JP3619023B2 - イエロートナー - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真,静電記録及び静電印刷における静電荷像を現像するためのイエロートナー又はトナージェット方式の画像形成方法におけるトナー像を形成するためのイエロートナーに関し、とりわけカラー画像の色再現性が広く、かつ耐オフセット性及び低温定着性に優れたイエロートナーに関する。さらには、環境安定性及び耐久安定性に優れたイエロートナーに関する。さらには、透明性に優れたイエロートナーに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、フルカラー複写機が注目されはじめてきた。特にデジタル化されたフルカラー複写機が注目されており、広く市場に展開しつつある。
【0003】
フルカラー電子写真法によるカラー画像形成は一般に3原色であるイエロー,マゼンタ,シアンの3色のカラートナー又はそれに黒色を加えた4色を用いて色の再現を行うものである。
【0004】
その一般的カラー画像形成方法は、原稿からの光をトナーの色と補色の関係にある色分解光透過フィルターを通して光導電層上に静電潜像を形成する。次いで現像、転写工程を経てトナーは支持体に保持される。前述の工程を順次複数回行い、レジストレーションを合わせつつ、同一支持体上にトナーは重ね合わされ、ただ一回のみの定着によって最終のフルカラー画像が得られる。
【0005】
この様な、複数回の現像を行い、定着工程として同一支持体上に色の異なる数種のトナー層の重ね合わせを必要とするカラー電子写真法では、カラートナーが持つべき定着特性は極めて重要な要素である。
【0006】
すなわち、定着したカラートナーは、トナー層の下層にある異なる色調のトナー層を妨げない透明性を有し、色再現性の広いカラートナーでなければならない。
【0007】
さらに、フルカラー複写画像に対するその品質への要求度は、ますます高まりつつある。印刷を見なれた一般ユーザーにとってはフルカラー複写画像はまだまだ満足出来るレベルではなく、より印刷に近づいたレベル、より写真に近づいたレベルを望んでいる。すなわち、複写画像における広い画像面積でのベタ画像,ハーフトーン画像の均一性,高濃度から低濃度までの広いダイナミックレンジをカバーする画像濃度出力を有するトナー、印刷並の透明性を有するOHP画像が求められている。
【0008】
これらの要求に答える最短で好ましい方法は、まずトナー中に存在する着色剤の分散性を向上せしめることである。
【0009】
特開平4−39671号公報,特開平4−39672号公報及び特開平4−242752号公報では、ニーダー中で加熱及び加圧を加えながらトナーを製造する方法が開示されているが、該方法はなるほど着色剤の分散には好ましいが、トナーを構成する結着樹脂の分子鎖が強力な混練負荷によって切断され、高分子中の部分的低分子量化が促進されることになる。そのため定着工程での高温オフセットが発生しやすくなる。とりわけカラー複写に於ては、3色又は4色のトナーが層状に積層されたものを定着するため、耐高温オフセットのラチチュードは白黒トナーの場合よりははるかにきびしく、高分子中のわずかな分子切断が容易に高温オフセットを生ずる原因となる。
【0010】
一方、色再現性に優れた従来のシャープメルト性の樹脂では、樹脂と着色剤とを混練する際の、いわゆる混練時の負荷が大きくならないため、着色剤を分散する力が不足し、特に凝集性の高い顔料を着色剤として用いた時、その傾向は顕著であり、良好な着色剤の分散は望めない。
【0011】
それゆえ、耐オフセット性と定着性の双方を満足し、なおかつ着色剤の分散性をも満足すべく、樹脂の設計と着色剤の選択は非常に大きな意味を有する。
【0012】
今日、当該技術分野においては、イエロートナー用着色剤として数多くのものが知られている。例えば、特開平2−207273号公報にはソルベントイエロー112、特開平2−207274号公報にはソルベントイエロー160、特開平8−36275号公報にはソルベントイエロー162等々の染料が記載されているし、特開昭50−62442号公報にはベンジジン系イエロー顔料が、特開平2−87160号公報にはモノアゾ系イエロートナーが、さらには、特開平2−208662号公報にはピグメントイエロー120、151、154、156等の顔料が記載されている。
【0013】
しかしながら、従来知られているイエロートナー用の着色剤は種々の問題も多くかかえていた。例えば、一般に染料系の着色剤は透明性に優れるものの、耐光性に劣り、画像の保存安定性に問題がある。
【0014】
一方、上記の顔料群は、染料と比較して耐光性に優れるものの、マゼンタトナー用として使われている例えばキナクリドン系の顔料や、シアントナー用として使われている銅フタロシアニン系の顔料と比較すると、まだまだ耐光性に問題があり、長時間の光の暴露試験においては、耐色してしまう或いは色相の変化が目立つといった問題も生じていた。
【0015】
さらに、耐光性,耐熱性に優れるイエロー顔料は、上述の顔料以外にもあるものの、逆に隠蔽性が強すぎてしまい透明性が極端に低下してしまい、フルカラー用としては不向きであった。
【0016】
特公平2−37949号公報には、耐光性に優れたジスアゾ系の化合物及びその製法が紹介されている。これはピグメントイエロー180に代表される化合物群であり、耐光性,耐熱性に優れるばかりか、生態学的要求にも合うアゾ顔料の一つである。
【0017】
ピグメントイエロー180を用いるイエロートナーは、特開平6−230607号公報,特開平6−266163号公報,特開平8−262799号公報に記載されているが、上記顔料を用いるトナーは、着色力に乏しく、加えて透明性も決して良好とは言えず、フルカラー用としては、更なる改善が急務であった。
【0018】
一方、特開平8−209017号公報には、上記の問題を解決すべく、顔料を微粒子化し顔料の比表面積を向上させ、透明性と着色力をアップさせた電子写真用トナーが記載されている。しかしながら、ピグメントイエロー180に分類される顔料を微細化すると、それ自体の自己凝集性がどうしても強いために、トナーを構成する結着樹脂中での分散性が不十分であり、我々の検討では、着色剤の分散性の悪いトナーでは、帯電の安定化が達成されづらく、カブリやトナー飛散といった問題も生じていた。
【0019】
特開平2−210360号公報には、一群の縮合ジスアゾ系黄色顔料の記載がある。これはC.I.ピグメントイエロー93、94、95等々に代表される顔料であって、耐光性に優れた顔料である。特に、C.I.ピグメントイエロー93は一群の縮合ジスアゾ系顔料の中にあっては、グリーニッシュな色相を有する顔料であって、フルカラー用トナーとして見た場合、比較的良好な色調を有する顔料である。
【0020】
しかしながら、これらの顔料は難分散性の顔料であって、フルカラー用トナーとして見た場合、まだまだ改善の余地は残っていた。
【0021】
C.I.ピグメントイエロー93に関しては、特開昭61−77862号公報、特開昭60−49344号公報及び特開昭63−60456号公報にも一部紹介されているが、特に分散性向上を目的とした手法が書かれているわけでもなく、OHP透明性も決して良好とはいえず、帯電の安定化,環境安定化は望むべくもなく、耐久での安定性向上にはまだまだ検討の余地があった。
【0022】
特許第2632423号公報には、一群の縮合ジスアゾ系黄色顔料を樹脂中に混練分散したトナーの記載がある。
【0023】
上記トナーは、難分散性の化合物を平均粒子径0.2μm以下に混練分散せしめることによって、色相の鮮明性と冴え、さらには透明性向上を達成したものであるが、高精細フルカラーイエロートナーとして見た場合、顔料分散性のレベルがまだまだ目標とするレベルには至らず、さらには、我々の検討においては、帯電の安定化が難しく、耐久で濃度薄や、カブリといった問題も生じていた。
【0024】
一方、現像剤がトナーとキャリアとからなる二成分系現像剤を使用する場合は、キャリアとの摩擦によってトナーを所要の帯電量及び帯電極性に帯電せしめ、静電引力を利用して静電荷像を現像するものである。従って良好な可視画像を得るためには、主としてトナーの摩擦帯電性が良好であることが必要である。
【0025】
今日上記の様な問題に対して、あるいはまた、着色剤そのものの帯電性にトナーの帯電性が左右されることのないように、キャリアコア材、キャリアコート材の探索やコート量の最適化、或はトナーに加える電荷制御剤、流動性付与剤の検討、更には母体となるバインダーの改良の如き現像剤を構成する材料において優れた摩擦帯電性を達成すべく多くの研究がなされている。
【0026】
近年、複写機又はプリンターの高精細、高画質化の要求が市場では高まっており、当該技術分野では、カラートナーの粒径を細かくして高画質カラー化を達成しようという試みがなされている。トナーの粒径が細かくなると単位重量当りの表面積が増え、トナーの帯電量が大きくなる傾向にあり、画像濃度薄や、耐久劣化が発生しやすくなる。加えて、トナーの帯電量が大きいために、トナー粒子同士の付着力が強く、流動性が低下し、トナー補給の安定性や補給トナーへのトリボ付与に問題が生じやすい。
【0027】
さらに、カラートナーの場合は、磁性体やカーボンブラックの如き黒色の導電性物質を含まないので、帯電をリークする部分がなく一般に帯電量が大きくなる傾向にある。この傾向は、特に負帯電性能の高いポリエステル系バインダーを使用した時により顕著である。
【0028】
今日当該技術分野においてはポリエステル系樹脂がカラートナー用結着樹脂として多く用いられているが、ポリエステル系樹脂を有するカラートナーは一般に温湿度の影響を受け易く、低湿下での帯電量過大、高湿下での帯電量不足といった問題が起こりやすく、広範な環境においても安定した帯電量を有するカラートナーの開発が待望されている。
【0029】
また結着樹脂中の着色剤の分散性の程度や前述の如き着色剤そのものの帯電特性によってもトナーの帯電は大きく変化することが知られており、分散性の悪いトナーにおいてはカブリやトナー飛散といった問題を発生しやすく、さらにはキャリア上へのトナースペント、ドラム上トナーフィルミング、定着ローラー汚染といった様々な問題を引き起こす。それゆえ、色再現性という側面以外でも着色剤の分散性向上は重要な技術課題である。
【0030】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は上記の如き問題点を解決した静電荷像現像用イエロートナーを提供することにある。
【0031】
すなわち本発明の目的は、フルカラー複写において、
(1)良好な定着性及び混色性を示し、
(2)充分な摩擦帯電性を有し、
(3)画像品質を著しく高める光沢性が高く、
(4)高温オフセットが十分に防止され、定着可能温度域が広く、
(5)繰り返しの定着通紙によっても耐オフセット性が維持され、定着ローラーへの巻き付きが発生せず、
(6)現像器内、すなわち現像スリーブ,ブレード,塗布ローラなどの部品へのトナー融着がなく、
(7)感光体表面にフィルミングせず、
(8)着色剤の分散性が良好であり、
(9)着色力が高く、高画像濃度が得られ、
(10)彩度が高く透明性にすぐれ、
(11)耐光性に優れ退色しない、
イエロートナーを提供するものである。
【0032】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、以下の構成により達成される。
【0033】
すなわち、本発明は、結着樹脂及びイエロー着色剤を少なくとも含有するイエロートナー粒子を有するイエロートナーにおいて、
該結着樹脂は、ポリエステル樹脂を主成分とし、該結着樹脂の酸価が2.0乃至30.0mgKOH/gであり、
該イエロー着色剤は、下記式(I)
【0034】
【化2】
で示される化合物であって、
該イエロー着色剤の一次粒子は、長径と短径の比の平均値が3.0以下であり、イエロートナー粒子中に存在しているイエロー着色剤の個数平均径が0.1〜0.5μmであり、
該イエロートナーは、芳香族カルボン酸誘導体のジルコニウム化合物もしくは芳香族カルボン酸誘導体のアルミニウム化合物を含有することを特徴とするイエロートナーに関する。
【0035】
【発明の実施の形態】
はじめに本発明に用いられる着色剤について説明する。
【0036】
式(I)で示される顔料は、縮合ジスアゾ系の顔料に属し、C.I.Pigment Yellow93に相当する。これ自体、プラスチック用着色体として既に公知ではあるが、難分散性の顔料であり、そのために当該技術分野ではあまり用いられてこなかった。
【0037】
本発明者らは、化合物(I)の分散性を向上させるべく鋭意検討したところ、ポリエステル樹脂を主成分とし、酸価2.0乃至30.0mgKOH/gを有する樹脂を結着樹脂として用い、着色剤として一次粒子径の長径と短径の比の平均値が3以下の着色剤を用いたとき、優れた顔料分散性が得られ、フルカラー用イエロートナーとして機能することを見い出したものである。さらに上記のポリエステル樹脂を主成分とする樹脂を結着樹脂として用い、化合物(I)の着色剤と、さらに特定の金属化合物を分散せしめたとき、優れた帯電性が得られることを見い出したものである。
【0038】
すなわち、上記の化合物(I)はトナーの帯電量を安定化する機能を有し、低温低湿環境下で、トナーの摩擦帯電量が過大になることを防止し、一方、高温高湿環境下でのトナーの摩擦帯電量が低下することを抑制する。特に、結着樹脂として酸価を有するポリエステル樹脂を主成分とする樹脂を用いた場合に、化合物(I)の効果は、より顕著である。すなわち、着色剤としてのみならず、帯電安定化剤としても機能する。その理由は、ポリエステル樹脂の分子鎖の末端にあるカルボキシル基又は水酸基と、化合物(I)が有するカルボニル基やイミノ基とが部分的に水素結合又は静電的に結合し、その結果、(i)ポリエステル樹脂の分子鎖の末端のカルボキシル基又は水酸基への水分の吸着が抑制され、高温高湿環境下においてもトナーの摩擦帯電量の低下を抑制することができ、かつ、(ii)ポリエステル樹脂の分子鎖の末端のカルボキシル基又は水酸基の如き極性基が減少することから、低温低湿環境下においてもトナーの摩擦帯電量が過大となることを抑制することができるものと推察される。
【0039】
加えて、本発明に用いるポリエステルと化合物(I)中のカルボニル基やイミノ基等々との相互作用により、樹脂と化合物(I)との密着性が高まり、結果として、着色剤のまわりを樹脂が取り囲む様になり、着色剤が樹脂中で一次粒子に近い状態で安定化され、着色剤の再凝集防止に効果的に働いて、帯電の安定化に寄与したものと考えられる。
【0040】
その結果、トナーにした時の帯電性は安定化傾向を示し、加えて帯電量分布は非常にシャープで均一なものとなる。
【0041】
式(I)で示される化合物をイエロー着色剤として含有している本発明のイエロートナーは、グリーニッシュなイエローを示し、フルカラー画像形成用イエロートナーとして好ましい分光特性を有している。さらに式(I)で示される化合物を含有しているイエロートナーは、明度及び彩度も高い。フルカラー画像において人肌色の再現性が重要であるが、式(I)で示される化合物を含有するイエロートナーを使用すると人肌色も良好に再現することが可能であり、さらにオーバーヘッドプロジェクター(OHP)でOHPシートに形成されているカラー画像を投影しても透明性にも優れている。
【0042】
式(I)で示される市販のイエロー顔料(C.I.ピグメントイエロー93)は、通常一次粒子は長径と短径との比の平均値が3.0よりも大きい針状の結晶形態を有しており、一次粒子の直径の大きい粒子を多く含んでいる。この様なイエロー顔料は、結着樹脂と溶融混練しても分散することが困難であり、透明性の高い混練物を生成することは困難である。
【0043】
本発明においては、化合物(I)で示される着色剤に微細化処理を施し、一次粒子の長径と短径の比の平均値を3.0以下にしたものを用いて、均一に結着樹脂中に分散せしめた時に、鮮明な色相の画像が得られ、加えて帯電的にも安定化傾向を示す。長径と短径の比の平均値は好ましくは2.5以下、より好ましくは2.0以下が望ましい。本発明においては、顔料微細化処理の詳細に関しては特に何ら言及するものではない。
【0044】
さらに、本発明で用いられるトナー中の化合物(I)の個数平均径は0.1〜0.5μmであることが望ましく、好ましくは0.4μm以下、より好ましくは0.3μm以下が望ましい。
【0045】
トナー中の化合物(I)の個数平均径が0.5μmより大きいときには、顔料の分散性が充分なレベルには到らず、これでは特定の樹脂と、特定の粒径を有する着色剤を用いても目的とする透明性は得られない。
【0046】
基本的に0.1μmより小さい微小粒径の着色剤は、光の反射、吸収特性に悪影響を及ぼさないと考えられる。0.1μm未満の着色剤の粒子は良好な色再現性と、定着画像を有するOHPシートの透明性に貢献する。一方、0.5μmより大きな粒径の着色剤が多く存在していると、どうしてもOHPシートの投影画像の明るさ及び彩かさが低下する傾向がある。
【0047】
さらに、0.5μmより大きな粒径の着色剤が多く存在していると、イエロートナー粒子表面からイエロー着色剤が脱離し、カブリ、ドラム汚染、クリーニング不良といった種々の問題を引き起こしやすい。さらにこのようなイエローカラートナーを二成分系現像剤として用いるときは、キャリア汚染といった問題も引き起こし、多数枚耐久において安定した画像が得られにくい。当然良好な色再現性も望めないし、均一な帯電性も得られにくい。
【0048】
本発明において、イエロートナーは、式(I)で示される化合物を、結着樹脂100重量部当り1〜15重量部、好ましくは2〜12重量部、より好ましくは3〜10重量部含有していることが良い。
【0049】
式(I)で示される化合物の含有量が15重量部より多い場合には、透明性が低下し、加えて人間の肌色に代表される様な中間色の再現性も低下し易くなる。更にはトナーの帯電性の安定性が低下し、目的とする帯電量が得られにくくなる。
【0050】
式(I)で示される化合物の含有量が1重量部より少ない場合には、目的とする着色力が得られ難く、高い画像濃度の高品位画像が得られ難い。
【0051】
さらに、化合物(I)を含有している本発明のイエロートナーは、退色しにくく、耐候性にも優れているものである。
【0052】
また、本発明においては、トナーが芳香族カルボン酸誘導体のジルコニウム化合物もしくはアルミニウム化合物を含有していることが必須である。これは帯電制御剤として機能するばかりでなく、化合物(I)の分散性向上にも寄与し、トナーの透明性をより一層高める。
【0053】
以下に詳細に説明する。
【0054】
芳香族カルボン酸誘導体のジルコニウム化合物もしくはアルミニウム化合物が化合物(I)の分散性を向上させる理由は定かではないが、ポリエステル樹脂と芳香族カルボン酸誘導体の金属化合物との相互作用によって一部架橋反応が進み混練時の着色剤にかかるシェアーを増大させることによって、難分散性の化合物(I)の分散性の向上を達成したものであって、低温側での迅速溶融性は維持した状態で高温側での耐オフセット性向上にも寄与できる。
【0055】
加えて、芳香族カルボン酸誘導体の金属化合物と化合物(I)の部分骨格である、
【0056】
【化3】
のカルボニル部分とが、下記の様に相互作用し、トナー中で化合物(I)のまわりを金属化合物が取り囲む様にして分散安定化する。
【0057】
【化4】
【0058】
よって化合物(I)と結着樹脂と金属化合物とが相互に影響し合い、本発明の効果をより一層顕著なものにできる。これにより、感光体表面へのトナーフィルミング防止やキャリア表面へのトナースペント防止にも効果を発揮する。
【0059】
さらには、トナー表面からの顔料の脱離防止にも効果を発揮し、定着ローラーの汚れ防止にも効果が得られる。
【0060】
芳香族カルボン酸誘導体の金属化合物としては、サリチル酸の金属錯体、サリチル酸の金属塩、アルキルサリチル酸の金属塩、アルキルサリチル酸の金属錯体、ジアルキルサリチル酸の金属塩、ジアルキルサリチル酸の金属錯体、芳香族ジオールの金属塩、芳香族ジオールの金属錯体、芳香族ジカルボン酸の金属塩、芳香族ジカルボン酸の金属錯体等が挙げられる。
【0061】
本発明においては、ジアルキルサリチル酸の金属化合物が好ましく、特にはジ・ターシャリーブチルサリチル酸の金属化合物が好ましい。金属元素としては、アルミニウム及びジルコニウムが、帯電の安定化、化合物(I)の分散安定化及び樹脂との相溶性の点で好ましい。亜鉛等の化合物では、顔料の分散性向上や帯電安定化の点で充分に効果を発揮できず、本発明の効果を最大限に引き出すことができない。さらに、クロム等の化合物では、それ自体の色がイエロートナーの色調に影響を及ぼし、目的とする高明度,高彩度のトナーは得られない。
【0062】
これらの金属化合物をイエローカラートナー粒子中に含有させる場合、その含有量としては、結着樹脂100重量部当り1重量部〜10重量部、好ましくは2重量部〜8重量部の範囲が好適である。1重量部よりも少ない時は、帯電制御剤としてあまり機能しないばかりでなく、良好な顔料分散性を達成できない。一方、10重量部よりも多い時は、架橋が進みすぎてしまいトナーとしての定着性が損なわれてしまう。
【0063】
上記含有量で金属化合物を使用すると帯電量の初期変動が少なく、現像時に必要な絶対帯電量が得られやすく、結果的にカブリや画像濃度ダウンといった画像品質を損ねることがなく好ましい。
【0064】
本発明においては必要に応じてその他の帯電制御剤を併用して用いてもよい。
【0065】
本発明において、結着樹脂としては、ポリエステル樹脂を主成分として用いる。ポリエステル樹脂は、トナーの結着樹脂として用いた場合に、定着性に優れ、カラートナーに適している。
【0066】
しかしながら、ポリエステル樹脂は、負帯電能が強く帯電が過大になりやすいが、上述した通り、化合物(I)を使用することによりその弊害は改善され、優れたイエロートナーが得られる。
【0067】
特に、下記式(II)
【0068】
【化5】
(式中、Rはエチレン基又はプロピレン基を示し、x及びyはそれぞれ1以上の整数を示し、x+yの平均値は2〜10である。)
で示されるビスフェノール誘導体もしくはその置換体からなるジオール成分と、2価以上のカルボン酸、2価以上のカルボン酸の酸無水物、及び2価以上のカルボン酸の低級アルキルエステルから選択される多価カルボン酸成分(例えばフマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸)とを共縮重合したポリエステル樹脂がシャープな溶融特性を有するので、より好ましい。
【0069】
本発明において、ポリエステル樹脂は、酸価が2.0乃至30.0mgKOH/g、好ましくは2.0乃至25.0mgKOH/g、さらに好ましくは5.0乃至25.0mgKOH/gであると、各環境において優れた帯電安定性が得られるので好ましい。
【0070】
ポリエステル樹脂の酸価が2.0mgKOH/gより小さい場合には、トナーはチャージアップ傾向を示し、低温低湿環境下で画像濃度薄を起こしやすい。さらに、化合物(I)の樹脂への分散性が低下しトナー粒子間同士での帯電量に違いが生じやすくなり、長期の耐久で若干カブリが発生しやすくなる。
【0071】
ポリエステル樹脂の酸価が30.0mgKOH/gより大きい場合には、トナーの帯電の経時安定性が低下し、耐久とともに帯電量が低下しやすい。特に高温高湿環境下ではトナー飛散、カブリといった画像欠陥が生じやすくなる。
【0072】
さらに、ポリエステル樹脂の酸価が30.0mgKOH/g以上よりも大きい場合には、化合物(I)をトナーに配合しても水分の吸着をブロックしにくくなる。
【0073】
本発明において、イエロートナーの保存性と定着性さらには他のカラートナーとの混色性を考慮した場合、ポリエステル樹脂のガラス転移温度は50〜68℃、好ましくは52〜66℃であることが良い。
【0074】
ポリエステル樹脂のガラス転移温度が50℃未満の場合には、定着性には優れるものの、耐オフセット性が低下し、定着ローラーへの汚染や定着ローラーへの巻き付きが発生し好ましくない。さらに定着後の画像表面のグロスが高くなりすぎてしまい画像品位が低下して好ましくない。
【0075】
ポリエステル樹脂のガラス転移温度が68℃よりも高い場合には、定着性が悪化し、複写機本体の設定定着温度を上げざるを得ず、得られた画像は一般にグロスが低く、フルカラートナー用としては混色性が低下する。
【0076】
本発明に用いられるポリエステル樹脂は、数平均分子量(Mn)が好ましくは1,500〜50,000、より好ましくは2,000〜20,000、重量平均分子量(Mw)が好ましくは6,000〜100,000、より好ましくは8,000〜90,000であり、Mw/Mnが好ましくは2〜8であることが良い。上記条件を満足しているポリエステル樹脂は熱定着性が良好で、着色剤の分散性が向上し、イエロートナーの帯電量の変動が少なくなり、画像品質の信頼性が向上する。
【0077】
ポリエステル樹脂の数平均分子量(Mn)が1,500未満の場合又は重量平均分子量(Mw)が6,000未満の場合には、いずれも定着画像表面の平滑性は高く見た感じの鮮やかさはあるものの、耐久においてオフセットが発生しやすくなり、また、耐保存安定性が低下し、現像器内でのトナー融着及びキャリア表面にトナー成分が付着するトナースペントの発生といった新たな問題も懸念される。さらに、イエローカラートナー粒子の製造時のトナー原料の溶融混練時にシェアーがかかり難く、イエロー着色剤の分散性が低下し易く、よってトナーの着色力の低下やトナーの帯電量の変動が生じ易い。
【0078】
ポリエステル樹脂の数平均分子量(Mn)が50,000を超える場合又は重量平均分子量(Mw)が100,000を超える場合には、いずれも、耐オフセット性に優れるものの、定着設定温度を高くせざるを得ないし、また、仮に着色剤の分散の程度をコントロールできたとしても、画像部での表面平滑性が低下してしまい、色再現性が低下し易くなってしまう。
【0079】
ポリエステル樹脂のMw/Mnが2未満の場合には、一般に得られるポリエステル樹脂は、分子量自体が小さくなることから、前述の分子量が小さい場合と同様に耐久によるオフセット現象、耐保存安定性の低下、現像器内でのトナー融着及びキャリアのトナースペントが生じ易くなり、またトナーの帯電量のばらつきが生じ易い。
【0080】
ポリエステル樹脂のMw/Mnが8を超える場合には、耐オフセット性に優れるものの、定着設定温度を高くせざるを得ないし、また、仮に着色剤の分散の程度をコントロールできたとしても、画像部での表面平滑性が低下してしまい、色再現性が低下し易くなってしまう。
【0081】
本発明においては、上記の如きポリエステル樹脂を単独で用いることが好ましいが、他の樹脂、たとえばエポキシ系の樹脂あるいはスチレン−アクリル系の樹脂、さらには物性の異なるポリエステル系の樹脂等と混合して用いてもよい。混合する樹脂に関しては特に何ら限定するものではない。
【0082】
ただ、本発明においては上記の如きポリエステル樹脂をトナーを構成する全樹脂中に70重量%以上含有することが好ましく、より好ましくは80重量%以上含有することが好ましい。70重量%未満であると、本発明の目的のひとつである帯電の安定化と顔料分散安定化の効果が最大限に得られない。
【0083】
尚、本発明において結着樹脂は、ポリエステル樹脂を主成分として含有するものであるが、「主成分」とは、結着樹脂全体に対して、70重量%以上の含有量の場合を意味する。
【0084】
本発明のイエロートナーにおいては、必要に応じて、滑剤としての脂肪酸金属塩(例えばステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミ)、フッ素含有重合体微粉末(例えばポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド及びテトラフルオロエチレン−ビニリデンフルオライド共重合体の微粉末)、或いは、酸化スズ及び酸化亜鉛の如き導電性付与剤を添加しても良い。
【0085】
更に、本発明において、イエローカラートナーは、離型剤を含有しても良い。例えば、脂肪族炭化水素系ワックス、脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物、エステルワックス、脂肪酸エステルを主成分とするワックス類、飽和直鎖脂肪酸類、不飽和脂肪酸類、飽和アルコール類、多価アルコール類、脂肪酸アミド類、飽和脂肪酸ビスアミド類、不飽和脂肪酸アミド類、芳香族系ビスアミド類が挙げられる。
【0086】
イエローカラートナーにおける離型剤の含有量としては、結着樹脂100重量部に対し、好ましくは10重量部以下、より好ましくは8重量部以下が良い。
【0087】
離型剤の含有量が10重量部を超える場合には、耐ブロッキング性や耐高温オフセット性が低下しやすく、透明性も低下する。
【0088】
これらの離型剤は、通常、結着樹脂を溶剤に溶解し、樹脂溶液温度を上げ、攪拌しながら離型剤を添加混合する方法又は、結着樹脂及び着色剤を少なくとも含有するトナー構成材料の混練時に離型剤を混合する方法により、結着樹脂に含有されるのが好ましい。
【0089】
イエローカラートナーの製造にあたっては、熱ロール、ニーダー、エクストルーダーの如き熱混練機によってトナー構成材料を良く混練した後、機械的に粉砕し、粉砕粉を分級してトナーを得る方法;又は結着樹脂溶液中に着色剤の如き他のトナー構成材料を分散した後、噴霧乾燥することにより得る方法;が適用できる。
【0090】
本発明において、イエロートナーの重量平均粒径(D4)は、4.0〜15.0μm、好ましくは5.0〜12.0μm、より好ましくは6.0〜10.0μmが良い。
【0091】
イエロートナーの重量平均粒径(D4)が4.0μm未満の場合には、帯電安定化が達成しづらくなり、耐久において、カブリやトナー飛散が発生しやすくなる。
【0092】
イエロートナーの重量平均粒径(D4)が15.0μmを超える場合には、ハーフトーン部の再現性が大きく低下し、得られた画像はガサついた画像になってしまう。
【0093】
本発明のイエロートナーにおいては、イエローカラートナー粒子に流動性向上剤として、平均一次粒子径0.002〜0.2μmの疎水化処理された酸化チタン微粉体又は酸化アルミニウム微粉体を外添していることが良い。
【0094】
外添剤としての流動性向上剤においてはイエロートナーの流動性を高めるばかりでなく、イエロートナーの帯電性をさらに向上させる重要な因子となる。
【0095】
したがって、酸化チタン微粉体又は酸化アルミニウム微粉体は、表面が疎水化処理されていることが望ましく、それにより流動性の付与と帯電の安定化を同時に満足し得ることが可能となる。
【0096】
酸化チタン微粉体又は酸化アルミニウム微粉体は、疎水化処理されていることにより、帯電量を左右する因子である水分の影響を除外し、高湿下及び低湿下での帯電量の格差を低減することでイエロートナーの環境特性をさらに向上させることが可能になる。特に高温高湿環境下での帯電量アップ、放置後の帯電量低下防止に効果的である。さらに、疎水化処理工程中に一次粒子の凝集を防ぐことが可能となり、二次凝集の少ない外添剤はイエロートナーにより均一な帯電付与を行うことが可能になる。
【0097】
本発明においては、特に平均一次粒子径が0.002〜0.2μmの酸化チタン微粉体又はアルミナ微粉体が流動性が良好で負荷電性イエロートナーの帯電が均一となり、結果としてトナー飛散、カブリが生じにくくなるので好ましい。さらに、イエローカラートナー粒子表面に埋め込まれにくくなりトナー劣化が生じにくく、多数枚耐久性が向上する。この傾向は、シャープメルト性のカラートナーにおいてより顕著である。
【0098】
酸化チタン微粉体又は酸化アルミニウム微粉体の平均一次粒子径が0.002μm未満の場合には、イエローカラートナー粒子表面に、微粉体が埋め込まれ易くなり、トナー劣化が早く生じやすく、耐久性が低下しやすい。この傾向はシャープメルト性のカラートナーに適用した場合より顕著である。
【0099】
また、0.2μmを超える場合には、流動性が低下しイエロートナーの帯電が不均一となりやすく、結果としてトナーの飛散、カブリ等が生じやすく、高画質なトナー画像を生成しにくくなる。
【0100】
本発明のイエロートナーにおいては、酸化チタン微粉体又は酸化アルミニウム微粉体の添加量が好ましくは0.2〜5.0重量%、より好ましくは0.3〜3.0重量%、さらに好ましくは0.5〜2.5重量%が良い。上記範囲を満足しているイエロートナーの流動性が良好であり、安定な帯電量を維持し得、トナー飛散が生じにくい。
【0101】
イエロートナーにおいて、酸化チタン微粉体又は酸化アルミニウム微粉体の含有量が0.2重量%未満の場合には、トナーの流動性が不充分であるため、キャリアとの混合性が低下し、耐久時においてカブリ、トナー飛散が発生しやすくなる。
【0102】
また、5.0重量%を超える場合には、トナー粒子表面から脱離した微粉体により感光体ドラムの表面のフィルミングが生じたり、クリーニング不良が発生しやすくなり、さらにトナー飛散やカブリも生じやすくなる。
【0103】
本発明のイエロートナーは、キャリアとしての磁性キャリア粒子と混合して二成分系現像剤として用いることが可能であるが、キャリアと混合せず一成分系現像剤として用いることも可能である。
【0104】
本発明のイエロートナーを二成分系現像剤に用いる場合、使用されるキャリアとしては、例えば表面酸化または未酸化の鉄、ニッケル、銅、亜鉛、コバルト、マンガン、クロム、希土類等の金属およびそれらの磁性合金または磁性酸化物及び磁性フェライトが挙げられる。
【0105】
キャリアがキャリアコアを被覆材で被覆した被覆キャリアの場合、キャリアコアの表面を被覆材で被覆する方法としては、被覆材を溶剤中に溶解もしくは懸濁せしめて塗布しキャリアコアに付着せしめる方法、単に粉体状態で混合する方法が適用できる。
【0106】
キャリアコアの被覆材としては、ポリテトラフルオロエチレン、モノクロロトリフルオロエチレン重合体、ポリフッ化ビニリデン、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド、ポリビニルブチラール、アミノアクリレート樹脂が挙げられる。これらは、単独或は複数で用いるのが適当である。
【0107】
上記材料の処理量は、適宜決定すれば良いが、一般には総量でキャリアに対し0.1〜30重量%(好ましくは0.5〜20重量%)が好ましい。
【0108】
本発明に用いられるキャリアは、平均粒径が好ましくは10〜100μm、より好ましくは20〜70μmであることが良い。
【0109】
キャリアの平均粒径が10μm未満の場合には、二成分系現像剤のパッキングが強まり、トナーとキャリアとの混合性が低下し、トナーの帯電性が安定しにくくなり、さらにキャリアの感光体ドラム表面への付着が生じやすくなる。
【0110】
キャリアの平均粒径が100μmを超える場合には、トナーとの接触機会が減ることから、低帯電量のトナーが混在し、カブリが発生しやすくなる。さらにトナー飛散が生じやすい傾向にあるため二成分系現像剤中のトナー濃度の設定を低めにする必要があり、高画像濃度の画像形成ができなくなることがある。
【0111】
特に好ましいキャリアとしては、磁性フェライトコア粒子の如き磁性コア粒子の表面をシリコーン樹脂、フッ素系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂及びメタクリレート系樹脂の如き樹脂を、好ましくは0.01〜5重量%、より好ましくは0.1〜1重量%をコーティングした平均粒径30〜60μmの磁性コートキャリアが挙げられる。
【0112】
上記磁性コートキャリアは粒径分布がシャープな場合、本発明のイエロートナーに対し好ましい摩擦帯電性が得られ、さらに電子写真特性を向上させる効果がある。
【0113】
イエロートナーとキャリアとを混合して二成分系現像剤を調製する場合、その混合比率は現像剤中のトナー濃度として、2重量%〜15重量%、好ましくは3重量%〜13重量%、より好ましくは4重量%〜10重量%にすると通常良好な結果が得られる。トナー濃度が2重量%未満では画像濃度が低くなりやすく、15重量%を超える場合ではカブリや機内飛散が生じやすく、現像剤の耐用寿命が短くなる傾向にある。
【0114】
次に、本発明のイエロートナーを適用し、電子写真法によりフルカラー画像を形成する方法を図1を参照しながら説明する。
【0115】
図1は、電子写真法によりフルカラーの画像を形成するための画像形成装置の一例を示す概略構成図である。図1の画像形成装置は、フルカラー複写機又フルカラープリンタとして使用される。フルカラー複写機の場合は、図1に示すように、上部にデジタルカラー画像リーダ部、下部にデジタルカラー画像プリンタ部を有する。
【0116】
画像リーダ部において、原稿30を原稿台ガラス31上に載せ、露光ランプ32により露光走査することにより、原稿30からの反射光像をレンズ33によりフルカラーセンサ34に集光し、カラー色分解画像信号を得る。カラー色分解画像信号は、増幅回路(図示せず)を経てビデオ処理ユニット(図示せず)にて処理を施され、デジタル画像プリンタ部に送出される。
【0117】
画像プリンタ部において、像担持体である感光ドラム1は、たとえば有機光導電体を有する感光層を有し、矢印方向に回転自在に担持されている。感光ドラム1の回りには、前露光ランプ11、コロナ帯電器2、レーザ露光光学系3、電位センサ12、色の異なる4個の現像器4Y、4C、4M、4B、ドラム上光量検知手段13、転写装置5およびクリーニング器6が配置されている。
【0118】
レーザ露光光学系において、リーダ部からの画像信号は、レーザ出力部(図示せず)にてイメージスキャン露光の光信号に変換され、変換されたレーザ光がポリゴンミラー3aで反射され、レンズ3bおよびミラー3cを介して、感光ドラム1の面上に投影される。
【0119】
プリンタ部は、画像形成時、感光ドラム1を矢印方向に回転させ、前露光ランプ11で除電した後に感光ドラム1を帯電器2により一様にマイナス帯電させて、各分解色ごとに光像Eを照射し、感光ドラム1上に静電荷像を形成する。
【0120】
次に、所定の現像器を作動させて感光ドラム1上の静電荷像を現像し、感光ドラム1上にトナーによるトナー画像を形成する。現像器4Y、4C、4M、4Bは、それぞれの偏心カム24Y、24C、24M、24Bの動作により、各分解色に応じて択一的に感光ドラム1に接近して、現像を行なう。
【0121】
転写装置は、転写ドラム5a、転写帯電器5b、記録材を静電吸着するための吸着帯電器5cおよびこれと対向する吸着ローラ5g、そして内側帯電器5d、外側帯電器5e、分解帯電器5hを有している。転写ドラム5aは、回転駆動可能に軸支され、その周面の開口域に転写材を担持する転写材担持体である転写シート5fが、円筒上に一体的に調節されている。転写シート5fにはポリカーボネートフィルムの如き樹脂フィルムが使用される。
【0122】
転写材はカセット7a、7bまたは7cから転写シート搬送系を通って転写ドラム5aに搬送され、転写ドラム5a上に担持される。転写ドラム5a上に担持された転写材は、転写ドラム5aの回転にともない感光ドラム1と対向した転写位置に繰り返し搬送され、転写位置を通過する過程で転写帯電器5bの作用により、転写材上に感光ドラム1上のトナー画像が転写される。
【0123】
トナー画像は、図1に示す如く、感光体から直接転写材へ転写されても良く、また、感光体上のトナー画像を中間転写体へ転写し、中間転写体からトナー画像を転写材へ転写しても良い。
【0124】
上記の画像形成工程を、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)およびブラック(B)について繰り返し、転写ドラム5上の転写材上に4色のトナー画像を重ねたカラー画像が得られる。
【0125】
このようにして4色のトナー画像が転写された転写材は、分離爪8a、分離押上げコロ8bおよび分離帯電器5hの作用により、転写ドラム5aから分離して加熱加圧定着器9に送られ、そこで加熱加圧定着することによりトナーの混色、発色および転写材への固定が行なわれて、フルカラーの定着画像とされたのちトレイ10に排紙され、フルカラー画像の形成が終了する。他方、感光ドラム1は、表面の残留トナーをクリーニング器6で清掃して除去された後、再度、画像形成工程に供せられる。クリーニング部材としては、ブレード以外にファーブラシ又は不織布、あるいはそれらの併用等を用いてもよい。
【0126】
転写ドラム5aに対しては、転写シート5fを介して対向された電極ローラ14とファーブラシ15、およびオイル除去ローラ16とバックアップブラシ17が設置されており、転写ドラム5aの転写シート5f上の付着粉体や、転写シート5f上の付着オイルを除去するために、清掃が行なわれる。このような清掃は、画像形成の前または後に行ない、また、ジャム、つまり紙詰まり発生時には随時行なう。
【0127】
所望のタイミングで偏心カム25を動作させ、転写ドラム5aと一体化している29カムフォロワ5iを作動させることにより、転写シート5fと感光ドラム1との間のギャップを任意に設定可能な構成としている。たとえば、スタンバイ中、または電源オフ時には転写ドラム5aと感光ドラム1の間隔を離すことができる。
【0128】
上記画像形成装置によって、フルカラー画像が形成される。上記画像形成装置においては、単色モード又は多色モードによって、単色の定着画像又は多色の定着画像を形成することができる。
【0129】
次に各物性の測定方法について以下に説明する。
【0130】
トナーの粒度分布の測定
測定装置としては、コールターカウンターTA−II或いはコールターマルチサイザー(コールター社製)を用いる。電解液は、1級塩化ナトリウムを用いて、約1%NaCl水溶液を調製する。例えば、ISOTON R−II(コールターサイエンティフィックジャパン社製)が使用できる。測定方法としては、前記電解水溶液100〜150ml中に分散剤として界面活性剤(好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸塩)を、0.1〜5ml加え、更に測定試料を2〜20mg加える。試料を懸濁した電解液は、超音波分散器で約1〜3分間分散処理を行い、前記測定装置により、アパーチャーとして100μmアパーチャーを用いて、トナー粒子の体積及び個数各チャンネルごとに測定して、トナーの体積分布と個数分布とを算出する。それから、トナー粒子の体積分布から求めた重量基準のトナーの重量平均粒径(D4)(各チャンネルの中央値をチャンネル毎の代表値とする)を求める。
【0131】
チャンネルとしては、2.00〜2.52μm;2.52〜3.17μm;3.17〜4.00μm;4.00〜5.04μm;5.04〜6.35μm;6.35〜8.00μm;8.00〜10.08μm;10.08〜12.70μm;12.70〜16.00μm;16.00〜20.20μm;20.20〜25.40μm;25.40〜32.00μm;32.00〜40.30μmの13チャンネルを用いる。
【0132】
ポリエステル樹脂のガラス転移温度の測定方法
本発明においては、示差熱分析測定装置(DSC測定装置)、DSC−7(パーキンエルマー社製)を用い測定する。
【0133】
測定試料は5〜20mg、好ましくは10mgを精密に秤量する。
【0134】
これをアルミパン中に入れ、リファレンスとして空のアルミパンを用い、測定温度範囲30℃〜200℃の間で、昇温速度10℃/minで常温常湿下で測定を行う。
【0135】
この昇温過程で、温度40〜100℃の範囲におけるメインピークの吸熱ピークが得られる。
【0136】
このとき、吸熱ピークが出る前と出た後でのベースラインの中間点の線と示差熱曲線との交点を、本発明におけるガラス転移温度Tgとする。
【0137】
ポリエステル樹脂の分子量の測定方法
ポリエステル樹脂のMn、Mw及びMw/Mnはゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定する。40℃のヒートチャンバ中でカラムを安定化させ、この温度におけるカラムに、溶媒としてテトラハイドロフラン(THF)を毎分1mlの流速で流し、THF試料溶液を約100μl注入して測定する。試料の分子量測定にあたっては、試料の有する分子量分布を、数種の単分散ポリスチレン標準試料により作成された検量線の対数値とカウント数との関係から算出する。検量線作成用の標準ポリスチレン試料としては、例えば、東ソー社製あるいは、昭和電工社製の分子量が102〜107程度のものを用い、少なくとも10点程度の標準ポリスチレン試料を用いるのが適当である。検出器にはR1(屈折率)検出器を用いる。カラムとしては、市販のポリスチレンジェルカラムを複数本組み合わて使用するのが良い。
【0138】
例えば、昭和電工社製のShodex GPC KF−801,802,803,804,805,806,807,800Pの組み合わせや、東ソー社製のTSKgelG1000H(HXL)、G2000H(HXL)、G3000H(HXL)、G4000H(HXL)、G5000H(HXL)、G6000H(HXL)、G7000H(HXL)、TSKguardcolumnの組み合わせを挙げることができる。
【0139】
試料は以下のようにして作製する。
【0140】
試料をTHF中に入れ、数時間放置した後、十分振とうしTHFと良く混ぜ(試料の合一体がなくなるまで)、更に12時間以上静置する。このときTHF中への放置時間が24時間以上となるようにする。その後、サンプル処理フィルター(ポアサイズ0.45〜0.5μm、例えば、マイショリディスクH−25−5 東ソー社製、エキクロディスク25CR、ゲルマン サイエンス ジャパン社製などが使用できる)を通過させたものを、GPCの試料とする。試料濃度は、樹脂成分が0.5〜5mg/mlとなるように調整する。
【0141】
酸価の測定方法
サンプル2〜10gを200〜300mlの三角フラスコに秤量し、メタノール:トルエン=30:70の混合溶媒約50mlを加えて樹脂を溶解する。溶解性が悪いようであれば少量のアセトンを加えてもよい。0.1%のブロムチモールブルーとフェノールレッドの混合指示薬を用い、あらかじめ標定されたN/10苛性カリ〜アルコール溶液で滴定し、アルコールカリ液の消費量から次の計算で酸価を求める。
【0142】
酸価=KOH(ml数)×N×56.1/試料重量
(ただしNはN/10KOHのファクター)
【0143】
トナーの摩擦帯電量の測定方法
トナーの摩擦帯電量の測定方法を、二成分系現像剤の場合及び一成分系現像剤の場合についてそれぞれ以下に記載する。
【0144】
(二成分系現像剤)
図2は摩擦帯電量を測定する装置の説明図である。底に500メッシュのスクリーン53のある金属製の測定容器52に、複写機又はプリンターの現像スリーブ上から採取した二成分系現像剤を約0.5〜1.5g入れ金属製のフタ54をする。この時の測定容器52全体の重量を秤りW1(g)とする。次に吸引機51(測定容器52と接する部分は少なくとも絶縁体)において、吸引口57から吸引し風量調節弁56を調整して真空計55の圧力を250mmAqとする。この状態で充分、好ましくは2分間吸引を行いトナーを吸引除去する。この時の電位計59の電位をV(ボルト)とする。ここで58はコンデンサーであり容量をC(mF)とする。また、吸引後の測定容器全体の重量を秤りW2(g)とする。この試料の摩擦帯電量(mC/kg)は下式の如く算出される。
【0145】
試料の摩擦帯電量(mC/kg)=C×V/(W1−W2)
【0146】
(一成分系現像剤)
一成分系現像剤の摩擦帯電量は、吸引式ファラデーケージ法を用いて求める。
【0147】
吸引式ファラデーケージ法とは、現像剤回収装置を用いて複写機又はプリンターの現像スリーブ上の一定面積における全ての一成分系現像剤を吸引回収し、回収した現像剤の重量及び電荷量を測定し、測定された現像剤の重量と電荷量から、現像剤の単位重量当たりの電荷量、すなわち、摩擦帯電量(mC/kg)を求める方法である。
【0148】
この吸引式ファラデーケージ法で用いる現像剤回収装置は、エアーを吸引するための吸引装置部及びこの吸引装置に連結された現像剤を回収するための回収装置部とを有している。回収装置部は、現像スリーブ上の現像剤を吸引するための現像スリーブの外周曲率に対応した曲率の先端部を持った吸引口を有する外筒と、吸引した現像剤を回収するための円筒ろ紙を有する内筒とを有している。
【0149】
この現像剤回収装置を用いて現像スリーブ上の現像剤の吸引回収を具体的に行うには、現像スリーブの回転を停止し、上記の現像剤回収装置を用いて、現像スリーブ上の現像剤を、現像スリーブの一端側から他端側にかけて長手方向に沿って現像剤回収装置の吸引口を現像スリーブ表面に押し付けながら吸引し、吸引した現像剤を円筒ろ紙で回収する。
【0150】
現像剤を回収した円筒ろ紙の重量を測り、この回収後の円筒ろ紙の重量から回収前の円筒ろ紙の重量を引いた値を回収した現像剤の重量とする。このとき、外部から静電的にシールドされた内筒の円筒ろ紙に回収された現像剤の電荷量を測定しておく。
【0151】
酸化チタン微粒子及びアルミナ微粒子の平均粒径の測定方法
トナー粒子上の酸化チタン微粒子及びアルミナ微粒子の一次粒子径は、走査電子顕微鏡で観察し視野中の3万乃至5万倍に拡大した300個の酸化チタン微粒子及びアルミナ微粒子をX線マイクロアナライザー(XMA)により定性し、その粒子径を測定して平均粒子径をもとめる。
【0152】
キャリアの平均粒径の測定方法
キャリアをマイクロトラック粒度分析計SRAタイプ(日機装株式会社製)を使用し、0.7〜700μmのレンジ設定で測定を行い、測定されたキャリアの50%粒径を本発明においては、キャリアの平均粒径とする。
【0153】
イエロー着色剤の一次粒子の長径と短径の比の測定
イエロー着色剤を構成するイエロー顔料粒子の一次粒子の長径及び短径は、イエロー顔料粒子そのものを走査型の電子顕微鏡で観察し、視野中の3万乃至5万倍に拡大した0.1μm以上の300個の顔料粒子を測長して、その平均値の比をとって長径と短径の比とする。
【0154】
イエロー着色剤の一次粒子の長径と短径の比の値は、後述するイエロートナー粒子中のイエロー着色剤からも測定可能であり、測定値に実質的な差はない。
【0155】
イエロートナー粒子中のイエロー着色剤の個数平均粒径の測定
2.3Mのショ糖溶液にイエロートナー又はイエロートナー粒子を加え、よく撹拌しこれを試料ホルダービンに少量つけ、次いで液体N2中に投入し固化させ、ただちに試料アームヘッドにセットする。
【0156】
クライオ装置付きのウルトラミクロトームFC4E(日製産業製)にて常法に従ってカッティングしサンプルを用意する。
【0157】
これを電子顕微鏡H−8000形(日立製作所製)を用いて、加速電圧100kVにて、写真を撮った。倍率は3万乃至5万倍とする。
【0158】
その画像情報をインターフェースを介してニコレ社製画像解析装置(Luzex3)に導入し、2値の画像データに変換する。そのうち、0.1μm以上の一次粒径及び二次粒子を有する顔料粒子についてのみ無作為に解析を行なうこととし、サンプリング数が300回を超えるまで測定を繰り返し、顔料粒子の個数平均粒径を求める。
【0159】
ここでは、0.1μmより大きいイエロー着色剤の一次粒子及び二次粒子のみを測定対象とする。本発明で言う個数平均粒径は、イエロー顔料粒子の一次粒子及び二次粒子の長径の平均値とする。トナー粒子中の着色剤の一次粒子の長径と短径の比の平均値は、同様にして0.1μm以上の一次粒径を有する顔料粒子からも測定可能である。
【0160】
【実施例】
実施例に基づいて本発明をより詳細に説明する。
【0161】
実施例1
・ポリエステル樹脂No.1 70重量部
〔ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン
テレフタル酸
フマール酸
トリメリット酸
から生成されたポリエステル樹脂(酸価10.3mgKOH/g,
Tg=56℃,Mn=3900,Mw=12700,Tm=90℃)〕
・下記構造式で示されるイエロー顔料 30重量部
(一次粒子の長径と短径の比=1.8)
【0162】
【化6】
【0163】
上記材料をニーダー型ミキサーに仕込み、混合しながら非加圧下で昇温させ、充分に前混合する。その後3本ロールで2回混練し、第一の混練物を得た。
【0164】
・上記混練物 16.7重量部
(顔料粒子の含有量30重量部)
・ポリエステル樹脂No.1 88.3重量部
・下記構造式で示されるジ・ターシャリーブチルサリチル酸の
ジルコニウム化合物 4重量部
【0165】
【化7】
【0166】
上記材料をヘンシェルミキサーにより十分予備混合を行い、二軸式押出し機で溶融混練し、冷却後ハンマーミルを用いて約1〜2mm程度粗粉砕し、次いでエアージェット方式による微粉砕機で微粉砕した。更に得られた微粉砕物を多分割分級装置で微粉及び粗粉を同時に厳密に除去して、重量平均径8.0μmのイエロートナー粒子を得た。トナー中の着色剤の個数平均粒径は0.18μmであった。
【0167】
一方、外添剤(流動性向上剤及び帯電安定化剤)として、親水性酸化チタン微粉体A(一次平均粒子径0.02μm、BET比表面積140m2/g)100重量部に対してn−C4H9−Si(OCH3)3の20重量部を使用して表面処理し、一次平均粒子径0.02μm、疎水化度70%の疎水性酸化チタン微粉体Bを得た。
【0168】
イエローカラートナー粒子100重量部と、疎水性酸化チタン微粉体B1.0重量部とを混合して、イエローカラートナー粒子表面に疎水性酸化チタン微粒子を有するイエロートナー1を調製した。
【0169】
上記イエロートナー1とシリコーン樹脂で表面被覆した磁性フェライトキャリア粒子(平均粒径50μm)とを、トナー濃度が6重量%になる様に混合し、二成分系イエロー現像剤とした。
【0170】
上記二成分系イエロー現像剤を市販の普通紙フルカラー複写機(カラーレーザー複写機CLC700、キヤノン製)に導入して複写試験を行ったが、常温常湿環境(23℃,60%)下で5万枚の耐久試験においても画像濃度が1.7〜1.8と高い画像濃度を示し、帯電特性においても初期変動も少なく約−23mC/kg〜−26mC/kgの間で安定的に推移した。
【0171】
5万枚耐久後の感光ドラム表面は、トナー融着によるフィルミングも見られず、この間、クリーニング不良も一度も発生しなかった。
【0172】
5万枚耐久複写でも定着ローラーへのオフセットはまったく生じなかった。耐久後の定着ローラー表面を目視により観察したが、トナーによる汚染はなかった。
【0173】
5万枚耐久後の現像剤中のキャリア表面をSEMにて観察してみたところ、トナースペントはほとんど見られなかった。
【0174】
さらに、高温高湿環境(30℃,80%)下、及び低温低湿環境(15℃,10%)下で5万枚の耐久試験を行ったが、カブリ、飛散等も発生せず、画像濃度もほぼ安定に推移した。
【0175】
次に、イエロー顔料のかわりに、C.I.Pigment Blue 15:3を4重量部用いることを除いてあとはほぼ同様にして重量平均径8.0μmのシアントナー粒子を得た。
【0176】
さらに、イエロー顔料のかわりに、C.I.Pigment Red 122を5重量部用いることを除いてあとはほぼ同様にして重量平均径8.0μmのマゼンタトナー粒子を得た。
【0177】
得られたシアントナー粒子及びマゼンタカラートナー粒子に対し、イエロートナーと同様にして、疎水性酸化チタン微粉体B1.0重量部をそれぞれ混合し、粒子表面に疎水性酸化チタン微粒子Bを有するシアントナー及びマゼンタトナーを、それぞれ得、以後も同様にして、二成分系シアン現像剤及び二成分系マゼンタ現像剤を調製した。
【0178】
未定着の転写材上のトナー乗り量が、イエロートナー、マゼンタトナー及びシアントナーが0.8mg/cm2になる様に、本体のコントラスト電位を調整してイエロートナー及びシアントナーでグリーンのベタ画像を出力し、イエロートナー及びマゼンタトナーでレッドのベタ画像を出力した。
【0179】
カラー複写画像の評価方法として、画像表面のグロス(光沢度)及び画像の色度を測定することにより、カラー画像の良否を判定する方法がある。グロス値が高いほど画像表面が平滑でつやのある彩度(C*)の高いカラー品質と判断され、逆にグロス値が低いと、くすんだ彩度(C*)の乏しい画像表面の荒れたものと判断される。なお「C*」とは、下記方法により測定されるa*及びb*の値から、下記式
【0180】
【数1】
により算出される値であり、このC*が大きい程、あざやかな画像となる。
【0181】
グロス(光沢度)の測定には、日本電色社製VG−10型光沢度計を用いた。測定にあたっては、まず定電圧装置により6Vにセットし、次いで投光角度、受光角度をそれぞれ60°に合わせ、0点調整及び標準板を用い、標準設定の後に試料台の上に前記試料画像を置き、さらに白色紙を3枚上に重ね測定を行い、標示部に示される数値を%単位で読みとった。
【0182】
トナーの色調は1976年に国際照明委員会(CIE)で規格された表色系の定義に基づき、定量的に測定した。すなわち、a*,b*(a*,b*は色相と彩度を示す色度)、L*(明度)を測定した。測定器にはX−Rite社製分光測色計タイプ938を用い、観察用光源はC光源、視野角は2°とした。
【0183】
実施例1において各画像のグロスと色度は、下記表1の通りであった。
【0184】
【表1】
【0185】
本発明のイエロートナーを用いると2次色であるグリーン、レッドの画像も明度及び彩度の高いものであった。
【0186】
さらにトランスペアレンシーフィルムを転写材として用いカラー画像を形成したトランスペアレンシーフィルムを、オーバーヘッドプロジェクター(OHP)に投影したOHP画像の透明度も良好なものであった。
【0187】
上記の実施例におけるOHP画像の透明性については、市販のオーバーヘッドプロジェクターを用いて、トランスペアレンシーフィルムに上記のイエロートナーによって形成したカラー画像を投影して、以下の評価基準に基づいて評価した。
【0188】
(評価基準)
A:透明性に優れ、明暗ムラも無く、色再現性も優れる。(良)
B:若干明暗ムラがあるものの、実用上問題ない。(可)
C:明暗ムラがあり、色再現性に乏しい。(悪い)
【0189】
また得られたイエローのベタ画像(画像濃度1.70)の耐光性をJIS K7102にほぼ準じて確認したところ、200時間光照射後の画像でもほぼ初期と同様の画像濃度(1.67)を示し、色相変化もわずかであった(ΔE=2.8)。なお光源には紫外線カーボンアークランプを使用した。
【0190】
色相変化は下記式のΔE値を求め、下記の耐光性の評価基準に基づいて定量的に評価した。
【0191】
ΔE={(L1 *−L2 *)2+(a1 *−a2 *)2+(b1 *−b2 *)2}1/2
L1 *:光照射前の画像の明度
a1 *,b1 *:光照射前の画像の色相と彩度を示す色度
L2 *:光照射後の画像の明度
a2 *,b2 *:光照射後の画像の色相と彩度を示す色度
【0192】
耐光性の評価基準
A:200時間照射後でも退色しない。
B:100時間照射後でも退色しない。
C:100時間照射で退色。
【0193】
比較例1
実施例1で用いたポリエステル樹脂No.1に代えて、
・ポリエステル樹脂No.2
〔ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン
テレフタル酸
フマール酸
トリメリット酸
からなる縮合ポリマー(酸価1.9mgKOH/g,Tg=59℃,Mn=4100,Mw=12000,Tm=93℃)〕
を用いることを除いては、実施例1と同様にして、イエロートナー2(重量平均径8.1μm)を得た。実施例1と同様にして評価したところ、低温低湿環境下での耐久で10000枚目あたりから画像濃度が低下しはじめ画像はガサついたものになり、さらに耐久を続けるとカブリはじめた。初期のOHP画像をイエロートナー1と比較してみたところ、透明性が低下していた。
【0194】
比較例2
実施例1で用いたポリエステル樹脂No.1に代えて、
・ポリエステル樹脂No.3
〔ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン
テレフタル酸
フマール酸
トリメリット酸
からなる縮合ポリマー(酸価31.2mgKOH/g,Tg=55℃,Mn=4800,Mw=11000,Tm=93℃)〕
を用いることを除いては、実施例1と同様にして、イエロートナー3(重量平均径7.7μm)を得た。実施例1と同様にして評価したところ、高温高湿環境下で帯電量が低く、耐久とともにトナー飛散が目立ちはじめた。
【0195】
実施例2
実施例1で用いたポリエステル樹脂No.1に代えて、ポリエステル樹脂No.4(プロポキシ化ビスフェノールAとフマール酸との縮合ポリマー、酸価:4.0mgKOH/g,Tg:60℃,Mw:15000,Mn:4200,Mw/Mn:3.57)を用いることを除いては、実施例1と同様にして、イエロートナー4(重量平均径8.3μm)を得た。イエロートナー4を用いて、実施例1と同様にして評価したところ、低温低湿環境下での耐久で20000枚目あたりから画像濃度が低下しはじめたものの、実用レベル内であった。
【0196】
実施例3
実施例1で用いたポリエステル樹脂No.1に代えて、ポリエステル樹脂No.5(プロポキシ化ビスフェノールAとフマール酸との縮合ポリマー、酸価:25.8mgKOH/g,Tg:55℃,Mw:11000,Mn:3800,Mw/Mn:2.89)を用いることを除いては、実施例1と同様にして、イエロートナー5(重量平均径8.0μm)を得た。イエロートナー5を用いて、実施例1と同様にして評価したところ、高温高湿環境下で若干帯電量が低下したものの、画像上問題は発生しなかった。
【0197】
比較例3
実施例1で用いたポリエステル樹脂No.1に代えて、
・スチレン/アクリル系の樹脂No.6
〔スチレンn−ブチルアクリレート系の共重合体(酸価 ゼロ,Tg=60℃,Mn=5200,Mw=22000,Tm=96℃)〕
を用いたことを除いてあとは同様にして、イエロートナー6(重量平均径7.9μm)を得た。イエロートナー6の画像のグロスと色度を実施例1と同様に調べてみたところ、表2の結果を得た。
【0198】
【表2】
【0199】
表2の通り、イエロートナー6は明度,彩度ともに低下してしまった。
【0200】
また、イエロートナー6を用いて低温低湿環境下で耐久したところ、帯電量が上昇し画像濃度薄が発生し途中で耐久を中断した。
【0201】
【表3】
【0202】
比較例4
実施例1で用いた着色剤に代えて、下記式(III)
【0203】
【化8】
で示される化合物(III)(C.I.Pigment Yellow12,一次粒子の長径と短径の比=2.4)を、ポリエステル樹脂No.1 100重量部に対し5重量部使用することを除いては、実施例1と同様にしてイエロートナー7を調製し、実施例1と同様にして評価した。各環境下で比較的安定に耐久が推移したが、得られたイエロー画像は、カーボンアークランプ照射の耐光加速試験で退色してしまった(100時間の光照射でΔE=12)。尚、トナー中の着色剤の個数平均粒径は0.22μmであった。
【0204】
実施例4
実施例1で用いた疎水性酸化チタン微粉体Bに代えて、親水性のアルミナ微粉体C(一次平均粒径:0.02μm、BET比表面積:130m2/g)100重量部に対してiso−C4H9−Si(OCH3)3を17重量部使用して表面処理し、一次粒子径0.02μm、疎水化度70%の疎水性アルミナ微粉体Dを得た。疎水性アルミナ微粉体Dを用いたことを除いては、実施例1と同様にしてイエロートナー8を調製し、実施例1と同様にして評価した。
【0205】
各環境下において良好な耐久性を示し、耐光性、色相ともに実施例1とほぼ同じ傾向を示した。
【0206】
実施例5
実施例1で用いた疎水性酸化チタン微粉体Bに代えて、親水性の酸化チタン微粉体A(一次平均粒径:0.02μm、BET比表面積:140m2/g)を表面処理しないでそのまま用いたことを除いて、あとは実施例1と同様にしてイエロートナー9を調製し、実施例1と同様にして評価した。
【0207】
高温高湿環境下において、初期の帯電量が−14mC/kgと低く、耐久評価ぎりぎりのレベルであった。さらに同じ環境下で耐久を進めるとハーフトーン部のカサついた画像になってしまったが、何とか実用レベル内であった。ただ画出し放置1日後の帯電量は放置前と比較して4mC/kg程度、低下してしまっていた。加えて、耐久とともに、トナー飛散,カブリの程度が悪化していった。
【0208】
実施例6
実施例1で用いた疎水性酸化チタン微粉体Bに代えて、親水性のシリカE(一次平均粒径:0.005μm、BET比表面積:380m2/g)100重量部に対してヘキサメチルジシラザンを20重量部使用して表面処理した一次粒子径0.005μm、疎水化度65%の疎水性シリカFを用いたことを除いては、実施例1と同様にしてイエロートナー10を得た。イエロートナー10を用いて実施例1と同様にして評価した。低温低湿環境下での耐久において3000枚目を過ぎたあたりからトナーの帯電量が上昇しはじめ、画像濃度が低下しはじめ、ガサついた画像になったものの、何とか実用レベル内であった。
【0209】
ただ、耐久後のキャリア表面を観察したところ、トナースペントが見られたが、これも何とか実用レベル内であった。高温高湿環境下での耐久においても、耐久とともにカブリ,トナー飛散が悪化する傾向が見られた。
【0210】
比較例5
実施例1で用いた化合物(I)に代えて、下記式(IV)
【0211】
【化9】
で示される化合物(IV)(C.I.Pigment Yellow74,一次粒子の長径と短径の比=2.9)をポリエステル樹脂100重量部に対し7重量部使用することを除いては、実施例1と同様にしてイエロートナー11を得、実施例1と同様に評価を行ったところ、高温高湿環境下での多数枚耐久で約5000枚時点から、トナーの帯電量が低下しはじめ、さらにカブリが目立ちはじめたため耐久を中断した。
【0212】
また、上記化合物(IV)は、実施例1で使用した化合物(I)と比較して着色力が低く、高画像濃度の画像を得るためには、フルカラー複写機のコントラスト電位を実施例1の場合よりも上げなければならなかった。尚、トナー中の着色剤の個数平均粒径は0.39μmであった。
【0213】
比較例6
実施例1で用いた化合物(I)に代えて、下記式(V)
【0214】
【化10】
で示される化合物(V)(C.I.Pigment Yellow95,一次粒子の長径と短径の比=3.4)をポリエステル樹脂100重量部に対し5重量部使用することを除いては、実施例1と同様にしてイエロートナー12を得、実施例1と同様に評価を行ったところ、初期画像は画像濃度も高く(1.60)、実用レベル内であったが多数枚耐久中に徐々に画像濃度が低下した。すなわち、10000枚耐久後の画像濃度は1.20までに低下していた。尚、トナー中の着色剤の個数平均粒径は0.54μmであった。
【0215】
実施例7
実施例1において、ジ・ターシャリーブチルサリチル酸のジルコニウム化合物の代わりにジ・ターシャリーブチルサリチル酸のアルミニウム化合物を同じく4重量部用いたことを除いてあとは同様にしてイエロートナー13を得た。イエロートナー13を用いて実施例1と同様に評価を行ったところ、良好な結果が得られた。
【0216】
比較例7
実施例1において、ジ・ターシャリーブチルサリチル酸のジルコニウム化合物の代わりにジ・ターシャリーブチルサリチル酸の亜鉛化合物を用いたことを除いてあとは同様にしてイエロートナー14を得た。イエロートナー14を用いてあとは実施例1と同様にして評価したところ、低温低湿環境下での耐久で5000枚目あたりからチャージアップに伴う画像濃度低下が見られ、高温高湿環境下での耐久においては3000枚目あたりから帯電量が低下し、若干のトナー飛散とカブリが見られた。
【0217】
イエロートナー14の画像のグロスと色度を実施例1と同様に調べてみたところ、表4の結果を得た。
【0218】
【表4】
【0219】
イエロートナー14は実施例1のトナーと比較して、ほぼ同じ画像のグロスが高めに出るにもかかわらず、明度,彩度ともに低く、これは着色剤の分散の悪さに起因していると考えられる。
【0220】
実際のOHP画像の透明性もあまり良好とは言えなかった。
【0221】
実施例8
実施例1において、疎水性酸化チタン微粉体Bの代わりに、一次粒子径0.22μmの親水性の酸化チタンG(BET比表面積20m2/g)100重量部に対してn−C4H9−Si(OCH3)3の10重量部を使用して表面処理した、一次粒子径0.22μm,疎水化度68%の疎水性酸化チタン微粉体Hを用いたことを除いてあとは同様にしてトナー15を調製し、耐久評価した。
【0222】
耐久初期からハーフトーン部の均一性に劣り、ベタ画像の均一性も実施例1と比較して劣っていたものの、何とか実用レベル内であった。
【0223】
低温低湿下での耐久においては、耐久とともに画像濃度が低下しはじめた。また、OHPの透明性も初期から若干のムラが見られたものの、実用上問題のないレベルであった。
【0224】
実施例9
実施例1とほぼ同様にして重量平均径10.4μmのイエロートナー粒子を得た。外添剤として疎水性酸化チタン微粉体B0.8重量部をイエロートナー粒子100重量部に混合してイエロートナー16を調製した。
【0225】
耐久性においては、ほぼ満足のいく結果が得られたものの、ハーフトーンの均一性とラインの再現性が実施例1と比較して若干劣っていた。但し、充分実用レベル内であった。
【0226】
実施例10
実施例1とほぼ同様にして重量平均径5.5μmのイエロートナー粒子を得た。外添剤として疎水性酸化チタン微粉体B1.5重量部をイエロートナー粒子100重量部に混合してイエロートナー17を調製した。
【0227】
ハイライト再現性は実施例1を上回るレベルであったものの、低温低湿下の耐久において若干画像濃度が低めに推移した。
【0228】
実施例11〜13及び比較例8
実施例1で用いた化合物(I)に変えて、下記の直径/短径比を有する化合物(I)を用いたことを除いたあとは、同様にしてトナー化してトナー18〜20を得た。
【0229】
【表5】
【0230】
実施例1と同様にして各トナーを用いた時の画像の色度を調べたところ、表6の結果を得た。
【0231】
【表6】
【0232】
トナー18、19、20の耐久結果は表9に示した。
【0233】
比較例9
実施例1において、ジ・ターシャリーブチルサリチル酸のジルコニウム化合物の代わりに、ジ・ターシャリーブチルサリチル酸のクロム化合物を用いたことを除いてあとは同様にしてイエロートナー21を得た。
【0234】
イエロートナー21を用いてあとは実施例1と同様にして評価したところ、低温低湿環境下での耐久で10000枚目あたりからチャージアップに伴う画像濃度低下が見られ、高温高湿環境下での耐久においては10000枚目あたりから帯電量が低下し、若干のトナー飛散とカブリが見られたものの、ともに実用レベル内であった。尚、色度を実施例1と同様に調べてみたところ、表7の結果を得た。
【0235】
【表7】
【0236】
実施例1と比較して彩度が大きく低下してしまった。実際のOHP画像の透明性もあまり良好とは言えなかった。
【0237】
【表8】
【0238】
【表9】
【0239】
【発明の効果】
本発明のイエロートナーは、上述の如く、特定の酸価を有するポリエステルと、着色剤が前記式(I)で示される化合物とを有しており、さらに、芳香族カルボン酸誘導体の金属化合物を含有している時、トナー中の着色剤の分散性が向上し、良好な色再現性と帯電安定化が達成でき、さらに定着性と耐オフセット性の両方を満足できるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のイエロートナーを用いる画像形成装置の一例を示す概略断面図である。
【図2】トナーの摩擦帯電量を測定するための装置の概略図である。
【符号の説明】
51 吸引機
52 測定容器
53 スクリーン
54 フタ
55 真空計
56 風量調節弁
57 吸引口
58 コンデンサー
59 電位計
Claims (4)
- 該結着樹脂は、酸価が2.0乃至30.0mgKOH/gのポリエステル樹脂を主成分とすることを特徴とする請求項1に記載のイエロートナー。
- 該イエロートナーは、負帯電性を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のイエロートナー。
- 該イエロートナーは、少なくともイエロートナー粒子及び外添剤を含有しており、該外添剤は、平均一次粒子径0.002乃至0.2μmの酸化チタン微粉体又は酸化アルミニウム微粉体であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のイエロートナー。
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