JP3623944B2 - ホスファチジルセリン高含有組成物 - Google Patents

ホスファチジルセリン高含有組成物 Download PDF

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Description

【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明はホスファチジルセリンを高濃度で含有し、しかも優れた流動性を有する油性組成物及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ホスファチジルセリンは、動物や植物中に広く分布するリン脂質の1種である。ホスファチジルセリンは、生体において、主にその細胞の細胞膜に存在し、細胞膜の重要な成分として知られている。また、ホスファチジルセリンは、ホスファチジン酸とアミノ酸の1種であるセリンが結合しているという化学構造的な特徴を有するリン脂質であるため、生体内において様々な重要な役割を担っており、生体の生理機能に深く関与している。
【0003】
しかしながら、天然成分としてのホスファチジルセリンは、植物中の含有量は僅かであるし、動物中であっても多くても1%を超えるものではない。そこで、通常の食品の摂取によってホスファチジルセリンを摂取しようとしても、食品は、ホスファチジルセリンの含有量が少ない植物や動物を原材料としているため、十分な量のホスファチジルセリンを摂取することはできない。さらに、天然物から高濃度にホスファチジルセリンを含む素材を製造することも大変困難である。そのため、高濃度のホスファチジルセリンを用いた基礎研究や用途開発などがホスファチジルコリンなどの他のリン脂質成分と比較して遅れている。
【0004】
ホスファチジルセリン高含有組成物を得る方法としては天然成分から抽出したリン脂質を分画してホスファチジルセリン含有分画を得る方法がある。最近では、大豆や卵黄に由来するレシチンを原料として用いて転換反応によりホスファチジルセリンを製造する方法が開発され(特開平2−79990号公報、特開2000−333689)、20質量%以上のホスファチジルセリン高含有する素材が得られている。
【0005】
この様なホスファチジルセリン高含有素材を用いた臨床研究により、ホスファチジルセリンを100〜500mg/日摂取することによる、脳機能改善を初めとする様々な生理活性が報告された(Bruni A. et al.、Nature 260、p331−333、1976;Amaducci T.、and the SMID group、Psychopharmacol. Bull.、24、p130−134、1988;Crook T. et al.、Neurology、41、p644−649、1991)。ホスファチジルセリンの摂取量は、西洋型の肉食を中心にした食事では1日平均数十mgとされている(Heywood R. et al.、Clin. Trials.、24、p25−32、1987。)ように、普段の食事によってホスファチジルセリンをそれが生理機能を発揮できる十分な量を摂取することは困難である。したがって、生理機能を発揮できる十分な量のホスファチジルセリンを摂取するためには、ホスファチジルセリンを高含有する組成物を補助的に摂取すること、例えば健康食品や特定保健用食品などとして摂取することが有効な方法である。
【0006】
ところで、リン脂質は常温下で固体状態であり、また、親水性と親油性両方の性質を持つ特徴がある。リン脂質は一般的に粉体、ペースト状、乳化液、または液体として利用されているが、そのうち液体として利用し、特に、それをソフトカプセル充填などするためには、流動性の良いことが要求される。そして、液体タイプのリン脂質を製造するにあたり、粉体成分又はペースト状物を希釈油に溶解して液体とすることが一般的である。しかしながら、ホスファチジルセリンは他のリン脂質に比べ、高い親水性を有するため、このような希釈油、特に不飽和脂肪酸を高含有する油に対する溶解性は極めて低く、ホスファチジルセリンを希釈油に溶解させて、室温で安定した流動性を保つ液体を製造することは困難であった。
【0007】
そのため、リン脂質組成物の流動性を向上させる方法として種々の技術が報告されている。すなわち、脂肪酸、スルホン酸、水性酸などの酸を加える方法(米国特許第2,194,842号、同特許第2,374,681号、同特許第2,391,462号)、金属塩類を加える方法(米国特許第3,357,918号)、トコフェロールを加える方法(特開昭61−15650号公報)、さらにホスファチジルエタノールアミン又はホスファチジルエタノールアミン及びホスファチジルコリンと共に加える方法(特開2001−122884)などである。しかし、これらの方法は何れも有効成分として目的とするホスファチジルセリン以外の物質を添加するものであるから、そのような物質を添加すること、そのための作業、時間などを必要とし、さらに得られるリン脂質組成物における目的成分であるホスファチジルセリンの含有濃度が低くなったり、その含有量を上げようとすると、得られる製品の体積が大きくなってしまうなどの問題点がある。
【0008】
また、以上の方法は何れも希釈油に被溶解物である、粉体タイプ又はペーストタイプのリン脂質を加える方法をとっていて、流動性において優れたものが得られない。つまり、粉体タイプのリン脂質はその重さが非常に軽く、ホスファチジルセリンを高含有する液体状リン脂質組成物を得るために、使用する希釈油の体積と比較してはるかに大きい体積のリン脂質粉体を溶かさなければならない。この溶解のための作業には時間と設備が要求されるうえ、その作業により得られた液体は均一性に欠けているし、粉体原料により大量に気泡が持込まれるので、その気泡の存在によって液体の流動性が低下している。一方、ぺーストタイプのリン脂質を用いて溶解する場合、ぺースト物の拡散性が低いことと、希釈油自体の溶媒としての浸透力が弱いことから、溶解し切れなかったぺースト原料が液体中にだまとして残存し、結果的に液体の均一性が低くなって、流動性が下がってしまう。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、ホスファチジルセリンを高度に含有し、しかも、流動性の良い油性組成物を製造することをその目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、ホスファチジルセリン高含有リン脂質原料を一旦粉体又はペースト状にしたものを、希釈油に溶解することによって、液体組成物を製造するのではなく、このようなホスファチジルセリン高含有リン脂質原料粉体又はペースト状物を製造する工程中に行う濃縮工程又は溶媒除去工程の前に、予めその前の工程で得られ溶液状態である、ホスファチジルセリン高含有リン脂質溶液に、希釈油及び他の配合成分を添加し、ホスファチジルセリン高含有リン脂質原料の製造工程から直接、ホスファチジルセリン高含有油性液体組成物を製造することにより、ホスファチジルセリンを高度に含有し、しかも、十分な流動性を有する液体組成物が得られることを見出した。また、これにより製造工程の効率化も行える。
【0011】
次に、得られる油性液体組成物の流動性が、その水分の含有量によって影響されることを見出し、上述の濃縮又は溶媒除去工程において十分に脱水処理を行って、目的とする液体組成物中の水分量を0.5質量%以下とすることにより、より流動性に優れたホスファチジルセリン高含有油性液体組成物が得られることを見出した。
【0012】
さらに、目的とする液体組成物を製造するために使用する、リン脂質又は希釈油の成分の構造中に含まれている脂肪酸の部分が酸化することにより、目的とする液体組成物の流動性が低下することに着目した。すなわち、液体組成物に抗酸化物質を添加することにより、リン脂質又は希釈油に含まれている脂肪酸の酸化を防止し、液体組成物の流動性が維持できることを見出した。
【0013】
すなわち、本発明は、ホスファチジルセリン高含有液体組成物の製造工程中、或いは製造直後において、茶エキス、カテキン、ルチン、プロポリスなど天然ポリフェノール系酸化防止剤、或いはビタミンE類、アスタキサンチンなど脂溶性天然酸化防止剤を配合する。このことにより、目的組成物の流動性がリン脂質又は希釈油に含まれる脂肪酸の部分の酸化により劣化されることを防ぐことができる。
【0014】
そこで、本発明は、
1. 有機溶媒を用いるホスファチジルセリン高含有流動性油性組成物を製造する方法であって、ホスファチジルセリン含有素材からの抽出による製造方法又はレシチンを原料とするホスファチジル基転換反応による製造方法における濃縮工程を行う前であって、その前の工程で得られているホスファチジルセリン高含有リン脂質の溶液に希釈油を添加することを特徴とする、ホスファチジルセリン高含有流動性油性組成物を製造する方法、
2.希釈油を、希釈油を添加した後のホスファチジルセリン高含有リン脂質溶液全量中15〜70質量%となる範囲の量を添加することを特徴とする1記載のホスファチジルセリン高含有流動性油性組成物を製造する方法、
3. 希釈油が、ココナツ油、ヤシ油、パーム油、グレープフルーツ油及び中鎖脂肪酸トリグリセリドのような飽和脂肪酸系油剤並びに大豆油、ごま油、シソ油、落花生油、米胚芽油、小麦胚芽油、トウモロコシ油、菜種油、綿実油、カボチャ種子油、オリーブ油、グアバ種子油、ナツメヤシ種子油、ブドウ種子油、ツバキ種子油、ヒマワリ油、月見草種子油及びサフラワー油のような不飽和脂肪酸系油剤から選択されることを特徴とする、1又は2記載のホスファチジルセリン高含有流動性油性組成物を製造する方法、
4.1記載のホスファチジルセリン高含有流動性油性組成物を製造する方法において、希釈油を添加したホスファチジルセリン含有リン脂質溶液の濃縮の工程において、脱水処理するか又は濃縮工程の後脱水処理することにより、ホスファチジルセリン高含有流動性油性組成物の水分量を0.5質量%以下とする、ホスファチジルセリン高含有流動性油性組成物の製造方法、
5.1〜4のいずれかに記載のホスファチジルセリン高含有流動性油性組成物を製造する方法のよって製造されたことを特徴とするホスファチジルセリン高含有流動性油性組成物、
6.ホスファチジルセリンの含有量が全リン脂質中20質量%以上であり、全リン脂質の含有量が全組成中30質量%以上である、5記載のホスファチジルセリン高含有流動性油性組成物、
7.酸化防止剤を含み、その酸化防止剤の含有量がホスファチジルセリン高含有流動性油性組成物中0.5質量%以上である、5又は6記載のホスファチジルセリン高含有流動性油性組成物、
8.5〜7のいずれか記載のホスファチジルセリン高含有流動性油性組成物を含む食品組成物、
に関する。
【0015】
【発明の実施の形態】
ホスファチジルセリン含有リン脂質原料は、天然物である、大豆、綿実などの植物種子や卵黄、魚介類、鳥獣肉類などから抽出により製造することができる。又は、これらから製造されたレシチンを用いてホスファチジル基転移反応を行うことにより、ホスファチジルセリン高含有リン脂質原料が製造できる。
【0016】
大豆や卵黄などからのリン脂質(レシチン)又はホスファチジルセリン高含有リン脂質原料の製造は、一般に原料粉砕→溶媒抽出→固液分離→蒸留→水和→脱ガム→精製→濃縮(溶媒除去)→乾燥という工程にしたがって行われる(図1)。レシチンを用いてホスファチジル基転移反応によりホスファチジルセリン高含有リン脂質原料を製造する場合は、一般にレシチン溶解→酵素反応→酵素分離→濃縮(溶媒除去)→乾燥という工程にしたがって製造される(図2)。
【0017】
本発明によるホスファチジルセリン高含有の液体組成物を製造する場合は、上述のいずれの製造工程中においても行われる濃縮工程の前に、その前の工程で得られている溶解状態にあるホスファチジルセリン高含有リン脂質の溶液に予め希釈油を添加する。その後、それぞれの通常工程に従えばホスファチジルセリン高含有の液体組成物が製造できる。この方法によると、効率良く目的とするホスファチジルセリン高含有の流動性に優れた油性液体組成物を製造することができる。
【0018】
得られる油性液体組成物は、ホスファチジルセリンの含有量が全組成物中10〜40質量%という高度のものであり、しかもソフトカプセルの充填に適した好ましい流動性を有している。好ましい粘度は、500〜20000cpsであり、より好ましくは、500〜5000cpsである。
【0019】
得られる液体組成物の流動性が良くなるのは、▲1▼均一性の向上、▲2▼気泡の不発生、▲3▼溶媒の存在による溶解性の向上、によると考えられる。▲1▼は、希釈油を添加する工程において、被処理物が液体状のままで工程が進行するので、従来技術において採用されていた溶解方法において生じていた、粉体又はペーストタイプのものを溶解する際に溶け切れなかったり、だまが残存したりするという問題点がないことによる。▲2▼は、希釈油を添加した後に行う濃縮工程が減圧条件であるため、溶解時に被溶解物より持込まれた気泡が除去され、発生しないことによる。▲3▼は、希釈油の添加が溶媒を除去する前に行われるため、希釈油の添加時に十分量の溶媒が存在しており、それによって希釈油が直ちに混ざり合うことを可能にすることによる。
【0020】
具体的には、大豆や卵黄などから製造する場合はその精製工程において、又はレシチンのホスファチジル基転移反応により製造する場合はその酵素分離工程において、ホスファチジルセリン高含有リン脂質が有機溶剤中に溶解している溶液状態のままで希釈油を添加し、これらを溶解させた後、次の濃縮工程に移行する。
【0021】
こうすることで、従来行われていたホスファチジルセリン高含有リン脂質原料を一度粉体又はペースト状物にした後、希釈油に溶解することによって、ホスファチジルセリン高含有液体を製造するという2段階の製造法ではなく、リン脂質原料製造工程において、一気に最終目的物であるホスファチジルセリン高含有油性液体組成物を製造することができる。この製造方法は、より高効率、低コストという特徴を有する製造方法である。また、被溶解物であるホスファチジルセリン高含有リン脂質原料を溶解体である希釈油に加えて溶解させる従来の方法ではなく、逆に、溶解体である希釈油を処理中の溶液状態である被溶解物であるホスファチジルセリン高含有リン脂質溶液に混入するというこの方法は、目的とする液体組成物を得るための新たな方法を提供し、製造方法としてより迅速であり、より均一な組成物を製造することができる。
【0022】
希釈油を添加する工程において、目的組成物に配合される他の配合成分を同時に添加することができる。
【0023】
植物または動物リン脂質よりホスファチジルセリン高含有流動性油性組成物を製造する場合は、希釈油を添加する、ホスファチジルセリン高含有リン脂質の溶液として、ホスファチジルセリンを全リン脂質中に20質量%以上含むリン脂質溶液を使用するのが好ましい。また、ホスファチジル基転移反応によりホスファチジルセリン高含有流動性油性組成物を製造する場合に用いる原料であるレシチンは、ホスファチジルセリンを高含有するものを使用する必要はないが、ホスファチジルコリンとホスファチジルエタノールアミンの全リン脂質組成中の含有量が高いものが良い。具体的にはホスファチジルコリンとホスファチジルエタノールアミンの合計含有量が全リン脂質組成中50質量%以上であることが好ましい。
【0024】
さらに、ホスファチジルセリン高含有流動性油性組成物を製造する場合に用いるホスファチジルセリン高含有リン脂質の溶液は、市販されているホスファチジルセリン高含有粉体、またはペースト状物を有機溶媒に溶解させて製造したものを使用することもできる。
【0025】
こうして得られたホスファチジルセリン高含有流動性油性組成物中の全リン脂質の含有量は全組成物中30質量%以上であり、また、ホスファチジルセリンの含有量は全リン脂質中20質量%以上であることが望ましい。さらに望ましいのは全リン脂質の含有量は全組成物中50質量%以上、また、ホスファチジルセリン含有量が全リン脂質中30質量%以上である。
【0026】
希釈油としては、ココナツ油、ヤシ油、パーム油、グレープフルーツ油及び中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)の様な飽和脂肪酸を多く含む油類、或いは大豆油、ごま油、シソ油、落花生油、米ぬか油(米胚芽油)、小麦胚芽油、トウモロコシ油、菜種油、綿実油、カボチャ種子油、オリーブ油、グアバ種子油、ナツメヤシ種子油、ブドウ種子油、ツバキ種子油、ヒマワリ油、月見草種子油、サフラワー油などの様な不飽和脂肪酸を多く含む油類の何れか、またはこれらの混合油類を使用できる。精製魚油も、これらに混合して希釈油として使用できる。
【0027】
すなわち、従来の方法では脂肪酸分子中に炭素間の不飽和結合を有する不飽和脂肪酸を多く含む希釈油のみを使用してホスファチジルセリン高含有流動性油性組成物を製造することはできないが、本発明ではこの様な不飽和脂肪酸を多く含む希釈油のみでも、ホスファチジルセリン高含有の好ましい流動性を有した油性液体組成物を製造することができる。希釈油は、希釈油を添加した後のホスファチジルセリン含有リン脂質溶液全量中15〜70質量%となる範囲の量添加するのが好ましい。
【0028】
さらに、目的とするホスファチジルセリン高含有油性液体組成物の流動性をより好ましいものとするため、目的物中の水分量を低くする。好ましい水分量は0.5質量%以下である。濃縮工程又は脱水工程において、十分に脱水処理を行って、目的とする油性液体組成物中の水分量を低下させる。水分を除去する方法は分子蒸留、真空乾燥などがあり、いずれも採用できる。
【0029】
酸化防止剤を添加して、ホスファチジルセリン高含有油溶性組成物の流動性を維持することができる。酸化防止剤としては、茶エキス、カテキン、ルチン、プロポリスなど天然ポリフェノール系酸化防止剤が使用でき、油溶性天然酸化防止剤、例えばビタミンE、カロチノイド類、アスタキサンチンなどが好ましく使用できる。酸化防止剤は、ホスファチジルセリン高含有油溶性組成物中0.5質量%以上配合することができ、好ましくは、0.5〜10質量%、より好ましくは、0.5〜5質量%配合することができる。
【0030】
食品または食品添加物としては、このホスファチジルセリン高含有油溶性組成物をそのまま、又は種々の栄養成分または機能成分を加えて、若しくは飲食品中に含有せしめて、脳機能改善剤、アルツハイマー病、記憶障害、ADHD(注意欠陥多動性障害)の予防又は治療に有用な保健用食品又は食品素材として使用できる。例えば、油脂、澱粉、乳糖、麦芽糖、植物油脂粉末、カカオ脂末、ステアリン酸などの適当な助剤を添加した後、慣用の手段を用いて、食用に適した形態、例えば、食用油、マーガリン、マヨネーズ、バター、ソフトクリーム、カプセル、ペースト、顆粒などに成形して食用に供してもよく、また種々の食品、例えば、ハム、ソーセージなどの食肉加工食品、かまぼこ、ちくわなどの水産加工食品、パン、菓子、バター、粉乳、発酵乳製品に添加して使用したり、牛乳、清涼飲料などの飲料に添加して使用してもよい。本発明の配合量は、当該食用組成物の種類や状態等により適宜設定される。
【0031】
本発明により提供されるホスファチジルセリン高含有油性組成物を、健康食品または特定保健用食品として、例えば、ソフトカプセル、ペーストに充填または添加して提供してもよく、また澱粉、乳糖、麦芽糖、植物油脂粉末、カカオ脂末、ステアリン酸などの適当な助剤を添加した後、顆粒状、粒状、錠状、ハードカプセルなどに成形して提供することもできる。ホスファチジルセリンは、特に脳内に多く存在し、脳機能維持に関わる重要な役割を果たしているため、これを補給することによって、脳機能の維持、改善及び低下防止、特にアルツハイマー病による記憶力低下の防止及び改善、ストレスの緩和、ADHDの改善などに有用である。
【0032】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0033】
実施例1[レシチンのホスファチジル基転移反応によるホスファチジルセリン(以下PSと表記することもある)高含有流動性油性組成物の製造]
レシチン70質量%含有リン脂質を有機溶剤に溶解した後、計算量の酵素と水分を加え、攪拌しながらレシチンのホスファチジル基転移反応を行う。反応液より酵素と水層を分離した後、PS高含有溶液を2等分し、一方の溶液は従来の製法に従い、溶媒を蒸留してPSが50質量%高含有粉体(見掛け比重0.30g/cm)に仕上げる。この粉体原料をさらに2等分し、これに同質量のMCT(比重0.94g/cm)とオリーブ油(比重0.95g/cm)をそれぞれ入れ、攪拌しながら溶解する。最後に、減圧で脱ガスして目的のPS25質量%含有油性組成物を製造した。もう一方の溶液は本発明の製造方法に従い処理した。すなわち、少量を取って測定して全リン脂質の濃度と全リン脂質中のPSの濃度を算出した後2等分し、そのままで溶液中の全リン脂質と同質量のMCTとオリーブ油をそれぞれ加え、減圧濃縮して、さらに分子蒸留で脱水して目的のPS25質量%含有油性組成物を製造した。これら油性組成物の希釈油への溶解性(溶解性がよい:++、溶解する:+、溶け切らない:−)、流動性(粘度の測定)、透明度(目視により、透明性に優れる:++、透明である:+、不透明:−)を評価した。結果を表1に示す。
【0034】
【表1】
Figure 0003623944
【0035】
表1に示したように、従来法の場合においてはオリーブ油を希釈油として使用した場合は、溶け切らないという問題が生じるので使用する希釈油の種類が制限されるうえ、得られる油性組成物の粘度が高く流動性が低い。これに対して本発明方法の場合は、何れの評価項目においても優れ、さらに従来法では製造することができなかった不飽和脂肪酸を多く含む希釈油を用いた場合であっても、溶解性がよく、透明性も満足で、十分な流動性を有する目的物が得られた。
【0036】
実施例2[各種希釈油の使用試験]
レシチン60質量%含有リン脂質を有機溶剤に溶解した後、計算量の酵素と水分を加え、攪拌しながらレシチンのホスファチジル基転換酵素反応を行う。反応液より酵素と水層を分離した後、全リン脂質中のPSの濃度が40質量%となるPS高含有溶液を得た。この溶液を用いて、実施例1と同じように各種希釈油(シソ油、オリーブ油、ドコサヘキサエン酸(DHA)含有精製魚油(脂肪酸組成中DHA46%):DHA−46%、MCT又はこれらの混合物)を加えて目的のPS高含有油性組成物を製造した。これら油性組成物の溶解度、流動性、透明度をそれぞれ4段階(優れる:4、やや優れる:3、普通:2、許容できる程度である:1)で評価した。結果を表2に示す。
【0037】
【表2】
Figure 0003623944
【0038】
実施例3[水分量の評価試験]
実施例2と同じ工程で全リン脂質中のPSの濃度が40質量%となるPS高含有溶液を得た。この溶液を用いて、次の脱水工程において異なる水分レベルの目的のPS高含有油性組成物を製造し、それらの溶解性、流動性、透明度を実施例2と同様に評価した。結果は表3に示す。
【0039】
【表3】
Figure 0003623944
【0040】
実施例4[酸化防止剤の評価試験]
実施例2で製造したPS高含有油性組成物を2等分し、酸化防止剤として、ビタミンEを組成物中に1質量%添加した場合と添加しない場合それぞれで、3ヶ月後それらの流動性を実施例2の場合と同様に評価した。結果は表4に示す。
【0041】
【表4】
Figure 0003623944
【0042】
[ソフトカプセルの製造]
実施例1の本発明方法により製造したMCTで希釈したPS高含有油性組成物をソフトカプセル(Oval 5)に各250mg充填した。用いたPS高含有油性組成物は、優れた流動性を有し、充填は問題なく行うことができた。
【0043】
【発明の効果】
本発明により、ホスファチジルセリンを高濃度に含有し、しかも、流動性のよい油溶性組成物を製造することができ、例えば、そのような組成物を使用して充填したソフトカプセルは、ホスファチジルセリンを摂取するための健康食品、特定保健用食品として有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】大豆又は卵黄からの製造工程フローチャートを示す。
【図2】レシチンのホスファチジル基転移反応による製造工程フローチャートを示す。
【図3】ホスファチジルセリン高含有リン脂質の溶液からの従来法及び本発明方法による、ホスファチジルセリン高含有油性組成物の製造工程フローチャートを示す。

Claims (8)

  1. 有機溶媒を用いるホスファチジルセリン高含有流動性油性組成物を製造する方法であって、ホスファチジルセリン含有素材からの抽出による製造方法又はレシチンを原料とするホスファチジル基転換反応による製造方法における濃縮工程を行う前であって、その前の工程で得られているホスファチジルセリン高含有リン脂質の溶液に希釈油を添加することを特徴とする、ホスファチジルセリン高含有流動性油性組成物を製造する方法。
  2. 希釈油を、希釈油を添加した後のホスファチジルセリン高含有リン脂質溶液全量中15〜70質量%となる範囲の量を添加することを特徴とする請求項1記載のホスファチジルセリン高含有流動性油性組成物を製造する方法。
  3. 希釈油が、ココナツ油、ヤシ油、パーム油、グレープフルーツ油及び中鎖脂肪酸トリグリセリドのような飽和脂肪酸系油剤並びに大豆油、ごま油、シソ油、落花生油、米胚芽油、小麦胚芽油、トウモロコシ油、菜種油、綿実油、カボチャ種子油、オリーブ油、グアバ種子油、ナツメヤシ種子油、ブドウ種子油、ツバキ種子油、ヒマワリ油、月見草種子油及びサフラワー油のような不飽和脂肪酸系油剤から選択されることを特徴とする、請求項1又は2記載のホスファチジルセリン高含有流動性油性組成物を製造する方法。
  4. 請求項1記載のホスファチジルセリン高含有流動性油性組成物を製造する方法において、希釈油を添加したホスファチジルセリン含有リン脂質溶液の濃縮の工程において、脱水処理するか又は濃縮工程の後脱水処理することにより、ホスファチジルセリン高含有流動性油性組成物の水分量を0.5質量%以下とする、ホスファチジルセリン高含有流動性油性組成物の製造方法。
  5. 請求項1〜4のいずれか記載のホスファチジルセリン高含有流動性油性組成物を製造する方法によって製造されたことを特徴とするホスファチジルセリン高含有流動性油性組成物。
  6. ホスファチジルセリンの含有量が全リン脂質中20質量%以上であり、全リン脂質の含有量が全組成中30質量%以上である、請求項5記載のホスファチジルセリン高含有流動性油性組成物。
  7. 酸化防止剤を含み、その酸化防止剤の含有量がホスファチジルセリン高含有流動性油性組成物中0.5質量%以上である、請求項5又は6記載のホスファチジルセリン高含有流動性油性組成物。
  8. 請求項5〜7のいずれか記載のホスファチジルセリン高含有流動性油性組成物を含む食品組成物。
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