JP3622860B2 - 配送伝票用ポリエステル系フィルム - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、薄くても隠蔽性、描画性が良好で生産性、製膜性に優れた用ポリエステルフィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
宅配便や郵便小包などには住所、宛名などが書かれた配送伝票が荷物の上に貼られている。この配送伝票は、5枚から10枚が重ねて使用される。そのため基材として紙やポリオレフィン系合成紙などを使用すると、厚くなることが問題であった。そのためポリエステル系フィルムを使用したものも近年開発されている。しかし、薄くなると隠蔽性がなくなるため、下の文字などが透けて見えることが問題となっている。また、薄くても隠蔽性があるものを製膜しようとすると、フィルム内部に無機粒子や空洞を多数含有しなくてはならないため、製膜性が不安定になったりフィルム強度の乏しいものとなることが問題であった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記の欠点を解消した、薄くても隠蔽性やフィルム強度、製膜性、生産性などに優れた配送伝票用基材を提供せんとするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明は、ポリエステルに無機粒子及び該ポリエステルに非相溶の熱可塑性樹脂を混合して押出し、少なくとも1軸に配向してなる内部に微細な空洞を多数含有するポリエステル系フィルムであって、前記フィルムは、厚さが10μm以上40μm以下、見かけ比重が1.0以上1.3以下、光線透過率が30%以下、白色度が75以上であることを特徴とする配送伝票用ポリエステル系フィルムに関する。
本発明におけるポリエステルとは、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸のごとき芳香族ジカルボン酸又はそのエステルとエチレングリコール、ジエチレングリコール、1、4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコールのごときグリコールとを重縮合させて製造されるポリエステルである。これらのポリエステルは芳香族ジカルボン酸とグリコールとを直接反応させてからほか、芳香族ジカルボン酸のアルキルエステルとグリコールとをエステル交換反応させた後重縮合させるか、あるいは芳香族ジカルボン酸のジグリコールエステルを重縮合させるなどの方法によって製造させる。かかるポリエステルの代表例としてはポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンブチレンテレフタレートあるいはポリエチレン−2、6−ナフタレートなどが挙げられる。このポリエステルはホモポリマーであってもよく、第三成分を共重合したものであっても良い。いずれにしても本発明においては、エチレンテレフタレート単位、ブチレンテレフタレート単位あるいはエチレン−2、6−ナフタレート単位が70モル%以上、好ましくは80モル%以上、更に好ましくは90モル%以上であるポリエステルが好ましい。
【0005】
本発明において特に重要な点は、無機粒子がポリエステル中に存在しているにもかかわらず厚さが40μm以下と薄くできることにある。通常プラスティックフィルムに隠蔽性を付与する、つまり光線透過率を下げる手段としては、内部の空洞を多数発現させる、フィルムの表層に顔料、染料を塗布する、内部に無機粒子を多数含有させるなどの方法がある。しかし、隠蔽性をより向上させるために空洞や無機粒子の含有量をより増加させると、フィルムの強度低下や製膜性が不安定になるといったことが問題となる。また顔料の塗布量を増加させると、顔料の脱落といったことが問題となる。そこでこれらの問題が生じないように隠蔽性を向上させる方法としては、無機粒子をフィルム内部に多数含有しても延伸性を確保することである。
【0006】
通常の空洞含有ポリエステルフィルムの場合、添加した二酸化チタンや炭酸カルシウム、二酸化珪素、硫酸バリウムなどの無機粒子はすべてマトリクスであるポリエステル中に存在する。そのため無機粒子の添加量を増加させるとポリエステルと無機粒子の間に生じる界面が増加し、フィルムの引っ張り強度や製膜性の低下といったことが起こりやすくなる。これは厚さ40μm以下のフィルムでは特に顕著に生じる問題である。
よってこれらを解決する手段の一つとして無機粒子の表面をアルミニウムや珪素、亜鉛などを含む無機物で処理しポリエステルとの親和性を上げる方法や積層フィルムにおいてその表層に多量に添加する方法がこれまで開示されている。しかしこれらの方法では、厚さ40μm以下、好ましくは30μm以下で光線透過率30%以下を達成するほど無機粒子を多量に含有し、かつフィルム強度、表面強度や製膜性を維持することは不可能である。それは無機粒子の表面エネルギーが高いため、空洞発現剤よりも表面エネルギーの高いポリエステルとの親和性が高いためである。
【0007】
【0008】
そこで本発明に至る手段としては、隠蔽性を向上させるために無機粒子の添加量を増加させるとともに、後で述べる方法で内部に多数の空洞を含有させるために、該ポリエステルに非相溶の熱可塑性樹脂(空洞発現剤)を混合する。その際、無機粒子を全てポリエステル中に均一に分散させるのではなく、増加させた無機粒子を空洞に存在させたり、ポリエステルに非相溶の熱可塑性樹脂に有機的に結合させたり、好ましくは空洞発現剤中に存在させることである。これにより無機粒子の含有量を増加させてもポリエステルとの界面が増加しないため、フィルム強度、製膜性などの問題がなくなる。これを実現するためには通常用いられている二酸化チタンや炭酸カルシウム、硫酸バリウムなどの無機粒子の表面を溌水化処理を施し表面エネルギーを下げることにより、無機粒子と空洞発現剤の親和性をポリエステルのそれよりも向上させる。その処理剤としてはシリコン系樹脂、シロキサン系樹脂、フッ素系樹脂、シランカップリング剤やチタネートカップリング剤が挙げられ、より好ましくは芳香族または脂肪族からなる高分子化合物で表面処理したものが挙げられ、具体的にはポリビニルピリジンなどのように無機粒子と空洞発現剤を有機的に結合するものが好ましい。だがこれに限定されるものではない。さらにこのように処理した無機粒子を空洞発現剤と予備混練したマスターバッチペレットとして使用することにより効果的となる。予備混練をしない場合は、表面処理を行っても無機粒子はすべてポリエステル中に存在するため、本発明の目的は達することができない。また他の方法としては、積層フィルムとし、フィルムの表面層の無機粒子の量を中心層のそれよりも多くことも可能である。この場合、特に表面層に無機粒子の含有量が多くなることにより、フィルムの白色度が向上したり、艶消し感があり、高級なイメージを与える。
【0009】
本発明に用いられる無機粒子は特に限定されるものではない。例としては二酸化チタンや炭酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化珪素、酸化アルミニウム、タルク、カオリンなどが挙げられる。またこれらの無機粒子は必要に応じて表面処理をしても構わない。その処理剤としては酸化アルミニウム、二酸化珪素、酸化亜鉛、シリコン系樹脂、シロキサン系樹脂、フッ素系樹脂、シランカップリング剤やチタネートカップリング剤、ポリオールやポリビニルピリジンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。本発明においては好ましくは内部に多数の空洞を含有することである。この空洞を含有する方法は、特に限定されるものではないが、好ましくは内部にポリエステルに非相溶の熱可塑性樹脂(空洞発現剤)を混合、溶融、押出して得られた未延伸シートを少なくとも1軸に配向することにより、ポリエステルと空洞発現剤との界面が剥離し、内部に多数の空洞を得る方法である。この空洞発現剤は、上記したポリエステルに非相溶性のものでなければならない。具体的には、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスルホン系樹脂、セルロース系樹脂、ポリアミド系樹脂などがあげられる。特にポリスチレン系樹脂、ポリメチルペンテン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂が好ましい。
【0010】
本発明の該ポリエステルと該ポリエステルに非相溶性の熱可塑性樹脂を混合させた重合体混合物は、たとえば、各樹脂のチップを混合し押出機内で溶融混練した後、押出して固化することによって得られる方法や、あらかじめ混練機によって両樹脂を混練したものを更に押出機より溶融押出して固化する方法や、ポリエステルの重合工程においてポリエステルに非相溶性の熱可塑性樹脂を添加し、かくはん分散して得たチップを溶融押出して固化する方法などによっても得られる。固化して得られた重合体(未延伸シート)は通常、無配向もしくは弱い配向状態のものである。また、ポリエステルに非相溶性の熱可塑性樹脂はポリエステル中に、球状もしくは楕円球状、もしくは糸状など様々な形状で分散した形態をとって存在する。
【0011】
本発明の該ポリエステルと該ポリエステルに非相溶性の熱可塑性樹脂を混合させた重合体混合物は、たとえば、各樹脂のチップを混合し押出機内で溶融混練した後、押出して固化することによって得られる方法や、あらかじめ混練機によって両樹脂を混練したものを更に押出機より溶融押出して固化する方法や、ポリエステルの重合工程においてポリエステルに非相溶性の熱可塑性樹脂を添加し、かくはん分散して得たチップを溶融押出して固化する方法などによっても得られる。 該重合体混合物には、用途に応じて着色剤、耐光剤、蛍光剤、帯電防止剤などを添加することも可能である。
【0012】
得られた重合体混合物は、更に速度差をもったロール間での延伸(ロール延伸)やクリップに把持して拡げていくことによる延伸(テンター延伸)や空気圧によって拡げることによる延伸(インフレーション延伸)などによって少なくとも1軸に配向処理する。配向処理することにより、ポリエステルと空洞発現剤の界面で剥離が起こり空洞が発現する。したがってポリエステルに混合させる該ポリエステルに非相溶性の熱可塑性樹脂の量は、目的とする空洞の量によって異なってくるが、重合体混合物全体に対して3重量%〜40重量%、好ましくは8重量%〜20重量%である。3重量%未満では、空洞の生成量を多くすることに限界があり、目的の柔軟性や軽量性や描画性が得られない。逆に、40重量%以上では、ポリエステルフィルムの持つ耐熱性や強度が著しく損なわれる。
【0013】
該重合体混合物を配向処理する条件は、空洞の生成と密接に関係する。したがって本目的を達成するための条件はたとえば、もっとも一般的に行われている逐次2軸延伸工程を例に挙げると、該重合体混合物の連続シートを長手方向にロール延伸した後に、幅方向にテンター延伸する逐次2軸延伸法の場合以下のようになる。ロール延伸においては多数の空洞を発生させるため温度をポリエステルの2軸延伸温度+30℃以下、倍率を1.2〜5倍とするのが好ましい。テンター延伸においては破断せずに安定製膜するため温度を100〜140℃、倍率を1.2〜5倍とするのが好ましい。延伸後の熱処理条件を以下に述べる方法で実施することが望ましい。熱処理は延伸終了後、200℃以上、好ましくは220℃以上、さらに好ましくは230℃以上で行わなくてはならない。また、このときに3〜8%緩和させながら熱固定を行わなくてはならない。200℃未満または3%未満では150℃の熱収縮率が2%未満、好ましくは1.7%未満、さらに好ましくは1.5%未満の空洞含有フィルムは得られない。
【0014】
全体の平均空洞率は、40体積%以下、好ましくは30体積%以下が好適であり、平均空洞率が40体積%以上の空洞含有フィルムはそれ自体延伸工程での破断が多発するため製造しにくく、できたフィルムも表面の強度や引っ張り強度などが不十分となり好ましくない。本発明のフィルムは見かけ比重が好ましくは1.0〜1.3、より好ましくは1.06〜1.25である。1.0未満では紙を巻いて、プリンター中にセットしたときに巻きズレが起こりやすくなる。また、1.3以上では切り目からの手切れ性が不良になる。本発明のフィルムは光線透過率が好ましくは30%以下、さらに好ましくは25%以下、より好ましくは20%以下、特により好ましくは17%以下である。30%を越えると裏が透けて見えるためである。特にこのことは40μm以下、好ましくは30μm以下の薄いものにおいていえることだが、それ以上の厚みのものでも構わない。
【0015】
本発明のフィルムは白色度が75以上、好ましくは80以上なくてはならない。75未満では印字した文字が不鮮明になる。本発明においては、表層と中心層を積層したいわゆる複合フィルムとしても構わない。その方法は特に限定されるものではない。しかし生産性を考慮すると、表層と中心層の原料は別々の押出機から押出し、1つのダイスに導き未延伸シートを得た後、少なくとも1軸に配向させる、いわゆる共押出法による積層がもっとも好ましい。この場合B層に設ける熱可塑性樹脂は特に限定されるものではなく具体的には、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスルホン系樹脂、セルロース系樹脂、ポリアミド系樹脂などがあげられる。しかし、本発明においてはポリエステル系樹脂が好ましい。また、必要に応じて無機粒子を含有しても構わない。またポリアルキレングリコールおよび/またはその誘導体はA層のみまたはB層のみまたはA層およびB層の両方に添加することが可能である。この場合A層に添加することにより表面の接着性や水の濡れ性などを向上させることが可能となる。
【0016】
さらにフィルム表面に塗布層を設けることによって、インキやコーティング剤などの塗れ性や接着性が改良される。該塗布層を構成する化合物としては、ポリエステル系樹脂が好ましいが、この他にも、ポリウレタン樹脂、ポリエステルウレタン樹脂、アクリル系樹脂などの通常のポリエステルフィルムの接着性を向上させる手段として開示させている化合物が適用可能である。また塗布層を設ける方法としては、グラビアコート方式、キスコート方式、ディップ方式、スプレイコート方式、カーテンコート方式、エアナイフコート方式、ブレードコート方式、リバースロールコート方式など通常用いられている方法が適用できる。塗布する段階としては、配向処理を行う前の混合重合体物表面にあらかじめ塗布する方法、1軸方向に配向した空洞含有フィルム表面に塗布し、それを更に直角方向に配向させる方法、配向処理の終了したフィルム表面に塗布する方法などのいずれの方法も可能である。
【0017】
かくして得られたフィルムは、薄くても隠蔽性に優れるために文字が鮮明に見え、フィルム強度、製膜性に優れる配送伝票用紙として良好な基材となる。
【0018】
【実施例】
次に本発明の実施例を示す。
1)ポリエステルの固有粘度
ポリエステルをフェノール(6重量部)とテトラクロロエタン(4重量部)の混合溶媒に溶解し、30℃で測定した。
2)ポリスチレン系樹脂のメルトフローインデックス
JIS−K7210に準じて200℃、荷重5kgで測定した。
【0019】
3)見かけ比重
フィルムを5.00cm×5.00cmの正方形に正確に切り出し、その厚みを50点測定し平均厚みをtμmとし、それの重さを0.1mgまで測定しwgとし、下式によって計算した。
【0020】
【数1】
【0021】
4)フィルムの平均空洞率
下式によって計算した。
【数2】
ただし、
【0022】
【数3】
【0023】
【数4】
上式におけるxiはi成分の重量分率、diはi成分の真比重を表す。実施例中の計算において用いた真比重の値は、ポリエチレンテレフタレート1.40、一般用ポリスチレン1.05、アナターゼ型二酸化チタン4.2を用いた。
【0024】
5)光線透過率
JIS−K6714に準じ、ポイック積分球式H.T.Rメーター(日本精密光学製)を用い、フィルムの光線透過率を測定した。この値が小さいほど隠蔽性が高い。
【0025】
6)フィルムの引っ張り強度
JIS−C2318に基づきおこなった。
【0026】
7)白色度
JIS−L1015−1981−B法により、日本電色工業(株)Z−1001DPを用いて行った。
【0027】
8)熱収縮率
フィルムを幅10mm、長さ250mmとり、200mm間隔で印をつけ5gの一定張力下で固定し印の間隔Aを測る。続いて、無張力下で30分間、150℃の雰囲気中のオーブンにいれた後の印の間隔Bを求め、以下の式により熱収縮率とした。
【0028】
【数5】
【0029】
【0030】
比較例1
原料として固有粘度0.62のポリエチレンテレフタレート樹脂75重量%にジカルボン酸成分としてジメチルテレフタレート、グリコール成分としてブタンジオールとポリテトラメチレングリコールをモル比85:15で共重合したポリエステル樹脂エラストマーを5重量%とメルトフローインデックス2.0g/10分一般用ポリスチレン15重量%、平均粒径0.3μmのアナターゼ型二酸化チタンを5重量%をA層の原料とし、B層の原料としてポリエチレンテレフタレート樹脂60重量%、アナターゼ型二酸化チタンを5重量%を各々別の2軸スクリュー押出機でT−ダイスより290℃で溶融押出しし、静電気的に冷却回転ロールに密着固化し、各層がそれぞれB/A/B=15/220/15μmの重合体混合物の未延伸シートを得た。引き続き該未延伸シートをロール延伸機で83℃で3.5倍縦延伸を行い、引き続きテンターで130℃で3.5倍横延伸したあと235℃で4%緩和させながら熱処理し、内部に多数の空洞を含有するポリエステルフィルムを得た。厚みはB/A/B=1.5/22/1.5μmであった。得られたフィルムの見かけ比重は1.11、光線透過率は32%、厚さ25μm、グロスは75%、白色度73、フィルムの縦、横方向の引っ張り強度はそれぞれ16kg/mm2であった。
得られた空洞含有ポリエステルフィルムに、溶剤系ポリエステル接着剤バイロン(東洋紡績社製)とポリウレタン系硬化剤タケネートD110N(武田薬品社製)を固形重量比で250:1の割合になるように混合したコート剤をグラビアコーターで塗布した。乾燥後の塗膜の厚さは0.15μmであった。この塗膜面に水性インキを印刷し、10枚重ねて配送伝票用紙を得た。文字が不鮮明であり、実用的なレベルではなかった。
【0031】
実施例1
まずメルトフローインデックス2.0g/10分一般用ポリスチレンと、平均粒径0.3μmのシランカップリング処理したルチル型二酸化チタン(富士チタン製TR−700S)とを重量比1:1で2軸スクリュー押出機を用いて、240℃で予備混練しマスターバッチペレットIを作製した。次に固有粘度0.62のポリエチレンテレフタレート樹脂とアルミナ処理したアナターゼ型二酸化チタンを重量比95:5で同様にマスターバッチペレットIIを作製した。このマスターバッチペレットIとポリエチレンテレフタレートとを重量比20:80で混合したものをA層の原料とし、マスターバッチペレットIIをB層の原料とした。この時のA層の押出機の温度は原料投入部にもっとも近いところを250℃とし、徐々に昇温し、溶融部では最高295℃にした。溶融部では約10分間混練し、スクリュー最先端部は290℃となるようにした。その後、メルトライン温度は徐々に下げ、最終的にT−ダイスでは280℃となるようにした。またB層の温度は押出機の温度は原料投入部にもっとも近いところを250℃とし、徐々に昇温し、溶融部では最高285℃にした。溶融部では約1分間混練し、スクリュー最先端部は280℃となるようにした。その後温度はそのままでメルトラインに原料を供給し、T−ダイスの直前でA層の両面に接合しそのままT−ダイスに供給した。その後、静電気的に冷却回転ロールに密着固化し、各層がそれぞれB/A/B=40/280/40μmの重合体混合物の未延伸シートを得た。この時、T−ダイスリット間隔は0.9mmで、その部分での重合体混合物の融液の平均流速は8.8m/秒であった。引き続き該未延伸シートをロール延伸機で83℃で3.5倍縦延伸を行い、引き続きテンターで145℃で3.5倍横延伸したあと235℃で4%緩和させながら熱処理し、内部に多数の空洞を含有するポリエステルフィルムを得た。厚みはB/A/B=4/30/4μmであった。得られたフィルムのA層の表層部の空洞率は2体積%、全体は19体積%であった。また空洞の少ない部分は表層から約3μmの深さまで存在していた。本実施例で得られた空洞含有フィルムは表面強度はクラス1であった。なお、本実施例の重合体混合物の未延伸シートの断面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、中央部のポリスチレンの分散粒子径は平均5.0μmであるのに対し、表層付近分散粒子径は平均0.7μmであった。またA層とB層の界面に存在するポリスチレンは糸状になっていた。
【0032】
見かけ比重は1.16、A層の表層部の空洞率は2体積%、全体の平均空洞率は19体積%、光線透過率は10%、厚さ38μm、白色度80、グロス50%、フィルムの縦、横方向の引っ張り強度はそれぞれ14/15kg/mm2 、熱収縮率は1.2/0.6%であった。得られたフィルムはポリエチレンテレフタレート中のみならず空洞発現剤であるポリスチレンのまわりやポリスチレン中にも二酸化チタンが多数含有していた。実施例1と同様にあと処理し、使用したところ同様に良好であった。さらに表面にセロテープ(ニチバン製、幅18mm)を貼り、すばやく剥しても表層が剥離しなかった。
【0033】
【発明の効果】
本発明の空洞含有ポリエステルフィルムは、従来のポリスチレンやポリオレフィンを空洞発現剤として用いて得られる空洞含有ポリエステルフィルムと同様に、軽量性、柔軟性、艶消し性、描画性などを有していると共に、従来のフィルムに比べ、薄くても隠蔽性が高く、手切れ性がよいという効果がある。従って本発明の空洞含有ポリエステルフィルムは配送伝票用紙として使用できる。
Claims (2)
- ポリエステルに無機粒子及び該ポリエステルに非相溶の熱可塑性樹脂を混合して押出し、少なくとも1軸に配向してなる内部に微細な空洞を多数含有するポリエステル系フィルムであって、前記フィルムは、厚さが10μm以上40μm以下、見かけ比重が1.0以上1.3以下、光線透過率が30%以下、白色度が75以上であることを特徴とする配送伝票用ポリエステル系フィルム。
- 前記無機粒子は、ポリエステル中だけでなく空洞に存在したり、ポリエステルに非相溶の熱可塑性樹脂に有機的に結合したり、あるいはポリエステルに非相溶の熱可塑性樹脂中に存在していることを特徴とする請求項1記載の配送伝票用ポリエステルフィルム。
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