JP3613691B2 - 車両用操舵装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、運転者の操作に応じて車両を操向させるための車両用操舵装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
車両の操舵は、車室の内部に配された操舵手段の操作、例えば、ステアリングホイールの回転を、舵取り用の車輪(一般的には前輪)の操向のために車室の外部に配された舵取機構に伝えて行われる。
近年においては、舵取機構の中途に油圧シリンダ、電動モータ等の操舵補助用のアクチュエータを配し、このアクチュエータを、操舵のためにステアリングホイールに加えられる操作力の検出結果に基づいて駆動して、ステアリングホイールの回転に応じた舵取機構の動作を、アクチュエータの発生力により補助し、操舵のための運転者の労力負担を軽減する構成とした動力操舵装置(パワーステアリング装置)が広く普及している。
【0003】
ところが、このような従来の車両用操舵装置においては、操舵手段であるステアリングホイールと舵取機構との機械的な連結が必要であり、車室の内部におけるステアリングホイールの配設位置が車室外での舵取機構との連結が可能な位置に限定されるという問題があり、また、連結可能にステアリングホイールが配設された場合であっても、連結の実現のために複雑な連結構造を要し、車両の軽量化、組立て工程の簡素化を阻害する要因となっている。
【0004】
例えば、実公平2−29017号公報には、このような問題の解消を目的としたリンクレスのパワーステアリングである車両用の操舵装置が開示されている。この車両用の操舵装置は、ステアリングホイールを舵取機構から切り離して配し、また、動力操舵装置における操舵補助用のアクチュエータと同様に、舵取機構の中途に操舵用のアクチュエータとしての電動モータを配してなり、この電動モータを、ステアリングホイールの操作方向及び操作量の検出結果に基づいて駆動することにより、ステアリングホイールの操作に応じた舵取りを行わせる構成となっている。
【0005】
舵取機構に機械的に連結されないステアリングホイールには、モータを備えた反力アクチュエータが付設されている。反力アクチュエータは、車速及びステアリングホイールの操舵角の検出結果に基づいて前記モータを駆動することにより、ステアリングホイールに中立位置へ向かう反力を加える。この反力は、車速の高低及び操舵角の大小に応じて大小となる特性を有する。
この車両用操舵装置は、この反力に抗してステアリングホイールに加えられるトルクを検出し、この検出結果に応じて操舵用の電動モータのモータ電流を増減させ、この電動モータが発生する操舵力を増減させる。これにより、ステアリングホイールと舵取機構とが機械的に連結された一般的な車両用操舵装置(連結型の操舵装置)と同様の感覚での操舵を行わせ得るようにしてある。
【0006】
以上のように構成された分離型の車両用操舵装置は、ステアリングホイールの配設自由度の増加、車両の軽量化等の前述した目的に加え、レバー、ペダル等、ステアリングホイールに代わる新たな操舵手段の実現、及び路面上の誘導標識の検出、衛星情報の受信等の走行情報に従う自動運転システムの実現等、将来における自動車技術の発展のために有用なものである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上述した車両用操舵装置等では、その操舵を行うために、ステアリングホイールの操舵角、ステアリングホイールに加えられる操舵トルク、車速、操舵用の電動モータのモータ電流、反力アクチュエータに流れる電流、舵取機構の舵角等、各種の物理量を検出する各種のセンサを備えているが、これらのセンサが故障したときに、運転者が、その故障に気付かなければ、異常に気付かずに運転し続け、また、気が付いたとしても、何が故障したのかすぐには判断できないことがある。また、センサの出力信号と突発的なノイズとが区別できない問題もある。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、操舵トルクセンサの故障にすぐ気が付くことができる車両用操舵装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
第1発明に係る車両用操舵装置は、車輪の向きを変える舵取機構に機械的に連結されていない操舵手段と、該操舵手段に中立位置へ向かう反力を、指示された反力指示トルクに基づき付与する反力付与手段と、前記反力に抗して前記操舵手段に加えられる操舵トルクを検出する操舵トルク検出手段とを備え、前記操舵手段の操舵角に応じて、前記舵取機構の舵角を増減制御する車両用操舵装置において、前記操舵トルク検出手段が検出した操舵トルクと前記反力指示トルクの上限値との差が所定値以上であるか否かを判定する上限値判定手段と、前記反力指示トルクの下限値と前記操舵トルクとの差が所定値以上であるか否かを判定する下限値判定手段と、前記上限値判定手段又は下限値判定手段が所定値以上であると判定したときに、前記操舵トルクが、取り得る範囲外にあることを検出する範囲外検出手段と、該範囲外検出手段が、操舵トルクが取り得る範囲外にあることを検出したときに、前記操舵トルク検出手段が故障したと判断する判断手段とを備えることを特徴とする。
【0009】
この車両用操舵装置では、範囲外検出手段は、操舵トルク検出手段が検出した操舵トルクが、操舵トルクが取り得る範囲外にあることを検出する。そして、範囲外検出手段が、操舵トルクが取り得る範囲外にあることを検出したときに、判断手段が、操舵トルク検出手段が故障したと判断する。
これにより、運転者は、故障表示や警報等により、操舵トルク検出手段の故障にすぐ気が付くことができ、運転中止、修理等の適切な処置を取ることができる。
【0014】
第2発明に係る車両用操舵装置は、前記判断手段は、所定時間、前記範囲外検出手段が、操舵トルクが取り得る範囲外にあることを検出し続けたときに、前記操舵トルク検出手段が故障したと判断することを特徴とする。
【0015】
この車両用操舵装置では、判断手段は、所定時間、範囲外検出手段が、操舵トルクが取り得る範囲外にあることを検出し続けたときに、操舵トルク検出手段が故障したと判断するので、突発的なノイズによる誤判断を防ぐことができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて説明する。
図1は、本発明に係る車両用操舵装置の実施の形態の全体構成を示すブロック図である。この車両用操舵装置は、図示しない車体の左右に配された一対の舵取り用の車輪10,10に操向動作を行わせるための舵取機構1と、舵取機構1から切り離して配された操舵手段であるステアリングホイール2と、ステアリングホイール2に反力を付与する反力アクチュエータ3と、マイクロプロセッサを用いてなる操舵制御部4とを備え、ステアリングホイール2の操作に応じた操舵制御部4の動作により、舵取機構1の中途に配した操舵モータ5を駆動し、舵取機構1を作動させる構成となっている。
【0017】
舵取機構1は、公知のように、車体の左右方向に延設されて軸長方向に摺動する操舵軸11の両端部と、車輪10,10を支持するナックルアーム12,12とを、各別のタイロッド13,13により連結し、操舵軸11の両方向への摺動によりタイロッド13,13を介してナックルアーム12,12を押し引きし、車輪10,10を左右に操向させるものであり、この操向は、操舵軸11の中途部に同軸的に構成された操舵モータ5の回転を、適宜の運動変換機構により操舵軸11の摺動に変換して行われる。
【0018】
操舵軸11は、操舵軸ハウジング14との間に介装された図示しない回転拘束手段により軸回りの回転を拘束されており、操舵モータ5の回転は、操舵軸11の軸長方向の摺動に変換され、操舵モータ5の回転に応じた操舵(操舵用の車輪10,10の操向)が行われる。
このように操舵される車輪10,10の舵角は、操舵モータ5の一側の操舵軸ハウジング14と操舵軸11との相対摺動位置を媒介として、舵角検出手段である舵角センサ16により検出されるようになしてあり、舵角センサ16の出力は、操舵モータ5の回転位置を検出するロータリエンコーダ15の出力と共に、操舵制御部4に与えられている。
【0019】
ステアリングホイール2に反力を付与する反力付与手段である反力アクチュエータ3は、電動モータ(例えば3相ブラシレスモータ)であり、回転軸30に関連して、そのケーシングを図示しない車体の適宜部に固定して取り付けてある。ステアリングホイール2は、回転軸30の一側の突出端に同軸的に固定されており、他側の突出端は、所定の弾性を有する捩ればね31により、図示しない車体の適宜部位に連結されている。
【0020】
反力アクチュエータ3は、操舵制御部4から与えられる反力指示トルク信号に応じた駆動回路3aからの通電により正逆両方向に駆動され、回転軸30の一端に取り付けたステアリングホイール2に、その操作方向と逆方向の力(反力)を付与する動作をなす。従って、ステアリングホイール2の回転操作には、反力アクチュエータ3が発生する反力に抗する操舵トルクを加える必要があり、このようにしてステアリングホイール2に加えられる操舵トルクは、反力アクチュエータ3に付設されたトルクセンサ32(操舵トルク検出手段)により検出される。また、ステアリングホイール2の操作量(操舵角)は、反力アクチュエータ3に付設された操舵角検出手段であるロータリエンコーダ33により、操作方向を含めて検出されており、これらの検出結果は、操舵制御部4に与えられている。
また、駆動回路3aから反力アクチュエータ3に通電する電流は、電流センサ3bにより検出され、操舵制御部4に与えられる。
【0021】
なお、回転軸30の他端と車体の一部との間に介装された捩ればね31は、以上のように行われる回転操作の停止時に、その弾性により回転軸30を回転させて、ステアリングホイール2を所定の中立位置に復帰させる作用をする。この復帰は、機械的に連結されていない舵取機構1側にて生じる車輪10,10の直進方向への復帰動作に伴ってステアリングホイール2を戻すために必要なものである。
【0022】
以上のように操舵制御部4には、舵取機構1の側にて実際に生じている舵取りの状態が、ロータリエンコーダ15及び舵角センサ16からの入力として与えられ、また操舵手段としてのステアリングホイール2の操作の状態が、トルクセンサ32及びロータリエンコーダ33からの入力として夫々与えられており、これらに加えて操舵制御部4の入力側には、車両の走行速度を検出する車速センサ6の出力が与えられている。
【0023】
一方、操舵制御部4の出力は、前述したように、ステアリングホイール2に反力を付与する反力アクチュエータ3と、舵取機構1に舵取り動作を行わせるための操舵モータ5とに、各別の駆動回路3a,5aを介して与えられており、反力アクチュエータ3及び操舵モータ5は、操舵制御部4からの指示信号に応じて各別の動作を行うようになしてある。
駆動回路5aから操舵モータ5に通電する電流は、電流センサ7により検出され、操舵制御部4に与えられる。
【0024】
操舵制御部4は、ステアリングホイール2に付与すべき反力を決定し、反力を発生させるべく反力アクチュエータ3に反力指示トルク信号を発する反力制御を行う。
ステアリングホイール2に付与すべき反力は、車速センサ6からの入力として与えられる車速の高低及び操舵角の大小に応じて大小となる。
【0025】
また、操舵制御部4は、ロータリエンコーダ33からの入力によりステアリングホイール2の操作方向を含めた操作角度を認識し、舵取機構1に付設された舵角センサ16の入力により認識される実舵角度との舵角偏差を求め、この舵角偏差を車速センサ6からの入力として与えられる車速の遅速に応じて大小となるように補正して目標舵角を求め、この目標舵角が得られるまで操舵モータ5を駆動する操舵制御動作を行う。このとき、ロータリエンコーダ15からの入力は、操舵モータ5が所望の回転位置に達したか否かを調べるためのフィードバック信号として用いられる。
【0026】
以下に、このような構成の本発明に係る車両用操舵装置の動作を、それを示すフローチャートに基づき説明する。
図2は、本発明に係る車両用操舵装置の動作を示すフローチャートである。操舵制御部4は、トルクセンサ32の故障を検出するときは、先ず、トルクセンサ32により操舵トルクTS を検出して読み込む(S2)。次に、メモリに記憶してある、操舵トルクTS が取り得る値の上限に関連する反力指示トルク上限値TU を読み込んで(S4)、操舵トルクTS と反力指示トルク上限値TU との差ΔT=TS −TU を演算する(S6)。
【0027】
次に、操舵制御部4は、操舵トルクTS と反力指示トルク上限値TU との差ΔTが所定値以上のときは(S8)、操舵トルクTS は、操舵トルクTS が取り得る値の範囲外であるとして、トルクセンサ32が故障していると判断する(S16)。
操舵制御部4は、ΔTが所定値未満のときは、操舵トルクTS が取り得る値の下限に関連する反力指示トルク下限値TL を読み込んで(S10)、反力指示トルク下限値TL と操舵トルクTS との差ΔT=TL −TS を演算する(S12)。
【0028】
次に、操舵制御部4は、反力指示トルク下限値TL と操舵トルクTS との差ΔTが所定値以上のときは(S14)、操舵トルクTS は、操舵トルクTS が取り得る値の範囲外であるとして、トルクセンサ32が故障していると判断する(S16)。
操舵制御部4は、ΔTが所定値未満のときは(S14)、トルクセンサ32は正常であると判断してリターンする。
【0029】
図3は、本発明に係る車両用操舵装置の動作を示すフローチャートである。本発明に係る車両用操舵装置の本実施の形態の構成は、上述した本発明に係る車両用操舵装置の実施の形態の構成と同様であるので、説明を省略する。操舵制御部4は、トルクセンサ32の故障を検出するときは、先ず、そのときの反力指示トルクTM を読み込む(S20)。次に、トルクセンサ32により操舵トルクTS を検出して読み込み(S22)、反力指示トルクTM と操舵トルクTS との偏差ΔT=TM −TS を演算する(S24)。
【0030】
次に、操舵制御部4は、反力指示トルクTM と操舵トルクTS との偏差ΔTの絶対値が所定値以上のときは(S26)、操舵トルクTS は、操舵トルクTS が取り得る値の範囲外であるとして、時間のパラメータt=t+1を演算する。
次に、操舵制御部4は、時間のパラメータtが所定値(所定時間)に達しているときは(S30)、操舵トルクTS が取り得る値の範囲外である状態が、所定時間継続したとして、トルクセンサ32が故障していると判断する(S32)。時間のパラメータtが所定値(所定時間)に達していないときは(S30)リターンする。
【0031】
操舵制御部4は、反力指示トルクTM と操舵トルクTS との偏差ΔTの絶対値が所定値未満のときは(S26)、操舵トルクTS は、操舵トルクTS が取り得る値の範囲内であるとして、トルクセンサ32は正常であるとし、時間のパラメータt=0としてリターンする。
尚、上述した各実施の形態では、トルクセンサ32の場合について記述したが、トルクセンサ32に限らず、舵角センサ16、操舵角検出手段であるロータリエンコーダ33、電流センサ3b,7等、他のセンサ(検出手段)についても、同様のことが可能である。
【0032】
【発明の効果】
第1発明に係る車両用操舵装置によれば、運転者は、操舵トルク検出手段の故障にすぐ気が付くことができ、運転中止、修理等の適切な処置を取ることができる。
【0035】
第2発明に係る車両用操舵装置によれば、運転者は、操舵トルク検出手段の故障にすぐ気が付くことができ、運転中止、修理等の適切な処置を取ることができる。また、操舵トルク検出手段の故障について、突発的なノイズによる誤判断を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る車両用操舵装置の実施の形態の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明に係る車両用操舵装置の動作を示すフローチャートである。
【図3】本発明に係る車両用操舵装置の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
1 舵取機構
2 ステアリングホイール(操舵手段)
3 反力アクチュエータ(反力付与手段)
3a,5a 駆動回路
3b,7 電流センサ
4 操舵制御部(範囲外検出手段、判断手段)
5 操舵モータ
6 車速センサ
32 トルクセンサ(操舵トルク検出手段)
33 ロータリエンコーダ(操舵角検出手段)
Claims (2)
- 車輪の向きを変える舵取機構に機械的に連結されていない操舵手段と、該操舵手段に中立位置へ向かう反力を、指示された反力指示トルクに基づき付与する反力付与手段と、前記反力に抗して前記操舵手段に加えられる操舵トルクを検出する操舵トルク検出手段とを備え、前記操舵手段の操舵角に応じて、前記舵取機構の舵角を増減制御する車両用操舵装置において、
前記操舵トルク検出手段が検出した操舵トルクと前記反力指示トルクの上限値との差が所定値以上であるか否かを判定する上限値判定手段と、前記反力指示トルクの下限値と前記操舵トルクとの差が所定値以上であるか否かを判定する下限値判定手段と、前記上限値判定手段又は下限値判定手段が所定値以上であると判定したときに、前記操舵トルクが、取り得る範囲外にあることを検出する範囲外検出手段と、該範囲外検出手段が、操舵トルクが取り得る範囲外にあることを検出したときに、前記操舵トルク検出手段が故障したと判断する判断手段とを備えることを特徴とする車両用操舵装置。 - 前記判断手段は、所定時間、前記範囲外検出手段が、操舵トルクが取り得る範囲外にあることを検出し続けたときに、前記操舵トルク検出手段が故障したと判断する請求項1記載の車両用操舵装置。
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JP2563097A JP3613691B2 (ja) | 1997-02-07 | 1997-02-07 | 車両用操舵装置 |
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1997
- 1997-02-07 JP JP2563097A patent/JP3613691B2/ja not_active Expired - Fee Related
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