して直角の方向に実質的な伸縮を示さない。したがって、装着後のフィルムに、収縮斑、しわ、波打ちなどのない良好な仕上りを与え、特に角型PETボトルやひっかかり部分のあるプラスチック容器などに装着する場合、あるいは熱風、遠赤外線などによる方向性の強い加熱方式を採用する場合でも、しわや折れ曲がりが発生することなく、優れた外観をもつ製品を与えることができる。
【0039】
【実施例】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、例中の各物性は以下の方法に従って評価した。
【0040】
(1)共重合ポリエステル中に導入された構造単位の含有割合
共重合ポリエステルを構成するテレフタル酸などの各モノマーから誘導されたそれぞれの構造単位について、共重合ポリエステル中の全構造単位に対する割合を、重水素化トリフルオロ酢酸を溶媒として、1H−NMR測定(日本電子製JNM−GX−270型)の結果から求めた。
【0041】
(2)極限粘度
フェノールとテトラクロロエタンの等重量混合溶媒中、30℃で、ウデローデ型粘度計(林製作所製「HRK−3型」)を用いて測定した。
【0042】
(3)ガラス転移温度(Tg)
JIS K7121に準じて、示差熱分析法(DSC)により、熱分析システム「メトラーTA3000」(メトラー社製)を用いて、昇温速度10℃/分の条件で測定した。
【0043】
(4)収縮率
フィルムを100mm角に裁断してサンプルとし、このサンプルを100℃に調整した熱水浴中に30秒間浸せきしたのち、縦及び横の寸法を測定し、それぞれ次式に従って計算した。収縮分に+、伸長分に−を付して示した。
【0044】
(5)収縮応力
フィルムを主収縮方向に長さ100mm、幅25mmで裁断し、これをチャック間距離50mmのロードセル式熱収縮応力試験機にセットし、100℃の恒温室内に装入し、その応力を測定し、最大値を断面積当たりの応力として計算した。
【0045】
(6)溶剤シール強度
フィルムから2枚の試験片を裁断し、少量のテトラヒドロフランを綿棒を用いて試験片の一方に直線状に塗布し、直ちに片方の試験片をそれに貼り合わせて接着し、23℃で一昼夜放置したのち、試験片をテトラヒドロフランを塗布、接着した直線に直角方向に幅25mmの短冊状に裁断し、引張試験機を用いて200mm/分の引張速度で180度剥離試験を行って、フィルムが剥離した際の応力の最大値より下記の評価基準に従って溶剤シール強度を判定した。
400g/25mm以上 ;○
200g/25mm以上、400g/25mm未満;△
200g/25mm未満 ;×
【0046】
(7)装着試験
500ml角型PETボトルに円筒状に溶剤シールした熱収縮フィルムを嵌合し、180℃の熱風収縮トンネル中をそれぞれ10、15、20秒で通過させることで装着したものについて、目視により、フィルムのしわや折れ曲がりなどの不良箇所の有無を観察し、以下の基準により判定した。(試験は各試料について10回行った。)
◎;全く不良箇所がない
○;1試料当たり平均1個未満の不良箇所あり
△;1試料当たり平均1個以上5個未満の不良箇所あり
×;1試料当たり平均5個以上の不良箇所あり
【0047】
実施例
(1)共重合ポリエステルAの製造
テレフタル酸100.00重量部、1,4‐シクロヘキサンジメタノール28.94重量部及びエチレングリコール44.83重量部からなるスラリーを調製し、これに0.035重量部の三酸化アンチモン及び0.010重量部の亜リン酸を加えたのち、加圧下(絶対圧2.5kg/cm2)、250℃の温度でエステル化率が95%になるまでエステル化を行い、低重合体を製造した。次いで、絶対圧1mmHgの減圧下、270℃の温度でこの低重合体を重縮合し、極限粘度0.80dl/gの共重合ポリエステルAを得た。得られた共重合ポリエステルAにおける各構造単位の全構造単位に対する含有割合は、テレフタル酸単位50モル%、1,4‐シクロヘキサンジメタノール単位15モル%、エチレングリコール単位34モル%、副生ジエチレングリコール単位1モル%であって、1,4‐シクロヘキサンジメタノール単位とエチレングリコール単位とのモル比は30.6:69.4であった。また、ガラス転移温度は81℃であった。
【0048】
(2)共重合ポリエステルBの製造
ジメチルテレフタレート75重量部、ジメチルイソフタレート25重量部、1,4‐ブタンジオール56重量部からなるスラリーを調製し、これに0.035重量部のテトライソプロポキシチタンを加えたのち、常圧窒素気流下で170℃から230℃まで徐々に昇温しながらメタノールを留出させ、エステル交換率が90%になるまでエステル交換を行って、低重合体を製造した。次いで、この低重合体に0.010重量部の亜リン酸を加え、絶対圧1mmHgの減圧下、250℃の温度で重縮合し、極限粘度1.24dl/gの共重合ポリエステルBを得た。
得られた共重合ポリエステルBにおける各構造単位の含有割合を、上記した方法で測定したところ、テレフタル酸単位37.5モル%、イソフタル酸単位12.5モル%、1,4‐ブタンジオール単位50モル%であって、テレフタル酸単位とイソフタル酸単位とのモル比は75:25であった。
【0049】
(3) 上記(1)で得られた共重合ポリエステルAを80重量部及び上記(2)で得られた共重合ポリエステルBを20重量部の割合で混合し、270℃に加熱して溶融させ、T−ダイより30℃の冷却ロール上に押出し、厚さ0.14mm、幅650mmの未延伸フィルムを得た。このフィルムのガラス転移温度は70℃であった。
【0050】
(4) 次にこの未延伸フィルムを、ロール式縦延伸機を用いて90℃で1.05倍に縦方向に延伸したのち、テンターを用いて85℃で4.5倍に横方向に延伸し、厚さ30μmの延伸フィルム(熱収縮性ポリエステルフィルム)を得た。このようにして得た熱収縮性ポリエステルフィルムの物性評価結果を表1に示す。
【0051】
比較例1
(1)ポリブチレンテレフタレートの製造
ジメチルテレフタレート100重量部、1,4‐ブタンジオール56重量部からなるスラリーを調製し、これに0.035重量部のテトライソプロポキシチタンを加えたのち、常圧窒素気流下で170℃から230℃まで徐々に昇温しながらメタノールを留出させ、エステル交換率が90%になるまでエステル交換を行って、低重合体を製造した。次いで、この低重合体に0.010重量部の亜リン酸を加え、絶対圧1mmHgの減圧下、250℃の温度で重縮合し、極限粘度0.90dl/gのポリブチレンテレフタレートを得た。
得られたポリブチレンテレフタレートにおける各構造単位の含有割合を、上記した方法で測定したところ、テレフタル酸単位50モル%、1,4‐ブタンジオール単位50モル%であった。
【0052】
(2) 実施例(1)で得られた共重合ポリエステルAを80重量部及び上記(1)で得られたポリブチレンテレフタレートを20重量部の割合で混合し、270℃に加熱して溶融させ、T−ダイより30℃の冷却ロール上に押出し、厚さ0.14mm、幅650mmの未延伸フィルムを得た。このフィルムのガラス転移温度は71℃であった。
【0053】
(3) 次にこの未延伸フィルムを、ロール式縦延伸機を用いて91℃で1.05倍に縦方向に延伸したのち、テンターを用いて86℃で4.5倍に横方向に延伸し、厚さ30μmの延伸フィルム(熱収縮性ポリエステルフィルム)を得た。このようにして得た熱収縮フィルムの物性評価結果を表1に示す。
【0054】
比較例2
(1) 実施例(1)で得られた共重合ポリエステルAを70重量部及びポリエチレンテレフタレートを30重量部の割合で混合し、270℃に加熱して溶融させ、T−ダイより30℃の冷却ロール上に押出し、厚さ0.14mm、幅650mmの未延伸フィルムを得た。このフィルムのガラス転移温度は80℃であった。
【0055】
(2) 次にこの未延伸フィルムを、ロール式縦延伸機を用いて100℃で1.05倍に縦方向に延伸したのち、テンターを用いて95℃で4.5倍に横方向に延伸し、厚さ30μmの延伸フィルム(熱収縮性ポリエステルフィルム)を得た。このようにして得た熱収縮フィルムの物性評価結果を表1に示す。
【0056】
【表1】
【0057】
表1から明らかなように、本発明の熱収縮性フィルムは装着試験においてしわや折れ曲がりがなく仕上がり外観に優れている。それに比べ、比較例1及び比較例2はしわや折れ曲がりが発生しやすい。
Claims (6)
- (A)(イ)テレフタル酸単位と(ロ)1,4‐シクロヘキサンジメタノール単位及びエチレングリコール単位とから構成される共重合ポリエステル、及び(B)(ハ)テレフタル酸単位及びイソフタル酸単位と(ニ)1,4‐ブタンジオール単位とから構成される共重合ポリエステルを、重量比60:40ないし90:10の割合で含有する樹脂組成物から成り、かつ100℃の熱水中に30秒間浸せきしたときの主収縮方向の収縮率が40%以上で、主収縮方向に対して直角の方向の収縮率が0〜15%であることを特徴とする熱収縮性ポリエステルフィルム。
- (A)成分の(ロ)ジオール単位における1,4‐シクロヘキサンジメタノール単位とエチレングリコール単位との割合が、モル比10:90ないし50:50である請求項1記載の熱収縮性ポリエステルフィルム。
- (B)成分の(ハ)ジカルボン酸単位におけるテレフタル酸単位とイソフタル酸単位との割合がモル比50:50ないし95:5である請求項1又は2記載の熱収縮性ポリエステルフィルム。
- (A)(イ)テレフタル酸単位と(ロ)1,4‐シクロヘキサンジメタノール単位及びエチレングリコール単位とから構成される共重合ポリエステル、及び(B)(ハ)テレフタル酸単位及びイソフタル酸単位と(ニ)1,4‐ブタンジオール単位とから構成される共重合ポリエステルを、重量比60:40ないし90:10の割合で含有して成る熱収縮性フィルム用ポリエステル系樹脂組成物。
- (A)成分の(ロ)ジオール単位における1,4‐シクロヘキサンジメタノール単位とエチレングリコール単位との割合が、モル比10:90ないし50:50である請求項4記載の熱収縮性フィルム用ポリエステル系樹脂組成物。
- (B)成分の(ハ)ジカルボン酸単位におけるテレフタル酸単位とイソフタル酸単位との割合がモル比50:50ないし95:5である請求項4又は5記載の熱収縮性フィルム用ポリエステル系樹脂組成物。
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