JP3628165B2 - ポリエステルおよびその用途 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリエステルに関し、また、該ポリエステルからなる光学部品に関する。本発明のポリエステルは、透明性、耐熱性等が良好であり、且つ、低複屈折性を有しており、光ディスク基板、ピックアップレンズ、液晶セル用プラスチック基板、プリズム等の光学部品に有用である。
【0002】
【従来の技術】
無機ガラスは、透明性に優れ、光学異方性が小さいなどの諸物性に優れていることから、透明性材料として広い分野で使用されている。しかしながら、重くて破損しやすいこと、生産性が悪いこと等の問題があり、近年、無機ガラスに代わる透明性ポリマーの開発が盛んに行われている。
透明性ポリマーとして、例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート等は、透明性、機械物性(例えば、耐衝撃性など)に優れ、且つ、加工性、成形性に優れることから、無機ガラスの代替分野、例えば、自動車の透明部品やレンズ等に使用されている。
【0003】
一方、レーザー光を用いて、音声、画像、文字等の情報を記録、再生する光ディスクは、近年、急速に用途が拡大している。しかしながら、情報記録媒体として使用される光ディスクにおいては、ディスク本体をレーザー光線が通過するために透明であることは勿論のこと、情報の読みとり誤差を少なくするために光学的均質性が強く求められている。例えば、従来より公知のポリマー(例えば、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレートなど)を用いた場合には、ディスク基板成形時の樹脂の冷却および流動過程において生じた熱応力、分子配向、ガラス転移点付近の容積変化等による残留応力が原因となり、レーザー光線がディスク基板を通過する際に複屈折が生じる。この複屈折に起因する光学的不均一性が大きいことは、例えば、記録された情報の読みとり誤りが生じるなど、光ディスク基板等の光学部品にとっては致命的欠陥となる。このような光ディスク基板を初めとする光学部品においては、より高度な光学特性、すなわち、低複屈折性を有し、且つ、透明性、耐熱性等に優れた材料が要求されている。
【0004】
上述した問題を解決するための方法の一つとして、スピロビインダノール単独またはスピロビインダノールとビスフェノールAとの共重合型ポリカーボネートのような、スピロ化合物を用いた低複屈折性ポリカーボネートが開示されている(特開昭63−314235号公報)。しかしながら、前者のポリカーボネートは低複屈折ではあるものの、透明性および機械強度が悪く、実用的に問題を有しており、また、後者のポリカーボネートはビスフェノールA成分の増加により、透明性および機械強度は向上するものの、複屈折が大きくなり、光学部品としての使用範囲が限定されてしまう問題点があり、これらの相反する問題点を解決することが強く望まれていた。
【0005】
同様に、スピロビクロマン構造を有するポリカーボネート等のポリマーが低複屈折性を有する材料として提案されている(特開平3−162413号公報)。しかしながら、該ポリマーにおいても、スピロビクロマン誘導体単独のポリカーボネートは低複屈折であるものの、透明性および機械強度が悪く、実用的に問題を有しており、また、スピロビクロマン誘導体とビスフェノールAとの共重合ポリカーボネートはビスフェノールA成分の増加により透明性および機械強度は向上するものの、複屈折が大きくなるという問題点があり、前記同様、これらの相反する問題点を解決が望まれていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、上記の問題点を克服し、光学部品用に有用な透明性、耐熱性が良好で、且つ、低複屈折性を有するポリエステルを提供すること、ならびに該ポリエステルからなる光学部品を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記問題点を解決するために鋭意検討した結果、本発明に到達した。すなわち、本発明は、
▲1▼下記一般式(1)(化3)で表される繰り返し構造単位を含有するポリエステル、
▲2▼下記一般式(2)(化4)で表される繰り返し構造単位を含有するポリエステル、
▲3▼前記▲1▼、▲2▼のいずれかに記載のポリエステルを含有してなる光学部品に関するものである。
【0008】
【化3】
(式中、R1 は置換基を有していてもよい直鎖、分岐または環状のアルキル基、置換基を有していてもよい直鎖、分岐または環状のアルコキシ基、ニトロ基あるいはハロゲン原子を表し、mは0〜3の整数を表し、ノルボルナン環に置換された2つのエステル結合を形成するカルボキシル基の置換位置は(2,3−)位、(2,5−)位または(2,6−)位である)
【0009】
【化4】
(式中、R1 およびmは前記と同じ意味を表す)
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に関して詳細に説明する。
本発明のポリエステルは、一般式(1)または一般式(2)で表される繰り返し構造単位を含有することを特徴とするポリエステルである。
一般式(1)および一般式(2)において、R1 は、置換基を有していてもよい直鎖、分岐または環状のアルキル基、置換基を有していてもよい直鎖、分岐または環状のアルコキシ基、ニトロ基あるいはハロゲン原子を表す。
R1 のアルキル基またはアルコキシ基の置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシアルコキシ基、シクロアルキル基、ヘテロ原子含有のシクロアルキル基、シクロアルコキシ基、ヘテロ原子含有のシクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アリールオキシアルコキシ基、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0011】
R1 の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−テトラデシル基、n−オクタデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、4−tert−ブチルシクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、テトラヒドロフルフリル基、メトキシエチル基、エトキシエチル基、2−n−ブトキシエチル基、3−メトキシプロピル基、3−エトキシプロピル基、3−n−プロポキシプロピル基、3−n−ブトキシプロピル基、3−n−ヘキシルオキシプロピル基、メトキシエトキシエチル基、エトキシエトキシエチル基、フェノキシメチル基、フェノキシエトキシエチル基、クロロメチル基、クロロエチル基、3−クロロプロピル基、2,2,2−トリクロロエチル基、
【0012】
メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシル基、n−オクチルオキシ基、n−デシルオキシ基、n−ドデシルオキシ基、n−テトラデシルオキシ基、n−オクタデシルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、4−tert−ブチルシクロヘキシルオキシ基、シクロヘプチルオキシ基、シクロオクチルオキシ基、シクロヘキシルメトキシ基、シクロヘキシルエトキシ基、メトキシエトキシ基、エトキシエトキシ基、n−ブトキシエトキシ基、3−メトキシプロポキシ基、3−エトキシプロポキシ基、3−n−プロポキシプロポキシ基、3−n−ブトキシプロポキシ基、3−n−ヘキシルオキシプロポキシ基、メトキシエトキシエトキシ基、フェノキシメトキシ基、フェノキシエトキシエトキシ基、クロロメトキシ基、クロロエトキシ基、3−クロロプロポキシ基、2,2,2−トリクロロエトキシ基、
ニトロ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0013】
一般式(1)および一般式(2)におけるR1 は、好ましくは、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の直鎖、分岐または環状のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、ニトロ基あるいはハロゲン原子であり、より好ましくは、炭素数1〜10の無置換の直鎖または分岐のアルキル基、炭素数1〜10無置換の直鎖または分岐のアルコキシ基あるいは塩素原子であり、さらに好ましくは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基または塩素原子である。特に好ましくは、R1 はメチル基または塩素原子である。
【0014】
一般式(1)および一般式(2)において、mは0〜3の整数を表し、好ましくは、0、1または2であり、さらに好ましくは0である。
一般式(1)において、ノルボルナン環に置換された2つのエステル結合を形成するカルボキシル基の置換位置は(2,3−)位、(2,5−)位または(2,6−)位であり、好ましくは、(2,5−)位または(2,6−)位である。
【0015】
本発明の一般式(1)で表される繰り返し構造単位を含有するポリエステルは、一般式(3)(化5)で表されるジヒドロキシ化合物と、2、3−ノルボルナンジカルボン酸、2、5−ノルボルナンジカルボン酸、2、6−ノルボルナンジカルボン酸またはそれらの誘導体とから得られる。
【0016】
【化5】
(上式中、R1 およびmは前記と同じ意味を表す)
【0017】
また、本発明の一般式(2)で表される繰り返し構造単位を含有するポリエステルは、前記一般式(3)で表されるジヒドロキシ化合物と、5−ノルボルネン−2、3−ジカルボン酸またはその誘導体とから得られる。
一般式(3)で表されるジヒドロキシ化合物としては、代表的には以下の第1表(表1〜2)に示すジヒドロキシ化合物を例示することができるが、勿論本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、これらの一般式(3)で表されるジヒドロキシ化合物は、単独で使用してもよく、また異なる2種類以上を併用してもよい。
【0018】
【表1】
【0019】
【表2】
【0020】
一般式(3)で表されるジヒドロキシ化合物(スピロビインダノール誘導体ともいう)は、公知の方法、例えば、特開昭62−10030号公報等に記載の方法、すなわち、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン誘導体をパーフルオロアルカンスルホン酸の存在下に加熱処理する方法に従い製造される。
一般式(3)で表されるジヒドロキシ化合物は、各種公知の方法(例えば、カラムクロマトグラフィー、蒸留、再結晶等)により精製することができる。
【0021】
本発明の一般式(1)で表される繰り返し構造単位を有するポリエステルの製造の際に用いられる2、3−ノルボルナンジカルボン酸、2、5−ノルボルナンジカルボン酸、2、6−ノルボルナンジカルボン酸またはそれらの誘導体は、公知の化合物である。2、3−ノルボルナンジカルボン酸、2、5−ノルボルナンジカルボン酸および2、6−ノルボルナンジカルボン酸またはそれらの誘導体は、単独で用いてもよく、また、混合して用いてもよい(以下、2、3−ノルボルナンジカルボン酸、2、5−ノルボルナンジカルボン酸および2、6−ノルボルナンジカルボン酸を、ノルボルナンジカルボン酸と称する)。
該誘導体としては、ノルボルナンジカルボン酸ジメチル、ノルボルナンジカルボン酸ジエチル、ノルボルナンジカルボン酸ジn−プロピル、ノルボルナンジカルボン酸ジイソプロピル、ノルボルナンジカルボン酸ジブチル等のジカルボン酸エステル誘導体、ノルボルナンジカルボン酸ジクロリド、ノルボルナンジカルボン酸ジブロミド、ノルボルナンジカルボン酸ジヨウジド等のジカルボン酸ハライド等を挙げることができる。
【0022】
本発明の一般式(2)で表される繰り返し構造単位を有するポリエステルの製造の際に用いられる5−ノルボルネン−2、3−ジカルボン酸またはそれらの誘導体は、公知の化合物である(以下、5−ノルボルネン−2、3−ジカルボン酸をノルボルネンジカルボン酸と称する)。
該誘導体としては、ノルボルネンジカルボン酸ジメチル、ノルボルネンジカルボン酸ジエチル、ノルボルネンジカルボン酸ジn−プロピル、ノルボルネンジカルボン酸ジイソプロピル、ノルボルネンジカルボン酸ジブチル等のジカルボン酸エステル誘導体、ノルボルネンジカルボン酸ジクロリド、ノルボルネンジカルボン酸ジブロミド、ノルボルネンジカルボン酸ジヨウジド等のジカルボン酸ハライド等を挙げることができる。
【0023】
一般式(1)および一般式(2)で表される構造単位において、エステル結合を形成するヒドロキシ基を含む置換基の置換位置は、一方が4位、5位、6位または7位であり、もう一方の置換位置は4’位、5’位、6’位または7’位である。この内、該置換基の好ましい置換位置は、一般式(4−a)〜一般式(4−e)(化6)であり、より好ましくは、一般式(4−a)〜一般式(4−d)であり、特に好ましくは、一般式(4−a)である。
【0024】
【化6】
(上式中、R1 およびmは前記と同じ意味表す)
【0025】
本発明のポリエステルは、製造方法それ自体は、各種公知のポリエステル重合方法に従い製造することができる。例えば、一般式(1)または一般式(2)で表される繰り返し構造単位を含有するポリエステルは、例えば、実験化学講座第4版(28巻)、高分子合成、217〜231頁、丸善出版(1988年)に記載の方法〔例えば、エステル交換法、直接重合法、酸クロリド法等の溶融重合法、溶液重合法、界面重合法など〕により製造することができる。
エステル交換法は、前記ジヒドロキシ化合物と前記ジカルボン酸エステル誘導体とを溶融状態または溶液状態で、加熱下において、脱アルコールさせ、所望により触媒の存在下に反応させる方法である。
【0026】
直接重合法は、前記ジヒドロキシ化合物とノルボルナンジカルボン酸またはノルボルネンジカルボン酸とを溶融状態または溶液状態で、加熱下において脱水縮合し、所望により触媒の存在下に反応させる方法である。
酸クロリド法は、前記ジヒドロキシ化合物と前記ジカルボン酸クロリドとを溶融状態、溶液状態または界面重合法で、加熱下において脱HClさせ、所望により触媒の存在下に反応させる方法である。
界面重合法は、前記ジヒドロキシ化合物と前記ジカルボン酸ジクロリドを、有機溶媒、触媒、水、アルカリ金属またはアルカリ土類金属塩基を使用して反応させる方法である。
【0027】
本発明のポリエステルは、一般式(1)または一般式(2)で表される繰り返し構造単位を含有することを特徴とするポリエステルである。
一般式(1)で表される繰り返し構造単位を含有する本発明のポリエステルは、異なる複数の一般式(1)で表される構造単位を含有するポリエステル共重合体であってもよく、また一般式(1)で表される構造単位以外に、他の構造単位を含有しているポリエステル共重合体であってもよい。
一般式(2)で表される繰り返し構造単位を含有する本発明のポリエステルは、異なる複数の一般式(2)で表される構造単位を含有するポリエステル共重合体であってもよく、また一般式(2)で表される構造単位以外に、他の構造単位を含有しているポリエステル共重合体であってもよい。
なお、本発明のポリエステルが共重合体の場合、ランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であってもよい。
【0028】
一般式(1)または一般式(2)で表される構造単位以外の構造単位を含有する場合、全構造単位中の一般式(1)または一般式(2)で表される構造単位の占める割合は、本発明の所望の効果を損なわない範囲であれば、特に制限されるものではないが、30モル%以上、好ましくは、50モル%以上であり、より好ましくは、70モル%以上である。
【0029】
一般式(1)または一般式(2)で表される構造単位以外の他のエステル結合を含有する構造単位としては、一般式(3)で表されるジヒドロキシ化合物以外の他のジヒドロキシ化合物と、ノルボルナンジカルボン酸またはその誘導体、ノルボルネンジカルボン酸またはその誘導体、および、ノルボルナンジカルボン酸またはノルボルネンジカルボン酸以外のジカルボン酸またはその誘導体とから得られる構造単位、もしくは、一般式(3)で表されるジヒドロキシ化合物と、ノルボルナンジカルボン酸またはノルボルネンジカルボン酸以外のジカルボン酸またはその誘導体とから得られるエステル結合を含有する構造単位である。
なお、一般式(1)で表される繰り返し構造単位を含有する本発明のポリエステルにおいて、他のエステル結合を含有する構造単位が、一般式(2)で表される構造単位であってもよく、また、その逆の場合であってもよい。
他のエステル結合を含有する構造単位を有するポリエステル共重合体を製造する際に使用する、一般式(3)で表されるジヒドロキシ化合物以外の他のジヒドロキシ化合物としては、各種公知の芳香族ジヒドロキシ化合物または脂肪族ジヒドロキシ化合物を例示することができる。
【0030】
芳香族ジヒドロキシ化合物の具体例としては、例えば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス (4’−ヒドロキシフェニル)エタン、1,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)エタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−ナフチルメタン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン〔”ビスフェノールA”〕、2−(4’−ヒドロキシフェニル)−2−(3’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)ペンタン、3,3−ビス(4’−ヒドロキシフェニル) ペンタン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル) ヘキサン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)オクタン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル) ヘプタン、4,4−ビス(4’−ヒドロキシフェニル) ヘプタン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル) トリデカン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)オクタン、2,2−ビス(3’−メチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3’−エチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3’−n−プロピル−4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3’−イソプロピル−4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3’−sec−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3’−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3’−シクロヘキシル−4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3’−アリル−4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3’−メトキシ−4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3’,5’−ジメチル−4’−ヒドロキシフェニル) プロパン、2,2−ビス(2’,3’,5’,6’−テトラメチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)シアノメタン、1−シアノ−3,3−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン等のビス(ヒドロキシアリール)アルカン類、
【0031】
1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)シクロヘプタン、1,1−ビス(3’−メチル−4’−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(3’,5’−ジメチル−4’−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(3’,5’−ジクロロ−4’−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(3’−メチル−4’−ヒドロキシフェニル)−4−メチルシクロヘキサン、1,1−ビス (4’−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)ノルボルナン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)アダマンタン等のビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類、
4,4’− ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’− ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルエーテル、エチレングリコールビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル等のビス(ヒドロキシアリール)エーテル類、
4,4’− ジヒドロキシジフェニルスルフィド、3,3’−ジメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、3,3’−ジシクロヘキシル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、3,3’−ジフェニル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド等のビス(ヒドロキシアリール)スルフィド類、
【0032】
4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、3,3’−ジメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド等のビス(ヒドロキシアリール)スルホキシド類、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’− ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホン等のビス(ヒドロキシアリール)スルホン類、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)ケトン等のビス(ヒドロキシアリール)ケトン類、
さらには、7,7’−ジヒドロキシ−3,3’,4,4’−テトラヒドロ−4,4,4’,4’−テトラメチル−2,2’−スピロビ(2H−1−ベンゾピラン)、トランス−2,3− ビス(4’−ヒドロキシフェニル)−2− ブテン、 9,9−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)フルオレン、3,3−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)−2− ブタノン、1,6−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)−1,6− ヘキサンジオン、α,α,α’,α’−テトラメチル−α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−キシレン、α,α,α’,α’−テトラメチル−α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−キシレン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、レゾルシン等が挙げられる。
【0033】
脂肪族ジヒドロキシ化合物としては、好ましくは炭素数2〜20のジヒドロキシアルカン、炭素数4〜12のジヒドロキシシクロアルカン、または一般式(5)で表されるようなジヒドロキシ化合物を挙げることができる。
HO−R2 −Y−R2 −OH (5)
(式中、R2 は炭素数1〜6のアルキレン基を、Yは炭素数6〜20の2価の芳香族基を表す)
【0034】
脂肪族ジヒドロキシ化合物の具体例としては、1,2−ジヒドロキシエタン、1,3−ジヒドロキシプロパン、1,4−ジヒドロキシブタン、1,5−ジヒドロキシペンタン、3−メチル−1,5−ジヒドロキシペンタン、1,6−ジヒドロキシヘキサン、1,7−ジヒドロキシヘプタン、1,8−ジヒドロキシオクタン、1,9−ジヒドロキシノナン、1,10−ジヒドロキシデカン、1,11−ジヒドロキシウンデカン、1,12−ジヒドロキシドデカン、ジヒドロキシネオペンチル、2−エチル−1,2−ジヒドロキシヘキサン、2−メチル−1,3−ジヒドロキシプロパン等のジヒドロキシアルカン、
1,3−ジヒドロキシシクロヘキサン、1,4−ジヒドキシシクロヘキサン及び2,2−ビス(4’−ヒドロキシルシクロヘキシル)プロパン等のジヒドロキシシクロアルカン、
さらに、o−ジヒドロキシキシリレン、m−ジヒドロキシキシリレン、p−ジヒドロキシキシリレン、1,4−ビス(2’−ヒドロキシエチル)ベンゼン、1,4−ビス(3’−ヒドロキシプロピル)ベンゼン、1,4−ビス(4’−ヒドロキシブチル)ベンゼン、1,4−ビス(5’−ヒドロキシペンチル)ベンゼン、1,4−ビス(6’−ヒドロキシヘキシル)ベンゼン等のジヒドロキシ化合物を挙げることができる。
【0035】
これらのジヒドロキシ化合物は、単独で使用してもよく、あるいは2種以上併用してもよい。一般式(3)で表されるジヒドロキシ化合物以外のジヒドロキシ化合物の中では、9,9’− ビス(4’− ヒドロキシフェニル)フルオレンは特に好ましい。
また、他のエステル結合を含有する構造単位を有するポリエステル共重合体を製造する際に使用する、ノルボルナンジカルボン酸またはノルボルネンジカルボン酸以外の他のジカルボン酸化合物としては、各種公知の芳香族ジカルボン酸化合物または脂肪族ジカルボン酸化合物を例示することができる。
【0036】
具体例としては、フタル酸、メチルフタル酸、エチルフタル酸、メトキシフタル酸、エトキシフタル酸、クロロフタル酸、ブロモフタル酸、イソフタル酸、メチルイソフタル酸、エチルイソフタル酸、メトキシイソフタル酸、エトキシイソフタル酸、クロロイソフタル酸、ブロモイソフタル酸、テレフタル酸、メチルテレフタル酸、エチルテレフタル酸、メトキシテレフタル酸、エトキシテレフタル酸、クロロテレフタル酸、ブロモテレフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,2’−ビフェニルジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルスルフィドジカルボン酸、4,4’−ベンゾフェノンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルスルホンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルメタンジカルボン酸、2,2−ビス(カルボキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(カルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン等の芳香族ジカルボン酸;
マロン酸、コハク酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカメチレンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、等の脂肪族ジカルボン酸;
1,4−キシリレンジカルボン酸、1,3−キシリレンジカルボン酸、1,2−キシリレンジカルボン酸などを挙げることができる。
これらのジカルボン酸またはその誘導体は、単独で使用してもよく、異なる2種類以上併用してもよい。
【0037】
さらに、本発明のポリエステルが一般式(1)または一般式(2)で表される構造単位以外の共重合成分を含むポリエステル共重合体である場合、一般式(1)または一般式(2)で表される構造単位以外の構造単位としては、エステル結合以外の他の結合を含有する構造単位であってもよい。かかる結合としては、アミド結合、イミド結合、カーボネート結合、ウレタン結合等を挙げることができる。かかる構造単位は、上記のジヒドロキシ化合物あるいはジカルボン酸誘導体以外の2官能性化合物から誘導される構造単位であり、該2官能性化合物としては、芳香族ジアミン類、脂肪族ジアミン類、芳香族クロロフォーメート類、脂肪族クロロフォーメート類、芳香族ジイソシアネート類、脂肪族ジイソシアネート類などの化合物が挙げられる。
【0038】
本発明のポリエステルにおいて、末端基は、ヒドロキシ基、カルボキシル基等の反応性の末端基であってもよく、また、分子量調節剤で封止された不活性な末端基であってもよい。
分子量調節剤としては、1価のヒドロキシ脂肪族化合物またはヒドロキシ芳香族化合物、あるいは、1価のヒドロキシ脂肪族化合物またはヒドロキシ芳香族化合物のアルカリ金属またはアルカリ土類金属塩、1価のヒドロキシ脂肪族化合物またはヒドロキシ芳香族化合物のハロホーメート化合物、1価のヒドロキシ脂肪族化合物またはヒドロキシ芳香族化合物の炭酸エステルなど、1価のカルボン酸、1価のカルボン酸のアルカリ金属またはアルカリ土類金属塩、1価のカルボン酸の酸ハライド、1価のカルボン酸のエステル等が挙げられる。
【0039】
かかる分子量調節剤の具体例としては、以下のような化合物を挙げることができる。1価のヒドロキシ脂肪族化合物またはヒドロキシ芳香族化合物としては、例えば、メタノール、エタノール、ブタノール、オクタノール、ラウリルアルコール、メトキシエタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、アリルアルコール、フェノール、4−tert−ブチルフェノール、2−クレゾール、3−クレゾール、4−クレゾール、2−エチルフェノール、4−エチルフェノール、4−クミルフェノール、4−フェニルフェノール、4−シクロヘキシルフェノール、4−n−オクチルフェノール、4−イソオクチルフェノール、4−ノニルフェノール、4−メトキシフェノール、4−n−ヘキシルオキシフェノール、4−イソプロペニルフェノール、2−クロロフェノール、3−クロロフェノール、4−クロロフェノール、2−ブロモフェノール、3−ブロモフェノール、4−ブロモフェノール、2,4−ジクロロフェノール、2,4−ジブロモフェノール、ペンタクロロフェノール、ペンタブロモフェノール、β−ナフトール、α−ナフトール、2−(4’−メトキシフェニル)−2−(4”−ヒドロキシフェニル)プロパン等が挙げられる。
【0040】
1価のヒドロキシ芳香族化合物のアルカリ金属またはアルカリ土類金属塩としては、上記の1価のヒドロキシ脂肪族化合物またはヒドロキシ芳香族化合物のナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩等が挙げられる。
1価のヒドロキシ脂肪族化合物またはヒドロキシ芳香族化合物のハロホーメート誘導体としては、上記の1価のヒドロキシ脂肪族化合物またはヒドロキシ芳香族化合物のクロロホーメート、ブロモホーメート等が挙げられる。
【0041】
1価のカルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、ヘプタン酸、カプリル酸、2,2−ジメチルプロピオン酸、3−メチル酪酸、3,3−ジメチル酪酸、4−メチル吉草酸、3,3−ジメチル吉草酸、4−メチルカプロン酸、2,4−ジメチル吉草酸、3,5−ジメチルカプロン酸、フェノキシ酢酸等の脂肪族カルボン酸類、安息香酸、4−プロポキシ安息香酸、4−ブトキシ安息香酸、4−ペンチルオキシ安息香酸、4−ヘキシルオキシ安息香酸、4−オクチルオキシ安息香酸等の安息香酸類が挙げられる。
1価のカルボン酸のアルカリ金属またはアルカリ土類金属塩としては、上記の1価のカルボン酸のナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩等が挙げられる。
1価のカルボン酸の酸ハライド誘導体としては、上記の1価のカルボン酸のクロライド、ブロマイド等が挙げられる。
【0042】
本発明のポリエステルの分子量としては、特に限定されるものではないが、通常、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)で測定する標準ポリスチレン換算の分子量として重量平均分子量が、5000〜200000であり、好ましくは、10000〜150000であり、より好ましくは、15000〜100000である。
【0043】
本発明のポリエステルは熱可塑性であり、溶融状態で射出成形、押出成形、ブロー成形、フィラー等への含浸等が可能であり、さらには、圧縮成形、溶液キャスティングなど、各種公知の成形方法により容易に成形可能である。
また、本発明のポリエステルは、所望の効果を損なわない範囲で、本発明の異なる複数のポリエステルをブレンドすることも可能であり、本発明のポリエステル以外の、公知の他のポリエステルを配合することにより、成形材料として使用することもできる。
また、さらに、他のポリマーを併用して成形材料として使用することが可能である。他のポリマーとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ABS樹脂、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル、ポリトリフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアセタール、ポリフェニレンオキシド、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリスルフィド等が挙げられる。
【0044】
本発明のポリエステルは、単独で、もしくは、他のポリマーと混合して、ポリエステルの製造時または製造後に公知の方法により、顔料、染料、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、離型剤、有機ハロゲン化合物、アルカリ金属スルホン酸塩、ガラス繊維、炭素繊維、ガラスビーズ、硫酸バリウム、TiO2 等の公知の添加剤を添加してもよい。
本発明のポリエステルは、単独で、または他のポリマーと混合した状態で、所望により、上記の添加剤を添加して成形材料として、電気機器の部品、電子部品、自動車部品、光ディスク等の情報記録媒体の基板、カメラや眼鏡のレンズ等の光学材料、ガラス代替の建材等に成形することが可能である。
【0045】
本発明のポリエステルを含有する光学部品としては、光ディスク基板、光磁気ディスク基板などの光記録媒体基板、ピックアップレンズなどの光学レンズ、液晶セル用プラスチック基板、プリズム等の各種光学部品を挙げることができる。これらの光学部品は、上述したような従来より公知の各種成形方法(代表的には、射出成形など)により、好適に製造することができる。
このようにして得られる光学部品は、透明性、耐熱性等が良好で、且つ、低複屈折性を有しており、非常に有用である。
【0046】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
なお、実施例で製造したポリエステルおよび比較例で製造したポリカーボネートの分子量は、下記の方法により測定した。
〔分子量の測定〕
ポリエステルまたはポリカーボネート等のポリマーの0.2重量%クロロホルム溶液を、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)〔昭和電工(株)製、System−11〕により測定し、重量平均分子量(Mw)を求めた。尚、測定値は、標準ポリスチレン換算の値である。
【0047】
実施例1
内容量100mlのフラスコに、撹拌機、還流冷却管、窒素吹き込み用浸漬管を設けた。このフラスコにモノクロロベンゼン40ml、前記の例示化合物番号1で表されるジヒドロキシ化合物9.25g(30ミリモル)を秤取した。
窒素を吹き込み、攪拌しながら、2,3−ノルボルナンジカルボン酸ジクロリドを6.63g(30ミリモル)加え、130℃に昇温し、11時間、加熱還流した。
放冷後、生成物を含む粘性のある溶液を、メタノール中へ排出し、析出したポリマーを濾過、メタノールで洗浄した。これを減圧乾燥し、下記式(A)(化7)で表される繰り返し構造単位を含有する重量平均分子量72000のポリエステルを得た。
【0048】
【化7】
【0049】
実施例2
内容量100mlのフラスコに、撹拌機、還流冷却管、窒素吹き込み用浸漬管を設けた。窒素を吹き込みながら、このフラスコに例示化合物1で表されるジヒドロキシ化合物24.67g(80ミリモル)および、2,5−ノルボルナンジカルボン酸ジクロリドと2,6−ノルボルナンジカルボン酸ジクロリドの混合物(モル比62:38)17.69g(80ミリモル)を秤取した。発熱反応により、50℃まで昇温した。15分間攪拌した後、220℃で45分間、窒素を吹き込み、副生する塩化水素を留去しながら加熱攪拌した。
溶融状態で粘性のある生成物を反応器から取り出し、下記式(B)(化8)で表される繰り返し構造単位を含有する重量平均分子量48000のポリエステルを得た。
【0050】
【化8】
【0051】
実施例3
内容量200mlのフラスコに、撹拌機、還流冷却管、窒素吹き込み用浸漬管を設けた。窒素を吹き込みながら、このフラスコに例示化合物1で表されるジヒドロキシ化合物9.25g(30ミリモル)、トリエチルアミン6.09g(60ミリモル)および1,2−ジクロロエタン75mlを秤取した。攪拌しながら、10℃まで冷却し、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸ジクロリド6.54g(30ミリモル)を10分で滴下した。10〜15℃で2時間攪拌した後、水75mlを加えて、有機層を抽出し、これをメタノール中へ排出することにより、ポリマーを析出させた。濾過後、これを乾燥し、下記式(C)(化9)で表される繰り返し構造単位を含有する重量平均分子量91000のポリエステルを得た。
【0052】
【化9】
【0053】
実施例4〜10
実施例1において、例示化合物1で表されるジヒドロキシ化合物を用いる代わりに、第1表に示した各種のジヒドロキシ化合物を用い、ジカルボン酸成分として、2,3−ノルボルナンジカルボン酸ジクロリド、2,5−ノルボルナンジカルボン酸ジクロリドと2,6−ノルボルナンジカルボン酸ジクロリドの混合物(モル比62:38)、または5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸ジクロリドを用い、実施例1に記載の方法と同様な方法に従って、第2表(表3)に示した各種の繰り返し構造単位、および重量平均分子量を有する各種のポリエステルを得た。
【0054】
【表3】
【0055】
比較例1
ビスフェノールAとホスゲンから、下記の常法(界面重合法)に従い、公知のポリカーボネートを製造した。
内容量2lのバッフル付きフラスコに、格子翼を備えた撹拌機、還流冷却管、ホスゲン吹き込み用浸漬管を設けた。このフラスコに、114g(0.50モル)のビスフェノールA、56g(1.40モル)の水酸化ナトリウム、2.58gの4−tert−ブチルフェノールおよび、600mlの脱イオン水を装入し、水溶液を調製した。その後、該水溶液に、600mlのジクロロメタンを添加し、2相混合物とした。この2相混合物を撹拌しながら、59.4g(0.60モル)の塩化カルボニルを9.9g/分の速度で供給した。塩化カルボニルの供給終了後、0.08gのトリエチルアミンを反応混合物に添加し、さらに90分間撹拌混合した。その後、撹拌を停止し、反応混合物を分液し、ジクロロメタン相を塩酸水溶液により中和し、脱イオン水を使用して、水性洗浄液に電界質が実質的に検出されなくなるまで洗浄した。その後、ジクロロメタン相から、ジクロロメタンを蒸発留去することにより、固体状態の芳香族ポリカーボネートを得た。重量平均分子量は51000であった。
【0056】
比較例2
特開昭63−314235号公報の実施例7に記載の方法に従い、ビスフェノールAとスピロビインダノールとの共重合ポリカーボネートを製造した。重量平均分子量は44800であった。
【0057】
上記の各実施例および比較例で製造したポリマーを用い、プレス成形して厚さ1.2mmの板状試験片を作製し、この試験片について、以下に示した評価方法により、各項目の評価試験を行った。結果を下記の第3表(表4)に示した。
〔評価方法〕
(1)外観:試験片の透明性、光学的面状態を目視観察、評価した。
○:ひび割れ、クラック、面荒れ等が無く、無色透明で面状態の良いもの
×:ひび割れ、クラック、面荒れ等が観察されるもの
(2)全光線透過率(以下、透過率):ASTMD−1003法に従った。
(3)複屈折:エリプソメーターによって測定した。
(4)耐熱性:120℃で熱風乾燥基中に4時間放置した後、試験片を取り出して、肉眼で観察し評価した。
○:成形物の着色、表面の歪、クラック等が無いもの
×:成形物の着色、表面の歪、クラック等が観察されるもの
【0058】
【表4】
第3表から明らかなように、本発明のポリエステルを成形して得られる成形物は、透明性、耐熱性等が良好で、且つ、低複屈折性を有している。
【0059】
実施例11(光ディスクの作製および評価)
実施例1で製造したポリエステルを、ペレタイザー付き押出機(シリンダー温度270℃)にて、ペレット状とした。該ペレットを110℃にて4時間乾燥した後、280℃にて射出成形を行った。
すなわち、金型に鏡面を有するスタンパーを装着して、外径130mm、厚さ1.2mmの円盤状の成形物を得た。得られた成形物(基板)の中心部を、内径15mmとなるように打ち抜いてドーナツ状円盤とした。次に、片面にアルミの真空蒸着を行い、厚み600オングストロームの反射層を設けた。
得られた光ディスクについて、複屈折およびBER(ビットエラーレート)を測定した。
ビットエラーレートは、波長780nm、線速2m/sec、0.8mWのレーザー光を用いて、記録の読みとりのエラーの発生率を測定した。
結果を下記の第4表(表5)に示した。
【0060】
実施例12〜20
実施例2〜10で製造した各ポリエステルを用いた以外は、実施例11に記載の方法と同様な方法により、各光ディスクを作製して評価を行った。
結果を下記の第4表に示した。
【0061】
比較例3
比較例1で製造したポリマーを使用した以外は、上記実施例11と同様な方法により光ディスクを製造した。得られた光ディスクの複屈折およびBER(ビットエラーレート)を測定した結果を、以下の第4表に示した。
【0062】
比較例4
比較例2で製造したポリマーを使用した以外は、上記実施例11と同様な方法により光ディスクを製造した。得られた光ディスクの複屈折およびBER(ビットエラーレート)を測定した結果を、以下の第4表に示した。
【0063】
【表5】
第4表から明らかなように、本発明の光ディスクは、複屈折の低下により、既存のポリマーを用いて得られる光ディスクと比較して、BERが向上している。
【0064】
実施例21(光磁気ディスクの製造および記録特性の評価)
実施例1において得られたポリエステルを、ペレタイザー付き押出機(シリンダー温度270℃)にてペレット状とした。該ペレットを110℃にて4時間乾燥した後、射出成形を行った。すなわち、金型に鏡面を有するスタンパーを装着して、外径130mm、厚さ1.2mmの円盤状の成形物を得た。
得られた成形物(基板)上に、Tb23.5、Fe64.2、Co12.3(原子%)の合金ターゲットを用いてスパッタリング装置〔RFスパッタリング装置、日本真空(株)製〕中で、厚み1000オングストロームの光磁気記録層を形成した。この記録膜上に、厚み1000オングストロームの無機ガラスの保護膜を上記と同じスパッタリング装置を用いて形成した。得られた光磁気ディスクの複屈折、CN比、BER(ビットエラーレート)およびCN保持率を測定した。
尚、CN比は、書き込みパワー7mW、読みとりパワー1mW、キャリア周波数1MHz、分解能帯域幅30KHzで測定を行った。
CN保持率は、初期CN比に対する60℃、90%RH条件下で30日経過後のCN比の低下度を百分率(%)で示した。
結果を下記の第5表(表6)に示した。
【0065】
実施例22〜30
実施例2〜10で製造した各ポリエステルを使用した以外は、上記実施例21と同様な方法により、各光磁気ディスクを製造した。得られた各光磁気ディスクの複屈折、CN比、BER(ビットエラーレート)およびCN変化率を測定した結果を、以下の第5表に示した。
【0066】
比較例5
比較例1で製造したポリマーを使用した以外は、上記実施例21と同様な方法により光磁気ディスクを製造した。得られた光磁気ディスクの複屈折、CN比、BER(ビットエラーレート)およびCN保持率を測定した結果を、以下の第5表に示した。
【0067】
比較例6
比較例2で製造したポリマーを使用した以外は、上記実施例21と同様な方法により光磁気ディスクを製造した。得られた光磁気ディスクの複屈折、CN比、BER(ビットエラーレート)およびCN保持率を測定した結果を、以下の第5表に示した。
【0068】
【表6】
第5表から明らかなように、本発明のポリエステルを用いて得られる光磁気ディスクは複屈折の低下により、既存のポリマーより得られる光磁気ディスクと比較して、CN比およびBERが向上しており、また、CN保持率が改良されている。
【0069】
【発明の効果】
本発明により、透明性、耐熱性等が良好で、且つ、低複屈折性を有するポリエステルを提供することが可能になった。本発明のポリエステルは、光ディスク基板、ピックアップレンズなどの光学部品として非常に有用である。特に、該ポリエステルを用いて得られる光磁気ディスク基板は、光記録特性に優れ、且つ、耐久性(耐熱性、耐湿性など)にも優れている。
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリエステルに関し、また、該ポリエステルからなる光学部品に関する。本発明のポリエステルは、透明性、耐熱性等が良好であり、且つ、低複屈折性を有しており、光ディスク基板、ピックアップレンズ、液晶セル用プラスチック基板、プリズム等の光学部品に有用である。
【0002】
【従来の技術】
無機ガラスは、透明性に優れ、光学異方性が小さいなどの諸物性に優れていることから、透明性材料として広い分野で使用されている。しかしながら、重くて破損しやすいこと、生産性が悪いこと等の問題があり、近年、無機ガラスに代わる透明性ポリマーの開発が盛んに行われている。
透明性ポリマーとして、例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート等は、透明性、機械物性(例えば、耐衝撃性など)に優れ、且つ、加工性、成形性に優れることから、無機ガラスの代替分野、例えば、自動車の透明部品やレンズ等に使用されている。
【0003】
一方、レーザー光を用いて、音声、画像、文字等の情報を記録、再生する光ディスクは、近年、急速に用途が拡大している。しかしながら、情報記録媒体として使用される光ディスクにおいては、ディスク本体をレーザー光線が通過するために透明であることは勿論のこと、情報の読みとり誤差を少なくするために光学的均質性が強く求められている。例えば、従来より公知のポリマー(例えば、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレートなど)を用いた場合には、ディスク基板成形時の樹脂の冷却および流動過程において生じた熱応力、分子配向、ガラス転移点付近の容積変化等による残留応力が原因となり、レーザー光線がディスク基板を通過する際に複屈折が生じる。この複屈折に起因する光学的不均一性が大きいことは、例えば、記録された情報の読みとり誤りが生じるなど、光ディスク基板等の光学部品にとっては致命的欠陥となる。このような光ディスク基板を初めとする光学部品においては、より高度な光学特性、すなわち、低複屈折性を有し、且つ、透明性、耐熱性等に優れた材料が要求されている。
【0004】
上述した問題を解決するための方法の一つとして、スピロビインダノール単独またはスピロビインダノールとビスフェノールAとの共重合型ポリカーボネートのような、スピロ化合物を用いた低複屈折性ポリカーボネートが開示されている(特開昭63−314235号公報)。しかしながら、前者のポリカーボネートは低複屈折ではあるものの、透明性および機械強度が悪く、実用的に問題を有しており、また、後者のポリカーボネートはビスフェノールA成分の増加により、透明性および機械強度は向上するものの、複屈折が大きくなり、光学部品としての使用範囲が限定されてしまう問題点があり、これらの相反する問題点を解決することが強く望まれていた。
【0005】
同様に、スピロビクロマン構造を有するポリカーボネート等のポリマーが低複屈折性を有する材料として提案されている(特開平3−162413号公報)。しかしながら、該ポリマーにおいても、スピロビクロマン誘導体単独のポリカーボネートは低複屈折であるものの、透明性および機械強度が悪く、実用的に問題を有しており、また、スピロビクロマン誘導体とビスフェノールAとの共重合ポリカーボネートはビスフェノールA成分の増加により透明性および機械強度は向上するものの、複屈折が大きくなるという問題点があり、前記同様、これらの相反する問題点を解決が望まれていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、上記の問題点を克服し、光学部品用に有用な透明性、耐熱性が良好で、且つ、低複屈折性を有するポリエステルを提供すること、ならびに該ポリエステルからなる光学部品を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記問題点を解決するために鋭意検討した結果、本発明に到達した。すなわち、本発明は、
▲1▼下記一般式(1)(化3)で表される繰り返し構造単位を含有するポリエステル、
▲2▼下記一般式(2)(化4)で表される繰り返し構造単位を含有するポリエステル、
▲3▼前記▲1▼、▲2▼のいずれかに記載のポリエステルを含有してなる光学部品に関するものである。
【0008】
【化3】
(式中、R1 は置換基を有していてもよい直鎖、分岐または環状のアルキル基、置換基を有していてもよい直鎖、分岐または環状のアルコキシ基、ニトロ基あるいはハロゲン原子を表し、mは0〜3の整数を表し、ノルボルナン環に置換された2つのエステル結合を形成するカルボキシル基の置換位置は(2,3−)位、(2,5−)位または(2,6−)位である)
【0009】
【化4】
(式中、R1 およびmは前記と同じ意味を表す)
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に関して詳細に説明する。
本発明のポリエステルは、一般式(1)または一般式(2)で表される繰り返し構造単位を含有することを特徴とするポリエステルである。
一般式(1)および一般式(2)において、R1 は、置換基を有していてもよい直鎖、分岐または環状のアルキル基、置換基を有していてもよい直鎖、分岐または環状のアルコキシ基、ニトロ基あるいはハロゲン原子を表す。
R1 のアルキル基またはアルコキシ基の置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシアルコキシ基、シクロアルキル基、ヘテロ原子含有のシクロアルキル基、シクロアルコキシ基、ヘテロ原子含有のシクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アリールオキシアルコキシ基、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0011】
R1 の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−テトラデシル基、n−オクタデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、4−tert−ブチルシクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、テトラヒドロフルフリル基、メトキシエチル基、エトキシエチル基、2−n−ブトキシエチル基、3−メトキシプロピル基、3−エトキシプロピル基、3−n−プロポキシプロピル基、3−n−ブトキシプロピル基、3−n−ヘキシルオキシプロピル基、メトキシエトキシエチル基、エトキシエトキシエチル基、フェノキシメチル基、フェノキシエトキシエチル基、クロロメチル基、クロロエチル基、3−クロロプロピル基、2,2,2−トリクロロエチル基、
【0012】
メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシル基、n−オクチルオキシ基、n−デシルオキシ基、n−ドデシルオキシ基、n−テトラデシルオキシ基、n−オクタデシルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、4−tert−ブチルシクロヘキシルオキシ基、シクロヘプチルオキシ基、シクロオクチルオキシ基、シクロヘキシルメトキシ基、シクロヘキシルエトキシ基、メトキシエトキシ基、エトキシエトキシ基、n−ブトキシエトキシ基、3−メトキシプロポキシ基、3−エトキシプロポキシ基、3−n−プロポキシプロポキシ基、3−n−ブトキシプロポキシ基、3−n−ヘキシルオキシプロポキシ基、メトキシエトキシエトキシ基、フェノキシメトキシ基、フェノキシエトキシエトキシ基、クロロメトキシ基、クロロエトキシ基、3−クロロプロポキシ基、2,2,2−トリクロロエトキシ基、
ニトロ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0013】
一般式(1)および一般式(2)におけるR1 は、好ましくは、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の直鎖、分岐または環状のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、ニトロ基あるいはハロゲン原子であり、より好ましくは、炭素数1〜10の無置換の直鎖または分岐のアルキル基、炭素数1〜10無置換の直鎖または分岐のアルコキシ基あるいは塩素原子であり、さらに好ましくは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基または塩素原子である。特に好ましくは、R1 はメチル基または塩素原子である。
【0014】
一般式(1)および一般式(2)において、mは0〜3の整数を表し、好ましくは、0、1または2であり、さらに好ましくは0である。
一般式(1)において、ノルボルナン環に置換された2つのエステル結合を形成するカルボキシル基の置換位置は(2,3−)位、(2,5−)位または(2,6−)位であり、好ましくは、(2,5−)位または(2,6−)位である。
【0015】
本発明の一般式(1)で表される繰り返し構造単位を含有するポリエステルは、一般式(3)(化5)で表されるジヒドロキシ化合物と、2、3−ノルボルナンジカルボン酸、2、5−ノルボルナンジカルボン酸、2、6−ノルボルナンジカルボン酸またはそれらの誘導体とから得られる。
【0016】
【化5】
(上式中、R1 およびmは前記と同じ意味を表す)
【0017】
また、本発明の一般式(2)で表される繰り返し構造単位を含有するポリエステルは、前記一般式(3)で表されるジヒドロキシ化合物と、5−ノルボルネン−2、3−ジカルボン酸またはその誘導体とから得られる。
一般式(3)で表されるジヒドロキシ化合物としては、代表的には以下の第1表(表1〜2)に示すジヒドロキシ化合物を例示することができるが、勿論本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、これらの一般式(3)で表されるジヒドロキシ化合物は、単独で使用してもよく、また異なる2種類以上を併用してもよい。
【0018】
【表1】
【0019】
【表2】
【0020】
一般式(3)で表されるジヒドロキシ化合物(スピロビインダノール誘導体ともいう)は、公知の方法、例えば、特開昭62−10030号公報等に記載の方法、すなわち、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン誘導体をパーフルオロアルカンスルホン酸の存在下に加熱処理する方法に従い製造される。
一般式(3)で表されるジヒドロキシ化合物は、各種公知の方法(例えば、カラムクロマトグラフィー、蒸留、再結晶等)により精製することができる。
【0021】
本発明の一般式(1)で表される繰り返し構造単位を有するポリエステルの製造の際に用いられる2、3−ノルボルナンジカルボン酸、2、5−ノルボルナンジカルボン酸、2、6−ノルボルナンジカルボン酸またはそれらの誘導体は、公知の化合物である。2、3−ノルボルナンジカルボン酸、2、5−ノルボルナンジカルボン酸および2、6−ノルボルナンジカルボン酸またはそれらの誘導体は、単独で用いてもよく、また、混合して用いてもよい(以下、2、3−ノルボルナンジカルボン酸、2、5−ノルボルナンジカルボン酸および2、6−ノルボルナンジカルボン酸を、ノルボルナンジカルボン酸と称する)。
該誘導体としては、ノルボルナンジカルボン酸ジメチル、ノルボルナンジカルボン酸ジエチル、ノルボルナンジカルボン酸ジn−プロピル、ノルボルナンジカルボン酸ジイソプロピル、ノルボルナンジカルボン酸ジブチル等のジカルボン酸エステル誘導体、ノルボルナンジカルボン酸ジクロリド、ノルボルナンジカルボン酸ジブロミド、ノルボルナンジカルボン酸ジヨウジド等のジカルボン酸ハライド等を挙げることができる。
【0022】
本発明の一般式(2)で表される繰り返し構造単位を有するポリエステルの製造の際に用いられる5−ノルボルネン−2、3−ジカルボン酸またはそれらの誘導体は、公知の化合物である(以下、5−ノルボルネン−2、3−ジカルボン酸をノルボルネンジカルボン酸と称する)。
該誘導体としては、ノルボルネンジカルボン酸ジメチル、ノルボルネンジカルボン酸ジエチル、ノルボルネンジカルボン酸ジn−プロピル、ノルボルネンジカルボン酸ジイソプロピル、ノルボルネンジカルボン酸ジブチル等のジカルボン酸エステル誘導体、ノルボルネンジカルボン酸ジクロリド、ノルボルネンジカルボン酸ジブロミド、ノルボルネンジカルボン酸ジヨウジド等のジカルボン酸ハライド等を挙げることができる。
【0023】
一般式(1)および一般式(2)で表される構造単位において、エステル結合を形成するヒドロキシ基を含む置換基の置換位置は、一方が4位、5位、6位または7位であり、もう一方の置換位置は4’位、5’位、6’位または7’位である。この内、該置換基の好ましい置換位置は、一般式(4−a)〜一般式(4−e)(化6)であり、より好ましくは、一般式(4−a)〜一般式(4−d)であり、特に好ましくは、一般式(4−a)である。
【0024】
【化6】
(上式中、R1 およびmは前記と同じ意味表す)
【0025】
本発明のポリエステルは、製造方法それ自体は、各種公知のポリエステル重合方法に従い製造することができる。例えば、一般式(1)または一般式(2)で表される繰り返し構造単位を含有するポリエステルは、例えば、実験化学講座第4版(28巻)、高分子合成、217〜231頁、丸善出版(1988年)に記載の方法〔例えば、エステル交換法、直接重合法、酸クロリド法等の溶融重合法、溶液重合法、界面重合法など〕により製造することができる。
エステル交換法は、前記ジヒドロキシ化合物と前記ジカルボン酸エステル誘導体とを溶融状態または溶液状態で、加熱下において、脱アルコールさせ、所望により触媒の存在下に反応させる方法である。
【0026】
直接重合法は、前記ジヒドロキシ化合物とノルボルナンジカルボン酸またはノルボルネンジカルボン酸とを溶融状態または溶液状態で、加熱下において脱水縮合し、所望により触媒の存在下に反応させる方法である。
酸クロリド法は、前記ジヒドロキシ化合物と前記ジカルボン酸クロリドとを溶融状態、溶液状態または界面重合法で、加熱下において脱HClさせ、所望により触媒の存在下に反応させる方法である。
界面重合法は、前記ジヒドロキシ化合物と前記ジカルボン酸ジクロリドを、有機溶媒、触媒、水、アルカリ金属またはアルカリ土類金属塩基を使用して反応させる方法である。
【0027】
本発明のポリエステルは、一般式(1)または一般式(2)で表される繰り返し構造単位を含有することを特徴とするポリエステルである。
一般式(1)で表される繰り返し構造単位を含有する本発明のポリエステルは、異なる複数の一般式(1)で表される構造単位を含有するポリエステル共重合体であってもよく、また一般式(1)で表される構造単位以外に、他の構造単位を含有しているポリエステル共重合体であってもよい。
一般式(2)で表される繰り返し構造単位を含有する本発明のポリエステルは、異なる複数の一般式(2)で表される構造単位を含有するポリエステル共重合体であってもよく、また一般式(2)で表される構造単位以外に、他の構造単位を含有しているポリエステル共重合体であってもよい。
なお、本発明のポリエステルが共重合体の場合、ランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であってもよい。
【0028】
一般式(1)または一般式(2)で表される構造単位以外の構造単位を含有する場合、全構造単位中の一般式(1)または一般式(2)で表される構造単位の占める割合は、本発明の所望の効果を損なわない範囲であれば、特に制限されるものではないが、30モル%以上、好ましくは、50モル%以上であり、より好ましくは、70モル%以上である。
【0029】
一般式(1)または一般式(2)で表される構造単位以外の他のエステル結合を含有する構造単位としては、一般式(3)で表されるジヒドロキシ化合物以外の他のジヒドロキシ化合物と、ノルボルナンジカルボン酸またはその誘導体、ノルボルネンジカルボン酸またはその誘導体、および、ノルボルナンジカルボン酸またはノルボルネンジカルボン酸以外のジカルボン酸またはその誘導体とから得られる構造単位、もしくは、一般式(3)で表されるジヒドロキシ化合物と、ノルボルナンジカルボン酸またはノルボルネンジカルボン酸以外のジカルボン酸またはその誘導体とから得られるエステル結合を含有する構造単位である。
なお、一般式(1)で表される繰り返し構造単位を含有する本発明のポリエステルにおいて、他のエステル結合を含有する構造単位が、一般式(2)で表される構造単位であってもよく、また、その逆の場合であってもよい。
他のエステル結合を含有する構造単位を有するポリエステル共重合体を製造する際に使用する、一般式(3)で表されるジヒドロキシ化合物以外の他のジヒドロキシ化合物としては、各種公知の芳香族ジヒドロキシ化合物または脂肪族ジヒドロキシ化合物を例示することができる。
【0030】
芳香族ジヒドロキシ化合物の具体例としては、例えば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス (4’−ヒドロキシフェニル)エタン、1,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)エタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−ナフチルメタン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン〔”ビスフェノールA”〕、2−(4’−ヒドロキシフェニル)−2−(3’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)ペンタン、3,3−ビス(4’−ヒドロキシフェニル) ペンタン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル) ヘキサン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)オクタン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル) ヘプタン、4,4−ビス(4’−ヒドロキシフェニル) ヘプタン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル) トリデカン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)オクタン、2,2−ビス(3’−メチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3’−エチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3’−n−プロピル−4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3’−イソプロピル−4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3’−sec−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3’−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3’−シクロヘキシル−4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3’−アリル−4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3’−メトキシ−4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3’,5’−ジメチル−4’−ヒドロキシフェニル) プロパン、2,2−ビス(2’,3’,5’,6’−テトラメチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)シアノメタン、1−シアノ−3,3−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン等のビス(ヒドロキシアリール)アルカン類、
【0031】
1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)シクロヘプタン、1,1−ビス(3’−メチル−4’−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(3’,5’−ジメチル−4’−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(3’,5’−ジクロロ−4’−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(3’−メチル−4’−ヒドロキシフェニル)−4−メチルシクロヘキサン、1,1−ビス (4’−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)ノルボルナン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)アダマンタン等のビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類、
4,4’− ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’− ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルエーテル、エチレングリコールビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル等のビス(ヒドロキシアリール)エーテル類、
4,4’− ジヒドロキシジフェニルスルフィド、3,3’−ジメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、3,3’−ジシクロヘキシル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、3,3’−ジフェニル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド等のビス(ヒドロキシアリール)スルフィド類、
【0032】
4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、3,3’−ジメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド等のビス(ヒドロキシアリール)スルホキシド類、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’− ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホン等のビス(ヒドロキシアリール)スルホン類、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)ケトン等のビス(ヒドロキシアリール)ケトン類、
さらには、7,7’−ジヒドロキシ−3,3’,4,4’−テトラヒドロ−4,4,4’,4’−テトラメチル−2,2’−スピロビ(2H−1−ベンゾピラン)、トランス−2,3− ビス(4’−ヒドロキシフェニル)−2− ブテン、 9,9−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)フルオレン、3,3−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)−2− ブタノン、1,6−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)−1,6− ヘキサンジオン、α,α,α’,α’−テトラメチル−α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−キシレン、α,α,α’,α’−テトラメチル−α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−キシレン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、レゾルシン等が挙げられる。
【0033】
脂肪族ジヒドロキシ化合物としては、好ましくは炭素数2〜20のジヒドロキシアルカン、炭素数4〜12のジヒドロキシシクロアルカン、または一般式(5)で表されるようなジヒドロキシ化合物を挙げることができる。
HO−R2 −Y−R2 −OH (5)
(式中、R2 は炭素数1〜6のアルキレン基を、Yは炭素数6〜20の2価の芳香族基を表す)
【0034】
脂肪族ジヒドロキシ化合物の具体例としては、1,2−ジヒドロキシエタン、1,3−ジヒドロキシプロパン、1,4−ジヒドロキシブタン、1,5−ジヒドロキシペンタン、3−メチル−1,5−ジヒドロキシペンタン、1,6−ジヒドロキシヘキサン、1,7−ジヒドロキシヘプタン、1,8−ジヒドロキシオクタン、1,9−ジヒドロキシノナン、1,10−ジヒドロキシデカン、1,11−ジヒドロキシウンデカン、1,12−ジヒドロキシドデカン、ジヒドロキシネオペンチル、2−エチル−1,2−ジヒドロキシヘキサン、2−メチル−1,3−ジヒドロキシプロパン等のジヒドロキシアルカン、
1,3−ジヒドロキシシクロヘキサン、1,4−ジヒドキシシクロヘキサン及び2,2−ビス(4’−ヒドロキシルシクロヘキシル)プロパン等のジヒドロキシシクロアルカン、
さらに、o−ジヒドロキシキシリレン、m−ジヒドロキシキシリレン、p−ジヒドロキシキシリレン、1,4−ビス(2’−ヒドロキシエチル)ベンゼン、1,4−ビス(3’−ヒドロキシプロピル)ベンゼン、1,4−ビス(4’−ヒドロキシブチル)ベンゼン、1,4−ビス(5’−ヒドロキシペンチル)ベンゼン、1,4−ビス(6’−ヒドロキシヘキシル)ベンゼン等のジヒドロキシ化合物を挙げることができる。
【0035】
これらのジヒドロキシ化合物は、単独で使用してもよく、あるいは2種以上併用してもよい。一般式(3)で表されるジヒドロキシ化合物以外のジヒドロキシ化合物の中では、9,9’− ビス(4’− ヒドロキシフェニル)フルオレンは特に好ましい。
また、他のエステル結合を含有する構造単位を有するポリエステル共重合体を製造する際に使用する、ノルボルナンジカルボン酸またはノルボルネンジカルボン酸以外の他のジカルボン酸化合物としては、各種公知の芳香族ジカルボン酸化合物または脂肪族ジカルボン酸化合物を例示することができる。
【0036】
具体例としては、フタル酸、メチルフタル酸、エチルフタル酸、メトキシフタル酸、エトキシフタル酸、クロロフタル酸、ブロモフタル酸、イソフタル酸、メチルイソフタル酸、エチルイソフタル酸、メトキシイソフタル酸、エトキシイソフタル酸、クロロイソフタル酸、ブロモイソフタル酸、テレフタル酸、メチルテレフタル酸、エチルテレフタル酸、メトキシテレフタル酸、エトキシテレフタル酸、クロロテレフタル酸、ブロモテレフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,2’−ビフェニルジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルスルフィドジカルボン酸、4,4’−ベンゾフェノンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルスルホンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルメタンジカルボン酸、2,2−ビス(カルボキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(カルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン等の芳香族ジカルボン酸;
マロン酸、コハク酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカメチレンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、等の脂肪族ジカルボン酸;
1,4−キシリレンジカルボン酸、1,3−キシリレンジカルボン酸、1,2−キシリレンジカルボン酸などを挙げることができる。
これらのジカルボン酸またはその誘導体は、単独で使用してもよく、異なる2種類以上併用してもよい。
【0037】
さらに、本発明のポリエステルが一般式(1)または一般式(2)で表される構造単位以外の共重合成分を含むポリエステル共重合体である場合、一般式(1)または一般式(2)で表される構造単位以外の構造単位としては、エステル結合以外の他の結合を含有する構造単位であってもよい。かかる結合としては、アミド結合、イミド結合、カーボネート結合、ウレタン結合等を挙げることができる。かかる構造単位は、上記のジヒドロキシ化合物あるいはジカルボン酸誘導体以外の2官能性化合物から誘導される構造単位であり、該2官能性化合物としては、芳香族ジアミン類、脂肪族ジアミン類、芳香族クロロフォーメート類、脂肪族クロロフォーメート類、芳香族ジイソシアネート類、脂肪族ジイソシアネート類などの化合物が挙げられる。
【0038】
本発明のポリエステルにおいて、末端基は、ヒドロキシ基、カルボキシル基等の反応性の末端基であってもよく、また、分子量調節剤で封止された不活性な末端基であってもよい。
分子量調節剤としては、1価のヒドロキシ脂肪族化合物またはヒドロキシ芳香族化合物、あるいは、1価のヒドロキシ脂肪族化合物またはヒドロキシ芳香族化合物のアルカリ金属またはアルカリ土類金属塩、1価のヒドロキシ脂肪族化合物またはヒドロキシ芳香族化合物のハロホーメート化合物、1価のヒドロキシ脂肪族化合物またはヒドロキシ芳香族化合物の炭酸エステルなど、1価のカルボン酸、1価のカルボン酸のアルカリ金属またはアルカリ土類金属塩、1価のカルボン酸の酸ハライド、1価のカルボン酸のエステル等が挙げられる。
【0039】
かかる分子量調節剤の具体例としては、以下のような化合物を挙げることができる。1価のヒドロキシ脂肪族化合物またはヒドロキシ芳香族化合物としては、例えば、メタノール、エタノール、ブタノール、オクタノール、ラウリルアルコール、メトキシエタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、アリルアルコール、フェノール、4−tert−ブチルフェノール、2−クレゾール、3−クレゾール、4−クレゾール、2−エチルフェノール、4−エチルフェノール、4−クミルフェノール、4−フェニルフェノール、4−シクロヘキシルフェノール、4−n−オクチルフェノール、4−イソオクチルフェノール、4−ノニルフェノール、4−メトキシフェノール、4−n−ヘキシルオキシフェノール、4−イソプロペニルフェノール、2−クロロフェノール、3−クロロフェノール、4−クロロフェノール、2−ブロモフェノール、3−ブロモフェノール、4−ブロモフェノール、2,4−ジクロロフェノール、2,4−ジブロモフェノール、ペンタクロロフェノール、ペンタブロモフェノール、β−ナフトール、α−ナフトール、2−(4’−メトキシフェニル)−2−(4”−ヒドロキシフェニル)プロパン等が挙げられる。
【0040】
1価のヒドロキシ芳香族化合物のアルカリ金属またはアルカリ土類金属塩としては、上記の1価のヒドロキシ脂肪族化合物またはヒドロキシ芳香族化合物のナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩等が挙げられる。
1価のヒドロキシ脂肪族化合物またはヒドロキシ芳香族化合物のハロホーメート誘導体としては、上記の1価のヒドロキシ脂肪族化合物またはヒドロキシ芳香族化合物のクロロホーメート、ブロモホーメート等が挙げられる。
【0041】
1価のカルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、ヘプタン酸、カプリル酸、2,2−ジメチルプロピオン酸、3−メチル酪酸、3,3−ジメチル酪酸、4−メチル吉草酸、3,3−ジメチル吉草酸、4−メチルカプロン酸、2,4−ジメチル吉草酸、3,5−ジメチルカプロン酸、フェノキシ酢酸等の脂肪族カルボン酸類、安息香酸、4−プロポキシ安息香酸、4−ブトキシ安息香酸、4−ペンチルオキシ安息香酸、4−ヘキシルオキシ安息香酸、4−オクチルオキシ安息香酸等の安息香酸類が挙げられる。
1価のカルボン酸のアルカリ金属またはアルカリ土類金属塩としては、上記の1価のカルボン酸のナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩等が挙げられる。
1価のカルボン酸の酸ハライド誘導体としては、上記の1価のカルボン酸のクロライド、ブロマイド等が挙げられる。
【0042】
本発明のポリエステルの分子量としては、特に限定されるものではないが、通常、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)で測定する標準ポリスチレン換算の分子量として重量平均分子量が、5000〜200000であり、好ましくは、10000〜150000であり、より好ましくは、15000〜100000である。
【0043】
本発明のポリエステルは熱可塑性であり、溶融状態で射出成形、押出成形、ブロー成形、フィラー等への含浸等が可能であり、さらには、圧縮成形、溶液キャスティングなど、各種公知の成形方法により容易に成形可能である。
また、本発明のポリエステルは、所望の効果を損なわない範囲で、本発明の異なる複数のポリエステルをブレンドすることも可能であり、本発明のポリエステル以外の、公知の他のポリエステルを配合することにより、成形材料として使用することもできる。
また、さらに、他のポリマーを併用して成形材料として使用することが可能である。他のポリマーとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ABS樹脂、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル、ポリトリフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアセタール、ポリフェニレンオキシド、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリスルフィド等が挙げられる。
【0044】
本発明のポリエステルは、単独で、もしくは、他のポリマーと混合して、ポリエステルの製造時または製造後に公知の方法により、顔料、染料、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、離型剤、有機ハロゲン化合物、アルカリ金属スルホン酸塩、ガラス繊維、炭素繊維、ガラスビーズ、硫酸バリウム、TiO2 等の公知の添加剤を添加してもよい。
本発明のポリエステルは、単独で、または他のポリマーと混合した状態で、所望により、上記の添加剤を添加して成形材料として、電気機器の部品、電子部品、自動車部品、光ディスク等の情報記録媒体の基板、カメラや眼鏡のレンズ等の光学材料、ガラス代替の建材等に成形することが可能である。
【0045】
本発明のポリエステルを含有する光学部品としては、光ディスク基板、光磁気ディスク基板などの光記録媒体基板、ピックアップレンズなどの光学レンズ、液晶セル用プラスチック基板、プリズム等の各種光学部品を挙げることができる。これらの光学部品は、上述したような従来より公知の各種成形方法(代表的には、射出成形など)により、好適に製造することができる。
このようにして得られる光学部品は、透明性、耐熱性等が良好で、且つ、低複屈折性を有しており、非常に有用である。
【0046】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
なお、実施例で製造したポリエステルおよび比較例で製造したポリカーボネートの分子量は、下記の方法により測定した。
〔分子量の測定〕
ポリエステルまたはポリカーボネート等のポリマーの0.2重量%クロロホルム溶液を、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)〔昭和電工(株)製、System−11〕により測定し、重量平均分子量(Mw)を求めた。尚、測定値は、標準ポリスチレン換算の値である。
【0047】
実施例1
内容量100mlのフラスコに、撹拌機、還流冷却管、窒素吹き込み用浸漬管を設けた。このフラスコにモノクロロベンゼン40ml、前記の例示化合物番号1で表されるジヒドロキシ化合物9.25g(30ミリモル)を秤取した。
窒素を吹き込み、攪拌しながら、2,3−ノルボルナンジカルボン酸ジクロリドを6.63g(30ミリモル)加え、130℃に昇温し、11時間、加熱還流した。
放冷後、生成物を含む粘性のある溶液を、メタノール中へ排出し、析出したポリマーを濾過、メタノールで洗浄した。これを減圧乾燥し、下記式(A)(化7)で表される繰り返し構造単位を含有する重量平均分子量72000のポリエステルを得た。
【0048】
【化7】
【0049】
実施例2
内容量100mlのフラスコに、撹拌機、還流冷却管、窒素吹き込み用浸漬管を設けた。窒素を吹き込みながら、このフラスコに例示化合物1で表されるジヒドロキシ化合物24.67g(80ミリモル)および、2,5−ノルボルナンジカルボン酸ジクロリドと2,6−ノルボルナンジカルボン酸ジクロリドの混合物(モル比62:38)17.69g(80ミリモル)を秤取した。発熱反応により、50℃まで昇温した。15分間攪拌した後、220℃で45分間、窒素を吹き込み、副生する塩化水素を留去しながら加熱攪拌した。
溶融状態で粘性のある生成物を反応器から取り出し、下記式(B)(化8)で表される繰り返し構造単位を含有する重量平均分子量48000のポリエステルを得た。
【0050】
【化8】
【0051】
実施例3
内容量200mlのフラスコに、撹拌機、還流冷却管、窒素吹き込み用浸漬管を設けた。窒素を吹き込みながら、このフラスコに例示化合物1で表されるジヒドロキシ化合物9.25g(30ミリモル)、トリエチルアミン6.09g(60ミリモル)および1,2−ジクロロエタン75mlを秤取した。攪拌しながら、10℃まで冷却し、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸ジクロリド6.54g(30ミリモル)を10分で滴下した。10〜15℃で2時間攪拌した後、水75mlを加えて、有機層を抽出し、これをメタノール中へ排出することにより、ポリマーを析出させた。濾過後、これを乾燥し、下記式(C)(化9)で表される繰り返し構造単位を含有する重量平均分子量91000のポリエステルを得た。
【0052】
【化9】
【0053】
実施例4〜10
実施例1において、例示化合物1で表されるジヒドロキシ化合物を用いる代わりに、第1表に示した各種のジヒドロキシ化合物を用い、ジカルボン酸成分として、2,3−ノルボルナンジカルボン酸ジクロリド、2,5−ノルボルナンジカルボン酸ジクロリドと2,6−ノルボルナンジカルボン酸ジクロリドの混合物(モル比62:38)、または5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸ジクロリドを用い、実施例1に記載の方法と同様な方法に従って、第2表(表3)に示した各種の繰り返し構造単位、および重量平均分子量を有する各種のポリエステルを得た。
【0054】
【表3】
【0055】
比較例1
ビスフェノールAとホスゲンから、下記の常法(界面重合法)に従い、公知のポリカーボネートを製造した。
内容量2lのバッフル付きフラスコに、格子翼を備えた撹拌機、還流冷却管、ホスゲン吹き込み用浸漬管を設けた。このフラスコに、114g(0.50モル)のビスフェノールA、56g(1.40モル)の水酸化ナトリウム、2.58gの4−tert−ブチルフェノールおよび、600mlの脱イオン水を装入し、水溶液を調製した。その後、該水溶液に、600mlのジクロロメタンを添加し、2相混合物とした。この2相混合物を撹拌しながら、59.4g(0.60モル)の塩化カルボニルを9.9g/分の速度で供給した。塩化カルボニルの供給終了後、0.08gのトリエチルアミンを反応混合物に添加し、さらに90分間撹拌混合した。その後、撹拌を停止し、反応混合物を分液し、ジクロロメタン相を塩酸水溶液により中和し、脱イオン水を使用して、水性洗浄液に電界質が実質的に検出されなくなるまで洗浄した。その後、ジクロロメタン相から、ジクロロメタンを蒸発留去することにより、固体状態の芳香族ポリカーボネートを得た。重量平均分子量は51000であった。
【0056】
比較例2
特開昭63−314235号公報の実施例7に記載の方法に従い、ビスフェノールAとスピロビインダノールとの共重合ポリカーボネートを製造した。重量平均分子量は44800であった。
【0057】
上記の各実施例および比較例で製造したポリマーを用い、プレス成形して厚さ1.2mmの板状試験片を作製し、この試験片について、以下に示した評価方法により、各項目の評価試験を行った。結果を下記の第3表(表4)に示した。
〔評価方法〕
(1)外観:試験片の透明性、光学的面状態を目視観察、評価した。
○:ひび割れ、クラック、面荒れ等が無く、無色透明で面状態の良いもの
×:ひび割れ、クラック、面荒れ等が観察されるもの
(2)全光線透過率(以下、透過率):ASTMD−1003法に従った。
(3)複屈折:エリプソメーターによって測定した。
(4)耐熱性:120℃で熱風乾燥基中に4時間放置した後、試験片を取り出して、肉眼で観察し評価した。
○:成形物の着色、表面の歪、クラック等が無いもの
×:成形物の着色、表面の歪、クラック等が観察されるもの
【0058】
【表4】
第3表から明らかなように、本発明のポリエステルを成形して得られる成形物は、透明性、耐熱性等が良好で、且つ、低複屈折性を有している。
【0059】
実施例11(光ディスクの作製および評価)
実施例1で製造したポリエステルを、ペレタイザー付き押出機(シリンダー温度270℃)にて、ペレット状とした。該ペレットを110℃にて4時間乾燥した後、280℃にて射出成形を行った。
すなわち、金型に鏡面を有するスタンパーを装着して、外径130mm、厚さ1.2mmの円盤状の成形物を得た。得られた成形物(基板)の中心部を、内径15mmとなるように打ち抜いてドーナツ状円盤とした。次に、片面にアルミの真空蒸着を行い、厚み600オングストロームの反射層を設けた。
得られた光ディスクについて、複屈折およびBER(ビットエラーレート)を測定した。
ビットエラーレートは、波長780nm、線速2m/sec、0.8mWのレーザー光を用いて、記録の読みとりのエラーの発生率を測定した。
結果を下記の第4表(表5)に示した。
【0060】
実施例12〜20
実施例2〜10で製造した各ポリエステルを用いた以外は、実施例11に記載の方法と同様な方法により、各光ディスクを作製して評価を行った。
結果を下記の第4表に示した。
【0061】
比較例3
比較例1で製造したポリマーを使用した以外は、上記実施例11と同様な方法により光ディスクを製造した。得られた光ディスクの複屈折およびBER(ビットエラーレート)を測定した結果を、以下の第4表に示した。
【0062】
比較例4
比較例2で製造したポリマーを使用した以外は、上記実施例11と同様な方法により光ディスクを製造した。得られた光ディスクの複屈折およびBER(ビットエラーレート)を測定した結果を、以下の第4表に示した。
【0063】
【表5】
第4表から明らかなように、本発明の光ディスクは、複屈折の低下により、既存のポリマーを用いて得られる光ディスクと比較して、BERが向上している。
【0064】
実施例21(光磁気ディスクの製造および記録特性の評価)
実施例1において得られたポリエステルを、ペレタイザー付き押出機(シリンダー温度270℃)にてペレット状とした。該ペレットを110℃にて4時間乾燥した後、射出成形を行った。すなわち、金型に鏡面を有するスタンパーを装着して、外径130mm、厚さ1.2mmの円盤状の成形物を得た。
得られた成形物(基板)上に、Tb23.5、Fe64.2、Co12.3(原子%)の合金ターゲットを用いてスパッタリング装置〔RFスパッタリング装置、日本真空(株)製〕中で、厚み1000オングストロームの光磁気記録層を形成した。この記録膜上に、厚み1000オングストロームの無機ガラスの保護膜を上記と同じスパッタリング装置を用いて形成した。得られた光磁気ディスクの複屈折、CN比、BER(ビットエラーレート)およびCN保持率を測定した。
尚、CN比は、書き込みパワー7mW、読みとりパワー1mW、キャリア周波数1MHz、分解能帯域幅30KHzで測定を行った。
CN保持率は、初期CN比に対する60℃、90%RH条件下で30日経過後のCN比の低下度を百分率(%)で示した。
結果を下記の第5表(表6)に示した。
【0065】
実施例22〜30
実施例2〜10で製造した各ポリエステルを使用した以外は、上記実施例21と同様な方法により、各光磁気ディスクを製造した。得られた各光磁気ディスクの複屈折、CN比、BER(ビットエラーレート)およびCN変化率を測定した結果を、以下の第5表に示した。
【0066】
比較例5
比較例1で製造したポリマーを使用した以外は、上記実施例21と同様な方法により光磁気ディスクを製造した。得られた光磁気ディスクの複屈折、CN比、BER(ビットエラーレート)およびCN保持率を測定した結果を、以下の第5表に示した。
【0067】
比較例6
比較例2で製造したポリマーを使用した以外は、上記実施例21と同様な方法により光磁気ディスクを製造した。得られた光磁気ディスクの複屈折、CN比、BER(ビットエラーレート)およびCN保持率を測定した結果を、以下の第5表に示した。
【0068】
【表6】
第5表から明らかなように、本発明のポリエステルを用いて得られる光磁気ディスクは複屈折の低下により、既存のポリマーより得られる光磁気ディスクと比較して、CN比およびBERが向上しており、また、CN保持率が改良されている。
【0069】
【発明の効果】
本発明により、透明性、耐熱性等が良好で、且つ、低複屈折性を有するポリエステルを提供することが可能になった。本発明のポリエステルは、光ディスク基板、ピックアップレンズなどの光学部品として非常に有用である。特に、該ポリエステルを用いて得られる光磁気ディスク基板は、光記録特性に優れ、且つ、耐久性(耐熱性、耐湿性など)にも優れている。
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- 請求項1または2記載のポリエステルを含有してなる光学部品。
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