JP3616867B2 - 新規ビニルベンゼン誘導体 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は緑内障の治療剤として有用な新規化合物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
緑内障とは、一般的に眼圧が上昇することにより、視機能が障害を受ける疾患である。房水の流出は、眼圧上昇と密接な関係があり、房水の流出が妨げられると眼圧上昇を引き起こす。房水の大部分は、線維柱帯からシュレム管を通って眼球外に流れ出る。この線維柱帯における房水流出の抵抗を減弱させることによって房水の流出を亢進させることができる。線維柱帯を形成している細胞(線維柱帯細胞)はスルフヒドリル基を有しているが、そのスルフヒドリル基と反応する化合物を投与することにより、線維柱帯細胞に形態的変化を起こさせ、房水流出能を亢進することによって眼圧を下げる方法が報告されている(特公平7−13013 号公報参照)。この特許には、スルフヒドリル基と反応する化合物としてフェノキシ酢酸誘導体、特にエタクリン酸が好適な化合物として開示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
線維柱帯細胞に形態的変化を起こさせることにより眼圧を下げる方法は、緑内障の治療方法として非常に興味あるものである。しかし、そのような作用機序を有する薬物の研究はまだ多くはなされておらず、新たな薬物の創製研究は、緑内障治療剤の開発において非常に興味ある課題である。
【0004】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者等は、α,β−不飽和カルボニル基を有するフェノキシ酢酸誘導体であるエタクリン酸が線維柱帯細胞に形態的変化を起こさせ、眼圧を下げる効果を有することに着目し、種々の新規化合物を合成し、それらの線維柱帯細胞の形態に及ぼす効果および眼圧下降効果を調べた。その結果、ビニルベンゼンを基本構造とし、そのベンゼン環にさらにα,β−不飽和カルボニル基を導入した新規ビニルベンゼン誘導体が優れた効果を有することを見出し、本発明を完成させた。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明は下記一般式[I]で示される化合物およびその塩類(以下特記なき限り本発明化合物と総称する)、並びにそれらを有効成分とする医薬組成物に関するものである。
【0006】
【化2】
【0007】
[式中、R1 は水素原子、低級アルキル基またはフェニル基を示し、該フェニル基は、低級アルキル基、ヒドロキシ基、低級アルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基またはフェニル基で置換されていてもよい。
【0008】
R2 およびR3 は同一かまたは異なって、水素原子または低級アルキル基を示す。
【0009】
R4 およびR5 は同一かまたは異なって、水素原子、低級アルキル基またはカルボキシル基もしくはその低級アルキルエステル基もしくはフェニル低級アルキルエステル基を示す。
【0010】
R6 はカルボキシル基またはホスホノ基もしくはそれらの低級アルキルエステル基もしくはフェニル低級アルキルエステル基を示す。
【0011】
上記で規定した基を以下に詳しく説明する。
【0012】
低級アルキル基とはメチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル、イソプロピル、イソブチル、イソペンチル、イソヘキシル、t−ブチル、3,3−ジメチルブチル等の1〜6個の炭素原子を有する直鎖または分枝のアルキルを示す。
【0013】
低級アルコキシ基とはメトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ヘキシルオキシ、イソプロポキシ、t−ブトキシ等の1〜6個の炭素原子を有する直鎖または分枝のアルコキシを示す。
【0014】
ハロゲン原子とはフッ素、塩素、臭素、ヨウ素を示す。
【0015】
低級アルキルエステルとは、メチルエステル、エチルエステル、イソプロピルエステル、ヘキシルエステル等を示す。フェニル低級アルキルエステルトとは、フェニルエステルまたはベンジルエステル、フェネチルエステル等を示す。
【0016】
本発明における塩類とは医薬として許容される塩であれば特に制限はなく、ナトリウム、カリウム、カルシウム等のアルカリ金属またはアルカリ土類金属との塩などが挙げられる。また、本発明化合物に幾何異性体または光学異性体が存在する場合には、それらの異性体も本発明の範囲に含まれる。尚、本発明化合物は溶媒和物、例えば水和物の形態をとっていてもよい。
【0017】
本発明化合物の好ましい例としては、一般式[I]で示される化合物において各基が下記のものである化合物が挙げられる;
(1a)R1 が水素原子、低級アルキル基またはフェニル基を示し、該フェニル基は低級アルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基またはフェニル基から選択される基で置換されていてもよい;および/または
(2a)R4 およびR5 が同一かまたは異なって、水素原子、低級アルキル基またはカルボキシル基を示す。
【0018】
すなわち、
・一般式[I]で示される化合物において、上記(1a)の化合物、
・一般式[I]で示される化合物において、上記(2a)の化合物、
および
・一般式[I]で示される化合物において、上記(1a)および上記(2a)の組合わせからなる化合物である。
【0019】
本発明化合物のより好ましい例としては、一般式[I]で示される化合物において各基が下記のものである化合物が挙げられる;
(1b)R1 がフェニル基を示し、該フェニル基はハロゲン原子、ニトロ基またはフェニル基から選択される基で置換されていてもよい;
(2b)R2 およびR3 がともに水素原子を示す;
(3b)R4 およびR5 が同一かまたは異なって、水素原子または低級アルキル基を示す;および/または
(4b)R6 がカルボキシル基を示す。
【0020】
すなわち、
・一般式[I]で示される化合物において、上記(1b)の化合物、
・一般式[I]で示される化合物において、上記(2b)の化合物、
・一般式[I]で示される化合物において、上記(3b)の化合物、
・一般式[I]で示される化合物において、上記(4b)の化合物、
および
・一般式[I]で示される化合物において、上記(1b)、(2b)、(3b)および(4b)の2以上の組合わせからなる化合物である。
【0021】
本発明化合物のさらに好ましい例としては、一般式[I]で示される化合物において各基が下記のものである化合物が挙げられる;
(1c)R1 がフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、4−ニトロフェニル基または4−ビフェニリル基を示す;
(2c)R2 およびR3 がともに水素原子を示す;
(3c)R4 およびR5 が同一かまたは異なって、水素原子またはメチル基を示す;および/または
(4c)R6 がカルボキシル基を示す。
【0022】
すなわち、
・一般式[I]で示される化合物において、上記(1c)の化合物、
・一般式[I]で示される化合物において、上記(2c)の化合物、
・一般式[I]で示される化合物において、上記(3c)の化合物、
・一般式[I]で示される化合物において、上記(4c)の化合物、
および
・一般式[I]で示される化合物において、上記(1c)、(2c)、(3c)および(4c)の2以上の組合わせからなる化合物である。
【0023】
本発明化合物の最も好ましい具体例としては、下記化合物およびその塩類が挙げられる。
【0024】
1) 4−[2−(2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニル)アクリロイル]桂皮酸
【化3】
【0025】
2) 4−[2−(4−ニトロフェニル)アクリロイル]桂皮酸
【化4】
【0026】
3) 4−(2−フェニルアクリロイル)桂皮酸
【化5】
【0027】
4) α−メチル−4−(2−フェニルアクリロイル)桂皮酸
【化6】
【0028】
5) β−メチル−4−(2−フェニルアクリロイル)桂皮酸
【化7】
【0029】
本発明化合物の代表的な合成経路図を下記に示す。
【0030】
【化8】
【0031】
本発明化合物[I]は、例えば前記反応経路図に示される様に種々の合成ルートにて合成できる。この合成方法をルート別に示すと次の様になる。但し、これらのルートは代表的なルートを例示するものであって、全ての方法を示すものではない。具体的合成方法の詳細は後述の実施例で説明する。
【0032】
ルートA)[II]→[XVI]→[III]→[IV]→[I]
ルートB)[II]→[XVI]→[IV]→[I]
ルートC)[V]→[VI]→[IV]→[I]
ルートD)[IV]→[VII]→[VIII]→[I]
ルートE)[II]→[XVII]→[I]
これらのルートの合成方法を以下に詳しく説明する。
【0033】
ルートA)[II]→[XVI]→[III]→[IV]→[I]
【化9】
【0034】
カルボン酸誘導体[II]を塩化チオニルで処理して酸塩化物[XVI]とし、こ れをt−ブチルエステル誘導体[IX]と塩基存在下で反応させて、式[III]で 表される化合物に導き、その化合物[III]を酸存在下でカルボン酸として脱炭 酸させ、式[IV]で表される化合物を得る。次いで、化合物[IV]を2級アミン存在下パラホルムアルデヒドとマンニッヒ反応により縮合後、脱離反応により本発明化合物[I](但し、R2 およびR3 は水素原子を示す)を得る。
【0035】
ルートB)[II]→[XVI]→[IV]→[I]
【化10】
【0036】
ルートA)と同様にカルボン酸誘導体[II]を塩化チオニルで処理して酸塩化物[XVI]とし、これをグリニャール試薬[X]と縮合させ化合物[IV]を得る 。次いで、ルートA)と同様の方法にて本発明化合物[I](但し、R2 およびR3 は水素原子を示す)を得る。
【0037】
ルートC)[V]→[VI]→[IV]→[I]
【化11】
【0038】
アルデヒド誘導体[V]をグリニャール試薬[X]と縮合させヒドロキシ誘導体[VI]に導き、そのヒドロキシ誘導体を酸化剤(例えばジメチルスルホキシド(DMSO))と反応させ、式[IV]で表される化合物を得る。次いで、ルートA)と同様の方法にて本発明化合物[I](但し、R2 およびR3 は水素原子を示す)を得る。
【0039】
ルートD)[IV]→[VII]→[VIII]→[I]
【化12】
【0040】
ルートA)、B)またはC)の方法に従って得られた化合物[IV]とカルボニル化合物[XI]を塩基存在下反応させ、式[VII]で表される化合物を得る。次いでこれをメシル酸クロライドと反応させ、メシルオキシ誘導体[VII]に導き、 そのメシルオキシ誘導体[VII]を強塩基(例えば1,8−ジアザビシクロ[5 .4.0]−7−ウンデセン(DBU))存在下で処理し本発明化合物[I]を得る。
【0041】
ルートE)[II]→[XVII]→[I]
【化13】
[式中、Xはハロゲン原子を示す。]
【0042】
カルボン酸誘導体[II]をクロロ蟻酸イソブチルエステル[XII]で処理して 混合酸無水物[XVII]とし、次いでこれからワン−ポット合成法(Tetrahedron Lett., 33, 337−340 (1992) )を用いて本発明化合物[I]を得る。すなわちトシル酸 2,2,2−トリハロエチルエステル[XIII]をn−ブチルリチウムで処理したのち、有機ホウ素化合物[XIV]と反応させて2,2−ジハロビニルボ ラン誘導体[XV]を得る。そのボラン誘導体[XV]を単離することなく、上記混合酸無水物[XVII]とヨウ化銅(I) の存在下で反応させて本発明化合物[I](但し、R2 およびR3 はハロゲン原子を示す)を得る。
【0043】
上記合成方法において、反応物質が分子内にヒドロキシ基を有する場合、それらの基は必要に応じて適当な保護基で保護していてもよく、またそれらの保護基は反応後常法により除去することもできる。また、反応物質が分子内にカルボキシル基またはホスホノ基を有する場合、カルボキシル基またはホスホノ基は必要に応じてエステル化してもよく、またそれらのエステルは加水分解によりカルボン酸またはホスホン酸にすることもできる。
【0044】
本発明化合物は文献未知の新規化合物であるが、その化学構造的特徴は、ベンゼン環の置換基として1個の二重結合を有する化合物であるビニルベンゼンを基本構造とし、そのベンゼン環にさらにα,β−不飽和カルボニル基を置換したところにある。
【0045】
従来の技術の項で記載したように、エタクリン酸は線維柱帯細胞に形態的変化を起こさせ、房水流出能を亢進することによって眼圧を下げる効果があることが報告されている(特公平7−13013 )。エタクリン酸は、α,β−不飽和カルボニル基を有するフェノキシ酢酸誘導体であるが、本発明者等はこのエタクリン酸の化学構造に着目し、鋭意研究した結果、そのベンゼン環の置換基としてさらに1個の二重結合を導入すると、より優れた効果を有する新規化合物が得られることを見出した。
【0046】
薬物の投与方法としては、活性体そのものを投与する方法と共に、生体内で分解し、活性体に変換される形、即ちプロドラッグの形で投与する方法も汎用されている。本発明化合物においても、分子中にカルボン酸またはホスホン酸を含むが、本発明化合物はカルボン酸またはホスホン酸の形態で投与できると共に、加水分解を受けカルボン酸またはホスホン酸に変換され得るエステルの形態でも投与することができる。また、分子中にヒドロキシ基を含む場合、ヒドロキシ基は適切な保護基で保護された形態で投与されてもよい。
【0047】
本発明化合物の有用性を調べるべく、本発明化合物の線維柱帯細胞の形態に及ぼす作用および眼圧に及ぼす影響を検討した。詳細については後述の薬理試験の項で示すが、本発明化合物を添加することによる線維柱帯細胞の形態変化を画像解析により検討した結果、本発明化合物は線維柱帯細胞に対し優れた細胞形態変化作用を示した。
【0048】
さらに、本発明化合物の眼圧下降作用を直接検討した。即ち、正常動物の前房内への注入投与およびレーザー誘発高眼圧動物モデルへの点眼投与による眼圧への影響を検討した結果、本発明化合物は優れた眼圧下降作用を示した。
【0049】
本発明化合物は主として非経口投与されるが、経口でも投与することができる。投与剤型としては、点眼剤、注射剤、錠剤、カプセル剤、顆粒剤等が挙げられ、それらの製剤は汎用技術を用いて調製することができる。例えば、点眼剤であれば、塩化ナトリウム、濃グリセリンなどの等張化剤、リン酸ナトリウム、酢酸ナトリウムなどの緩衝化剤、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート、ステアリン酸ポリオキシ40,ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油などの界面活性剤、クエン酸ナトリウム、エデト酸ナトリウムなどの安定化剤、塩化ベンザルコニウム、パラベンなどの防腐剤などを必要に応じて用い製剤化することができ、pHは眼科製剤に許容される範囲内にあればよいが、4〜8の範囲が好ましい。また、錠剤、カプセル剤、顆粒剤等の経口剤は、必要に応じて、乳糖、デンプン、結晶セルロース、植物油等の増量剤、ステアリン酸マグネシウム、タルクなどの滑沢剤、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドンなどの結合剤、カルボキシメチルセルロースカルシウムなどの崩壊剤、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、マクロゴール、シリコン樹脂などのコーティング剤、ゼラチン皮膜剤を用いて製剤化することができる。
【0050】
本発明化合物の投与量は症状、年令、剤型等によって適宜選択できるが、点眼剤であれば0.001〜3%(w/v)のものを1日1回〜数回点眼すればよく、経口剤であれば通常1日当り1mg〜1000mgを1回または数回に分けて投与すればよい。
【0051】
以下に、本発明化合物の製造例、製剤例および薬理試験の結果を示すが、これらの例は本発明をよりよく理解するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0052】
【実施例】
[製造例]
参考例1
(2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニル)酢酸 t−ブチルエステル(参考化合物1−1)
【化14】
【0053】
窒素雰囲気下、ドライアイスで冷却しながら、イソブテン(4ml)に(2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニル)酢酸(3.0g)、エーテル(1ml)および濃硫酸(0.07ml)を加え、耐圧管中、室温で3日間撹拌する。10%炭酸水素ナトリウム水溶液と氷の混合物に、ドライアイスで冷却した反応液を加え撹拌する。エーテルを加えて抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮し、標記化合物(参考化合物1−1)3.10g(83%)を得る。
【0054】
(参考化合物1−1)
IR(Film,cm−1)2983,2940,1740,1658,1510,1371,1307,1159,981
【0055】
参考例1と同様の方法を用いて以下の化合物が得られる。
【0056】
・(4−ニトロフェニル)酢酸 t−ブチルエステル(参考化合物1−2)
IR(Film,cm−1)2979,1731,1607,1521,1369,1347,1231,1147
【0057】
・(4−ビフェニリル)酢酸 t−ブチルエステル(参考化合物1−3)
mp 44.5〜48.5℃
IR(KBr,cm−1)3028,2976,1730,1602,1486
【0058】
・(4−トリル)酢酸 t−ブチルエステル(参考化合物1−4)
【0059】
・(4−フルオロフェニル)酢酸 t−ブチルエステル(参考化合物1−5)
【0060】
・(4−クロロフェニル)酢酸 t−ブチルエステル(参考化合物1−6)
【0061】
参考例2
4−カルボキシ桂皮酸 エチルエステル(参考化合物2−1)
【化15】
【0062】
4−ホルミル安息香酸(10g)のピリジン(68ml)溶液にマロン酸エチルモノカリウム塩(23g)、p−トルエンスルホン酸一水和物(25g)およびピペリジン(0.99ml)を加え、混合液を徐々に加熱したのち120℃で1.5時間撹拌する。氷冷下、反応液に2N塩酸を加えて酸性とし、析出物を濾取することにより標記化合物(参考化合物2−1)11.7g(79%)を結晶として得る。
【0063】
(参考化合物2−1)
mp 194.5〜197.0℃
IR(KBr,cm−1)2981,1711,1687,1609,1569,1511,847
【0064】
参考例2と同様の方法を用いて以下の化合物が得られる。
【0065】
・4−カルボキシ−α−メチル桂皮酸 エチルエステル(参考化合物2−2)
mp 145〜149℃
IR(KBr,cm−1)2985,1707,1678,1425,1293,1259,1203,1125,771
【0066】
・4−カルボキシ桂皮酸 t−ブチルエステル(参考化合物2−3)
mp 210℃(分解)
IR(KBr,cm−1)2979,1707,1678,1639,1608,1567,1294,1254,1202,1156,964
【0067】
参考例3
4−カルボキシ−β−メチル桂皮酸 エチルエステル(参考化合物3−1)
【化16】
【0068】
1) 4−アセチル安息香酸(3.9g)の無水塩化メチレン(120ml)溶液に、氷冷下、4−ジメチルアミノピリジン(1.5g)、t−ブチルアルコール(4.6ml)、N−メチルモルホリン(3.4ml)および1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド 塩酸塩(6.0g)を加え、氷冷下6時間、水冷下一晩撹拌する。反応液を減圧濃縮し、水を加えてエーテルで抽出する。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮する。残留物をシリカゲルカラムクロマトで精製し、4−アセチル安息香酸 t−ブチルエステル 3.13g(59%)を結晶として得る。
【0069】
mp 57.5〜58.8℃
IR(KBr,cm−1)3350,2986,2934,1708,1682,1503
【0070】
2) 窒素雰囲気下、水素化ナトリウム(60%、油性)(220mg)の無水テトラヒドロフラン(15ml)溶液に氷冷しながらホスホノ酢酸トリエチルエステル(0.98ml)の無水テトラヒドロフラン(4ml)溶液を滴下し、氷冷下10分間撹拌する。ついで4−アセチル安息香酸 t−ブチルエステル(1.0g)の無水テトラヒドロフラン(4ml)溶液を滴下し、室温で一晩撹拌する。氷冷下、反応液にエーテルを加え抽出する。有機層を10%クエン酸水溶液、水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮する。残留物をシリカゲルカラムクロマトで精製し、4−(t−ブトキシカルボニル)−β−メチル桂皮酸エチルエステル 0.76g(58%)を得る。
【0071】
IR(Film,cm−1)2979,2934,1713,1631,1567,1455,1169,1115
【0072】
3) 4−(t−ブトキシカルボニル)−β−メチル桂皮酸 エチルエステル(755mg)を4N塩化水素酢酸エチル溶液(6.5ml)に溶解し、室温で18時間撹拌する。反応液を減圧濃縮後、イソプロピルエーテルを加え析出物を濾取し、標記化合物(参考化合物3−1)550mg(90%)を結晶として得る。
【0073】
(参考化合物3−1)
mp 160.0〜161.7℃
IR(KBr,cm−1)2979,2668,2543,1712,1689,1626,1565,1424,1367
【0074】
参考例4
2−(4−ホルミルフェニル)マレイン酸 ジエチルエステル(参考化合物4−1)
【化17】
【0075】
1) 窒素雰囲気下、シュウ酸ジエチル(6.5g)の無水テトラヒドロフラン(41ml)溶液に、氷冷下、臭化4−トリルマグネシウムの1.0Mエーテル溶液(20.5ml)を滴下する。滴下終了5分後に、室温で1.5時間撹拌する。反応液に1N塩酸を加え、エーテルで抽出する。有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後減圧濃縮する。得られる残留物をシリカゲルカラムクロマトで精製し、4−トリルグリオキシル酸 エチルエステル 2.99g(76%)を得る。
【0076】
IR(Film,cm−1)2984,1736,1684,1606,1307,1203,1176,1015
【0077】
2) 窒素雰囲気下、水素化ナトリウム(60%、油性)(676mg)の無水テトラヒドロフラン(30ml)懸濁溶液に、氷冷下、エトキシカルボニルメチルホスホン酸 ジエチルエステル(3.3g)の無水テトラヒドロフラン(20ml)溶液を滴下し、さらに4−トリルグリオキシル酸 エチルエステル(2.96g)の無水テトラヒドロフラン(22ml)溶液を滴下する。室温で30分間撹拌したのち、反応液に10%クエン酸水溶液を加え、エーテルで抽出する。有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後減圧濃縮する。得られる残留物をシリカゲルカラムクロマトで精製し、2−(4−トリル)マレイン酸 ジエチルエステル 3.57g(88%)を得る。
【0078】
IR(Film,cm−1)2982,1732,1714,1623,1608,1372,1288,1205,1176,1033
【0079】
3) 2−(4−トリル)マレイン酸 ジエチルエステル(1.5g)の四塩化炭素(29ml)溶液にN−ブロモこはく酸イミド(3.1g)および2,2′−アゾビス(イソブチロニトリル)(45mg)を加え2日間加熱還流する。反応液を減圧濃縮し、10%炭酸水素ナトリウム水溶液を加えエーテルで抽出する。有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮する。残留物をシリカゲルカラムクロマトで精製し、2−[4−(ジブロモメチル)フェニル]マレイン酸 ジエチルエステル 1.15g(56%)を結晶として得る。
【0080】
mp 89.0〜92.5℃
IR(KBr,cm−1)3029,2991,1714,1626,1372,1342,1295,1186,1026,847
【0081】
4) 窒素雰囲気下、2−[4−(ジブロモメチル)フェニル]マレイン酸 ジエチルエステル(500mg)の2−メトキシエタノール(15ml)溶液に、硝酸銀(607mg)の水(5ml)溶液を加え、95℃に加熱しながら25分間撹拌する。氷冷下、反応液に0.1N塩酸を加え、酢酸エチルで抽出する。有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後減圧濃縮する。残留物をシリカゲルカラムクロマトで精製し、標記化合物(参考化合物4−1)280mg(85%)を得る。
【0082】
(参考化合物4−1)
IR(Film,cm−1)2983,1722,1626,1372,1343,1283,1209,1180
【0083】
参考例5
(E)−2−(4−カルボキシフェニル)ビニルホスホン酸 ジエチルエステル(参考化合物5−1)
【化18】
【0084】
1) テレフタルアルデヒド酸(5.1g)の無水ジメチルホルムアミド(110ml)溶液に無水炭酸カリウム(4.7g)を加え室温で10分間撹拌したのち、ヨウ化メチル(2.5ml)を加え一晩撹拌する。反応液に水を加え、酢酸エチルで抽出する。有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後減圧濃縮する。得られる残留物をシリカゲルカラムクロマトで精製し、4−ホルミル安息香酸 メチルエステル4.7g(84%)を結晶として得る。
【0085】
mp 58.9〜60.5℃
IR(KBr,cm−1)3021,1728,1684,1578,1435,1392
【0086】
2) 窒素雰囲気下、ドライアイスで冷却しながら、リチウム ビス(トリメチルシリル)アミドの1.0Mテトラヒドロフラン溶液(17ml)を無水テトラヒドロフラン(81ml)で希釈したのち、メチレンビス(ホスホン酸) テトラエチルエステル(4.6g)の無水テトラヒドロフラン(8ml)溶液を滴下する。ドライアイス冷却下30分間撹拌したのち、4−ホルミル安息香酸 メチルエステル(2.64g)の無水テトラヒドロフラン(12ml)溶液を滴下する。ドライアイス冷却下で1.5時間、さらに氷冷下で2.5時間撹拌する。反応液に酢酸エチルを加え、有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後減圧濃縮する。得られる析出物を濾取し、(E)−2−[4−(メトキシカルボニル)フェニル]ビニルホスホン酸 ジエチルエステル4.1g(86%)を結晶として得る。
【0087】
mp 60〜65℃
IR(KBr,cm−1)3003,1720,1620,1568,1433,1236
【0088】
3) (E)−2−[4−(メトキシカルボニル)フェニル]ビニルホスホン酸ジエチルエステル(4.0g)をエタノール(26ml)−テトラヒドロフラン(13ml)混液に溶解したのち、1N水酸化ナトリウム水溶液(15ml)を加え室温で24時間撹拌する。反応液に10%クエン酸水溶液を加えて酸性とし酢酸エチルで抽出する。有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後減圧濃縮する。得られる析出物を濾取し、標記化合物(参考化合物5−1)3.4g(89%)を結晶として得る。
【0089】
(参考化合物5−1)
mp 135.0〜136.5℃
IR(KBr,cm−1)2990,1707,1570,1480,1240
【0090】
実施例1
4−[(2RS)−2−(t−ブトキシカルボニル)−2−(2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニル)アセチル]桂皮酸 エチルエステル(化合物1−1)
【化19】
【0091】
窒素雰囲気下、4−カルボキシ桂皮酸 エチルエステル(参考化合物2−1、1.7g)のクロロホルム(5ml)溶液に塩化チオニル(2.8ml)を滴下したのち、ジメチルホルムアミド(1滴)を加え30分間加熱還流する。反応液を減圧濃縮し酸クロライドを得る。
【0092】
窒素雰囲気下、(2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニル)酢酸 t−ブチルエステル(参考化合物1−1、2.17g)のテトラヒドロフラン(20ml)溶液に、ドライアイスで冷却しながらカリウム ビス(トリメチルシリル)アミドの0.5Mトルエン溶液(18ml)を滴下する。5分後、さらに上記酸クロライドのテトラヒドロフラン(20ml)溶液を滴下する。滴下終了20分後に、室温で1.5時間撹拌する。反応液に10%クエン酸水溶液を加え、エーテルで抽出する。有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後減圧濃縮する。得られる残留物をシリカゲルカラムクロマトで精製し、標記化合物(化合物1−1)526mg(12%)を結晶として得る。
【0093】
(化合物1−1)
mp 87.5〜88.5℃
IR(KBr,cm−1)2979,1716,1637,1522,1496,1373,1177
【0094】
実施例1と同様の方法を用いて以下の化合物が得られる。
【0095】
・4−[(2RS)−2−(t−ブトキシカルボニル)−2−(4−ニトロフェニル)アセチル]桂皮酸 エチルエステル(化合物1−2)
IR(Film,cm−1)2980,1715,1639,1603,1523,1368,1348,1278,1148
【0096】
・4−[(2RS)−2−(t−ブトキシカルボニル)−2−(4−ビフェニリル)アセチル]桂皮酸 エチルエステル(化合物1−3)
IR(Film,cm−1)2980,1713,1639,1603,1486
【0097】
・4−[(2RS)−2−(t−ブトキシカルボニル)−2−(4−トリル)アセチル]桂皮酸 エチルエステル(化合物1−4)
【0098】
・4−[(2RS)−2−(t−ブトキシカルボニル)−2−(4−フルオロフェニル)アセチル]桂皮酸 エチルエステル(化合物1−5)
【0099】
・4−[(2RS)−2−(t−ブトキシカルボニル)−2−(4−クロロフェニル)アセチル]桂皮酸 エチルエステル(化合物1−6)
【0100】
実施例2
4−[(2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニル)アセチル]桂皮酸(化合物2−1)
【化20】
【0101】
4−[(2RS)−2−(t−ブトキシカルボニル)−2−(2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニル)アセチル]桂皮酸 エチルエステル(化合物1−1、500mg)のジオキサン(2ml)溶液を耐圧管に入れ、濃塩酸(2ml)を加える。130℃に加熱しながら4時間撹拌する。反応液を氷冷して析出物を濾取し、標記化合物(化合物2−1)256mg(70%)を結晶として得る。
【0102】
(化合物2−1)
mp 228〜234℃
IR(KBr,cm−1)2975,1673,1526,1502,1307,1280
【0103】
実施例2と同様の方法を用いて以下の化合物が得られる。
【0104】
・4−[(4−ニトロフェニル)アセチル]桂皮酸(化合物2−2)
mp 247〜251℃
IR(KBr,cm−1)2895,1683,1628,1601,1518,1343,1228,991
【0105】
・4−[(4−ビフェニリル)アセチル]桂皮酸(化合物2−3)
mp 250℃以上
IR(KBr,cm−1)3030,1682,1631,1600,1558,1487
【0106】
・4−[(4−トリル)アセチル]桂皮酸(化合物2−4)
【0107】
・4−[(4−フルオロフェニル)アセチル]桂皮酸(化合物2−5)
【0108】
・4−[(4−クロロフェニル)アセチル]桂皮酸(化合物2−6)
【0109】
実施例3
4−(フェニルアセチル)桂皮酸 エチルエステル(化合物3−1)
【化21】
【0110】
窒素雰囲気下、4−カルボキシ桂皮酸 エチルエステル(参考化合物2−1、2.0g)のクロロホルム(4ml)溶液に塩化チオニル(3.3ml)を滴下したのち、ジメチルホルムアミド(1滴)を加え30分間加熱還流する。反応液を減圧濃縮し、酸クロライドの残留物を得る。窒素雰囲気下、残留物をテトラヒドロフラン(30ml)に溶解しドライアイスで冷却する。塩化ベンジルマグネシウムの2.0Mテトラヒドロフラン溶液(4.5ml)を滴下する。滴下終了12分後ドライアイス冷却下、反応液に10%クエン酸水溶液を加えたのち室温とし、エーテルで抽出する。有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後減圧濃縮する。得られる残留物をシリカゲルカラムクロマトで精製し、標記化合物(化合物3−1)685mg(26%)を結晶として得る。
【0111】
(化合物3−1)
mp 110.5〜111.3℃
IR(KBr,cm−1)2986,1690,1410,1330,1206,970,704
【0112】
実施例3と同様の方法を用いて以下の化合物が得られる。
【0113】
・4−(n−ブチリル)桂皮酸 エチルエステル(化合物3−2)
mp 51.7〜53.9℃
IR(KBr,cm−1)2963,1770,1680,1603,1561,1472,1371,999
【0114】
・α−メチル−4−(フェニルアセチル)桂皮酸 エチルエステル(化合物3−3)
mp 35.5〜37.8℃
IR(KBr,cm−1)2983,1706,1683,1602,1452,1254,1112
【0115】
・β−メチル−4−(フェニルアセチル)桂皮酸 エチルエステル(化合物3−4)
mp 81.7〜83.0℃
IR(KBr,cm−1)3040,2982,1713,1683,1624,1601,1478,1268,1225
【0116】
・4−プロピオニル桂皮酸 エチルエステル(化合物3−5)
【0117】
・4−イソバレリル桂皮酸 エチルエステル(化合物3−6)
【0118】
・4−アセチル桂皮酸 エチルエステル(化合物3−7)
【0119】
実施例4
4−(フェニルアセチル)桂皮酸(化合物4−1)
【化22】
【0120】
窒素雰囲気下、4−(フェニルアセチル)桂皮酸 エチルエステル(化合物3−1、675mg)のエタノール(6ml)−テトラヒドロフラン(6ml)混液に1N水酸化ナトリウム水溶液(2.3ml)および水(4ml)を加え、室温で6.5時間撹拌する。反応液に1N塩酸を加えて酸性とし、酢酸エチルで抽出する。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後減圧濃縮する。得られる析出物を濾取し、標記化合物(化合物4−1)553mg(91%)を結晶として得る。
【0121】
(化合物4−1)
mp 232〜236℃(分解)
IR(KBr,cm−1)3036,2589,1684,1630,1337,1230,993
【0122】
実施例4と同様の方法を用いて以下の化合物が得られる。
【0123】
・4−(n−ブチリル)桂皮酸(化合物4−2)
mp 204〜210℃(分解)
IR(KBr,cm−1)2965,1689,1630,1601,1560,992
【0124】
・α−メチル−4−(フェニルアセチル)桂皮酸(化合物4−3)
mp 148.0〜149.3℃
IR(KBr,cm−1)2968,1685,1621,1409,1266,728
【0125】
・β−メチル−4−(フェニルアセチル)桂皮酸(化合物4−4)
mp 143〜149℃
IR(KBr,cm−1)2898,1684,1623,1559,1499
【0126】
・4−プロピオニル桂皮酸(化合物4−5)
【0127】
・4−イソバレリル桂皮酸(化合物4−6)
【0128】
・4−アセチル桂皮酸(化合物4−7)
【0129】
実施例5
2−[4−[(1RS)−1−ヒドロキシ−2−フェニルエチル]フェニル]マレイン酸 ジエチルエステル(化合物5−1)
【化23】
【0130】
窒素雰囲気下、2−(4−ホルミルフェニル)マレイン酸 ジエチルエステル(参考化合物4−1、250mg)の無水テトラヒドロフラン(4.5ml)溶液にドライアイス冷却下撹拌しながら、塩化ベンジルマグネシウムの2.0Mテトラヒドロフラン溶液(0.45ml)を滴下する。滴下終了10分後、室温で1時間撹拌する。反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、エーテルで抽出する。有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後減圧濃縮する。得られる残留物をシリカゲルカラムクロマトで精製し、標記化合物(化合物5−1)100mg(30%)を得る。
【0131】
(化合物5−1)
IR(Film,cm−1)3512,2983,1719,1624,1372,1342,1290,1180,1032,701
【0132】
実施例6
2−[4−(フェニルアセチル)フェニル]マレイン酸 ジエチルエステル(化合物6−1)
【化24】
【0133】
2−[4−[(1RS)−1−ヒドロキシ−2−フェニルエチル]フェニル]マレイン酸 ジエチルエステル(化合物5−1、280mg)のジメチルスルホキシド(3ml)溶液に室温で撹拌しながらトリエチルアミン(0.53ml)を加え、さらに三酸化硫黄ピリジンコンプレックス(484mg)のジメチルスルホキシド(5ml)溶液を加える。室温で2.5時間撹拌したのち、反応液に0.1N塩酸(50ml)を加えエーテルで抽出する。有機層を水、飽和食塩水で洗浄、無水硫酸マグネシウムで乾燥後減圧濃縮する。析出物を濾取し、標記化合物(化合物6−1)85mg(31%)を結晶として得る。
【0134】
(化合物6−1)
mp 111〜120℃
IR(KBr,cm−1)2985,1716,1691,1627,1412,1374,1183,1024,728
【0135】
実施例7
2−[4−(フェニルアセチル)フェニル]マレイン酸(化合物7−1)
【化25】
【0136】
2−[4−(フェニルアセチル)フェニル]マレイン酸 ジエチルエステル(化合物6−1、80mg)のジオキサン(3ml)溶液を耐圧管に入れ、濃塩酸(2ml)を加えたのち120℃で1時間撹拌する。反応液を減圧濃縮し、標記化合物(化合物7−1)90mg(定量的)を得る。
【0137】
実施例8
4−[2−(2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニル)アクリロイル]桂皮酸(化合物8−1)
【化26】
【0138】
4−[(2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニル)アセチル]桂皮酸(化合物2−1、230mg)のジオキサン(13ml)溶液を耐圧管に入れ、パラホルムアルデヒド(78mg)、ジメチルアミン塩酸塩(210mg)、酢酸(1滴)および無水硫酸マグネシウム(適量)を加えて130℃に加熱しながら一晩撹拌する。氷冷下、反応液に0.1N塩酸を加えて酸性とし酢酸エチルで抽出する。有機層を飽和食塩水で洗浄、無水硫酸マグネシウムで乾燥後減圧濃縮する。析出物を濾取し、標記化合物(化合物8−1)222mg(93%)を結晶として得る。
【0139】
(化合物8−1)
mp 218〜220℃
IR(KBr,cm−1)2837,1691,1668,1518,1494,1283,994
【0140】
実施例8と同様の方法を用いて以下の化合物が得られる。
【0141】
・4−[2−(4−ニトロフェニル)アクリロイル]桂皮酸(化合物8−2)
mp 224.2〜225.5℃
IR(KBr,cm−1)2841,1689,1656,1508,1426,1344,1313,848
【0142】
・4−[2−(4−ビフェニリル)アクリロイル]桂皮酸(化合物8−3)
mp 239℃(分解)
IR(KBr,cm−1)2989,1688,1655,1632,1601,1562,982
【0143】
・4−[2−(4−トリル)アクリロイル]桂皮酸(化合物8−4)
【0144】
・4−[2−(4−フルオロフェニル)アクリロイル]桂皮酸(化合物8−5)
【0145】
・4−[2−(4−クロロフェニル)アクリロイル]桂皮酸(化合物8−6)
【0146】
・4−(2−フェニルアクリロイル)桂皮酸(化合物8−7)
mp 175.3〜177.8℃
IR(KBr,cm−1)2969,1690,1667,1631,1600,1561,1493,1412,914,858
【0147】
・4−(2−エチルアクリロイル)桂皮酸(化合物8−8)
mp 174.5〜175.0℃
IR(KBr,cm−1)2968,1689,1650,1627,1601,1561,989
【0148】
・α−メチル−4−(2−フェニルアクリロイル)桂皮酸(化合物8−9)
mp 134.5〜136.5℃
IR(KBr,cm−1)2966,1666,1600,1414,1265,1215,980
【0149】
・β−メチル−4−(2−フェニルアクリロイル)桂皮酸(化合物8−10)
mp 116.2〜118.8℃
IR(KBr,cm−1)2924,1684,1627,1600,1495,1415,981,855
【0150】
・4−(2−メチルアクリロイル)桂皮酸(化合物8−11)
【0151】
・4−(2−イソプロピルアクリロイル)桂皮酸(化合物8−12)
【0152】
・4−アクリロイル桂皮酸(化合物8−13)
【0153】
・2−[4−(2−フェニルアクリロイル)フェニル]マレイン酸(化合物8−14)
IR(Film,cm−1)2928,1769,1718,1622,1416,1226,1123,759
【0154】
実施例9
4−[(2RS,3RS)−3−ヒドロキシ−2−フェニルブチリル]桂皮酸
エチルエステル(化合物9−1)
【化27】
【0155】
4−(フェニルアセチル)桂皮酸 エチルエステル(化合物3−1、2.0g)をエタノール(14ml)−テトラヒドロフラン(34ml)混液に溶解し、水(14ml)、アセトアルデヒド(1.9ml)および炭酸カリウム(1.9g)を加え、室温で3時間撹拌する。反応液に1N塩酸を加えて酸性とし、酢酸エチルで抽出する。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後減圧濃縮する。得られる残留物をシリカゲルカラムクロマトで精製し、標記化合物(化合物9−1)1.75g(76%)を得る。
【0156】
(化合物9−1)
IR(Film,cm−1)3484,2977,1712,1677,1637,1603,1562,1492,1312,1209,1177
【0157】
実施例10
4−[(2RS,3RS)−3−(メシルオキシ)−2−フェニルブチリル]桂皮酸 エチルエステル(化合物10−1)
【化28】
【0158】
4−[(2RS,3RS)−3−ヒドロキシ−2−フェニルブチリル]桂皮酸エチルエステル(化合物9−1、1.70g)の無水塩化メチレン(25ml)溶液に、氷冷下、トリエチルアミン(1.05ml)およびメシルクロライド(0.6ml)を加え、2.5時間撹拌する。反応液に10%クエン酸水溶液を加えて酸性とし、エーテルで抽出する。有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後減圧濃縮し、標記化合物(化合物10−1)1.75g(84%)を得る。
【0159】
(化合物10−1)
IR(Film,cm−1)3030,1713,1681,1353,1174,906
【0160】
実施例11
4−[(E,Z)−2−フェニル−2−ブテノイル]桂皮酸 エチルエステル(化合物11−1)
【化29】
【0161】
4−[(2RS,3RS)−3−(メシルオキシ)−2−フェニルブチリル]桂皮酸 エチルエステル(化合物10−1、800mg)のテトラヒドロフラン(10ml)溶液に1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン(0.32ml)を加え、室温で1時間撹拌する。反応液に10%クエン酸水溶液を加えて酸性とし、エーテルで抽出する。有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後減圧濃縮する。得られる油状物をシリカゲルカラムクロマトで精製し、標記化合物(化合物11−1)535mg(87%)を得る。
【0162】
(化合物11−1)
IR(Film,cm−1)2980,1713,1639,1602,1366,1312,1270,1204,1175
【0163】
実施例12
4−[(E,Z)−2−フェニル−2−ブテノイル]桂皮酸(化合物12−1)
【化30】
【0164】
4−[(E,Z)−2−フェニル−2−ブテノイル]桂皮酸 エチルエステル(化合物11−1、260mg)をテトラヒドロフラン(4ml)−エタノール(4ml)混液に溶解し、水(3ml)および1N水酸化ナトリウム水溶液(0.32ml)を加え、室温で4.5時間撹拌する。反応液に1N塩酸を加えて酸性とし、酢酸エチルで抽出する。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後減圧濃縮する。析出物を濾取し、標記化合物(化合物12−1)115mg(49%)を結晶として得る。
【0165】
(化合物12−1)
mp 153〜156℃
IR(KBr,cm−1)2974,1690,1630,1425,1265,700
【0166】
実施例13
4−(3,3−ジフルオロ−2−フェニルアクリロイル)桂皮酸 t−ブチルエステル(化合物13−1)
【化31】
【0167】
窒素雰囲気下、4−カルボキシ桂皮酸 t−ブチルエステル(参考化合物2−3、1.9g)の無水テトラヒドロフラン(38ml)溶液に、氷−食塩寒剤冷却下、N−メチルモルホリン(0.29ml)を加えたのち、クロロ蟻酸 イソブチルエステル(0.99ml)を滴下し、16分間撹拌し混合酸無水物を得る。
【0168】
窒素雰囲気下、ドライアイスで冷却しながらトシル酸 2,2,2−トリフルオロエチルエステル(1.95g)の無水テトラヒドロフラン(18ml)溶液にn−ブチルリチウムの1.6Mヘキサン溶液(10ml)を滴下後35分間撹拌する。次いで、ドライアイス冷却下、トリフェニルボラン(2.0g)の無水テトラヒドロフラン(20ml)溶液を滴下後1時間、さらに室温で3時間撹拌する。氷冷下、反応液にヘキサメチルホスホルアミド(12ml)およびヨウ化銅(I)(2.9g)を加え、45分間撹拌したのち、上記混合酸無水物溶液を滴下し、室温で一晩撹拌する。反応液に10%クエン酸水溶液を加えて酸性とし、エーテル抽出する。有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後減圧濃縮する。得られる油状物をシリカゲルカラムクロマトで精製し、標記化合物(化合物13−1)442mg(16%)を得る。
【0169】
(化合物13−1)
mp 88〜94℃
IR(KBr,cm−1)3006,1740,1709,1637,1608,1569,1271,1192,1151
【0170】
実施例14
4−(3,3−ジフルオロ−2−フェニルアクリロイル)桂皮酸(化合物14−1)
【化32】
【0171】
窒素雰囲気下、4−(3,3−ジフルオロ−2−フェニルアクリロイル)桂皮酸 t−ブチルエステル(化合物13−1、302mg)を4N塩化水素ジオキサン溶液(2.45ml)に溶解し、室温で19.5時間撹拌する。反応液にエーテルを加え析出物を濾取し、標記化合物(化合物14−1)116mg(45%)を得る。
【0172】
(化合物14−1)
mp 235〜248℃
IR(KBr,cm−1)2833,1724,1689,1631,1605,1569,1278,922
【0173】
実施例15
(E)−2−[4−(フェニルアセチル)フェニル]ビニルホスホン酸 モノエチルエステル(化合物15−1)
【化33】
【0174】
(E)−2−(4−カルボキシフェニル)ビニルホスホン酸 ジエチルエステル(参考化合物5−1、3.27g)のクロロホルム(5ml)溶液に塩化チオニル(5.0ml)を滴下したのち、ジメチルホルムアミド(1滴)を加え24時間加熱還流する。反応液を減圧濃縮し、酸クロライドを得る。
【0175】
窒素雰囲気下、活性化亜鉛(1.6g)および塩化パラジウム(II)−ビス(トリフェニルホスフィン)錯体(0.89g)を無水1,2−ジメトキシエタン(33ml)に加え、氷冷下、臭化ベンジル(1.5ml)を撹拌しながら滴下する。さらに上記酸クロライドの無水1,2−ジメトキシエタン(25ml)溶液を滴下後、室温で3日間撹拌する。反応液をセライト濾過し、濾液を減圧濃縮する。1N塩酸を加え、酢酸エチルで抽出する。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後減圧濃縮する。得られる残留物をシリカゲルカラムクロマトで精製し、標記化合物(化合物15−1)1.96g(52%)を得る。
【0176】
(化合物15−1)
IR(Film,cm−1)3030,1681,1603,1561,1496,1454,1269,1200,945
【0177】
実施例16
(E)−2−[4−(2−フェニルアクリロイル)フェニル]ビニルホスホン酸 モノエチルエステル(化合物16−1)
【化34】
【0178】
(E)−2−[4−(フェニルアセチル)フェニル]ビニルホスホン酸 モノエチルエステル(化合物15−1、1.96g)のジオキサン(11ml)溶液を耐圧管に入れ、パラホルムアルデヒド(0.66g)、ジメチルアミン塩酸塩(1.8g)、酢酸(1滴)および無水硫酸マグネシウム(適量)を加えて130℃に加熱しながら5時間撹拌する。氷冷下、反応液に1N塩酸を加えて酸性とし酢酸エチルで抽出する。有機層を飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥後減圧濃縮する。得られる油状物をシリカゲルカラムクロマトで精製し、標記化合物(化合物16−1)0.55g(29%)を得る。
【0179】
(化合物16−1)
IR(Film,cm−1)2983,2904,1719,1665,1618,1410,1214,984,856,833
【0180】
実施例17
(E)−2−[4−(2−フェニルアクリロイル)フェニル]ビニルホスホン酸(化合物17−1)
【化35】
【0181】
窒素雰囲気下、(E)−2−[4−(2−フェニルアクリロイル)フェニル]ビニルホスホン酸 モノエチルエステル(化合物16−1、180mg)の無水塩化メチレン(1.3ml)溶液に、室温でブロモトリメチルシラン(0.28ml)を滴下し1時間撹拌する。酢酸エチルを加え、有機層を水、飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥後減圧濃縮する。
【0182】
得られる油状物を塩化メチレン(4.7ml)に溶解し、トリエチルアミン(0.20ml)を加え室温で1時間撹拌する。酢酸エチルを加え、有機層を0.1N塩酸、飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥後減圧濃縮する。析出物を濾取し、標記化合物(化合物17−1)22mg(13%)を結晶として得る。
【0183】
(化合物17−1)
mp 137〜147℃
IR(KBr,cm−1)3025,1654,1602,1495,1409,1216,929
【0184】
[製剤例]
本発明化合物の点眼剤および経口剤の製剤例を以下に示す。
【0185】
1)点眼剤
処方1 10ml中
本発明化合物 1mg
濃グリセリン 250mg
ポリソルベート80 200mg
リン酸二水素ナトリウム二水和物 20mg
1N水酸化ナトリウム 適量
1N塩酸 適量
滅菌精製水 適量
【0186】
2)錠剤
処方1 100mg中
本発明化合物 1 mg
乳糖 66.4mg
トウモロコシデンプン 20 mg
カルボキシメチルセルロース カルシウム 6 mg
ヒドロキシプロピルセルロース 6 mg
ステアリン酸 マグネシウム 0.6mg
【0187】
【発明の効果】
[薬理試験]
本発明化合物の緑内障に対する有用性を調べるため、1)線維柱帯細胞の形態に及ぼす作用、2)前房内投与による眼圧下降作用、および3)レーザー誘発高眼圧動物モデルを用いた点眼投与による眼圧下降作用について検討した。
【0188】
1)線維柱帯細胞の形態に及ぼす作用
薬物の培養線維柱帯細胞の形態に及ぼす作用を評価することで、房水流出を亢進させる作用を有する薬物を見出し得る可能性が報告されている(Invest. Ophthalmol. Vis. Sci., 33, 2631−2640 (1992) )。そこで上記文献に記載された方法に準じて本発明化合物のウシ培養線維柱帯細胞の形態に及ぼす作用を検討した。
【0189】
(実験方法)
アッセイは、本発明化合物を添加することによるウシ培養線維柱帯細胞の形態変化を、画像解析により定量評価した。
【0190】
[細胞の調製] ウシ胎児血清(10%)、アンフォテリシンB(2.5μg/ml)およびゲンタマイシン(50μg/ml)を添加したほ乳類細胞培養基本培地D−MEM(Dulbecco′s Modified Eagle Medium 、Gibco 社製)で培養したウシ線維柱帯細胞(継代数2〜5)を後述の薬物処理24時間前に、トリプシン−EDTA溶液(0.05%トリプシン、0.53mM EDTA・4Na)で処理して、24穴プレートに播種(104 cells/well)した。後述の薬物 処理12時間前にりん酸緩衝生理食塩液による洗浄を行った後、培地をアンフォテリシンB(2.5μg/ml)およびゲンタマイシン(50μg/ml)を添加したD−MEM(以下培地Aという)に交換した。後述の薬物処理1時間前に、上記のように調製した細胞から細胞同士が接触していない細胞を選び実験に用いた。
【0191】
[被験化合物溶液の調製] 被験化合物は、ジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解後、培地Aを加えて濾過滅菌し、さらに培地Aを加えて所定の濃度に希釈した。この希釈液を5%炭酸ガス雰囲気下、後述の薬物処理1時間前から37℃で1時間恒温保持して被験化合物溶液を調製した。
【0192】
[測定方法] まず、薬物処理1時間前の細胞を自動位置検出装置(well−scanner)を用いて写真撮影した。次いで、細胞の培地を被験化合物溶液に交換して薬物処理を行い、5%炭酸ガス雰囲気下、37℃で3時間インキュベートをした後、well−scannerを用いて薬物処理1時間前に撮影したのと同じ細胞を写真撮影した。
【0193】
(画像解析)
撮影した細胞像を写真からCCDカメラ(HAMAMATU社製)にて、画像解析システムに取り込んだ。取り込んだ細胞像の輪郭をトレースし、面積を測定した。
【0194】
被験化合物の線維柱帯細胞に及ぼす形態変化の程度は、下記の面積変化率(%)で示す。
【0195】
【式1】
【0196】
(結果)
表1に試験結果の一例として、線維柱帯細胞の細胞面積を50%縮小させるのに要した濃度(EC50)を示す。また、対照薬物としてエタクリン酸を用いた結果も示す。
【0197】
【表1】
【0198】
表1に示されるように、本発明化合物は線維柱帯細胞に対し、優れた細胞形態変化作用を有することが認められた。これらの効果は、公知の比較対照薬物であるエタクリン酸に比べて10倍以上優れたものであった。
【0199】
2)前房内投与による眼圧下降作用
薬物の眼圧下降作用を評価する一つの方法として、薬物をカニクイザルの前房内に投与する方法が報告されている(Am. J. Ophthalmol., 113, 706−711 (1992) )。そこで上記文献に記載された方法に準じて本発明化合物の眼圧への影響を検討した。
【0200】
(実験方法)
[実験動物] 動物は体重4.0〜7.0kg、4〜7才齢の健常な雄性カニクイザルを使用した。
【0201】
[被験化合物溶液の調製] 使用被験化合物はジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解後、りん酸緩衝生理食塩液を加えて所定の濃度に(10−3M、1%DMSO)希釈し、濾過滅菌して調製した。
【0202】
[薬物投与方法] 塩酸ケタミン(5〜10mg/kg)を筋肉内投与して全身麻酔を施したカニクイザルに、マイクロシリンジおよび30G針を用いて、被験化合物溶液(10μl)を片眼の前房内に投与した。なお、他方の眼には基剤のみを投与した。
【0203】
[測定方法] 眼圧測定は、被験化合物投与直前、投与後所定時間に圧平式眼圧計を用いて行った。なお、眼圧測定の際には塩酸ケタミン(5〜10mg/kg)で全身麻酔したのち、局所麻酔剤の0.4%塩酸オキシブプロカイン点眼液を1滴点眼した。
【0204】
(結果)
被験化合物投与t時間後の被験化合物の眼圧に対する作用は、下記の眼圧下降値(mmHg)で示す。
【0205】
眼圧下降値(mmHg)=[IOP(V−t) −IOP(D−t)]− [IOP(V−0) − IOP(D−0)]
IOP(D−t):被験化合物投与t時間後の被験化合物投与眼の眼圧
IOP(D−0):被験化合物投与直前の被験化合物投与眼の眼圧
IOP(V−t):基剤投与t時間後の基剤投与眼の眼圧
IOP(V−0):基剤投与直前の基剤投与眼の眼圧
【0206】
試験結果の一例として、被験化合物溶液(化合物8−7)を前房内に注入後の最大眼圧下降値(mmHg)を表2に示す。また、対照薬物としてエタクリン酸を用いた結果も示す。
【0207】
【表2】
*)数値は6例の平均値を示す。
【0208】
**)数値は5例の平均値を示す。
【0209】
表2に示されるように、本発明化合物は優れた眼圧下降作用を示した。また、比較対照薬物であるエタクリン酸に比べても優れた眼圧下降作用を示した。
【0210】
3)レーザー誘発高眼圧動物モデルを用いた点眼投与による眼圧下降作用
薬物の眼圧下降作用を評価する方法の一つとして、レーザー誘発高眼圧サルモデルに薬物を点眼投与する方法が報告されている(Arch. Ophthalmol., 105, 249−252 (1987))。そこで上記文献に記載された方法に準じて本発明化合物の点眼投与による眼圧下降作用を検討した。
【0211】
(実験方法)
[実験動物] 実験には、体重5〜6kgの雄性カニクイザルを使用した。アルゴンレーザー(Coherent Radiation、Models 800)を用い、1週間間隔でサルの線維柱帯に100〜150spots 照射して高眼圧眼にした4頭5眼を使用した。なお、レーザー照射条件は1000mW、0.2sec.に設定した。
【0212】
[被験化合物溶液の調製] 被験化合物を精製水に溶解後、濃グリセリンおよび塩化ナトリウムを加えて浸透圧を1に、0.1M水酸化ナトリウム水溶液でpHを7.4に調整し、0.3%溶液とした後、濾過滅菌して調製した。
【0213】
[薬物投与方法] まず、基剤の眼圧に及ぼす影響を調べるため、基剤のみを1日2回(午前10時および午後5時)1週間連続点眼した。次いで、被験化合物溶液を1日2回(午前10時および午後5時)1週間連続点眼した。
【0214】
[測定方法] 眼圧測定は、薬物投与開始前および点眼後所定時間に、圧平式眼圧計を用いて行った。なお、眼圧測定は、測定1時間前にクロルプロマジン(1mg/kg)を筋肉内投与して鎮静状態にしたカニクイザルに、局所麻酔剤の0.4%塩酸オキシブプロカイン点眼液を1滴点眼したのち行った。
【0215】
(結果)
被験化合物溶液の午前点眼6時間後の眼圧に対する作用を、下記式により求められる眼圧変化差(mmHg)で示す。
【0216】
眼圧変化差(mmHg)=[ IOP(D−6) − IOP(D−0)]− [IOP(V−6)− IOP(V−0)]
IOP(D−6):被験化合物溶液午前点眼6時間後の眼圧
IOP(D−0):被験化合物溶液投与開始前の眼圧
IOP(V−6):基剤午前点眼6時間後の眼圧
IOP(V−0):基剤投与開始前の眼圧
【0217】
試験結果の一例として、被験化合物(化合物8−7)溶液点眼後の眼圧変化差の経日変化を表3に示す。
【0218】
【表3】
【0219】
表中の数値は5眼の平均値を示す。
【0220】
表3に示したように被験化合物(化合物8−7)は優れた眼圧下降作用を示した。なお、前眼部の障害性はすべての点眼期間を通じて認められなかった。
【0221】
以上のことから、本発明化合物は優れた眼圧下降作用を有しており、緑内障の治療剤として有用であることが認められた。
【発明の属する技術分野】
本発明は緑内障の治療剤として有用な新規化合物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
緑内障とは、一般的に眼圧が上昇することにより、視機能が障害を受ける疾患である。房水の流出は、眼圧上昇と密接な関係があり、房水の流出が妨げられると眼圧上昇を引き起こす。房水の大部分は、線維柱帯からシュレム管を通って眼球外に流れ出る。この線維柱帯における房水流出の抵抗を減弱させることによって房水の流出を亢進させることができる。線維柱帯を形成している細胞(線維柱帯細胞)はスルフヒドリル基を有しているが、そのスルフヒドリル基と反応する化合物を投与することにより、線維柱帯細胞に形態的変化を起こさせ、房水流出能を亢進することによって眼圧を下げる方法が報告されている(特公平7−13013 号公報参照)。この特許には、スルフヒドリル基と反応する化合物としてフェノキシ酢酸誘導体、特にエタクリン酸が好適な化合物として開示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
線維柱帯細胞に形態的変化を起こさせることにより眼圧を下げる方法は、緑内障の治療方法として非常に興味あるものである。しかし、そのような作用機序を有する薬物の研究はまだ多くはなされておらず、新たな薬物の創製研究は、緑内障治療剤の開発において非常に興味ある課題である。
【0004】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者等は、α,β−不飽和カルボニル基を有するフェノキシ酢酸誘導体であるエタクリン酸が線維柱帯細胞に形態的変化を起こさせ、眼圧を下げる効果を有することに着目し、種々の新規化合物を合成し、それらの線維柱帯細胞の形態に及ぼす効果および眼圧下降効果を調べた。その結果、ビニルベンゼンを基本構造とし、そのベンゼン環にさらにα,β−不飽和カルボニル基を導入した新規ビニルベンゼン誘導体が優れた効果を有することを見出し、本発明を完成させた。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明は下記一般式[I]で示される化合物およびその塩類(以下特記なき限り本発明化合物と総称する)、並びにそれらを有効成分とする医薬組成物に関するものである。
【0006】
【化2】
【0007】
[式中、R1 は水素原子、低級アルキル基またはフェニル基を示し、該フェニル基は、低級アルキル基、ヒドロキシ基、低級アルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基またはフェニル基で置換されていてもよい。
【0008】
R2 およびR3 は同一かまたは異なって、水素原子または低級アルキル基を示す。
【0009】
R4 およびR5 は同一かまたは異なって、水素原子、低級アルキル基またはカルボキシル基もしくはその低級アルキルエステル基もしくはフェニル低級アルキルエステル基を示す。
【0010】
R6 はカルボキシル基またはホスホノ基もしくはそれらの低級アルキルエステル基もしくはフェニル低級アルキルエステル基を示す。
【0011】
上記で規定した基を以下に詳しく説明する。
【0012】
低級アルキル基とはメチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル、イソプロピル、イソブチル、イソペンチル、イソヘキシル、t−ブチル、3,3−ジメチルブチル等の1〜6個の炭素原子を有する直鎖または分枝のアルキルを示す。
【0013】
低級アルコキシ基とはメトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ヘキシルオキシ、イソプロポキシ、t−ブトキシ等の1〜6個の炭素原子を有する直鎖または分枝のアルコキシを示す。
【0014】
ハロゲン原子とはフッ素、塩素、臭素、ヨウ素を示す。
【0015】
低級アルキルエステルとは、メチルエステル、エチルエステル、イソプロピルエステル、ヘキシルエステル等を示す。フェニル低級アルキルエステルトとは、フェニルエステルまたはベンジルエステル、フェネチルエステル等を示す。
【0016】
本発明における塩類とは医薬として許容される塩であれば特に制限はなく、ナトリウム、カリウム、カルシウム等のアルカリ金属またはアルカリ土類金属との塩などが挙げられる。また、本発明化合物に幾何異性体または光学異性体が存在する場合には、それらの異性体も本発明の範囲に含まれる。尚、本発明化合物は溶媒和物、例えば水和物の形態をとっていてもよい。
【0017】
本発明化合物の好ましい例としては、一般式[I]で示される化合物において各基が下記のものである化合物が挙げられる;
(1a)R1 が水素原子、低級アルキル基またはフェニル基を示し、該フェニル基は低級アルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基またはフェニル基から選択される基で置換されていてもよい;および/または
(2a)R4 およびR5 が同一かまたは異なって、水素原子、低級アルキル基またはカルボキシル基を示す。
【0018】
すなわち、
・一般式[I]で示される化合物において、上記(1a)の化合物、
・一般式[I]で示される化合物において、上記(2a)の化合物、
および
・一般式[I]で示される化合物において、上記(1a)および上記(2a)の組合わせからなる化合物である。
【0019】
本発明化合物のより好ましい例としては、一般式[I]で示される化合物において各基が下記のものである化合物が挙げられる;
(1b)R1 がフェニル基を示し、該フェニル基はハロゲン原子、ニトロ基またはフェニル基から選択される基で置換されていてもよい;
(2b)R2 およびR3 がともに水素原子を示す;
(3b)R4 およびR5 が同一かまたは異なって、水素原子または低級アルキル基を示す;および/または
(4b)R6 がカルボキシル基を示す。
【0020】
すなわち、
・一般式[I]で示される化合物において、上記(1b)の化合物、
・一般式[I]で示される化合物において、上記(2b)の化合物、
・一般式[I]で示される化合物において、上記(3b)の化合物、
・一般式[I]で示される化合物において、上記(4b)の化合物、
および
・一般式[I]で示される化合物において、上記(1b)、(2b)、(3b)および(4b)の2以上の組合わせからなる化合物である。
【0021】
本発明化合物のさらに好ましい例としては、一般式[I]で示される化合物において各基が下記のものである化合物が挙げられる;
(1c)R1 がフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、4−ニトロフェニル基または4−ビフェニリル基を示す;
(2c)R2 およびR3 がともに水素原子を示す;
(3c)R4 およびR5 が同一かまたは異なって、水素原子またはメチル基を示す;および/または
(4c)R6 がカルボキシル基を示す。
【0022】
すなわち、
・一般式[I]で示される化合物において、上記(1c)の化合物、
・一般式[I]で示される化合物において、上記(2c)の化合物、
・一般式[I]で示される化合物において、上記(3c)の化合物、
・一般式[I]で示される化合物において、上記(4c)の化合物、
および
・一般式[I]で示される化合物において、上記(1c)、(2c)、(3c)および(4c)の2以上の組合わせからなる化合物である。
【0023】
本発明化合物の最も好ましい具体例としては、下記化合物およびその塩類が挙げられる。
【0024】
1) 4−[2−(2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニル)アクリロイル]桂皮酸
【化3】
【0025】
2) 4−[2−(4−ニトロフェニル)アクリロイル]桂皮酸
【化4】
【0026】
3) 4−(2−フェニルアクリロイル)桂皮酸
【化5】
【0027】
4) α−メチル−4−(2−フェニルアクリロイル)桂皮酸
【化6】
【0028】
5) β−メチル−4−(2−フェニルアクリロイル)桂皮酸
【化7】
【0029】
本発明化合物の代表的な合成経路図を下記に示す。
【0030】
【化8】
【0031】
本発明化合物[I]は、例えば前記反応経路図に示される様に種々の合成ルートにて合成できる。この合成方法をルート別に示すと次の様になる。但し、これらのルートは代表的なルートを例示するものであって、全ての方法を示すものではない。具体的合成方法の詳細は後述の実施例で説明する。
【0032】
ルートA)[II]→[XVI]→[III]→[IV]→[I]
ルートB)[II]→[XVI]→[IV]→[I]
ルートC)[V]→[VI]→[IV]→[I]
ルートD)[IV]→[VII]→[VIII]→[I]
ルートE)[II]→[XVII]→[I]
これらのルートの合成方法を以下に詳しく説明する。
【0033】
ルートA)[II]→[XVI]→[III]→[IV]→[I]
【化9】
【0034】
カルボン酸誘導体[II]を塩化チオニルで処理して酸塩化物[XVI]とし、こ れをt−ブチルエステル誘導体[IX]と塩基存在下で反応させて、式[III]で 表される化合物に導き、その化合物[III]を酸存在下でカルボン酸として脱炭 酸させ、式[IV]で表される化合物を得る。次いで、化合物[IV]を2級アミン存在下パラホルムアルデヒドとマンニッヒ反応により縮合後、脱離反応により本発明化合物[I](但し、R2 およびR3 は水素原子を示す)を得る。
【0035】
ルートB)[II]→[XVI]→[IV]→[I]
【化10】
【0036】
ルートA)と同様にカルボン酸誘導体[II]を塩化チオニルで処理して酸塩化物[XVI]とし、これをグリニャール試薬[X]と縮合させ化合物[IV]を得る 。次いで、ルートA)と同様の方法にて本発明化合物[I](但し、R2 およびR3 は水素原子を示す)を得る。
【0037】
ルートC)[V]→[VI]→[IV]→[I]
【化11】
【0038】
アルデヒド誘導体[V]をグリニャール試薬[X]と縮合させヒドロキシ誘導体[VI]に導き、そのヒドロキシ誘導体を酸化剤(例えばジメチルスルホキシド(DMSO))と反応させ、式[IV]で表される化合物を得る。次いで、ルートA)と同様の方法にて本発明化合物[I](但し、R2 およびR3 は水素原子を示す)を得る。
【0039】
ルートD)[IV]→[VII]→[VIII]→[I]
【化12】
【0040】
ルートA)、B)またはC)の方法に従って得られた化合物[IV]とカルボニル化合物[XI]を塩基存在下反応させ、式[VII]で表される化合物を得る。次いでこれをメシル酸クロライドと反応させ、メシルオキシ誘導体[VII]に導き、 そのメシルオキシ誘導体[VII]を強塩基(例えば1,8−ジアザビシクロ[5 .4.0]−7−ウンデセン(DBU))存在下で処理し本発明化合物[I]を得る。
【0041】
ルートE)[II]→[XVII]→[I]
【化13】
[式中、Xはハロゲン原子を示す。]
【0042】
カルボン酸誘導体[II]をクロロ蟻酸イソブチルエステル[XII]で処理して 混合酸無水物[XVII]とし、次いでこれからワン−ポット合成法(Tetrahedron Lett., 33, 337−340 (1992) )を用いて本発明化合物[I]を得る。すなわちトシル酸 2,2,2−トリハロエチルエステル[XIII]をn−ブチルリチウムで処理したのち、有機ホウ素化合物[XIV]と反応させて2,2−ジハロビニルボ ラン誘導体[XV]を得る。そのボラン誘導体[XV]を単離することなく、上記混合酸無水物[XVII]とヨウ化銅(I) の存在下で反応させて本発明化合物[I](但し、R2 およびR3 はハロゲン原子を示す)を得る。
【0043】
上記合成方法において、反応物質が分子内にヒドロキシ基を有する場合、それらの基は必要に応じて適当な保護基で保護していてもよく、またそれらの保護基は反応後常法により除去することもできる。また、反応物質が分子内にカルボキシル基またはホスホノ基を有する場合、カルボキシル基またはホスホノ基は必要に応じてエステル化してもよく、またそれらのエステルは加水分解によりカルボン酸またはホスホン酸にすることもできる。
【0044】
本発明化合物は文献未知の新規化合物であるが、その化学構造的特徴は、ベンゼン環の置換基として1個の二重結合を有する化合物であるビニルベンゼンを基本構造とし、そのベンゼン環にさらにα,β−不飽和カルボニル基を置換したところにある。
【0045】
従来の技術の項で記載したように、エタクリン酸は線維柱帯細胞に形態的変化を起こさせ、房水流出能を亢進することによって眼圧を下げる効果があることが報告されている(特公平7−13013 )。エタクリン酸は、α,β−不飽和カルボニル基を有するフェノキシ酢酸誘導体であるが、本発明者等はこのエタクリン酸の化学構造に着目し、鋭意研究した結果、そのベンゼン環の置換基としてさらに1個の二重結合を導入すると、より優れた効果を有する新規化合物が得られることを見出した。
【0046】
薬物の投与方法としては、活性体そのものを投与する方法と共に、生体内で分解し、活性体に変換される形、即ちプロドラッグの形で投与する方法も汎用されている。本発明化合物においても、分子中にカルボン酸またはホスホン酸を含むが、本発明化合物はカルボン酸またはホスホン酸の形態で投与できると共に、加水分解を受けカルボン酸またはホスホン酸に変換され得るエステルの形態でも投与することができる。また、分子中にヒドロキシ基を含む場合、ヒドロキシ基は適切な保護基で保護された形態で投与されてもよい。
【0047】
本発明化合物の有用性を調べるべく、本発明化合物の線維柱帯細胞の形態に及ぼす作用および眼圧に及ぼす影響を検討した。詳細については後述の薬理試験の項で示すが、本発明化合物を添加することによる線維柱帯細胞の形態変化を画像解析により検討した結果、本発明化合物は線維柱帯細胞に対し優れた細胞形態変化作用を示した。
【0048】
さらに、本発明化合物の眼圧下降作用を直接検討した。即ち、正常動物の前房内への注入投与およびレーザー誘発高眼圧動物モデルへの点眼投与による眼圧への影響を検討した結果、本発明化合物は優れた眼圧下降作用を示した。
【0049】
本発明化合物は主として非経口投与されるが、経口でも投与することができる。投与剤型としては、点眼剤、注射剤、錠剤、カプセル剤、顆粒剤等が挙げられ、それらの製剤は汎用技術を用いて調製することができる。例えば、点眼剤であれば、塩化ナトリウム、濃グリセリンなどの等張化剤、リン酸ナトリウム、酢酸ナトリウムなどの緩衝化剤、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート、ステアリン酸ポリオキシ40,ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油などの界面活性剤、クエン酸ナトリウム、エデト酸ナトリウムなどの安定化剤、塩化ベンザルコニウム、パラベンなどの防腐剤などを必要に応じて用い製剤化することができ、pHは眼科製剤に許容される範囲内にあればよいが、4〜8の範囲が好ましい。また、錠剤、カプセル剤、顆粒剤等の経口剤は、必要に応じて、乳糖、デンプン、結晶セルロース、植物油等の増量剤、ステアリン酸マグネシウム、タルクなどの滑沢剤、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドンなどの結合剤、カルボキシメチルセルロースカルシウムなどの崩壊剤、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、マクロゴール、シリコン樹脂などのコーティング剤、ゼラチン皮膜剤を用いて製剤化することができる。
【0050】
本発明化合物の投与量は症状、年令、剤型等によって適宜選択できるが、点眼剤であれば0.001〜3%(w/v)のものを1日1回〜数回点眼すればよく、経口剤であれば通常1日当り1mg〜1000mgを1回または数回に分けて投与すればよい。
【0051】
以下に、本発明化合物の製造例、製剤例および薬理試験の結果を示すが、これらの例は本発明をよりよく理解するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0052】
【実施例】
[製造例]
参考例1
(2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニル)酢酸 t−ブチルエステル(参考化合物1−1)
【化14】
【0053】
窒素雰囲気下、ドライアイスで冷却しながら、イソブテン(4ml)に(2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニル)酢酸(3.0g)、エーテル(1ml)および濃硫酸(0.07ml)を加え、耐圧管中、室温で3日間撹拌する。10%炭酸水素ナトリウム水溶液と氷の混合物に、ドライアイスで冷却した反応液を加え撹拌する。エーテルを加えて抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮し、標記化合物(参考化合物1−1)3.10g(83%)を得る。
【0054】
(参考化合物1−1)
IR(Film,cm−1)2983,2940,1740,1658,1510,1371,1307,1159,981
【0055】
参考例1と同様の方法を用いて以下の化合物が得られる。
【0056】
・(4−ニトロフェニル)酢酸 t−ブチルエステル(参考化合物1−2)
IR(Film,cm−1)2979,1731,1607,1521,1369,1347,1231,1147
【0057】
・(4−ビフェニリル)酢酸 t−ブチルエステル(参考化合物1−3)
mp 44.5〜48.5℃
IR(KBr,cm−1)3028,2976,1730,1602,1486
【0058】
・(4−トリル)酢酸 t−ブチルエステル(参考化合物1−4)
【0059】
・(4−フルオロフェニル)酢酸 t−ブチルエステル(参考化合物1−5)
【0060】
・(4−クロロフェニル)酢酸 t−ブチルエステル(参考化合物1−6)
【0061】
参考例2
4−カルボキシ桂皮酸 エチルエステル(参考化合物2−1)
【化15】
【0062】
4−ホルミル安息香酸(10g)のピリジン(68ml)溶液にマロン酸エチルモノカリウム塩(23g)、p−トルエンスルホン酸一水和物(25g)およびピペリジン(0.99ml)を加え、混合液を徐々に加熱したのち120℃で1.5時間撹拌する。氷冷下、反応液に2N塩酸を加えて酸性とし、析出物を濾取することにより標記化合物(参考化合物2−1)11.7g(79%)を結晶として得る。
【0063】
(参考化合物2−1)
mp 194.5〜197.0℃
IR(KBr,cm−1)2981,1711,1687,1609,1569,1511,847
【0064】
参考例2と同様の方法を用いて以下の化合物が得られる。
【0065】
・4−カルボキシ−α−メチル桂皮酸 エチルエステル(参考化合物2−2)
mp 145〜149℃
IR(KBr,cm−1)2985,1707,1678,1425,1293,1259,1203,1125,771
【0066】
・4−カルボキシ桂皮酸 t−ブチルエステル(参考化合物2−3)
mp 210℃(分解)
IR(KBr,cm−1)2979,1707,1678,1639,1608,1567,1294,1254,1202,1156,964
【0067】
参考例3
4−カルボキシ−β−メチル桂皮酸 エチルエステル(参考化合物3−1)
【化16】
【0068】
1) 4−アセチル安息香酸(3.9g)の無水塩化メチレン(120ml)溶液に、氷冷下、4−ジメチルアミノピリジン(1.5g)、t−ブチルアルコール(4.6ml)、N−メチルモルホリン(3.4ml)および1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド 塩酸塩(6.0g)を加え、氷冷下6時間、水冷下一晩撹拌する。反応液を減圧濃縮し、水を加えてエーテルで抽出する。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮する。残留物をシリカゲルカラムクロマトで精製し、4−アセチル安息香酸 t−ブチルエステル 3.13g(59%)を結晶として得る。
【0069】
mp 57.5〜58.8℃
IR(KBr,cm−1)3350,2986,2934,1708,1682,1503
【0070】
2) 窒素雰囲気下、水素化ナトリウム(60%、油性)(220mg)の無水テトラヒドロフラン(15ml)溶液に氷冷しながらホスホノ酢酸トリエチルエステル(0.98ml)の無水テトラヒドロフラン(4ml)溶液を滴下し、氷冷下10分間撹拌する。ついで4−アセチル安息香酸 t−ブチルエステル(1.0g)の無水テトラヒドロフラン(4ml)溶液を滴下し、室温で一晩撹拌する。氷冷下、反応液にエーテルを加え抽出する。有機層を10%クエン酸水溶液、水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮する。残留物をシリカゲルカラムクロマトで精製し、4−(t−ブトキシカルボニル)−β−メチル桂皮酸エチルエステル 0.76g(58%)を得る。
【0071】
IR(Film,cm−1)2979,2934,1713,1631,1567,1455,1169,1115
【0072】
3) 4−(t−ブトキシカルボニル)−β−メチル桂皮酸 エチルエステル(755mg)を4N塩化水素酢酸エチル溶液(6.5ml)に溶解し、室温で18時間撹拌する。反応液を減圧濃縮後、イソプロピルエーテルを加え析出物を濾取し、標記化合物(参考化合物3−1)550mg(90%)を結晶として得る。
【0073】
(参考化合物3−1)
mp 160.0〜161.7℃
IR(KBr,cm−1)2979,2668,2543,1712,1689,1626,1565,1424,1367
【0074】
参考例4
2−(4−ホルミルフェニル)マレイン酸 ジエチルエステル(参考化合物4−1)
【化17】
【0075】
1) 窒素雰囲気下、シュウ酸ジエチル(6.5g)の無水テトラヒドロフラン(41ml)溶液に、氷冷下、臭化4−トリルマグネシウムの1.0Mエーテル溶液(20.5ml)を滴下する。滴下終了5分後に、室温で1.5時間撹拌する。反応液に1N塩酸を加え、エーテルで抽出する。有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後減圧濃縮する。得られる残留物をシリカゲルカラムクロマトで精製し、4−トリルグリオキシル酸 エチルエステル 2.99g(76%)を得る。
【0076】
IR(Film,cm−1)2984,1736,1684,1606,1307,1203,1176,1015
【0077】
2) 窒素雰囲気下、水素化ナトリウム(60%、油性)(676mg)の無水テトラヒドロフラン(30ml)懸濁溶液に、氷冷下、エトキシカルボニルメチルホスホン酸 ジエチルエステル(3.3g)の無水テトラヒドロフラン(20ml)溶液を滴下し、さらに4−トリルグリオキシル酸 エチルエステル(2.96g)の無水テトラヒドロフラン(22ml)溶液を滴下する。室温で30分間撹拌したのち、反応液に10%クエン酸水溶液を加え、エーテルで抽出する。有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後減圧濃縮する。得られる残留物をシリカゲルカラムクロマトで精製し、2−(4−トリル)マレイン酸 ジエチルエステル 3.57g(88%)を得る。
【0078】
IR(Film,cm−1)2982,1732,1714,1623,1608,1372,1288,1205,1176,1033
【0079】
3) 2−(4−トリル)マレイン酸 ジエチルエステル(1.5g)の四塩化炭素(29ml)溶液にN−ブロモこはく酸イミド(3.1g)および2,2′−アゾビス(イソブチロニトリル)(45mg)を加え2日間加熱還流する。反応液を減圧濃縮し、10%炭酸水素ナトリウム水溶液を加えエーテルで抽出する。有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮する。残留物をシリカゲルカラムクロマトで精製し、2−[4−(ジブロモメチル)フェニル]マレイン酸 ジエチルエステル 1.15g(56%)を結晶として得る。
【0080】
mp 89.0〜92.5℃
IR(KBr,cm−1)3029,2991,1714,1626,1372,1342,1295,1186,1026,847
【0081】
4) 窒素雰囲気下、2−[4−(ジブロモメチル)フェニル]マレイン酸 ジエチルエステル(500mg)の2−メトキシエタノール(15ml)溶液に、硝酸銀(607mg)の水(5ml)溶液を加え、95℃に加熱しながら25分間撹拌する。氷冷下、反応液に0.1N塩酸を加え、酢酸エチルで抽出する。有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後減圧濃縮する。残留物をシリカゲルカラムクロマトで精製し、標記化合物(参考化合物4−1)280mg(85%)を得る。
【0082】
(参考化合物4−1)
IR(Film,cm−1)2983,1722,1626,1372,1343,1283,1209,1180
【0083】
参考例5
(E)−2−(4−カルボキシフェニル)ビニルホスホン酸 ジエチルエステル(参考化合物5−1)
【化18】
【0084】
1) テレフタルアルデヒド酸(5.1g)の無水ジメチルホルムアミド(110ml)溶液に無水炭酸カリウム(4.7g)を加え室温で10分間撹拌したのち、ヨウ化メチル(2.5ml)を加え一晩撹拌する。反応液に水を加え、酢酸エチルで抽出する。有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後減圧濃縮する。得られる残留物をシリカゲルカラムクロマトで精製し、4−ホルミル安息香酸 メチルエステル4.7g(84%)を結晶として得る。
【0085】
mp 58.9〜60.5℃
IR(KBr,cm−1)3021,1728,1684,1578,1435,1392
【0086】
2) 窒素雰囲気下、ドライアイスで冷却しながら、リチウム ビス(トリメチルシリル)アミドの1.0Mテトラヒドロフラン溶液(17ml)を無水テトラヒドロフラン(81ml)で希釈したのち、メチレンビス(ホスホン酸) テトラエチルエステル(4.6g)の無水テトラヒドロフラン(8ml)溶液を滴下する。ドライアイス冷却下30分間撹拌したのち、4−ホルミル安息香酸 メチルエステル(2.64g)の無水テトラヒドロフラン(12ml)溶液を滴下する。ドライアイス冷却下で1.5時間、さらに氷冷下で2.5時間撹拌する。反応液に酢酸エチルを加え、有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後減圧濃縮する。得られる析出物を濾取し、(E)−2−[4−(メトキシカルボニル)フェニル]ビニルホスホン酸 ジエチルエステル4.1g(86%)を結晶として得る。
【0087】
mp 60〜65℃
IR(KBr,cm−1)3003,1720,1620,1568,1433,1236
【0088】
3) (E)−2−[4−(メトキシカルボニル)フェニル]ビニルホスホン酸ジエチルエステル(4.0g)をエタノール(26ml)−テトラヒドロフラン(13ml)混液に溶解したのち、1N水酸化ナトリウム水溶液(15ml)を加え室温で24時間撹拌する。反応液に10%クエン酸水溶液を加えて酸性とし酢酸エチルで抽出する。有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後減圧濃縮する。得られる析出物を濾取し、標記化合物(参考化合物5−1)3.4g(89%)を結晶として得る。
【0089】
(参考化合物5−1)
mp 135.0〜136.5℃
IR(KBr,cm−1)2990,1707,1570,1480,1240
【0090】
実施例1
4−[(2RS)−2−(t−ブトキシカルボニル)−2−(2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニル)アセチル]桂皮酸 エチルエステル(化合物1−1)
【化19】
【0091】
窒素雰囲気下、4−カルボキシ桂皮酸 エチルエステル(参考化合物2−1、1.7g)のクロロホルム(5ml)溶液に塩化チオニル(2.8ml)を滴下したのち、ジメチルホルムアミド(1滴)を加え30分間加熱還流する。反応液を減圧濃縮し酸クロライドを得る。
【0092】
窒素雰囲気下、(2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニル)酢酸 t−ブチルエステル(参考化合物1−1、2.17g)のテトラヒドロフラン(20ml)溶液に、ドライアイスで冷却しながらカリウム ビス(トリメチルシリル)アミドの0.5Mトルエン溶液(18ml)を滴下する。5分後、さらに上記酸クロライドのテトラヒドロフラン(20ml)溶液を滴下する。滴下終了20分後に、室温で1.5時間撹拌する。反応液に10%クエン酸水溶液を加え、エーテルで抽出する。有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後減圧濃縮する。得られる残留物をシリカゲルカラムクロマトで精製し、標記化合物(化合物1−1)526mg(12%)を結晶として得る。
【0093】
(化合物1−1)
mp 87.5〜88.5℃
IR(KBr,cm−1)2979,1716,1637,1522,1496,1373,1177
【0094】
実施例1と同様の方法を用いて以下の化合物が得られる。
【0095】
・4−[(2RS)−2−(t−ブトキシカルボニル)−2−(4−ニトロフェニル)アセチル]桂皮酸 エチルエステル(化合物1−2)
IR(Film,cm−1)2980,1715,1639,1603,1523,1368,1348,1278,1148
【0096】
・4−[(2RS)−2−(t−ブトキシカルボニル)−2−(4−ビフェニリル)アセチル]桂皮酸 エチルエステル(化合物1−3)
IR(Film,cm−1)2980,1713,1639,1603,1486
【0097】
・4−[(2RS)−2−(t−ブトキシカルボニル)−2−(4−トリル)アセチル]桂皮酸 エチルエステル(化合物1−4)
【0098】
・4−[(2RS)−2−(t−ブトキシカルボニル)−2−(4−フルオロフェニル)アセチル]桂皮酸 エチルエステル(化合物1−5)
【0099】
・4−[(2RS)−2−(t−ブトキシカルボニル)−2−(4−クロロフェニル)アセチル]桂皮酸 エチルエステル(化合物1−6)
【0100】
実施例2
4−[(2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニル)アセチル]桂皮酸(化合物2−1)
【化20】
【0101】
4−[(2RS)−2−(t−ブトキシカルボニル)−2−(2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニル)アセチル]桂皮酸 エチルエステル(化合物1−1、500mg)のジオキサン(2ml)溶液を耐圧管に入れ、濃塩酸(2ml)を加える。130℃に加熱しながら4時間撹拌する。反応液を氷冷して析出物を濾取し、標記化合物(化合物2−1)256mg(70%)を結晶として得る。
【0102】
(化合物2−1)
mp 228〜234℃
IR(KBr,cm−1)2975,1673,1526,1502,1307,1280
【0103】
実施例2と同様の方法を用いて以下の化合物が得られる。
【0104】
・4−[(4−ニトロフェニル)アセチル]桂皮酸(化合物2−2)
mp 247〜251℃
IR(KBr,cm−1)2895,1683,1628,1601,1518,1343,1228,991
【0105】
・4−[(4−ビフェニリル)アセチル]桂皮酸(化合物2−3)
mp 250℃以上
IR(KBr,cm−1)3030,1682,1631,1600,1558,1487
【0106】
・4−[(4−トリル)アセチル]桂皮酸(化合物2−4)
【0107】
・4−[(4−フルオロフェニル)アセチル]桂皮酸(化合物2−5)
【0108】
・4−[(4−クロロフェニル)アセチル]桂皮酸(化合物2−6)
【0109】
実施例3
4−(フェニルアセチル)桂皮酸 エチルエステル(化合物3−1)
【化21】
【0110】
窒素雰囲気下、4−カルボキシ桂皮酸 エチルエステル(参考化合物2−1、2.0g)のクロロホルム(4ml)溶液に塩化チオニル(3.3ml)を滴下したのち、ジメチルホルムアミド(1滴)を加え30分間加熱還流する。反応液を減圧濃縮し、酸クロライドの残留物を得る。窒素雰囲気下、残留物をテトラヒドロフラン(30ml)に溶解しドライアイスで冷却する。塩化ベンジルマグネシウムの2.0Mテトラヒドロフラン溶液(4.5ml)を滴下する。滴下終了12分後ドライアイス冷却下、反応液に10%クエン酸水溶液を加えたのち室温とし、エーテルで抽出する。有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後減圧濃縮する。得られる残留物をシリカゲルカラムクロマトで精製し、標記化合物(化合物3−1)685mg(26%)を結晶として得る。
【0111】
(化合物3−1)
mp 110.5〜111.3℃
IR(KBr,cm−1)2986,1690,1410,1330,1206,970,704
【0112】
実施例3と同様の方法を用いて以下の化合物が得られる。
【0113】
・4−(n−ブチリル)桂皮酸 エチルエステル(化合物3−2)
mp 51.7〜53.9℃
IR(KBr,cm−1)2963,1770,1680,1603,1561,1472,1371,999
【0114】
・α−メチル−4−(フェニルアセチル)桂皮酸 エチルエステル(化合物3−3)
mp 35.5〜37.8℃
IR(KBr,cm−1)2983,1706,1683,1602,1452,1254,1112
【0115】
・β−メチル−4−(フェニルアセチル)桂皮酸 エチルエステル(化合物3−4)
mp 81.7〜83.0℃
IR(KBr,cm−1)3040,2982,1713,1683,1624,1601,1478,1268,1225
【0116】
・4−プロピオニル桂皮酸 エチルエステル(化合物3−5)
【0117】
・4−イソバレリル桂皮酸 エチルエステル(化合物3−6)
【0118】
・4−アセチル桂皮酸 エチルエステル(化合物3−7)
【0119】
実施例4
4−(フェニルアセチル)桂皮酸(化合物4−1)
【化22】
【0120】
窒素雰囲気下、4−(フェニルアセチル)桂皮酸 エチルエステル(化合物3−1、675mg)のエタノール(6ml)−テトラヒドロフラン(6ml)混液に1N水酸化ナトリウム水溶液(2.3ml)および水(4ml)を加え、室温で6.5時間撹拌する。反応液に1N塩酸を加えて酸性とし、酢酸エチルで抽出する。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後減圧濃縮する。得られる析出物を濾取し、標記化合物(化合物4−1)553mg(91%)を結晶として得る。
【0121】
(化合物4−1)
mp 232〜236℃(分解)
IR(KBr,cm−1)3036,2589,1684,1630,1337,1230,993
【0122】
実施例4と同様の方法を用いて以下の化合物が得られる。
【0123】
・4−(n−ブチリル)桂皮酸(化合物4−2)
mp 204〜210℃(分解)
IR(KBr,cm−1)2965,1689,1630,1601,1560,992
【0124】
・α−メチル−4−(フェニルアセチル)桂皮酸(化合物4−3)
mp 148.0〜149.3℃
IR(KBr,cm−1)2968,1685,1621,1409,1266,728
【0125】
・β−メチル−4−(フェニルアセチル)桂皮酸(化合物4−4)
mp 143〜149℃
IR(KBr,cm−1)2898,1684,1623,1559,1499
【0126】
・4−プロピオニル桂皮酸(化合物4−5)
【0127】
・4−イソバレリル桂皮酸(化合物4−6)
【0128】
・4−アセチル桂皮酸(化合物4−7)
【0129】
実施例5
2−[4−[(1RS)−1−ヒドロキシ−2−フェニルエチル]フェニル]マレイン酸 ジエチルエステル(化合物5−1)
【化23】
【0130】
窒素雰囲気下、2−(4−ホルミルフェニル)マレイン酸 ジエチルエステル(参考化合物4−1、250mg)の無水テトラヒドロフラン(4.5ml)溶液にドライアイス冷却下撹拌しながら、塩化ベンジルマグネシウムの2.0Mテトラヒドロフラン溶液(0.45ml)を滴下する。滴下終了10分後、室温で1時間撹拌する。反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、エーテルで抽出する。有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後減圧濃縮する。得られる残留物をシリカゲルカラムクロマトで精製し、標記化合物(化合物5−1)100mg(30%)を得る。
【0131】
(化合物5−1)
IR(Film,cm−1)3512,2983,1719,1624,1372,1342,1290,1180,1032,701
【0132】
実施例6
2−[4−(フェニルアセチル)フェニル]マレイン酸 ジエチルエステル(化合物6−1)
【化24】
【0133】
2−[4−[(1RS)−1−ヒドロキシ−2−フェニルエチル]フェニル]マレイン酸 ジエチルエステル(化合物5−1、280mg)のジメチルスルホキシド(3ml)溶液に室温で撹拌しながらトリエチルアミン(0.53ml)を加え、さらに三酸化硫黄ピリジンコンプレックス(484mg)のジメチルスルホキシド(5ml)溶液を加える。室温で2.5時間撹拌したのち、反応液に0.1N塩酸(50ml)を加えエーテルで抽出する。有機層を水、飽和食塩水で洗浄、無水硫酸マグネシウムで乾燥後減圧濃縮する。析出物を濾取し、標記化合物(化合物6−1)85mg(31%)を結晶として得る。
【0134】
(化合物6−1)
mp 111〜120℃
IR(KBr,cm−1)2985,1716,1691,1627,1412,1374,1183,1024,728
【0135】
実施例7
2−[4−(フェニルアセチル)フェニル]マレイン酸(化合物7−1)
【化25】
【0136】
2−[4−(フェニルアセチル)フェニル]マレイン酸 ジエチルエステル(化合物6−1、80mg)のジオキサン(3ml)溶液を耐圧管に入れ、濃塩酸(2ml)を加えたのち120℃で1時間撹拌する。反応液を減圧濃縮し、標記化合物(化合物7−1)90mg(定量的)を得る。
【0137】
実施例8
4−[2−(2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニル)アクリロイル]桂皮酸(化合物8−1)
【化26】
【0138】
4−[(2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニル)アセチル]桂皮酸(化合物2−1、230mg)のジオキサン(13ml)溶液を耐圧管に入れ、パラホルムアルデヒド(78mg)、ジメチルアミン塩酸塩(210mg)、酢酸(1滴)および無水硫酸マグネシウム(適量)を加えて130℃に加熱しながら一晩撹拌する。氷冷下、反応液に0.1N塩酸を加えて酸性とし酢酸エチルで抽出する。有機層を飽和食塩水で洗浄、無水硫酸マグネシウムで乾燥後減圧濃縮する。析出物を濾取し、標記化合物(化合物8−1)222mg(93%)を結晶として得る。
【0139】
(化合物8−1)
mp 218〜220℃
IR(KBr,cm−1)2837,1691,1668,1518,1494,1283,994
【0140】
実施例8と同様の方法を用いて以下の化合物が得られる。
【0141】
・4−[2−(4−ニトロフェニル)アクリロイル]桂皮酸(化合物8−2)
mp 224.2〜225.5℃
IR(KBr,cm−1)2841,1689,1656,1508,1426,1344,1313,848
【0142】
・4−[2−(4−ビフェニリル)アクリロイル]桂皮酸(化合物8−3)
mp 239℃(分解)
IR(KBr,cm−1)2989,1688,1655,1632,1601,1562,982
【0143】
・4−[2−(4−トリル)アクリロイル]桂皮酸(化合物8−4)
【0144】
・4−[2−(4−フルオロフェニル)アクリロイル]桂皮酸(化合物8−5)
【0145】
・4−[2−(4−クロロフェニル)アクリロイル]桂皮酸(化合物8−6)
【0146】
・4−(2−フェニルアクリロイル)桂皮酸(化合物8−7)
mp 175.3〜177.8℃
IR(KBr,cm−1)2969,1690,1667,1631,1600,1561,1493,1412,914,858
【0147】
・4−(2−エチルアクリロイル)桂皮酸(化合物8−8)
mp 174.5〜175.0℃
IR(KBr,cm−1)2968,1689,1650,1627,1601,1561,989
【0148】
・α−メチル−4−(2−フェニルアクリロイル)桂皮酸(化合物8−9)
mp 134.5〜136.5℃
IR(KBr,cm−1)2966,1666,1600,1414,1265,1215,980
【0149】
・β−メチル−4−(2−フェニルアクリロイル)桂皮酸(化合物8−10)
mp 116.2〜118.8℃
IR(KBr,cm−1)2924,1684,1627,1600,1495,1415,981,855
【0150】
・4−(2−メチルアクリロイル)桂皮酸(化合物8−11)
【0151】
・4−(2−イソプロピルアクリロイル)桂皮酸(化合物8−12)
【0152】
・4−アクリロイル桂皮酸(化合物8−13)
【0153】
・2−[4−(2−フェニルアクリロイル)フェニル]マレイン酸(化合物8−14)
IR(Film,cm−1)2928,1769,1718,1622,1416,1226,1123,759
【0154】
実施例9
4−[(2RS,3RS)−3−ヒドロキシ−2−フェニルブチリル]桂皮酸
エチルエステル(化合物9−1)
【化27】
【0155】
4−(フェニルアセチル)桂皮酸 エチルエステル(化合物3−1、2.0g)をエタノール(14ml)−テトラヒドロフラン(34ml)混液に溶解し、水(14ml)、アセトアルデヒド(1.9ml)および炭酸カリウム(1.9g)を加え、室温で3時間撹拌する。反応液に1N塩酸を加えて酸性とし、酢酸エチルで抽出する。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後減圧濃縮する。得られる残留物をシリカゲルカラムクロマトで精製し、標記化合物(化合物9−1)1.75g(76%)を得る。
【0156】
(化合物9−1)
IR(Film,cm−1)3484,2977,1712,1677,1637,1603,1562,1492,1312,1209,1177
【0157】
実施例10
4−[(2RS,3RS)−3−(メシルオキシ)−2−フェニルブチリル]桂皮酸 エチルエステル(化合物10−1)
【化28】
【0158】
4−[(2RS,3RS)−3−ヒドロキシ−2−フェニルブチリル]桂皮酸エチルエステル(化合物9−1、1.70g)の無水塩化メチレン(25ml)溶液に、氷冷下、トリエチルアミン(1.05ml)およびメシルクロライド(0.6ml)を加え、2.5時間撹拌する。反応液に10%クエン酸水溶液を加えて酸性とし、エーテルで抽出する。有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後減圧濃縮し、標記化合物(化合物10−1)1.75g(84%)を得る。
【0159】
(化合物10−1)
IR(Film,cm−1)3030,1713,1681,1353,1174,906
【0160】
実施例11
4−[(E,Z)−2−フェニル−2−ブテノイル]桂皮酸 エチルエステル(化合物11−1)
【化29】
【0161】
4−[(2RS,3RS)−3−(メシルオキシ)−2−フェニルブチリル]桂皮酸 エチルエステル(化合物10−1、800mg)のテトラヒドロフラン(10ml)溶液に1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン(0.32ml)を加え、室温で1時間撹拌する。反応液に10%クエン酸水溶液を加えて酸性とし、エーテルで抽出する。有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後減圧濃縮する。得られる油状物をシリカゲルカラムクロマトで精製し、標記化合物(化合物11−1)535mg(87%)を得る。
【0162】
(化合物11−1)
IR(Film,cm−1)2980,1713,1639,1602,1366,1312,1270,1204,1175
【0163】
実施例12
4−[(E,Z)−2−フェニル−2−ブテノイル]桂皮酸(化合物12−1)
【化30】
【0164】
4−[(E,Z)−2−フェニル−2−ブテノイル]桂皮酸 エチルエステル(化合物11−1、260mg)をテトラヒドロフラン(4ml)−エタノール(4ml)混液に溶解し、水(3ml)および1N水酸化ナトリウム水溶液(0.32ml)を加え、室温で4.5時間撹拌する。反応液に1N塩酸を加えて酸性とし、酢酸エチルで抽出する。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後減圧濃縮する。析出物を濾取し、標記化合物(化合物12−1)115mg(49%)を結晶として得る。
【0165】
(化合物12−1)
mp 153〜156℃
IR(KBr,cm−1)2974,1690,1630,1425,1265,700
【0166】
実施例13
4−(3,3−ジフルオロ−2−フェニルアクリロイル)桂皮酸 t−ブチルエステル(化合物13−1)
【化31】
【0167】
窒素雰囲気下、4−カルボキシ桂皮酸 t−ブチルエステル(参考化合物2−3、1.9g)の無水テトラヒドロフラン(38ml)溶液に、氷−食塩寒剤冷却下、N−メチルモルホリン(0.29ml)を加えたのち、クロロ蟻酸 イソブチルエステル(0.99ml)を滴下し、16分間撹拌し混合酸無水物を得る。
【0168】
窒素雰囲気下、ドライアイスで冷却しながらトシル酸 2,2,2−トリフルオロエチルエステル(1.95g)の無水テトラヒドロフラン(18ml)溶液にn−ブチルリチウムの1.6Mヘキサン溶液(10ml)を滴下後35分間撹拌する。次いで、ドライアイス冷却下、トリフェニルボラン(2.0g)の無水テトラヒドロフラン(20ml)溶液を滴下後1時間、さらに室温で3時間撹拌する。氷冷下、反応液にヘキサメチルホスホルアミド(12ml)およびヨウ化銅(I)(2.9g)を加え、45分間撹拌したのち、上記混合酸無水物溶液を滴下し、室温で一晩撹拌する。反応液に10%クエン酸水溶液を加えて酸性とし、エーテル抽出する。有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後減圧濃縮する。得られる油状物をシリカゲルカラムクロマトで精製し、標記化合物(化合物13−1)442mg(16%)を得る。
【0169】
(化合物13−1)
mp 88〜94℃
IR(KBr,cm−1)3006,1740,1709,1637,1608,1569,1271,1192,1151
【0170】
実施例14
4−(3,3−ジフルオロ−2−フェニルアクリロイル)桂皮酸(化合物14−1)
【化32】
【0171】
窒素雰囲気下、4−(3,3−ジフルオロ−2−フェニルアクリロイル)桂皮酸 t−ブチルエステル(化合物13−1、302mg)を4N塩化水素ジオキサン溶液(2.45ml)に溶解し、室温で19.5時間撹拌する。反応液にエーテルを加え析出物を濾取し、標記化合物(化合物14−1)116mg(45%)を得る。
【0172】
(化合物14−1)
mp 235〜248℃
IR(KBr,cm−1)2833,1724,1689,1631,1605,1569,1278,922
【0173】
実施例15
(E)−2−[4−(フェニルアセチル)フェニル]ビニルホスホン酸 モノエチルエステル(化合物15−1)
【化33】
【0174】
(E)−2−(4−カルボキシフェニル)ビニルホスホン酸 ジエチルエステル(参考化合物5−1、3.27g)のクロロホルム(5ml)溶液に塩化チオニル(5.0ml)を滴下したのち、ジメチルホルムアミド(1滴)を加え24時間加熱還流する。反応液を減圧濃縮し、酸クロライドを得る。
【0175】
窒素雰囲気下、活性化亜鉛(1.6g)および塩化パラジウム(II)−ビス(トリフェニルホスフィン)錯体(0.89g)を無水1,2−ジメトキシエタン(33ml)に加え、氷冷下、臭化ベンジル(1.5ml)を撹拌しながら滴下する。さらに上記酸クロライドの無水1,2−ジメトキシエタン(25ml)溶液を滴下後、室温で3日間撹拌する。反応液をセライト濾過し、濾液を減圧濃縮する。1N塩酸を加え、酢酸エチルで抽出する。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後減圧濃縮する。得られる残留物をシリカゲルカラムクロマトで精製し、標記化合物(化合物15−1)1.96g(52%)を得る。
【0176】
(化合物15−1)
IR(Film,cm−1)3030,1681,1603,1561,1496,1454,1269,1200,945
【0177】
実施例16
(E)−2−[4−(2−フェニルアクリロイル)フェニル]ビニルホスホン酸 モノエチルエステル(化合物16−1)
【化34】
【0178】
(E)−2−[4−(フェニルアセチル)フェニル]ビニルホスホン酸 モノエチルエステル(化合物15−1、1.96g)のジオキサン(11ml)溶液を耐圧管に入れ、パラホルムアルデヒド(0.66g)、ジメチルアミン塩酸塩(1.8g)、酢酸(1滴)および無水硫酸マグネシウム(適量)を加えて130℃に加熱しながら5時間撹拌する。氷冷下、反応液に1N塩酸を加えて酸性とし酢酸エチルで抽出する。有機層を飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥後減圧濃縮する。得られる油状物をシリカゲルカラムクロマトで精製し、標記化合物(化合物16−1)0.55g(29%)を得る。
【0179】
(化合物16−1)
IR(Film,cm−1)2983,2904,1719,1665,1618,1410,1214,984,856,833
【0180】
実施例17
(E)−2−[4−(2−フェニルアクリロイル)フェニル]ビニルホスホン酸(化合物17−1)
【化35】
【0181】
窒素雰囲気下、(E)−2−[4−(2−フェニルアクリロイル)フェニル]ビニルホスホン酸 モノエチルエステル(化合物16−1、180mg)の無水塩化メチレン(1.3ml)溶液に、室温でブロモトリメチルシラン(0.28ml)を滴下し1時間撹拌する。酢酸エチルを加え、有機層を水、飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥後減圧濃縮する。
【0182】
得られる油状物を塩化メチレン(4.7ml)に溶解し、トリエチルアミン(0.20ml)を加え室温で1時間撹拌する。酢酸エチルを加え、有機層を0.1N塩酸、飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥後減圧濃縮する。析出物を濾取し、標記化合物(化合物17−1)22mg(13%)を結晶として得る。
【0183】
(化合物17−1)
mp 137〜147℃
IR(KBr,cm−1)3025,1654,1602,1495,1409,1216,929
【0184】
[製剤例]
本発明化合物の点眼剤および経口剤の製剤例を以下に示す。
【0185】
1)点眼剤
処方1 10ml中
本発明化合物 1mg
濃グリセリン 250mg
ポリソルベート80 200mg
リン酸二水素ナトリウム二水和物 20mg
1N水酸化ナトリウム 適量
1N塩酸 適量
滅菌精製水 適量
【0186】
2)錠剤
処方1 100mg中
本発明化合物 1 mg
乳糖 66.4mg
トウモロコシデンプン 20 mg
カルボキシメチルセルロース カルシウム 6 mg
ヒドロキシプロピルセルロース 6 mg
ステアリン酸 マグネシウム 0.6mg
【0187】
【発明の効果】
[薬理試験]
本発明化合物の緑内障に対する有用性を調べるため、1)線維柱帯細胞の形態に及ぼす作用、2)前房内投与による眼圧下降作用、および3)レーザー誘発高眼圧動物モデルを用いた点眼投与による眼圧下降作用について検討した。
【0188】
1)線維柱帯細胞の形態に及ぼす作用
薬物の培養線維柱帯細胞の形態に及ぼす作用を評価することで、房水流出を亢進させる作用を有する薬物を見出し得る可能性が報告されている(Invest. Ophthalmol. Vis. Sci., 33, 2631−2640 (1992) )。そこで上記文献に記載された方法に準じて本発明化合物のウシ培養線維柱帯細胞の形態に及ぼす作用を検討した。
【0189】
(実験方法)
アッセイは、本発明化合物を添加することによるウシ培養線維柱帯細胞の形態変化を、画像解析により定量評価した。
【0190】
[細胞の調製] ウシ胎児血清(10%)、アンフォテリシンB(2.5μg/ml)およびゲンタマイシン(50μg/ml)を添加したほ乳類細胞培養基本培地D−MEM(Dulbecco′s Modified Eagle Medium 、Gibco 社製)で培養したウシ線維柱帯細胞(継代数2〜5)を後述の薬物処理24時間前に、トリプシン−EDTA溶液(0.05%トリプシン、0.53mM EDTA・4Na)で処理して、24穴プレートに播種(104 cells/well)した。後述の薬物 処理12時間前にりん酸緩衝生理食塩液による洗浄を行った後、培地をアンフォテリシンB(2.5μg/ml)およびゲンタマイシン(50μg/ml)を添加したD−MEM(以下培地Aという)に交換した。後述の薬物処理1時間前に、上記のように調製した細胞から細胞同士が接触していない細胞を選び実験に用いた。
【0191】
[被験化合物溶液の調製] 被験化合物は、ジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解後、培地Aを加えて濾過滅菌し、さらに培地Aを加えて所定の濃度に希釈した。この希釈液を5%炭酸ガス雰囲気下、後述の薬物処理1時間前から37℃で1時間恒温保持して被験化合物溶液を調製した。
【0192】
[測定方法] まず、薬物処理1時間前の細胞を自動位置検出装置(well−scanner)を用いて写真撮影した。次いで、細胞の培地を被験化合物溶液に交換して薬物処理を行い、5%炭酸ガス雰囲気下、37℃で3時間インキュベートをした後、well−scannerを用いて薬物処理1時間前に撮影したのと同じ細胞を写真撮影した。
【0193】
(画像解析)
撮影した細胞像を写真からCCDカメラ(HAMAMATU社製)にて、画像解析システムに取り込んだ。取り込んだ細胞像の輪郭をトレースし、面積を測定した。
【0194】
被験化合物の線維柱帯細胞に及ぼす形態変化の程度は、下記の面積変化率(%)で示す。
【0195】
【式1】
【0196】
(結果)
表1に試験結果の一例として、線維柱帯細胞の細胞面積を50%縮小させるのに要した濃度(EC50)を示す。また、対照薬物としてエタクリン酸を用いた結果も示す。
【0197】
【表1】
【0198】
表1に示されるように、本発明化合物は線維柱帯細胞に対し、優れた細胞形態変化作用を有することが認められた。これらの効果は、公知の比較対照薬物であるエタクリン酸に比べて10倍以上優れたものであった。
【0199】
2)前房内投与による眼圧下降作用
薬物の眼圧下降作用を評価する一つの方法として、薬物をカニクイザルの前房内に投与する方法が報告されている(Am. J. Ophthalmol., 113, 706−711 (1992) )。そこで上記文献に記載された方法に準じて本発明化合物の眼圧への影響を検討した。
【0200】
(実験方法)
[実験動物] 動物は体重4.0〜7.0kg、4〜7才齢の健常な雄性カニクイザルを使用した。
【0201】
[被験化合物溶液の調製] 使用被験化合物はジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解後、りん酸緩衝生理食塩液を加えて所定の濃度に(10−3M、1%DMSO)希釈し、濾過滅菌して調製した。
【0202】
[薬物投与方法] 塩酸ケタミン(5〜10mg/kg)を筋肉内投与して全身麻酔を施したカニクイザルに、マイクロシリンジおよび30G針を用いて、被験化合物溶液(10μl)を片眼の前房内に投与した。なお、他方の眼には基剤のみを投与した。
【0203】
[測定方法] 眼圧測定は、被験化合物投与直前、投与後所定時間に圧平式眼圧計を用いて行った。なお、眼圧測定の際には塩酸ケタミン(5〜10mg/kg)で全身麻酔したのち、局所麻酔剤の0.4%塩酸オキシブプロカイン点眼液を1滴点眼した。
【0204】
(結果)
被験化合物投与t時間後の被験化合物の眼圧に対する作用は、下記の眼圧下降値(mmHg)で示す。
【0205】
眼圧下降値(mmHg)=[IOP(V−t) −IOP(D−t)]− [IOP(V−0) − IOP(D−0)]
IOP(D−t):被験化合物投与t時間後の被験化合物投与眼の眼圧
IOP(D−0):被験化合物投与直前の被験化合物投与眼の眼圧
IOP(V−t):基剤投与t時間後の基剤投与眼の眼圧
IOP(V−0):基剤投与直前の基剤投与眼の眼圧
【0206】
試験結果の一例として、被験化合物溶液(化合物8−7)を前房内に注入後の最大眼圧下降値(mmHg)を表2に示す。また、対照薬物としてエタクリン酸を用いた結果も示す。
【0207】
【表2】
*)数値は6例の平均値を示す。
【0208】
**)数値は5例の平均値を示す。
【0209】
表2に示されるように、本発明化合物は優れた眼圧下降作用を示した。また、比較対照薬物であるエタクリン酸に比べても優れた眼圧下降作用を示した。
【0210】
3)レーザー誘発高眼圧動物モデルを用いた点眼投与による眼圧下降作用
薬物の眼圧下降作用を評価する方法の一つとして、レーザー誘発高眼圧サルモデルに薬物を点眼投与する方法が報告されている(Arch. Ophthalmol., 105, 249−252 (1987))。そこで上記文献に記載された方法に準じて本発明化合物の点眼投与による眼圧下降作用を検討した。
【0211】
(実験方法)
[実験動物] 実験には、体重5〜6kgの雄性カニクイザルを使用した。アルゴンレーザー(Coherent Radiation、Models 800)を用い、1週間間隔でサルの線維柱帯に100〜150spots 照射して高眼圧眼にした4頭5眼を使用した。なお、レーザー照射条件は1000mW、0.2sec.に設定した。
【0212】
[被験化合物溶液の調製] 被験化合物を精製水に溶解後、濃グリセリンおよび塩化ナトリウムを加えて浸透圧を1に、0.1M水酸化ナトリウム水溶液でpHを7.4に調整し、0.3%溶液とした後、濾過滅菌して調製した。
【0213】
[薬物投与方法] まず、基剤の眼圧に及ぼす影響を調べるため、基剤のみを1日2回(午前10時および午後5時)1週間連続点眼した。次いで、被験化合物溶液を1日2回(午前10時および午後5時)1週間連続点眼した。
【0214】
[測定方法] 眼圧測定は、薬物投与開始前および点眼後所定時間に、圧平式眼圧計を用いて行った。なお、眼圧測定は、測定1時間前にクロルプロマジン(1mg/kg)を筋肉内投与して鎮静状態にしたカニクイザルに、局所麻酔剤の0.4%塩酸オキシブプロカイン点眼液を1滴点眼したのち行った。
【0215】
(結果)
被験化合物溶液の午前点眼6時間後の眼圧に対する作用を、下記式により求められる眼圧変化差(mmHg)で示す。
【0216】
眼圧変化差(mmHg)=[ IOP(D−6) − IOP(D−0)]− [IOP(V−6)− IOP(V−0)]
IOP(D−6):被験化合物溶液午前点眼6時間後の眼圧
IOP(D−0):被験化合物溶液投与開始前の眼圧
IOP(V−6):基剤午前点眼6時間後の眼圧
IOP(V−0):基剤投与開始前の眼圧
【0217】
試験結果の一例として、被験化合物(化合物8−7)溶液点眼後の眼圧変化差の経日変化を表3に示す。
【0218】
【表3】
【0219】
表中の数値は5眼の平均値を示す。
【0220】
表3に示したように被験化合物(化合物8−7)は優れた眼圧下降作用を示した。なお、前眼部の障害性はすべての点眼期間を通じて認められなかった。
【0221】
以上のことから、本発明化合物は優れた眼圧下降作用を有しており、緑内障の治療剤として有用であることが認められた。
Claims (8)
- 下記一般式[I]で表される化合物およびその塩類。
R2 およびR3 は同一かまたは異なって、水素原子または低級アルキル基を示す。
R4 およびR5 は同一かまたは異なって、水素原子、低級アルキル基またはカルボキシル基もしくはその低級アルキルエステル基もしくはフェニル低級アルキルエステル基を示す。
R6 はカルボキシル基またはホスホノ基もしくはそれらの低級アルキルエステル基もしくはフェニル低級アルキルエステル基を示す。] - 1)R1 が水素原子、低級アルキル基またはフェニル基を示し、該フェニル基は低級アルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基またはフェニル基から選択される基で置換されていてもよい;および/または
2)R4 およびR5 が同一かまたは異なって、水素原子、低級アルキル基またはカルボキシル基を示す;
請求項1記載の化合物およびその塩類。 - 1)R1 がフェニル基を示し、該フェニル基はハロゲン原子、ニトロ基またはフェニル基から選択される基で置換されていてもよい;
2)R2 およびR3 がともに水素原子を示す;
3)R4 およびR5 が同一かまたは異なって、水素原子または低級アルキル基を示す;および/または
4)R6 がカルボキシル基を示す;
請求項1記載の化合物およびその塩類。 - 1)R1 がフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、4−ニトロフェニル基または4−ビフェニリル基を示す;
2)R2 およびR3 がともに水素原子を示す;
3)R4 およびR5 が同一かまたは異なって、水素原子またはメチル基を示す;および/または
4)R6 がカルボキシル基を示す;
請求項1記載の化合物およびその塩類。 - 4−[2−(2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニル)アクリロイル]桂皮酸、4−[2−(4−ニトロフェニル)アクリロイル]桂皮酸、4−(2−フェニルアクリロイル)桂皮酸、α−メチル−4−(2−フェニルアクリロイル)桂皮酸、β−メチル−4−(2−フェニルアクリロイル)桂皮酸よりなる群から選ばれる化合物およびそれらの塩類。
- 請求項1記載の化合物またはその塩類を有効成分とする医薬組成物。
- 請求項1記載の化合物またはその塩類を有効成分とする房水流出改善剤。
- 請求項1記載の化合物またはその塩類を有効成分とする眼圧下降剤。
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