JP3619322B2 - ポリオレフィン系樹脂被覆フィルム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、透明性および保温性が良好なポリオレフィン系樹脂被覆フィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、施設園芸におけるハウス、トンネル等に用いられる被覆フィルムとしては、ポリ塩化ビニルフィルムやポリエチレンフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム等のポリオレフィン系樹脂フィルムが主として使用されている。
【0003】
これらのうちポリ塩化ビニルフィルムは、保温性、透明性、強靱性、耐久性等に優れているので、被覆用フィルムとしては汎用されている。しかしながら、ポリ塩化ビニルフィルムは使用中にフィルム中に含まれる可塑剤がフィルム表面にブリードアウトして、塵埃が付着して光線透過性が著しく損われ、ハウス内の温度上昇を妨げるという欠点があるとともに使用後焼却処理をすると塩素ガスが発生するため焼却処理が難しいという問題がある。
【0004】
一方、ポリオレフィン系樹脂フィルムは、透明性には優れているものの保温性の点でポリ塩化ビニルフィルムに劣っているため、ハウス、トンネル等の被覆フィルムとしての利用は未だ充分なものではない。
【0005】
農作物のハウス・トンネル栽培においては、昼間の太陽光線がハウス、トンネル内に取り入れられてハウス等内の気温や地温を上昇させる。一方、上昇した気温や地温は、夜間、外気により冷却され低温となり、これが農作物の生育に著しい悪影響を及ぼす。更に夜間の冷却が著しい程、日の出後の昇温も遅れるので、夜間冷却の僅かな差が農作物の生育には著しい差となって現れる。従って、夜間の冷却による農作物への悪影響を低減するためには、
(1)昼間にはハウス等内へ太陽光線をできるだけ多く取り入れること(透光性)
(2)夜間にはハウス等内の地面からの輻射線を被覆フィルムで充分に吸収し、ハウス等内へ再輻射すること(保温性)が必要である。
【0006】
ポリオレフィン系樹脂フィルムの保温性を改良した被覆用フィルムとしては、特開昭52−105953号、特公平4−11107号および特公昭57−34871号等の各公報に見られるようにポリオレフィン系樹脂に燐酸塩化合物、酸化硅素、無水アルミノ硅酸塩、脱水カオリナイト、アルミニウム、シリケート、ゼオライト、ハイドロタルサイト類等の無機化合物およびアセタール樹脂等の有機化合物を添加したものが開示されている。しかし、これらは、ポリオレフィン系樹脂の保温性は改良されているものの、ポリ塩化ビニルに比べると未だ不充分であったり、光線の透過率が低かったり、また、フィルム中に添加している界面活性剤がフィルム表面にブリードアウトして、更に光線透過性を低くするという問題があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
光線透過性および保温性にすぐれたポリオレフィン系樹脂被覆フィルムを開発することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意検討した結果、本発明に至った。すなわち本発明は、ポリオレフィン系樹脂フィルムからなる層(A層)と、A層の両側に極性基含有ビニルモノマー成分を20重量%以下含有するポリオレフィン系樹脂からなる層(B、C層)を配してなるポリオレフィン系樹脂被覆フィルムであって、該ポリオレフィン系樹脂被覆フィルムに赤外線吸収剤と、常温で固体状の無滴剤および常温で液状の無滴剤を含み、該ポリオレフィン系樹脂被覆フィルム中の赤外線吸収剤の含有量が6〜50重量%であり、常温で固体状の無滴剤および常温で液状の無滴剤の含有量の合計が0.5〜4重量%であって、該ポリオレフィン系樹脂被覆フィルムの27℃における赤外線吸収率が、70〜85%(黒体輻射エネルギー値を100%として、ポリオレフィン系樹脂被覆フィルム厚み75μの輻射線吸収エネルギー値の比率)であり、B層またはC層とA層との厚みの比が、(B層またはC層):A層=1:9〜4:6であることを特徴とするポリオレフィン系樹脂被覆フィルムおよび該フィルムを用いた作物の栽培方法を提供するものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明のA層に用いられるポリオレフィン系樹脂としては、α−オレフィンの単独重合体、α−オレフィンを主成分とする異種単量体との共重合体であり、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン−1共重合体、エチレン−4−メチル−1−ペンテン共重合体、エチレン−ヘキセン−1共重合体、エチレン−オクテン−1共重合体などのエチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体、エチレン−酢酸ビニル−メチルメタクリレート共重合体、アイオノマー樹脂などをあげることができる。これらの樹脂のなかでは、低密度ポリエチレンやエチレン−α−オレフィン共重合体および酢酸ビニル含有量が30重量%以下のエチレン−酢酸ビニル共重合体などが透明性や柔軟性に優れ、かつ安価なフィルムが得られる点で好ましい。
【0010】
本発明のBおよびC層には、加工性、作業性、透明性等を改良する目的で極性基含有ビニルモノマー成分を20重量%以下含有するポリオレフィン系樹脂が用いられる。ここで極性基含有ビニルモノマー成分とは、炭素、水素以外の元素を含むビニルモノマー成分のことである。極性基含有ビニルモノマー成分を20重量%以下含有するポリオレフィン系樹脂としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メチルメタアクリレート共重合体、エチレン−酢酸ビニル−メチルメタアクリレート共重合体、アイオノマー樹脂などを挙げることができるが、エチレン−酢酸ビニル共重合体がより好ましい。
極性基含有ビニルモノマー成分の含有量が20重量%をこえると加工性が不良であったり、熱融着等の問題が生じやすく好ましくない。極性基含有ビニルモノマー成分の含有量は、0〜13重量%であるものがより好ましい。極性基含有ビニルモノマー成分を含有しないポリオレフィン系樹脂(極性基含有ビニルモノマー成分の含有量が0重量%)としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン−1共重合体、エチレン−4−メチル−1−ペンテン共重合体、エチレン−ヘキセン−1共重合体、エチレン−オクテン−1共重合体が挙げられ、特に密度0.93g/cm3以下の低密度ポリエチレンやエチレン−α−オレフィン共重合体が好ましく用いられる。なお、上記A層の異種単量体が極性基含有ビニルモノマー成分と同種の場合、B、C層の極性基含有ビニルモノマー成分の含有量は、A層で用いるポリオレフィン系樹脂の異種単量体の含有量より少ないほうがより好ましい。また、本発明の目的を逸脱しない範囲でA、BおよびC層には種々の添加剤を含有させてもよい。
【0011】
本発明のポリオレフィン系樹脂被覆フィルムは、A層の両側にBおよびC層を配してなる多層フィルムであり、BおよびC層は該ポリオレフィン系樹脂被覆フィルムの最外層であることが好ましい。また、A層は多層構成であってもよい。ポリオレフィン系樹脂被覆フィルムの層構成としては、2種3層、3種3層、3種5層、4種5層および5種5層の構成がよく用いられ、各層の樹脂および添加剤の配合は異なっていてもよい。農業用施設の被覆フィルムとして用いた場合、該施設の外側に面する層には防塵処理が、施設の内側に面する層には流滴、防霧処理が、それぞれ施される場合が多い。
【0012】
本発明のポリオレフィン系樹脂被覆フィルムの厚さは、フィルム強度とフィルムの中継ぎ加工性や被覆作業性の点で、通常、0.02〜0.3mmの範囲であり、0.03〜0.2mmがより好ましい。
【0013】
本発明のポリオレフィン系樹脂被覆フィルムの各層の厚みの比率(B層またはC層:A層)は、フィルムの成形性、透明性、フィルム強度などの点から1:9〜4:6である。赤外線吸収剤がA層に多く含まれている場合には、1.5:8.5〜3:7がより好ましい。なお、B、C各層の厚みは同一でなくてもよく、適宜厚みを変更してもかまわない。
【0014】
本発明のポリオレフィン系樹脂被覆フィルムの赤外線吸収率は、保温性の尺度であり、前述したように作物生育性に影響を与える。赤外線吸収率は、27℃(300K)で70〜85%であり、70%未満では、作物生育性が劣り好ましくなく。また、無機化合物の赤外線吸収剤を用いて、赤外線吸収率を85%より大きくしようとすると、赤外線吸収剤をポリオレフィン系樹脂被覆フィルムに多量に配合する必要があり、該フィルムの加工性、強度、光線透過性の悪化や該フィルムの高コスト化を招き好ましくない。また、作物生育性、フィルムの光線透過性、強度およびコストの面から、72〜85%がより好ましく、さらに好ましくは、74〜85%である。本発明のポリオレフィン系樹脂被覆フィルムの赤外線吸収率を70〜85%の範囲を満足させるためには、赤外線吸収剤の含量は、赤外線吸収剤が無機化合物の場合ば、フィルム全体中、6〜25重量%であり、好ましくは、7〜25重量%、より好ましくは、8〜25重量%である。また、有機化合物である場合には、6〜50重量%である。
【0015】
また、HAZE値については、平行光線の透過性を意味しており、HAZE値が小さいほど平行光線の透過性が高い。前述したように、平行光線の透過性が高い程、ハウスおよびトンネル内に昼間の太陽光線をより多くとりいれてハウスおよびトンネル内の気温や地温を上昇させ、夜間の保温性がより良くなる。また、平行光線の透過性が高いほど、直進光を好む強光性作物の生育に好影響を与える。強光性作物としては、ナス科の植物やピーマン、メロン、スイカ、イチゴ等が例示できる。保温性が同じであるフィルムであれば、HAZE値が低い程、作物、特に強光性作物の生育性に優れ、作物の栽培に好ましい結果を与える。なお、本発明において製造直後のHAZE値とは、製造後1時間以内に測定したHAZE値を意味する。
【0016】
本発明に用いられる赤外線吸収剤としては、リチウムアルミニウム複合水酸化物やハイドロタルサイト類化合物等の複合水酸化物、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化チタンなどの金属の酸化物、水酸化リチウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウムなどの水酸化物、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウムなどの炭酸塩類、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸亜鉛、硫酸アルミニウムなどの硫酸塩類、燐酸リチウム、燐酸ナトリウム、燐酸カリウム、燐酸カルシウムなどの燐酸塩類、硅酸マグネシウム、硅酸カルシウム、硅酸アルミニウム、硅酸チタンなどの硅酸塩類、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カリウム、アルミン酸カルシウムなどのアルミン酸塩類、アルミノ硅酸ナトリウム、アルミノ硅酸カリウム、アルミノ硅酸カルシウムなどのアルミノ硅酸塩類、カオリン、クレー、タルクなどの無機化合物およびポリアセタール、エバールなどの有機化合物などが挙げられ、これらを単独で用いても2種類以上を併用してもかまわない。
【0017】
ハイドロタルサイト類化合物としては、天然ハイドロタルサイトMg0.75Al0.25(OH)2 (CO3 )0.125 ・0.5 H2 O、合成ハイドロタルサイト(商品名:アルカマイザーDHT−4A 協和化学工業製 Mg0.69Al0.31(OH)2 (CO3 )0.15・0.54H2 O)のようなハイドロタルサイト類化合物として、下記式(I)で示される化合物、
M2+ 1-x Al x (OH)2 (An-)x/n ・mH2 O (I)
(式中、M2+は、マグネシウム、カルシウムおよび亜鉛よりなる群から選ばれた2価金属イオンを示し、xおよびmは次の条件、0<x<0.5、0≦m≦2を満足し、An-は、n価のアニオンを示し、n価のアニオンしては特に限定されず、Cl - 、Br - 、I- 、NO3 - Cl O4 - 、SO4 2- 、CO3 2- 、SiO3 2- 、HPO4 3- 、HBO4 3- 、PO4 3- 、Fe(CN)4 3- 、Fe(CN)4 4- 、CH3 COO- 、C6 H4 (OH)COO- 、(COO)2 2- 、テレフタル酸イオン、ナフタレンスルホン酸イオン等のアニオンが挙げられる。)が挙げられ、リチウムアルミニウム複合水酸化物塩類としては、例えば、特開平5−179052公報に記載の下記一般式(II)で示される化合物
Li+ (Al3+)2 (OH- )6 ・(An-)1/n ・mH2 O (II)
(式中、An-は、n価陰イオンを示し、mは0 ≦ m ≦ 3の範囲であり、An-で示されるn価のアニオンとしては特に限定はされないが、例えば、Cl- 、Br- 、I- 、NO3 - 、ClO4 - 、SO4 2-、CO3 2- 、SiO3 2- 、HPO4 3- 、HBO4 3- 、PO4 3- 、Fe(CN)4 3 、Fe(CN)4 4- 、CH3 COO- 、C6 H4 (OH)COO- 、(COO)2 2-、テレフタル酸イオン、ナフタレンスルホン酸イオン等のアニオンが挙げられる。)が挙げられる。
【0018】
赤外線吸収剤が無機化合物である場合には、光線透過性の観点から、使用するポリオレフィン系樹脂の屈折率により近いこと、また、保温性の観点から、幅広い波長域に吸収性能をもつことが重要になる。これらから、ハイドロタルサイト類化合物、リチウムアルミニウム複合水酸化物、アルミノ珪酸塩類等が好ましい。
【0019】
無機化合物である赤外線吸収剤の平均粒径は、通常、5μm以下、好ましくは0.05〜3μmであり、さらに好ましくは、0.1〜1μmである。またフィルム中での分散性を向上させるため高級脂肪酸、高級脂肪酸のアルカリ金属塩等による無機化合物の表面処理を施してもよい。本発明のポリオレフィン系樹脂被覆フィルムには、種々の添加剤を発明の目的を損しない範囲で用いてもよく、例えば、「ポリマー添加剤の分離・分析技術、田中ら、1987年、日本科学情報(株)」、「プラスチックおよびゴム用添加剤実用便覧、後藤ら、1970年、(株)化学工業社」などを参照することができる。
【0020】
本発明のポリオレフィン系樹脂被覆フィルムには耐候性を向上させる目的でヒンダードアミン系化合物を用いることができ、かかるヒンダードアミン系化合物は、4−位に置換基を有する2,2,6,6−テトラアルキルピペリジン誘導体であり、その4−位の置換基としては、例えばカルボン酸残基、アルコキシ基、アルキルアミノ基等が挙げられる。またN−位にはアルキル基が置換していてもよく、具体的には、下記(1)〜(22)式に示す化合物を例示することができる。またこれらのヒンダードアミン系化合物は単独で用いても2種類以上を併用してもよい。
【0021】
ヒンダードアミン系化合物の含量は、耐候性改良効果とブルーミングを抑制する点で、ポリオレフィン系樹脂被覆フィルム全体中に通常、0.02〜5重量%、好ましくは0.1〜2重量%の範囲である。
【0022】
【0023】
【0024】
【0025】
本発明には耐候性を向上させる目的で紫外線吸収剤を用いることができ、かかる紫外線吸収剤は、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾエート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤に大別される。具体的には、下記(23)〜(31)式のような化合物が例としてあげられる。また、これらの紫外線吸収剤は単独で用いても2種類以上を併用してもよい。
【0026】
紫外線吸収剤の含量は、耐候性改良効果とブルーミング抑制の点で、ポリオレフィン系樹脂被覆フィルム全体中に通常、0.01〜3重量%、好ましくは0.05〜1重量%の範囲である。
【0027】
【0028】
本発明には防曇性を付与させるために無滴剤を用いる。かかる無滴剤としては、常温(23℃)で固体状のものと液状のものとがあり、固体状の無滴剤としては、非イオン性界面活性剤、例えば、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノベヘネートなどのソルビタン脂肪酸エステル系界面活性剤、グリセリンモノラウレート、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、ジグリセリンジステアレート、トリグリセリンモノステアレートなどのグリセリン脂肪酸エステル系界面活性剤、ポリエチレングリコールモノパルミテート、ポリエチレングリコールモノステアレートなどのポリエチレングリコール系界面活性剤、アルキルフェノールのアルキレンオキシド付加物、ソルビタン/グリセリン縮合物と有機酸とのエステルなどが挙げられる。
【0029】
本発明のポリオレフィン系樹脂被覆フィルムに常温で液状の無滴剤を含有させると、フィルム保管時および展張時に配合している無滴剤がフィルム表面にブリードアウトして製造初期の光線透過性が損われる現象を回避することができる。上記効果を発揮させるためには、常温で液状の無滴剤を少なくとも1種類用いることが好ましい。かかる常温で液状の無滴剤としては、例えば、グリセリンモノオレエート、ジグリセリンモノオレエート、ジグリセリンセスキオレエート、テトラグリセリンモノオレエート、ヘキサグリセリンモノオレエート、テトラグリセリントリオレエート、ヘキサグリセリンペンタオレエート、テトラグリセリンモノラウレート、ヘキサグリセリンモノラウレート等のグリセリン系脂肪酸エステルが、また、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンジオレエート、ソルビタンモノラウレートなどのソルビタン脂肪酸エステルが挙げられる。その含量は、フィルム全体中に通常、0.2〜3重量%、好ましくは0.5〜2重量%の範囲である。また、無滴剤全体の含量としては、通常、0.5〜4重量%、好ましくは、1.5〜3重量%、さらに好ましくは、2.2〜2.8重量%である。
【0030】
本発明のポリオレフィン系樹脂被覆フィルムには、防霧性を付与する目的で、防霧剤を配合することができる。かかる防霧剤としては、パーフルオロアルキル基、ω−ヒドロフルオロアルキル基等を有するフッ素化合物(特にフッ素系界面活性剤)、アルキルシロキサン基を有するシリコン系化合物(特にシリコン系界面活性剤)等が挙げられる。その含量は、フィルム全体中に通常、0.01〜3重量%、好ましくは0.02〜1重量%の範囲である。
【0031】
本発明のポリオレフィン系樹脂被覆フィルムは、特に限定されるものではないが、例えば、次の方法によって製造される。ポリオレフィン系樹脂に所定量の赤外線吸収剤を添加し、必要に応じ、無滴剤、ヒンダードアミン系化合物、熱安定剤、耐候剤、紫外線吸収剤等の各種添加剤を、例えばリボンブレンダー、スーパーミキサー、バンバリーミキサー、1軸あるいは2軸押出機などの通常の混合・混練機によって混合・混練してA層に用いられる樹脂組成物を得ることができる。同様に、B、C層に用いられる樹脂組成物を得ることができる。このようにして得られた樹脂組成物を用いて、A層がB、C層にはさまれるように、例えば、共押出によるTダイフィルム成形法、インフレーションフィルム成形法など通常の積層フィルムを得る成形法を用いて行うことができる。また、A、B、C各層をあらかじめ別途上記等の方法で製造しておき、各層を接着層を介して積層してもよい。
【0032】
本発明のポリオレフィン系樹脂被覆フィルムは、例えば、施設園芸ハウス・トンネル等の被覆フィルムとして用いられる。また、内張りカーテンを設置する場合も本発明のポリオレフィン系樹脂被覆フィルムを内張りカーテンとして用いることが好ましい。
【0033】
【発明の効果】
本発明のポリオレフィン系樹脂被覆フィルムは、光線透過性に優れており保温性がポリ塩化ビニルなみに優れている。また、一般に市販されている赤外線吸収剤を配合している農業用ポリオレフィン系樹脂多層フィルムの多くは、無滴剤がフィルム表面にブリードアウトして経時による光線透過性の悪化が見られるが、本発明の常温で液状の無滴剤を含有したポリオレフィン系樹脂被覆フィルムは、経時による光線透過性の悪化はほとんど認められず、長期に亘り優れた光線透過性を保持することができる。これらから、本発明のポリオレフィン系樹脂被覆フィルムをハウスおよびトンネル等に用いて作物の栽培をすれば、一般のポリ塩化ビニルと同等もしくは、それ以上の作物生育性(収穫量)が達成される。また、本発明のポリオレフィン系樹脂被覆フィルムは、ポリ塩化ビニルフィルムで問題となっている廃棄処理に関しても問題なく、環境にたいしても優れている。その他、ポリ塩化ビニルフィルムと比較しても、価格、作業性、耐寒性など多くの優れた性能を有しており、農業用被覆フィルムとして有用である。
【0034】
【実施例】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。なお実施例及び比較例中の試験方法は次の通りである。
【0035】
[光線透過性]
スガ試験機製ヘイズメーターにより、全光線透過率およびHAZEを測定した。なお、製造直後のHAZE値とは製造後1時間以内に測定した値である。
また、1時間以上経過したフィルムについては、アセトンでフィルムを洗浄した後1時間以内に測定した。
【0036】
[経時による光線透過性:△HAZE]
23℃×50%RH条件下で90日保管した後のHAZEを測定し、製造直後のHAZE値との差を求めた。
【0037】
[赤外線吸収率]
赤外線吸収率は、以下に示す輻射線吸収エネルギーの定義およびその測定方法によって求めた。すなわち、27℃でのフィルムの輻射線吸収エネルギーを測定し、その時の黒体輻射のエネルギーを100%として、その比率を求めた。
【数1】
ここでC1 =3.7402×10-12 (W/cm2 )
C2 =1.43848(cm・deg)
λ =波長(cm)
T =温度 300°K
【数2】
輻射線吸収エネルギーは、波長2.27〜30.3μmの範囲で波長の刻みを0
.02μmとして積分した。なおフィルムの赤外吸収スペクトルは、フーリエ変
換式赤外分光光度計を用いて通常の方法によって測定した。
【0038】
[防霧性試験]
フィルムを縦50×横60cmのアクリル製の枠に両面テープで貼り付け、試験面を下にして、23℃の恒温室内に置いた40℃の恒温水槽の上に水平に設置した。試験面を充分湿らせた後、フィルム外側に氷水を接触させておいたときの霧の発生量および消えるまでの時間などを目視で観察し、以下の基準で判定した。
○:霧の発生量が少なく、すぐに消える。
△:霧の発生量がやや多く、消えるまでに時間がかかる。
×:霧の発生量が非常に多く、消えるまでに時間がかかる。
【0039】
〔防曇性試験〕
フィルムを縦34×横5cmのアクリル製の枠に両面テープで貼り付け、試験面を下にして、温度一定の環境試験室内に置いた恒温水槽の上に水平面に対して15度の傾斜をつけて設置した。このときの温度条件(環境試験室/恒温水槽)は、低温試験:3℃/20℃と高温試験:20℃/40℃とした。そして、フィルム面の水滴の様子を観察して、以下の基準で判定した。
○:フィルム面が均一に濡れている。
△:部分的に水滴が付着しているところがある。
×:全体に水滴が付着し、白く曇っている。
【0040】
〔耐候性試験〕
JIS1号ダンベルで打ち抜いた試験片をサンシャインウエザーメーター・オーメーター(スガ試験機製)において、ブラックパネル温度63℃の条件下で経時暴露させた。経時された試験片について、オートグラフDSS100(島津製作所製)を用いて、引張試験を行い伸び率(%)を測定し、伸び率がもとの試験片の伸び率に対して半分になったときの耐候性試験時間を求めた。この時間の値が大きいほど耐候性が優れていることを示し、1000時間を本試験の合格レベルとした。
【0041】
〔実施例1〕
エチレン−酢酸ビニル共重合体(商品名:エバテートH2020 酢酸ビニル含有量15重量% 住友化学工業製)に、ヒンダードアミン系化合物(商品名:チヌビン622−LD チバガイギー製)0.6重量%、赤外線吸収剤としてハイドロタルサイト類化合物(商品名:DHT4A 協和化学工業製)16.0重量%、紫外線吸収剤(商品名:スミソーブ130 住友化学製)0.1重量%、酸化防止剤(商品名:イルガノックス1010 チバガイギー製)0.1重量%、無滴剤としてモノグリセリンモノステアレート0.2重量%、ジグリセリンジステアレート1.0重量%、ジグリセリンセスキオレエート0.8重量%、滑剤としてステアリン酸アミド0.2重量%を加え、全体を100重量%とし、バンバリーミキサーを用いて130℃、5分間混練後、造粒機により造粒し、組成物ペレットを得た。これを樹脂組成物(1)とする。また、エチレン−酢酸ビニル共重合体(商品名:エバテートD2011 酢酸ビニル含有量5重量% 住友化学工業製)に、ヒンダードアミン系化合物(商品名:チヌビン622−LD チバガイギー製)0.6重量%、紫外線吸収剤(商品名:スミソーブ130 住友化学製)0.1重量%、酸化防止剤(商品名:イルガノックス1010 チバガイギー製)0.1重量%、無滴剤としてモノグリセリンモノステアレート0.2重量%、ジグリセリンジステアレート1.0重量%、ジグリセリンセスキオレエート0.8重量%、滑剤としてステアリン酸アミド0.2重量%、アンチブロッキング剤として酸化珪素0.10重量%を加え、全体を100重量%とし、バンバリーミキサーを用いて130℃、5分間混練後、造粒機により造粒し、組成物ペレットを得た。これを樹脂組成物(2)とする。次に樹脂組成物(1)をA層に、樹脂組成物(2)をB、C層としてインフレーションフィルム成形機によってフィルム厚み0.075mmのフィルム(A層0.045mm、B、C層0.015mm)を作製し、フィルムのHAZE、赤外線吸収率(23℃における黒体輻射吸収エネルギーを100%として、該フィルムの輻射線吸収エネルギーとの比率)、防霧性、防曇性および耐候性の試験を行った。
【0042】
〔実施例2〕
実施例1の樹脂組成物(1)において、赤外線吸収剤の含量を20重量%に変えた以外は、実施例1と同様にしてフィルムを作製し、各種の試験をおこなった。
【0043】
〔実施例3〕
実施例1の樹脂組成物(1)において、赤外線吸収剤をリチウムアルミニウム複合水酸化物(商品名:ミズカラック 水沢化学工業製)に変えた以外は、実施例1と同様にしてフィルムを作製し、各種の試験をおこなった。
【0044】
〔実施例4〕
実施例1の樹脂組成物(1)において、赤外線吸収剤をアルミノ珪酸塩(商品名:シルトンAMT−08 水沢化学工業製)に変えた以外は、実施例1と同様にしてフィルムを作製し、各種の試験をおこなった。
【0045】
〔実施例5〕
実施例1において、樹脂組成物(1)のうちでエチレン−酢酸ビニル共重合体をエバテートH2031(酢酸ビニル含有量19重量% 住友化学工業製)に変えた以外は、実施例1と同様にしてフィルムを作製し、各種の試験をおこなった。
【0046】
〔実施例6〕
実施例3において、樹脂組成物(1)と(2)の防霧剤として、フッ素系界面活性剤(ダイキン工業製、商品名ユニダインDS403)を添加した以外は、実施例1と同様にしてフィルムを作製し、各種の試験をおこなった。
【0047】
〔実施例7〕
実施例3において、フィルム厚みを0.1mm(A層:0.06mm、B、C層:0.02mm)にした以外は、実施例1と同様にしてフィルムを作製し、各種の試験をおこなった。
【0048】
〔実施例8〕
実施例3において、フィルム厚みを0.15mm(A層:0.09mm、B、C層:0.03mm)にした以外は、実施例1と同様にしてフィルムを作製し、各種の試験をおこなった。
【0049】
〔実施例9〕
実施例6の樹脂組成物(1)において、エチレン−酢酸ビニル共重合体を商品名:エバテートH2031(酢酸ビニル含有量19重量%、住友化学工業製)に代えて、赤外線吸収剤としてリチウムアルミニウム複合水酸化物(商品名:ミズカラック 水沢化学工業製)11.0重量%を用い、樹脂組成物(1)、(2)の無滴剤としてモノグリセリンモノステアレート 0.2重量%、ジグリセリンジステアレート 1.1重量%、ジグリセリンセスキオレート 1.0重量%を用いた以外は実施例6と同様にしてA層を得、樹脂組成物(2)をB、C層として、インフレーションフィルム成形機によってフィルム厚み0.075mmのフィルム(A層0.049mm、B、C層0.013mm)を作製した。各種試験結果を以下に示す。
全光線透過率:92%
HAZE:12%
ΔHAZE:6%
赤外線吸収率:72%
他の結果は実施例6と同じであった。
【0050】
〔実施例10〕
実施例9において、赤外線吸収剤としてハイドロタルサイト類化合物(商品名:DHT4A 協和化学工業製)3重量%、リチウムアルミニウム複合水酸化物(商品名:ミズカラック 水沢化学工業製)8重量%とした以外は同様にして、フィルムを得た。各種試験結果を以下に示す。
全光線透過率:92%
HAZE:12%
ΔHAZE:6%
赤外線吸収率:72%
他の結果は実施例6と同じであった。
【0051】
〔実施例11〕
実施例9において、赤外線吸収剤としてA層にリチウムアルミニウム複合水酸化物(商品名:ミズカラック 水沢化学工業製)9重量%、B、C層にハイドロタルサイト類化合物(商品名:DHT4A 協和化学工業製)3重量%とし、A層厚み:0.053mm、B、C層厚み:0.011mmとした以外は実施例9と同様にしてフィルムを作製した。各種試験結果を以下に示す。
全光線透過率:92%
HAZE:14%
ΔHAZE:5%
赤外線吸収率:72%
他の結果は実施例6と同じであった。
【0052】
〔実施例12〕
実施例11において、赤外線吸収剤としてA層にリチウムアルミニウム複合水酸化物(商品名:ミズカラック 水沢化学工業製)35重量%、B、C層にハイドロタルサイト類化合物(商品名:DHT4A 協和化学工業製)5重量%とした以外は実施例11と同様にしてフィルムを作製した。得られたフィルムは優れた赤外線吸収率および透明性を有するものである。
【0053】
〔比較例1〕
実施例1において、赤外線吸収剤のハイドロタルサイト類化合物の樹脂組成物(1)中の配合量を10重量%に変えた以外は、実施例1と同様にしてフィルムを得て各種の試験を行った。
【0054】
〔比較例2〕
実施例1において、無滴剤をモノグリセリンモノステアレート0.4重量%、ジグリセリンジステアレート1.6重量%に変えた以外は、実施例1と同様にしてフィルムを得て各種の試験を行った。
【0055】
〔比較例3〕
実施例1において、赤外線吸収剤を酸化珪素(商品名:スノーマーク SP−3 キンセイマティック製)に変えた以外は、実施例1と同様にしてフィルムを得て各種の試験を行った。
【0056】
〔比較例4〕
実施例1において、樹脂組成物(1)と(2)の無滴剤をモノグリセリンモノステアレート0.4%、ジグリセリンジステアレート1.6%に代えた以外は、実施例1と同様にしてフィルムを作製し、各種の試験をおこなった。
【0057】
〔比較例5〕
実施例1において、樹脂組成物(1)および(2)の無滴剤を省いた以外は、実施例1と同様にしてフィルムを作製し、各種の試験をおこなった。
【0058】
以上の試験結果を各表にまとめた。
【0059】
【表1】
【0060】
【表2】
【0061】
【表3】
【0062】
【表4】
【0063】
【表5】
【0064】
【表6】
【0065】
* 防曇性:高温試験/定温試験
赤外線吸収剤
DHT−4A:ハイドロタルサイト(協和化学製)
ミズカラック:リチウムアルミニウム複合水酸化物(水沢化学製)
シルトンAMT−08:アルミノ珪酸塩(水沢化学製)
スノーマークSP−3:酸化珪素(キンセイマティック製)
無滴剤
MGMS:モノグリセリンモノステアレート(丸菱油化製)
DGDS:ジグリセリンジステアレート(丸菱油化製)
DGSO:ジグリセリンセスキオレエート(丸菱油化製)
シルトンPF−06:酸化珪素(水沢化学製)
Claims (9)
- ポリオレフィン系樹脂フィルムからなる層(A層)と、A層の両側に極性基含有ビニルモノマー成分を20重量%以下含有するポリオレフィン系樹脂からなる層(B、C層)を配してなるポリオレフィン系樹脂被覆フィルムであって、該ポリオレフィン系樹脂被覆フィルムに赤外線吸収剤と、常温で固体状の無滴剤および常温で液状の無滴剤を含み、該ポリオレフィン系樹脂被覆フィルム中の赤外線吸収剤の含有量が6〜50重量%であり、常温で固体状の無滴剤および常温で液状の無滴剤の含有量の合計が0.5〜4重量%であって、該ポリオレフィン系樹脂被覆フィルムの27℃における赤外線吸収率が、70〜85%(黒体輻射エネルギー値を100%として、ポリオレフィン系樹脂被覆フィルム厚み75μの輻射線吸収エネルギー値の比率)であり、B層またはC層とA層との厚みの比が、(B層またはC層):A層=1:9〜4:6であることを特徴とするポリオレフィン系樹脂被覆フィルム。
- 赤外線吸収剤が、A層に含有されている請求項1記載のポリオレフィン系樹脂被覆フィルム。
- 赤外線吸収剤が、ハイドロタルサイト類化合物、リチウムアルミニウム複合水酸化物またはアルミノ珪酸塩類である請求項1または2記載のポリオレフィン系樹脂被覆フィルム。
- 常温で液状の無滴剤を、0.2〜3重量%含有する請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリオレフィン系樹脂被覆フィルム。
- ヒンダードアミン系化合物0.02〜5重量%、紫外線吸収剤0.01〜3重量%、防霧剤0.01〜3重量%から選ばれる少なくとも1種を含有する請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリオレフィン系樹脂被覆フィルム。
- 常温で3ケ月保管後のHAZE値からフィルム製造直後のHAZE値を減じた値(ΔHAZE値)が、製造直後のHAZE値の110%以内である請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリオレフィン系樹脂被覆フィルム。
- フィルム厚みが0.02mm〜0.3mmの範囲にある請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリオレフィン系樹脂被覆フィルム。
- 請求項1〜7のいずれか1項に記載のポリオレフィン系樹脂被覆フィルムを用いることを特徴とする施設園芸ハウス・トンネルによる強光性作物の栽培方法。
- 強光性作物が、すいか、メロン、イチゴである請求項8記載の栽培方法。
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