JP3627649B2 - 電流制御型素子用駆動装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、誘導性負荷に駆動電流を供給するための電流制御型素子の駆動装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
誘導性負荷を駆動する電流制御型素子用の駆動装置は、たとえば、誘導モータを制御するチョッパ回路およびHブリッジ回路などに用いられる。これらの回路では、誘導性負荷で発生される逆起電力から電流制御型素子を保護するために保護回路が設けられる。図3は、保護回路が設けられたHブリッジ回路の一部を表した図であり、たとえば、特開平8−84060号公報に記載されている。図3において、T101,T102はモータなどから成る誘導性負荷L1に駆動電流を供給する電流制御型スイッチングトランジスタ(以下、単に駆動用トランジスタと略する)であり、それぞれベース端子に接続された駆動回路103,133で駆動される。駆動用トランジスタT101のコレクタ端子に電源電圧Vccが接続され、駆動用トランジスタT102のエミッタ端子は接地されている。駆動用トランジスタT101のエミッタ端子と駆動用トランジスタT102のコレクタ端子との間に誘導性負荷L1が接続されている。
【0003】
駆動用トランジスタT101,T102のエミッタ端子−ベース端子間には、それぞれダイオード102,122が接続されている。誘導性負荷L1から発生された逆起電力による電流をこれらダイオード102,122に流すことにより、駆動用トランジスタT101,T102の破壊が防止される。たとえば、駆動用トランジスタT102が駆動回路133から出力される駆動電流によりオンされると、電流が図中Aで示す方向に流れる。その後、駆動回路133からの駆動電流が停止されて駆動用トランジスタT102がターンオフすると、誘導性負荷L1から逆起電力が発生され、この逆起電力により図中P点の電位が上昇する。P点の電位が駆動用トランジスタT101のベース端子の電位より高くなると、ダイオード102が順バイアスされて図中Cで示す方向に電流が流れる。そして、駆動用トランジスタT101のベース端子からキャリアが注入される結果、駆動用トランジスタT101が逆方向にターンオンして、上記逆起電力による環流電流が図中Bで示す方向に流れる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
そこで従来、無駄な電力消費を抑えるために誘導性負荷L1や駆動用トランジスタT101、または環流ダイオードを流れる電流の向きを検出し、この検出した電流の向きに基づいて、駆動用トランジスタT101のターンオンを遅らせる、すなわち、環流電流Bが流れているときには、駆動用トランジスタT101をオンしないようにした技術が知られており、上記従来技術に開示した回路と組み合わせることが考えられる。しかしながら、誘導性負荷や駆動用トランジスタ、または環流ダイオードを流れる電流は高電流であり、その検出を行うには高耐圧の回路が必要になる。一般的に高耐圧の回路は高価であり、上記従来技術に開示した回路に組み合わせると駆動装置が高価になる。
【0005】
本発明の目的は、逆方向に電流を流している電流制御型素子に対して、オンさせる駆動信号を発生しないようにした電流制御型素子用駆動装置を安価に提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
一実施の形態を示す図1に対応づけて本発明を説明する。
(1)請求項1に記載の発明による電流制御型素子用駆動装置は、駆動用端子に接続された誘導性負荷L1を駆動する電流を供給するとともに、誘導性負荷L1から生じる逆起電力による電流を供給する向きと逆方向に流す電流制御型トランジスタT1と、電流制御型トランジスタT1をオン/オフさせる駆動信号を発生する駆動制御手段M1,M2と、電流制御型トランジスタT1の誘導性負荷L1が接続される駆動用端子および電流制御型トランジスタT1の制御端子の間に設けられ、電流制御型トランジスタT1に流れる逆方向の電流を検出する電流検出手段RH、2と、少なくとも電流検出手段RH、2により逆方向の電流が検出されているとき、電流制御型トランジスタT1をオンさせる駆動信号が発生しないように駆動制御手段M1,M2を制御する駆動信号停止手段1とを備えることにより、上述した目的を達成する。
(2)請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の電流制御型素子用駆動装置において、電流検出手段は、電流制御型トランジスタT1の駆動用端子および制御端子間に直列に配設される抵抗素子RHと、この抵抗素子RHの両端の端子間電圧を検出する電圧検出手段2とを含み、電圧検出手段2による検出結果により逆方向の電流を検出することを特徴とする。
(3)請求項3に記載の発明による電流制御型素子用駆動装置は、誘導性負荷L1に対して上アーム側に位置して第1の方向に駆動電流を供給するとともに、誘導性負荷L1から生じる逆起電力による電流を供給する向きと逆方向に流す第1の電流制御型トランジスタT1と、第1の電流制御型トランジスタT1と直列に接続され、誘導性負荷L1に対して下アーム側に位置して第1の方向と異なる第2の方向に駆動電流を供給するとともに、誘導性負荷L1から生じる逆起電力による電流を供給する向きと逆方向に流す第2の電流制御型トランジスタT2と、第1の電流制御型トランジスタT1をオン/オフさせる駆動信号を発生する第1の駆動制御手段M1,M2と、第2の電流制御型トランジスタT2をオン/オフさせる駆動信号を発生する第2の駆動制御手段M3,M4と、第1の電流制御型トランジスタT1の誘導性負荷L1が接続される駆動用端子および第1の電流制御型トランジスタT1の制御端子の間に設けられ、第1の電流制御型トランジスタT1に流れる逆方向の電流を検出する第1の電流検出手段RH、2と、第2の電流制御型トランジスタT2の基準用端子および第2の電流制御型トランジスタT2の制御端子の間に設けられ、第2の電流制御型トランジスタT2に流れる逆方向の電流を検出する第2の電流検出手段RL,4と、少なくとも第1の電流検出手段RH、2により逆方向の電流が検出されているとき、第1の電流制御型トランジスタT1をオンさせる駆動信号が発生しないように第1の駆動制御手段M1,M2を制御する第1の駆動信号停止手段1と、少なくとも第2の電流検出手段RL、4により逆方向の電流が検出されているとき、第2の電流制御型トランジスタT2をオンさせる駆動信号が発生しないように第2の駆動制御手段M3,M4を制御する第2の駆動信号停止手段3とを備えることにより、上述した目的を達成する。
(4)請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の電流制御型素子用駆動装置において、第1の電流検出手段は、第1の電流制御型トランジスタT1の駆動用端子および制御端子の間に直列に配設される第1の抵抗素子RHと、この第1の抵抗素子RHの両端の端子間電圧を検出する第1の電圧検出手段2とを含み、第1の電圧検出手段2による検出結果により逆方向の電流を検出し、第2の電流検出手段は、第2の電流制御型トランジスタT2の基準用端子および制御端子の間に直列に配設される第2の抵抗素子RLと、この第2の抵抗素子RLの両端の端子間電圧を検出する第2の電圧検出手段4を含み、第2の電圧検出手段4による検出結果により逆方向の電流を検出することを特徴とする。
【0007】
なお、上記課題を解決するための手段の項では、本発明をわかりやすく説明するために実施の形態の図と対応づけたが、これにより本発明が実施の形態に限定されるものではない。
【0008】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように本発明によれば、次のような効果を奏する。
(1)請求項1〜4に記載の発明による電流制御型素子用駆動装置では、電流制御型トランジスタの駆動用端子と制御端子との間(下アームを構成する場合は基準用端子と制御端子との間)に電流検出手段を設け、電流検出手段が電流制御型トランジスタの逆方向に流れる電流を検出しているときに電流制御型トランジスタをオンさせる駆動信号が発生しないようにした。電流検出手段を電流制御型トランジスタの駆動用端子と制御端子との間(下アームを構成する場合は基準用端子と制御端子との間)に設けるようにしたので、電流検出手段に印可される電圧を電流制御型トランジスタの電源端子に印加される電圧に比べて小さくできる。この結果、電流検出手段に高耐圧部品を用いなくてよいから小型で低コストの装置が得られる。
(2)とくに、請求項2,4に記載の発明では、電流制御型トランジスタの駆動用端子と制御端子との間(下アームを構成する場合は基準用端子と制御端子との間)に直列に配設される抵抗素子の両端の端子電圧を検出して逆方向の電流を検出するようにしたので、小型で低コストの装置が得られる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1は、誘導モータを制御するHブリッジ回路の一部であり、本発明の一実施の形態による電流制御型半導体装置の回路図である。図1において、電流制御型スイッチングトランジスタ(以下、単に駆動用トランジスタと略する)T1,T2は、モータなどの誘導性負荷L1に駆動電流を供給するスイッチングデバイスである。駆動用トランジスタT1のコレクタ端子に電源電圧Vccが接続され、駆動用トランジスタT2のエミッタ端子は接地されている。駆動用トランジスタT1のエミッタ端子と駆動用トランジスタT2のコレクタ端子との間に誘導性負荷L1が接続されている。
【0010】
図1の上側アームには、駆動用トランジスタT1の他に、制御回路1と、コンパレータ2と、PMOSトランジスタM1と、NMOSトランジスタM2と、電流方向検知用抵抗器RHとが設けられている。上側アームの制御入力端子IN−Hには、不図示の指令回路から駆動用トランジスタT1をオンさせるためにLレベルの制御信号が印加され、駆動用トランジスタT1をオフさせるためにHレベルの制御信号が印加される。制御入力端子IN−Hに印加された制御信号は、制御回路1とNMOSトランジスタM2のゲート端子に入力される。
【0011】
制御回路1はインバータ11とNANDゲート12とを有する。NANDゲート12には、インバータ11で反転された上記制御信号と、コンパレータ2から出力される検出信号とが入力される。NANDゲート12の出力信号はPMOSトランジスタM1のゲート端子に入力される。
【0012】
上側アーム回路で駆動用トランジスタT1がオンされるとき、PMOSトランジスタM1がオンされるとともにNMOSトランジスタM2がオフされ、ベース電源VB−HからPMOSトランジスタM1を介して駆動用トランジスタT1のベース端子に電流が流され、駆動用トランジスタT1にキャリアが注入される。PMOSトランジスタM1がオンされて駆動用トランジスタT1のベース端子に流れる電流が駆動用トランジスタT1に対する駆動信号になる。一方、駆動用トランジスタT1がオフされるとき、PMOSトランジスタM1がオフされるとともにNMOSトランジスタM2がオンされる。このとき、駆動用トランジスタT1のベース端子から電流方向検知用抵抗器RH、およびNMOSトランジスタM2を介して駆動用トランジスタT1のエミッタ端子に電流が流され、駆動用トランジスタT1からキャリアが引き抜かれる。
【0013】
コンパレータ2は、電流方向検知用抵抗器RHを図1の下から上向きに電流が流れる場合にLレベルの検出信号を出力し、その他の場合はHレベルの検出信号を出力する。なお、PMOSトランジスタM1およびNMOSトランジスタM2には、それぞれ並列にダイオードD1、D2が形成されている。ダイオードD1、D2の極性は、図1において下側がアノード、上側がカソードである。
【0014】
図1の下側アームには、駆動用トランジスタT2の他に、制御回路3と、コンパレータ4と、PMOSトランジスタM3と、NMOSトランジスタM4と、電流方向検知用抵抗器RLとが設けられている。下側アームの制御入力端子IN−Lには、不図示の指令回路から駆動用トランジスタT2をオンさせるためにLレベルの制御信号が印加され、駆動用トランジスタT2をオフさせるためにHレベルの制御信号が印加される。制御入力端子IN−Lに印加された制御信号は、制御回路3とNMOSトランジスタM4のゲート端子に入力される。
【0015】
制御回路3はインバータ31とNANDゲート32とを有する。NANDゲート32には、インバータ31で反転された上記制御信号と、コンパレータ4から出力される検出信号とが入力される。NANDゲート32の出力信号はPMOSトランジスタM3のゲート端子に入力される。
【0016】
下側アーム回路で駆動用トランジスタT2がオンされるとき、PMOSトランジスタM3がオンされるとともにNMOSトランジスタM4がオフされる。ベース電源VB−LからPMOSトランジスタM3を介して駆動用トランジスタT2のベース端子に電流が流され、駆動用トランジスタT2にキャリアが注入される。PMOSトランジスタM3がオンされて駆動用トランジスタT2のベース端子に流れる電流が駆動用トランジスタT2に対する駆動信号になる。一方、駆動用トランジスタT2がオフされるとき、PMOSトランジスタM3がオフされるとともにNMOSトランジスタM4がオンされる。このとき、駆動用トランジスタT2のベース端子から電流方向検知用抵抗器RL、およびNMOSトランジスタM4を介して駆動用トランジスタT2のエミッタ端子に電流が流され、駆動用トランジスタT2からキャリアが引き抜かれる。
【0017】
コンパレータ4は、電流方向検知用抵抗器RLを図1の下から上向きに電流が流れる場合にLレベルの検出信号を出力し、その他の場合はHレベルの検出信号を出力する。なお、PMOSトランジスタM3およびNMOSトランジスタM4には、それぞれ並列にダイオードD3、D4が形成されている。ダイオードD3、D4の極性は、図1において下側がアノード、上側がカソードである。
【0018】
以上の電流制御型半導体装置の動作について、上側アームを例に詳細に説明する。図2は、図1の回路図の上側アーム部分の制御入力端子IN−Hに印加される制御信号Sig(IN−H)、コンパレータ2から出力される検出信号Sig(VS−H)、PMOSトランジスタM1のゲート端子に印加される信号Sig(V1−H)、および下側アーム部分の制御入力端子IN−Lに印加される制御信号Sig(IN−L)のタイムチャートである。図2のタイミングt0の時点において、下側アームの駆動用トランジスタT2に対する制御入力端子IN−Lに印加される制御信号Sig(IN−L)がLレベルになり、オン指令が入力される。このとき、コンパレータ4の出力はHレベルであるため、制御回路3の出力がLレベルになって、PMOSトランジスタM3がオン、NMOSトランジスタM4がオフする。この結果、駆動用トランジスタT2がオンされて図1のA方向に電流が流れる。
【0019】
この時点では、上側アームの駆動用トランジスタT1に対してオフ指令が入力されている。すなわち、制御入力端子IN−Hに印加される制御信号Sig(IN−H)はHレベル(オフ指令)であり、コンパレータ2から出力される検出信号Sig(VS−H)はHレベルである。タイミングt1の時点において、駆動用トランジスタT2に対する制御信号Sig(IN−L)がHレベルになり、オフ指令が入力される。これにより、PMOSトランジスタM3がオフ、NMOSトランジスタM4がオンして駆動用トランジスタT2がオフされる。駆動用トランジスタT2がオフされると、誘導性負荷L1に蓄積されているエネルギーを放出するために上述した環流電流が流れる。
【0020】
誘導性負荷L1から逆起電力が発生され、この逆起電力によって図1のP点の電位が上昇するので、上側アームのダイオード2、および電流方向検知用抵抗器RHを介して図1のB’で示す方向に電流が流れる。このとき、駆動用トランジスタT1が逆方向にターンオンされて、エミッタ端子からコレクタ端子に向けて逆方向に、図1のBに示す方向に電流が流れる。コンパレータ2から出力される検出信号Sig(VS−H)は、タイミングt1の時点でLレベルに変化する。
【0021】
上記B’およびBで示される方向に流れる電流、すなわち、環流電流が流れているタイミングt2の時点において、上側アームの駆動用トランジスタT1に対してオン指令が入力され、制御信号Sig(IN−H)がLレベルになる。このとき、コンパレータ2の出力はLレベルであるため、制御回路1から出力されてPMOSトランジスタM1のゲート端子に印加される信号Sig(V1−H)はHレベルが保持される。したがって、駆動用トランジスタT1に対してオン指令が入力されるにもかかわらず、PMOSトランジスタM1がオフ状態を保持する結果、駆動用トランジスタT1に対する駆動電流が流れない。
【0022】
上側アームの駆動用トランジスタT1に対してオフ指令が入力され、制御信号Sig(IN−H)がHレベルにされた後のタイミングt3の時点において、駆動用トランジスタT2に対して再びオン指令が入力される。すなわち、下側アームの制御入力端子IN−Lに印加される制御信号Sig(IN−L)が再びLレベルになる。制御回路3の出力がLレベルになり、PMOSトランジスタM3がオン、NMOSトランジスタM4がオフする。この結果、駆動用トランジスタT2が再びオンされて図1のA方向に電流が流れる。
【0023】
なお、タイミングt2以降の時点で駆動用トランジスタT1が逆方向にオンしていない場合は、コンパレータ2の検出信号Sig(VS−H)がHレベルにされる。したがって、上側アームの駆動用トランジスタT1に対してオン指令が入力され、制御信号Sig(IN−H)がLレベルになることにより、PMOSトランジスタM1がオンして駆動用トランジスタT1に対する駆動電流を流す。この結果、駆動用トランジスタT1がオンされる。
【0024】
上述したタイミングt3において、駆動用トランジスタT2が再びターンオンされると、駆動用トランジスタT1が逆回復動作に移行する。この時点において、NMOSトランジスタM2がオンされているので、駆動用トランジスタT1のコレクタ領域に蓄積されている電荷が滞留されない。すなわち、駆動用トランジスタT1のコレクタ領域内の電荷は、駆動用トランジスタT1のベース端子から電流方向検知用抵抗器RH、およびNMOSトランジスタM2を介して駆動用トランジスタT1のエミッタ端子側に引き出される。この結果、駆動用トランジスタT1はオフ状態になり、駆動用トランジスタT1のコレクタ端子からエミッタ端子に向けて貫通する大きな貫通電流が流れない。
【0025】
駆動用トランジスタT1のベース端子−エミッタ端子間の電圧は、駆動用トランジスタT1が順方向にオンしているとき約1V、駆動用トランジスタT1がオフしているとき0Vである。また、駆動用トランジスタT1が逆方向にオンしているときの電圧が高くならないように、電流方向検知用抵抗器RHの抵抗値を小さくする。したがって、駆動用トランジスタT1のベース端子−エミッタ端子間に設けられる電流方向検知用抵抗器RHおよびコンパレータ2に高耐圧部品を用いる必要はない。
【0026】
以上の説明では、上側アームを例にあげて説明したが、下側アームの場合も同様である。すなわち、駆動用トランジスタT2に環流電流が流れている状態において、下側アームの駆動用トランジスタT2に対してオン指令が入力されても、コンパレータ4の出力がLレベルになるため、制御回路3から出力されてPMOSトランジスタM3のゲート端子に印加される信号Sig(V1−L)のHレベルが保持される。したがって、駆動用トランジスタT2に対するオン指令が入力されるにもかかわらず、PMOSトランジスタM3がオフ状態を保持する結果、駆動用トランジスタT2に対する駆動電流が流れない。
【0027】
また、駆動用トランジスタT2のベース端子−エミッタ端子間の電圧は、駆動用トランジスタT2が順方向にオンしているとき約1V、駆動用トランジスタT1がオフしているとき0Vである。また、駆動用トランジスタT2が逆方向にオンしているときの電圧が高くならないように、電流方向検知用抵抗器RLの抵抗値を小さくする。したがって、駆動用トランジスタT2のベース端子−エミッタ端子間に設けられる電流方向検知用抵抗器RLおよびコンパレータ4に対し、高耐圧部品を用いる必要はない。
【0028】
以上説明した実施の形態によれば、以下の作用効果が得られる。
(1)駆動用トランジスタT1のベース端子とベース電源VB−H、および駆動用トランジスタT2のベース端子とベース電源VB−Lとの間に、PMOSトランジスタM1およびPMOSトランジスタM3をそれぞれ設け、駆動用トランジスタT1のベース端子とエミッタ端子との間に、電流方向検知用抵抗器RHとNMOSトランジスタM2、および駆動用トランジスタT2のベース端子とエミッタ端子との間に、電流方向検知用抵抗器RLとNMOSトランジスタM4とをそれぞれ設けるようにした。このようにして上側アームおよび下側アームを対称な回路にした結果、両アームの回路を同等の回路部品を用いて構成することができるのでコスト低減の効果が得られる。
(2)逆方向の環流電流を検出する電流方向検知用抵抗器RH、RL、およびこれら抵抗器の両端の電圧を比較するコンパレータ2、4を駆動用トランジスタT1、T2のベース端子とエミッタ端子との間にそれぞれ設けるようにした。したがって、環流電流を検知するために高耐圧の部品を用いなくてよいから、安価で小型の装置を得ることができる。また、駆動回路全体をIC化することも容易になる。
【0029】
上述した図1の構成において、駆動用トランジスタT1のベース端子−エミッタ端子間に設けた電流方向検知用抵抗器RHとNMOSトランジスタM2、および駆動用トランジスタT2のベース端子−エミッタ端子間に設けた電流方向検知用抵抗器RLとNMOSトランジスタM4について、それぞれ位置を入れ替えて接続してもよい。すなわち、図1において、NMOSトランジスタM2およびM4が上に、電流方向検知用抵抗器RHおよびRLを下に接続する場合にも上記(1)、(2)の作用効果が得られる。
【0030】
上記の説明では、駆動用トランジスタT1およびT2のエミッタ端子からコレクタ端子に向けて逆方向に大きな環流電流を流す必要があるため、駆動用トランジスタT1およびT2の逆方向電流増幅率h’FEが十分に大きいことが望まれる。この点、上述した駆動用トランジスタT1およびT2としては、たとえば、一般的なパワーバイポーラ型トランジスタが考えられる。とくに、特開平6−252408号公報に開示されている半導体装置は、逆方向電流増幅率h’FEが順方向の電流増幅率hFEと同程度であるため、本発明の駆動用トランジスタとして特に有効である。
【0031】
特許請求の範囲における各構成要素と、発明の実施の形態における各構成要素との対応について説明すると、エミッタ端子が駆動用端子(下アームを構成する場合は基準用端子)に、駆動用トランジスタT1が電流制御型トランジスタおよび第1の電流制御型トランジスタに、PMOSトランジスタM1およびNMOSトランジスタM2が駆動制御手段および第1の駆動制御手段に、ベース端子が制御端子に、電流方向検知用抵抗器RHおよびコンパレータ2が電流検出手段および第1の電流検出手段に、制御回路1が駆動信号停止手段および第1の駆動信号停止手段に、電流方向検知用抵抗器RHが抵抗素子および第1の抵抗素子に、コンパレータ2が電圧検出手段および第1の電圧検出手段に、駆動用トランジスタT2が第2の電流制御型トランジスタに、PMOSトランジスタM3およびNMOSトランジスタM4が第2の駆動制御手段に、電流方向検知用抵抗器RLおよびコンパレータ4が第2の電流検出手段に、制御回路3が第2の駆動信号停止手段に、電流方向検知用抵抗器RLが第2の抵抗素子に、コンパレータ4が第2の電圧検出手段に、それぞれ対応する。
【図面の簡単な説明】
【図1】一実施の形態による電流制御型半導体装置の回路図である。
【図2】図1の回路図の上側アーム部分に印加される制御信号のタイムチャートである。
【図3】従来の技術による保護回路が設けられたHブリッジ回路の一部を表した回路図である。
【符号の説明】
1,3…制御回路、 2,4…コンパレータ、
11,31…インバータ、 12,32…NANDゲート、
D1〜D4…ダイオード、 L1…誘導性負荷、
M1,M3…PMOSトランジスタ、 M2,M4…NMOSトランジスタ、
RH,RL…電流方向検知用抵抗器、 T1,T2…駆動用トランジスタ
Claims (4)
- 駆動用端子に接続された誘導性負荷を駆動する電流を供給するとともに、前記誘導性負荷から生じる逆起電力による電流を前記供給する向きと逆方向に流す電流制御型トランジスタと、
前記電流制御型トランジスタをオン/オフさせる駆動信号を発生する駆動制御手段と、
前記電流制御型トランジスタの前記誘導性負荷が接続される駆動用端子および前記電流制御型トランジスタの制御端子の間に設けられ、前記電流制御型トランジスタに流れる前記逆方向の電流を検出する電流検出手段と、
少なくとも前記電流検出手段により前記逆方向の電流が検出されているとき、前記電流制御型トランジスタをオンさせる駆動信号が発生しないように前記駆動制御手段を制御する駆動信号停止手段とを備えることを特徴とする電流制御型素子用駆動装置。 - 請求項1に記載の電流制御型素子用駆動装置において、
前記電流検出手段は、前記電流制御型トランジスタの前記駆動用端子および前記制御端子の間に直列に配設される抵抗素子と、この抵抗素子の両端の端子間電圧を検出する電圧検出手段とを含み、前記電圧検出手段による検出結果により前記逆方向の電流を検出することを特徴とする電流制御型素子用駆動装置。 - 誘導性負荷に対して上アーム側に位置して第1の方向に駆動電流を供給するとともに、前記誘導性負荷から生じる逆起電力による電流を前記供給する向きと逆方向に流す第1の電流制御型トランジスタと、
前記第1の電流制御型トランジスタと直列に接続され、前記誘導性負荷に対して下アーム側に位置して前記第1の方向と異なる第2の方向に駆動電流を供給するとともに、前記誘導性負荷から生じる逆起電力による電流を前記供給する向きと逆方向に流す第2の電流制御型トランジスタと、
前記第1の電流制御型トランジスタをオン/オフさせる駆動信号を発生する第1の駆動制御手段と、
前記第2の電流制御型トランジスタをオン/オフさせる駆動信号を発生する第2の駆動制御手段と、
前記第1の電流制御型トランジスタの前記誘導性負荷が接続される駆動用端子および前記第1の電流制御型トランジスタの制御端子の間に設けられ、前記第1の電流制御型トランジスタに流れる前記逆方向の電流を検出する第1の電流検出手段と、
前記第2の電流制御型トランジスタの基準用端子および前記第2の電流制御型トランジスタの制御端子の間に設けられ、前記第2の電流制御型トランジスタに流れる前記逆方向の電流を検出する第2の電流検出手段と、
少なくとも前記第1の電流検出手段により前記逆方向の電流が検出されているとき、前記第1の電流制御型トランジスタをオンさせる駆動信号が発生しないように前記第1の駆動制御手段を制御する第1の駆動信号停止手段と、
少なくとも前記第2の電流検出手段により前記逆方向の電流が検出されているとき、前記第2の電流制御型トランジスタをオンさせる駆動信号が発生しないように前記第2の駆動制御手段を制御する第2の駆動信号停止手段とを備えることを特徴とする電流制御型素子用駆動装置。 - 請求項3に記載の電流制御型素子用駆動装置において、
前記第1の電流検出手段は、前記第1の電流制御型トランジスタの前記駆動用端子および前記制御端子の間に直列に配設される第1の抵抗素子と、この第1の抵抗素子の両端の端子間電圧を検出する第1の電圧検出手段とを含み、前記第1の電圧検出手段による検出結果により前記逆方向の電流を検出し、
前記第2の電流検出手段は、前記第2の電流制御型トランジスタの前記基準用端子および前記制御端子の間に直列に配設される第2の抵抗素子と、この第2の抵抗素子の両端の端子間電圧を検出する第2の電圧検出手段とを含み、前記第2の電圧検出手段による検出結果により前記逆方向の電流を検出することを特徴とする電流制御型素子用駆動装置。
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