JP3621293B2 - 多色部分融着仮撚加工糸及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、強撚調の風合いと、多色効果を併せ持つポリエステル部分融着仮撚加工糸、及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、糸の長手方向に撚抜部と捲縮部とを交互に形成する部分融着仮撚加工は強撚糸様の風合いと、淡い絣様の外観を併せ持つ素材として広く使用されており、濃淡染色差を有する部分融着仮撚糸も多数提案されている。
【0003】
例えば、特公平3−77293号公報には比較的高紡速で紡糸したポリエステルマルチフィラメント糸条を弛緩処理した後に太細斑を付与し、糸条が融着する温度で仮撚加工する加工糸が提案されている。しかし、この加工糸は濃染性を示す太部と淡染性を示す細部が糸条長手方向に分散して存在しているために、濃淡のコントラストが不足し、また、ポリエステルマルチフィラメント糸条自体が染色差を有するものではなく、太部と細部の濃淡染色差によるもので多色表現に欠けるものとなる。
【0004】
特開平6−101131号公報にはポリエステル高配向未延伸糸に間欠的に水を付与し、非接触態で熱処理し、さらに延伸同時融着仮撚加工を施すことで水付与部を淡染部、それ以外の部分を濃染部とする加工糸が提案されている。しかし、この加工糸も淡染部と濃染部の濃淡差による効果しかなく多色表現に欠けるものであり、淡染部と濃染部の両方が融着して集束しているため布帛にした場合、粗硬感があるものとなる。また、高温で融着仮撚が必要となるため、錘間のバラツキ、加工安定性の問題が生じやすい。
【0005】
また、特公昭56−43133号公報には染色性の異なる2種以上の熱可塑性合成繊維マルチフィラメント糸条が断面方向に互いに混在せず左右または上下の如く独立した層を形成しており、かつその長さ方向に未解撚状態の融着撚糸部が1m当たり10個以上混在し、他の部分は捲縮が付与されている融着糸が提案されている。しかし、この加工糸では染色性の違いによる杢調の効果は得られるが、それぞれのマルチフィラメント糸条は長手方向の濃淡、コントラストの差が不十分で多色表現に欠けるものとなる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はこのような従来技術における問題点を解決するものであり、強撚調の風合いと適度のシャリ感、及び高度の多色効果を併せ持つポリエステル多色部分融着仮撚加工糸を提供するものである。
【0007】
【発明を解決するための手段】
本発明の要旨は、糸条長手方向に太部からなる交絡部と細部からなる非交絡部を有する染色濃度、若しくは染色性の異なる2種類のポリエステル単繊維群からなる仮撚加工糸であって、糸条長手方向に濃色性を示す融着部と、淡色性を示す非融着部が交互に存在し、該融着部は2種類のポリエステル単繊維群の少なくともどちらか一方の該太部からなる交絡部を含み、仮撚方向の撚りを有し、非融着部は捲縮及び解撚方向の撚りを有する多色部分融着仮撚加工糸、及び、染色濃度、若しくは染色性の異なる2種類のポリエステル単繊維群からなる未延伸糸に、それぞれ個別に加圧空気により交絡部を形成させた後、半延伸により太細斑を付与した糸条を供給し、軟化点−50℃〜軟化点−10℃の仮撚温度、仮撚数T(t/m)が15000/√d〜26000/√d(d:デシテックス)で仮撚することを特徴とするポリエステル多色部分融着仮撚加工糸の製造方法にある。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施の形態について具体的に説明する。
図1は本発明の多色部分融着仮撚加工糸の一例であり、1、2はそれぞれ染色濃度差の異なる単繊維群であり、3は仮撚方向の撚りを有する融着部、4は捲縮及び解撚方向の撚りを有する非融着部である。該融着部3は2種類のポリエステル単繊維がどちらも濃染性の太部からなる場合と、どちらか一方が濃染性の太部で他方が細部からなる場合がある。
【0009】
本発明では、2種類のポリエステル単繊維群は互いに染色濃度差、若しくは染色性の異なるもので、例えば未変性ポリエステルと変性ポリエステル、変性度の大きいポリエステルと変性度の小さいポリエステルとの組合せが挙げられる。
【0010】
ここで未変性ポリエステルとは、例えばエチレンテレフタレートやブチレンテレフタレートを主たる繰り返し単位とするポリエステルが挙げられ、好ましくはポリエチレンテレフタレートが用いられる。
【0011】
また、変性ポリエステルとは、例えば主としてエチレンテレフタレートを主たる繰り返し単位とし易染性、可染性に変性されたポリエステルで、カチオン染料可染性、酸性染料可染性または分散染料易染性のポリエステルが挙げられる。
【0012】
カチオン染料可染性ポリエステルとしては、エチレンテレフタレートにナトリウムスルホイソフタル酸、ナトリウムスルホナフタレンジカルボン酸等の金属塩スルホネート基等の酸基含有エステル形成性化合物を共重合した変性ポリエステル、好ましくはエチレンテレフタレートに5−ナトリウムスルホイソフタル酸を1.5〜3.5モル%共重合した変性ポリエステルが挙げられる。
【0013】
また、酸性染料可染性変性ポリエステルとしては、エチレンテレフタレートにN−アルキル置換ジエタノールアミン等のアミノアルコールや第3級アミノ含有グリコール等の塩基含有エステル形成性化合物を共重合した変性ポリエステル、ビニルピリジンのホモポリマーまたはコポリマーを混合した変性ポリエチレンテレフタレートが挙げられる。
【0014】
さらに、分散染料易染性変性ポリエステルとしては、エチレンテレフタレートにイソフタル酸、アジピン酸、ポリオキシアルキレングリコール等のエステル形成性化合物を共重合した変性ポリエステルが挙げられる。
【0015】
2種類のポリエステル単繊維群が染色濃度差を有する組合せとしては、例えば未変性のポリエステルと分散染料易染性の変性ポリエステルの組合せ、あるいは、カチオン可染変性度の大きなものとカチオン可染変性度の小さなものの組合せが挙げられる。2種類のポリエステル単繊維群が互いに染料に対する染色性の異なるものとしては、例えばカチオン染料に非可染性の未変性のポリエステルとカチオン染料可染性の変性ポリエステル、分散染料易染性の変性ポリエステルとカチオン可染の変性ポリエステルの組合せが挙げられる。多色性の発現効果においては、2種類のポリエステル単繊維群が互いに染料に対する染色性の異なるものがより好ましい。
【0016】
さらに本発明では、2種類の単繊維群がそれぞれ個別に、糸条長手方向に太部からなる交絡部と細部からなる非交絡部を有しており、太部が交絡部に集中し、細部が非交絡部に集中していることが必要である。太部が交絡部に集中し、細部が非交絡部に集中していることから、各単繊維群は糸条長手方向に配向度が低く濃染性の太部と、配向度が高く淡染性の細部の染色性による明確な濃淡差を有している。各単繊維群が太細斑を有する単繊維からなる場合であっても太部、細部が糸条長手方向に分散して存在する場合は明確な濃淡差が得られない。
【0017】
また、本発明の多色部分融着仮撚加工糸は糸条長手方向に濃色性を示す融着部と、淡色性を示す非融着部が交互に存在することから適度なシャリ感と多色効果が得られ、融着部が仮撚方向の撚りを有し、非融着部が捲縮及び解撚方向の撚りを有していることから風合い及び形態表現の幅の大きいものとなる。
【0018】
さらに、融着部は、染色濃度、若しくは染色性の異なる2種類のポリエステル単繊維群の少なくともどちらか一方の太部からなる交絡部を含んでいることが必要である。該ポリエステル単繊維群はそれぞれ個別に、糸条長手方向に配向度の低い太部からなる濃染性の交絡部と配向度の高い細部からなる淡染性の非交絡部を有しており、該ポリエステル単繊維群からなる糸条に部分融着仮撚加工を行うと配向の低い太部で融着がおこるため、融着部は2種類のポリエステル単繊維がどちらも太部からなる場合と、どちらか一方が太部で他方が細部からなる場合があり、融着部における異色性が向上し、淡染性の非融着部とのコントラストが強調された多色効果に優れた部分融着仮撚加工糸となる。
【0019】
また、融着部の数が10〜30個/m、且つ、融着部の長さが1〜100mmであることが好ましく、融着部の数が10個/m未満ではハリ感不足となりやすく30個/mを超えると見た目が虫食い調になりやすい。融着部の長さが1mm未満では、融着によるシャリ感効果が得られにくく、100mmを超えると粗硬な風合いとなりやすい。
【0020】
以下、本発明の部分融着仮撚加工糸の製造方法を示す。
本発明では、染色濃度、若しくは染色性の異なる2種類のポリエステル単繊維群からなる未延伸糸に、それぞれ個別に加圧空気により交絡部を形成させた後、半延伸により太細斑を付与した糸条を供給し、仮撚を行う。
【0021】
交絡部に太部を集中し、非交絡部に細部を集中させるためには単繊維群に交絡部を付与した後に半延伸により太細斑を形成することが必要であり、半延伸により太細斑を形成した後に交絡を付与した場合は、交絡部に太部が集中せずに、太部と細部が糸条長手方向に分散し明確な濃淡表現に欠けるものとなる。
【0022】
また本発明では、染色濃度、若しくは染色性の異なる2種類のポリエステル単繊維群からなる未延伸糸にそれぞれ個別に加圧空気により交絡部を形成させた後、各糸条を引き揃えて混繊し、半延伸により太細斑を付与した混繊糸条、または、同一の紡糸ノズルより染色濃度、若しくは染色性の異なる2種類のポリエステル単繊維群を紡出し、各単繊維群にそれぞれ個別に加圧空気により交絡部を形成させ、混繊未延伸糸として巻き取った後、該未延伸糸に半延伸により太細斑を付与した混繊糸条を仮撚しても良い。
【0023】
該混繊糸において、太さ斑の変動係数CVが7〜20%、糸長1m当たりに平均太さの115%以上の太さ斑が2〜15個、かつ85%以下の太さ斑が2〜15個存在することが好ましい。太さ斑の変動係数CVが7%未満、あるいは糸長1m当たりに平均太さの115%を超える太さ斑が2個未満及び85%未満の太さ斑が2個未満では、混繊糸を構成する各単繊維群の延伸部の延伸倍率が小さく配向が小さいため、淡染性が不十分であり、明瞭な多色濃淡表現は得られにくくなる。
【0024】
変動係数CVが20%を超え、あるいは糸長1m当たりに平均太さの115%を超える太さ斑が15個を超え、また85%未満の太さ斑が15個を超えると、混繊糸を構成する2成分の各交絡部の数が非常に多く、淡染性を示す細部が短ピッチで不自然な染色パターンとなり商品性に欠けるものとなりやすい。
【0025】
本発明の半延伸により太細斑を付与した糸条の製造方法としては例えば、ポリエステル未延伸糸条としては、紡糸速度1000〜2500m/分の条件にて得られた未延伸糸を空気圧力0.3〜0.6MPaでエアー交絡処理したものが好ましい。
【0026】
紡糸速度が1000m/分未満では、得られた未延伸糸の自然延伸領域が大きく、大きな太細繊度差が得られるものの、太部の配向が低すぎるため加熱処理後の破断強度の低下が著しく、品質及び工程安定性が損なわれやすく、また2500m/分を超えると自然延伸領域が小さくなり良好な太細差が得られにくくなる。
【0027】
また、空気圧力が0.3MPa未満の場合は、単繊維群の交絡が不十分となり各単繊維群の太部の位置が分散し明確な濃淡表現が得られなくなり、0.6MPaを超えると交絡形態が不良となるばかりでなく、糸切れの要因となりやすい。
【0028】
該未延伸糸を混繊した後の半延伸処理の条件としては例えば、混繊未延伸糸条の最大延伸倍率の0.45〜0.65倍で、2種のポリエステルのうち低い方の結晶化温度以下の温度とした熱ピンで半延伸処理する方法が挙げられる。
【0029】
さらに、本発明の2種類のポリエステル単繊維群は、その構成単繊維の断面形状は丸断面でもよいし、三角、多葉、扁平等の異形断面であってもよい。2種類の単繊維群でそれぞれ断面が異なったものでもよい。
【0030】
また、本発明でいう、太さ斑の変動係数CVは、計測器工業(株)製のイーブネステスター(KET−80C)を用い、糸速度8m/分、チャートスピード50cm/分の条件下でウースターノルマル値を測定して得られた値であり、平均値からの偏りの大きさを示す指標となるものである。
【0031】
また、交絡部の個数は、ROTHSCHILD MESSINSTRUMENTE社製 自動ヤーン エンタングルメントテスタ(Needle Pull Tester R−2040)を用い、下記(1)式で示すトリップレベルテンションの条件で得られたフックドロップ値(HDcm)を測定し、(2)式を用いて交絡個数とした。
トリップレベルテンション=(d×0.2)+d/F+振動幅・・(1)
(式中、dは糸条のトータルデシテックス、Fは糸条を構成するフィラメント数、振動幅はd×0.02を表す。)
交絡個数(個/m)=100/HD・・(2)
図2は本発明の部分融着仮撚加工糸の製造装置の一例図である。
本発明では、2種類の互いに染色濃度差、若しくは染色性の異なるポリエステル単繊維群からなる未延伸糸に、それぞれ個別に加圧空気を吹き付け、各未延伸糸に交絡部を形成した後、半延伸処理した混繊糸からなる供給糸5を、マグネットテンサー6を経て、接触式の第1ヒーター7と仮撚ユニット8によって、加撚熱固定した後第1引取ローラー9へ送られる。供給糸5の糸供給装置としては、上記のマグネットテンサー6のような糸供給装置に代えて、定速ニップローラーを使用しても可能であるが、マグネットテンサーのような消極的な糸供給装置を用いた方が、ナチュラルな絣調のものが得られ易い傾向にある。第1引取ローラー9を経た後の供給糸5は、そのまま巻取ローラー12で巻き取るか、または、非接触式の第2ヒーター10で熱処理後、第2引取ローラー11を介し巻取ローラー12で巻き取るようにしても良い。尚、第2ヒーター10での熱処理を行うと、非融着部の嵩高が抑えられ、見掛け上の太細差は小さくなる。
【0032】
本発明では、各単繊維群が個別に配向度が低く濃染性を示す太部が集中した交絡部を有し、加撚熱セット域では、熱の影響を受けやすい該交絡部が部分融着し、加撚状態がそのまま熱固定され、その後の解撚域で解撚作用を受けても解撚されず未解撚のまま撚抜する。逆に配向の進んだ淡染性の細部は前者に比べ融着が起こりにくく、解撚域では加燃数以上に逆方向に解撚される。この結果、仮撚方向の撚りを持つ濃染性の融着部と、逆方向の撚りと捲縮を持つ淡染性の非融着部から成るSZ交互部分融着仮撚加工糸が形成される。
【0033】
本発明は配向度の低い太部を融着させるものであり、通常の融着糸よりも低温で融着させることが可能であり、第1ヒーター7の仮撚加工温度を供給糸5の軟化点−50℃〜軟化点−10℃に設定することが必要である。仮撚加工温度が軟化点−50℃より低い場合は部分融着がおこりにくく、目的とするシャリ感が得られない。軟化点−10℃を超える場合は融着部の比率が大きくなり、全体的に粗硬な風合いとなる。また、一般的に広く使用されている仮撚機のヒーターは、ポリエステル繊維の軟化点付近である240℃近辺を安定に保つことは性能的にも限界に近い。このため従来はわずかの温度斑が融着の程度に大きく影響を及ぼし、非常に品質管理の難しいものとされていたが、本発明によれば、部分融着可能な仮撚加工温度の範囲も広く、こういった問題も回避することができ、安定した生産が可能となる。
【0034】
また、2種類のポリエステル単繊維群のポリマー組成の相違により軟化点が異なる場合は、軟化点の低い方を基準として温度設定を行う。尚、軟化点の測定はDSC法(示差走査熱量測定法)でポリマーの融解による吸熱の開始温度を軟化点とした。
【0035】
また、仮撚数T(T/M)については、一般的には仮撚数を低くするほどヒーターの加熱効率が良いとされており、通常仮撚よりも低く設定する事が必要であり、仮撚数T(T/M)=15000/√d〜26000/√d(d:デシテックス)にすることにより、融着部と非融着部との形態差がはっきりした、凹凸感の明瞭なポリエステル多色部分融着仮撚加工糸を得ることが出来る。仮撚数T(T/M)が15000/√d未満ではストレートな形態となり膨らみにも欠けたものとなり、26000/√dを超えると非融着部の比率が大きくなりシャリ感に欠けたものとなる。
【0036】
【実施例】
以下、実施例をあげて本発明を説明する。評価方法は次に示す方法で行った。
得られた部分融着仮撚加工糸を16G編機を用い天竺組織で編地を作成し、精練−減量−染色の一連の工程処理を行った後、分散染料とカチオン染料を用い一浴二段染色法にて染色したもので、多色性、風合いの評価を行った。
【0037】
(実施例1)
未変性ポリエステルとしてポリエチレンテレフタレート(軟化点:240℃)を用い、変性ポリエステルとして5−ナトリウムスルホフタル酸を2.0モル%共重合したカチオン染料可染性ポリエステル(軟化点:235℃)を用いて、それぞれ紡糸速度1800m/分で紡糸した28フィラメントの単繊維群からなる未変性ポリエステルと20フィラメントの単繊維群からなる変性ポリエステルの未延伸糸を、個別にエアー圧0.5MPaでエアー交絡処理した後に混繊し、熱ピン温度85℃、延伸倍率1.774倍で熱ピン延伸し太細斑を形成した167dtex/48fの混繊糸条を図2に示す仮撚加工装置で、第1ヒーター温度200℃、第2ヒーター温度200℃、仮撚数2000T/M、加工速度100m/分で融着仮撚加工を行った。
【0038】
得られた部分融着仮撚加工糸からなる編み地は、30mm以下の加撚方向の撚りを持つ融着部と解撚方向の撚を持つ6〜75mmの非融着の捲縮部とがランダムに繰り返され、強撚調の風合いを有し、2種類の単繊維群の染色性、融着部と非融着部の濃淡差、及び融着部に存在する濃染性の太部の構成により、多色表現効果に優れたものとなった。
【0039】
(実施例2)
実施例1と同様の混繊伸糸条を、第1ヒーター温度185℃、仮撚数を1200T/Mとした以外は実施例1と同様の条件で融着仮撚加工を行った。
【0040】
得られた部分融着仮撚加工糸からなる編み地は、60mm以下の加撚方向の撚りを持つ融着部と解撚方向の撚を持つ10〜120mmの非融着の捲縮部とがランダムに繰り返され、強撚調の風合いを有し、多色表現効果に優れたものとなった。
【0041】
(実施例3)
未変性ポリエステルとしてポリエチレンテレフタレート(軟化点:240℃)を用い、変性ポリエステルとして5−ナトリウムスルホフタル酸を2.0モル%共重合したカチオン染料可染性ポリエステル(軟化点:235℃)を用いて、未変性ポリエステル成分が吐出される28個の紡糸孔と、変性ポリエステル成分が吐出される20個の紡糸孔群が2分割に区画された紡糸口金を使用して、紡糸温度290℃で2成分を同時に吐出した。吐出された糸条に冷却風を吹き当て冷却した後、各成分にそれぞれ個別に油剤を付与し、2個の引き取りローラー間で個別にエアー圧0.5MPaでエアー交絡処理した後、紡糸速度2000m/分で混繊未延伸糸として巻き取った。
【0042】
得られた混繊未延伸糸を、熱ピン温度85℃、延伸倍率1.774倍で熱ピン延伸し太細斑を形成した167dtex/48fの混繊糸条を図2に示す仮撚加工装置で、第1ヒーター温度225℃、第2ヒーター温度200℃、仮撚数1800T/M、加工速度100m/分で融着仮撚加工を行った。
【0043】
得られた部分融着仮撚加工糸からなる編み地は、40mm以下の加撚方向の撚りを持つ融着部と解撚方向の撚を持つ5〜60mmの非融着の捲縮部とがランダムに繰り返され、強撚調の風合いを有し、多色表現効果に優れたものとなった。
【0044】
(実施例4)
実施例3と同様の半延伸糸条を、第一ヒーター温度190℃、仮撚数を2000T/Mとした以外は実施例3と同様の条件で融着仮撚加工を行った。
【0045】
得られた部分融着仮撚加工糸からなる編み地は、35mm以下の加撚方向の撚りを持つ融着部と解撚方向の撚を持つ5〜115mmの非融着の捲縮部とがランダムに繰り返され、強撚調の風合いを有し、多色表現効果に優れたものとなった。
【0046】
請求項1についての比較例を示す。
【0047】
(比較例1)
ポリエステルとして5−ナトリウムスルホフタル酸を2.0モル%共重合したカチオン染料可染性ポリエステル(軟化点:235℃)のみを使用して、紡糸速度1800m/分で紡糸した28フィラメントの単繊維群からなる変性ポリエステルと20フィラメントの単繊維群からなる変性ポリエステルの未延伸糸を、個別にエアー圧0.5MPaでエアー交絡処理した後に混繊し、熱ピン温度85℃、延伸倍率1.774倍で熱ピン延伸し太細斑を形成した167dtex/48fの混繊糸条を実施例1と同様の条件で融着仮撚加工を行った。
【0048】
得られた部分融着仮撚加工糸からなる編み地は、強撚調のシャリ感は得られるが、繊維軸方向の太細斑による濃淡差はあるものの、2種類の単繊維群に染色濃度差がないため多色表現の効果が得られなかった。
【0049】
(比較例2)
実施例1と同様の、未変性ポリエステルと変性ポリエステルを用いて、それぞれ紡糸速度2000m/分で紡糸した20フィラメントの単繊維群からなる未変性ポリエステルと28フィラメントの単繊維群からなる変性ポリエステルの未延伸糸を、個別にエアー圧0.5MPaでエアー交絡処理した後に混繊し、熱板温度120℃、延伸倍率2.613で延伸した167dtex/48fの混繊糸条を用いて実施例1と同様の条件で融着仮撚加工を行った。
【0050】
得られた部分融着仮撚加工糸からなる編み地は、2種類のポリエステル単繊維群の染色性が異なることによる異色効果は得られるものの、それぞれの単繊維群は太細斑のない延伸糸となっており糸条長手方向の濃淡差が得られず、低配向の太部による部分融着も得られず、多色表現効果、シャリ感に欠けるものとなった。
【0051】
(比較例3)
実施例1と同様の、未変性ポリエステルと変性ポリエステルを用いて、それぞれ紡糸速度1800m/分で紡糸した20フィラメントの単繊維群からなる未変性ポリエステルと28フィラメントの単繊維群からなる変性ポリエステルの未延伸糸を、個別にエアー交絡処理せずに混繊し、熱ピン温度85℃、延伸倍率1.774倍で熱ピン延伸し太細斑を形成した167dtex/48fの混繊糸条を実施例1と同様の条件で融着仮撚加工を行った。
【0052】
得られた部分融着仮撚加工糸からなる編み地は、2種類のポリエステル単繊維群はどちらも交絡部を有していないため、濃染性の太部が糸条長手方向に分散して存在しコントラストが不足し、明確な多色表現に欠けるものとなった。
【0053】
請求項3についての比較例を示す。
【0054】
(比較例4)
第1ヒーター温度を170℃とした以外は、実施例3と同様の条件で部分融着仮撚加工糸を得た。
【0055】
得られた部分融着仮撚加工糸は、仮撚温度が軟化点−50℃よりも低いため融着が不十分となり、得られる編み地はシャリ感が得られず、ふかつき感が強いものとなった。
【0056】
(比較例5)
第1ヒーター温度を245℃とした以外は、実施例3と同様の条件で部分融着仮撚加工糸を得た。
【0057】
得られた部分融着仮撚加工糸からなる編み地は、仮撚温度が軟化点−10℃よりも高いため、粗硬なものとなった。
【0058】
(比較例6)
仮撚数を1000T/Mとした以外は実施例3と同様の条件で部分融着仮撚加工糸を得た。
【0059】
得られた部分融着仮撚加工糸からなる編み地は、仮撚数が低すぎるため融着、捲縮共に弱く、形態変化に欠けたものとなった。
【0060】
(比較例7)
仮撚数を2500T/Mとした以外は実施例3と同様の条件で部分融着仮撚加工糸を得た。
【0061】
得られた部分融着仮撚加工糸は仮撚数が高いため、非融着部の占める比率が大きくなり融着部は存在するものの、編み地にしたときに、いわゆる虫食い状の外観を呈し商品性に欠けるものとなった。
【0062】
【発明の効果】
本願発明は、糸条長手方向に太部からなる交絡部と細部からなる非交絡部を有する染色濃度、若しくは染色性の異なる2種類のポリエステル単繊維群からなる仮撚加工糸であって、糸条長手方向に濃色性を示す融着部と、淡色性を示す非融着部が交互に存在し、該融着部は2種類のポリエステル単繊維群の少なくともどちらか一方の該太部からなる交絡部を含み、仮撚方向の撚りを有し、非融着部は捲縮及び解撚方向の撚りを有する、強撚調の風合いと適度のシャリ感、及び高度の多色効果を併せ持つポリエステル多色部分融着仮撚加工糸が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による多色部分融着仮撚加工糸の一例図である。
【図2】本発明の多色部分融着仮撚加工糸を製造する装置の一例図である。
【符号の説明】
1、2 染色濃度差の異なる単繊維群
3 仮撚方向の撚りを有する融着部
4 捲縮及び解撚方向の撚りを有する非融着部
5 供給糸
6 マグネットテンサー
7 第1ヒーター
8 仮撚ユニット
9 第1引取ローラー
10 第2ヒーター
11 第2引取ローラー
12 巻取ローラー
Claims (6)
- 糸条長手方向に太部からなる交絡部と細部からなる非交絡部を有する染色濃度、若しくは染色性の異なる2種類のポリエステル単繊維群からなる仮撚加工糸であって、糸条長手方向に濃色性を示す融着部と、淡色性を示す非融着部が交互に存在し、該融着部は2種類のポリエステル単繊維群の少なくともどちらか一方の該太部からなる交絡部を含み、仮撚方向の撚りを有し、非融着部は捲縮及び解撚方向の撚りを有する多色部分融着仮撚加工糸。
- 融着部の数が10〜30個/m、且つ、融着部の長さが1〜100mmである請求項1記載の多色部分融着仮撚加工糸。
- 染色濃度、若しくは染色性の異なる2種類のポリエステル単繊維群からなる未延伸糸に、それぞれ個別に加圧空気により交絡部を形成させた後、半延伸により太細斑を付与した糸条を供給し、軟化点−50℃〜軟化点−10℃の仮撚温度、仮撚数T(t/m)が15000/√d〜26000/√d(d:デシテックス)で仮撚することを特徴とするポリエステル多色部分融着仮撚加工糸の製造方法。
- 染色濃度、若しくは染色性の異なる2種類のポリエステル単繊維群からなる未延伸糸に、それぞれ個別に加圧空気により交絡部を形成させた後、各糸条を引き揃えて混繊し、半延伸により太細斑を付与した混繊糸条を仮撚する請求項3記載のポリエステル多色部分融着仮撚加工糸の製造方法。
- 同一の紡糸ノズルより染色濃度、若しくは染色性の異なる2種類のポリエステル単繊維群を紡出し、各単繊維群にそれぞれ個別に加圧空気により交絡部を形成させ、混繊未延伸糸として巻き取った後、該未延伸糸に半延伸により太細斑を付与した混繊糸条を仮撚する請求項4記載のポリエステル多色部分融着仮撚加工糸の製造方法。
- 太さ斑の変動係数CVが7〜20%、糸長1m当たりに平均太さの115%以上の太さ斑が2〜15個、かつ85%以下の太さ斑が2〜15個存在する、太細斑を有する混繊糸条を仮撚する請求項4または請求項5記載の多色部分融着仮撚加工糸の製造方法。
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