JP3619974B2 - 無機繊維緩衝シール材の製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、排気ガス浄化用触媒コンバータの触媒担体を金属製シェル内に保持し且つシールする目的で、触媒担体と金属製シェルとの間に装着するための無機繊維緩衝シール材を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、自動車に搭載する排気ガス浄化用触媒コンバータとして、図7に示すごとき触媒コンバータが知られている。図7において、排気ガス浄化用触媒コンバータ(A)は、触媒担体(40)と該触媒担体(40)の外側を覆うシェル(20)と、両者の間に配置された緩衝シール材(30)とよりなっている。この排気ガス浄化用触媒コンバータAは、先ず触媒担体(40)の外面を緩衝シール材(30)で覆い、その外側から上部シェル(21)と下部シェル(22)を被せて締め付け、各シェルのフランジ(210)、(220)同士を溶接して製造する。触媒担体(40)を緩衝シール材(30)で覆うには、シート状の緩衝シール材(30)の両端部に必要に応じ適宜形状の係合部を形成し、触媒担体(40)の外周を一周させその両端部を接合或いは係合部同士を嵌合させることにより行う。(31)はその両端部の接する継ぎ目部分である。
【0003】
前記触媒担体(40)には、例えばその断面をハニカム状に成形したコージェライト担体が用いられ、この触媒担体(40)には一般に白金等の触媒が担持されている。また、前記緩衝シール材(30)としては、従来例えばシリカ・アルミナ系セラミックファイバー、未膨張バーミキュライト、無機結合材及び有機弾性物質の混合物をシート状に成形したものが用いられている。シェル(20)は一般には金属製である。
【0004】
前記緩衝シール材(30)は、自動車の走行時などに排気ガス浄化用触媒コンバータAが振動したとき、触媒担体(40)が外周のシェルと接触して損傷するのを防ぎ、またシェル(20)と触媒担体(40)との間から排気ガスが漏洩するのを防ぐ目的で配置されている。また、この緩衝シール材(30)は、一般に製品の密度が低く、嵩高で、厚みが大きいため、所定の寸法、形状に切断し、これを真空フィルムパック装置で圧縮しフィルムパックの状態にして厚みを小さくして、装着に使用している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、近年、自動車の高性能化及び各種の法規制により、排気ガスの温度が著しく上昇しており、従来の使用されていた緩衝シール材では耐熱性が不足し、充分な性能を確保することが困難になってきている。かかる排気ガス温度の上昇に対応するため、近年、より耐熱性の高い無機繊維不織布を緩衝シール材として用いることが考えられている。
【0006】
しかしながら、耐熱性の良好な無機繊維不織布を緩衝シール材に使用する場合には、従来の緩衝シール材を使用する場合の如く真空吸引してフィルムパックすると、無機繊維不織布の繊維の長さや径、密度が不均一であること及び不織布の強度が小さいことに起因して、無機繊維不織布が垂直に圧縮されず層間にずれを生じ、フィルムパック状態にしたときに外形の寸法及び形状が不定形に変化し、所定の寸法、形状のものが得られない。このような無機繊維不織布の外形の寸法及び形状が変化した無機繊維緩衝シール材を触媒担体の外周に巻いた場合には、その両端部の接合或いは係合部同士の嵌合が不充分となり、この嵌合部から排気ガスの漏れが生じるという支障を来す問題点が生じた。また、従来の真空吸引しフィルムパックする方法では無機繊維不織布を高密度に圧縮することができなく、嵩高になっているため、外側から金属製シェルを被せて装着する操作に支障を来す問題点が生じた。
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑みなされたもので、排気ガス浄化用触媒コンバータにおいて緩衝材及びシール材として用いる無機繊維不織布を、外形の変形を生じさせることなく所定の形状に、且つ高密度にした状態にてフィルムパックできるようにした無機繊維緩衝シール材の製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、所定の形状に切断した無機繊維不織布を、その外形は変形させることなく、厚さ方向に圧縮して、所定の形状にフィルムパックする手段について種々検討した結果、真空パック操作とプレス操作を併用すると上記の問題点を解消できることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、排気ガス浄化用触媒コンバータの触媒担体と該触媒担体の外周を覆うシェルとの間に配置する無機繊維緩衝シール材の製造方法であって、型枠と同じ形状に切断した無機繊維不織布を型枠に挿入し、該型枠内でプレスし、真空吸引してフィルムパックにすることを特徴とする無機繊維緩衝シール材の製造方法である。
【0010】
本発明における排気ガス浄化用触媒コンバータは、触媒担体とその外周を覆うシェルとの間に緩衝シール材を配置した形式の触媒コンバータであるが、触媒担体、シェルは従来既知の材質、形状のものが使用される。また、本発明では、緩衝シール材の素材に無機繊維不織布を使用する。無機繊維不織布は、高温時の耐熱性に優れているが、密度が低く、嵩高で、変形し易い。この無機繊維としてはセラミック繊維、特にアルミナ質繊維が使用される。アルミナ質繊維は、Al2O3−SiO2質の原料を溶融して繊維化したものが好ましく、特に好ましいものは、Al2O3含有量80%以上のAl2O3−SiO2繊維である。
【0011】
この無機繊維不織布を、所定の形状、すなわち排気ガス浄化用触媒コンバータの触媒担体の外周に巻きつけるに十分な大きさで且つ必要に応じその両端部に係合部を形成させた形状に切断する。切断は打ち抜き加工で行うと円滑に所望の形状の無機不織布が得られる。この切断した無機繊維不織布を型枠に挿入し、該型枠内でプレスし、真空吸引してフィルムパックにする。
【0012】
すなわち、例えば、先ず真空吸引フィルムパック装置の作業台の上に不通気性合成樹脂フィルムを拡げ、その上に切断した無機繊維不織布と同形で且つ2分割可能に細工した型枠を載せる。この型枠内に無機繊維不織布を挿入し、更にその上に該無機繊維不織布より大きな寸法の不通気性合成樹脂フィルムを装着する。そして、その上から型枠内の形状と略同形状の突部を形成させたポンチを当てがい、これを下降させてプレスし、無機繊維不織布を所定の密度まで圧縮する。
【0013】
次にこのプレスした状態で、型枠を分割して取り除き、フィルムを加熱しながら真空吸引してフィルム同士を接着させる。その後加熱及び真空吸引を停止し、ポンチを上昇させ、フィルムパックされた無機繊維不織布、すなわち本発明の無機繊維緩衝シール材を取り出す。上記のプレスによる無機繊維不織布の圧縮は、無機繊維不織布の密度が0.23g/cm3以上、好ましくは0.25〜0.35g/cm3になるように行う。上記の不通気性合成樹脂フィルムは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロンなどの不通気性合成樹脂フィルムの片面に、該フィルムより融点の低い合成樹脂をラミネートした積層物などである。
【0014】
【作用及び効果】
本発明によれば、排気ガス浄化用触媒コンバータの触媒担体と該触媒担体の外周を覆うシェルとの間に配置する無機繊維緩衝シール材について、予め目的とする緩衝シール材の形状に切断した無機繊維不織布を、前記無機繊維緩衝シール材の形状の型枠に挿入し、型枠内でプレスして真空吸引しフィルムパックにしたので、その外形の寸法や形状を変化させることなく無機繊維緩衝シール材を製造することができる。それ故、この無機繊維緩衝シール材を触媒担体の外周に巻くとき、該緩衝シール材の両端部の係合部同士を完全に嵌合させることができ、この嵌合部から排気ガスの漏れる支障がない。
【0015】
従来の真空フィルムパック装置では、圧縮する圧力の最大が絶対真空であることから、無機繊維不織布の厚み小さくし、所望の密度まで圧縮することができない欠点を有していた。本発明方法によると、上記の如くフィルムパックに際しプレスを併用することにより、無機繊維緩衝シール材の外形の寸法や形状を変化させることなく、その無機繊維不織布のフィルムパックの密度を0.23g/cm3以上とすることができる。
【0016】
そして、この密度を0.23g/cm3以上とすることによって触媒担体の周りに無機繊維緩衝シール材を巻き付けた後のシェルの装着が容易になる。無機繊維緩衝シール材の密度が0.23g/cm3より小さい場合には、シール性が劣り、またシールするのに十分な量を使用すると嵩高になるため、これを触媒担体の外周に巻いたとき、その外径がシェルの幅より大きくなり、その外側に上部シェルと下部シェルとを被せる際、上部シェルと下部シェルとの合わせ目付近で無機繊維緩衝シール材の無機繊維不織布にせん断力が加わり層間にずれが生じ、シェルのフランジ部の合わせ目にこの無機繊維不織布が挟まれてしまう。この状態では上部シェルのフランジと下部シェルのフランジとを完全に溶接することができず、隙間が発生して排気ガスが漏れる原因となる。
【0017】
また、無機繊維不織布の繊維をアルミナ質繊維とすることで、触媒担体と金属製シェルの熱膨張差で広がったギャップにアルミナ質繊維緩衝シール材が追従し、排気ガスの漏れを防止することができるばかりでなく、触媒担体を確実に保持することができる。これはアルミナ質繊維は結晶質であるため、常温から排気ガスの最高温度まで温度における繊維単体の強度変化がなく、高温下での復元性が優れるていることによる。
【0018】
【実施例及び比較例】
本発明の無機繊維緩衝シール材の製造方法の実施例及び比較例について、図1〜6を参照して説明する。
実施例1
先ず図1の斜視図に示すように、真空吸引フィルムパック装置の作業台(図示せず)に不通気性合成樹脂フィルム(3)をセットし、その上に型枠内を無機繊維緩衝シール材の外形と同形にした型枠(5)を装着する。この型枠(5)は型枠(51)と型枠(52)を結合したもので2分割できるようにしたものである。次に予め目的とする無機繊維緩衝シール材の形状に打ち抜いた無機繊維不織布(2)を前記型枠(5)内に挿入し、更にその上に前記無機繊維不織布(2)の寸法より大きな不通気性合成樹脂フィルム(4)を装着する。図2はこの状態を示す斜視図である。図2の状態において、フィルム(4)の上から型枠内の形状と略同形状の突部を形成させたポンチを当てがい、これを下降させてプレスし、無機繊維不織布を所定の密度まで圧縮する。
【0019】
次にこのプレスした状態で、前記型枠(5)を型枠(51)と型枠(52)に分割して取り除く。不通気性合成樹脂フィルム(4)を加熱しながら真空吸引し、フィルム(3)とフィルム(4)を接着させる。加熱及び真空吸引を停止し、ポンチを上昇させてフィルムパックされた無機繊維緩衝シール材を取り出す。図3は、このようにして得られた本発明の無機繊維緩衝シール材を示す斜視図である。(1)は無機繊維緩衝シール材、(2)は無機繊維不織布、(3)は下側の不通気性合成樹脂フィルム、(4)は上側の不通気性合成樹脂フィルムであり、両フィルムが接する部分ではフィルム同士が接着している。(6)、(7)は無機繊維緩衝シール材の両側に設けた係合部で、(6)は凸部、(7)は凹部であり、両者は嵌合できるように形成されている。この無機繊維緩衝シール材(1)は、密度が大きく、打ち抜いたときの無機繊維不織布の外形が保持されていた。
【0020】
図4は、上記作成した無機繊維緩衝シール(1)を触媒担体(40)の外周に沿うように巻き、凹状係合部(6)と凹状係合部(7)を互いに勘合させた状態を示す斜視図である。(31)はこのとき無機繊維緩衝シール(1)の両端部分が接する継ぎ目部分である。本発明の方法で製造した無機繊維緩衝シール(1)は、その外形が変形していないので、きっちりと巻くことができ、その継ぎ目部分(31)には間隙が生じなかった。この外側を金属製のシェルで覆い、触媒コンバーターを製造した。この触媒コンバーターを2リッター4気筒ガソリンエンジンに搭載し評価した結果、CO、HC、NOxの濃度は正常であった。
【0021】
比較例1
真空吸引フィルムパック装置の作業台に不通気性合成樹フィルムをセットし、その上に予め目的とする緩衝シール材の形状に打ち抜いた無機繊維不織布を載置し、さらにその上にこの無機繊維不織布の寸法より大きな不通気性合成樹フィルムフィルムを装着する。次に、上側のフィルムを加熱しながら真空吸引し、下側のフィルムと上側のフィルムを接着させる。次に加熱及び真空吸引を停止して、フィルムパックされた無機繊維緩衝シールを取り出す。
【0022】
図5は、上記の如くして製造した無機繊維緩衝シール材(11)を示す斜視図である。(2)は無機繊維不織布、(3)は下側の不通気性合成樹脂フィルム、(4)は上側の不通気性合成樹脂フィルムであり、両フィルムが接する部分ではフィルム同士が接着している。(6)、(7)は無機繊維緩衝シール材の両側に設けた係合部で、(6)は凸状係合部、(7)は凹状係合部であり、両者は嵌合できるように形成されている。この無機繊維緩衝シール材(11)は、密度が小さく、打ち抜いたときの無機繊維不織布の外形が保持されていなく、その端部が崩れた形状であった。
【0023】
図6は、上記の製造方法で作成した無機繊維緩衝シール(11)を触媒担体(40)の外周に沿うように巻き、凹状係合部(6)と凹状係合部(7)を互いに勘合させたときの状態を示す斜視図である。(31)はこのとき無機繊維緩衝シール材(11)の両端部分が接する継ぎ目部分である。上記比較例の方法で製造した無機繊維緩衝シール(11)は、その外形が変形しているので、きっちりと巻くことができず、その継ぎ目部分(31)には間隙が生じた。その外側を金属製のシェルで覆い、触媒コンバーターを作成した。この触媒コンバーターを2リッター4気筒ガソリンエンジンに搭載し評価した結果、CO、HC、NOxの濃度は実施例1の場合に比し多かった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の無機繊維緩衝シール材の製造方法の実施例の製造過程を示す斜視図
【図2】図1の製造過程の次の製造過程を示す斜視図
【図3】本発明の製造方法で得られた無機繊維緩衝シール材の斜視図
【図4】本発明の製造方法で得られた無機繊維緩衝シール材を取り付けた斜視図
【図5】比較例の製造方法で得られた無機繊維緩衝シール材の斜視図
【図6】比較例の製造方法で得られた無機繊維緩衝シール材を取り付けた斜視図
【図7】排気ガス浄化用触媒コンバーターを説明する斜視図
【符号の説明】
1 無機繊維緩衝シール材、2 無機繊維不織布、3、4 不通気性合成樹脂フィルム、5 型枠、6 凸状係合部、7 凹状係合部、31継ぎ目、20 シェル、40 触媒担体
Claims (2)
- 排気ガス浄化用触媒コンバータの触媒担体と該触媒担体の外周を覆うシェルとの間に配置する無機繊維緩衝シール材の製造方法であって、型枠と同じ形状に切断した無機繊維不織布を型枠に挿入し、該型枠内でプレスし、真空吸引してフィルムパックにすることを特徴とする無機繊維緩衝シール材の製造方法。
- 前記無機繊維不織布の繊維がアルミナ質繊維であることを特徴とする請求項1記載の無機繊維緩衝シール材の製造方法。
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