JP3618993B2 - 塩化ビニル系発泡体用組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、塩化ビニル系樹脂、可塑剤、炭酸リチウム、アゾジカルボンアミド及び亜鉛化合物を含んでなる塩化ビニル系発泡体用組成物に関し、更に詳しくは得られる発泡体の発泡セルが微細で均一、表面状態が良好であり、かつ高発泡が可能であるという優れた発泡特性を維持しつつ、火災等に際しての燃焼時に塩化水素の発生量が少ない塩化ビニル系発泡体用組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
塩化ビニル系発泡体用組成物は、塩化ビニル系樹脂、可塑剤、発泡剤を含んでなるもので、発泡剤としてはアゾジカルボンアミドが、またその発泡促進剤としては亜鉛化合物が使われることが多い。
塩化ビニル系発泡体は、発泡セルが微細で均一で、表面状態が良好であり、かつ高発泡が可能であるという優れた発泡特性を有するため、壁紙、床材等の住宅内装用途、及び塩ビレザー用途等に利用されている。しかし、塩化ビニル系樹脂は塩素を含有しているため、火災等に際しての燃焼時に有害な塩化水素を発生し易いという欠点がある。塩化ビニル系樹脂に一般に添加される炭酸カルシウムは、燃焼時に発生する塩化水素ガスを捕捉する効果はあるものの、完全には捕捉できず、塩化水素捕捉能には限界がある。
【0003】
特開平8−231798号公報、特開平9−52303号公報、特開平9−52994号公報、特開平9−272769号公報、及び特開平9−241458号公報に、塩化ビニル系樹脂等の塩素含有樹脂の塩化水素捕捉剤として炭酸リチウムを用いることが提案されている。
特開平8−231798号公報には、「塩化ビニル系樹脂に一般に用いられる炭酸カルシウムは、燃焼時には塩化ビニル系樹脂中の塩素を塩化カルシウムとして捕捉し、600℃まではかなり高い塩化水素捕捉率を示すが、800℃以上では塩化カルシウムが加水分解を起こして塩素を離すため、塩化水素捕捉率が低下してしまう。一方、炭酸リチウムは、塩化ビニル系樹脂中の塩素を塩化リチウムとして捕捉し、塩化リチウムは800℃付近でも加水分解率が1%以下であるため、高温下でも塩化水素捕捉率の低下がなく、優れた塩化水素捕捉剤として用いられる。」との記載がある。
【0004】
しかし、これらの公報は、発泡体用組成物を調製する具体的方法について全く言及してしない。良好な発泡体を得るのに適した炭酸リチウムの比表面積及び粒子径、発泡剤の種類と比表面積についての記載がなく、また多量に添加すると著しい発泡特性の低下を引き起こすカルボン酸亜鉛(亜鉛の金属石鹸)、酸化亜鉛等の亜鉛化合物の添加量等になんら制限を設けていない。
炭酸リチウムを用いると、燃焼時と同様に発泡加工時においても塩化水素の発生量が少なくなる一方で、塩化水素捕捉の際に発生するCO2の量が多くなる。プラスチックおよびゴム用添加剤便覧(化学工業社、昭和60年)には、「CO2ガスは、発泡体の表面を通り抜けやすく、CO2ガスが発生すると連続気泡ができやすい。反対にN2ガスは透過性が悪いため、発生ガスがN2である場合は独立気泡となる確率が高い。」という記載がある。また、大塚化学株式会社の発泡剤カタログによると、アゾジカルボンアミドの分解により発生するガス成分は、「N2:65%、CO:32%、CO2:2%、NH3:1%」でその大部分はN2ガスであり、CO2は微量である。
従って、炭酸リチウムを用いない場合は、CO2ガスの発生がほとんどなく、良好な発泡体が得られやすい。しかし、炭酸リチウムを用いた場合は、発泡体の表面を通り抜けやすいCO2ガスの影響で、発泡体のセル荒れ、表面荒れ、更にはセル崩壊が起こりやすくなり、良好な発泡体を得るためには、配合条件や加工条件を特定の範囲としなくてはならない。
【0005】
最近、環境問題から塩化ビニル系樹脂を含む廃棄物の燃焼時に発生する塩化水素は非常に問題視されており、また塩化ビニル系発泡体を用いた壁紙、床材、及び塩ビレザーではますます意匠性への要求が高まり、高い塩化水素捕捉能と良好な発泡特性を兼ね備えた塩化ビニル系発泡体の開発が望まれている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記従来の問題点を解決するものであり、得られる発泡体の発泡セルが微細で均一で、表面状態が良好であり、かつ高発泡が可能であるという優れた発泡特性を維持しつつ、燃焼時において塩化水素の発生量が少ない塩化ビニル系発泡体用組成物を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、塩化ビニル系樹脂と特定の比表面積の炭酸リチウムに特定の比表面積のアゾジカルボンアミド、特定量の亜鉛化合物及び、一般的に用いられる可塑剤を組み合わせることにより、上記課題を解決する塩化ビニル系発泡体用組成物を提供できることを見いだし、完成された。
すなわち、本発明は、塩化ビニル系樹脂100重量部、可塑剤30〜100重量部、比表面積が1〜10m2/gの炭酸リチウム10〜120重量部、比表面積が1〜7m2/gのアゾジカルボンアミド2〜8重量部、及び亜鉛化合物0.2〜5重量部を含んでなる塩化ビニル系発泡体用組成物を提供する。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明では、塩化ビニル系樹脂として、塩化ビニル系ペースト樹脂、また必要に応じて塩化ビニル系ブレンディング樹脂を用いる。
塩化ビニル系ペースト樹脂は、塩化ビニル単量体、または塩化ビニル単量体とこれと共重合可能な単量体の混合物を、乳化剤等を含む水性媒体中で、水溶性重合開始剤の存在下に乳化重合またはシード乳化重合し、あるいは油溶性重合開始剤の存在下に微細懸濁重合し、重合後のラテックスを噴霧乾燥することなどの方法により得られる。
【0009】
塩化ビニル系ブレンディング樹脂は、塩化ビニル単量体、または塩化ビニル単量体とこれと共重合可能な単量体の混合物を、高分子系懸濁安定剤等を含む水性媒体中で、油溶性重合開始剤の存在下に懸濁重合し、重合後のスラリーを遠心脱水機等で脱水し、更に気流乾燥、流動乾燥する方法などにより得られる。塩化ビニル系ブレンディング樹脂は、ペーストゾルの流動性改良等の目的のため、必要に応じて塩化ビニル系ペースト樹脂と併用して用いられる。
【0010】
塩化ビニルと共重合可能な単量体の例としては、 エチレン、プロピレン、ブテン等のオレフィン類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ステアリン酸ビニル等のビニルエステル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテル等のビニルエーテル類;塩化ビニリデン等のビニリデン類;アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸等の不飽和カルボン酸及びそれらの酸無水物;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ブチルベンジル等の不飽和カルボン酸エステル類;スチレン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼン等の芳香族ビニル化合物;アクリロニトリル等の不飽和ニトリル類;ジアリルフタレート等の架橋性モノマーが挙げられる。これらは単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。
乳化剤、高分子系懸濁安定剤、水溶性重合開始剤、及び油溶性開始剤も、必要に応じて、公知のものが使用される。
【0011】
本発明に用いる可塑剤の種類は、特に制限されない。1次可塑剤としては、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ジ−n−オクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジイソノニルフタレート、ブチルベンジルフタレート等のフタル酸エステル;トリクレジルホスフェート、トリ−2−エチルヘキシルホスフェート等のリン酸エステル;ジ−2−エチルヘキシルアジペート等のアジピン酸エステル;ジ−2−エチルヘキシルセバケート等のセバシン酸エステル;ジ−2−エチルヘキシルアゼレート等のアゼライン酸エステル;トリ−2−エチルヘキシルトリメリテート等のトリメリット酸エステル;ポリエステル系可塑剤等を用いることができる。これらは単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。
【0012】
加えて、クエン酸エステル、グリコール酸エステル、塩素化パラフィン、塩素化脂肪酸エステル、エポキシ系可塑剤、テキサノールイソブチレート等の2次可塑剤を併用してもよい。これらの2次可塑剤も単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。
可塑剤の添加量は、塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、30〜100重量部が好ましい。
【0013】
本発明では、塩化水素捕捉剤として、比表面積が1〜10m2/gの炭酸リチウムを塩化ビニル系樹脂100重量部に対して10〜120重量部、好ましくは60〜120重量部用いる。
炭酸リチウムの分子量(73.89)と塩化ビニル樹脂の分子量(62.50)から計算される、塩化ビニル樹脂100重量部から発生する塩化水素を完全に捕捉するのに必要な炭酸リチウムの量は、59.1重量部である。従って、塩化ビニル樹脂100重量部に対して炭酸リチウムを60重量部以上添加することが望ましい。
【0014】
あるいは、塩化ビニル樹脂100重量部に対して炭酸リチウム10〜110重量部と炭酸カルシウム10〜140重量部を併用してもよく、この場合、(炭酸リチウムの添加量(重量部)+炭酸カルシウムの添加量(重量部)×6/8)が60〜120重量部の範囲にあることが望ましい。これは、炭酸カルシウムの分子量(100.09)から計算される、塩化ビニル樹脂100重量部から発生する塩化水素を完全に捕捉するのに必要な炭酸カルシウムの必要量は、80.1重量部であり、従って、同重量での塩化水素捕捉量は、理論上、炭酸カルシウムは炭酸リチウムの約6/8となるからである。
【0015】
いずれの場合においても、炭酸リチウムの添加量が10重量部未満では、十分な塩化水素捕捉率が得られない。また、炭酸リチウムの添加量が120重量部を越える場合、及び(炭酸リチウムの添加量+炭酸カルシウムの添加量×6/8)が120重量部を越える場合には、良好な塩化ビニル系発泡体が得られなくなる。これらの添加量が多すぎる場合、発泡セルが大きく、不均一、連泡となる等のセル荒れ、発泡体の表面にでこぼこ、陥没が生じる等の表面荒れ、及びセルの崩壊による発泡倍率の低下が起こり、これらの発泡特性の低下は、2次加熱を行うと更に著しくなる傾向にある。塩化ビニル系発泡壁紙等では、いったん冷却した発泡体を再加熱(2次加熱)した後にエンボスを行うこともあり、発泡体を2次加熱した後にもセル荒れ、表面荒れ、及びセルの崩壊による発泡倍率の低下が起こらないことが必要である。
【0016】
また、炭酸リチウム、あるいは炭酸リチウムと炭酸カルシウムに加えて、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム(クレー)、ケイ酸マグネシウム(タルク)、シリカ、カーボンブラック、酸化チタン、カオリン、マイカ等の公知の充填剤を併用しても良い。これらは単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。この場合も、十分な塩化水素捕捉率が得られ、かつ良好な塩化ビニル系発泡体が得られる範囲で使用しなくてはならない。
【0017】
炭酸リチウム、炭酸カルシウム、及びその他充填剤は、一般に原石をハンマーミル、ボールミル、ミクロンミル等の粉砕機で機械的に粉砕したものを用いる。いずれの充填剤についても、粉砕機の選択、粉砕速度の調節、また必要に応じて分級を行うことにより、所定の比表面積(粒子径)のものが得られる。
【0018】
炭酸リチウムの比表面積は、塩化水素捕捉率及び発泡特性に大きな影響を与え、同一の添加量では、炭酸リチウムの比表面積が大きいほど、塩化水素捕捉率が向上する一方で、発泡体のセル荒れ、表面荒れ、及びセルの崩壊による発泡倍率の低下が起こりやすく、また2次加熱後には更に発泡特性の低下が著しくなる。炭酸リチウムの比表面積は、1〜10m2/gの範囲にあればよいが、発泡特性からは1〜5m2/gの範囲が特に好ましく、塩化水素捕捉率からは5〜10m2/gの範囲が特に好ましい。
比表面積が1m2/gよりも小さな炭酸リチウムでは十分な塩化水素捕捉率が得られず、また比表面積が10m2/gよりも大きい炭酸リチウムでは、良好な塩化ビニル系発泡体を得ることはできない。
【0019】
本発明では、比表面積1〜10m2/gの炭酸リチウム、特に5〜10m2/gの炭酸リチウムについて、以下に説明する発泡剤の選択、発泡促進剤としての亜鉛化合物の添加量の調節、更に好ましくは発泡時の温度の調節等により、微細で均一な発泡セル、良好な表面状態、及び高発泡を達成することが可能であり、且つ2次加熱の際にも発泡特性が低下しない塩化ビニル系発泡体を得ることができる。
【0020】
本発明では、発泡剤としてアゾジカルボンアミドを用いる。アゾジカルボンアミドは、分解温度が発泡促進剤の選択で広範囲に調節可能である、発生ガス量が多い、臭気がない、貯蔵安定性が良い、難燃性で、かつ無毒である等の理由で、塩化ビニル系発泡体用の発泡剤として最適である。
【0021】
アゾジカルボンアミドの添加量は、塩化ビニル系樹脂100重量部に対して2〜8重量部であり、その比表面積は、1〜7m2/gの範囲にあれば良いが、1〜4m2/gが特に好ましい。塩化ビニル系発泡体用組成物では、一般に発泡剤の比表面積が大きいほど、発泡速度が速く、発泡体の白度が高くなり、逆に発泡剤の比表面積が小さいほど発泡速度が遅く、発泡体にアゾジカルボンアミドの残渣による黄色味が残る。
【0022】
一般には、発泡剤の比表面積が大きいほど、発泡剤の核が小さくなり、微細で独立な発泡セルが得られると考えられる。しかし、炭酸リチウムを用いた塩化ビニル系発泡体用組成物では、比表面積がある程度小さなアゾジカルボンアミドの方が、微細で均一、且つ独立したセルを与え、特に比表面積が5〜10m2/gの炭酸リチウムでは、その傾向がより顕著になる。但し、比表面積1m2/g未満のアゾジカルボンアミドは、発泡速度が遅いため好ましくない。比表面積の小さなアゾジカルボンアミドを用いると、塩化ビニル系発泡体の着色が若干大きくなるので、特に白度が要求される場合は、増白剤を含むものを用いてもよい。
【0023】
また、アゾジカルボンアミドに加えて、4,4’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン等を併用しても良い。これらは単独でまたは組み合わせて用いられる。
【0024】
アゾジカルボンアミドの分解を促進する発泡促進剤としては、カルボン酸亜鉛、酸化亜鉛、塩化亜鉛等の亜鉛化合物、カルボン酸鉛、三塩基性硫酸鉛、二塩基性硫酸鉛等の鉛化合物、カルボン酸カドミウム等のカドミウム化合物、および尿素化合物等が挙げられる。鉛化合物やカドミウム化合物は毒性が強いため、住宅の内装用途、室内インテリア用途等には、使用されなくなっている。
【0025】
本発明では、塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、亜鉛化合物を0.2〜5重量部、好ましくは0.2〜3重量部用いる。亜鉛化合物としては、カルボン酸亜鉛が最も好ましく、次いで酸化亜鉛、塩化亜鉛が好ましい。これらは単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。
【0026】
カルボン酸亜鉛としては特に制限はないが、炭素数6〜26の脂肪族または芳香族カルボン酸の亜鉛塩が好ましく用いられる。カルボン酸亜鉛の例として、オクタン酸亜鉛、2−エチルヘキサン酸亜鉛、デカン酸亜鉛、イソデカン酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛、ミリスチン酸亜鉛、パルミチン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、リシノール酸亜鉛、オレイン酸亜鉛、リノール酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛、フタル酸亜鉛、サリチル酸亜鉛、安息香酸亜鉛、フェノール酸亜鉛等が挙げられる。これらは単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。
【0027】
一般に、亜鉛化合物の添加量が多いほど、発泡速度が速くなり、発泡体の白度が高くなる。しかし、亜鉛化合物の添加量が多すぎると、発泡セルが大きく、不均一、連泡となる等のセル荒れ、発泡体の表面にでこぼこ、陥没が生じる等の表面荒れ、及びセルの崩壊による発泡倍率の低下が起き、これらの発泡特性低下は2次加熱を行うと更に著しくなる傾向にある。
【0028】
炭酸リチウムの比表面積が大きくなるほど、亜鉛化合物の添加量の影響が顕著になるので、亜鉛化合物の添加量を減らすことが望まれる。特に比表面積が5〜10m2/gの炭酸リチウムを用いた場合は、塩化ビニル系樹脂100重量部に対する亜鉛化合物の添加量を0.2〜1.5重量部にすることにより、発泡セルが微細で均一で、また表面状態が良好であり、かつ2次加熱の際にもセル荒れ、表面荒れ、及び発泡倍率の低下がない発泡体が得られる。但し、亜鉛化合物の添加量が0.2重量部よりも少ない場合は、発泡速度が遅すぎ、またアゾジカルボンアミドの残渣による黄色味が残るため不適当である。
【0029】
亜鉛化合物の添加量が少ないと、発泡体が着色する傾向にあるが、他の金属のカルボン酸塩、有機スズ系化合物、エポキシ化合物、ホスファイト、ポリオール、ハイドロタルサイト、亜リン酸エステル等の安定剤を併用することで白度を上昇させることができる。亜鉛化合物の添加量が多い場合も上記の化合物を併用することでより白度が改良される。
【0030】
亜鉛化合物と組み合わせ得る他のカルボン酸塩としては、カルボン酸バリウム、カルボン酸カルシウム、カルボン酸マグネシウム、カルボン酸ナトリウム、カルボン酸カリウム、カルボン酸リチウム、カルボン酸ストロンチウム等が挙げられる。これらは単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。
【0031】
有機スズ系化合物としては、ジ−n−オクチルスズジメルカプタイド、ジ−2−エチルヘキシルスズジメルカプタイド、ジブチルスズジメルカプタイド、ジメチルスズジメルカプタイド、ジ−n−オクチルスズビス−2−エチルヘキシルチオグリコレート、ジ−2−エチルヘキシルスズビス−2−エチルヘキシルチオグリコレート、ジブチルスズビス−2−エチルヘキシルチオグリコレート、ジメチルスズビス−2−エチルヘキシルチオグリコレート等のスズメルカプト系化合物;ジ−n−オクチルスズジラウレート、ジ−2−エチルヘキシルスズジラウレート、ジブチルスズジラウレート、ジメチルスズジラウレート等のスズカルボキシレート系化合物、ジ−n−オクチルスズマレート、ジ−2−エチルヘキシルスズマレート、ジブチルスズマレート、ジメチルスズマレート等のスズマレート系化合物等が挙げられる。これらは単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。
【0032】
エポキシ化合物としては、エポキシ樹脂、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、エポキシ化脂肪酸エステル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル等が挙げられる。これらは単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。ホスファイト、ポリオール、ハイドロタルサイト、亜リン酸エステル等も、公知のものが用いられる。これらは単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。これらの中で、カルボン酸バリウム、カルボン酸カルシウム、カルボン酸マグネシウム、カルボン酸カリウム、カルボン酸ナトリウム、スズメルカプト系化合物、スズカルボキシレート系化合物、及びエポキシ化合物が特に好ましい。
【0033】
本発明の塩化ビニル系発泡体用組成物には、塩化ビニル系樹脂、可塑剤、炭酸リチウム、及び他の充填剤、アゾジカルボンアミド、及び他の発泡剤、亜鉛化合物、及び他の発泡促進剤、安定剤等に加えて、更に希釈剤、減粘剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、防黴剤、防菌剤、セル調整剤、難燃剤、帯電防止剤、補強剤、滑剤、顔料、着色剤、増白剤、チキソトロープ剤等を添加しても良い。これらは単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。
【0034】
本発明の塩化ビニル系発泡体用組成物は、塩化ビニル系樹脂と上記の配合成分等を混合・混練してペーストゾル化することにより得ることができ、このペーストゾルを加熱ゲル化して原反とし、必要に応じて印刷を行って模様付けし、更に高温で加熱して発泡させると発泡体が得られる。
こうして得られた塩化ビニル系発泡体は、主に壁紙、床材等の住宅内装用途、及び塩ビレザー用途等に利用される。これらの加工法について特に制限はないが、一般に下記の方法が用いられる。
【0035】
塩化ビニル系壁紙の作製は、一般に原反作製工程、印刷工程、発泡工程、エンボス工程、ラミネート工程等からなり、これらの工程は必要に応じて様々に選択され、様々な順序で組み合わせられる。
原反の作製について特に制限はないが、コーティング法、ロータリースクリーン法等が用いられ、裏打ち材としては、難燃紙、普通紙、及び布等が用いられる。
コーティング法では、ペーストゾルを裏打ち材上にドクターコーター、ロールコーター、及びリップコーター等で塗工し、熱風循環炉、遠赤外炉等の加熱炉により一般に110℃〜170℃で加熱ゲル化させて原反を作製する。ロータリースクリーン法では、ペーストゾルをスクリーンメッシュを通して押し出し、裏打ち材上に転写して模様を付けて、加熱ゲル化させて原反を作製する。
【0036】
印刷方法には、ロール面に設けた凹部にインキを付け原反に転写するグラビア方式、ロール面に設けた凸部にインキを付け原反に転写するフレキソ方式等がある。更に、原反にロータリースクリーンで印刷を行っても良い。
これらの印刷に用いるインキには、必要に応じて、顔料、発泡抑制剤、発泡促進剤等が含まれている。これらは単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。
【0037】
発泡工程では、必要に応じて印刷を施した原反、もしくは印刷を行っていない原反を熱風循環炉や遠赤外炉等の加熱炉により一般に180℃〜260℃で加熱して発泡剤を分解させ、発生するガスにより発泡体を作製する。
エンボス工程には、メカニカルエンボス法、ケミカルエンボス法等がある。
メカニカルエンボス法は、発泡体に凹凸を付けたロールを機械的に押しつけて模様をつける方法であり、発泡体をいったん冷却し、巻き取ってから、別工程で発泡体を再加熱(2次加熱)して軟化させた後にエンボスする方法と、発泡後に冷却してすぐ再加熱する方法、発泡後に直ちにエンボスする方法とがある。
ケミカルエンボス法は、印刷工程で発泡抑制剤、発泡促進剤等を含んだインキを印刷し、発泡工程で同時に凹凸模様を付ける方法である。
エンボスを行わないで、発泡体表面の凹凸を出すために、ロータリースクリーンで原反にペーストゾルを転写して所望の形に凹凸を作り、その原反を加熱発泡する方法もある。これらのエンボス法は、単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。
【0038】
ラミネート工程では、必要に応じて他のシートを積層する。
発泡層と非発泡層(トップ層)からなる床材クッションフロアは、裏打ち材に発泡層用塩化ビニル系ペーストゾルを塗工し、加熱炉でゲル化させる工程、発泡層用のゲル化層に発泡抑制剤、発泡促進剤等の入っているインキや、入っていないインキ等で模様を付ける工程、必要に応じて印刷を施した発泡層用のゲル化層に非発泡層を塗工する工程、加熱炉で一般に180℃以上で発泡層を発泡させ、同時に非発泡層をゲル化させる工程等により作製される。
クッションフロアにおいても、壁紙と同様に種々の印刷方法、発泡方法、エンボス方法、及びラミネート法が用いられる。
【0039】
塩ビレザーは、塩化ビニル層単独から成るか、あるいは必要に応じて織布、編布、不織布、及び紙等の基布に塩化ビニル層を付着、一体化したもので、車や電車のシート等の内装用途、椅子、ソファー等の家具用途、ジャンパー等の衣料用途、履物用途、及び鞄用途等に用いられる。
【0040】
塩ビレザーは、ペーストゾルを基布に直接塗工してゲル化させる方法、離型紙に塗工して加熱ゲル化させ、離形紙から剥離させる方法、あるいは基布と接着させた後に離型紙と剥離させる方法等で作製される。
塩ビレザーの製造にも、必要に応じて壁紙、床材等で用いられる印刷方法、発泡方法、エンボス方法、及びラミネート方法が用いられる。
【0041】
本発明の炭酸リチウムを用いた塩化ビニル系発泡体用組成物では、原反を加熱して発泡させるときの温度が特に重要であり、この発泡温度は発泡体のセル及び表面状態等の発泡特性に大きな影響を与える。
発泡時の温度は190℃〜260℃の範囲が好ましく、190〜230℃であれば特に好ましい。190℃よりも低い温度では発泡速度が遅すぎるために不適切である。260℃を越える温度では、発泡体がセル荒れ、表面荒れ、及び発泡セルの崩壊による発泡倍率の低下を起こし、これらの発泡特性低下は2次加熱を行うと更に著しくなる傾向にある。炭酸リチウムを用いた塩化ビニル系発泡体用組成物では、発泡温度が低いほど発泡特性が良好になる傾向にあり、炭酸リチウムの比表面積が大きいほどその影響が顕著になる。特に比表面積が5〜10m2/gの炭酸リチウムでは、発泡時の温度を190〜210℃にすることが望まれる。
【0042】
上記のように、炭酸リチウムを用いた塩化ビニル系発泡体用組成物では、燃焼時と同様に発泡加工時においても塩化水素の発生量が少なくなる一方で、塩化水素捕捉の際に発生するCO2の量が多くなり、このCO2ガスは発泡体の表面を通り抜けやすく、発泡体のセル荒れ、表面荒れ、及び発泡倍率の低下を起こしやすいという問題があった。本発明では、塩化水素捕捉率と発泡特性への影響から用いる炭酸リチウムの比表面積範囲を選択し、更に発泡剤アゾジカルボンアミドの比表面積、その発泡促進剤である亜鉛化合物の添加量を特定の範囲とすることにより、得られる発泡体の発泡セルが微細で均一になり、表面状態が良好で、かつ高発泡が可能であり、加えて2次加熱の際にもセル荒れ、表面荒れ、及び発泡倍率の低下がないという発泡特性を維持しつつ、燃焼時において塩化水素の発生量を少なくすることができる。
【0043】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
尚、炭酸リチウムとアゾジカルボンアミドの比表面積の測定、塩化ビニル系発泡体の作製、塩化ビニル系発泡体の塩化水素捕捉率の測定、塩化ビニル系発泡体の特性評価、及び発泡特性判定は、以下に示す方法で行った。
【0044】
(1)炭酸リチウムとアゾジカルボンアミドの比表面積の測定方法
BET1点法に基づき、フローソーブII2300(マイクロメリティックス製)を用いて測定した。
(2)塩化ビニル系発泡体の作製方法
表1記載の基本配合(塩化ビニル樹脂、ジイソノニルフタレート、酸化チタン、希釈剤、エポキシ化大豆油、セル調整剤)に加えて、所定の炭酸リチウム、アゾジカルボンアミド、及び亜鉛化合物、必要に応じてその他の配合剤をステンレスビーカーに秤り取り、スリーワンモーター(HEIDON製)で混合・混練し、更に3本ロール(株式会社井上製作所製)に通して塩化ビニル系ペーストゾルを調製した。
遠赤外線加熱炉型シート加工機(鐘淵化学工業株式会社製)を用い、ペーストゾルをドクターコーターで難燃紙に塗布した後、加熱ゲル化させて、ゲル化層の厚みが約140μmの原反を作製した。原反を所定の温度で所定時間、熱風循環式オーブン(HIGH−TEMP OVEN PHH−100、タバイエスペック株式会社製)により加熱発泡させて、1次発泡体を作製した。更に1次発泡体を、遠赤外線加熱炉型シート加工機(鐘淵化学工業株式会社製)で再加熱(2次加熱)して2次発泡体も作製した。
尚、それぞれの実施例で用いた炭酸リチウムの比表面積、アゾジカルボンアミドの比表面積とその添加量(特に断らない場合は4.5重量部)、亜鉛化合物の種類とその添加量、それ以外の配合剤、及び加熱発泡条件については、別途記載する。
【0045】
【表1】
【0046】
(3)塩化水素捕捉率の測定方法
塩化ビニル系発泡体(1次発泡体)を白金ボードに載せて750℃で15分間燃焼させ、発生ガスを捕集し、イオンクロマトグラフ(横川アナリティカルシステムズ株式会社製)により分析し、塩化水素ガスの発生量を求め、下記式より塩化水素補足率を求めた。
【数1】
【0047】
(4)塩化ビニル系発泡体の特性評価方法
発泡倍率:
1次発泡体及び2次発泡体の厚みをノギスで測定し、以下の式から発泡倍率を求めた。
【数2】
【0048】
独泡率:
1次発泡体及び2次発泡体の独泡率を空気比較式比重計(MODEL−930、Beckman製)で測定した。独泡率が高いほど、発泡セルが微細で均一となり、また表面状態も良好となる。
白度:
1次発泡体及び2次発泡体の色調を測色色差計(型式Z−1001DP、日本電色工業株式会社製)で測定して、白度の指標となるb値を求めた。b値が高いほど、着色していると判定される。
【0049】
(5)発泡特性判定の基準
実施例では、主として、塩化ビニル系樹脂100重量部に対して発泡剤アゾジカルボンアミドを4.5重量部添加した塩化ビニル系発泡体用組成物を評価した。その場合の発泡特性は、発泡倍率と独泡率を基に下記の基準で判定した。
○: 発泡倍率7倍以上、かつ独泡率40%以上
△: 発泡倍率7倍以上、かつ独泡率40%未満
×: 発泡倍率5倍以上7倍未満
××:発泡倍率5倍未満
【0050】
アゾジカルボンアミドの添加量が4.5重量部以外の場合は、1次発泡体については、独泡率を基に下記の基準で判定した。
○:独泡率40%以上
△:独泡率40%未満
2次発泡体については、1次発泡体と2次発泡体の発泡倍率差(1次発泡体の発泡倍率−2次発泡体の発泡倍率)と独泡率を基に下記の基準で判定した。
○: 発泡倍率差0.5倍未満、かつ独泡率40%以上
△: 発泡倍率差0.5倍未満、かつ独泡率40%未満
×: 発泡倍率差0.5倍以上1.0未満
××:発泡倍率差1.0倍以下
【0051】
実施例1〜5及び比較例1
基本配合成分に加えて、それぞれ表2記載の比表面積の炭酸リチウム(CYPRUS FOOTE MINERAL COMPANY製)、比表面積1.7m2/gのアゾジカルボンアミド(商品名ビニホールAC#3M−K2、永和化成工業株式会社製)、バリウム−亜鉛系安定剤(商品名アデカスタブFL−103A、旭電化工業株式会社製)3重量部を添加し、加熱発泡条件を220℃で40秒とし、1次発泡体と2次発泡体を作製して塩化水素補足率、及び発泡特性の評価を行った。
【0052】
比較例2
炭酸リチウムは添加せずに、比表面積6.0m2/gの炭酸カルシウム(中国鉱業株式会社製)80重量部を添加する以外は、実施例1と同様にして、発泡体を作製して塩化水素捕捉率、及び発泡特性の評価を行った。
実施例1〜5及び比較例1〜2の評価結果を表2示す。
【0053】
【表2】
【0054】
表2の結果より、以下のことが分かる。
実施例1〜3に示す比表面積1.3〜4.5m2/gの炭酸リチウムを用いると、1次発泡体、2次発泡体共に発泡特性が良好であり、また塩化水素捕捉率も高くなった。実施例4、5に示すそれぞれ比表面積5.8及び8.4m2/gの炭酸リチウムを用いると、1次発泡体の発泡特性は良好であったが、2次発泡体はセル崩壊による発泡倍率の低下が起こった。ただし、1次発泡体として用いる用途には、これら実施例の発泡体も十分使用できる。
【0055】
比較例1に示す比表面積11.7m2/gの炭酸リチウムを用いると、1次発泡体ではセル荒れ、2次発泡体ではセルの崩壊による著しい発泡倍率の低下が起こり、不適であった。
比較例2に示すように、比表面積6.0m2/gの炭酸カルシウムを用いると、1次発泡体、2次発泡体共に発泡特性が良好であり、炭酸カルシウムは炭酸リチウムに比べて発泡特性に対する比表面積の制約が非常に少ないことが分かる。しかし、炭酸カルシウムを用いると、塩化水素捕捉率が著しく低くなるため、総合的には不適である。
【0056】
比較例3
基本配合成分に加えて、比表面積5.8m2/gの炭酸リチウム(実施例4と同等品、以下の実施例においても同じ)、比表面積1.7m2/gのアゾジカルボンアミド(実施例1と同等品、以下の実施例においても同じ)を添加し、亜鉛化合物は添加せずに、220℃で40秒、及び50秒間加熱発泡させて1次発泡体を作製し、更に220℃で50秒間加熱発泡させた1次発泡体は2次加熱を行い、発泡特性の評価を行った。
【0057】
実施例6〜8
表3に記載した量の2−エチルヘキサン酸亜鉛(ナカライテスク株式会社製)を添加する以外は、比較例3と同様にして発泡体を作製し、発泡特性の評価を行った。
実施例9
ジノルマルオクチルスズジラウレート(商品名アデカスタブOT−1、旭電化工業株式会社製)0.5重量部を添加する以外は実施例7と同様にして発泡体を作製し、発泡特性の評価を行った。
【0058】
実施例10
比表面積8.4m2/gの炭酸リチウムを用いる以外は実施例7と同様にして発泡体を作製し、発泡特性の評価を行った。
比較例4
比表面積11.7m2/gの炭酸リチウムを用いる以外は実施例7と同様にして発泡体を作製し、発泡特性の評価を行った。
比較例3、実施例6〜10、及び比較例4の評価結果を表3に示す。
【0059】
【表3】
【0060】
表3の結果より、以下のことが分かる。
比較例3に示すように、亜鉛化合物を用いないと、発泡速度が遅いため、発泡倍率が上がらず、不適であった。
実施例6、7に示すように、比表面積が5.8m2/gの炭酸リチウムを用いた場合、2−エチルヘキサン酸亜鉛の添加量をそれぞれ0.2及び1.0重量部にすると、1次発泡体、2次発泡体の発泡特性は共に良好となった。
実施例10に示すように、比表面積8.4m2/gの炭酸リチウムを用いた場合も、2−エチルヘキサン酸亜鉛の添加量を1重量部にすると、1次発泡体、2次発泡体の発泡特性は共に良好となった。しかし、比較例4に示す比表面積11.7m2/gの炭酸リチウムを用いると、2−エチルヘキサン酸亜鉛の添加量を1重量部にしても、1次発泡体ではセル荒れ、2次発泡体ではセル崩壊による発泡倍率の低下が起こり、不適であった。
実施例8に示すように、比表面積が5.8m2/gの炭酸リチウムを用いた場合、2−エチルヘキサン酸亜鉛の添加量を2重量部にすると、1次発泡体の発泡特性は良好であり、実用上問題はなかったが、2次発泡体では発泡倍率の低下が起こった。実施例9に示すように、ジ−n−オクチルスズジラウレートを添加すると、b値が低くなり、着色が少なくなった。
【0061】
比較例5
基本配合成分に加えて、比表面積5.8m2/gの炭酸リチウム、比表面積が0.7m2/gのアゾジカルボンアミド(商品名ビニホールAC#3、永和化成工業株式会社製)、及びバリウム−亜鉛系安定剤(実施例1と同等品、以下の実施例においても同じ)1.3重量部を添加し、220℃で40秒、及び50秒間加熱発泡させて1次発泡体を作製し、更に220℃で50秒間加熱発泡させた1次発泡体は2次加熱を行い、発泡特性の評価を行った。
【0062】
実施例11
比表面積1.1m2/gのアゾジカルボンアミド(商品名ユニホームAZL−6、大塚化学株式会社製)を用いる以外は比較例5と同様にして発泡体を作製し、発泡特性の評価を行った。
実施例12
比表面積1.7m2/gのアゾジカルボンアミドを用いる以外は比較例5と同様にして発泡体を作製し、発泡特性の評価を行った。
【0063】
実施例13
比表面積3.5m2/gのアゾジカルボンアミド(商品名ユニホームAZH−100、大塚化学株式会社製)を用いた以外は比較例5と同様にして発泡体を作製し、発泡特性の評価を行った。
実施例14
比表面積3.7m2/gのアゾジカルボンアミド(商品名ユニホームAZW、蛍光増白剤含有品、大塚化学株式会社製)を用いた以外は比較例5と同様にして発泡体を作製し、発泡特性の評価を行った。
【0064】
実施例15
比表面積4.3m2/gのアゾジカルボンアミド(商品名ユニホームAZL−30、大塚化学株式会社製)を用いた以外は比較例5と同様にして発泡体を作製し、発泡特性の評価を行った。
実施例16
比表面積6.4m2/gのアゾジカルボンアミド(商品名ユニホームAZV−50、大塚化学株式会社製)を用いた以外は比較例5と同様にして発泡体を作製し、発泡特性の評価を行った。
比較例5及び実施例11〜16の評価結果を表4に示す。
【0065】
【表4】
【0066】
表4の結果より、以下のことが分かる。
比較例5に示す比表面積0.7m2/gのアゾジカルボンアミドを用いると、発泡速度が遅いため、発泡倍率が上がらず、不適であった。
実施例11〜14に示すように、比表面積が1.1〜3.7m2/gのアゾジカルボンアミドを用いると、1次発泡体、2次発泡体の発泡特性は共に良好であった。また、実施例14に示すように、蛍光増白剤を含むアゾジカルボンアミドを用いると、b値が低くなり、着色が少なかった。
実施例15、16に示すそれぞれ比表面積4.3及び6.4m2/gのアゾジカルボンアミドを用いると、1次発泡体の発泡特性は良好であったが、2次発泡体ではセル崩壊による発泡倍率の低下が起こった。ただし、1次発泡体として用いる用途には、これら実施例の発泡体も十分使用できる。
【0067】
比較例6及び実施例17〜22
基本配合成分に加えて、比表面積5.8m2/gの炭酸リチウム、それぞれ表5に記載した比表面積のアゾジカルボンアミド、バリウム−亜鉛系安定剤3重量部を添加し、加熱発泡条件を200℃で120秒とし、1次発泡体と2次発泡体を作製して、発泡特性の評価を行った。
比較例6及び実施例17〜22の評価結果を表5に示す。
【0068】
【表5】
【0069】
表5の結果より、以下のことが分かる。
比較例6に示す比表面積0.7m2/gのアゾジカルボンアミドを用いると、発泡速度が遅いため、発泡倍率が上がらず、不適であった。
実施例17〜20に示すように、比表面積1.1〜3.7m2/gのアゾジカルボンアミドを用い、200℃で120秒間加熱発泡させると、1次発泡体、2次発泡体の発泡特性は共に良好となった。
実施例21、22に示すように、それぞれ比表面積4.3及び6.4m2/gのアゾジカルボンアミドを用いると、1次発泡体の発泡特性は良好であったが、2次発泡体では、セル崩壊による発泡倍率の低下が起こった。ただし、1次発泡体として用いる用途には、これら実施例の発泡体も十分使用できる。
【0070】
比較例7及び実施例23〜25
基本配合成分に加えて、比表面積2.6m2/gの炭酸リチウム、それぞれ表6記載の比表面積のアゾジカルボンアミド、バリウム−亜鉛系安定剤3重量部を添加し、加熱発泡条件を220℃で40秒とし、1次発泡体と2次発泡体を作製して、発泡特性の評価を行った。
比較例7、及び実施例23〜25の評価結果を表6に示す。
【0071】
【表6】
【0072】
表6の結果より、以下のことが分かる。
比較例7に示すように、比表面積0.7m2/gのアゾジカルボンアミドを用いると、発泡速度が遅いため、発泡倍率が上がらず、また2次加熱を行うとセル崩壊による発泡倍率の低下が起こり、不適であった。
実施例23〜25に示すように、比表面積が1.1〜6.4m2/gのアゾジカルボンアミドを用いると、1次発泡体、2次発泡体共に発泡特性が良好であった。
【0073】
実施例26
基本配合成分に加えて、比表面積2.6m2/gの炭酸リチウム、比表面積1.7m2/gのアゾジカルボンアミド、酸化亜鉛(正同化学株式会社製)1重量部を添加し、加熱発泡条件を220℃で40秒とし、1次発泡体と2次発泡体を作製して、発泡特性の評価を行った。
実施例27
酸化亜鉛に代えてバリウム−亜鉛系安定剤3重量部を添加し、加熱発泡条件を250℃で20秒とした以外は実施例26と同様にして発泡体を作製し、発泡特性の評価を行った。
【0074】
実施例28〜30及び比較例8
酸化亜鉛に代えて、それぞれ表7に記載した量の2−エチルヘキサン酸亜鉛を添加し、発泡条件をそれぞれ表7記載の条件とした以外は実施例26と同様にして発泡体を作製し、発泡特性の評価を行った。
実施例26〜30及び比較例8の評価結果を表7に示す。
【0075】
【表7】
【0076】
表7の結果より、以下のことが分かる。
実施例26に示す酸化亜鉛を1重量部添加した場合は、1次発泡体、2次発泡体共に発泡特性が良好であった。実施例27に示すように、バリウム−亜鉛系安定剤3重量部を添加し、250℃で20秒間加熱発泡させても1次発泡体、2次発泡体共に発泡特性が良好であった。実施例28〜30に示す2−エチルヘキサン酸亜鉛1〜4重量部を添加した場合も、1次発泡体、2次発泡体共に発泡特性が良好であった。
比較例8に示すように、2−エチルヘキサン酸亜鉛6重量部を添加すると1次発泡体ではセル荒れ、2次発泡体では、セル崩壊による発泡倍率の低下が起こり、不適であった。
【0077】
実施例31
基本配合成分に加えて、比表面積2.6m2/gの炭酸リチウム、比表面積1.7m2/gのアゾジカルボンアミド6重量部、バリウム−亜鉛系安定剤3重量部を添加し、加熱発泡条件を220℃で40秒とし、1次発泡体と2次発泡体を作製して、発泡特性の評価を行った。
実施例32
アゾジカルボンアミドを2重量部添加した以外は実施例31と同様にして発泡体を作製し、発泡特性の評価を行った。
【0078】
実施例33
表面積5.8m2/gの炭酸リチウムを用いた以外は実施例32と同様にして発泡体を作製し、発泡特性の評価を行った。
比較例9
比表面積11.7m2/gの炭酸リチウムを用いた以外は実施例32と同様にし、発泡特性の評価を行った。
実施例31〜33、及び比較例9の評価結果を表8に示す。
【0079】
【表8】
【0080】
表8の結果より、以下のことが分かる。
実施例31に示すように、比表面積2.6m2/gの炭酸リチウムを用いた場合、アゾジカルボンアミドの添加量を6重量部に増量しても、1次発泡体、2次発泡体共に発泡特性が良好であった。実施例32、33に示すように、それぞれ比表面積2.6及び5.8m2/gの炭酸リチウムを用いた場合、アゾジカルボンアミドの添加量を2重量部に減量すると、1次発泡体、2次発泡体共に発泡特性が良好であった。
比較例9に示すように、比表面積11.7m2/gの炭酸リチウムを用いた場合、アゾジカルボンアミドの添加量を2重量部に減量しても、1次発泡体ではセル荒れ、2次発泡体ではセル崩壊による発泡倍率の低下が起こり、不適であった。以上の結果が示す通り、従来は炭酸リチウムを用いた塩化ビニル系発泡体は、塩化水素捕捉率が高いものの、発泡特性に劣るため、発泡セルが微細で均一、また表面状態が良好であるような高発泡の発泡体を得ることはできなかった。本発明では、炭酸リチウムの比表面積、発泡剤アゾジカルボンアミドの比表面積、及びその発泡促進剤である亜鉛化合物の添加量を特定の範囲とすることで、発泡セルが微細で均一、表面状態が良好、及び高発泡が可能であるという優れた発泡特性を維持しつつ、火災時及び燃焼時において塩化水素の発生量が少ない塩化ビニル系発泡体用組成物を得ることができた。
Claims (7)
- 塩化ビニル系樹脂100重量部、可塑剤30〜100重量部、比表面積が1〜10m2/gの炭酸リチウム10〜120重量部、比表面積が1〜7m2/gのアゾジカルボンアミド2〜8重量部、及び亜鉛化合物0.2〜5重量部を含んでなる塩化ビニル系発泡体用組成物。
- 塩化ビニル系樹脂100重量部に対する炭酸リチウムの添加量が60〜120重量部である請求項1記載の塩化ビニル系発泡体用組成物。
- 塩化ビニル系樹脂100重量部に対する炭酸リチウムの添加量が10〜110重量部、炭酸カルシウムの添加量が10〜140重量部であり、かつ(炭酸リチウムの添加量(重量部)+炭酸カルシウムの添加量(重量部)×6/8)が60〜120重量部である請求項1記載の塩化ビニル系発泡体用組成物。
- アゾジカルボンアミドの比表面積が1〜4m2/gである請求項1〜3のいずれか1項に記載の塩化ビニル系発泡体用組成物。
- 塩化ビニル系樹脂100重量部に対する亜鉛化合物の添加量が0.2〜3重量部である請求項1〜4のいずれか1項に記載の塩化ビニル系発泡体用組成物。
- 塩化ビニル系樹脂100重量部に対する亜鉛化合物の添加量が0.2〜1.5重量部である請求項1〜4のいずれか1項に記載の塩化ビニル系発泡体用組成物。
- 亜鉛化合物が、カルボン酸亜鉛である請求項1〜6のいずれか1項に記載の塩化ビニル系発泡体用組成物。
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