JP3612746B2 - N−(p−トルエンスルホニル)−N′−(4−ヒドロキシフェニル)ウレア含有感熱記録体 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、N−(p−トルエンスルホニル)−N′−(4−ヒドロキシフェニル)ウレアを顕色剤として含む感熱記録体に関するものである。
本発明の熱によって発色画像を形成する感熱記録体は、一旦発色した画像の消失が無く、記録の保存安定性に優れ、かつ高い記録感度を有するものである。本発明に用いられる顕色性化合物をロイコ染料すなわち染料前駆体と組み合わせて使用することにより、保存安定性に優れた画像を高い記録感度をもって記録することができる。
【0002】
【従来の技術】
一般に感熱記録体は、紙、合成紙又はプラスチックフィルム等からなる支持体上に電子供与性ロイコ染料のような発色性物質と電子受容性のフェノール性化合物等の有機酸性物質のような顕色性物質とを主成分とする感熱発色層を設けたものであって、これらの成分を熱エネルギーによって反応させることにより発色記録画像を得ることができる。このような感熱記録体は、特公昭43−4160号、特公昭45−14039号、及び特開昭48−27736号などに開示されており、広く実用化されている。
【0003】
感熱記録体は、記録装置がコンパクトで安価でかつ保守が容易であることから、電子計算機のアウトプット、ファクシミリ、自動券売機、科学計測器のプリンター、あるいはCRT医療計測用のプリンター等に広範囲に使用されている。しかし、支持体上に発色性染料物質、顕色性物質および結着剤を有効成分とする感熱発色層を塗工して製造された従来のいわゆる染料型感熱記録体にあっては、発色反応が可逆的であるため、発色画像が経時的に消色することが知られている。この消色は曝光、高湿、および高温雰囲気下において加速され、さらに可塑剤および油等との接触によっても速やかに進行し、画像は読み取り不可能なレベルまで消色してしまう。
【0004】
通常無色ないし淡色のラクトン環化合物を主とする染料前駆体を使用する発色系について、その消色現象を抑制するための数多くの手段が開示されてきた。例えば特開昭60−78782号、特開昭59−167292号、特開昭59−114096号、および特開昭59−93387号にはフェノール系酸化防止剤を感熱発色層中に配合したものが開示されている。
【0005】
特開昭56−146796号には疎水性高分子化合物エマルジョン等を保護層に使用したものが開示されている。また、特開昭58−199189号公報には、感熱発色層上に水溶性高分子化合物または、疎水性高分子化合物エマルジョンから中間層を形成し、その上に疎水性高分子化合物を樹脂成分とする油性塗料による表面層を設けたものが開示されており、さらに、特開昭62−164579号には、感熱発色層中にエポキシ化合物を含有させたもの等が開示されている。
【0006】
前述のフェノール系酸化防止剤を配合した感熱発色層に形成される発色画像は、それが配合されていない場合の画像に比べ、耐環境性は多少改良されるが、耐油性(例えばサラダオイルを発色面に接触させた場合の一定時間後の画像濃度の保存率)、耐可塑剤性(可塑剤を含有したラップフィルム等を発色面に接触させた場合の一定時間後の画像濃度の保存率)などについては改良が認められない。
【0007】
保護層、表面層を設けた感熱記録体に形成される発色画像の耐環境性はかなり改良されるが、長時間の試験では消色は避けられない。また耐油性に関しても、オイルと接触させた直後の画像保存性は改良されるが、オイルの浸透にしたがって画像はほぼ完全に消失してしまい、上記問題点に対する本質的な解決策とはいえない。
【0008】
感熱発色層中にエポキシ化合物を含有させたものでは、加熱発色操作をしてから発色画像が安定化されるまでに比較的長い時間が必要であり、例えば発色直後に発色画像にサラダオイルを塗布したり、可塑剤と接触させると、発色画像のかなりの部分が消色してしまう。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は従来技術のこれらの問題点を解決し、白色度が高く、感度にも優れ、かつ耐油性、耐可塑剤性、耐湿性、耐熱性等の発色画像の長期保存性に優れた感熱記録体を提供しようとするものである。本発明の、特定顕色剤化合物を用いた感熱記録体は、例えば自動券売機用感熱記録型の乗車券として使用できるだけでなく、保存性を必要とする回数券や定期券などへの使用、可塑剤、油脂との接触が避けられないポリ塩化ビニルフィルムで包装した食品の包装面に貼付けるPOS用バーコードシステム用のラベルなどにも適している。また、長期保存用のファクシミリ用紙やワープロ用紙、CRT用画像プリンター用紙としても利用できるなど、優れた特性を備えている。
【0010】
【課題を解決するための手段】
特定の化学構造を有するスルホニル(チオ)ウレア基を有する化合物が、強い顕色能力を有し、更にそれを用いて得られる発色画像が油や可塑剤などに強い抵抗性を有し保存性にも優れていることは、特開平5−32061号、特開平5−147357号、および特開平5−148220号等で既に開示されている。これらの化合物は、フェノール性水酸基やあるいはカルボキシル基などの、酸性官能基を有していないことを特徴とするものである。本発明者等は、スルホニル(チオ)ウレア基を有している化合物について更に鋭意検討した結果、顕色剤として有用な式(I)の化合物を見出した。
【0011】
本発明の感熱記録体は、支持体と、前記支持体の少なくとも1面上に形成され、かつロイコ染料、加熱されたとき、前記ロイコ染料を発色させる顕色剤及びバインダーを含む感熱発色層とを含み、
前記顕色剤が、
下記化学式(I):
【化2】
で表されるN−(p−トルエンスルホニル)−N′−(4−ヒドロキシフェニル)ウレアを含むことを特徴とする。
【0012】
【作用】
本発明の感熱記録体の顕色剤として用いられる上記化学式(I)の化合物は、例えば下記の反応により合成することができる。
【化3】
【0013】
上記反応の溶媒としては、イソシアネート類と反応して、上記反応を阻害することがないものであれば特に制限はない。好ましい溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、トリクロロエチレンなどの脂肪族ハロゲン化合物、アセトニトリル、プロピオニトリルのような脂肪族ニトリル類、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチルのような脂肪族エステル類、エチレングリコールジメチルエーテル、ジブチルエーテルのような脂肪族エーテル類、シクロヘキサノンのような脂肪族ケトン類などをあげることができる。
【0014】
また、前記式(I)の化合物は、その合成の際に用いられる反応溶媒の種類により、2種類の結晶形態をとることが見い出された。
たとえば、4−アミノフェノールのアセトニトリル溶解液にp−トルエンスルホニルイソシアネートを加えて反応させた場合、得られたN−(p−トルエンスルホニル)−N′−(4−ヒドロキシフェニル)ウレアは、図1に示されたX線回折特性を示す結晶形態(A)をとる。
【0015】
これに対して、4−アミノフェノールの酢酸エチル溶解液にp−トルエンスルホニルイソシアネートを加えて反応させた場合、得られたN−(p−トルエンスルホニル)−N′−(4−ヒドロキシフェニル)ウレアは、図2に示されたX線回折特性を示す結晶形態(B)をとる。
【0016】
次にN−(p−トルエンスルホニル)−N′−(4−ヒドロキジフェニル)ウレアの前記結晶形態(A)、および(B)を、図1および図2に示されたX線回折図により解説する。
図1および図2はCu−Kα線による粉末X線回折法において、回折角(2θ)をシンチレーションカウンターを使用して記録した式(I)の化合物のX線回折図である。
【0017】
図1は、結晶形態(A)を有する式(I)の化合物のX線回折図であって、Cu−Kα線による回折角(2θ)11.4°および20.2°において強いピークが現れ、かつ回折角(θ)15.0°および25.5°において中間強度のピークを有するという点に特徴がある。
【0018】
図2は、結晶形態(B)を有する式(I)の化合物のX線回折図であって、Cu−Kα線による回折角(2θ)7.0°および14.0°において強いピークを示し、かつ回折角(θ)20.3°において中間強度のピークを示すという特徴を有するものである。
【0019】
これらX線回折図は、N−(p−トルエンスルホニル)−N′−(4−ヒドロキシフェニル)ウレアが、2種の結晶形態を有することを示し、これら2つの結晶形態の相違を明確に表示している。
【0020】
また、式(I)の化合物は、その結晶形態(A),(B)により融点が互に異なる。結晶形(A)の融点は171℃であり、結晶形(B)の融点は196℃である。従って、N−(p−トルエンスルホニル)−N′−(4−ヒドロキシフェニル)ウレアの結晶形態の識別は、その融点を測定することによっても行なうことができる。
【0021】
このように本発明に用いられる式(I)の化合物:N−(p−トルエンスルホニル)−N′−(4−ヒドロキシフェニル)ウレアは、2つの結晶形態を有するが、どちらの状態であっても、それを感熱記録体用顕色剤として用いると、記録の保存安定性に優れた発色画像を形成し、かつ記録感度の高いものである。すなわち、本発明に用いられる式(I)の化合物が、感熱記録材料の感熱発色層中に、染料前駆体などとともに顕色剤として用いられたとき、きわめて優れた性能を示すものであることが、本発明において初めて認められた。
【0022】
本発明に用いられる式(I)の化合物は、ロイコ染料(染料前駆体)、およびこれらの成分を支持体の固着するためのバインダーとともに、かつ必要により融点60℃〜150℃の熱可融性芳香族化合物(これは一般に増感剤として知られている物質である)とともに、感熱記録体の感熱発色層を形成する。
さらに、感熱発色層は、有機又は無機顔料類を含んでいることが好ましく、また、必要に応じて、従来公知のフェノール系顕色剤、有機酸系顕色剤あるいは非フェノール性のスルホニル(チオ)ウレア系顕色剤、またはワックス類を含むことができる。
【0023】
本発明において、式(I)の化合物により顕色されるロイコ染料(染料前駆体)は、トリフェニルメタン系、フルオラン系、ジフェニルメタン系化合物等の従来公知のロイコ染料から選ぶことができる。このような染料前駆体としては、例えば、3−(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、クリスタルバイオレットラクトン、3−(N−エチル−N−イソペンチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(o,p−ジメチルアニリノ)フルオラン、3−(N−エチル−N−p−トルイジノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ピロリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−シクロヘキシル−N−メチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(o−クロロアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(m−トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−クロロフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチルフルオラン、および3−シクロヘキシルアミノ−6−クロロフルオラン、3−(N−エチル−N−ヘキシルアミノ)−6−メチル−7−(p−クロロアニリノ)フルオラン、3−ジブチルアミノ−7−(o−クロロアニリノ)フルオラン等から選ばれた1種以上を用いることができる。
【0024】
前述の増感剤としては、融点50−150℃の熱可融性有機化合物が用いられ、それらは例えば、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸フェニルエステル(特開昭57−191089号)、p−ベンジルビフェニル(特開昭60−82382号)、ベンジルナフチルエーテル(特開昭58−87094号)、ジベンジルテレフタレート(特開昭58−98285号)、p−ベンジルオキシ安息香酸ベンジル(特開昭57−201691号)、炭酸ジフェニル、炭酸ジトリル(特開昭58−136489号)、m−ターフェニル(特開昭57−89994号)、1,2−ビス(m−トリルオキシ)エタン(特開昭60−56588号)、1,5−ビス(p−メトキシフェノキシ)−3−オキサペンタン(特開昭62−181183号)、シュウ酸ジエステル類(特開昭64−1583号)、1,4−ビス(p−トリルオキシ)ベンゼン(特開平2−153783号)、シュウ酸ジ(4−メチルベンジル)(特公平5−62597号)、1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタン(特開昭60−56588号)、ジフェニルスルホン(特公昭60−15667号)、ベンゼンスルホアニリド(特開昭58−211493号)、2−クロロアセトアセトアニリド、4−エトキシメチルスルホニルベンゼン、4−メトキシアセトアセトアニリド、o−メチルアセトアニリド、4−メトキシベンゼンスルホアニリド、3,4−ジメチルアセトアニリド、2−メトキシベンゼンスルホアニリドなどをあげることができる。
【0025】
また、前記の有機又は無機の顔料としては、例えば炭酸カルシウム、シリカ、酸化亜鉛、酸化チタン、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、硫酸バリウム、クレー、焼成クレー、タルク、および表面処理された炭酸カルシウムやシリカ等の無機系微粉末の他、並びに、尿素−ホルマリン樹脂、スチレン/メタクリル酸共重合体、およびポリスチレン樹脂等の有機系の微粉末などを挙げることができる。
【0026】
またワックス類としては、例えば、パラフィン、アミド系ワックス、ビスイミド系ワックス、高級脂肪酸の金属塩など公知のものを用いることができる。
【0027】
前記バインダーとしては、種々の分子量のポリビニルアルコール、デンプン及びその誘導体、メトキシセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリアクリル酸ソーダ、ポリビニルピロリドン、アクリル酸アミド/アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸アミド/アクリル酸エステル/メタクリル酸3元共重合体、スチレン/無水マレイン酸共重合体アルカリ塩、ポリアクリルアミド、アルギン酸ソーダ、ゼラチン、およびカゼインなどの水溶性高分子材料、並びに、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、スチレン/ブタジエン共重合体、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、ポリブチルメタクリレート、エチレン/酢酸ビニル共重合体、およびスチレン/ブタジエン/アクリル系共重合体等の各々のラテックスを用いることができる。
【0028】
感熱記録材料を製造するには、上記所要成分を微粒子に分散あるいは溶解し、それを適宜混合して塗布液を調製し、これをシート状基体に塗布して、感熱発色層を形成する。その感熱発色層上に更に保護層、印刷層などのような被覆層を形成することもできる。
【0029】
【実施例】
下記に実施例を示し、本発明を具体的に説明する。下記実施例において、特に断らない限り、「部」および「%」は、それぞれ「重量部」および「重量%」をあらわす。
【0030】
参考例1
N−(p−トルエンスルホニル)−N′−(4−ヒドロキシフェニル)ウレア(I)、結晶形態(A)を有するもの
滴下ロート、温度計、および還流器を装備した三口フラスコに、21.8gのp−アミノフェノールを入れ、これに200mlのアセトニトリルを加えて撹拌し、p−アミノフェノールの一部を溶解した。この反応溶液をマグネティックスターラーで撹拌しつつ、滴下ロートから39.4gのトルエンスルホニルイソシアナートを滴下した。撹拌を継続すると、発熱反応がおこり、大量の白色固体が沈澱した。この反応混合物を90℃で1時間加熱し、冷却し、濾過したところ、60.0gの白色結晶を得た。
【0031】
この白色結晶の分析値は以下の通り。
融点:171℃
【0032】
元素分析結果を表1に示す。
【表1】
【0033】
NMR測定(重アセトン中)の結果(数字はppm ):
δ=2.45(s,3H),6.70(d,2H),7.22(d,2H),7.40(d,2H),7.92(d,2H)、その他、N−H、又はO−Hに起因すると思われるピークがδ=8.2付近および9.5に現われた。
【0034】
IR測定(KBr錠剤法)の結果(特性吸収のみ):
1670cm−1(尿素基のカルボニル基に由来)
1340cm−1,1160cm−1(スルホニル基に由来)
【0035】
X線回折図を図1に示す。
【0036】
参考例2
N−(p−トルエンスルホニル)−N′−(4−ヒドロキシフェニル)ウレア( II )、結晶形態(B)を有するもの
溶媒としては酢酸エチルを用いたことを除き、参考例1と同様の操作をして、白色結晶を得た。
【0037】
この白色結晶の分析値は以下の通りであった。但し元素分析、およびNMR測定(重アセトン中)の結果は、参考例1と同じであった。
融点:196℃
【0038】
X線回折図を図2に示す。
【0039】
参考例3
N−(p−トルエンスルホニル)−N′−(4−ヒドロキシフェニル)ウレア( II )、結晶形態(B)を有するもの
溶媒としてはジクロロメタンを用いたことを除き、参考例1と同様の操作をして、白色結晶を得た。
この白色結晶の同定試験結果は、参考例2と同じであった。
【0040】
実施例1
下記操作により感熱記録紙を作製した。
(1)分散液A調製
上記組成物をサンドグラインダーにより、平均粒径が1μm以下になるまで粉砕した。
【0041】
(2)分散液B調製
上記組成物をサンドグラインダーにより、平均粒径が1μm以下になるまで粉砕した。
【0042】
(3)顔料下塗り紙の調製
焼成クレイ(商品名アンシレックス)85部を水320部に分散して得られた分散物に、スチレン〜ブタジエン共重合物エマルジョン(固形分50%)40部と、10%酸化でんぷん水溶液50部とを混合して得た塗液を、坪量48g/m2 の原紙の1面上に、乾燥後の塗布量が7.0g/m2 になるように塗工し乾燥して、顔料下塗り紙を調製した。
【0043】
(4)感熱発色層の形成
上記A液50部およびB液200部に、炭酸カルシウム顔料33部、25%ステアリン酸亜鉛分散液20部、30%パラフィン分散液15部、および10%ポリビニルアルコール水溶液120部を混合し、撹拌して塗布液を調製した。この塗布液を、上記顔料下塗り紙の顔料塗布面に、乾燥後の塗布量が5.0g/m2 となるように塗布乾燥して感熱発色層を形成し、感熱記録紙を作製した。
【0044】
(5)平滑処理
上記の様にして得られた感熱記録紙をスーパーカレンダーによって処理し、その表面の平滑度を800〜1200秒とした。
【0045】
(6)テスト
上記試料について、大倉電機製感熱発色試験機THPMDを用いて、印字電圧21.7v、印字パルス1.0msの条件で印字した。この印字発色濃度はマクベス反射濃度計RD−914で測定した。テスト結果を表2に示す。次にこの発色試料から供試片を作成し、供試片にサラダオイルまたはジオクチルテレフタレート(代表的可塑剤)を塗布し、室温で3時間放置後、供試片上のオイルまたは可塑剤を拭き取り、残存画像濃度をマクベス反射濃度計で測定し、この測定値をもって画像保存性を代表する値とした。テスト結果を表2に示す。
【0046】
実施例2
実施例1と同様の操作を行なった。但し、分散液Bの調製にあたり、N−(p−トルエンスルホニル)−N′−(4−ヒドロキシフェニル)ウレアとして参考例2で合成され、図4のX線回折図を与える結晶形態Bのものを用いた。テスト結果を表2に示す。
【0047】
比較例1
実施例1と同様の操作を行なった。ただし、分散液Bの調製にあたり、N−(p−トルエンスルホニル)−N′−(4−ヒドロキシフェニル)ウレアのかわりに2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(すなわちビスフェノールA)を用いた。テスト結果を表2に示す。
【0048】
比較例2
実施例1と同様の操作を行なった。ただし、分散液Bの調製にあたり、N−(p−トルエンスルホニル)−N′−(4−ヒドロキシフェニル)ウレアのかわりにビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン(ビスフェノールS)を用いた。テスト結果を表2に示す。
【0049】
【表2】
【0050】
実施例1及び2から明らかなように、本発明に用いられる式(I)のN−(p−トルエンスルホニル)−N′−(4−ヒドロキシフェニル)ウレアは、十分に同定された特定の化合物である。また、実施例1,2、並びに比較例1,2から明らかなように、本発明において、式(I)の化合物を感熱記録体の顕色剤として用いると、従来顕色剤の代表であるビスフェノールAを凌駕する発色能力を示し、かつその発色画像は、すぐれた耐油性、および耐可塑剤性を示し、その発色画像保存性は、それがすぐれていることが知られているビスフェノールSを凌駕するものであることが確認された。
【0051】
【発明の効果】
顕色剤としてN−(p−トルエンスルホニル)−N′−(4−ヒドロキシフェニル)ウレアを含む本発明の感熱記録体は、従来の顕色剤を用いたものよりも優れた発色性能を示し、得られる発色画像は良好な保存安定性を示す。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、結晶形態(A)を有する式(I)の化合物、N−(p−トルエンスルホニル)−N′−(4−ヒドロキシフェニル)ウレアのX線回折図。
【図2】図2は、結晶形態(B)を有する式(I)の化合物のX線回折図。
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